説明

有機感光体、画像形成方法及び画像形成装置

【課題】本発明の目的は、発振波長が350〜500nmの半導体レーザの像露光を用いて、高精細で且つ高密度のドット画像を作製するに際し、有機感光体上で発生しやすい感度の低下やや残留電位の上昇を改善し、ドット再現性やハーフトーン画像の劣化等が改善された有機感光体を提供することであり、該有機感光体を用いた画像形成方法、画像形成装置を提供することである。
【解決手段】導電性支持体上に感光層を有し、下記一般式(1)の電荷輸送物質及び含フッ素樹脂微粒子を含有する表面層を有することを特徴とする有機感光体。
一般式(1) A−B−C
[一般式(1)中、Bは非共役ユニットの連結基を表し、A及びCはそれぞれ少なくとも1つのビフェニルアミン基を含有する1価の有機基を表す。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式の画像形成に用いる有機感光体、画像形成方法及び画像形成装置に関し、更に詳しくは、複写機やプリンターの分野で用いられる電子写真方式の画像形成に用いる有機感光体、画像形成方法及び画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、印刷分野やカラー印刷の分野において、電子写真方式の複写機やプリンタを使用される機会が増加している。該印刷分野やカラー印刷の分野においては、高画質のデジタルのモノクロ画像或いはカラー画像を求める傾向が強い。このような要求に対し、露光光源として短波長のレーザ光を用い、高精細のデジタル画像を形成することが提案されている(特許文献1)。しかしながら、該短波長レーザ光を用い、露光のドット径を絞り、電子写真感光体上に細密の静電潜像を形成しても、最終的に得られる電子写真画像は、十分な高画質を達成し得ていないのが現状である。
【0003】
その原因の1つは、電子写真感光体の感光特性や表面特性が従来の感光体では短波長レーザを用いた系に合致していないことがあげられる。即ち、短波長レーザ系で要求される細密なドット潜像の形成やトナー画像の形成に必要な特性を十分に備えていないことによる。
【0004】
即ち、電子写真感光体としては、従来の長波長レーザ用に開発された有機感光体(以後、単に感光体とも云う)では、感度特性や表面特性が劣り、短波長レーザ光を用いて露光のドット径を絞った像露光を行なうと、ドット潜像が明瞭に形成されず、ドット画像の再現性が劣化しやすい。
【0005】
即ち、300〜500nmの短波長レーザを用いて画像形成を行うと、従来の有機感光体用に開発された電荷輸送物質は、300〜500nmの短波長光を吸収しやすく、その結果感度低下や残留電位の上昇等の電子写真特性の劣化を促進しやすい。更に、短波長レーザの露光では、感光体表面の微細な擦り傷がハーフトーン画像に顕在化しやすく、画質劣化させやすいので、感光体表面を形成する電荷輸送層には感光体表面層の剛性及び弾性を劣化させない電荷輸送物質を開発することが必要である。
【0006】
従来、ベンジジン系化合物が短波長レーザとの組み合わせで、高画質が得られることが報告されているが(特許文献2)、これらベンジジン系化合物は感光体表面層の剛性及び弾性を劣化させ、表面に擦り傷を発生させやすく、短波長光で形成された微細なハーフトーン画像に擦り傷を発生させやすい。
【0007】
一方、有機感光体の長寿命化を達成するために、表面層の電荷輸送層に電荷輸送物質と共に、含フッ素樹脂微粒子を添加し、感光体の耐摩耗特性を改良する技術が知られている(特許文献3)。しかしながら、これら含フッ素樹脂微粒子は表面層のスベリ性をよくし、膜厚減耗量を改善するが、反面、表面層の剛性を劣化させ、擦り傷や摩耗傷を発生させやすく、その結果、表面で短波長レーザの散乱を引き起こしたり、微細なハーフトーン画像に傷状のむらを発生させ、短波長レーザを生かした高細密のなめらかなドット画像が得られないと云う問題が発生している。
【特許文献1】特開2000−250239号公報
【特許文献2】特開2000−147874号公報
【特許文献3】特開平8−328287号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記問題点を解決するためになされた。本発明の目的は、発振波長が350〜500nmの半導体レーザ又は発光ダイオードの像露光を用いて、高精細で且つ高密度のドット画像を作製する為に、有機感光体上で発生しやすい感度の低下やや残留電位の上昇を改善し、或いは、これら高精細で且つ高密度のドット画像で目立ちやすい擦り傷の発生を防止して、ドット再現性やハーフトーン画像の劣化等が改善された有機感光体を提供することであり、該有機感光体を用いた画像形成方法、画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
我々は上記問題点について検討を重ねた結果、本発明の課題は、発振波長が350〜500nmの半導体レーザ又は発光ダイオードの像露光を用いて有機感光体上に高密度の静電潜像を形成し、高精細で且つ高密度のドット画像を作製する為には、有機感光体の表面層に、短波長のレーザ光等に対し、吸収が小さく、表面層を形成するバインダーやその他の分散物と共に用いても剛性や弾性等の物性を劣化させない電荷輸送物質を用いることが有効であることを見出し、本発明を完成した。即ち、短波長レーザ光の露光光で発生しやすい上記課題に対しては、下記に記すような特定のビフェニル化合物の電荷輸送物質と含フッ素樹脂微粒子とを併用した表面層を有する有機感光体が効果的であることを見出し、本発明を完成した。
【0010】
即ち、本発明は以下のような構成の有機感光体を用いることにより達成される。
1.有機感光体上に発振波長が350〜500nmの半導体レーザ又は発光ダイオードの書込み光源を用いて静電潜像を形成する露光工程を有する画像形成方法に用いられる有機感光体において、導電性支持体上に感光層を有し、下記一般式(1)の電荷輸送物質及び含フッ素樹脂微粒子を含有する表面層を有することを特徴とする有機感光体。
【0011】
一般式(1) A−B−C
[一般式(1)中、Bは非共役ユニットの連結基を表し、A及びCはそれぞれ少なくとも1つのビフェニルアミン基を含有する1価の有機基を表す。]
2.前記一般式(1)のBが下記の一般式Hの2価の有機基であることを特徴とする前記1に記載の有機感光体。
【0012】
【化1】

【0013】
[一般式H中、R1,R2及びR3は、それぞれ水素原子、アルキル基またはハロゲン原子を表す]
3.前記一般式(1)のBが下記の一般式Iの2価の有機基であることを特徴とする前記1に記載の有機感光体。
【0014】
【化2】

【0015】
[一般式I中、Rはアルキレン基、アラルキレン基、アルケレン基または複素環式基を表す。]
4.前記一般式(1)のBが下記の一般式Jの2価の有機基であることを特徴とする前記1に記載の有機感光体。
【0016】
【化3】

【0017】
[一般式J中、R4、R5及びR6はそれぞれ独立して水素原子、アルキル基またはアルコキシ基またはハロゲン原子を表す;Xは−O−、−S−または
【0018】
【化4】

【0019】
(式中、R7、R8は水素原子、アルキル基またはアリール基を表し、nは1〜4の整数を表す)を示す。]
5.前記一般式(1)のBが下記の一般式Kの2価の有機基であることを特徴とする前記1に記載の有機感光体。
【0020】
【化5】

【0021】
[一般式K中、R9及びR10はそれぞれ独立して水素原子、アルキル基、アルコキシ基またはハロゲン原子を、Xは−O−、−S−、−(R11)C(R12)−、−N(R13)−、−N=N−、−C24−または−CH=CH−を表す。但し、R11〜R13は水素原子、アルキル基またはアリール基を表す。Yは連結基、−CH2−、−C24−または−CH=CH−を表す。]
6.前記一般式(1)のBが下記の一般式Lの2価の有機基であることを特徴とする前記1に記載の有機感光体。
【0022】
【化6】

【0023】
[一般式L中、Xは−O−、−S−または
【0024】
【化7】

【0025】
(式中、R14、R15は水素原子、アルキル基またはアリール基を示す。)を示す。]
7.前記一般式(1)のBが下記の一般式Mの2価の有機基であることを特徴とする前記1に記載の有機感光体。
【0026】
【化8】

【0027】
[一般式M中、R16及びR17はそれぞれ独立して水素原子、アルキル基、アルコキシ基またはハロゲン原子を表す;Xは−O−、−S−または−(R18)C(R19)−、(R18およびR19はそれぞれ水素原子、置換基を有してもよい、アルキル基またはアリール基を表す)を表す]
8.前記感光層が電荷発生物質を含有する電荷発生層及び電荷輸送物質を含有する電荷輸送層を有することを特徴とする前記1〜7のいずれか1項に記載の有機感光体。
9.前記電荷輸送層が複数の電荷輸送層から構成され、且つ最上層の電荷輸送層が前記一般式(1)の電荷輸送物質及び含フッ素樹脂微粒子を含有することを特徴とする前記8に記載の有機感光体。
10.前記一般式(1)の電荷輸送物質の分子量が500〜1500であることを特徴とする前記1〜9のいずれか1項に記載の有機感光体
11.前記含フッ素樹脂微粒子の数平均一次粒径が0.02μm以上、0.20μm未満であることを特徴とする前記1〜10のいずれか1項に記載の有機感光体。
12.前記電荷発生物質が多環キノン化合物であることを特徴とする前記8〜11のいずれか1項に記載の有機感光体。
13.前記電荷発生物質がペリレン系化合物であることを特徴とする前記8〜11のいずれか1項に記載の有機感光体。
14.前記導電性支持体と電荷発生層の間にN型半導性粒子を含有する中間層を有することを特徴とする前記8〜13のいずれか1項に記載の有機感光体。
15.前記導電性支持体が円筒状であり、表面層が円形スライドホッパー型塗布装置を用いて塗布されたことを特徴とする前記1〜14のいずれか1項に記載の有機感光体。
16.有機感光体上に発振波長が350〜500nmの半導体レーザ又は発光ダイオードの書込み光源を用いて静電潜像を形成する露光工程を有し、該静電潜像をトナー像に顕像化する現像工程を有する画像形成方法において、前記有機感光体が導電性支持体上に感光層を有し、該感光層が下記一般式(1)の電荷輸送物質を含有し、且つ表面層が含フッ素樹脂微粒子を含有することを特徴とする画像形成方法。
【0028】
一般式(1) A−B−C
[一般式(1)中、Bは2価の有機基を表し、A及びCはそれぞれ少なくとも1つのビフェニルアミン基を含有する1価の有機基を表す。]
17.有機感光体上に発振波長が350〜500nmの半導体レーザ又は発光ダイオードの書込み光源を用いて静電潜像を形成する露光手段を有し、該静電潜像をトナー像に顕像化する現像手段を有する画像形成装置において、前記有機感光体が導電性支持体上に感光層を有し、該感光層が下記一般式(1)の電荷輸送物質を含有し、且つ表面層が含フッ素樹脂微粒子を含有することを特徴とする画像形成装置。
【0029】
一般式(1) A−B−C
[一般式(1)中、Bは2価の有機基を表し、A及びCはそれぞれ少なくとも1つのビフェニルアミン基を含有する1価の有機基を表す。]
【発明の効果】
【0030】
本発明の有機感光体、画像形成方法及び画像形成装置を用いることにより、発振波長が350〜500nmの半導体レーザ又は発光ダイオードの書込み光源を用いて静電潜像を形成する画像形成方法において、高密度で高細密のドット画像を形成することができ、擦り傷を防止できたなめらかなハーフトーン画像を作製でき、高画質の電子写真画像を形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明について、詳細に説明する。
【0032】
本発明の有機感光体は、有機感光体上に発振波長が350〜500nmの半導体レーザ又は発光ダイオードの書込み光源を用いて静電潜像を形成する露光工程を有する画像形成方法に用いられる有機感光体において、導電性支持体上に感光層を有し、該感光層が前記一般式(1)の電荷輸送物質を含有し、表面層が含フッ素樹脂微粒子を含有することを特徴とする。
【0033】
以下、本発明の有機感光体の構成について説明する。
【0034】
本発明に係わる有機感光体は、前記一般式(1)の電荷輸送物質を含有する。
【0035】
前記一般式(1)の電荷輸送物質は、波長が350〜500nmの露光光源に対し、単位露光量に対する電位減衰値が大きく、小径のドット潜像をシャープに形成することができ、且つ1分子中に少なくとも2個以上のビフェニル基を有するので、分子構造自体が剛性や弾性の優れた性質を有し、該電荷輸送物質を用いた表面層は摩耗や擦過等に対し擦り傷が発生しにくい表面層を形成することができ、擦り傷の発生によるハーフトーン画像の劣化を改善した電子写真画像を形成することができる。
【0036】
前記一般式(1)中、Bの非共役ユニットの連結基とは、一般式(1)の化学構造上のπ電子雲の広がりを切断する連結基であり、該非共役ユニットの連結基には、前記π電子雲の広がりを切断する基を含有する。
【0037】
このようなπ電子雲の広がりを切断する基としては、CH2、O、S等の基が挙げられる。
【0038】
前記π電子雲の広がりを切断する基を含有する非共役ユニットの連結基、即ち、一般式(1)のBとしては、前記した一般式H〜一般式Mの連結基が本発明では好ましく用いられる。この中で、最も好ましい連結基Bは一般式Hの連結基である。
【0039】
又、一般式(1)中のA及びCに含有されるビフェニルアミン基とは、下記式で示される化合物基であり、該化合物基の各フェニル基には置換基や連結基(連結基とは他の基に結合する為の結合手を示す)が入っていてもよい。該置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、芳香族基、複素環基等が挙げられる。
【0040】
【化9】

