説明

有機溶媒中でリパーゼを用いる短鎖レチニルエステル及び長鎖酸又は長鎖エステルからの長鎖レチニルエステルの製造方法

酵素の存在下において短鎖レチニルエステル及び概ね長鎖の酸又はエステルから化学酵素的方法によってレチノールの長鎖エステルを製造する。種々の添加剤の使用によって目的エステルの収率を増大し、その精製を容易にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酵素の存在下において短鎖レチニルエステル及び適当な長鎖酸又はエステルから化学酵素処理(chemoenzymatic processing)によってレチノールの長鎖エステルを製造することに関する。
【背景技術】
【0002】
レチノール(ビタミンA)及びレチニルエステルは、長い間、局所的な利益をもたらすために化粧組成物に添加されてきた。レチノール自体は不安定であり、過剰に用いると毒性がある。しかし、長鎖レチニルエステルは、より安定であるために好ましい。
【0003】
長鎖レチニルエステルの古典的な化学的製造は、レチノールと長鎖酸、酸塩化物若しくはエステルとの反応又は長鎖脂肪酸エステルによる短鎖レチニルエステルのエステル交換を含む。これらの方法は、刺激の強い試薬又は高温のいずれかを使用するので、レチノール又はレチニルエステルのこれらの型の反応条件に対する不安定性の故に、問題を引き起こす場合がある。
【0004】
長鎖レチニルエステルの化学酵素合成についてはこれまでにいくつかの報告がなされている。これらの合成の多くは出発原料として高価で不安定なレチノールを使用する(非特許文献1〜4)。酢酸レチニルのようなレチニルエステルは、レチノールよりもはるかに安定であり、かなり安価である。いくつかの報告は、この材料を長鎖レチニルエステルの生体触媒による製造に出発材料として使用している。特許文献1は、有機溶媒中でビタミンA酢酸エステル及び脂肪酸を、O−メトキシポリエチレングリコールで変性されたリパーゼと共に用いて、長鎖レチニルエステルを製造した。目的生成物が適度な収量で得られるが、この方法は、成功させるためにはリパーゼの別の変性を必要とする。この変性を必要としない方法がより望ましいであろう。特許文献2は、無溶媒条件下におけるレチノール又はレチニルエステル及び動物又は植物由来の脂肪又は油からの長鎖レチニルエステルの生物触媒合成を詳述している。残念ながら、この方法は高温を使用し、目的生成物へは中程度の転化率(17〜44%)しかもたらさず、このことが単離を複雑にするおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭62−248495号公報(1987年)
【特許文献2】WO 2004/044212 A1
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】O’Connor et.al.Aust.J.Chem.1992,45,641
【非特許文献2】Maugard,et.at.J.Mol.Catal.B:Enzymatic 2000,8,275
【非特許文献3】Maugard,et.al.,Biotechnol.Prog.2000,16,358
【非特許文献4】Maugard,et.al.,Biotechnol.Prog.2002,18,424
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、入手が容易な前駆体から長鎖レチニルエステルを製造する穏やかな方法の関心が高い。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の実施態様は、レチニルエステルの製造方法に関する。この方法は、式2:
【0009】
【化1】

【0010】
の短鎖レチニルエステルを、有機溶媒及び酵素の存在下で長鎖酸又は長鎖エステルと反応させてレチニルエステルを形成させることを含む。R4は水素、C1〜C4アルキル基及びC2〜C4アルケニル基からなる群から選ばれる。
【0011】
別の実施態様は、一般式1:
【0012】
【化2】

【0013】
で表される長鎖レチニルエステル化合物の製造方法に関する。この実施態様に係る方法は、有機溶媒及び酵素の存在下に、そして場合によっては、少なくとも1つのモレキュラーシーブ及び/又は少なくとも1つのイオン交換樹脂の存在下に、短鎖レチニルエステルを長鎖酸又は長鎖エステルと反応させて、レチニルエステルを形成させることを含む。RはC4〜C24アルキル、C4〜C24アルケニル、C4〜C24ジエニル、C6〜C24トリエニル、C8〜C24テトラエニル、C3〜C8シクロアルキル、C6〜C20炭素環式アリール、C4〜C20ヘテロアリール及びそれらの混合物(ヘテロアリールは硫黄、窒素及び酸素の少なくとも1つを含む)からなる群の少なくとも1つから選ばれる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、一般式1:
【0015】
【化3】

【0016】
[式中、Rは置換及び非置換、分岐鎖及び直鎖、飽和、不飽和及び多価不飽和C4〜C20アルキル、置換及び非置換C3〜C8シクロアルキル、置換及び非置換C6〜C20炭素環式アリール、置換及び非置換C4〜C20ヘテロアリール並びにそれらの混合物(ヘテロ原子は硫黄、窒素及び酸素から選ばれる)から選ばれる]
で表される長鎖レチニルエステル化合物の製造方法に関する。
【0017】
好ましい種は、Rが置換及び非置換、分岐鎖及び直鎖の飽和C4〜C24アルキル、置換及び非置換、分岐鎖及び直鎖C4〜C24アルケニル、置換及び非置換、分岐鎖及び直鎖C4〜C24ジエニル、置換及び非置換、分岐鎖及び直鎖C6〜C24トリエニル並びに置換及び非置換、分岐鎖及び直鎖C8〜C24テトラエニル又はそれらの混合物から選ばれる構造1で表される。
【0018】
Rが表すことができるアルキル、アルケニル、ジエニル、トリエニル及びテトラエニル基は、炭素数約24以下の直鎖又は分岐鎖脂肪族炭化水素基であることができ、例えば以下:C1〜C6−アルコキシ、シアノ、C2〜C6−アルコキシカルボニル、C2〜C6−アルカノイルオキシ、ヒドロキシ、アリール、ヘテロアリール、チオール、チオエーテル、ジスルフィド及びハロゲンから選ばれた1〜3個の基で置換されることができる。用語「C1〜C6−アルコキシ」、「C2〜C6−アルコキシカルボニル」及び「C2〜C6−アルカノイルオキシ」はそれぞれ、構造−OR2、−CO22及び−OCOR2に相当する基を表すのに用い、R2はC1〜C6−アルキル又は置換C1〜C6−アルキルである。用語「C3〜C8−シクロアルキル」は、炭素数3〜8の飽和炭素環式炭化水素基を表すのに用いる。
【0019】
