説明

有機廃棄物処理装置

【課題】発酵方式有機廃棄物処理装置においても、有機廃棄物処理が繰り返し行われるにつれて処理残渣が積算してくる。その結果嵩が増えてくることと、有機廃棄物処理材の組成比率が変化し発酵性能が低下することが問題である。
【解決手段】処理残渣の主体は処理材が処理しきれなかった無機物や細かくなったリグニン等の粉体である。処理室の横面に篩を設け、この篩を介してこれらの粉体だけを適宜排出する。機械的な篩と風力による篩を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発酵方式有機廃棄物処理装置では微生物と微生物担持体を主たる構成要素とする有機廃棄物処理材が使われているが、この有機廃棄物処理材の発酵性能は処理装置の機能を左右する最重要な管理項目である。有機廃棄物処理が繰り返し行われるにつれて、次第に処理残渣が積算してきて嵩が増えてくる。同時にこの積算残渣により有機廃棄物処理材の組成比率が変化し、発酵性能が低下することも問題である。本発明は、これらの問題に対処するための処理装置の工夫に関するものである。
【背景技術】
【0002】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許公開平06−304542
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】日立生ゴミ処理機BGD−V18使用説明書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
レストランや給食などの業務では、毎日大量の生ゴミを中心とする有機物が発生し、処理業者にその都度引き取ってもらっている。家庭においても、生ゴミを分別し数日に一度は集積所に出し、自治体の収集車に回収を委ねている。日本での生ゴミ系有機物の総排出量は年間2,500万トン、家庭からだけでも年間1,000万トンを超えると言われている。そして回収されたこれらの有機物は、通常は埋め立て処分されるか焼却される。最近は新規な埋め立て地が激減しており、焼却の比重が高まっている。ここに膨大な回収と焼却のエネルギーが使われ、関連活動を含め大量の二酸化炭素を発生させている。この社会的大問題に対処するために、生ゴミに限らず農業・酪農・製造業における種々の不用有機物の発生原点において、有機廃棄物量を大幅に減量しようと企図するのが、業務用及び家庭用有機廃棄物処理装置である。
【0006】
一般的な有機廃棄物処理方法は大別すると2種類ある。有機物を加熱し撹拌し減量する「加熱乾燥方式」と、有機物に微生物を混ぜ合わせ有機物を発酵させ分解させて減量する「発酵方式」とである。「加熱乾燥方式」は処理過程での臭気発生が少ないので屋内での使用が可能であるが、「発酵方式」に比べると加熱エネルギーを多く必要とする欠点がある。一方「発酵方式」は「加熱乾燥方式」に比し処理エネルギーが少なく、ほとんど消滅させるほど減量度合いも大であるものの、処理時間が数倍長くかつ処理過程で臭気が発生し、屋内での使用には高能率の脱臭装置が不可欠である。
【0007】
両方式とも処理の進行により処理室内の内容物の嵩は次第に増加してくる。内容物は、加熱乾燥方式では乾燥した有機物であり、仮に毎回最大許容容量を投入し続けると10〜15回で最大許容容量と同量となる。そこで脱着自在の処理室を取り出して、内容物である乾燥した有機物を廃棄したりコンポストとして利用したりすることになっている。
【0008】
発酵方式における処理室の内容物は、微生物と微生物担持体を主たる構成要素とする有機廃棄物処理材と、発酵残渣である。この発酵残渣は加熱乾燥方式の乾燥物に比べれば、その量ははるかに少ないがゼロではない。仮に毎回最大許容容量を投入し続けると30〜40回で最大許容容量と同量の増加分となることに多々遭遇する。これまでの市販機で良く見られる対応策は、特許文献1に見られるように処理室の端部から処理物が順次オーバーフローする機構とし、オーバーフローする処理物を回収するストッカーを配設し、所定量回収した後はストッカーを外部に取り出す構成である。
