有機廃棄物の堆肥化を促進する方法
【課題】
短期間で牛糞や鶏糞等の有機廃棄物を効率良く、かつ、効果的に堆肥化させる方法を提供することを目的とする。
【解決手段】
牛糞、鶏糞等の有機廃棄物に三価のアルコールあるいは油脂を添加し、攪拌後、堆肥床を形成する。適宜堆肥床の切り返しを行い、バクテリアの活動を活発化させることで有機廃棄物の堆肥化が飛躍的に促進される。通常数ヶ月を要する発酵分解菌による発酵工程を大幅に短縮することができ、短期間で大量の堆肥を供給することが可能となる。
短期間で牛糞や鶏糞等の有機廃棄物を効率良く、かつ、効果的に堆肥化させる方法を提供することを目的とする。
【解決手段】
牛糞、鶏糞等の有機廃棄物に三価のアルコールあるいは油脂を添加し、攪拌後、堆肥床を形成する。適宜堆肥床の切り返しを行い、バクテリアの活動を活発化させることで有機廃棄物の堆肥化が飛躍的に促進される。通常数ヶ月を要する発酵分解菌による発酵工程を大幅に短縮することができ、短期間で大量の堆肥を供給することが可能となる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件発明は、有機廃棄物の堆肥化を促進する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
これまでに牛糞、鶏糞に代表される有機廃棄物を発酵分解し、分解産物を堆肥として農地等に還元する研究開発が行われてきた。このような有機廃棄物の堆肥化技術において、有機廃棄物の発酵分解の役割を担うのが発酵分解菌と称されるようなバクテリアと呼ばれるものである。
【0003】
従来技術における有機廃棄物の堆肥化を促進させる方法とは、上記バクテリアによる有機廃棄物の分解反応を促進させる技術あるいはバクテリアによる分解反応の場の最適化を指す場合が多い。
【0004】
バクテリアによる有機廃棄物の分解反応を促進させる技術として、例えば特許文献1に記載されているような、ケイ酸水溶液とキトサンを有効成分とする有機物の消臭・分解促進剤などが開示されている。
【特許文献1】特開2006−122731号公報
【0005】
一方、バクテリアによる分解反応の場の最適化を意図した発明として、鹸化度が、90モル以上あり、かつ粒径が2〜20メッシュのポリビニルアルコール共重合体からなる家畜排泄物用処理剤等が開示されている。
【特許文献2】特開2006−110537号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本願発明者らは、牛糞、鶏糞等の有機廃棄物の堆肥化を促進させる方法について、鋭意検討を進め、有機廃棄物に3価アルコールあるいは油脂を添加することにより、上記バクテリアの増殖を促し有機廃棄物の堆肥化が著しく促進されることを見出した。
【0007】
本件発明はこの知見に基づき、短期間で有機廃棄物を効率良く、かつ、効果的に堆肥化させる方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる課題を解決するための本件発明の構成は、
1) 有機廃棄物の堆肥化を促進させる方法であって、三価のアルコールを有機廃棄物に添加する第1の工程と、発酵分解菌により有機廃棄物を発酵分解する第2の工程と、発酵が進行した有機廃棄物を切り返す第3の工程と、を有する有機廃棄物の堆肥化促進方法
2) 前記三価のアルコールは、グリセリンを含むことを特徴とする上記1)に記載の有機廃棄物の堆肥化促進方法
3) 有機廃棄物の堆肥化を促進させる方法であって、油脂及びケイ酸を前記有機廃棄物に添加する第1の工程と、発酵分解菌により有機廃棄物を発酵分解する第2の工程と、発酵が進行した前記有機廃棄物を切り返す第3の工程と、を有する有機廃棄物の堆肥化促進方法
4) 前記油脂は、動物性油あるいは植物性油から選択されることを特徴とする上記3)に記載の有機廃棄物の堆肥化促進法
5) 有機廃棄物を堆肥化させる方法であって、三価のアルコール、油脂及びケイ酸化合物を有機廃棄物に添加する第1の工程と、発酵分解菌により有機廃棄物を発酵分解する第2の工程と、発酵が進行した有機廃棄物を切り返す第3の工程と、を有する有機廃棄物の堆肥化促進方法
6) 有機廃棄物は、牛糞を含むことを特徴とする上記1)、2)及び5)に記載の有機廃棄物の堆肥化促進方法
7) 有機廃棄物は、鶏糞を含むことを特徴とする上記3)、4)及び5)に記載の有機廃棄物の堆肥化促進方法
である。
【0009】
なお、ここで言う「切り返す」とは、ピラミッド形状に積み上げた有機廃棄物を発酵分解工程の進捗に伴い、ひっくり返すことで有機廃棄物全体が外気と接触できるようにすることである。
【発明の効果】
【0010】
本件発明によれば、牛糞、鶏糞等の有機廃棄物に三価のアルコールあるいは油脂を添加することで、バクテリアの活動が活発化し、有機廃棄物の堆肥化が飛躍的に促進される。よって、短期間で大量の堆肥を供給することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本件発明の特徴は、有機廃棄物に添加する三価アルコール及び油脂を廃材から得ている点である。特に後述するグリセリンにおいては、バイオディーゼルを製造した後に発生する廃グリセリンを用いている。よって、コスト面を低く抑えることができ、比較的安価に堆肥を供給することが可能となっている。