【0041】
本発明に係わる一般式(1)の電荷輸送物質の中で、特に好ましい化合物を下記に例示する。
【0042】
一般式Hの連結基を有する化合物例
【0043】
【化10】

【0044】
【化11】

【0045】
【化12】

【0046】
一般式Iの連結基を有する化合物例
【0047】
【化13】

【0048】
【化14】

【0049】
一般式Jの連結基を有する化合物例
【0050】
【化15】

【0051】
【化16】

【0052】
一般式Kの連結基を有する化合物例
【0053】
【化17】

【0054】
【化18】

【0055】
一般式Lの連結基を有する化合物例
【0056】
【化19】

【0057】
【化20】

【0058】
一般式Mの連結基を有する化合物例
【0059】
【化21】

【0060】
【化22】

【0061】
これらの化合物の合成方法については、特開平5−210251号公報等に記載されている。
【0062】
前記一般式(1)の電荷輸送物質の分子量は、500〜1500の範囲の電荷輸送物質が好ましい。分子量が500未満では、電荷輸送層のバインダーの可塑剤として作用し、電荷輸送層の弾性を低下せしめて、表面層の擦り傷を発生させやすい。又、弾性率の低下等で、膜物性の劣化を発生する為、電荷輸送層中の電荷輸送物質の含有量が制限され、その結果、感度低下を発生し、画像濃度が低下しやすい。一方、分子量が1500より大ききと、溶媒溶解性が低下し、析出して、画像濃度の低下、ドット再現性の劣化を起こしやすい。特に、600〜800の分子量が好ましい。
【0063】
又、本発明の有機感光体は、導電性支持体上に感光層を有し、該有機感光体の表面層が前記一般式(1)で表される電荷輸送物質と共に、含フッ素樹脂微粒子を含有することを特徴とする。
【0064】
有機感光体の表面層に含フッ素樹脂微粒子を含有させると共に、前記一般式(1)の電荷輸送物質を用いることにより、表面層の剛性や弾性を劣化させず、擦り傷が発生しにくく、トナー画像の転写性を改善できた表面層を形成でき、350〜500nmの半導体レーザ等で形成した高密度で、高精細の静電荷像からドット再現性が良好なトナー画像を形成することができる。
【0065】
含フッ素樹脂微粒子の構成材料は含フッ素重合性モノマーの単独重合体または共重合体、または含フッ素重合性モノマーとフッ素フリー重合性モノマーとの共重合体である。含フッ素重合性モノマーは一般式(2);
【0066】
【化23】