【0009】
発酵方式では上記のように残渣物の発生量が加熱乾燥方式より少なく、処理室が満杯になって何らかのメンテナンスをせねばならなくなる間隔がはるかに長いという長所を有している。加えて本来処理エネルギーが加熱乾燥方式より少ない長所も併せ持っていて、本来ならばこちらのほうが環境保護の観点からは望ましい方式であるが、必ずしも普及しているとは言えない。理由のひとつは、処理装置の蓋を開けた時発酵特有の臭気が強く感じられ、特に室内での使用が嫌われるためである。臭気問題は別途解決するとしても、さらに上記の内容物の嵩増加に伴う特有の問題点も普及を阻む原因の一つである。これは必ずしも適切に対処されてこなかった。
【0010】
発酵方式における残渣物の内容は、卵の殻・骨・甲殻類の殻など由来の無機物と、野菜の筋などに含まれるリグニン等であり、これらが粉末状になって積算されていくのである。ここで肝心の分解微生物の量は、これらの粉末にも付着し増殖と死滅を繰り返すので問題はない。また全体の嵩が増大することにも、公知技術である例えば特許文献1のような手段で対処できる。しかしこの粉末状残渣の増加により、処理材の構成比率が変化するのは問題であり、過去必ずしも適切対処されていないように見える。すなわち、処理材の主たる構成物は微生物と微生物担持体と若干の培養のための有機物粉体と水分であるが、形状的には粒状の微生物担持体が支配的である。そして処理中も粒状物質的な挙動を示し、これが処理には適しているのである。具体的には、粒状物質比率が高ければ▲1▼投入有機物とよく混ざる、▲2▼水分が発生しても比較的粘度が上がらずそぼろ状になるだけであり、水分の蒸散を助け発酵環境の低下も起こしにくい。しかし粉体の比率が増えてくると、有機物からの水分や発酵に伴い発生する水分により、この粉体が糊のような作用を持つのである。このため、粘度が上昇し団子状になったり、さらには餅状になったりしてしまう。こうなると発生水分の蒸散は阻害され、発酵に必要な空気との接触も断たれ、発酵環境の低下が起こる。
【0011】
現在市販されている発酵方式有機廃棄物処理装置には、非特許文献1に見られるように、「処理室が一杯になったら側面の窓を開きバケツを置き、取出モードに切り替えて排出してください。」あるいは「処理材がべとついてくることがあります。そのようなときは処理材を交換してください。」と言うように、使用者に手動でのメンテナンスを委ねている。このように、処理材の構成比率が変化することへの対応は未だ適切には採られていない。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するための第1の解決手段は、処理室と処理室に設けられた撹拌装置と微生物及び微生物担持体を含む有機廃棄物処理材とを主要構成要素とする有機廃棄物処理装置において、さらに処理室の側面に粉体の篩を設けること、該篩から篩落とされる粉体を一時貯蔵する出し入れ自在のストッカーを有すること、そして装置運転開始後あらかじめ決められた所定の時間経過後篩処理を行うことを特徴とする有機廃棄物処理装置である。
【0013】
第2の解決手段は、第1の解決手段において、上記篩を撹拌により動き回る処理材に接する処理室側面に設けること及び篩にシャッターを設け該シャッターを開くことにより篩処理を行うことを特徴とする解決手段1記載の有機廃棄物処理装置である。
【0014】
第3の解決手段は、第1の解決手段において、上記篩を処理材が接しない処理室の高位置側面に設けること及び篩と反対側の側面に送風装置を設けることを特徴とする解決手段1記載の有機廃棄物処理装置である。
【0015】
第4の解決手段は、解決手段1〜3においてさらに、ストッカーに排出された粉体の満杯時期を検知し、使用者にストッカーからの粉体の取り出しを促すメッセージを発する手段を具備していることを特徴とする有機廃棄物処理装置である。
【発明の効果】
【0016】