【0012】
油脂においては、新油あるいは廃油どちらでも使用することができる。また、工業用油脂でなくとも、実施例で示すように、家庭等から排出される天ぷら油等の食用油脂を用いてもよい。
【0013】
また、本発明で使用される発酵分解菌は、有害物質を外部には排出せず、本件発明における発酵分解プロセスにおいて活性を有していれば、特に限定はしない。一般的には、自然界に存在する放線菌や糸状菌などの土壌に多く存在する菌類や、大気中に飛散している枯草菌等の好気性の菌類、分解対象物である牛糞、鶏糞等に含まれる嫌気性の乳酸菌等などの菌類が挙げられる。
【0014】
以下に本件発明の発酵分解反応プロセスの一例を示す。
【0015】
(1)1次工程
牛糞あるいは鶏糞に対して、それぞれ重量比で5%程度のグリセリンあるいは天ぷら油を添加後、攪拌しピラミッド形状の堆肥床を形成する。
【0016】
(2)2次工程
堆肥床を形成して、一両日中に堆肥床の温度が約60℃程度まで上昇する。しばらくの間、高温状態が持続し、やがて堆肥床の温度が低下する。
【0017】
(3)3次工程
発酵分解プロセスにおいて、適宜堆肥床の切り返しを行い、再びピラミッド形状の堆肥床を形成する。切り返し直後に、堆肥床の温度が再び上昇する。
【0018】
やがて切り返しを行っても堆肥床の温度が、著しく上昇しなくなるまで上記(1)〜(3)までの工程を繰り返して行う。なお、実施例で使用した牛糞あるいは鶏糞の重量(おおよそ10kg〜20kg程度)においては、10日前後で発酵分解反応は略終了した。
【0019】
<第1実施例−1:牛糞単独発酵試験>
牛糞11.62kgに対して、廃グリセリン(33%希釈物)1.74kg(牛糞に対する重量比4.9%)を添加後、攪拌しピラミッド形状の堆肥床を形成した。
【0020】
堆肥床形成直後の温度は25.6℃であった。やがて図1に示すように堆肥床形成後21時間後には、堆肥床の温度は60℃まで達した。ここで、切り返しの効果を確認するために、さらに4時間後、つまり堆肥床形成後25時間程度経過に切り返しを行った(図1(a))。
【0021】
切り返しを行った結果、堆肥床温度は、33.4℃まで低下した。しかしながら、切り返しを行ってから5時間後には、堆肥床の温度は58℃まで上昇した。その後、1日放置しても堆肥床は55℃程度の温度を保持していた。図1(b)の時間で、第2回目の切り返しを行った。
【0022】
その後、図1中、(c)、(d)、(e)の時点で、順次切り返しを行い、最終的には、最初に堆肥床を形成した日から8日目において堆肥温度は30℃程度に安定し、発酵分解反応は略終了したものと判断した。
【0023】
図2は、第1実施例−1における堆肥床の外見的形態変化の写真である。堆肥床形成開始から4日後には、発酵分解菌の菌糸が堆肥床表面において確認できるまで発酵分解菌の増殖が起こっていることが確認できる(図2(a)4日目)。一方、図2(b)は、上記牛糞に籾殻を添加したものであるが、図2(a)と同様に、発酵分解菌由来の菌糸の形成が見受けられた。
【0024】
<第1実施例−2:牛糞単独発酵試験>
下記表1に記載する組成に基づいて、第1実施例―1と同様の試験を行った。
【0025】
【表1】
【0026】
図3は、牛糞14kgに対して、廃グリセリン2.1kgを添加後、攪拌しピラミッド形状の堆肥床を形成したサンプル(No.14)と、同じく牛糞14kgに対して、天ぷら油0.5kg、メタケイ酸ソーダ9水溶液1.6kgを添加後、攪拌しピラミッド形状の堆肥床を形成したサンプル(No.16)とを比較したものである。
【0027】
図3に示されているように、第1実施例―1と同様に牛糞に対して廃グリセリンを添加したサンプルは、堆肥床を形成して次の日には堆肥床の温度は65℃程度まで上昇した。その後、切り返しを繰り返して行い、12日程度で、発酵分解反応は略終了した。
【0028】
一方、No.16のサンプルにおいては、無処理サンプル(No.22)と比較して、若干の堆肥床の温度上昇は認められたが、グリセリンを添加した際に見受けられた急激な堆肥床の温度上昇は見受けられなかった。よって、牛糞に対する発酵分解反応において、油脂とケイ酸化合物との組み合わせは、後述する鶏糞の事例と比較して効果を奏さないことが示された。
【0029】
<第2実施例−1:鶏糞単独発酵試験>
次に、鶏糞に対して、第1実施例−2:牛糞単独発酵試験と同様な試験を行った。添加物の各組成は以下の表2に記載した通りである。
【0030】
【表2】
【0031】
今回の試験は、発酵分解反応における鶏糞に対してグリセリンと天ぷら油、メタケイ酸ソーダ9水塩の組み合わせの効果を検討したものであり、図4にその結果を示す。
【0032】
図4は、鶏糞14kgに対して、廃グリセリン2.1kgを添加後、攪拌しピラミッド形状の堆肥床を形成したサンプル(No.15)と、同じく鶏糞14kgに対して、天ぷら油0.5kg、メタケイ酸ソーダ9水溶液1.6kgを添加後、攪拌しピラミッド形状の堆肥床を形成したサンプル(No.17)とを比較したものである。
【0033】