【0067】
(一般式(2)中、R4〜R7のうち少なくとも1つの基はフッ素原子であり、残りの基はそれぞれ独立して水素原子、塩素原子、メチル基、モノフルオロメチル基、ジフルオロメチル基、またはトリフルオロメチル基である)で表されるモノマーである。好ましい含フッ素重合性モノマーとして、四フッ化エチレン、三フッ化エチレン、三フッ化塩化エチレン、六フッ化プロピレン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、二フッ化二塩化エチレン等が挙げられる。含フッ素重合性モノマーとして、2種類以上のモノマーが使用されてもよい。
【0068】
フッ素フリー重合性モノマーとして、例えば、塩化ビニル等が挙げられる。フッ素フリー重合性モノマーとして、2種類以上のモノマーが使用されてもよい。
【0069】
含フッ素樹脂微粒子はいずれも、上記構成材料の中で、含フッ素重合性モノマーの単独重合体または共重合体からなることが好ましく、より好ましくはポリ四フッ化エチレン(PTFE)、ポリ三フッ化エチレン、四フッ化エチレン−六フッ化プロピレン共重合体、ポリフッ化ビニリデン、特にポリ四フッ化エチレンである。
【0070】
含フッ素樹脂微粒子を構成する重合体の平均分子量は本発明の目的を達成できる限り特に制限されないが、通常はいずれも1万から100万の範囲が好適である。
【0071】
本発明に係わる含フッ素樹脂微粒子は、数平均一次粒径が0.02μm以上、0.20μm未満の含フッ素樹脂微粒子が好ましい。数平均一次粒径が0.02μm未満では分散液の安定性が劣化し、含フッ素樹脂微粒子同士の凝集が発生し、均一に分散することができにくく、接触角の局所的なバラツキが大きくなりやすく、白ヌケやクリーニング不良が発生しやすい。また、数平均一次粒径が0.20μmより大きいと、沈降による凝集粒子ができやすく、表面の接触角が低下しやすい。
【0072】
上記含フッ素樹脂微粒子の数平均一次粒径は透過型電子顕微鏡観察によって2000倍に拡大し、一次粒子100個をランダムに取り出し(一次粒子にするために、含フッ素樹脂微粒子を分散媒に分散してもよい)、画像解析によってフェレ方向数平均粒径としての測定値である。
【0073】
また、含フッ素樹脂微粒子を表面層に含有させることにより、表面エネルギーを低下させることができるが、表面層の水に対する接触角を90°以上にすることが好ましい。90°未満では、トナー中のシリカ等の無機外添剤の付着が多くなり、ハーフトーン画像がざらつきやすい。又、クリーニングブレード等の感光体の接触部材との摩擦抵抗も大きく、擦過による摩耗が大きくなり、筋状の画像ムラが発生し、鮮鋭性を劣化させやすい。より好ましい接触角は95°以上120°以下である。120°より接触角を大きくしようとすると、表面層中に含フッ素樹脂微粒子の含有量が高く成りすぎ、表面層が柔らくなり、擦り傷が発生しやすく、画像ボケも発生しやすい。
【0074】
接触角の測定
本発明の接触角とは感光体表面への純水に対する接触角を云う。感光体の接触角は純水に対する接触角を接触角計(CA−DT・A型:協和界面科学社製)を用いて20℃50%RHの環境下で測定する。
【0075】
前記表面層中のバインダー樹脂としては、含フッ素樹脂微粒子の分散性を助ける界面活性基を樹脂の部分構造に有する樹脂を用いることが好ましく、例えば、シロキサン基を部分構造に有するポリカーボネートやポリアリレートやフッ素化グラフトアクリル樹脂等が好ましい。これらの樹脂の分子量は10,000〜100,000が好ましい。
【0076】
又、本発明の含フッ素樹脂微粒子を用いて表面層を形成する場合、表面層中の含フッ素樹脂微粒子の比率を高くすることが好ましく、質量比でバインダー樹脂100質量部に対し、少なくとも20質量部以上200質量部以下の量で用いることが好ましい。20質量量部未満では接触角の90°以上を満足させる表面層を形成するのが難しく、200質量部より多いと表面層が脆弱な膜となり、擦り傷等が発生しやすい。
【0077】
又、本発明に係わる含フッ素樹脂微粒子の分散液は分散性が良好な低沸点溶媒、好ましくは、大気圧下で120℃以下の沸点を有する有機溶媒(例えば、THF、エタノール、トルエン、ジクロルエタン等)を用いて分散することが好ましい。このような低沸点溶媒を用いることにより、前記含フッ素樹脂微粒子相互の凝集性を抑えて安定した分散液を製造することができる。同時に、該分散液を調整し塗布液として(分散液がそのまま塗布液になることもある)、量規制型塗布装置(塗布量をコントロールして、表面層の膜厚を制御する塗布装置)を用いて表面層を形成し、乾燥させることにより表面層の膜厚を一定にし、含フッ素樹脂微粒子の凝集を防止し、均一な低表面エネルギーの表面層を形成する。
【0078】
上記量規制型塗布装置としては、円形スライドホッパ型塗布ヘッドや押し出し型塗布ヘッドを用いた塗布装置が挙げられる。これらの中でも、後述する円形スライドホッパ型塗布ヘッドを有する塗布装置(以後、円形スライドホッパ型塗布装置ともいう)が好ましく用いられる。このような円形塗布ヘッドを有する塗布装置は、円筒状導電性支持体のほとんど全体(上端の一部を除き)を塗布液に浸積して塗布する浸積塗布に比し、塗布装置内で分散液を滞留させず、ワンウエイで表面層を形成するので、含フッ素樹脂微粒子の分散粒子は、分散液中で凝集シェアを繰り返し受けることなく、又、含フッ素樹脂微粒子の塗布液中の沈降を防止して(分散媒に比し、含フッ素樹脂微粒子は比重が高く沈降しやすい)均一な表面層を形成することができる。しかも、感光体製造毎に分散液を作製できるので、分散液の経時による凝集や沈降を防止でき、且つ表面層形成時に、円筒状導電性支持体に既に形成されている下層を溶解せずに塗布できることから、塗布乾燥時も含フッ素樹脂微粒子の凝集が少なく、均一な分散性を有する表面層を形成することができる。又、ビード形成塗布は塗布膜厚を塗布装置から吐出される塗布液流量で正確に制御することができ、膜厚のバラツキが少なく、且つ光学的に均一な表面層を形成できる。その結果、鮮鋭性が良好な電子写真画像を形成することができる。
【0079】
以下に本発明に好ましく用いられる円形スライドホッパ型塗布ヘッドを有する塗布装置について説明する。
【0080】
以下に簡単に円形スライドホッパー型塗布装置について簡単に説明する。
【0081】
本発明において、含フッ素樹脂微粒子を分散した塗布液は、円形スライドホッパー型塗布装置を用いて有利に塗布される。円形スライドホッパー型塗布装置の一例として、例えば図1に縦断面図で示されるように中心線XXに沿って垂直状に重ね合わせた円筒状基材251A,251Bを連続的に矢示方向に上昇移動させ、その周囲を取り囲み、基材251の外周面に対しスライドホッパー型塗布装置の塗布に直接係わる部分(塗布ヘッドと略称する)260により塗布液Lが塗布される。なお、基材としては中空ドラム例えばアルミニウムドラム、プラスチックドラムのほかシームレスベルト型の基材でも良い。図2に示す如く前記塗布ヘッド260には、基材251側に開口する塗布液流出口261を有する幅狭の塗布液分配スリット(スリットと略称する)262が水平方向に形成されている。このスリット262は環状の塗布液分配室263に連通し、この環状の塗布液分配室263には貯留タンク254内の塗布液Lを圧送ポンプ255により供給管264を介して供給するようになっている。他方、スリット262の塗布液流出口261の下側には、連続して下方に傾斜し基材の外寸よりやや大なる寸法で終端をなすように形成されたスライド面265が形成されている。更に、このスライド面265終端より下方に延びる唇状部(ビード;液溜まり部)266が形成されている。かかる塗布装置による塗布においては、基材251を引き上げる過程で、塗布液Lをスリット262から押し出し、スライド面265に沿って流下させると、スライド面終端に至った感光液は、そのスライド面終端と基材251の外周面との間にビードを形成した後、基材表面に塗布される。過剰の感光液は排出部267から排出される。
【0082】
上記円形スライドホッパ型塗布装置は、塗布液をスライド面265に沿って流下させ、スライド面265の終端に至った塗布液は、そのスライド面265の終端と円筒状基材251Aとの間にビードを形成した後、円筒状基材上に塗布膜が形成されることを特徴とする。
【0083】
円形スライドホッパー型塗布装置を用いる塗布方法では、スライド面終端と基材は、ある間隙(約2μm〜2mm)を持って配置されているため基材を傷つける事なく、また性質の異なる層を多層形成させる場合においても、既に塗布された層を損傷することなく塗布できる。更に性質が異なり同一溶媒に溶解する層を多層形成させる際にも、浸漬塗布方法と比べて溶媒中に存在する時間がはるかに短いので、下層成分が上層側へ殆ど溶出せず、塗布槽にも溶出することなく塗布できるので、含フッ素樹脂微粒子の分散性を劣化させずに塗布することができる。
【0084】
本発明に係わる有機感光体は、前記一般式(1)の電荷輸送物質及び含フッ素樹脂微粒子を含有する有機感光体であるが、これらの電荷輸送物質及び含フッ素樹脂微粒子を含有する有機感光体の構成について以下に記載する。
【0085】
本発明において、有機感光体とは電子写真感光体の構成に必要不可欠な電荷発生機能及び電荷輸送機能の少なくとも一方の機能を有機化合物に持たせて構成された電子写真感光体を意味し、公知の有機電荷発生物質又は有機電荷輸送物質から構成された感光体、電荷発生機能と電荷輸送機能を高分子錯体で構成した感光体等公知の有機感光体を全て含有する。
【0086】
本発明の有機感光体の構成は、前記一般式(1)の電荷輸送物質及び含フッ素樹脂微粒子を含有する限り特に制限されるものではなく、例えば、以下に示すような構成が挙げられる;
1)導電性支持体上に感光層として電荷発生層および電荷輸送層を順次積層した構成
2)導電性支持体上に感光層として電荷発生層、第1電荷輸送層および第2電荷輸送層を順次積層した構成;
3)導電性支持体上に感光層として電荷輸送材料と電荷発生材料とを含む単層を形成した構成;
4)導電性支持体上に感光層として電荷輸送層および電荷発生層を順次積層した構成;
5)上記1)〜5)の感光体の感光層上にさらに表面保護層を形成した構成。
【0087】
感光体が上記いずれの構成を有する場合であってもよい。感光体の表面層とは、感光体が空気界面と接触する層であり、導電性支持体上に単層式の感光層のみが形成されている場合は当該感光層が表面層であり、導電性支持体上に単層式または積層式感光層と表面保護層とが積層されている場合は表面保護層が最表面層である。本発明では上記2)の構成が最も好ましく用いられる。尚、本発明の感光体はいずれの構成を有する場合であっても、導電性支持体上、感光層の形成に先だって、下引層(中間層)が形成されていてもよい。
【0088】
電荷輸送層とは、光露光により電荷発生層で発生した電荷キャリアを有機感光体の表面に輸送する機能を有する層を意味し、該電荷輸送機能の具体的な検出は、電荷発生層と電荷輸送層を導電性支持体上に積層し、光導伝性を検知することにより確認することができる。
【0089】
次に、有機感光体の層構成を上記2)の構成を中心にして記載する。
【0090】
導電性支持体
感光体に用いられる導電性支持体としてはシート状、円筒状のどちらを用いても良いが、画像形成装置をコンパクトに設計するためには円筒状導電性支持体の方が好ましい。
【0091】
円筒状導電性支持体とは回転することによりエンドレスに画像を形成できるに必要な円筒状の支持体を意味し、真直度で0.1mm以下、振れ0.1mm以下の範囲にある導電性の支持体が好ましい。この真直度及び振れの範囲を超えると、良好な画像形成が困難になる。
【0092】
導電性の材料としてはアルミニウム、ニッケルなどの金属ドラム、又はアルミニウム、酸化錫、酸化インジュウムなどを蒸着したプラスチックドラム、又は導電性物質を塗布した紙・プラスチックドラムを使用することができる。導電性支持体としては常温で比抵抗103Ωcm以下が好ましい。本発明の導電性支持体としては、アルミニウム支持体が最も好ましい。該アルミニウム支持体は、主成分のアルミニウム以外にマンガン、亜鉛、マグネシウム等の成分が混合したものも用いられる。
【0093】
中間層
本発明においては導電性支持体と感光層の間に、中間層を設けることが好ましい。
【0094】
本発明に用いられる中間層にはN型半導性粒子を含有することが好ましい。該N型半導性粒子とは、主たる電荷キャリアが電子である粒子を意味する。すなわち、主たる電荷キャリアが電子であることから、該N型半導性粒子を絶縁性バインダーに含有させた中間層は、基体からのホール注入を効率的にブロックし、また、感光層からの電子に対してはブロッキング性が少ない性質を有する。
【0095】
N型半導性粒子としては、酸化チタン(TiO2)、酸化亜鉛(ZnO)が好ましく、特に酸化チタンが特に好ましく用いられる。
【0096】
N型半導性粒子は数平均一次粒径が3.0〜200nmの範囲の微粒子を用いる。特に、5nm〜100nmが好ましい。数平均一次粒径とは、微粒子を透過型電子顕微鏡観察によって10000倍に拡大し、ランダムに100個の粒子を一次粒子として観察し、画像解析によってフェレ方向数平均粒径としての測定値である。数平均一次粒径が3.0nm未満のN型半導性粒子は中間層バインダー中での均一な分散ができにくく、凝集粒子を形成しやすく、該凝集粒子が電荷トラップとなって残電上昇が発生しやすい。一方、数平均一次粒径が200nmより大きいN型半導性粒子は中間層の表面に大きな凹凸を作りやすく、これらの大きな凹凸を通してドット画像が劣化しやすい。又、数平均一次粒径が200nmより大きいN型半導性粒子は分散液中で沈澱しやすく、凝集物が発生しやすく、その結果、ドット画像が劣化しやすい。
【0097】
前記酸化チタン粒子は、結晶形としては、アナターゼ形、ルチル形、ブルッカイト形及びアモルファス形等があるが、中でもルチル形酸化チタン顔料又はアナターゼ形酸化チタン顔料は、中間層を通過する電荷の整流性を高め、即ち、電子の移動性を高め、帯電電位を安定させ、残留電位の増大を防止すると共に、ドット画像の劣化を防止することができ、本発明のN型半導性粒子として最も好ましい。
【0098】
N型半導性粒子はメチルハイドロジェンシロキサン単位を含む重合体で表面処理されたものが好ましい。該メチルハイドロジェンシロキサン単位を含む重合体の分子量は1000〜20000のものが表面処理効果が高く、その結果、N型半導性粒子の整流性を高め、このN型半導性粒子を含有する中間層を用いることにより、黒ポチ発生が防止され、又、良好なドット画像の再現性に効果がある。
【0099】
メチルハイドロジェンシロキサン単位を含む重合体とは−(HSi(CH3)O)−の構造単位とこれ以外の構造単位(他のシロキサン単位のこと)の共重合体が好ましい。他のシロキサン単位としては、ジメチルシロキサン単位、メチルエチルシロキサン単位、メチルフェニルシロキサン単位及びジエチルシロキサン単位等が好ましく、特にジメチルシロキサンが好ましい。共重合体中のメチルハイドロジェンシロキサン単位の割合は10〜99モル%、好ましくは20〜90モル%である。
【0100】
メチルハイドロジェンシロキサン共重合体はランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体等のいずれでもよいがランダム共重合体及びブロック共重合体が好ましい。又、共重合成分としてはメチルハイドロジェンシロキサン以外に、一成分でも二成分以上でもよい。
【0101】
本発明に用いられる中間層を形成するために作製する中間層塗布液は前記表面処理酸化チタン等のN型半導性粒子の他にバインダー樹脂、分散溶媒等から構成される。
【0102】
N型半導性粒子の中間層中での比率は、中間層のバインダー樹脂との体積比(バインダー樹脂の体積を1とすると)で1.0〜2.0倍が好ましい。中間層中でこのような高密度で本発明のN型半導性粒子を用いることにより、中間層の整流性が高まり、膜厚を厚くしても残留電位の上昇やドット画像の劣化を効果的に防止でき、良好な有機感光体を形成することができる。又、このような中間層はバインダー樹脂100体積部に対し、N型半導性粒子を100〜200体積部を用いることが好ましい。
【0103】
一方、これらの粒子を分散し、中間層の層構造を形成するバインダー樹脂としては、粒子の良好な分散性を得る為にポリアミド樹脂が好ましいが、特に以下に示すポリアミド樹脂が好ましい。
【0104】
中間層のバインダー樹脂としてはアルコール可溶性ポリアミド樹脂が好ましい。有機感光体の中間層のバインダー樹脂としては、中間層を均一な膜厚で形成するために、溶媒溶解性の優れた樹脂が必要とされている。このようなアルコール可溶性のポリアミド樹脂としては、前記した6−ナイロン等のアミド結合間の炭素鎖の少ない化学構造から構成される共重合ポリアミド樹脂やメトキシメチル化ポリアミド樹脂が知られているが、これらのポリアミド樹脂以外にも、吸水率が小さく、その結果、たとえば高温高湿や低温低湿下の帯電特性や感度等の変化が小さい下記に例示するようなポリアミド樹脂が好ましく用いられる。
【0105】
【化24】