Rが表すことができるアリール基としては、フェニル、ナフチル又はアントラセニル、更にC1〜C6−アルキル、置換C1〜C6−アルキル、C6〜C10−アリール、置換C6〜C10−アリール、C1〜C6−アルコキシ、ハロゲン、カルボキシ、シアノ、C1〜C6−アルカノイルオキシ、C1〜C6−アルキルチオ、C1〜C6−アルキルスルホニル、トリフルオロメチル、ヒドロキシ、C2〜C6−アルコキシカルボニル、C2〜C6−アルカノイルアミノ並びに−O−R3、S−R3、−SO2−R3、−NHSO23及び−NHCO23(R3はフェニル若しくはナフチル、又はC1〜C6−アルキル、C6〜C10−アリール、C1〜C6−アルコキシ及びハロゲンから選ばれた1〜3個の基で置換されたフェニル若しくはナフチルである)から選ばれた1〜3個の置換基で置換されたフェニル、ナフチル又はアントラセニルが挙げられる。
【0020】
ヘテロアリール基としては、酸素、硫黄及び窒素から選ばれた1〜3個のヘテロ原子を含む5〜6員芳香環が挙げられる。このようなヘテロアリール基の例は、チエニル、フリル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、オキサゾリル、イソキサゾリル、トリアゾリル、チアジアゾリル、オキサジアゾリル、テトラゾリル、ピリジル、ピリミジル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンズイミダゾリル、インドリルなどである。ヘテロアリール基は、例えばC1〜C6−アルキル、C1〜C6−アルコキシ、置換C1〜C6−アルキル、ハロゲン、C1〜C6−アルキルチオ、アリール、アリールチオ、アリールオキシ、C2〜C6−アルコキシカルボニル及びC2〜C6−アルカノイルアミノのような3個以下の基で置換されることができる。ヘテロアリール基はまた、縮合環系、例えばベンゾ又はナフト残基(非置換であるか又は例えば、前文に記載された3個以下の基で置換されることができる)で置換されることもできる。用語「ハロゲン」は、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素を含めるために使用する。
【0021】
好ましい本発明の化合物は、R−COがリノレオイル、ステアロイル、リノレノイル、共役リノレオイル、パルモイル、オレオイル、アラキドニル、ミリスチル、ラウリル、パルミトレオイル、リポイル、4−フェニルブチリル、シクロヘキシルアセチル、フェニルアセチル、N−Boc 3−インドールブチリル及びピメロイル又はそれらの混合物である式1の化合物である。
【0022】
本発明に係る方法の一実施態様は、有機溶媒及び酵素の存在下における且つ、場合によっては、少なくとも1つのモレキュラーシーブ及び/又は少なくとも1つのイオン交換樹脂の存在下における短鎖レチニルエステル2:
【0023】
【化4】

【0024】
と長鎖酸又は長鎖エステルとの反応による目的レチニルエステル1の形成を含んでなる。
【0025】
短鎖レチニルエステルの置換基R4は、水素、C1〜C4置換又は非置換アルキル基及びC2〜C4アルケニル基の中から選ばれる。C1〜C4アルキル基の例としては、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル及びs−ブチルなどが挙げられる。C2〜C4アルケニル基の例としては、ビニル、1−プロペニル、1−イソプロペニル、1−ブテニルなどが挙げられる。好ましい置換基R4は、メチル及びエチルであり、メチルが最も好ましい。短鎖レチニルエステルは、純粋な形態で又は植物油のような希釈剤の存在下で使用でき、希釈剤の割合は0〜90%であることができる。
【0026】
この方法は、環状若しくは非環式エーテル溶媒、例えばジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル若しくはテトラヒドロフラン、芳香族炭化水素、例えばベンゼン、トルエン若しくはキシレン、脂肪族若しくは脂環式飽和若しくは不飽和炭化水素、例えばヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン若しくはリモネン、ハロゲン化炭化水素、例えばジクロロメタン、ジクロロエタン、ジブロモエタン、テトラクロロエチレン若しくはクロロベンゼン、極性非プロトン性溶媒、例えばアセトニトリル、ジメチルホルムアミド若しくはジメチルスルホキシド、又はそれらの混合物から選ばれた不活性溶媒の存在下で実施する。好ましい溶媒はトルエン、リモネン及びアセトニトリルである。この方法は約−100℃〜溶媒の沸点の温度、好ましくは約0〜60℃、最も好ましくは20〜50℃において実施できる。長鎖酸又は長鎖エステルの量は、短鎖レチニルエステル2に基づき0.85〜20当量、好ましくは1〜10当量であることができる。この方法に使用する酵素は、プロテアーゼ、リパーゼ、ホスホリパーゼ及びエステラーゼから選ばれる。好ましい酵素はリパーゼである。これらのリパーゼはホールセル(全細胞)、単離天然酵素の形態であることもできるし、或いは担体上に固定化された形態であることもできる。これらのリパーゼとしては、Lipase PS(Pseudomonas spに由来)、Lipase PS−C(セラミック上に固定化されたPsuedomonas spに由来)、Lipase PS−D(珪藻土に固定化されたPsuedomonas spに由来)、Lipoprime 50T、Lipozyme TL IM又はNovozyme 435(アクリル樹脂上に固定化されたCandida antarcticaに由来)が挙げられるが、これらに限定するものではない。
【0027】
この方法は場合によっては、モレキュラーシーブ又はイオン交換樹脂から選ばれた種々の付加物の存在下で実施できる。特に好ましいのは弱塩基性イオン交換樹脂である。これは、これらの材料の存在が、このイオン交換樹脂を用いない同一反応に比較して短鎖レチニルエステル2から長鎖レチニルエステル1への転化を予想外に増大させるためである。これらの樹脂の例は、Amberlite(登録商標)又はAmberlyst(登録商標)弱塩基性樹脂、例えばAmberlite IRA−95、Amberlite IRA−94及びAmberlyst A−21であるが、全ての弱塩基性樹脂が許容できるようである。
【0028】
この方法の生成物は、当業者に知られた方法、例えば抽出、濾過又は結晶化を用いて単離できる。生成物1は、必要ならば、当業者に知られた方法、例えば抽出、クロマトグラフィー、蒸留又は結晶化を用いて精製できる。
【実施例】
【0029】
本発明によって提供される新規な方法を更に以下の例によって説明する。
【0030】
例1
1当量のリノール酸を用いたリノール酸レチニルの製造
酢酸レチニル(33mg;0.10ミリモル)をトルエン5mL中に溶解させた。リノール酸(28mg;1.0当量)、次いでNovozyme 435 120mgを加えた。反応混合物を50℃において1時間撹拌及び加熱し、その時点でサンプルを取り出し、HPLCによって分析した。リノール酸レチニルへの転化率は49.8%であり、酢酸レチニルが39.8%及びレチノールが10.4%であることが示された。HPLC(4.6×150mm Zorbax SB−C8カラム[Agilent],厚さ3.5μ,溶離剤メタノール,検出350nm):tR 4.77分(リノール酸レチニル);tR 2.32分(酢酸レチニル);tR 2.08分(レチノール)。