図4に示されているように、第1実施例:牛糞単独発酵試験2の結果とは対照的に、鶏糞に対して廃グリセリンを添加したサンプルは、若干の堆肥床の温度上昇は認められたものの、牛糞にグリセリンを添加した際と比較して劇的な堆肥床の温度上昇は観察されなかった。よって、鶏糞に対する発酵分解反応において、グリセリンは、その効果を奏さないことが示された。
【0034】
一方、鶏糞に対して、天ぷら油0.5kg、メタケイ酸ソーダ9水溶液1.6kgを添加したサンプル(No.17)は、図4に示されているように、堆肥床の温度が60℃付近まで上昇した。牛糞におけるグリセリン添加時の発酵分解反応の到達温度よりは幾分か低いものの、その後、切り返しを繰り返すことで、堆肥床は温度上昇・下降を繰り返し、やがて13日程度で発酵分解反応は略終了した。
【0035】
<第2実施例−2:鶏糞単独木枠発酵試験>
次に、木枠(72cmx69cmx24cm:体積 120cm3)内で、鶏糞の発酵分解試験を行った。通常の発酵分解試験は、ピラミッド形状の堆肥床を作成し、試験を行う。今回は、木枠内で鶏糞の発酵分解試験を行うことにより、発酵分解反応における鶏糞の外気接触面、つまり発酵分解菌の酸素依存性の検討を行った。
【0036】
図5は、鶏糞65.87kgに対して、天ぷら油3.99kg、メタケイ酸ソーダ9水溶液10.88kgを添加後、攪拌し上記サンプルを木枠に入れて発酵分解試験を行った結果を示している。
【0037】
図5でも、明らかのように、木枠内で発酵分解反応を試験した場合には、第2実施例―1と比較して、堆肥床の温度上昇の立ち上がりが悪いことが分かる。通常のピラミッド形状においては、堆肥床を形成して一両日中には、堆肥床の温度が55℃程度まで上昇するのに対して、鶏糞使用量の違いはあるが、木枠内で試験を行った場合、1日経過しても数℃程度しか堆肥床の温度は上昇していない。
【0038】
しかしながら、図5(a)の時点で、切り返しを行うと、速やかな堆肥床の温度上昇が観察された。この結果は、本発酵分解プロセスが酸素依存的であり、好気性菌が本発酵分解反応に寄与していることを証明するものである。
【0039】
堆肥床形成から7日後、図5(b)の時点で、上記サンプルを木枠から出し切り返しを行った。今回の切り返しにおいては、サンプルを木枠に戻さずそのまま放置し、経過を観察した。
【0040】
木枠から出されたサンプルは速やかな温度上昇を続け、やがて50℃付近で一定となった。堆肥床を最初に形成した後の温度上昇の傾斜(図5(a)の時点の近辺)と、図5(b)の時点における、切り返し及び木枠から取り出した後の温度上昇の傾斜が異なる点も、本発酵分解反応が好気性菌の酸素依存性に起因していることを裏付ける証拠である。
【0041】
図6は、第2実施例−2における堆肥床の外見的形態変化の写真である。本実施例においても、略茶色の乾燥鶏糞が、発酵分解が進行するにつれ、堆肥床表面が菌糸により白っぽく変色したのが確認できる。
【0042】
<第3実施例−1:混合堆肥発酵試験>
次に、牛糞、鶏糞を混合し同時に発酵分解反応を行う試験を行った。各添加物の添加方法の違いによって、サンプルを2つに分けて試験を行った。
【0043】
サンプル65:個別吸着後混合発酵
牛糞にはグリセリンを、鶏糞には天ぷら油、ケイ酸化合物(本実施例においては、ケイ酸ナトリウム)を個別に添加後、牛糞、鶏糞を混合し発酵分解反応を行う。
【0044】
サンプル66:混合堆肥一括添加発酵
牛糞及び鶏糞を予め混合後に、グリセリン、天ぷら油及びケイ酸化合物(本実施例においては、ケイ酸ナトリウム)を添加して発酵分解反応を行う。
【0045】
下記表3にそれぞれの添加物の組成を示す。
【0046】
【表3】
【0047】
図7の上段に、個別吸着後混合発酵、同じく図7の下段に、混合堆肥一括添加発酵の試験結果を示す。両添加方法とも、堆肥床形成後、一両日中に堆肥床温度が60℃程度まで達している。その後は、切り返しを繰り返す毎に、堆肥床の温度は徐徐に低下していき、両試験とも最初の堆肥床形成から8日程度で、略反応は終了している。また、鶏糞が混ざったとしてもその発酵温度は牛糞単独にグリセリンを添加した場合と略同じ発酵温度まで高めることができ、発酵分解反応も促進されていると思われる。
【0048】
また、図8は、第3実施例−1における堆肥床の外見的形態変化の写真である。両添加方法とも、堆肥床の外見的形態に差異はなく、発酵分解反応が進行しているのが確認できる。よって、牛糞あるいは鶏糞にそれぞれ個別に添加剤を添加しなくとも、牛糞、鶏糞をまとめて処理することが可能であることが示された。
【0049】
<第3実施例−2:三種混合堆肥発酵試験>
次に、牛糞及び鶏糞に菜種油カスを加えて発酵分解試験を行った。菜種油カスは、ここでは、分解対象物及び発酵分解菌への餌としての2面性を有している。
【0050】
下記表4にそれぞれの添加物の組成を示す。
【0051】
【表4】
【0052】
なお、サンプルNo.55及び56は、それぞれ鶏糞と菜種油カスの量比のみが異なるサンプルであり、鶏糞の発酵分解に有効である天ぷら油及びメタケイ酸等のケイ酸化合物は含まれていない。
【0053】
一方、サンプルNo。57は、サンプルNo.55及び56と比較して菜種油カスの量が少ない代わりに天ぷら油及びメタケイ酸が添加されている組成となっている。
【0054】
