説明

有機感光体、画像形成装置および画像形成用カートリッジ

【課題】露光光源として発振波長の短い半導体レーザや発光ダイオードなどを用いる場合であっても、形成される画像における干渉縞の発生が抑制される有機感光体、画像形成装置および画像形成用カートリッジを提供すること。
【解決手段】有機感光体は、円筒状の導電性支持体上に中間層を有し、この中間層上に有機感光層が積層されてなる有機感光体において、中間層は、表面粗さRaが0.40μm以下であり、かつ、特定の一方向において、周期(P)が50〜400nm、深さ(D)が100nm以上、アスペクト比(D/P)が1〜5である凹凸形状のモスアイ構造を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機感光体、この有機感光体を具えた画像形成装置および画像形成用カートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、複写機やプリンタなどの画像形成装置には、より一層の高画質化が要請されている。
このような要請に対し、露光光源として半導体レーザや発光ダイオードなどを用いることが検討されている。しかしながら、このような光源から出射される光は干渉性単色光であるので、当該光により有機感光体が露光されると、当該有機感光体を構成する電荷輸送層、電荷発生層および中間層などの層界面や支持体表面で反射した光間の干渉により、形成される画像に干渉縞が発生するという問題がある。
【0003】
例えば特許文献1〜7には、干渉縞の発生を抑制するために、有機感光体の支持体表面を加工処理して粗面化する方法、電荷発生層での吸光度を大きくするため当該電荷発生層に特定の色素を含有させる方法、中間層での光散乱を大きくするため白色微粒子や樹脂微粒子を添加させる方法などが提案されているが、露光光の短波長化に伴い、干渉縞の発生を十分に抑制することができず、さらなる改良が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平3−62039号公報
【特許文献2】特公平5−14902号公報
【特許文献3】特開平8−6280号公報
【特許文献4】特開2000−105481号公報
【特許文献5】特開平9−54444号公報
【特許文献6】特開2000−199977号公報
【特許文献7】特開2004−198734号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであって、その目的は、露光光源として発振波長の短い半導体レーザや発光ダイオードなどを用いる場合であっても、形成される画像における干渉縞の発生が抑制される有機感光体、画像形成装置および画像形成用カートリッジを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の有機感光体は、円筒状の導電性支持体上に中間層を有し、この中間層上に有機感光層が積層されてなる有機感光体において、
中間層は、表面粗さRaが0.40μm以下であり、かつ、特定の一方向において、周期(P)が50〜400nm、深さ(D)が100nm以上、アスペクト比(D/P)が1〜5である凹凸形状のモスアイ構造を有することを特徴とする。
【0007】
本発明の有機感光体においては、前記導電性支持体がアルミニウムよりなり、
前記中間層が、陽極酸化処理とエッチング処理とによって形成されたアルマイト層とすることができる。
【0008】
本発明の有機感光体においては、前記中間層が、前記導電性支持体上に中間層形成用塗布液を塗布し、乾燥することにより塗膜を形成し、陽極酸化処理およびエッチング処理により凹凸パターンが形成されたスタンパを鋳型として前記塗膜に押圧することによって形成されたものとすることができる。
【0009】
本発明の画像形成装置は、上記の有機感光体と、
前記有機感光体の表面に一様な電位を付与する帯電手段と、
帯電された有機感光体表面を露光することにより静電潜像を形成する露光手段とを有し、
前記露光手段が、露光光源として発振波長が350〜500nmの半導体レーザまたは発光ダイオードを備えるものであることを特徴とする。
【0010】
本発明の画像形成装置においては、前記帯電手段が接触帯電方式のものであることが好ましい。
【0011】
本発明の画像形成用カートリッジは、画像形成装置本体に脱着可能な画像形成用カートリッジであって、
上記の有機感光体を具えてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の有機感光体によれば、露光光源として発振波長の短い半導体レーザや発光ダイオードなどを用いる場合であっても、当該有機感光体を構成する中間層が、露光光源の発振波長より小さい周期(P)および深さ(D)の凹部を有する凹凸形状のモスアイ構造を有することにより、当該有機感光体を露光した際に中間層における光の反射が低減されることから、形成される画像における干渉縞の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の有機感光体における中間層のモスアイ構造を説明するための断面図である。
【図2】本発明の画像形成装置の構成の一例を示す説明用断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0015】
<有機感光体>
本発明の有機感光体は、円筒状の導電性支持体上に中間層を有し、この中間層上に有機感光層が積層されてなるものであり、中間層が、表面粗さRaが特定範囲にあり、かつ、周期(P)、深さ(D)およびアスペクト比が特定範囲にある凹凸形状のモスアイ構造を有するものとされる。
【0016】
本発明の有機感光体の層構成は、特に限定されるものではないが、具体的には下記(1)および(2)の層構成が挙げられる。
(1)導電性支持体上に、中間層、有機感光層として電荷発生層および電荷輸送層がこの順に積層されてなり、前記電荷輸送層が最表面層となる層構成。
(2)導電性支持体上に、中間層、有機感光層として電荷発生物質および電荷輸送物質を含む単層がこの順に積層されてなり、前記単層が最表面層となる層構成。
【0017】
本発明において、有機感光体とは、電子写真感光体の構成に必要不可欠な電荷発生機能および電荷輸送機能の少なくとも一方の機能が有機化合物により発揮されて構成されるものをいい、公知の有機電荷発生物質または有機電荷輸送物質から構成される感光層を有する感光体、電荷発生機能と電荷輸送機能とが高分子錯体により構成される感光層を有する感光体など公知の有機感光体全てを含むものをいう。
【0018】