【0031】
例2
有機親和性モレキュラーシーブの存在下において1当量のリノール酸を用いたリノール酸レチニルの製造
酢酸レチニル(33mg;0.10ミリモル)をトルエン5mL中に溶解させ、有機親和性モレキュラーシーブ100mgに加えた。リノール酸(28mg;1.0当量)、次いでNovozyme 435 120mgを加えた。反応混合物を50℃において1時間撹拌及び加熱し、その時点でサンプルを取り出し、HPLCによって分析した。リノール酸レチニルへの転化率は53.2%であり、酢酸レチニルが14.4%及びレチノールが32.4%であることが示された。
【0032】
例3
Amberlite IRA−95の存在下において1当量のリノール酸を用いたリノール酸レチニルの製造
酢酸レチニル(33mg;0.10ミリモル)をトルエン5mL中に溶解させ、乾燥したAmberlite IRA−95 50mgに加えた。リノール酸(28mg;1.0当量)、次いでNovozyme 435 120mgを加えた。反応混合物を室温において2時間撹拌し、その時点でサンプルを取り出し、HPLCによって分析した。リノール酸レチニルへの転化率は72.3%であり、酢酸レチニルが16.3%及びレチノールが11.3%であることが示された。更に2日間の撹拌を行っても更なる変化は得られなかった。
【0033】
例4
Amberlyst A−21の存在下において1当量のリノール酸を用いたリノール酸レチニルの製造
酢酸レチニル(33mg;0.10ミリモル)をトルエン5mL中に溶解させ、乾燥したAmberlyst A−21 50mgに加えた。リノール酸(28mg;1.0当量)、次いでNovozyme 435 120mgを加えた。反応混合物を室温において2時間撹拌し、その時点でサンプルを取り出し、HPLCによって分析した。リノール酸レチニルへの転化率は71.7%であり、酢酸レチニルが17.7%及びレチノールが10.6%であることが示された。更に2日間の撹拌を行っても更なる変化は得られなかった。
【0034】
例5
2当量のリノール酸を用いたリノール酸レチニルの製造
酢酸レチニル(33mg;0.10ミリモル)をトルエン5mL中に溶解させた。リノール酸(56mg;2.0当量)、次いでNovozyme 435 120mgを加えた。反応混合物を周囲温度で2時間撹拌し、その時点でサンプルを取り出し、HPLCによって分析した。リノール酸レチニルへの転化率は63.4%であり、酢酸レチニルが30.5%及びレチノールが4.8%であることが示された。
【0035】
例6
Amberlyst A−21の存在下において2当量のリノール酸を用いたリノール酸レチニルの製造
酢酸レチニル(33mg;0.10ミリモル)をトルエン5mL中に溶解させ、乾燥したAmberlyst A−21 50mgに加えた。リノール酸(56mg;2.0当量)、次いでNovozyme 435 120mgを加えた。反応混合物を室温で2時間撹拌し、その時点でサンプルを取り出し、HPLCによって分析した。リノール酸レチニルへの転化率は79.0%であり、酢酸レチニルが14.1%及びレチノールが6.9%であることが示された。一晩撹拌しても更なる変化は得られなかった。
【0036】
例7
2当量のリノール酸を用いた植物油中におけるリノール酸レチニルの製造
酢酸レチニル(植物油中52%,63mg;0.10ミリモル)をトルエン5mL中に溶解させた。リノール酸(56mg;2.0当量)、次いでNovozyme 435 120mgを加えた。反応混合物を50℃で1時間撹拌及び加熱し、その時点でサンプルを取り出し、HPLCによって分析した。リノール酸レチニルへの転化率は71.7%であり、酢酸レチニルが18.0%及びレチノールが10.2%であることが示された。
【0037】
例8
5当量のリノール酸を用いたリノール酸レチニルの製造
酢酸レチニル(33mg;0.10ミリモル)をトルエン5mL中に溶解させた。リノール酸(140mg;2.0当量)、次いでNovozyme 435 120mgを加えた。反応混合物を周囲温度で2時間撹拌し、その時点でサンプルを取り出し、HPLCによって分析した。リノール酸レチニルへの転化率は78.7%であり、酢酸レチニルが17.6%及びレチノールが3.7%であることが示された。
【0038】
例9
Amberlyst A−21の存在下において5当量のリノール酸を用いたリノール酸レチニルの製造
酢酸レチニル(33mg;0.10ミリモル)をトルエン5mL中に溶解させ、乾燥したAmberlyst A−21 50mgに加えた。リノール酸(140mg;5.0当量)、次いでNovozyme 435 120mgを加えた。反応混合物を室温で2時間撹拌し、その時点でサンプルを取り出し、HPLCによって分析した。リノール酸レチニルへの転化率は87.4%であり、酢酸レチニルが9.2%及びレチノールが3.4%であることが示された。一晩撹拌しても更なる変化は得られなかった。
【0039】
例10
5当量のリノール酸を用いた植物油中におけるリノール酸レチニルの製造
酢酸レチニル(植物油中52%,63mg;0.10ミリモル)をトルエン5mL中に溶解させた。リノール酸(140mg;5.0当量)、次いでNovozyme 435 120mgを加えた。反応混合物を50℃で1時間撹拌及び加熱し、その時点でサンプルを取り出し、HPLCによって分析した。リノール酸レチニルへの転化率は83.0%であり、酢酸レチニルが10.9%及びレチノールが6.2%であることが示された。
【0040】
例11
アセトニトリル中で2当量のリノール酸を用いたリノール酸レチニルの製造
酢酸レチニル(500mg;1.52ミリモル)を、超音波処理しながらアセトニトリル3.5mL中に溶解させた。リノール酸(850mg;3.04ミリモル;2.0当量)、次いでNovozyme 435 120mgを加えた。反応混合物を室温で19時間撹拌し、その時点でサンプルを取り出し、HPLCによって分析した。リノール酸レチニルへの転化率は28.7%であり、酢酸レチニルが70.8%及びレチノールが0.5%であることが示された。
【0041】
例12
Amberlyst A−21と共にアセトニトリル中で2当量のリノール酸を用いたリノール酸レチニルの製造
酢酸レチニル(500mg;1.52ミリモル)を、超音波処理しながらアセトニトリル3.5mL中に溶解させた。乾燥したAmberlyst A−21(0.25g)を加えた。リノール酸(850mg;3.04ミリモル;2.0当量)、次いでNovozyme 435 120mgを加えた。反応混合物を室温で19時間撹拌し、その時点でサンプルを取り出し、HPLCによって分析した。リノール酸レチニルへの転化率は58.5%であり、酢酸レチニルが40.0%及びレチノールが1.6%であることが示された。