図9及び図10は、本試験の結果を示したものである。サンプルNo.55、56及び57とも堆肥床形成後に速やかな堆肥床の温度上昇が見受けられる。特に、サンプルNo.57においては、その堆肥床温度は70℃付近にまで達している。
【0055】
このサンプルNo.57の高い堆肥床温度は、天ぷら油及びメタケイ酸の添加によって生じる鶏糞の発酵分解による相乗効果であると考えられる。
【0056】
一方、サンプルNo.55と56とを比較して、菜種油の量が多いサンプルであるサンプルNo,56の方が、若干堆肥温度が低い。よって、菜種油の添加は、堆肥温度の低下をもたらすと考えられる。
【0057】
したがって、サンプルNo.57の堆肥床温度の高さは、上述した天ぷら油及びメタケイ酸の添加の相乗効果に加えて、菜種油カスの添加量が少ないこともその原因の1つであろう。
【0058】
図10は、第3実施例−2における堆肥床の外見的形態変化の写真である。3サンプルとも概ね外見的形態に差異はなく、また菌糸が堆肥床全体に満遍なくはびこる様子から発酵分解反応が効率的に進行していることがわかる。
【0059】
<第3実施例−3:異なる鶏糞の混合堆肥発酵試験>
次に、異なる市販の鶏糞を用いて三種混合堆肥発酵試験を行い、鶏糞の違いによる発酵分解反応の影響を試験した。
【0060】
下記表5にそれぞれの添加物の組成を示す。
【0061】
【表5】
【0062】
図11はそれぞれ同量の市販の鶏糞を用い、三種混合堆肥発酵試験を行った結果である。
【0063】
試験の結果、異なる市販の鶏糞を用いても発酵分解反応は略同等に進行することが明らかとなった。この結果は、本堆肥化促進方法が汎用性に優れ、かつ、本堆肥化促進方法が再現性を有する堆肥化方法であることを示している。
【0064】
図12は、第3実施例−3における堆肥床の外見的形態変化の写真である。2サンプルとも概ね外見的形態に差異はなく、また菌糸が堆肥床全体に満遍なくはびこる様子から発酵分解反応が効率的に進行していることがわかる。
【0065】
本件発明によれば、牛糞や鶏糞等の有機廃棄物の堆肥化を効果的に、かつ、効率的に行うことができる。特に、通常数ヶ月を要する発酵分解菌による発酵工程を飛躍的に短縮することができ、短時間で有機廃棄物を堆肥化することが可能である。また、牛糞、鶏糞等を混合して一度に処理することができるため、作業コストの低減、あるいは堆肥化プロセスの単純化などの多くの利点がある。
【0066】
なお、上述した各実施形態は、本発明の好適な実施形態であるが、本発明はこれに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、各構成は、適宜変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】牛糞単独発酵試験における堆肥床の温度変化を示すグラフである。
【図2】牛糞単独発酵試験における堆肥床の外見的形態変化の写真である。
【図3】牛糞単独発酵試験における堆肥床の温度変化を示すグラフである。
【図4】鶏糞単独発酵試験における堆肥床の温度変化を示すグラフである。
【図5】鶏糞単独木枠発酵試験における堆肥床の温度変化を示すグラフである。
【図6】鶏糞単独木枠発酵試験における堆肥床の外見的形態変化の写真である。
【図7】混合堆肥発酵試験における堆肥床の温度変化を示すグラフである。
【図8】混合堆肥発酵試験における堆肥床の外見的形態変化の写真である。
【図9】三種混合堆肥発酵試験における堆肥床の温度変化を示すグラフである。
【図10】三種混合堆肥発酵試験における堆肥床の外見的形態変化の写真である。
【図11】異なる鶏糞の混合堆肥発酵試験における堆肥床の温度変化を示すグラフである。
【図12】異なる鶏糞の混合堆肥発酵試験における堆肥床の外見的形態変化の写真である。
【技術分野】
【0001】
本件発明は、有機廃棄物の堆肥化を促進する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
これまでに牛糞、鶏糞に代表される有機廃棄物を発酵分解し、分解産物を堆肥として農地等に還元する研究開発が行われてきた。このような有機廃棄物の堆肥化技術において、有機廃棄物の発酵分解の役割を担うのが発酵分解菌と称されるようなバクテリアと呼ばれるものである。
【0003】
従来技術における有機廃棄物の堆肥化を促進させる方法とは、上記バクテリアによる有機廃棄物の分解反応を促進させる技術あるいはバクテリアによる分解反応の場の最適化を指す場合が多い。
【0004】
バクテリアによる有機廃棄物の分解反応を促進させる技術として、例えば特許文献1に記載されているような、ケイ酸水溶液とキトサンを有効成分とする有機物の消臭・分解促進剤などが開示されている。
【特許文献1】特開2006−122731号公報
【0005】
一方、バクテリアによる分解反応の場の最適化を意図した発明として、鹸化度が、90モル以上あり、かつ粒径が2〜20メッシュのポリビニルアルコール共重合体からなる家畜排泄物用処理剤等が開示されている。
【特許文献2】特開2006−110537号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本願発明者らは、牛糞、鶏糞等の有機廃棄物の堆肥化を促進させる方法について、鋭意検討を進め、有機廃棄物に3価アルコールあるいは油脂を添加することにより、上記バクテリアの増殖を促し有機廃棄物の堆肥化が著しく促進されることを見出した。