以下、本発明の有機感光体が上記(1)の層構成である場合について具体的に説明する。
【0019】
〔導電性支持体〕
本発明の有機感光体を構成する導電性支持体としては、円筒状のものであって、導電性を有するものであれば特に限定されるものではないが、例えば、アルミニウム、銅、クロム、ニッケル、亜鉛、ステンレスなどの金属をドラム状またはシート状に成形したもの、アルミニウムや銅などの金属箔をプラスチックフィルムにラミネートしたもの、アルミニウム、酸化インジウムおよび酸化スズなどをプラスチックフィルムに蒸着したもの、導電性物質を単独またはバインダー樹脂と共に塗布して導電層を設けた金属、プラスチックフィルムおよび紙などが挙げられる。
中間層が、後述するアルマイト層により構成される場合においては、導電性支持体としては、アルミニウムが用いられる。
【0020】
〔中間層〕
(表面粗さRa)
中間層の表面粗さRaは、0.40μm以下であり、好ましくは0.20μm以上0.38μm以下である。
中間層の表面粗さRaが0.40μmを超える場合においては、有機感光体を露光した際に中間層における光の散乱が大きくなり、干渉縞の発生を十分に抑制することができないおそれがある。
なお、中間層の表面とは、有機感光層が積層される面をいう。
【0021】
本発明において、表面粗さRaは、以下のようにして測定されるものである。
表面粗さRaは、「JIS B0601:2001」に準じて、表面粗さ計(東京精密社製 Surfcom 1400D)を使用して測定した値とされる。
−表面粗さの測定条件−
測定長さL:4.0mm
基準長さLr:0.8mm
カットオフ波長λc:0.8mm
触針先端形状:先端角度60°円錐
触針先端半径:2μm
測定速度:0.3mm/sec
測定倍率:10000倍
なお、測定は各試料とも軸方向に3点(中心および中心と端部の中間点)測定し、その平均値を表面粗さRaとする。
【0022】
(モスアイ構造)
中間層においては、当該中間層の表面粗さRa0.40μm以下を形成する凹凸形状が、特定の一方向において、周期(P)が50〜400nm、好ましくは50〜300nm、深さ(D)が100nm以上、好ましくは100nm以上500nm以下、アスペクト比(D/P)が1〜5であるモスアイ構造により構成される。
具体的には、中間層においては、特定の一方向、例えば導電性支持体の軸方向や導電性支持体の周方向において、周期(P)、深さ(D)およびアスペクト比(D/P)が特定範囲にある凹部を有する凹凸形状が形成され、当該凹凸形状が中間層の外周面全面にわたって形成されることにより、モスアイ構造が構成される。
【0023】
モスアイ(Moth−Eye)構造とは、いわゆる蛾の目の構造と同様のものであり、規則的な突起(凸部)または細孔(凹部)が形成されてなる凹凸構造をいう。
【0024】
中間層が、特定の一方向において、周期(P)、深さ(D)およびアスペクト比(D/P)が特定範囲にある凹凸形状のモスアイ構造を有することにより、例えば半導体レーザや発光ダイオードなどの露光光源の発振波長より小さい周期(P)および深さ(D)の凹部を有する凹凸構造を有する構成とすることができることから、当該有機感光体を露光した際に中間層における光の反射が低減され、干渉縞の発生を抑制することができる。
周期(P)が50nm未満または400nmを超える場合においては、干渉縞の発生を十分に抑制することができないおそれがある。
また、深さ(D)が100nm未満である場合においては、干渉縞の発生を十分に抑制することができないおそれがあり、深さ(D)が500nmを超える場合においては、有機感光体の製造過程において、洗浄工程の際に凹凸形状が変形し、干渉縞の発生を抑制する効果が低減するおそれがある。
さらに、アスペクト比(D/P)が1未満である場合においては、干渉縞の発生を十分に抑制することができないおそれがあり、アスペクト比(D/P)が5を超える場合においては、リーク現象が生じ、黒ポチなどの画像ノイズが発生するおそれがある。
【0025】
本発明において、モスアイ構造の周期(P)および深さ(D)は、走査型電子顕微鏡(SEM)により観察し、凹部10個の平均値により求められるものである。
【0026】
中間層は、例えば、図1に示すように、導電性支持体30の表面上に形成された基底部31Aと、この基底部31A上に形成されたモスアイ構造部31Bとにより構成される。モスアイ構造部31Bは、複数の細孔である凹部32Aが、例えば導電性支持体30の軸方向(図1の矢印方向)に沿って、周期(P)で規則的に連続して並んで形成されている。この例における中間層31は、導電性支持体30の周方向においても、複数の凹部32Aが周期(P)で規則的に連続して導電性支持体30の周方向に沿って並んで形成されている。すなわち、中間層31の外周面全面に、複数の凹部32Aが周期(P)で規則的に連続して縦横に並んで形成されている。
【0027】
隣り合う二つの凹部32Aとの間に形成される突起である凸部32Bは、円錐形または四角錐形などの錐形体であり、図1に示す例においては、凸部32Bの頂部は、鋭角に形成されているが、平坦に形成されたものであってもよい。
【0028】
なお、本発明において、周期(P)とは、凹部32Aの開口幅の最大値、すなわち隣り合う二つの凸部32Bの頂部間の距離をいい、深さ(D)とは、凹部32Aの深さ、すなわち凸部32Bの高さをいう。
【0029】
本発明において、中間層は以下(1)および(2)の構成とすることができる。
(1)陽極酸化処理とエッチング処理とによって形成されたアルマイト層である構成(以下、「アルマイト層構成」という。)。
(2)導電性支持体上に、中間層形成用塗布液を塗布し、乾燥することにより塗膜を形成し、陽極酸化処理およびエッチング処理により凹凸パターンが形成されたスタンパを鋳型として塗膜に押圧することによって形成された構成(以下、「硬化型中間層構成」という。)。
【0030】
(1)アルマイト層構成
中間層がアルマイト層により構成される場合において、当該アルマイト層は具体的には以下のようにして形成することができる。
まず、アルミニウムよりなる導電性支持体の表面上を従来公知の方法により切削加工処理、サンドブラスト加工処理および液体ホーニング加工処理を行った後、陽極酸化処理およびエッチング処理を行うことにより、アルマイト層が形成される。
陽極酸化処理は、酸性電解液またはアルカリ電解液を用いることができるが、規則性の高い細孔を得る観点から、酸性電解液を用いることが好ましい。酸性電解液としては、シュウ酸、硫酸またはこれらの混合物などが挙げられる。規則性の高い細孔(凹部)を得る観点から、電解液としてシュウ酸を用いた場合においては、化成電圧が25〜30V、電解液として硫酸を用いた場合においては、化成電圧が30〜60Vとすることが好ましい。