【0106】
【化25】

【0107】
【化26】

【0108】
上記具体例中の[]nのnは繰り返し単位構造の比率(モル%)を示す。
【0109】
上記具体例の中でも、N−1〜N−4のポリアミド樹脂が特に好ましい。
【0110】
又、上記ポリアミド樹脂の分子量は数平均分子量で5,000〜80,000が好ましく、10,000〜60,000がより好ましい。数平均分子量が5,000以下だと中間層の膜厚の均一性が劣化し、本発明の効果が十分に発揮されにくい。一方、80,000より大きいと、樹脂の溶媒溶解性が低下しやすく、中間層中に凝集樹脂が発生しやすく、黒ポチの発生やドット画像の劣化を起こしやすい。
【0111】
上記ポリアミド樹脂はその一部が既に市販されており、例えばダイセル・デグサ(株)社製のベスタメルトX1010、X4685等の商品名で販売されて、一般的なポリアミドの合成法で作製することができるが、以下に合成例の一例を挙げる。
【0112】
上記ポリアミド樹脂を溶解し、塗布液を作製する溶媒としては、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、t−ブタノール、sec−ブタノール等の炭素数2〜4のアルコール類が好ましく、ポリアミドの溶解性と作製された塗布液の塗布性の点で優れている。これらの溶媒は全溶媒中に30〜100質量%、好ましくは40〜100質量%、更には50〜100質量%が好ましい。前記溶媒と併用し、好ましい効果を得られる助溶媒としては、メタノール、ベンジルアルコール、トルエン、メチレンクロライド、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン等が挙げられる。
【0113】
本発明の中間層の膜厚は0.3〜10μmが好ましい。中間層の膜厚が0.5μm未満では、黒ポチラが発生しやすく、ドット画像の劣化を起こしやすい。10μmを超えると、残留電位の上昇が発生しやすく、ドット画像が劣化しやすい。中間層の膜厚は0.5〜5μmがより好ましい。
【0114】
又、上記中間層は実質的に絶縁層であることが好ましい。ここで絶縁層とは、体積抵抗が1×108以上である。本発明の中間層及び保護層の体積抵抗は1×108〜1015Ω・cmが好ましく、1×109〜1014Ω・cmがより好ましく、更に好ましくは、2×109〜1×1013Ω・cmである。体積抵抗は下記のようにして測定できる。
【0115】
測定条件;JIS:C2318−1975に準ずる。
【0116】
測定器:三菱油化社製Hiresta IP
測定条件:測定プローブ HRS
印加電圧:500V
測定環境:30±2℃、80±5RH%
体積抵抗が1×108未満では中間層の電荷ブロッキング性が低下し、黒ポチの発生が増大し、有機感光体の電位保持性も劣化し、良好な画質が得られない。一方1015Ω・cmより大きいと繰り返し画像形成で残留電位が増大しやすく、良好な画質が得られない。
【0117】
感光層
本発明の感光体の感光層構成は前記中間層上に電荷発生機能と電荷輸送機能を1つの層に持たせた単層構造の感光層構成でも良いが、より好ましくは感光層の機能を電荷発生層(CGL)と電荷輸送層(CTL)に分離した構成をとるのがよい。機能を分離した構成を取ることにより繰り返し使用に伴う残留電位増加を小さく制御でき、その他の電子写真特性を目的に合わせて制御しやすい。負帯電用の感光体では中間層の上に電荷発生層(CGL)、その上に電荷輸送層(CTL)の構成を取ることが好ましい。
【0118】
以下に機能分離負帯電感光体の感光層構成について説明する。
【0119】
電荷発生層
本発明の有機感光体には、電荷発生物質として350nm〜500nmの波長領域に高感度特性を有する電荷発生物質を用いることが好ましい。このような電荷発生物質としてはアゾ顔料、ペリレン顔料、多感キノン顔料等が好ましく用いられる。又、これらの顔料を併用して用いることができる。本発明に好ましく用いられる顔料化合物を下記に例示する。
【0120】
【化27】

【0121】
【化28】

【0122】
電荷発生層にCGMの分散媒としてバインダーを用いる場合、バインダーとしては公知の樹脂を用いることができるが、最も好ましい樹脂としてはホルマール樹脂、ブチラール樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン変性ブチラール樹脂、フェノキシ樹脂等が挙げられる。バインダー樹脂と電荷発生物質との割合は、バインダー樹脂100質量部に対し20〜600質量部が好ましい。これらの樹脂を用いることにより、繰り返し使用に伴う残留電位増加を最も小さくできる。電荷発生層の膜厚は0.3μm〜2μmが好ましい。
【0123】
電荷輸送層
前記したように、本発明では電荷輸送層を複数の電荷輸送層から構成し、且つ最上層の電荷輸送層に本発明の表面層の構造を有すること好ましい。
【0124】
電荷輸送層には電荷輸送物質(CTM)及びCTMを分散し製膜するバインダー樹脂を含有する。その他の物質としては必要により前記した無機微粒子の他に酸化防止剤等の添加剤を含有しても良い。
【0125】
電荷輸送物質(CTM)としては、前記一般式(1)の電荷輸送物質が用いられるが、これ以外に、公知の正孔輸送性(P型)の電荷輸送物質(CTM)を併用してもよい。例えばトリフェニルアミン誘導体、ヒドラゾン化合物、スチリル化合物、ベンジジン化合物、ブタジエン化合物などを用いることができる。これら電荷輸送物質は通常、適当なバインダー樹脂中に溶解して層形成が行われる。
【0126】
電荷輸送層(CTL)に用いられるバインダー樹脂としては熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂いずれの樹脂かを問わない。例えばポリスチレン、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、ポリカーボネート樹脂、シリコーン樹脂、メラミン樹脂並びに、これらの樹脂の繰り返し単位構造のうちの2つ以上を含む共重合体樹脂。又これらの絶縁性樹脂の他、ポリ−N−ビニルカルバゾール等の高分子有機半導体が挙げられる。これらの中で吸水率が小さく、CTMの分散性、電子写真特性が良好なポリカーボネート樹脂が最も好ましい。
【0127】
バインダー樹脂と電荷輸送物質との割合は、バインダー樹脂100質量部に対し50〜200質量部が好ましい。
【0128】
電荷輸送層の合計膜厚は、10〜25μmが好ましい。該合計膜厚が10μm未満では、現像時の潜像電位を十分に獲得しにくく、画像濃度の低下やドット再現性の劣化が発生しやすく、又、25μmを超えると、電荷キャリアの拡散(電荷発生層で発生した電荷キャリアの拡散)が大きくなり、ドット再現性が劣化しやすい。また、表面層となる電荷輸送層の膜厚は1.0〜8.0μmが好ましい。
【0129】
中間層、電荷発生層、電荷輸送層等の層形成に用いられる溶媒又は分散媒としては、n−ブチルアミン、ジエチルアミン、エチレンジアミン、イソプロパノールアミン、トリエタノールアミン、トリエチレンジアミン、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソプロピルケトン、シクロヘキサノン、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、1,2−ジクロロプロパン、1,1,2−トリクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエタン、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、ジオキサン、メタノール、エタノール、ブタノール、イソプロパノール、酢酸エチル、酢酸ブチル、ジメチルスルホキシド、メチルセロソルブ等が挙げられる。本発明はこれらに限定されるものではないが、テトラヒドロフラン、メチルエチルケトン等の地球環境に優しい溶媒が好ましく用いられる。また、これらの溶媒は単独或いは2種以上の混合溶媒として用いることもできる。
【0130】
又、本発明に係わる有機感光体は、感光体を構成する層構成全層の残留溶媒を5000ppm以下に乾燥することが好ましい。更に、3000ppm以下がより好ましい。残留溶媒が多すぎるとNOx等の活性ガスを感光層中に進入させやすく、画像ボケや転写メモリーの発生による画像ムラ等を発生させやすい。
【0131】
残留溶媒量は下記のようにして測定する。
【0132】
感光体の支持体から層構成全層を剥離して、熱分解ガスクロマトグラフィー(GC15A:島津製作所製)及びキューリーポイントパイローライザー(JHP−3S:日本分析工業社製)を用いて感光層中(中間層を含む全層)の残留溶媒量を測定する。
【0133】
又、これらの各層の塗布溶液は塗布工程に入る前に、塗布溶液中の異物や凝集物を除去するために、金属フィルター、メンブランフィルター等で濾過することが好ましい。例えば、日本ポール社製のプリーツタイプ(HDC)、デプスタイプ(プロファイル)、セミデプスタイプ(プロファイルスター)等を塗布液の特性に応じて選択し、濾過をすることが好ましい。
【0134】
次に有機感光体を製造するための塗布加工方法としては、スライドホッパー型塗布装置の他に、浸漬塗布、スプレー塗布等の塗布加工法が用いられる。本発明の表面層の形成には円形スライドホッパー型塗布装置を用いるのが最も好ましい。
【0135】
又、本発明に係わる感光体の表面層には酸化防止剤を含有させることが好ましい。表面層は感光体の帯電時の活性ガス、例えばNOxやオゾン等で酸化されやすく、画像ボケが発生しやすいが、酸化防止剤を共存させることにより、画像ボケの発生を防止することが出来る。該酸化防止剤とは、その代表的なものは有機感光体中ないしは有機感光体表面に存在する自動酸化性物質に対して、光、熱、放電等の条件下で酸素の作用を防止ないし、抑制する性質を有する物質である。代表的には下記の化合物群が挙げられる。
【0136】
【化29】