従来の代表的な発酵式生ゴミ処理機においては、1〜2月間の使用で残渣物が積算して倍増状態になる。そこでオーバーフロー処置を使用者が手動で行い、引き続き使っていく。具体的には、取り出し窓を開ける。窓の下にバケツを置く。取り出しモードボタンを押す。処理材と残渣物の混合物が排出される。排出が終了したら再度使用を始める。これを2〜3回繰り返していくうちに(都合3〜4月)処理材中の水分の蒸散が悪くなりべとついてくる。さらには団子状や餅状になり、発酵は進まなくなる。この状態に気付いた使用者は、仕様書に従い、処理材と積算残渣を取り出し新規な処理材を投入し、使い続けることとなる。気付かなくて使い続けると処理が進まず、メーカーに問い合わせを行い、前記の交換処置を指示される。あるいは負荷が増大し故障することもある。これらのことはほとんどの使用書に注意書きとして掲載されている。他の方法ではひたすら使い続け、2〜3月で一杯になったら処理室を取り出し、中身丸ごと新規な処理材と取り換える。
【0017】
本発明においては処理室の低側面に粉体の篩および篩シャッターが設けてあり、装置運転開始後あらかじめ決められている所定の時間経過後篩シャッターを開き、篩処理を行うことによって、毎回処理によって発生した粉体状の処理残渣を篩落とすのであるから、処理材中に残渣の粉体が蓄積されることが無い。このため、処理材中の微生物担持体である粒状物質の比率が常に維持され、スムーズな流動性が保たれる。その結果、常時適正発酵環境が維持され、使いこみによる発酵不良や、その対処としての手動による処理材の総入れ替えを行う必要がない。また、常時適正発酵環境が維持され、無理な運転状態は起こらず、故障が発生しにくい。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】:有機廃棄物処理装置 2:蓋 3:処理室 4:加熱装置 5:撹拌装置 6:有機廃棄物処理材 7:篩 8:シャッター 9:ストッカー
【図2】篩処置進行状況 8’:開いたシャッター 10:撹拌装置5に押されて移動する処理材の動き 11:ストッカー9に篩われ排出された粉体
【図3】20:風篩式有機廃棄物処理装置 21:篩 22:篩掃除具 23:送風処置
【図4】風篩処置進行状況 24:撹拌装置により掻き上げられた処理材 25:風により分離した粉体 26:篩われた粉体
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0019】
本発明の典型的な実施例を図1に示す。有機廃棄物処理装置は少なくとも蓋2、処理室3、加熱装置4、撹拌装置5、有機廃棄物処理材6を基本的な要素として構成されている。加熱装置4は本実施例ではマイクロ波加熱装置を用いている。処理室の低側面に篩7とシャッター8が設けられている。図2は装置運転開始後あらかじめ決められた所定の時間経過後、シャッター8を開いたところを8’で示している。撹拌装置5の動きにより押された処理材が矢印10で示すように篩7に押しつけられ、篩から粉体が篩落とされる。粉体は出し入れ自在のストッカー9に排出される。ストッカー9には例えばビニール袋などを内設しておき(図示されていない)、満杯になったらストッカー9を引き出し、そこから袋ごと排出された粉体を取り出す。
【0020】
篩処理を開始する所定の時間についての考え方を説明する。有機物が処理室に投入される。運転が始められる。処理材の主役である土壌菌などの微生物の種類によるが、処理時間を短くするには中温か高温で発酵する微生物が用いられる。このような場合は、発酵を促進するため運転が始まると最適な発酵温度まで加熱して微生物の発酵を助ける。この加熱と発酵の進展により有機物から水分が盛んに発生するが、一般的には蒸散が追いつかないため処理材が水っぽくなってくる。場合によればべとつくこともある。発酵がピークを過ぎ、水分の蒸散も進んでくると処理材はそぼろ状になり、ついでさらさらの状態に戻る。このタイミングでシャター8を開くのである。そして厳密である必要はないが数分間撹拌を続ければ処理材中の粉体が篩から排出されるのである。粉体の除去は1回の運転で2〜5%でよい。これは残渣の平均的な量に対応している。要は一切の排出が行われないと積算が進むので、この程度の増加分を排出するだけでよいのである。
【0021】