エッチング処理としては、アルカリエッチング、酸性エッチング、電解エッチングなどが挙げられるが、表面粗さRaを制御する観点から、酸性エッチングが好ましい。具体的には、酸性エッチング液としては、リン酸、ギ酸、酢酸、クエン酸などが挙げられ、黒ポチの原因となるピット形成を抑制する観点から、エッチング液にアソードインヒビターを混合させることが好ましい。
これらの処理の複数回行うことにより、特定の凹凸形状のモスアイ構造を有するアルマイト層が形成されるが、陽極酸化処理の処理時間またはエッチング処理の処理時間を調整することにより、凹部の深さ(D)を制御することができる。
【0031】
アルマイト層の層厚は、1〜15μmであることが好ましく、より好ましくは2〜10μmである。
【0032】
本発明においては、中間層がアルマイト層により構成される場合において、当該アルマイト層(中間層)上に、バインダー樹脂(以下、「補助層用バインダー樹脂」ともいう。)中に各種の導電性微粒子や金属酸化物微粒子などの無機微粒子が含有された補助層が形成されていてもよい。
アルマイト層上に補助層が形成される場合においては、有機感光体を露光した際に中間層における光の散乱を十分に抑制することができ、干渉縞の発生を十分に抑制することができる。具体的には、当該アルマイト層が比較的小さい波長の光の散乱を抑制し、当該補助層が比較的波長の大きい光の散乱を抑制することにより、光の散乱を十分に抑制することができる。
【0033】
補助層を形成する方法としては、例えば、補助層用バインダー樹脂を公知の溶媒に溶解して補助層形成用塗布液を調製し、この補助層形成用塗布液をアルマイト層(中間層)上に浸漬、塗布し、乾燥する方法が挙げられる。
【0034】
補助層用バインダー樹脂としては、例えば、カゼイン、ポリビニルアルコール、ニトロセルロース、エチレン−アクリル酸コポリマー、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ゼラチンなどが挙げられるが、アルコール可溶性のポリアミド樹脂であることが好ましい。
【0035】
金属酸化物微粒子としては、例えば、アルミナ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化スズ、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化ビスマスなどの金属酸化物微粒子が挙げられ、スズをドープした酸化インジウム、アンチモンをドープした酸化スズおよび酸化ジルコニウムなどの超微粒子を用いることもできる。これらの金属酸化物微粒子は、単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。金属酸化物微粒子を2種類以上組み合わせて用いる場合においては、当該金属酸化物微粒子が固溶体状態であってもよいし、また、融着状態であってもよい。
このような金属酸化物微粒子の数平均一次粒径は、0.3μm以下であることが好ましく、より好ましくは0.1μm以下である。
【0036】
本発明において、金属酸化物微粒子の数平均一次粒径は、以下のように測定されるものである。
すなわち、走査型電子顕微鏡「JSM−7500F」(日本電子社製)により10000倍の拡大写真を撮影し、ランダムに300個の金属酸化物微粒子をスキャナーにより取り込んだ写真画像(凝集粒子を除く)を自動画像処理解析装置「LUZEX AP」(ソフトウエアバージョン Ver.1.32、ニレコ社製)を使用して算出する。
【0037】
補助層を形成するために用いられる溶媒としては、無機微粒子を良好に分散し、ポリアミド樹脂を溶解するものが好ましく、具体的には、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、t−ブタノール、sec−ブタノールなどの炭素数2〜4のアルコール類が、ポリアミド樹脂の溶解性と塗布性の観点から、特に好ましい。また、保存性、無機微粒子の分散性を向上するために、前記溶媒と併用することのできる助溶媒としては、例えば、メタノール、ベンジルアルコール、トルエン、メチレンクロライド、シクロヘキサノン、テトラヒドロフランなどが挙げられる。
【0038】
無機微粒子の分散手段としては、特に限定されないが、例えば、超音波分散機、ボールミル、サンドグラインダーおよびホモミキサーなどの分散機が挙げられる。
【0039】
補助層における無機微粒子の含有量は、体積率で10〜90%であることが好ましく、より好ましくは25〜75%である。
【0040】
補助層の乾燥方法は、溶媒の種類、層厚に応じて適宜選択することができるが、熱乾燥による方法が好ましい。
【0041】
補助層の層厚は、0.2〜10μmであることが好ましく、より好ましくは0.3〜5μmである。
補助層の表面粗さRaは、0.4μm以下となることが好ましい。
【0042】
(2)硬化型中間層構成
中間層が硬化型中間層構成により構成される場合において、当該硬化型中間層は具体的には以下のようにして形成することができる。
まず、スタンパ基体に対して、従来公知の切削加工処理、サンドブラスト加工処理および液体ホーニング加工処理を行った後、陽極酸化処理およびエッチング処理を行うことにより、凹凸パターンが形成されたスタンパを作製する。そして、中間層形成用塗布液を調製し、この中間層形成用塗布液を導電性支持体上に浸漬、塗布することにより塗膜を形成する。その後、塗膜を予備乾燥し、凹凸パターンが形成されたスタンパを鋳型として、塗膜に押圧し、乾燥することにより、硬化型中間層が形成される。
【0043】
この硬化型中間層構成においては、中間層形成用塗布液には、例えば、金属アルコキシド、有機金属キレートおよびシランカップリング剤から選ばれた少なくとも1つを含むことが好ましい。特に、下記一般式(1)で表わされる有機金属キレートと、下記一般式(2)で表わされるシランカップリング剤とを含むことが好ましい。
【0044】
一般式(1):(RO)MX
上記一般式(1)中、Rはアルキル基を示し、Mはチタニウム、ジルコニウムまたはアルミニウムを示し、Xはキレート形成基であってアセト酢酸エステルまたはβジケトン残基を示す。また、mとnは、1以上の整数を示す。
上記一般式(1)で表わされる有機金属キレートにおいては、Mがチタニウムであることが特に好ましく、mとnが2の整数であることが特に好ましい。
【0045】
一般式(2):ZSiY