【0042】
例13
リモネン中で2当量のリノール酸を用いたリノール酸レチニルの製造
酢酸レチニル(500mg;1.52ミリモル)及びリノール酸(850mg;3.04ミリモル;2.0当量)をリモネン3.5mL中に溶解させた。Novozyme 435(120mg)を加え、反応混合物を室温で23時間撹拌し、その時点でサンプルを取り出し、HPLCによって分析した。リノール酸レチニルへの転化率は65.8%であり、酢酸レチニルが32.3%及びレチノールが1.9%であることが示された。
【0043】
例14
Amberlyst A−21と共にリモネン中で2当量のリノール酸を用いたリノール酸レチニルの製造
酢酸レチニル(500mg;1.52ミリモル)及びリノール酸(850mg;3.04ミリモル;2.0当量)をリモネン3.5mL中に溶解させた。乾燥したAmberlyst A−21(0.25g)及びNovozyme 435(120mg)を加え、反応混合物を室温で23時間撹拌し、その時点でサンプルを取り出し、HPLCによって分析した。リノール酸レチニルへの転化率は90.3%であり、酢酸レチニルが8.5%及びレチノールが1.2%であることが示された。
【0044】
例15
2当量のリノール酸を用いたリノール酸レチニルの製造及び生成物の単離
酢酸レチニル(4.11g;12.5ミリモル)及びリノール酸(7.01g;25.0ミリモル;2.0当量)をトルエン35mL中に溶解させた。Novozyme 435(1.0g)及び乾燥したAmberlyst A−21(2.1g)を加えた。反応混合物の排出及び窒素充填を10回行った。反応混合物を暗所で周囲温度において5.5時間撹拌した。その時点で、HPLC分析は、リノール酸レチニルへの転化率が90.3%である(酢酸レチニル9.1%及び且つレチノール0.6%)であることを示した。反応混合物を濾過及び濃縮し、次いでヘプタン(各10mL)を用いて2回濃縮した。残渣をヘプタン(50mL)中に溶解させ、10%炭酸カリウム水溶液及びメタノールの1:1混合物各80mLで2回洗浄した。有機層を、飽和炭酸水素ナトリウム(10mL)、水(30mL)及びメタノール(40mL)の混合物で更に洗浄し、乾燥させ(硫酸ナトリウム)、濃縮して、黄色油5.14g(75%)を生成した。この物質の一部分(4.00g)をヘプタン40mL中に溶解させ、メタノール20mLで洗浄した。ヘプタン層を濃縮して、リノール酸レチニル3.77g(全体で71%)を生成した。この生成物の分析は、リノール酸レチニル90.9%(HPLC面積パーセント)、リノール酸0.26重量%及びレチノール0.06重量%を示した。最初の水性抽出物(10%炭酸カリウム溶液とメタノールとの1:1混合物を使用)を、3M HCl 25mLでpH1に酸性化した。得られた混合物をヘプタン20mLで抽出した。有機溶液を硫酸ナトリウムによって乾燥させ、濃縮した。得られた回収リノール酸は3.91g(最初の装入量の56%)であり、再利用に適当であった。
【0045】
例16
1当量のリノール酸メチルを用いたリノール酸レチニルの製造
酢酸レチニル(33mg;0.10ミリモル)をトルエン5mL中に溶解させた。リノール酸メチル(30mg;1.0当量)、次いでNovozyme 435 120mgを加えた。反応混合物を室温で一晩撹拌し、その時点でサンプルを取り出し、HPLCによって分析した。リノール酸レチニルへの転化率は49.3%であり、酢酸レチニルが36.9%及びレチノールが13.8%であることが示された。
【0046】
例17
Lipase PS及び1当量のリノール酸を用いたリノール酸レチニルの製造
酢酸レチニル(33mg;0.10ミリモル)をトルエン5mL中に溶解させた。リノール酸(28mg;1.0当量)、次いでLipase PS(Amano)120mgを加えた。反応混合物を周囲温度で45時間撹拌し、その時点でサンプルを取り出し、HPLCによって分析した。リノール酸レチニルへの転化率は1.4%であり、酢酸レチニルが97.5%及びレチノールが1.1%であることが示された。
【0047】
例18
Amberlyst A−21の存在下においてLipase PS及び1当量のリノール酸を用いたリノール酸レチニルの製造
酢酸レチニル(33mg;0.10ミリモル)をトルエン5mL中に溶解させ、乾燥したAmberlyst A−21 50mgに加えた。リノール酸(28mg;1.0当量)、次いでLipase PS(Amano)120mgを加えた。反応混合物を周囲温度で45時間撹拌し、その時点でサンプルを取り出し、HPLCによって分析した。リノール酸レチニルへの転化率は10.0%であり、酢酸レチニルが87.3%及びレチノールが2.7%であることが示された。
【0048】
例19
Lipase PS−C及び1当量のリノール酸を用いたリノール酸レチニルの製造
酢酸レチニル(33mg;0.10ミリモル)をトルエン5mL中に溶解させた。リノール酸(28mg;1.0当量)、次いでLipase PS−C(Amano)120mgを加えた。反応混合物を周囲温度で45時間撹拌し、その時点でサンプルを取り出し、HPLCによって分析した。リノール酸レチニルへの転化率は46.1%であり、酢酸レチニルが48.7%及びレチノールが5.2%であることが示された。
【0049】
例20
Amberlyst A−21の存在下においてLipase PS−C及び1当量のリノール酸を用いたリノール酸レチニルの製造
酢酸レチニル(33mg;0.10ミリモル)をトルエン5mL中に溶解させ、乾燥したAmberlyst A−21 50mgに加えた。リノール酸(28mg;1.0当量)、次いでLipase PS−C(Amano)120mgを加えた。反応混合物を周囲温度で45時間撹拌し、その時点でサンプルを取り出し、HPLCによって分析した。リノール酸レチニルへの転化率は68.8%であり、酢酸レチニルが23.6%及びレチノールが7.6%であることが示された。
【0050】
例21
Lipase PS−D及び1当量のリノール酸を用いたリノール酸レチニルの製造
酢酸レチニル(33mg;0.10ミリモル)をトルエン5mL中に溶解させた。リノール酸(28mg;1.0当量)、次いでLipase PS−D(Amano)120mgを加えた。反応混合物を周囲温度で45時間撹拌し、その時点でサンプルを取り出し、HPLCによって分析した。リノール酸レチニルへの転化率は35.4%であり、酢酸レチニルが63.4%及びレチノールが1.2%であることが示された。
【0051】
例22
Amberlyst A−21の存在下においてLipase PS及び1当量のリノール酸を用いたリノール酸レチニルの製造