上記タイミングは運転開始からの時間で決めても良いし、撹拌のトルクから判定しても良い。あるいは処理材の水分量をモニターし、約30%程度になったときとしても良い。基本的にはタイミングも粉体排出量も厳密である必要はない。粉体量が増加すれば自然にその排出量も増えるからである。これらの具体的な手段はさまざまな機材で使われている一般的なものから選ぶことができる。
【0022】
篩の目の大きさ。これは処理材中の微生物担持体を通さないことが条件である。たとえば微生物担持体として3〜5mmのコーヒー豆粕を使っているなら、3mmのステンレスメッシュが適当である。
【実施例2】
【0023】
別の実施例有機廃棄物処理装置20を図3に示す。篩あるいはフィルター21を撹拌により動き回る処理材が接しない処理室の高位置側面に設けることが特徴である。この篩21と反対側の側面に送風装置23が設けてある。図4に送風による篩処置進行状況を示す。24は撹拌装置により掻き上げられた処理材である。これが撹拌部材から落下するところに送風装置23からの風が当たり、25で示すように比重の軽い粉体が微生物担持体から分離され吹き放たれる。これが篩あるいはフィルター21を通過しストッカーに向かって26の如く落下していく。篩21にはおうおうにして粉体25が詰まってしまう。実施例1では撹拌による処理材の動きにより、処理材6自体が篩7を撫でまわし、目詰まりを自動的に防いでくれるから良いのであるが、この実施例2の風分離/篩方式では篩掃除具22が必要である。一例としてこの実施例では篩21の裏側に孔のたくさんあいた薄い板状基板に植え付けた短いブラシを設けた。粉体分離・除去動作の前後のタイミングで短い往復運動をさせることで篩21の目詰まりを落とす。篩処理を開始するタイミングは前記実施例1と同じである。処理材が乾燥してさらさらしてきた時点である。
【産業上の利用可能性】
【0024】
以上主に家庭用生ゴミ処理機を用いて説明をした。そしてここで説明した装置構成は、小型の業務用生ゴミ処理機にはそのまま適用できるし、大型の業務用有機廃棄物処理機にも十分援用できるものである。要点は、発酵式有機廃棄物処理において、▲1▼残渣を積算させない、▲2▼なかんずく粉状の発酵残渣を増やさないために適切なタイミングで篩にかけ、処理材から粉体を除去し、処理材中の微生物担持体比率をある範囲で一定に保つことであり、これらを具現化した本発明になる機構を利用する有機廃棄物処理装置への展開は広い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理室と処理室に設けられた撹拌装置と微生物及び微生物担持体を含む有機廃棄物処理材とを主要構成要素とする有機廃棄物処理装置において、さらに処理室の側面に粉体の篩を設けること、該篩から篩落とされる粉体を一時貯蔵する出し入れ自在のストッカーを有すること、そして装置運転開始後あらかじめ決められた所定の時間経過後篩処理を行うことを特徴とする有機廃棄物処理装置。
【請求項2】
請求項1において、上記篩を撹拌により動き回る処理材に接する処理室側面に設けること及び篩にシャッターを設け該シャッターを開くことにより篩処理を行うことを特徴とする請求項1記載の有機廃棄物処理装置。
【請求項3】
請求項1において、上記篩を処理材が接しない処理室の高位置側面に設けること及び篩と反対側の側面に送風装置を設けることを特徴とする請求項1記載の有機廃棄物処理装置。
【請求項4】
請求項1〜3においてさらに、ストッカーに排出された粉体の満杯時期を検知し、使用者にストッカーからの粉体の取り出しを促すメッセージを発する手段を具備していることを特徴とする有機廃棄物処理装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2010−260037(P2010−260037A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−129614(P2009−129614)
【出願日】平成21年5月8日(2009.5.8)
【出願人】(507254676)コスタトレーディング株式会社 (6)
【Fターム(参考)】