上記一般式(2)中、Zは加水分解性基であってアルコキシ基、ハロゲン原子またはアミノ基を示し、Aはアルキル基またはアリール基を示し、Yは末端にアミノ基を有する有機官能基、すなわち−BNHR′または−BNH2 を示す。ただし、R′はアルキル基またはアリール基を示し、Bはアルキレン基または−O−、−NH−、−CO−を含むアルキレン基を示す。aとcは、1以上の整数を示し、bは0以上の整数を示す。また、a+b+cは4である。
【0046】
この硬化型中間層構成においては、塗膜の乾燥方法は、熱乾燥による方法が好ましい。
【0047】
硬化型中間層の層厚は、0.5〜10μmであることが好ましく、より好ましくは1〜5μmである。
【0048】
〔有機感光層〕
(電荷発生層)
本発明の有機感光体を構成する有機感光層における電荷発生層は、電荷発生物質およびバインダー樹脂(以下、「電荷発生層用バインダー樹脂」ともいう。)よりなるものである。
【0049】
電荷発生物質としては、特に限定されるものではないが、例えば、スーダンレッド、ダイアンブルーなどのアゾ顔料;ピレンキノン、アントアントロン、ピランスロンなどのキノン顔料;キノシアニン顔料;ペリレン顔料;インジゴ、チオインジゴなどのインジゴ顔料;フタロシアニン顔料などが挙げられる。これらの電荷発生物質は、単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0050】
電荷発生層用バインダー樹脂としては、公知の樹脂を用いることができ、例えば、ポリスチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、ポリカーボネート樹脂、シリコーン樹脂、メラミン樹脂、並びにこれらの樹脂の内2つ以上を含む共重合体樹脂(例えば、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体樹脂)、ポリ−ビニルカルバゾール樹脂などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0051】
電荷発生層の形成方法は、電荷発生層用バインダー樹脂を溶媒で溶解した溶液中に分散機を用いて電荷発生物質を分散して電荷発生層形成用塗布液を調製し、この電荷発生層形成用塗布液を塗布機で一定の層厚に中間層上または補助層上に塗布して塗膜を形成し、この塗膜を乾燥する方法が好ましい。
【0052】
電荷発生層を形成するために用いられる溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、メチレンクロライド、1,2−ジクロロエタン、メチルエチルケトン、シクロヘキサン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、テトラヒドロフラン、1−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、ピリジン、ジエチルアミンなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0053】
電荷発生物質の分散手段としては、特に限定されないが、例えば、超音波分散機、ボールミル、サンドグラインダーおよびホモミキサーなどの分散機が挙げられる。
【0054】
電荷発生層用バインダー樹脂に対する電荷発生物質の添加量は、電荷発生層用バインダー樹脂100質量部に対して1〜600質量部であることが好ましく、より好ましくは50〜500質量部である。
【0055】
電荷発生層の層厚は、電荷発生物質の特性、電荷発生層用バインダー樹脂の特性および混合割合などにより異なるが、0.01〜5μmであることが好ましく、より好ましくは0.05〜3μmである。なお、電荷発生層形成用塗布液は塗布前に異物や凝集物を濾過することで画像欠陥の発生を防ぐことができる。前記顔料を真空蒸着することによって形成すこともできる。
【0056】
(電荷輸送層)
本発明の有機感光体を構成する有機感光層における電荷輸送層は、電荷輸送物質(CTM)およびバインダー樹脂(以下、「電荷輸送層用バインダー樹脂」ともいう。)よりなるものである。
【0057】
電荷輸送物質としては、例えば、カルバゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、チアゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、イミダゾロン誘導体、イミダゾリジン誘導体、ビスイミダゾリジン誘導体、スチリル化合物、ヒドラゾン化合物、ピラゾリン化合物、オキサゾロン誘導体、ベンズイミダゾール誘導体、キナゾリン誘導体、ベンゾフラン誘導体、アクリジン誘導体、フェナジン誘導体、アミノスチルベン誘導体、トリアリールアミン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、スチルベン誘導体、ベンジジン誘導体、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリ−1−ビニルピレンおよびポリ−9−ビニルアントラセン、トリフェニルアミン誘導体などが挙げられる。これらの電荷輸送物質は、単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0058】
電荷輸送層の形成方法は、電荷輸送層用バインダー樹脂と電荷輸送物質を溶解して電荷輸送層形成用塗布液を調製し、この電荷輸送層形成用塗布液を塗布機で一定の層厚に電荷発生層上に塗布して塗膜を形成し、この塗膜を乾燥する方法が好ましい。
【0059】
電荷輸送層を形成するために用いられる溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、メチレンクロライド、1,2−ジクロロエタン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、ピリジン、ジエチルアミンなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0060】
電荷輸送層用バインダー樹脂に対する電荷輸送物質の添加量は、電荷輸送層用バインダー樹脂100質量部に対して10〜500質量部であることが好ましく、より好ましくは20〜100質量部である。
【0061】
電荷輸送層の層厚は、電荷輸送物質の特性、電荷輸送層用バインダー樹脂の特性および混合割合などにより異なるが、5〜40μmであることが好ましく、より好ましくは10〜30μmである。
【0062】