【0137】
【化30】

【0138】
【化31】

【0139】
【化32】

【0140】
中間層、電荷発生層、電荷輸送層等の層形成に用いられる溶媒又は分散媒としては、n−ブチルアミン、ジエチルアミン、エチレンジアミン、イソプロパノールアミン、トリエタノールアミン、トリエチレンジアミン、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソプロピルケトン、シクロヘキサノン、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、1,2−ジクロロプロパン、1,1,2−トリクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエタン、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、ジオキサン、メタノール、エタノール、ブタノール、イソプロパノール、酢酸エチル、酢酸ブチル、ジメチルスルホキシド、メチルセロソルブ等が挙げられる。本発明はこれらに限定されるものではないが、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、メチルエチルケトン等が好ましく用いられる。また、これらの溶媒は単独或いは2種以上の混合溶媒として用いることもできる。
【0141】
次に、本発明に係わる有機感光体を用いた画像形成装置について説明する。
【0142】
図3に示す画像形成装置1は、デジタル方式による画像形成装置であって、画像読取り部A、画像処理部B、画像形成部C、転写紙搬送手段としての転写紙搬送部Dから構成されている。
【0143】
画像読取り部Aの上部には原稿を自動搬送する自動原稿送り手段が設けられていて、原稿載置台11上に載置された原稿は原稿搬送ローラ12によって1枚宛分離搬送され読み取り位置13aにて画像の読み取りが行われる。原稿読み取りが終了した原稿は原稿搬送ローラ12によって原稿排紙皿14上に排出される。
【0144】
一方、プラテンガラス13上に置かれた場合の原稿の画像は走査光学系を構成する照明ランプ及び第1ミラーから成る第1ミラーユニット15の速度vによる読み取り動作と、V字状に位置した第2ミラー及び第3ミラーから成る第2ミラーユニット16の同方向への速度v/2による移動によって読み取られる。
【0145】
読み取られた画像は、投影レンズ17を通してラインセンサである撮像素子CCDの受光面に結像される。撮像素子CCD上に結像されたライン状の光学像は順次電気信号(輝度信号)に光電変換されたのちA/D変換を行い、画像処理部Bにおいて濃度変換、フィルタ処理などの処理が施された後、画像データは一旦メモリに記憶される。
【0146】
画像形成部Cでは、画像形成ユニットとして、像担持体であるドラム状の感光体21と、その外周に、該感光体21を帯電させる帯電手段(帯電工程)22、帯電した感光体の表面電位を検出する電位検出手段220、現像手段(現像工程)23、転写手段(転写工程)である転写搬送ベルト装置45、前記感光体21のクリーニング装置(クリーニング工程)26及び光除電手段(光徐電工程)としてのPCL(プレチャージランプ)27が各々動作順に配置されている。また、現像手段23の下流側には感光体21上に現像されたパッチ像の反射濃度を測定する反射濃度検出手段222が設けられている。感光体21には、本発明に係わる有機感光体を使用し、図示の時計方向に駆動回転される。
【0147】
回転する感光体21へは帯電手段22による一様帯電がなされた後、像露光手段(像露光工程)30としての露光光学系により画像処理部Bのメモリから呼び出された画像信号に基づいた像露光が行われる。書き込み手段である像露光手段30としての露光光学系は図示しないレーザダイオードを発光光源とし、回転するポリゴンミラー31、fθレンズ34、シリンドリカルレンズ35を経て反射ミラー32により光路が曲げられ主走査がなされるもので、感光体21に対してAoの位置において像露光が行われ、感光体21の回転(副走査)によって静電潜像が形成される。本実施の形態の一例では文字部に対して露光を行い静電潜像を形成する。
【0148】
本発明の画像形成装置においては、感光体上に静電潜像を形成するに際し、発振波長が350〜500nmの半導体レーザ又は発光ダイオードを像露光光源として用いる。これらの像露光光源を用いて、書込みの主査方向の露光ドット径を10〜50μmに絞り込み、有機感光体上にデジタル露光を行うことにより、600dpi(dpi:2.54cm当たりのドット数)以上から2500dpiの高解像度の電子写真画像をうることができる。
【0149】
前記露光ドット径とは該露光ビームの強度がピーク強度の1/e2以上の領域の主走査方向にそった露光ビームの長さ(Ld:長さが最大位置で測定する)を云う。
【0150】
用いられる光ビームとしては半導体レーザを用いた走査光学系及びLEDの固体スキャナー等があり、光強度分布についてもガウス分布及びローレンツ分布等があるがそれぞれのピーク強度の1/e2以上の領域を本発明に係わる露光ドット径とする。
【0151】
感光体21上の静電潜像は現像手段23によって反転現像が行われ、感光体21の表面に可視像のトナー像が形成される。本発明の画像形成方法では、該現像手段に用いられる現像剤には重合トナーを用いることが好ましい。形状や粒度分布が均一な重合トナーを本発明に係わる有機感光体と併用することにより、より鮮鋭性が良好な電子写真画像を得ることができる。
【0152】
〈トナー〉
本発明の有機感光体上に形成された静電潜像は現像によりトナー像として顕像化される。現像に用いられるトナーは、粉砕トナーでも、重合トナーでもよいが、本発明に係わるトナーとしては、安定した粒度分布を得られる観点から、重合法で作製できる重合トナーが好ましい。
【0153】
重合トナーとはトナー用バインダーの樹脂の生成とトナー形状がバインダー樹脂の原料モノマーの重合と、必要によりその後の化学的処理により形成されるトナーを意味する。より具体的には懸濁重合、乳化重合等の重合反応と、必要によりその後に行われる粒子同士の融着工程を経て形成されるトナーを意味する。
【0154】
なお、トナーの体積平均粒径、即ち、上記50%体積粒径(Dv50)は2〜9μm、より好ましくは3〜7μmであることが望ましい。この範囲とすることにより、解像度を高くすることができる。さらに上記の範囲と組み合わせることにより、小粒径トナーでありながら、微細な粒径のトナーの存在量を少なくすることができ、長期に亘ってドット画像の再現性が改善され、鮮鋭性の良好な、安定した画像を形成することができる。
【0155】
〈現像剤〉
本発明に係わるトナーは、一成分現像剤でも二成分現像剤として用いてもよい。
【0156】
一成分現像剤として用いる場合は、非磁性一成分現像剤、あるいはトナー中に0.1〜0.5μm程度の磁性粒子を含有させ磁性一成分現像剤としたものがあげられ、いずれも使用することができる。
【0157】
又、キャリアと混合して二成分現像剤として用いることができる。この場合は、キャリアの磁性粒子として、鉄、フェライト、マグネタイト等の金属、それらの金属とアルミニウム、鉛等の金属との合金等の従来から公知の材料を用いることが出来る。特にフェライト粒子が好ましい。上記磁性粒子は、その体積平均粒径としては15〜100μm、より好ましくは25〜80μmのものがよい。
【0158】
キャリアの体積平均粒径の測定は、代表的には湿式分散機を備えたレーザ回折式粒度分布測定装置「ヘロス(HELOS)」(シンパティック(SYMPATEC)社製)により測定することができる。
【0159】
キャリアは、磁性粒子が更に樹脂により被覆されているもの、あるいは樹脂中に磁性粒子を分散させたいわゆる樹脂分散型キャリアが好ましい。コーティング用の樹脂組成としては、特に限定は無いが、例えば、オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、スチレン−アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、エステル系樹脂或いはフッ素含有重合体系樹脂等が用いられる。また、樹脂分散型キャリアを構成するための樹脂としては、特に限定されず公知のものを使用することができ、例えば、スチレン−アクリル系樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素系樹脂、フェノール樹脂等を使用することができる。
【0160】
転写紙搬送部Dでは、画像形成ユニットの下方に異なるサイズの転写紙Pが収納された転写紙収納手段としての給紙ユニット41(A)、41(B)、41(C)が設けられ、また側方には手差し給紙を行う手差し給紙ユニット42が設けられていて、それらの何れかから選択された転写紙Pは案内ローラ43によって搬送路40に沿って給紙され、給紙される転写紙Pの傾きと偏りの修正を行う対の給紙レジストローラ44によって転写紙Pは一時停止を行ったのち再給紙が行われ、搬送路40、転写前ローラ43a、給紙経路46及び進入ガイド板47に案内され、感光体21上のトナー画像が転写位置Boにおいて転写極24及び分離極25によって転写搬送ベルト装置45の転写搬送ベルト454に載置搬送されながら転写紙Pに転写され、該転写紙Pは感光体21面より分離し、転写搬送ベルト装置45により定着手段50に搬送される。
【0161】
定着手段50は定着ローラ51と加圧ローラ52とを有しており、転写紙Pを定着ローラ51と加圧ローラ52との間を通過させることにより、加熱、加圧によってトナーを定着させる。トナー画像の定着を終えた転写紙Pは排紙トレイ64上に排出される。
【0162】
以上は転写紙の片側への画像形成を行う状態を説明したものであるが、両面複写の場合は排紙切換部材170が切り替わり、転写紙案内部177が開放され、転写紙Pは破線矢印の方向に搬送される。
【0163】
更に、搬送機構178により転写紙Pは下方に搬送され、転写紙反転部179によりスイッチバックさせられ、転写紙Pの後端部は先端部となって両面複写用給紙ユニット130内に搬送される。
【0164】
転写紙Pは両面複写用給紙ユニット130に設けられた搬送ガイド131を給紙方向に移動し、給紙ローラ132で転写紙Pを再給紙し、転写紙Pを搬送路40に案内する。
【0165】
再び、上述したように感光体21方向に転写紙Pを搬送し、転写紙Pの裏面にトナー画像を転写し、定着手段50で定着した後、排紙トレイ64に排紙する。
【0166】
本発明の画像形成装置としては、上述の感光体と、現像器、クリーニング器等の構成要素をプロセスカートリッジとして一体に結合して構成し、このユニットを装置本体に対して着脱自在に構成しても良い。又、帯電器、像露光器、現像器、転写又は分離器、及びクリーニング器の少なくとも1つを感光体とともに一体に支持してプロセスカートリッジを形成し、装置本体に着脱自在の単一ユニットとし、装置本体のレールなどの案内手段を用いて着脱自在の構成としても良い。
【0167】
図4は、本発明の一実施の形態を示すカラー画像形成装置の断面構成図である。
【0168】
このカラー画像形成装置は、タンデム型カラー画像形成装置と称せられるもので、4組の画像形成部(画像形成ユニット)10Y、10M、10C、10Bkと、無端ベルト状中間転写体ユニット7と、給紙搬送手段21及び定着手段24とから成る。画像形成装置の本体Aの上部には、原稿画像読み取り装置SCが配置されている。
【0169】
イエロー色の画像を形成する画像形成部10Yは、第1の像担持体としてのドラム状の感光体1Yの周囲に配置された帯電手段(帯電工程)2Y、露光手段(露光工程)3Y、現像手段(現像工程)4Y、一次転写手段(一次転写工程)としての一次転写ローラ5Y、クリーニング手段6Yを有する。マゼンタ色の画像を形成する画像形成部10Mは、第1の像担持体としてのドラム状の感光体1M、帯電手段2M、露光手段3M、現像手段4M、一次転写手段としての一次転写ローラ5M、クリーニング手段6Mを有する。シアン色の画像を形成する画像形成部10Cは、第1の像担持体としてのドラム状の感光体1C、帯電手段2C、露光手段3C、現像手段4C、一次転写手段としての一次転写ローラ5C、クリーニング手段6Cを有する。黒色画像を形成する画像形成部10Bkは、第1の像担持体としてのドラム状の感光体1Bk、帯電手段2Bk、露光手段3Bk、現像手段4Bk、一次転写手段としての一次転写ローラ5Bk、クリーニング手段6Bkを有する。
【0170】