酢酸レチニル(33mg;0.10ミリモル)をトルエン5mL中に溶解させ、乾燥したAmberlyst A−21 50mgに加えた。リノール酸(28mg;1.0当量)、次いでLipase PS−D(Amano)120mgを加えた。反応混合物を周囲温度で45時間撹拌し、その時点でサンプルを取り出し、HPLCによって分析した。リノール酸レチニルへの転化率は69.2%であり、酢酸レチニルが25.8%及びレチノールが5.0%であることが示された。
【0052】
例23
Lipozyme TI IM及び1当量のリノール酸を用いたリノール酸レチニルの製造
酢酸レチニル(33mg;0.10ミリモル)をトルエン5mL中に溶解させた。リノール酸(28mg;1.0当量)、次いでLipozyme TI IM(Novozyme)120mgを加えた。反応混合物を周囲温度で45時間撹拌し、その時点でサンプルを取り出し、HPLCによって分析した。リノール酸レチニルへの転化率は2.0%であり、酢酸レチニルが94.9%及びレチノールが3.2%であることが示された。
【0053】
例24
Amberlyst A−21の存在下においてLipozyme TI IM及び1当量のリノール酸を用いたリノール酸レチニルの製造
酢酸レチニル(33mg;0.10ミリモル)をトルエン5mL中に溶解させ、乾燥したAmberlyst A−21 50mgに加えた。リノール酸(28mg;1.0当量)、次いでLipozyme TI IM(Novozyme)120mgを加えた。反応混合物を周囲温度で45時間撹拌し、その時点でサンプルを取り出し、HPLCによって分析した。リノール酸レチニルへの転化率は14.6%であり、酢酸レチニルが84.7%及びレチノールが0.7%であることが示された。
【0054】
例25
リノール酸レチニルの半回分製造
酢酸レチニル(22.0g;油中80%;53.6ミリモル)及びリノール酸(Pamolyn 200;15.0g;53.6ミリモル;1.0当量)を500mLフラスコ中でトルエン160mLに溶解させた。フラスコ中の浸漬管をペリスタポンプを経て、Novozyme 435 6.0gを含むカラムに接続し、それを連続して、乾燥したAmberlyst A−21 6.0gを含む第2のカラムに接続した。この第2のカラムからの管は最初のフラスコに戻された。ポンプを始動させて(流速6mL/分)、反応混合物を2つのカラムを通し、ポットに送り戻した。6時間後、転化率は71%に達し、ポンプを停止させた。Amberlyst樹脂を、カラムを取り外し且つ内容物をトルエン中10%トリエチルアミン溶液100mL(トルエンチェーサー100mL) で洗浄することによって、再生した。装置を組み立て直し、ポンプを再始動させた。更に3時間後、転化は75%に達し、ポンプを停止させた。ポットの内容物の約50%(80mL)を取り出し、トルエン80mL中80%酢酸レチニル11.0g及びリノール酸7.5gの混合物をポットに加えて、第1反応体補充とした。Amberlyst樹脂を前述のようにして再生させ、装置を組み立て直し、ポンプを始動させた。9時間後、73.6%の転化率が達成され、ポンプを停止させた。ポットの内容物の約50%(80mL)を取り出し、トルエン80mL中80%酢酸レチニル11.0g及びリノール酸7.5gの混合物をポットに加えて、第2補充とした。Amberlyst樹脂を前述のようにして再生させ、装置を組み立て直し、ポンプを始動させた。12時間後、75.0%の転化率が達成され、反応を停止させた。
【0055】
例26
Amberlyst A−21の存在下においてPamolyn 380共役リノール酸を用いたレチノールの共役リノール酸エステル(レチニル−CLA)の製造
酢酸レチニル(1.00g;3.04ミリモル)をトルエン8.5mL中に溶解させ、Pamolyn 380共役リノール酸(1.71g;6.09ミリモル;2.0当量)、次いでNovozyme 435 120mg及び乾燥したAmberlyst A−21 0.5gを加えた。反応混合物を室温で15時間撹拌し、その時点でサンプルを取り出し、HPLCによって分析した。レチニル−CLAへの転化率は87.2%であり、酢酸レチニルが10.9%及びレチノールが2.0%であることが示された。反応混合物を濾過及び濃縮し、次いでヘプタン(各10mL)で2回濃縮した。残渣をヘプタン(15mL)中に溶解させ、10%炭酸カリウム水溶液とメタノールとの1:1混合物各20mLで2回洗浄した。有機層を飽和炭酸水素ナトリウム(2.5mL)、水(7.5mL)及びメタノール(10mL)の混合物で更に洗浄し、乾燥させ(硫酸ナトリウム)、濃縮して、黄色油1.34g(80%)を生成した。この生成物の分析は、レチニル−CLA 90.5%(HPLC面積パーセント)、共役リノール酸0.4重量%及びレチノール0.13%を示した。
【0056】
HPLC(4.6×150mm Zorbax SB−C8カラム[Agilent],厚さ3.5μ,溶離剤メタノール,検出350nm):tR 4.39,4.88,5.65,6.06分(レチニル−CLA異性体);tR 2.32分(酢酸レチニル);tR 2.08分(レチノール)。
【0057】
例27
Amberlyst A−21の存在下においてTonalin FFA共役リノール酸を用いたレチノールの共役リノール酸エステル(レチニル−CLA)の製造
酢酸レチニル(1.00g;3.04ミリモル)をトルエン8.5mL中に溶解させ、Tonalin FFA共役リノール酸(1.71g;6.09ミリモル;2.0当量)、次いでNovozyme 435 120mg及び乾燥したAmberlyst A−21 0.5gを加えた。反応混合物を室温で15時間撹拌し、その時点でサンプルを取り出し、HPLCによって分析した。レチニル−CLAへの転化率は88.6%であり、酢酸レチニルが9.7%及びレチノールが1.7%であることが示された。反応混合物を濾過及び濃縮し、次いでヘプタン(各10mL)で2回濃縮した。残渣をヘプタン(15mL)中に溶解させ、10%炭酸カリウム水溶液とメタノールとの1:1混合物各20mLで2回洗浄した。有機層を飽和炭酸水素ナトリウム(2.5mL)、水(7.5mL)及びメタノール(10mL)の混合物で更に洗浄し、乾燥させ(硫酸ナトリウム)、濃縮して、黄色油1.29g(77%)を生成した。この生成物の分析は、レチニル−CLA 92.8%(HPLC面積パーセント)、共役リノール酸0.8重量%及びレチノール0.1%を示した。
【0058】
例28
Amberlyst A−21の存在下におけるパルミチン酸レチニルの製造