電荷輸送層には、必要に応じて酸化防止剤、電子導電剤、安定剤などが含有されていてもよい。酸化防止剤については特願平11−200135号に記載のものが挙げられ、電子導電剤については特開昭50−137543号、同58−76483号などに記載のものが挙げられる。
【0063】
本発明の有機感光体においては、有機感光層上に保護層などが形成されていてもよい。
【0064】
以上のように、本発明の有機感光体によれば、露光光源として発振波長の短い半導体レーザや発光ダイオードなどを用いる場合であっても、当該有機感光体を構成する中間層が、露光光源の発振波長より小さい周期(P)および深さ(D)の凹部を有する凹凸形状のモスアイ構造を有することにより、当該有機感光体を露光した際に中間層における光の反射が低減されることから、形成される画像における干渉縞の発生を抑制することができる。
【0065】
<画像形成装置>
本発明の画像形成装置は、本発明の有機感光体と、この有機感光体の表面に一様な電位を付与する帯電手段と、帯電された有機感光体表面を露光することにより静電潜像を形成する露光手段とを有し、露光手段が、光源として発振波長が350〜500nmの半導体レーザまたは発光ダイオードを備えるものである。
【0066】
以下、本発明の画像形成装置について具体的に説明する。図2は、本発明の画像形成装置の構成の一例を示す説明用断面図である。
この画像形成装置は、図2において矢印方向に回転されるドラム状の有機感光体10と、各々、この有機感光体10の外周面に沿って、有機感光体10の回転方向に従って並ぶよう配設された、有機感光体10の表面を一様に帯電させる帯電手段11、有機感光体10の表面を露光することにより静電潜像を形成する露光手段12、トナーを含む現像剤を用いて静電潜像を顕在化させることによりトナー像を形成する現像手段13、有機感光体10上に形成されたトナー像を転写領域において画像支持体Pに転写する転写手段14、有機感光体10に密着した状態にある画像支持体Pを分離させる分離手段15および有機感光体10上に残存している未転写のトナーを除去するクリーニング手段20とを備えている。16は、転写領域より搬送される画像支持体P上の未定着トナー像を定着させて画像を形成する定着手段である。
【0067】
有機感光体10は、上述した本発明の有機感光体であり、導電性支持体上に形成された中間層が、表面粗さRaが0.40μm以下であり、かつ、特定の一方向において、周期(P)が50〜400nm、深さ(D)が100nm以上、アスペクト比(D/P)が1〜5である凹凸形状のモスアイ構造を有するものである。この有機感光体10は、図2における紙面に対して垂直な方向に伸びる状態で配設されている。
【0068】
帯電手段11は、帯電部材である導電性ローラや磁気ブラシに電圧を印加して、被帯電体である有機感光体10に接触させ、有機感光体10の表面を所定の電位に帯電させる接触帯電方式のものであることが好ましい。なお、例えば制御グリッドと帯電極とを有するスコロトロン帯電器よりなる非接触帯電方式のものを用いることもできる。
【0069】
露光手段12は、光源として発振波長が350〜500nmの半導体レーザを備えるものである。また、光源として発振波長が350〜500nmの発光ダイオードを用いることもできる。
【0070】
現像手段13は、例えばマグネットを内蔵し現像剤を保持して回転する現像スリーブ131および有機感光体10とこの現像スリーブ131との間に直流および/または交流バイアス電圧を印加する電圧印加装置(図示せず)が設けられてなるものである。
【0071】
転写手段14は、例えばコロナ転写方式のものよりなり、接触転写方式のものを用いることもできる。
【0072】
分離手段15は、有機感光体10に密着した状態にある画像支持体Pの電荷を除去することによりこの画像支持体Pを有機感光体10から分離させるものであり、例えばコロトロン帯電器よりなるものが用いられる。
【0073】
定着手段16は、例えば、内部に加熱源を備えた加熱ローラ161と、この加熱ローラ161に定着ニップ部が形成されるよう圧接された状態で設けられた加圧ローラ162とにより構成されてなる熱ローラ定着方式のものである。
【0074】
クリーニング手段20は、例えば、先端部分が有機感光体10の表面に当接した状態で、有機感光体10の軸方向に伸びるよう設けられたウレタンゴムなどの弾性体よりなる板状の弾性ブレード201を備えられてなるものである。
【0075】
以上の画像形成装置においては、次のようにして画像形成動作が行われる。
すなわち、駆動源による動力が適宜の動力伝達手段により伝達されて有機感光体10が回転駆動されると、有機感光体10が帯電手段11によって所定の極性に帯電され、次いで、露光手段12によって露光されて照射箇所(露光領域)の電位が低下されることにより静電潜像が有機感光体10上に形成され、現像手段13によって現像剤を構成する有機感光体10の表面電位と同じ極性に帯電されたトナーが有機感光体10の静電潜像に付着して反転現像が行われ、これにより、トナー像が形成される。
次いで、転写手段14により有機感光体10上のトナー像が画像支持体Pに転写された後、分離手段15により有機感光体10と密着した状態にある画像支持体Pが分離され、その後、定着手段16によって定着処理が行われる。
【0076】
本発明の画像形成装置によれば、露光手段12の露光光源として発振波長の短い半導体レーザや発光ダイオードなどを用いる場合であっても、当該有機感光体10を構成する中間層が、露光光源の発振波長より小さい周期(P)および深さ(D)の凹部を有する凹凸形状のモスアイ構造を中間層が有することにより、当該有機感光体10を露光した際に中間層における光の反射が低減されることから、画像支持体P上に形成される画像において干渉縞の発生を抑制することができる。
【0077】
<画像形成用カートリッジ>
本発明の画像形成用カートリッジは、画像形成装置本体に脱着可能な構成とされており、例えば上記の画像形成装置においては、少なくとも有機感光体10を含み、必要に応じて、帯電手段11、現像手段13およびクリーニング手段20から選ばれる少なくとも1種以上が共通の支持体に装着されることにより一体化されて画像形成用カートリッジが構成されている。
【実施例】
【0078】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0079】
〔有機感光体の製造例1〕
(1)導電性支持体の作製
JIS6063合金の円筒状アルミニウム基体(φ30×360mm、インロー径:φ28.4mmの肉厚0.8mm、引張強度:210N/mm2 )を切削加工(表面粗さRa:0.35μm)した後、洗浄して導電性支持体〔1〕を作製した。
【0080】