【0007】
本件発明はこの知見に基づき、短期間で有機廃棄物を効率良く、かつ、効果的に堆肥化させる方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる課題を解決するための本件発明の構成は、
1) 有機廃棄物の堆肥化を促進させる方法であって、三価のアルコールを有機廃棄物に添加する第1の工程と、発酵分解菌により有機廃棄物を発酵分解する第2の工程と、発酵が進行した有機廃棄物を切り返す第3の工程と、を有する有機廃棄物の堆肥化促進方法
2) 前記三価のアルコールは、グリセリンを含むことを特徴とする上記1)に記載の有機廃棄物の堆肥化促進方法
3) 有機廃棄物の堆肥化を促進させる方法であって、油脂及びケイ酸を前記有機廃棄物に添加する第1の工程と、発酵分解菌により有機廃棄物を発酵分解する第2の工程と、発酵が進行した前記有機廃棄物を切り返す第3の工程と、を有する有機廃棄物の堆肥化促進方法
4) 前記油脂は、動物性油あるいは植物性油から選択されることを特徴とする上記3)に記載の有機廃棄物の堆肥化促進法
5) 有機廃棄物を堆肥化させる方法であって、三価のアルコール、油脂及びケイ酸化合物を有機廃棄物に添加する第1の工程と、発酵分解菌により有機廃棄物を発酵分解する第2の工程と、発酵が進行した有機廃棄物を切り返す第3の工程と、を有する有機廃棄物の堆肥化促進方法
6) 有機廃棄物は、牛糞を含むことを特徴とする上記1)、2)及び5)に記載の有機廃棄物の堆肥化促進方法
7) 有機廃棄物は、鶏糞を含むことを特徴とする上記3)、4)及び5)に記載の有機廃棄物の堆肥化促進方法
である。
【0009】
なお、ここで言う「切り返す」とは、ピラミッド形状に積み上げた有機廃棄物を発酵分解工程の進捗に伴い、ひっくり返すことで有機廃棄物全体が外気と接触できるようにすることである。
【発明の効果】
【0010】
本件発明によれば、牛糞、鶏糞等の有機廃棄物に三価のアルコールあるいは油脂を添加することで、バクテリアの活動が活発化し、有機廃棄物の堆肥化が飛躍的に促進される。よって、短期間で大量の堆肥を供給することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本件発明の特徴は、有機廃棄物に添加する三価アルコール及び油脂を廃材から得ている点である。特に後述するグリセリンにおいては、バイオディーゼルを製造した後に発生する廃グリセリンを用いている。よって、コスト面を低く抑えることができ、比較的安価に堆肥を供給することが可能となっている。
【0012】
油脂においては、新油あるいは廃油どちらでも使用することができる。また、工業用油脂でなくとも、実施例で示すように、家庭等から排出される天ぷら油等の食用油脂を用いてもよい。
【0013】
また、本発明で使用される発酵分解菌は、有害物質を外部には排出せず、本件発明における発酵分解プロセスにおいて活性を有していれば、特に限定はしない。一般的には、自然界に存在する放線菌や糸状菌などの土壌に多く存在する菌類や、大気中に飛散している枯草菌等の好気性の菌類、分解対象物である牛糞、鶏糞等に含まれる嫌気性の乳酸菌等などの菌類が挙げられる。
【0014】
以下に本件発明の発酵分解反応プロセスの一例を示す。
【0015】
(1)1次工程
牛糞あるいは鶏糞に対して、それぞれ重量比で5%程度のグリセリンあるいは天ぷら油を添加後、攪拌しピラミッド形状の堆肥床を形成する。
【0016】
(2)2次工程
堆肥床を形成して、一両日中に堆肥床の温度が約60℃程度まで上昇する。しばらくの間、高温状態が持続し、やがて堆肥床の温度が低下する。
【0017】
(3)3次工程
発酵分解プロセスにおいて、適宜堆肥床の切り返しを行い、再びピラミッド形状の堆肥床を形成する。切り返し直後に、堆肥床の温度が再び上昇する。
【0018】
やがて切り返しを行っても堆肥床の温度が、著しく上昇しなくなるまで上記(1)〜(3)までの工程を繰り返して行う。なお、実施例で使用した牛糞あるいは鶏糞の重量(おおよそ10kg〜20kg程度)においては、10日前後で発酵分解反応は略終了した。
【0019】
<第1実施例−1:牛糞単独発酵試験>
牛糞11.62kgに対して、廃グリセリン(33%希釈物)1.74kg(牛糞に対する重量比4.9%)を添加後、攪拌しピラミッド形状の堆肥床を形成した。
【0020】
堆肥床形成直後の温度は25.6℃であった。やがて図1に示すように堆肥床形成後21時間後には、堆肥床の温度は60℃まで達した。ここで、切り返しの効果を確認するために、さらに4時間後、つまり堆肥床形成後25時間程度経過に切り返しを行った(図1(a))。
【0021】
切り返しを行った結果、堆肥床温度は、33.4℃まで低下した。しかしながら、切り返しを行ってから5時間後には、堆肥床の温度は58℃まで上昇した。その後、1日放置しても堆肥床は55℃程度の温度を保持していた。図1(b)の時間で、第2回目の切り返しを行った。
【0022】