前記4組の画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Bkは、感光体ドラム1Y、1M、1C、1Bkを中心に、回転する帯電手段2Y、2M、2C、2Bkと、像露光手段3Y、3M、3C、3Bkと、回転する現像手段4Y、4M、4C、4Bk、及び、感光体ドラム1Y、1M、1C、1Bkをクリーニングするクリーニング手段5Y、5M、5C、5Bkより構成されている。
【0171】
前記画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Bkは、感光体1Y、1M、1C、1Bkにそれぞれ形成するトナー画像の色が異なるだけで、同じ構成であり、画像形成ユニット10Yを例にして詳細に説明する。
【0172】
画像形成ユニット10Yは、像形成体である感光体ドラム1Yの周囲に、帯電手段2Y(以下、単に帯電手段2Y、あるいは、帯電器2Yという)、露光手段3Y、現像手段4Y、クリーニング手段5Y(以下、単にクリーニング手段5Y、あるいは、クリーニングブレード5Yという)を配置し、感光体ドラム1Y上にイエロー(Y)のトナー画像を形成するものである。また、本実施の形態においては、この画像形成ユニット10Yのうち、少なくとも感光体ドラム1Y、帯電手段2Y、現像手段4Y、クリーニング手段5Yを一体化するように設けている。
【0173】
帯電手段2Yは、感光体ドラム1Yに対して一様な電位を与える手段であって、本実施の形態においては、感光体ドラム1Yにコロナ放電型の帯電器2Yが用いられている。
【0174】
像露光手段3Yは、帯電器2Yによって一様な電位を与えられた感光体ドラム1Y上に、画像信号(イエロー)に基づいて露光を行い、イエローの画像に対応する静電潜像を形成する手段であって、この露光手段3Yとしては、感光体ドラム1Yの軸方向にアレイ状に発光素子を配列したLEDと結像素子(商品名;セルフォックレンズ)とから構成されるもの、あるいは、レーザ光学系などが用いられる。
【0175】
本発明の画像形成装置としては、上述の感光体と、現像器、クリーニング器等の構成要素をプロセスカートリッジ(画像形成ユニット)として一体に結合して構成し、この画像形成ユニットを装置本体に対して着脱自在に構成しても良い。又、帯電器、像露光器、現像器、転写又は分離器、及びクリーニング器の少なくとも1つを感光体とともに一体に支持してプロセスカートリッジ(画像形成ユニット)を形成し、装置本体に着脱自在の単一画像形成ユニットとし、装置本体のレールなどの案内手段を用いて着脱自在の構成としても良い。
【0176】
無端ベルト状中間転写体ユニット7は、複数のローラにより巻回され、回動可能に支持された半導電性エンドレスベルト状の第2の像担持体としての無端ベルト状中間転写体70を有する。
【0177】
画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Bkより形成された各色の画像は、一次転写手段としての一次転写ローラ5Y、5M、5C、5Bkにより、回動する無端ベルト状中間転写体70上に逐次転写されて、合成されたカラー画像が形成される。給紙カセット20内に収容された転写材(定着された最終画像を担持する支持体:例えば普通紙、透明シート等)としての転写材Pは、給紙手段21により給紙され、複数の中間ローラ22A、22B、22C、22D、レジストローラ23を経て、二次転写手段としての二次転写ローラ5bに搬送され、転写材P上に二次転写してカラー画像が一括転写される。カラー画像が転写された転写材Pは、定着手段24により定着処理され、排紙ローラ25に挟持されて機外の排紙トレイ26上に載置される。ここで、中間転写体や転写材等の感光体上に形成されたトナー画像の転写支持体を総称して転写媒体と云う。
【0178】
一方、二次転写手段としての二次転写ローラ5bにより転写材Pにカラー画像を転写した後、転写材Pを曲率分離した無端ベルト状中間転写体70は、クリーニング手段6bにより残留トナーが除去される。
【0179】
画像形成処理中、一次転写ローラ5Bkは常時、感光体1Bkに当接している。他の一次転写ローラ5Y、5M、5Cはカラー画像形成時にのみ、それぞれ対応する感光体1Y、1M、1Cに当接する。
【0180】
二次転写ローラ5bは、ここを転写材Pが通過して二次転写が行われる時にのみ、無端ベルト状中間転写体70に当接する。
【0181】
また、装置本体Aから筐体8を支持レール82L、82Rを介して引き出し可能にしてある。
【0182】
筐体8は、画像形成部10Y、10M、10C、10Bkと、無端ベルト状中間転写体ユニット7とから成る。
【0183】
画像形成部10Y、10M、10C、10Bkは、垂直方向に縦列配置されている。感光体1Y、1M、1C、1Bkの図示左側方には無端ベルト状中間転写体ユニット7が配置されている。無端ベルト状中間転写体ユニット7は、ローラ71、72、73、74を巻回して回動可能な無端ベルト状中間転写体70、一次転写ローラ5Y、5M、5C、5Bk、及びクリーニング手段6bとから成る。
【0184】
次に図5は本発明の有機感光体を用いたカラー画像形成装置(少なくとも有機感光体の周辺に帯電手段、露光手段、複数の現像手段、転写手段、クリーニング手段及び中間転写体を有する複写機あるいはレーザビームプリンタ)の構成断面図である。ベルト状の中間転写体70は中程度の抵抗の弾性体を使用している。
【0185】
1は像形成体として繰り返し使用される回転ドラム型の感光体であり、矢示の反時計方向に所定の周速度をもって回転駆動される。
【0186】
感光体1は回転過程で、帯電手段(帯電工程)2により所定の極性・電位に一様に帯電処理され、次いで不図示の像露光手段(像露光工程)3により画像情報の時系列電気デジタル画素信号に対応して変調されたレーザビームによる走査露光光等による画像露光を受けることにより目的のカラー画像のイエロー(Y)の色成分像(色情報)に対応した静電潜像が形成される。
【0187】
次いで、その静電潜像がイエロー(Y)の現像手段:現像工程(イエロー色現像器)4Yにより第1色であるイエロートナーにより現像される。この時第2〜第4の現像手段(マゼンタ色現像器、シアン色現像器、ブラック色現像器)4M、4C、4Bkの各現像器は作動オフになっていて感光体1には作用せず、上記第1色目のイエロートナー画像は上記第2〜第4の現像器により影響を受けない。
【0188】
中間転写体70はローラ79a、79b、79c、79d、79eで張架されて時計方向に感光体1と同じ周速度をもって回転駆動されている。
【0189】
感光体1上に形成担持された上記第1色目のイエロートナー画像が、感光体1と中間転写体70とのニップ部を通過する過程で、1次転写ローラ5aから中間転写体70に印加される1次転写バイアスにより形成される電界により、中間転写体70の外周面に順次中間転写(1次転写)されていく。
【0190】
中間転写体70に対応する第1色のイエロートナー画像の転写を終えた感光体1の表面は、クリーニング装置6aにより清掃される。
【0191】
以下、同様に第2色のマゼンタトナー画像、第3色のシアントナー画像、第4色のクロ(ブラック)トナー画像が順次中間転写体70上に重ね合わせて転写され、目的のカラー画像に対応した重ね合わせカラートナー画像が形成される。
【0192】
2次転写ローラ5bで、2次転写対向ローラ79bに対応し平行に軸受させて中間転写体70の下面部に離間可能な状態に配設してある。
【0193】
感光体1から中間転写体70への第1〜第4色のトナー画像の順次重畳転写のための1次転写バイアスはトナーとは逆極性で、バイアス電源から印加される。その印加電圧は、例えば+100V〜+2kVの範囲である。
【0194】
感光体1から中間転写体70への第1〜第3色のトナー画像の1次転写工程において、2次転写ローラ5b及び中間転写体クリーニング手段6bは中間転写体70から離間することも可能である。
【0195】
ベルト状の中間転写体70上に転写された重ね合わせカラートナー画像の第2の画像担持体である転写材Pへの転写は、2次転写ローラ5bが中間転写体70のベルトに当接されると共に、対の給紙レジストローラ23から転写紙ガイドを通って、中間転写体70のベルトに2次転写ローラ5bとの当接ニップに所定のタイミングで転写材Pが給送される。2次転写バイアスがバイアス電源から2次転写ローラ5bに印加される。この2次転写バイアスにより中間転写体70から第2の画像担持体である転写材Pへ重ね合わせカラートナー画像が転写(2次転写)される。トナー画像の転写を受けた転写材Pは定着手段24へ導入され加熱定着される。
【0196】
本発明の画像形成装置は電子写真複写機、レーザプリンター、LEDプリンター及び液晶シャッター式プリンター等の電子写真装置一般に適応するが、更に、電子写真技術を応用したディスプレー、記録、軽印刷、製版及びファクシミリ等の装置にも幅広く適用することができる。
【実施例】
【0197】
以下、実施例をあげて本発明を詳細に説明するが、本発明の様態はこれに限定されない。尚、下記文中「部」とは「質量部」を表す。
【0198】
感光体1の作製
下記の様に感光体1を作製した。
【0199】
中間層
洗浄済み円筒状アルミニウム基体(切削加工により十点表面粗さRz:0.81μmに加工した)上に、下記中間層塗布液を浸漬塗布法で塗布し、120℃30分で乾燥し、乾燥膜厚5μmの中間層を形成した。
【0200】
下記中間層分散液を同じ混合溶媒にて二倍に希釈し、一夜静置後に濾過(フィルター;日本ポール社製リジメッシュフィルター公称濾過精度:5ミクロン、圧力;50kPa)し、中間層塗布液を作製した。
【0201】
(中間層分散液の作製)
バインダー樹脂:(例示ポリアミドN−1) 1部
ルチル形酸化チタン(一次粒径35nm;末端に水酸基を有するジメチルポリシロキサンで表面処理を行ない、疎水化度を33に調製した酸化チタン顔料) 5.6部
エタノール/n−プロピルアルコール/THF(=45/20/30質量比)10部
上記成分を混合し、サンドミル分散機を用い、10時間、バッチ式にて分散して、中間層分散液を作製した。
【0202】
電荷発生層:CGL
電荷発生物質(CGM):例示化合物CGM−2 24部
ポリビニルブチラール樹脂「エスレックBL−1」(積水化学社製) 12部
2−ブタノン/シクロヘキサノン=4/1(v/v) 300部
上記組成物を混合し、サンドミルを用いて分散し、電荷発生層塗布液を調製した。この塗布液を浸漬塗布法で塗布し、前記中間層の上に乾燥膜厚0.5μmの電荷発生層を形成した。
【0203】
電荷輸送層1(CTL1)
電荷輸送物質(例示化合物CTMH−2) 225部
ポリカーボネート(Z300:三菱ガス化学社製) 300部
酸化防止剤(Irganox1010:日本チバガイギー社製) 6部
ジクロロメタン 2000部
シリコンオイル(KF−54:信越化学社製) 1部
を混合し、溶解して電荷輸送層塗布液1を調製した。この塗布液を前記電荷発生層の上に浸漬塗布法で塗布し、110℃70分の乾燥を行い、乾燥膜厚18.0μmの電荷輸送層1を形成した。
【0204】
〈ポリテトラフルオロエチレン樹脂粒子(PTFE粒子)分散液の調製〉
PTFE粒子(PT1:数平均一次粒径0.12μm) 200部
トルエン 600部
フッ素系クシ型グラフトポリマー(商品名GF300、東亜合成化学(株)製)15部を混合した後ガラスビーズを用いたサンドグラインダー((株)アメックス製)にて分散し、PTFE粒子分散液を調製した。
【0205】
〈電荷輸送層2(CTL2)〉
PTFE粒子分散液 815部
電荷輸送物質(CTMH−2) 150部
シロキサン変性ポリカーボネート樹脂 150部
ポリカーボネート(Z300:三菱ガス化学社製) 150部
酸化防止剤(例示化合物1−1) 12部
THF:テトラヒドロフラン 2800部
シリコンオイル(KF−54:信越化学社製) 4部
を混合し、溶解して電荷輸送層塗布液2を調製した。この塗布液を前記電荷輸送層1の上に円形スライドホッパ型塗布機で塗布し、110℃70分の乾燥を行い、乾燥膜厚2.0μmの電荷輸送層2(表面層)を形成し、感光体1を作製した。
【0206】
感光体2〜10の作製
感光体1の作製において、中間層のポリアミド樹脂、電荷発生物質、電荷輸送層1及び2の電荷輸送物質及び電荷輸送層2の含フッ素樹脂微粒子の種類を表1のように変化させた以外は感光体1と同様にして感光体2〜10を作製した。但し、感光体10は電荷輸送層2に含フッ素樹脂微粒子を含有させないで作製した。
【0207】
感光体11の作製
感光体1の作製において、電荷輸送層1及び2の電荷輸送物質を下記のベンジジン化合物に変えた以外は同様にして感光体11を作製した。
【0208】
【化33】