(2)中間層の形成(アルマイト層構成)
得られた導電性支持体〔1〕について、液温20℃の0.01Mシュウ酸水溶液中において化成電圧40Vで10分間、陽極酸化処理を行い、その後、液温50℃の0.03Mリン酸溶液中において15分間浸漬しエッチング処理を行った。
次に、液温20℃の0.01Mシュウ酸水溶液中において化成電圧40Vで90秒間、陽極酸化処理を行った後に、液温50℃の0.05Mリン酸溶液中において6分間浸漬しエッチング処理を行う工程を合計5回繰り返した。その後、95℃の純水中で20分間熱処理を行って、凹凸形状のモスアイ構造が形成されたアルマイト層よりなる層厚3.0μmの中間層〔1〕を形成した。
なお、中間層〔1〕のモスアイ構造の周期(P)は100nm、深さ(D)は220nmであった。なお、この周期(P)および深さ(D)は、走査型電子顕微鏡(日本電子社製)を用い、加速電圧3kVの条件下で観察し、凹部10個を平均して求めた。また、中間層〔1〕の表面粗さRaは0.35μmであった。
【0081】
(3)有機感光層の形成
(電荷発生層の形成)
下記原料を分散機としてサンドミルを用いて、20時間の分散を行い、電荷発生層形成用塗布液〔1〕を調製した。
・電荷発生物質:チタニルフタロシアニン顔料(Cu−Kα特性X線回折スペクトル測定で5少なくとも27.3°の位置に最大回折ピークを有するもの) 20質量部
・バインダー樹脂:ポリビニルブチラール樹脂「#6000−C」(電気化学工業社製)
10質量部
・溶媒:酢酸t−ブチル 700質量部
・溶媒:4−メトキシ−4−メチル−2−ペンタノン 300質量部
上記中間層〔1〕の上に、この電荷発生層形成用塗布液〔1〕を浸漬塗布法によりで塗布して塗布膜を形成し、層厚0.8μmの電荷発生層〔1〕を形成した。
【0082】
(電荷輸送層の形成)
下記原料を混合して溶解し、電荷輸送層形成用塗布液〔1〕を調製した。
・電荷輸送物質:4−メトキシ−4′−(4−メチル−α−フェニルスチリル)トリフェニルアミン 75質量部
・バインダー樹脂:Z型ポリカーボネート「ユーピロンZ−300」(三菱エンジニアリングプラスチックス社製) 100質量部
・溶媒:テトラヒドロフラン/トルエン=7/3体積% 750質量部
・酸化防止剤:「Irganox1010」(日本チバガイギー社製) 2質量部
上記電荷発生層〔1〕上に、この電荷輸送層形成用塗布液〔1〕を浸漬塗布法により塗布して塗布膜を形成し、この塗布膜を120℃で70分間乾燥し、層厚25μmの電荷輸送層〔1〕を形成し、有機感光体〔1〕を製造した。
【0083】
〔有機感光体の製造例2〕
有機感光体の製造例1において、(2)中間層の形成での陽極酸化処理およびエッチング処理を行う工程を5回繰り返す際に、陽極酸化処理時間を90秒間から145秒間に変更したことの他は同様にして有機感光体〔2〕を製造した。
【0084】
〔有機感光体の製造例3〕
有機感光体の製造例1において、(2)中間層の形成での陽極酸化処理およびエッチング処理を行う工程を5回繰り返す際に、陽極酸化処理時間を90秒間から260秒間に変更したことの他は同様にして有機感光体〔3〕を製造した。
【0085】
〔有機感光体の製造例4〕
有機感光体の製造例1において、(2)中間層の形成での陽極酸化処理およびエッチング処理を行う工程を5回繰り返す際に、陽極酸化処理時間を90秒間から30秒間に変更したことの他は同様にして有機感光体〔4〕を製造した。
【0086】
〔有機感光体の製造例5〕
有機感光体の製造例1において、(1)導電性支持体の作製でのアルミニウム基材の切削加工を表面粗さRa0.35μmから0.30μmに変更すると共に、(2)中間層の形成において、エッチング処理時間を15分間から20分間に変更し、また、陽極酸化処理およびエッチング処理を行う工程を5回繰り返す際に、陽極酸化処理に用いるシュウ酸水溶液の濃度を0.01Mから0.30Mに、陽極酸化処理時間を90秒間から50秒間に変更したことの他は同様にして有機感光体〔5〕を製造した。
【0087】
〔有機感光体の製造例6〕
有機感光体の製造例5において、(2)中間層の形成での陽極酸化処理およびエッチング処理を行う工程を5回繰り返す際に、陽極酸化処理時間を50秒間から70秒間に変更したことの他は同様にして有機感光体〔6〕を製造した。
【0088】
〔有機感光体の製造例7〕
有機感光体の製造例1において、(1)導電性支持体の作製でのアルミニウム基材の切削加工を表面粗さRa0.35μmから0.03μmに変更することの他は同様にして有機感光体〔7〕を製造した。
【0089】
〔有機感光体の製造例8〕
有機感光体の製造例7において、(2)中間層の形成において得られたアルマイト層上に下記に示す補助層〔1〕を形成したことの他は同様にして有機感光体〔8〕を製造した。
(2−1)補助層の形成
下記原料を分散機としてサンドミルを用いて、バッチ式により10時間の分散を行い、補助層形成用塗布液〔1〕を調製した。
・バインダー樹脂:ポリアミド樹脂「CM8000」(東レ社製) 1質量部
・溶媒:イソプロピルアルコール 10質量部
・金属酸化物微粒子:数平均一次粒径35nmブルッカイト形酸化チタン 3質量部
この補助層形成用塗布液〔1〕を同一の溶媒で二倍に希釈し、一夜静置後にリジメッシュフィルター(日本ポール社製;公称濾過精度5μm、圧力50kPa)により濾過し、この塗布液を浸漬塗布法により塗布して塗布膜を形成し、この塗布膜を120℃で30分間乾燥し、層厚0.3μmの補助層〔1〕を形成した。なお、この補助層〔1〕の表面粗さRaは0.28μmであった。
【0090】
〔比較用有機感光体の製造例1〕
有機感光体の製造例1において、(2)中間層の形成を行わず、中間層であるアルマイト層を設けなかったことの他は同様にして比較用有機感光体〔1〕を製造した。
【0091】
〔比較用有機感光体の製造例2〕
有機感光体の製造例1において、(1)導電性支持体の作製でのアルミニウム基材の切削加工を表面粗さRa0.35μmから0.42μmに変更したことの他は同様にして比較用有機感光体〔2〕を製造した。
【0092】
〔比較用有機感光体の製造例3〕
有機感光体の製造例1において、(2)中間層の形成での陽極酸化処理およびエッチング処理を行う工程を5回繰り返す際に、陽極酸化処理時間を90秒間から20秒間に変更したことの他は同様にして比較用有機感光体〔3〕を製造した。
【0093】
〔比較用有機感光体の製造例4〕
有機感光体の製造例1において、(2)中間層の形成での陽極酸化処理およびエッチング処理を行う工程を5回繰り返す際に、陽極酸化処理時間を90秒間から300秒間に変更したことの他は同様にして比較用有機感光体〔4〕を製造した。