その後、図1中、(c)、(d)、(e)の時点で、順次切り返しを行い、最終的には、最初に堆肥床を形成した日から8日目において堆肥温度は30℃程度に安定し、発酵分解反応は略終了したものと判断した。
【0023】
図2は、第1実施例−1における堆肥床の外見的形態変化の写真である。堆肥床形成開始から4日後には、発酵分解菌の菌糸が堆肥床表面において確認できるまで発酵分解菌の増殖が起こっていることが確認できる(図2(a)4日目)。一方、図2(b)は、上記牛糞に籾殻を添加したものであるが、図2(a)と同様に、発酵分解菌由来の菌糸の形成が見受けられた。
【0024】
<第1実施例−2:牛糞単独発酵試験>
下記表1に記載する組成に基づいて、第1実施例―1と同様の試験を行った。
【0025】
【表1】
【0026】
図3は、牛糞14kgに対して、廃グリセリン2.1kgを添加後、攪拌しピラミッド形状の堆肥床を形成したサンプル(No.14)と、同じく牛糞14kgに対して、天ぷら油0.5kg、メタケイ酸ソーダ9水溶液1.6kgを添加後、攪拌しピラミッド形状の堆肥床を形成したサンプル(No.16)とを比較したものである。
【0027】
図3に示されているように、第1実施例―1と同様に牛糞に対して廃グリセリンを添加したサンプルは、堆肥床を形成して次の日には堆肥床の温度は65℃程度まで上昇した。その後、切り返しを繰り返して行い、12日程度で、発酵分解反応は略終了した。
【0028】
一方、No.16のサンプルにおいては、無処理サンプル(No.22)と比較して、若干の堆肥床の温度上昇は認められたが、グリセリンを添加した際に見受けられた急激な堆肥床の温度上昇は見受けられなかった。よって、牛糞に対する発酵分解反応において、油脂とケイ酸化合物との組み合わせは、後述する鶏糞の事例と比較して効果を奏さないことが示された。
【0029】
<第2実施例−1:鶏糞単独発酵試験>
次に、鶏糞に対して、第1実施例−2:牛糞単独発酵試験と同様な試験を行った。添加物の各組成は以下の表2に記載した通りである。
【0030】
【表2】
【0031】
今回の試験は、発酵分解反応における鶏糞に対してグリセリンと天ぷら油、メタケイ酸ソーダ9水塩の組み合わせの効果を検討したものであり、図4にその結果を示す。
【0032】
図4は、鶏糞14kgに対して、廃グリセリン2.1kgを添加後、攪拌しピラミッド形状の堆肥床を形成したサンプル(No.15)と、同じく鶏糞14kgに対して、天ぷら油0.5kg、メタケイ酸ソーダ9水溶液1.6kgを添加後、攪拌しピラミッド形状の堆肥床を形成したサンプル(No.17)とを比較したものである。
【0033】
図4に示されているように、第1実施例:牛糞単独発酵試験2の結果とは対照的に、鶏糞に対して廃グリセリンを添加したサンプルは、若干の堆肥床の温度上昇は認められたものの、牛糞にグリセリンを添加した際と比較して劇的な堆肥床の温度上昇は観察されなかった。よって、鶏糞に対する発酵分解反応において、グリセリンは、その効果を奏さないことが示された。
【0034】
一方、鶏糞に対して、天ぷら油0.5kg、メタケイ酸ソーダ9水溶液1.6kgを添加したサンプル(No.17)は、図4に示されているように、堆肥床の温度が60℃付近まで上昇した。牛糞におけるグリセリン添加時の発酵分解反応の到達温度よりは幾分か低いものの、その後、切り返しを繰り返すことで、堆肥床は温度上昇・下降を繰り返し、やがて13日程度で発酵分解反応は略終了した。
【0035】
<第2実施例−2:鶏糞単独木枠発酵試験>
次に、木枠(72cmx69cmx24cm:体積 120cm3)内で、鶏糞の発酵分解試験を行った。通常の発酵分解試験は、ピラミッド形状の堆肥床を作成し、試験を行う。今回は、木枠内で鶏糞の発酵分解試験を行うことにより、発酵分解反応における鶏糞の外気接触面、つまり発酵分解菌の酸素依存性の検討を行った。
【0036】
図5は、鶏糞65.87kgに対して、天ぷら油3.99kg、メタケイ酸ソーダ9水溶液10.88kgを添加後、攪拌し上記サンプルを木枠に入れて発酵分解試験を行った結果を示している。
【0037】
図5でも、明らかのように、木枠内で発酵分解反応を試験した場合には、第2実施例―1と比較して、堆肥床の温度上昇の立ち上がりが悪いことが分かる。通常のピラミッド形状においては、堆肥床を形成して一両日中には、堆肥床の温度が55℃程度まで上昇するのに対して、鶏糞使用量の違いはあるが、木枠内で試験を行った場合、1日経過しても数℃程度しか堆肥床の温度は上昇していない。
【0038】
しかしながら、図5(a)の時点で、切り返しを行うと、速やかな堆肥床の温度上昇が観察された。この結果は、本発酵分解プロセスが酸素依存的であり、好気性菌が本発酵分解反応に寄与していることを証明するものである。
【0039】
堆肥床形成から7日後、図5(b)の時点で、上記サンプルを木枠から出し切り返しを行った。今回の切り返しにおいては、サンプルを木枠に戻さずそのまま放置し、経過を観察した。
【0040】
木枠から出されたサンプルは速やかな温度上昇を続け、やがて50℃付近で一定となった。堆肥床を最初に形成した後の温度上昇の傾斜(図5(a)の時点の近辺)と、図5(b)の時点における、切り返し及び木枠から取り出した後の温度上昇の傾斜が異なる点も、本発酵分解反応が好気性菌の酸素依存性に起因していることを裏付ける証拠である。