【0209】
【表1】

【0210】
PTFE、Hは下記のフッ素系樹脂微粒子を示す。
【0211】
PTFE:ポリエチレンテレフタレート樹脂粒子
H:三フッ化エチレン−四フッ化エチレンの共重合樹脂粒子
又、表1中の接触角は前記した方法で測定し、絶対値で表示した。
【0212】
本発明に用いるトナー及び該トナーを用いた現像剤を作製した。
【0213】
次に、下記のごとくしてトナーを作製した。
【0214】
*トナー1−Bk、トナー1−Y、トナー1−M、トナー1−Cの作製
n−ドデシル硫酸ナトリウム=0.90kgと純水10.0Lを入れ撹拌溶解する。この液に、撹拌下、リーガル330R(キャボット社製カーボンブラック)1.20kgを徐々に加え、ついで、サンドグラインダー(媒体型分散機)を用いて、20時間連続分散した。分散後、大塚電子社製・電気泳動光散乱光度計ELS−800を用いて、上記分散液の粒径を測定した結果、重量平均粒径で122nmであった。また、静置乾燥による質量法で測定した上記分散液の固形分濃度は16.6質量%であった。この分散液を「着色剤分散液1」とする。
【0215】
ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.055kgをイオン交換水4.0Lに混合し、室温下撹拌溶解する。これを、アニオン界面活性剤溶液Aとする。
【0216】
ノニルフェニルアルキルエーテル0.014kgをイオン交換水4.0Lに混合し、室温下撹拌溶解する。これを、ノニオン界面活性剤溶液Aとする。
【0217】
過硫酸カリウム=223.8gをイオン交換水12.0Lに混合し、室温下撹拌溶解する。これを、開始剤溶液Aと呼ぶ。
【0218】
温度センサー、冷却管、窒素導入装置を付けた100Lの反応釜に、数平均分子量(Mn)が3500のポリプロピレンエマルジョン3.41kgとアニオン界面活性剤溶液Aとノニオン界面活性剤溶液Aとを入れ、撹拌を開始する。次いで、イオン交換水44.0Lを加える。
【0219】
加熱を開始し、液温度が75℃になったところで、開始剤溶液Aを全量添加する。その後、液温度を75℃±1℃に制御しながら、スチレン14.3kgとアクリル酸n−ブチル2.88kgとメタクリル酸0.8kgとt−ドデシルメルカプタン548gとを投入する。
【0220】
さらに、液温度を80℃±1℃に上げて、6時間加熱撹拌を行った。液温度を40℃以下に冷却し撹拌を停止する。ポールフィルターで濾過し、これをラテックスA1とした。
【0221】
なお、ラテックスA1中の樹脂粒子のガラス転移温度は59℃、軟化点は116℃、分子量分布は、重量平均分子量=1.34万、重量平均粒径は125nmであった。
【0222】
過硫酸カリウム=200.7gをイオン交換水12.0Lに混合し、室温下撹拌溶解する。これを、開始剤溶液Bとする。
【0223】
温度センサー、冷却管、窒素導入装置、櫛形バッフルを付けた100Lの反応釜に、ノニオン界面活性剤溶液Aを入れ、撹拌を開始する。次いで、イオン交換水44.0Lを投入する。
【0224】
加熱を開始し、液温度が70℃になったところで、開始剤溶液Bを添加する。この時、スチレン11.0kgとアクリル酸n−ブチル4.00kgとメタクリル酸1.04kgとt−ドデシルメルカプタン9.02gとをあらかじめ混合した溶液を投入する。
【0225】
その後、液温度を72℃±2℃に制御して、6時間加熱撹拌を行った。さらに、液温度を80℃±2℃に上げて、12時間加熱撹拌を行った。
【0226】
液温度を40℃以下に冷却し撹拌を停止する。ポールフィルターで濾過し、この濾液をラテックスB1とした。
【0227】
なお、ラテックスB1中の樹脂粒子のガラス転移温度は58℃、軟化点は132℃、分子量分布は、重量平均分子量=24.5万、重量平均粒径は110nmであった。
【0228】
塩析剤としての塩化ナトリウム=5.36kgとイオン交換水20.0Lを入れ、撹拌溶解する。これを、塩化ナトリウム溶液Aとする。
【0229】
温度センサー、冷却管、窒素導入装置、櫛形バッフルを付けた100LのSUS反応釜(撹拌翼はアンカー翼)に、上記で作製したラテックスA1=20.0kgとラテックスB1=5.2kgと着色剤分散液1=0.4kgとイオン交換水20.0kgとを入れ撹拌する。ついで、35℃に加温し、塩化ナトリウム溶液Aを添加する。その後、5分間放置した後に、昇温を開始し、液温度85℃まで5分で昇温する(昇温速度=10℃/分)。液温度85℃±2℃にて、6時間加熱撹拌し、塩析/融着させる。その後、30℃以下に冷却し撹拌を停止する。目開き45μmの篩いで濾過し、この濾液を会合液とする。ついで、遠心分離機を使用し、会合液よりウェットケーキ状の非球形状粒子を濾取した。その後、イオン交換水により洗浄した。
【0230】
上記で洗浄を完了したウェットケーキ状の着色粒子を、40℃の温風で乾燥し、着色粒子を得た。更に風力分級機により念入りな分級をして50%体積粒径(Dv50)が4.2μmの着色粒子を得た。さらに、この着色粒子に疎水性シリカ(疎水化度=70、数平均一次粒子径=12nm)を1.0質量%添加し、50%体積粒径(Dv50)が4.2μmの「トナー1−Bk」を得た。
【0231】
トナー1−Bkの製造において、カーボンブラック10部の代わりにC.I.ピグメントイエロー185を8部使用した以外同様にして50%体積粒径(Dv50)が4.8μmの「トナー1−Y」を得た。
【0232】
トナー1−Bkの製造において、カーボンブラック10部の代わりにC.I.ピグメントレッド122を10部使用した以外同様にして50%体積粒径(Dv50)が4.3μmの「トナー1−M」を得た。
【0233】
トナー1−Bkの製造において、カーボンブラック10部の代わりにC.I.ピグメントブルー15:3を5部使用した以外同様にして50%体積粒径(Dv50)が4.9μmの「トナー1−C」を得た。
【0234】
トナーの50%体積粒径(Dv50)の測定は、コールターカウンターTAIIを用いて測定することができる。コールターカウンターTAIIではアパーチャー径=100μmのアパーチャーを用いて2.0〜40μmの範囲における粒径分布を用いて測定されたものを示す。
【0235】
現像剤の作製
上記の各トナー、即ちトナー1−Bk〜トナー1−C(全部で4種のトナー)に、シリコーン樹脂を被覆した50%体積粒径(Dv50)が45μmのフェライトキャリアを混合し、トナー濃度6%の現像剤をそれぞれ調製し、評価に供した。これらの現像剤4種ををトナーに対応してそれぞれ現像剤1−Bk〜現像剤1−Cとする。
【0236】
キャリアの50%体積粒径(Dv50)の測定は、代表的には湿式分散機を備えたレーザ回折式粒度分布測定装置「ヘロス(HELOS)」(シンパティック(SYMPATEC)社製)により測定することができる。
【0237】
《評価1》
表2のように感光体及びトナーを組み合わせ、基本的に図1の構成を有する市販のデジタル複写機Konica「Sitios」7085改造機((コニカミノルタビジネステクノロジーズ(株)社製)スコロトロン帯電器、半導体レーザー像露光器、反転現像手段、クリーニングブレードを有する)に搭載し、像露光光源として405nmの短波長レーザ光源を用い、ハーフトーン画像の評価及び鮮鋭性の評価を行った。詳しくは、スタート時及び5000枚毎に、文字画像、ハーフトーン画像を評価し、計2万枚の印刷迄評価した。評価項目と評価基準を以下に示す。
【0238】
画像形成のその他の条件
プロセススピード:420mm/sec
帯電条件:帯電極に、スコロトロン帯電極を用い、該帯電極のグリット電圧を650Vに設定した。
【0239】
現像剤:キャリア及びトナーを含有する二成分現像剤(現像剤1Bk)を用いた。
【0240】
画像評価の結果を表2にまとめた。
【0241】
(ハーフトーン画像(筋)の評価)
書き込み密度を600dpi、1200dpi、2400dpiの3段階に変化させて、ハーフトーン画像を作製し、下記のような評価基準で評価した。
【0242】
◎:600dpi、1200dpi及び2400dpi共、ドット画像が明瞭に再現されていて、dpiの増加と共にハーフトーン画像が、dpiの増加と共によりなめらかに再現されている(高画質特性が非常に良好)。
【0243】
○:600dpi及び1200dpiは、ドット画像が明瞭に再現されていて、ハーフトーン画像が、dpiの増加と共になめらかに再現されているが、2400dpiでは小さな擦り傷のため、ドット画像が荒れており、ハーフトーン画像のなめらかさが不十分(高画質特性が良好)。
【0244】
△:600dpiのハーフトーン画像のドット画像がなめらかに再現されているが、1200及び2400dpiのハーフトーン画像は擦り傷で荒れており、ハーフトーン画像のなめらかさが不十分である(高画質特性の再評価が必要)。
【0245】
ランクD:600dpiのハーフトーン画像でも擦り傷で荒れており、なめらかさが不十分(高画質特性が不十分)
(鮮鋭性の評価)
細線の再現性、画像の鮮鋭性を、漢字の文字潰れで評価した。3ポイント、5ポイントの漢字の文字画像を形成し、下記の判断基準で評価した。
【0246】
◎:3ポイント、5ポイントとも明瞭に再現され、容易に判読可能
○:3ポイントは一部文字つぶれが発生しているが判読可能、5ポイントは明瞭であり、容易に判読可能
×:3ポイントは殆ど判読不能、5ポイントも一部あるいは全部が判読不能
画像評価の結果を表2にまとめた。
【0247】
【表2】