【0094】
〔有機感光体の製造例9〕
(1)導電性支持体の作製
JIS6063合金の円筒状アルミニウム基体(φ30×350mm、インロー径:φ28.4mmの肉厚0.8mm、引張強度:210N/mm2 )を切削加工(表面粗さRa:0.03μm)した後、洗浄して導電性支持体〔9〕を作製した。
【0095】
(2)中間層の形成(硬化型中間層構成)
(2−1)スタンパの作製
JIS6063合金のアルミニウムよりなる円筒状のスタンパ基体(φ30×350mm、インロー径:φ28.4mmの肉厚0.8mm、引張強度:210N/mm2 )を切削加工(表面粗さRa:0.35μm)した後、液温20℃の0.01Mシュウ酸水溶液中において化成電圧40Vで90秒間、陽極酸化処理を行った後に、液温50℃の0.05Mリン酸溶液中において6分間浸漬しエッチング処理を行う工程を合計5回繰り返した。その後、95℃の純水中で20分間熱処理を行い、凹凸パターンが形成されたスタンパ〔1〕を作製した。
【0096】
(2−2)硬化型中間層の形成
下記原料を混合し中間層形成用塗布液〔1〕を調製した。
・有機金属キレート:チタンアセト酢酸キレート「TC−750」(マツモトファインケミカル社製) 20質量部
・シランカップリング剤:「KBM−903」(信越化学社製) 13質量部
・溶媒:2−プロパノール 100質量部
上記導電性支持体〔9〕上に、この中間層形成用塗布液〔1〕を浸漬塗布法により塗布して塗布膜を形成し、この塗布膜を120℃で5分間乾燥した。そして、スタンパ〔1〕を鋳型として用いて、当該塗膜上に押圧し、120℃で20分間乾燥し層厚2μmの中間層〔9〕を形成した。なお、中間層〔9〕のモスアイ構造の周期(P)は100nm、深さ(D)は220nmであった。また、中間層〔9〕の表面粗さRaは0.35μmであった。
【0097】
(3)有機感光層の形成
(電荷発生層の形成)
下記原料を分散機としてサンドミルを用いて、20時間の分散を行い、電荷発生層形成用塗布液〔9〕を調製した。
・電荷発生物質:下記式(1)で表わされる化合物 20質量部
・バインダー樹脂:ポリビニルブチラール樹脂「#6000−C」(電気化学工業社製)
10質量部
・溶媒:酢酸t−ブチル 700質量部
・溶媒:4−メトキシ−4−メチル−2−ペンタノン 300質量部
上記中間層〔9〕の上に、この電荷発生層形成用塗布液〔9〕を浸漬塗布法によりで塗布して塗布膜を形成し、層厚0.8μmの電荷発生層〔9〕を形成した。
【0098】
【化1】

【0099】
(電荷輸送層の形成)
下記原料を混合して溶解し、電荷輸送層形成用塗布液〔9〕を調製した。
・電荷輸送物質:下記式(2)で表わされる化合物 75質量部
・バインダー樹脂:Z型ポリカーボネート「ユーピロンZ−300」(三菱エンジニアリングプラスチックス社製) 100質量部
・溶媒:テトラヒドロフラン/トルエン=7/3体積% 750質量部
・酸化防止剤:「Irganox1010」(日本チバガイギー社製) 3質量部
上記電荷発生層〔9〕上に、この電荷輸送層形成用塗布液〔9〕を浸漬塗布法により塗布して塗布膜を形成し、この塗布膜を120℃で70分間乾燥し、層厚25μmの電荷輸送層〔9〕を形成し、有機感光体〔9〕を製造した。
【0100】
【化2】

【0101】
〔有機感光体の製造例10〕
有機感光体の製造例9において、(2−1)スタンパの作製での陽極酸化処理およびエッチング処理を行う工程を5回繰り返す際に、陽極酸化処理時間を90秒間から145秒間に変更したことの他は同様にして有機感光体〔10〕を製造した。
【0102】
〔有機感光体の製造例11〕
有機感光体の製造例9において、(2−1)スタンパの作製での陽極酸化処理およびエッチング処理を行う工程を5回繰り返す際に、陽極酸化処理時間を90秒間から260秒間に変更したことの他は同様にして有機感光体〔11〕を製造した。
【0103】
〔有機感光体の製造例12〕
有機感光体の製造例9において、(2−1)スタンパの作製での陽極酸化処理およびエッチング処理を行う工程を5回繰り返す際に、陽極酸化処理時間を90秒間から30秒間に変更したことの他は同様にして有機感光体〔12〕を製造した。
【0104】
〔有機感光体の製造例13〕
有機感光体の製造例9において、(2−1)スタンパの作製でのスタンパ基体の切削加工を表面粗さRa0.35μmから0.30μmに変更すると共に、エッチング処理時間を15分間から20分間に変更し、また、陽極酸化処理およびエッチング処理を行う工程を5回繰り返す際に、陽極酸化処理に用いるシュウ酸水溶液の濃度を0.01Mから0.30Mに、陽極酸化処理時間を90秒間から50秒間に変更したことの他は同様にして有機感光体〔13〕を製造した。
【0105】
〔有機感光体の製造例14〕
有機感光体の製造例13において、(2−1)スタンパの作製での陽極酸化処理およびエッチング処理を行う工程を5回繰り返す際に、陽極酸化処理時間を50秒間から70秒間に変更したことの他は同様にして有機感光体〔14〕を製造した。
【0106】
〔比較用有機感光体の製造例5〕
有機感光体の製造例9において、(2)中間層の形成においてスタンパ〔1〕を押圧せず、そのまま中間層を設けたことの他は同様にして比較用有機感光体〔5〕を製造した。
【0107】
〔比較用有機感光体の製造例6〕
有機感光体の製造例9において、(2−1)スタンパの作製でのスタンパ基材の切削加工を表面粗さRa0.35μmから0.42μmに変更したことの他は同様にして比較用有機感光体〔6〕を製造した。
【0108】
〔比較用有機感光体の製造例7〕
有機感光体の製造例9において、(2−1)スタンパの作製での陽極酸化処理およびエッチング処理を行う工程を5回繰り返す際に、陽極酸化処理時間を90秒間から20秒間に変更したことの他は同様にして比較用有機感光体〔7〕を製造した。
【0109】
〔比較用有機感光体の製造例8〕
有機感光体の製造例9において、(2−1)スタンパの作製での陽極酸化処理およびエッチング処理を行う工程を5回繰り返す際に、陽極酸化処理時間を90秒間から300秒間に変更したことの他は同様にして比較用有機感光体〔8〕を製造した。
【0110】
【表1】

【0111】
〔実施例1〜14および比較例1〜8〕