【0041】
図6は、第2実施例−2における堆肥床の外見的形態変化の写真である。本実施例においても、略茶色の乾燥鶏糞が、発酵分解が進行するにつれ、堆肥床表面が菌糸により白っぽく変色したのが確認できる。
【0042】
<第3実施例−1:混合堆肥発酵試験>
次に、牛糞、鶏糞を混合し同時に発酵分解反応を行う試験を行った。各添加物の添加方法の違いによって、サンプルを2つに分けて試験を行った。
【0043】
サンプル65:個別吸着後混合発酵
牛糞にはグリセリンを、鶏糞には天ぷら油、ケイ酸化合物(本実施例においては、ケイ酸ナトリウム)を個別に添加後、牛糞、鶏糞を混合し発酵分解反応を行う。
【0044】
サンプル66:混合堆肥一括添加発酵
牛糞及び鶏糞を予め混合後に、グリセリン、天ぷら油及びケイ酸化合物(本実施例においては、ケイ酸ナトリウム)を添加して発酵分解反応を行う。
【0045】
下記表3にそれぞれの添加物の組成を示す。
【0046】
【表3】
【0047】
図7の上段に、個別吸着後混合発酵、同じく図7の下段に、混合堆肥一括添加発酵の試験結果を示す。両添加方法とも、堆肥床形成後、一両日中に堆肥床温度が60℃程度まで達している。その後は、切り返しを繰り返す毎に、堆肥床の温度は徐徐に低下していき、両試験とも最初の堆肥床形成から8日程度で、略反応は終了している。また、鶏糞が混ざったとしてもその発酵温度は牛糞単独にグリセリンを添加した場合と略同じ発酵温度まで高めることができ、発酵分解反応も促進されていると思われる。
【0048】
また、図8は、第3実施例−1における堆肥床の外見的形態変化の写真である。両添加方法とも、堆肥床の外見的形態に差異はなく、発酵分解反応が進行しているのが確認できる。よって、牛糞あるいは鶏糞にそれぞれ個別に添加剤を添加しなくとも、牛糞、鶏糞をまとめて処理することが可能であることが示された。
【0049】
<第3実施例−2:三種混合堆肥発酵試験>
次に、牛糞及び鶏糞に菜種油カスを加えて発酵分解試験を行った。菜種油カスは、ここでは、分解対象物及び発酵分解菌への餌としての2面性を有している。
【0050】
下記表4にそれぞれの添加物の組成を示す。
【0051】
【表4】
【0052】
なお、サンプルNo.55及び56は、それぞれ鶏糞と菜種油カスの量比のみが異なるサンプルであり、鶏糞の発酵分解に有効である天ぷら油及びメタケイ酸等のケイ酸化合物は含まれていない。
【0053】
一方、サンプルNo。57は、サンプルNo.55及び56と比較して菜種油カスの量が少ない代わりに天ぷら油及びメタケイ酸が添加されている組成となっている。
【0054】
図9及び図10は、本試験の結果を示したものである。サンプルNo.55、56及び57とも堆肥床形成後に速やかな堆肥床の温度上昇が見受けられる。特に、サンプルNo.57においては、その堆肥床温度は70℃付近にまで達している。
【0055】
このサンプルNo.57の高い堆肥床温度は、天ぷら油及びメタケイ酸の添加によって生じる鶏糞の発酵分解による相乗効果であると考えられる。
【0056】
一方、サンプルNo.55と56とを比較して、菜種油の量が多いサンプルであるサンプルNo,56の方が、若干堆肥温度が低い。よって、菜種油の添加は、堆肥温度の低下をもたらすと考えられる。
【0057】
したがって、サンプルNo.57の堆肥床温度の高さは、上述した天ぷら油及びメタケイ酸の添加の相乗効果に加えて、菜種油カスの添加量が少ないこともその原因の1つであろう。
【0058】
図10は、第3実施例−2における堆肥床の外見的形態変化の写真である。3サンプルとも概ね外見的形態に差異はなく、また菌糸が堆肥床全体に満遍なくはびこる様子から発酵分解反応が効率的に進行していることがわかる。
【0059】
<第3実施例−3:異なる鶏糞の混合堆肥発酵試験>
次に、異なる市販の鶏糞を用いて三種混合堆肥発酵試験を行い、鶏糞の違いによる発酵分解反応の影響を試験した。
【0060】
下記表5にそれぞれの添加物の組成を示す。
【0061】
【表5】
【0062】
図11はそれぞれ同量の市販の鶏糞を用い、三種混合堆肥発酵試験を行った結果である。
【0063】
試験の結果、異なる市販の鶏糞を用いても発酵分解反応は略同等に進行することが明らかとなった。この結果は、本堆肥化促進方法が汎用性に優れ、かつ、本堆肥化促進方法が再現性を有する堆肥化方法であることを示している。
【0064】
図12は、第3実施例−3における堆肥床の外見的形態変化の写真である。2サンプルとも概ね外見的形態に差異はなく、また菌糸が堆肥床全体に満遍なくはびこる様子から発酵分解反応が効率的に進行していることがわかる。
【0065】
本件発明によれば、牛糞や鶏糞等の有機廃棄物の堆肥化を効果的に、かつ、効率的に行うことができる。特に、通常数ヶ月を要する発酵分解菌による発酵工程を飛躍的に短縮することができ、短時間で有機廃棄物を堆肥化することが可能である。また、牛糞、鶏糞等を混合して一度に処理することができるため、作業コストの低減、あるいは堆肥化プロセスの単純化などの多くの利点がある。
【0066】