酢酸レチニル(1.00g;3.04ミリモル)をトルエン8.5mL中に溶解させ、パルミチン酸(1.56g;6.09ミリモル;2.0当量)、次いでNovozyme 435 120mg及び乾燥したAmberlyst A−21 0.5gを加えた。反応混合物を室温において15時間撹拌し、その時点でサンプルを取り出し、HPLCによって分析した。パルミチン酸レチニルへの転化率は89.2%であり、酢酸レチニルが9.1%であり且つレチノールが1.7%であることが示された。反応混合物を濾過及び濃縮し、次いでヘプタン(各10mL)で2回濃縮した。残渣をヘプタン(15mL)中に溶解させ、10%炭酸カリウム水溶液とメタノールとの1:1混合物各20mLで2回洗浄した。有機層を飽和炭酸水素ナトリウム(2.5mL)、水(7.5mL)及びメタノール(10mL)の混合物で更に洗浄し、乾燥させ(硫酸ナトリウム)、濃縮して、黄色油1.25g(78%)を生成した。この生成物の分析は、パルミチン酸レチニル91.2%(HPLC面積パーセント)、パルミチン酸0.4重量%及びレチノール0.2%を示した。
【0059】
HPLC(4.6×150mm Zorbax SB−C8カラム[Agilent],厚さ3.5μ,溶離剤メタノール,検出350nm):tR 5.52分(パルミチン酸レチニル);tR 2.32分(酢酸レチニル);tR 2.08分(レチノール)。
【0060】
例29
Amberlyst A−21の存在下におけるオレイン酸レチニルの製造
酢酸レチニル(1.00g;3.04ミリモル)及び乾燥したAmberlyst A−21(0.5g)をトルエン8.5mLと合した。オレイン酸(1.72g;6.09ミリモル;2.0当量)、次いでNovozyme 435 120mgを加えた。反応混合物を室温において15時間撹拌し、その時点でサンプルを取り出し、HPLCによって分析した。オレイン酸レチニルへの転化率は89.2%であり、酢酸レチニルが9.0%及びレチノールが1.9%であることが示された。反応混合物を濾過及び濃縮し、次いでヘプタン(各10mL)で2回濃縮した。残渣をヘプタン(15mL)中に溶解させ、10%炭酸カリウム水溶液とメタノールとの1:1混合物各20mLで2回洗浄した。有機層を飽和炭酸水素ナトリウム(2.5mL)、水(7.5mL)及びメタノール(10mL)の混合物で更に洗浄し、乾燥させ(硫酸ナトリウム)、濃縮して、黄色油1.16g(69%)を生成した。
【0061】
HPLC(4.6×150mm Zorbax SB−C8カラム[Agilent],厚さ3.5μ,溶離剤メタノール,検出350nm):tR 5.65分(オレイン酸レチニル);tR 2.32分(酢酸レチニル);tR 2.08分(レチノール)。
【0062】
例30
Amberlyst A−21の存在下におけるリポ酸レチニルの製造
酢酸レチニル(1.00g;3.04ミリモル)及びリポ酸(1.26g;6.09ミリモル;2.0当量)を乾燥したAmberlyst A−21(0.5g)と合した。トルエン(3.5mL)を加え、混合物を超音波処理し、Novozyme 435 120mgを加えた。反応混合物を室温において21時間撹拌し、その時点でサンプルを取り出し、HPLCによって分析した。リポ酸レチニルへの転化率は85.3%であり、酢酸レチニルが12.8%及びレチノールが1.9%であることが示された。反応混合物を濾過及び濃縮し、残渣を1:1の酢酸エチル:ヘプタン(20mL)中に溶解させた。この溶液を10%炭酸カリウム水溶液10mL、次いで飽和炭酸水素ナトリウム(5mL)と水(5mL)との混合物10mLで洗浄した。有機溶液を乾燥させ(硫酸ナトリウム)、濃縮して、黄色油1.06g(71%)を生成した。
【0063】
HPLC(4.6×150mm Zorbax SB−C8カラム[Agilent],厚さ3.5μ,溶離剤メタノール,検出350nm):tR 2.68分(リポ酸レチニル);tR 2.32分(酢酸レチニル);tR 2.08分(レチノール)。
【0064】
例31
Amberlyst A−21の存在下における4−フェニル酪酸レチニルの製造
酢酸レチニル(250mg;0.76ミリモル)及び4−フェニル酪酸(125mg;0.76ミリモル;1.0当量)を乾燥したAmberlyst A−21(125mg)と合した。トルエン(2.5mL)を加え、Novozyme 435 120mgを加えた。反応混合物を室温において21時間撹拌し、その時点でサンプルを取り出し、HPLCによって分析した。4−フェニル酪酸レチニルへの転化率は67.8%であり、酢酸レチニルが24.3%及びレチノールが7.8%であることが示された。Amberlyst A−21を用いない対応する反応では、転化率が50.4%であった。
【0065】
HPLC(4.6×150mm Zorbax SB−C8カラム[Agilent],厚さ3.5μ,溶離剤メタノール,検出350nm):tR 2.56分(4−フェニル酪酸レチニル);tR 2.32分(酢酸レチニル);tR 2.08分(レチノール)。
【0066】
例32
Amberlyst A−21の存在下におけるシクロヘキシル酢酸レチニルの製造
酢酸レチニル(500mg;1.52ミリモル)及びシクロヘキシル酢酸(216mg;1.52ミリモル;1.0当量)を乾燥したAmberlyst A−21(0.25g)と合した。トルエン(3.5mL)を加え、Novozyme 435 120mgを加えた。反応混合物を室温において18時間撹拌し、その時点でサンプルを取り出し、HPLCによって分析した。シクロヘキシル酢酸レチニルへの転化率は64.6%であり、酢酸レチニルが33.5%及びレチノールが1.8%であることが示された。Amberlyst A−21を用いない対応する反応では、転化率が44.2%であった。
【0067】
HPLC(4.6×150mm Zorbax SB−C8カラム[Agilent],厚さ3.5μ,80:20のメタノール:水(0.1%TFA)で15分間溶離,10分にわたる100%メタノールまでの勾配,100%メタノールに5分間保持,350nmで検出):tR 26.1分(シクロヘキシル酢酸レチニル);tR 21.1分(酢酸レチニル);tR 11.8分(レチノール)。
【0068】
例33
Amberlyst A−21の存在下におけるフェニル酢酸レチニルの製造
酢酸レチニル(500mg;1.52ミリモル)及びフェニル酢酸(207mg;1.52ミリモル;1.0当量)を乾燥したAmberlyst A−21(0.25g)と合した。トルエン(3.5mL)を加え、Novozyme 435 120mgを加えた。反応混合物を室温において19時間撹拌し、その時点でサンプルを取り出し、HPLCによって分析した。フェニル酢酸レチニルへの転化率は58.5%であり、酢酸レチニルが40.0%及びレチノールが1.6%であることが示された。Amberlyst A−21を用いない対応する反応では、転化率が28.7%であった。
【0069】
HPLC(4.6×150mm Zorbax SB−C8カラム[Agilent],厚さ3.5μ,溶離剤メタノール,検出350nm):tR 4.67分(フェニル酢酸レチニル);tR 2.32分(酢酸レチニル);tR 2.08分(レチノール)。
【0070】
例34
N−Boc 3−インドール酪酸レチニルの製造