【0248】
表2より明らかなように、一般式(1)の電荷輸送物質と含フッ素樹脂微粒子を併用した表面層の有機感光体1〜9は、短波長レーザ露光での小さいドットの再現性が安定しており、ハーフトーン画像もなめらかに再現されており、鮮鋭性も良好であるが、本発明外の表面層に含フッ素樹脂微粒子を含有していない感光体10は、擦り傷によるドット再現性の劣化が大きく、ハーフトーン画像のなめらかさが劣化しており、鮮鋭性も劣化している。又、本発明外のCTMR−1の電荷輸送物質を用いた感光体11は、擦り傷によるドット再現性の劣化が大きく、ハーフトーン画像のなめらかさの評価も劣っている。
【0249】
《評価2》
評価1で行った評価条件の内、露光器の半導体レーザの発振波長を405nmの短波長レーザから480nmの短波長レーザに変更した以外は、評価1と同じにして、評価した。評価2の評価結果は、ほぼ、評価1の評価結果と同じであった。
【0250】
《評価3》
前記評価2の評価条件で、露光器の半導体レーザを発光ダイオード(発振波長:380nm)に変更した以外は評価2と同様にして評価した。発光ダイオードを像露光光源として用いても、評価結果はほぼ評価2と同様であった。
【0251】
感光体21〜感光体35の作製
感光体1の作製において、電荷輸送層1及び電荷輸送層2の電荷輸送物質を表3のように変更し感光体21〜35を作製した。
【0252】
【表3】

【0253】
《評価4》
感光体21〜35を用いて、感光体1と同様の評価を行なった。評価結果を表4にまとめた。
【0254】
【表4】

【0255】
表4に見られるように、一般式(1)の電荷輸送物質と含フッ素樹脂微粒子を併用した表面層の有機感光体21〜35は、短波長レーザ露光での小さいドットの再現性が安定しており、ハーフトーン画像もなめらかに再現されており、鮮鋭性も良好である。
【0256】
《評価5》
表5のように感光体及びトナーを組み合わせ、基本的に図2の構成を有する市販のフルカラー複合機8050(コニカミノルタビジネステクノロジーズ(株)社製)改造機に搭載し、像露光光源として405nmの短波長レーザ光源を用い、カラー画像の評価を評価1と同様にハーフトーン画像の評価及び鮮鋭性の評価を行なった。
【0257】
評価条件
感光体の線速:220mm/sec
現像剤:キャリア及びトナーを含有する二成分現像剤(現像剤1Y、1M、1C、1Bk)を用いた。
【0258】
結果を表5に示す。
【0259】
【表5】

【0260】
表5に見られるように、カラー画像の評価でも、表2の各感光体はハーフトーン画像がなめらかに再現され、鮮鋭性も良好であった。
【図面の簡単な説明】
【0261】
【図1】本発明に係わる円形スライドホッパー型塗布装置例の断面図である。
【図2】本発明に係わる円形スライドホッパー型塗布装置例の斜視図である。
【図3】本発明の画像形成装置の機能が組み込まれた概略図である。
【図4】本発明の一実施の形態を示すカラー画像形成装置の断面構成図である。
【図5】本発明の有機感光体を用いたカラー画像形成装置の構成断面図である。
【符号の説明】
【0262】
10Y、10M、10C、10Bk 画像形成ユニット
1Y、1M、1C、1Bk 感光体
2Y、2M、2C、2Bk 帯電手段
3Y、3M、3C、3Bk 露光手段
4Y、4M、4C、4Bk 現像手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機感光体上に発振波長が350〜500nmの半導体レーザ又は発光ダイオードの書込み光源を用いて静電潜像を形成する露光工程を有する画像形成方法に用いられる有機感光体において、導電性支持体上に感光層を有し、下記一般式(1)の電荷輸送物質及び含フッ素樹脂微粒子を含有する表面層を有することを特徴とする有機感光体。
一般式(1) A−B−C
[一般式(1)中、Bは非共役ユニットの連結基を表し、A及びCはそれぞれ少なくとも1つのビフェニルアミン基を含有する1価の有機基を表す。]
【請求項2】
前記一般式(1)のBが下記の一般式Hの2価の有機基であることを特徴とする請求項1に記載の有機感光体。
【化1】

[一般式H中、R1,R2及びR3は、それぞれ水素原子、アルキル基またはハロゲン原子を表す]
【請求項3】
前記一般式(1)のBが下記の一般式Iの2価の有機基であることを特徴とする請求項1に記載の有機感光体。
【化2】

[一般式I中、Rはアルキレン基、アラルキレン基、アルケレン基または複素環式基を表す。]
【請求項4】
前記一般式(1)のBが下記の一般式Jの2価の有機基であることを特徴とする請求項1に記載の有機感光体。
【化3】

[一般式J中、R4、R5及びR6はそれぞれ独立して水素原子、アルキル基またはアルコキシ基またはハロゲン原子を表す;Xは−O−、−S−または
【化4】

(式中、R7、R8は水素原子、アルキル基またはアリール基を表し、nは1〜4の整数を表す)を示す。]
【請求項5】
前記一般式(1)のBが下記の一般式Kの2価の有機基であることを特徴とする請求項1に記載の有機感光体。
【化5】

[一般式K中、R9及びR10はそれぞれ独立して水素原子、アルキル基、アルコキシ基またはハロゲン原子を、Xは−O−、−S−、−(R11)C(R12)−、−N(R13)−、−N=N−、−C24−または−CH=CH−を表す。但し、R11〜R13は水素原子、アルキル基またはアリール基を表す。Yは連結基、−CH2−、−C24−または−CH=CH−を表す。]
【請求項6】
前記一般式(1)のBが下記の一般式Lの2価の有機基であることを特徴とする請求項1に記載の有機感光体。
【化6】

[一般式L中、Xは−O−、−S−または
【化7】

(式中、R14、R15は水素原子、アルキル基またはアリール基を示す。)を示す。]
【請求項7】
前記一般式(1)のBが下記の一般式Mの2価の有機基であることを特徴とする請求項1に記載の有機感光体。
【化8】

[一般式M中、R16及びR17はそれぞれ独立して水素原子、アルキル基、アルコキシ基またはハロゲン原子を表す;Xは−O−、−S−または−(R18)C(R19)−、(R18およびR19はそれぞれ水素原子、置換基を有してもよい、アルキル基またはアリール基を表す)を表す]
【請求項8】
前記感光層が電荷発生物質を含有する電荷発生層及び電荷輸送物質を含有する電荷輸送層を有することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の有機感光体。
【請求項9】
前記電荷輸送層が複数の電荷輸送層から構成され、且つ最上層の電荷輸送層が前記一般式(1)の電荷輸送物質及び含フッ素樹脂微粒子を含有することを特徴とする請求項8に記載の有機感光体。
【請求項10】
前記一般式(1)の電荷輸送物質の分子量が500〜1500であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の有機感光体
【請求項11】
前記含フッ素樹脂微粒子の数平均一次粒径が0.02μm以上、0.20μm未満であることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の有機感光体。
【請求項12】
前記電荷発生物質が多環キノン化合物であることを特徴とする請求項8〜11のいずれか1項に記載の有機感光体。
【請求項13】
前記電荷発生物質がペリレン系化合物であることを特徴とする請求項8〜11のいずれか1項に記載の有機感光体。
【請求項14】
前記導電性支持体と電荷発生層の間にN型半導性粒子を含有する中間層を有することを特徴とする請求項8〜13のいずれか1項に記載の有機感光体。
【請求項15】
前記導電性支持体が円筒状であり、表面層が円形スライドホッパー型塗布装置を用いて塗布されたことを特徴とする請求項1〜14のいずれか1項に記載の有機感光体。
【請求項16】
有機感光体上に発振波長が350〜500nmの半導体レーザ又は発光ダイオードの書込み光源を用いて静電潜像を形成する露光工程を有し、該静電潜像をトナー像に顕像化する現像工程を有する画像形成方法において、前記有機感光体が導電性支持体上に感光層を有し、該感光層が下記一般式(1)の電荷輸送物質を含有し、且つ表面層が含フッ素樹脂微粒子を含有することを特徴とする画像形成方法。
一般式(1) A−B−C
[一般式(1)中、Bは2価の有機基を表し、A及びCはそれぞれ少なくとも1つのビフェニルアミン基を含有する1価の有機基を表す。]
【請求項17】
有機感光体上に発振波長が350〜500nmの半導体レーザ又は発光ダイオードの書込み光源を用いて静電潜像を形成する露光手段を有し、該静電潜像をトナー像に顕像化する現像手段を有する画像形成装置において、前記有機感光体が導電性支持体上に感光層を有し、該感光層が下記一般式(1)の電荷輸送物質を含有し、且つ表面層が含フッ素樹脂微粒子を含有することを特徴とする画像形成装置。
一般式(1) A−B−C
[一般式(1)中、Bは2価の有機基を表し、A及びCはそれぞれ少なくとも1つのビフェニルアミン基を含有する1価の有機基を表す。]

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−248563(P2007−248563A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−68719(P2006−68719)
【出願日】平成18年3月14日(2006.3.14)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】