なお、上述した各実施形態は、本発明の好適な実施形態であるが、本発明はこれに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、各構成は、適宜変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】牛糞単独発酵試験における堆肥床の温度変化を示すグラフである。
【図2】牛糞単独発酵試験における堆肥床の外見的形態変化の写真である。
【図3】牛糞単独発酵試験における堆肥床の温度変化を示すグラフである。
【図4】鶏糞単独発酵試験における堆肥床の温度変化を示すグラフである。
【図5】鶏糞単独木枠発酵試験における堆肥床の温度変化を示すグラフである。
【図6】鶏糞単独木枠発酵試験における堆肥床の外見的形態変化の写真である。
【図7】混合堆肥発酵試験における堆肥床の温度変化を示すグラフである。
【図8】混合堆肥発酵試験における堆肥床の外見的形態変化の写真である。
【図9】三種混合堆肥発酵試験における堆肥床の温度変化を示すグラフである。
【図10】三種混合堆肥発酵試験における堆肥床の外見的形態変化の写真である。
【図11】異なる鶏糞の混合堆肥発酵試験における堆肥床の温度変化を示すグラフである。
【図12】異なる鶏糞の混合堆肥発酵試験における堆肥床の外見的形態変化の写真である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機廃棄物の堆肥化を促進させる方法であって、
三価のアルコールを前記有機廃棄物に添加する第1の工程と、
発酵分解菌により前記有機廃棄物を発酵分解する第2の工程と、
発酵が進行した前記有機廃棄物を切り返す第3の工程と、を有する
有機廃棄物の堆肥化促進方法。
【請求項2】
前記三価のアルコールは、グリセリンを含むことを特徴とする請求項
1に記載の有機廃棄物の堆肥化促進方法。
【請求項3】
有機廃棄物の堆肥化を促進させる方法であって、
油脂及びケイ酸を前記有機廃棄物に添加する第1の工程と、
前記発酵分解菌により前記有機廃棄物を発酵分解する第2の工程と、
発酵が進行した前記有機廃棄物を切り返す第3の工程と、を有する
有機廃棄物の堆肥化促進方法。
【請求項4】
前記油脂は、動物性油あるいは植物性油から選択されることを特徴とする請求項3に記載の有機廃棄物の堆肥化促進法。
【請求項5】
有機廃棄物の堆肥化を促進させる方法であって、
前記三価のアルコール、前記油脂及び前記ケイ酸化合物を前記有機廃棄物に添加する第1の工程と、
発酵分解菌により前記有機廃棄物を発酵分解する第2の工程と、
発酵が進行した前記有機廃棄物を切り返す第3の工程と、を有する
有機廃棄物の堆肥化促進方法。
【請求項6】
前記有機廃棄物は、牛糞を含むことを特徴とする請求項1、2及び5に記載の有機廃棄物の堆肥化促進方法。
【請求項7】
前記有機廃棄物は、鶏糞を含むことを特徴とする請求項3、4及び5に記載の有機廃棄物の堆肥化促進方法。
【請求項1】
有機廃棄物の堆肥化を促進させる方法であって、
三価のアルコールを前記有機廃棄物に添加する第1の工程と、
発酵分解菌により前記有機廃棄物を発酵分解する第2の工程と、
発酵が進行した前記有機廃棄物を切り返す第3の工程と、を有する
有機廃棄物の堆肥化促進方法。
【請求項2】
前記三価のアルコールは、グリセリンを含むことを特徴とする請求項
1に記載の有機廃棄物の堆肥化促進方法。
【請求項3】
有機廃棄物の堆肥化を促進させる方法であって、
油脂及びケイ酸を前記有機廃棄物に添加する第1の工程と、
前記発酵分解菌により前記有機廃棄物を発酵分解する第2の工程と、
発酵が進行した前記有機廃棄物を切り返す第3の工程と、を有する
有機廃棄物の堆肥化促進方法。
【請求項4】
前記油脂は、動物性油あるいは植物性油から選択されることを特徴とする請求項3に記載の有機廃棄物の堆肥化促進法。
【請求項5】
有機廃棄物の堆肥化を促進させる方法であって、
前記三価のアルコール、前記油脂及び前記ケイ酸化合物を前記有機廃棄物に添加する第1の工程と、
発酵分解菌により前記有機廃棄物を発酵分解する第2の工程と、
発酵が進行した前記有機廃棄物を切り返す第3の工程と、を有する
有機廃棄物の堆肥化促進方法。
【請求項6】
前記有機廃棄物は、牛糞を含むことを特徴とする請求項1、2及び5に記載の有機廃棄物の堆肥化促進方法。
【請求項7】
前記有機廃棄物は、鶏糞を含むことを特徴とする請求項3、4及び5に記載の有機廃棄物の堆肥化促進方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2008−143750(P2008−143750A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−334044(P2006−334044)
【出願日】平成18年12月12日(2006.12.12)
【出願人】(506412192)
【出願人】(506411896)
【出願人】(506412181)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年12月12日(2006.12.12)
【出願人】(506412192)
【出願人】(506411896)
【出願人】(506412181)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]