酢酸レチニル(33mg;0.10ミリモル)及びN−Bocインドール−3−酪酸(31mg;0.10ミリモル;1.0当量)を合した。トルエン(3.5mL)を加え、Novozyme 435 120mgを加えた。反応混合物を50℃において4日間撹拌し、その時点でサンプルを取り出し、HPLCによって分析した。N−Boc 3−インドール酪酸レチニルへの転化率は50.6%であり、酢酸レチニルが44.8%及びレチノールが4.6%であることが示された。
【0071】
HPLC(4.6×150mm Zorbax SB−C8カラム[Agilent],厚さ3.5μ,80:20のメタノール:水(0.1%TFA)で15分間溶離,10分にわたる100%メタノールまでの勾配,100%メタノールに5分間保持,350nmで検出):tR 26.7分(N−Boc 3−インドール酪酸レチニル);tR 21.1分(酢酸レチニル);tR 11.8分(レチノール)。
【0072】
例35
ピメリン酸レチニルの製造
酢酸レチニル(500mg;1.52ミリモル)及びピメリン酸(488mg;3.04ミリモル;2.0当量)を合した。トルエン(5.0mL)を加え、Novozyme 435 120mgを加えた。反応混合物を室温において2日間撹拌し、その時点でサンプルを取り出し、HPLCによって分析した。ピメリン酸レチニルとピメリン酸ジレチニルとの混合物への転化率は36.5%であり、酢酸レチニルが61.8%及びレチノールが1.8%であることが示された。
【0073】
HPLC(4.6×150mm Zorbax SB−C8カラム[Agilent],厚さ3.5μ,80:20のメタノール:水(0.1%TFA)で15分間溶離,10分にわたる100%メタノールまでの勾配,100%メタノールに5分間保持,350nmで検出):tR 20.3,29.0分(ピメリン酸レチニル及びピメリン酸ジレチニル);tR 21.1分(酢酸レチニル);tR 11.8分(レチノール)。
【0074】
本発明を特にその好ましい実施態様に関して詳述したが、本発明の精神及び範囲内で変更及び修正が可能なことがわかるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式2:
【化1】

[式中、R4は水素、C1〜C4アルキル基及びC2〜C4アルケニル基からなる群から選ばれる]
の短鎖レチニルエステルを、有機溶媒及び酵素の存在下に、長鎖酸又は長鎖エステルと反応させて、長鎖レチニルエステルを形成させることを含んでなる長鎖レチニルエステルの製造方法。
【請求項2】
前記C1〜C4アルキル基がメチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル及びs−ブチルの少なくとも1つを含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記C2〜C4アルケニル基がビニル、1−プロペニル、1−イソプロペニル及び1−ブテニルの少なくとも1つを含む請求項1に記載の方法。
【請求項4】
Rがメチル又はエチルである請求項1に記載の方法。
【請求項5】
Rがメチルである請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記短鎖レチニルエステルが純粋な形態で又は稀釈剤中に存在する請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記希釈剤が植物油であり且つ0〜90%の量で存在する請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記方法を、エーテル溶媒、炭化水素溶媒、極性非プロトン性溶媒及びこれらの混合物からなる群から選ばれる不活性溶媒中で実施する請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記エーテル溶媒がジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン及びこれらの混合物からなる群から選ばれる請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記炭化水素溶媒がベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、リモネン、ジクロロメタン、ジクロロエタン、ジブロモエタン、テトラクロロエチレン、クロロベンゼン及びこれらの混合物からなる群から選ばれる請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記極性非プロトン性溶媒がアセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド及びこれらの混合物からなる群から選ばれる請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記方法を約−100℃〜前記溶媒の沸点の間の温度で実施する請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記温度が約0〜60℃である請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記温度が約20〜50℃である請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記長鎖酸又は長鎖エステルが、前記短鎖レチニルエステルの量に基づき、約0.85〜20当量の量で存在する請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記長鎖酸又は長鎖エステルが、前記短鎖レチニルエステルの量に基づき、約1.0〜10当量の量で存在する請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記酵素がプロテアーゼ、リパーゼ、ホスホリパーゼ及びエステラーゼからなる群から選ばれる請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記リパーゼがホールセル中に存在するものか、単離天然酵素であるか又は担体に固定化されたものである請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記方法をモレキュラーシーブ及びイオン交換樹脂の少なくとも1つの存在下に実施する請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記モレキュラーシーブが有機親和性モレキュラーシーブである請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記イオン交換樹脂が塩基性イオン交換樹脂である請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記塩基性イオン交換樹脂が、前記短鎖レチニルエステルの量に基づき、10〜1000重量%の量で存在する請求項21に記載の方法。