得られた有機感光体〔1〕〜〔14〕および比較用有機感光体〔1〕〜〔8〕を、フルカラー複合機「bizhub C350」(コニカミノルタビジネステクノロジーズ社製)の書き込みドット径が可変可能な改造機に搭載し、露光光源として波長405nmの半導体レーザを用い、書き込み光源の主査方向の露光径を30μm、解像度を1200dpiとし、露光径のスポット露光が有機感光体面上で0.5mWとなるように設定すると共に、帯電手段として帯電ローラを用いた。高温高湿下(温度30℃、湿度80%RH)および低温低湿下(温度10℃、湿度20%RH)において、画素率7%の画像をA4紙に各々5万枚印刷する耐刷試験後に、下記評価を行った。結果を表2に示す。
【0112】
〔ドット画像〕
(1)1ドットライン
常温常湿下(温度22℃、湿度50%RH)において、白地のA4紙に1ドットラインと黒ベタ画像とを形成し、下記評価基準により評価した。なお、黒ベタ画像の画像濃度は、「RD−918」(マクベス社製)を用い、白地のA4紙の反射濃度を0として相対反射濃度として求めた。
−評価基準−
A:1ドットラインが連続して再現されており、黒ベタ画像の画像濃度が1.2以上(良好)
B:1ドットラインは連続して再現されているが、黒ベタ画像の画像濃度が1.2未満〜1.0以上(実用上問題なし)
C:1ドットラインが連続して再現されていない、または、1ドットラインが連続して再現されているが、黒ベタ画像の画像濃度が1.0未満(実用上問題あり)
【0113】
(2)2ドットライン
常温常湿下(温度22℃、湿度50%RH)において、白地のA4紙に、2ドットラインを黒ベタ画像中に形成し、下記評価基準により評価した。なお、黒ベタ画像の画像濃度は、「RD−918」(マクベス社製)を用い、白地のA4紙の反射濃度を0として相対反射濃度として求めた。
−評価基準−
A:2ドットラインが連続して再現されており、黒ベタ画像の画像濃度が1.2以上(良好)
B:2ドットラインは連続して再現されているが、黒ベタ画像の画像濃度が1.2未満〜1.0以上(実用上問題なし)
C:2ドットラインが連続して再現されていない、または、2ドットラインが連続して再現されているが、黒ベタ画像の画像濃度が1.0未満(実用上問題あり)
【0114】
〔黒ポチ〕
常温常湿下(温度22℃、湿度50%RH)において、白地のA4紙に白ベタ画像が形成された印刷物を5枚印刷し、周期性が有機感光体の周期と一致し、目視できる黒ポチ、黒筋状の画像欠陥の個数を下記評価基準により評価した。
−評価基準−
A:周期0.4mm以上の頻度で、印刷物全てについて5個以下の画像欠陥が発生(良好)
B:周期0.4mm以上の頻度で、印刷物1枚以上に6個以上10個以下の画像欠陥が発生(実用上問題なし)
C:周期0.4mm以上の頻度で、印刷物1枚以上に11個以上の画像欠陥が発生(実用上問題あり)
【0115】
〔カブリ〕
常温常湿下(温度22℃、湿度50%RH)において、白地のA4紙に白ベタ画像が形成し、形成された白ベタ画像について反射濃度を測定し、下記評価基準により評価した。なお、白ベタ画像の反射濃度は、「RD−918」(マクベス社製)を用い、白地のA4紙の反射濃度を0として相対反射濃度として求めた。
−評価基準−
A:反射濃度が0.010未満(良好)
B:反射濃度が0.010以上0.020以下(実用上問題なし)
C:反射濃度が0.020より大きい(実用上問題あり)
【0116】
〔干渉縞〕
常温常湿下(温度22℃、湿度50%RH)において、白地のA4紙に画像濃度0.4の全面ハーフトーン画像を形成し、下記評価基準により評価した。
−評価基準−
A:干渉縞が発生していない
B:干渉縞が部分的に発生(実用上問題なし)
C:干渉縞が全面に発生(実用上問題あり)
【0117】
〔絶縁破壊〕
高温高湿下(温度30℃、湿度80%RH)および低温低湿下(温度10℃、湿度20%RH)において、有機感光体の電荷リークによる絶縁破壊の発生の有無を評価した。
A:高温高湿下または低温低湿下においても電荷リークによる絶縁破壊が発生しない
B:高温高湿下または低温低湿下においても電荷リークによる絶縁破壊が発生
【0118】
【表2】

【符号の説明】
【0119】
10 有機感光体
11 帯電手段
12 露光手段
13 現像手段
131 現像スリーブ
14 転写手段
15 分離手段
16 定着手段
161 加熱ローラ
162 加圧ローラ
20 クリーニング手段
201 弾性ブレード
30 導電性支持体
31 中間層
31A 基低部
31B モスアイ構造部
32A 凹部
32B 凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状の導電性支持体上に中間層を有し、この中間層上に有機感光層が積層されてなる有機感光体において、
中間層は、表面粗さRaが0.40μm以下であり、かつ、特定の一方向において、周期(P)が50〜400nm、深さ(D)が100nm以上、アスペクト比(D/P)が1〜5である凹凸形状のモスアイ構造を有することを特徴とする有機感光体。
【請求項2】
前記導電性支持体がアルミニウムよりなり、
前記中間層が、陽極酸化処理とエッチング処理とによって形成されたアルマイト層であることを特徴とする請求項1に記載の有機感光体。
【請求項3】
前記中間層が、前記導電性支持体上に中間層形成用塗布液を塗布し、乾燥することにより塗膜を形成し、陽極酸化処理およびエッチング処理により凹凸パターンが形成されたスタンパを鋳型として前記塗膜に押圧することによって形成されたものであることを特徴とする請求項1に記載の有機感光体。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれかに記載の有機感光体と、
前記有機感光体の表面に一様な電位を付与する帯電手段と、
帯電された有機感光体表面を露光することにより静電潜像を形成する露光手段とを有し、
前記露光手段が、露光光源として発振波長が350〜500nmの半導体レーザまたは発光ダイオードを備えるものであることを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
前記帯電手段が接触帯電方式のものであることを特徴とする請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
画像形成装置本体に脱着可能な画像形成用カートリッジであって、
請求項1〜請求項3のいずれかに記載の有機感光体を具えてなることを特徴とする画像形成用カートリッジ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2013−50567(P2013−50567A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−188224(P2011−188224)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】