【請求項23】
抽出、クロマトグラフィー、蒸留又は結晶化によって前記レチニルエステルを単離することを更に含む請求項1に記載の方法。
【請求項24】
短鎖レチニルエステルを、有機溶媒及び酵素の存在下に、長鎖酸又は長鎖エステルと反応させて、長鎖レチニルエステルを形成させることを含んでなる、一般式1:
【化2】

[式中、RはC4〜C24アルキル、C4〜C24アルケニル、C4〜C24ジエニル、C6〜C24トリエニル、C8〜C24テトラエニル、C3〜C8シクロアルキル、C6〜C20炭素環式アリール及びC4〜C20ヘテロアリール(ここでヘテロアリールは硫黄、窒素及び酸素の少なくとも1つを含む)からなる群から選ばれる少なくとも1つである]
で表される長鎖レチニルエステルの製造方法。
【請求項25】
前記アルキル、アルケニル、ジエニル、トリエニル、テトラエニル又はシクロアルキルがC1〜C6−アルコキシ、シアノ、C2〜C6−アルコキシカルボニル、C2〜C6−アルカノイルオキシ、ヒドロキシ、アリール、ヘテロアリール、チオール、チオエーテル、ジスルフィド及びハロゲンから選ばれた1〜3個の基で置換されている請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記炭素環式アリールがフェニル、ナフチル及びアントラセニルの少なくとも1つを含む請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記フェニル、ナフチル又はアントラセニルがC1〜C6−アルキル、置換C1〜C6−アルキル、C6〜C10アリール、置換C6〜C10アリール、C1〜C6−アルコキシ、ハロゲン、カルボキシ、シアノ、C1〜C6−アルカノイルオキシ、C1〜C6−アルキルチオ、C1〜C6−アルキルスルホニル、トリフルオロメチル、ヒドロキシ、C2〜C6−アルコキシカルボニル、C2〜C6−アルカノイルアミノ並びに−O−R3、S−R3、−SO2−R3、−NHSO23及び−NHCO23(ここでR3はフェニル若しくはナフチル、又はC1〜C6−アルキル、C6〜C10アリール、C1〜C6−アルコキシ及びハロゲンから選ばれた1〜3個の基で置換されたフェニル若しくはナフチルである)から選ばれた1〜3個の置換基で置換されている請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記へテロリールが酸素、硫黄及び窒素から選ばれた1〜3個のヘテロ原子を含む5又は6員芳香環の少なくとも1つを含む請求項24に記載の方法。
【請求項29】
前記へテロアリールがチエニル、フリル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、オキサゾリル、イソキサゾリル、トリアゾリル、チアジアゾリル、オキサジアゾリル、テトラゾリル、ピリジル、ピリミジル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾイミダゾリル及びインドリルのうち少なくとも1つを含む請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記方法を、エーテル溶媒、炭化水素溶媒、極性非プロトン性溶媒及びこれらの混合物からなる群から選ばれる不活性溶媒中で実施する請求項24に記載の方法。
【請求項31】
前記エーテル溶媒がジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン及びこれらの混合物からなる群から選ばれる請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記炭化水素溶媒がベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、リモネン、ジクロロメタン、ジクロロエタン、ジブロモエタン、テトラクロロエチレン、クロロベンゼン及びこれらの混合物からなる群から選ばれる請求項30に記載の方法。
【請求項33】
前記極性非プロトン性溶媒がアセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド及びこれらの混合物からなる群から選ばれる請求項30に記載の方法。
【請求項34】
前記方法を約−100℃〜前記溶媒の沸点の温度で実施する請求項24に記載の方法。
【請求項35】
前記温度が約0〜60℃である請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記温度が約20〜50℃である請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記長鎖酸又は長鎖エステルが、前記短鎖レチニルエステルの量に基づき、約0.85〜20当量の量で存在する請求項24に記載の方法。
【請求項38】
前記長鎖酸又は長鎖エステルが、前記短鎖レチニルエステルの量に基づき、約1.0〜10当量の量で存在する請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記酵素がプロテアーゼ、リパーゼ、ホスホリパーゼ及びエステラーゼからなる群から選ばれる請求項24に記載の方法。
【請求項40】
前記リパーゼがホールセル中に存在するものか、単離天然酵素であるか又は担体に固定化されたものである請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記方法をモレキュラーシーブ及びイオン交換樹脂の少なくとも1つの存在下に実施する請求項24に記載の方法。
【請求項42】
前記モレキュラーシーブが有機親和性モレキュラーシーブである請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記イオン交換樹脂が塩基性イオン交換樹脂である請求項41に記載の方法。
【請求項44】
前記塩基性イオン交換樹脂が、前記短鎖レチニルエステルの量に基づき、10〜1000重量%の量で存在する請求項43に記載の方法。
【請求項45】
抽出、クロマトグラフィー、蒸留又は結晶化によって前記レチニルエステルを単離することを更に含む請求項24に記載の方法。

【公表番号】特表2010−505414(P2010−505414A)
【公表日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−531385(P2009−531385)
【出願日】平成19年9月18日(2007.9.18)
【国際出願番号】PCT/US2007/020185
【国際公開番号】WO2008/045185
【国際公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【出願人】(594055158)イーストマン ケミカル カンパニー (391)
【Fターム(参考)】