説明

有機物処理方法及び有機物処理システム

【課題】有機物処理工程で必要とする保水時間が従来よりも短くなるように制御可能な有機物処理方法及びシステムを提供する。
【解決手段】流入する有機物を、水及び懸濁固体を有する流体内に揮発性酸を生成する条件に維持された、酸反応器20へ送り込む。この酸反応器20から流出するスラッジ24は、酸分離素子22に連通され、懸濁固体から水と揮発性酸を分離する。酸分離素子22から出る流体32は、バイオガス50を生成する条件に維持された、メタン反応器30に連通され、固体リサイクル流れ38が酸反応器20に連通される。メタン反応器30から出る液体36は、メタン分離素子34に連通され、水と固体が分離される。第2固体リサイクル38が、メタン分離素子34からメタン反応器30へ連通する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は有機物処理方法及び有機物処理システムに関し、特に下水や都市で排出された汚泥等の廃棄物、廃棄された植物や穀物等のバイオマス物質又はバイオガスその他のプロダクトに変換可能なその他の有機物資源(ソース)である有機物を処理するシステムやプロセスに関する。この新たなシステム及びプロセスは、2フェーズのプロセスであり、酸反応器内での酸形成オーガニズム(有機体)及びメタン反応器内のメタン形成メカニズムを制御してプロセスの保水(ハイドローリックリテンション)時間要件を制御する。
【背景技術】
【0002】
嫌気性の2フェーズ汚水分解処理は、メタンガスその他のプロダクトを生成する有機物処理業界では周知である。嫌気性処理(汚水分解)は、単一の反応器又は2ステージ反応器で実行され、双方共に有機物処理方法として酸生成及びメタン生成の2フェーズを含んでいる。有機物は、廃棄物又は非廃棄物であるが、通常は廃棄されるプロダクトである。この廃棄プロダクトは、下水(汚水)、都市廃物、食物廃棄物、植物、穀物、植物及び穀物廃棄物等のバイオマス、産業廃棄液及び固形物である。
【0003】
これらの嫌気性2フェーズ汚水分解処理は、有機物が成長及び処理する嫌気性生物が長い保持時間を必要とするために、それらの使用が制限されていた。完全なミックス(混合)反応器では、プロセスは微生物が成長し且つ有機物を分解してメタン、二酸化炭素その他の生成物にするために必要な時間が、経済的に有機物を処理するために大型の反応器を必要とするので、遅く且つ高価になる。大型の反応器が必要になるのは、固形物に比較して多量の液体を反応器内に保持する保水時間が必要であるためである。
【0004】
嫌気性処理を、揮発性のサスペンド(懸濁又は浮遊)固体を加水分解して、これらを揮発性の脂肪酸に変換する、アシドジェネシス(酸生成)フェーズと、揮発性脂肪酸をメタンと二酸化炭素に変換する、メタノジェネシス(メタン生成)フェーズとに分離すると、処理の動作及び性能が改善される。しかし、各反応器プロセスにおける保水時間及び固体保持時間はまだ殆ど等しく、流体保持時間全体のために大型の反応器を必要とする。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
プロセス内に導入される有機物を前処理し、メタンフェーズ反応器から出るフィードバックをメタンフェーズ反応器へ再導入するように、嫌気性2フェーズ分解プロセスには幾らかの改善がなされている。
斯かる処理は、排水から二酸化炭素と硫化水素を分離させること及び少量の酸素を導入することを含み、排水をメタンフェーズ反応器に戻すことは、メタンガスの生成を改善するのみであり、保持時間を顕著に短縮するものではない。
【0006】
もし保水時間が短縮でき、大型の反応器が斯かる流体保持する必要がなければ、相当量のガス及びその他の排水を生成するために大型反応器を使用することによるコストは低減でき、改善され、経済的且つ一層効率的な嫌気性2フェーズ分解処理プロセスを可能にする。
【0007】
本発明は、斯かる課題に鑑みなされたものであり、斯かる課題を解決又は軽減する有機物処理方法及び有機物処理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の有機物処理方法は、流入する有機物を処理する方法であって、嫌気性2フェーズ処理システムで処理される流入有機物を酸反応器へ供給するステップと、酸反応器の条件を維持して水及び懸濁固体を含み流出スラッジを形成する流体内に揮発性酸を生成させるステップと、流出スラッジを酸分離素子へ連通するステップと、懸濁固体から水と揮発性酸を分離するステップと、液流を酸分離素子からメタン反応器へ連通するステップと、固体リサイクル流れを酸分離素子から酸反応器へ連通するステップと、メタン反応器内の条件を維持してバイオガスを生成するステップと、メタン反応器から液流をメタン分離素子へ連通するステップと、固体から液体を分離するステップと、第2固体リサイクル流れをメタン分離素子からメタン反応器へ連通するステップと、バイオガスをメタン反応器から連通するステップと、過剰固体を嫌気性2フェーズ処理システムから排出するステップとを備えることを特徴とする。
【0009】
本発明の有機物処理方法の好適実施形態によると、第2固体リサイクル流れの一部をメタン反応器から酸反応器へ連通するステップを更に備えている。過剰固体の排出は、酸反応器から酸分離素子への第1固体排出と、メタン反応器からメタン分離素子への第2固体排出とよりなる。
【0010】
また、本発明の流入有機物の処理システムは、流入する有機物を処理するシステムであって、酸分離素子に連通された酸反応器と、酸分離素子に連通すると共に酸反応器とのリサイクル連通リンクを有するメタン反応器とを備え、メタン反応器は、バイオガスを生成すると共にメタン分離素子と連通し、メタン分離素子は、メタン反応器とリサイクル連通リンクを有すると共に排出液体を生成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
上述の構成を有する本発明の有機物処理方法及び処理システムによると、次の如き実用上の顕著な効果が得られる。即ち、本発明によると、酸反応器、酸分離素子、メタン反応器及びメタン分離素子を有機的に結合することにより、流入する有機物を短時間且つ効率的に大規模な処理を行う有機物処理方法及び処理システムを得ることが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明による有機物処理方法及び処理システムの現在最適と考えられている実施形態の構成及び動作を、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0013】
図1は、本発明の好適実施例による保水時間を制御する分離したエレメント付き嫌気性2フェーズ汚水処理の機能ブロック図である。
【0014】
以下の詳細説明は、本発明を実施する現在考えられる最良のモードに関するものである。この説明は本発明を制限するものではなく、単に本発明の一般原理を示すことを意図するものであると理解するべきである。
【0015】
図1において、嫌気性有機物の分解処理(プロセス)10は、酸反応器20フェーズ及びメタン反応器30フェーズを有する2フェーズの処理工程(プロセス)である。酸反応器20は、流入する有機物を受ける混合(ミックス)タンク又は一連のタンクであってもよい。酸反応器20の保水時間は、固体保持時間が1日乃至5日であるのに対して、約1時間乃至3日であるが、有機物を揮発性の脂肪酸に変換する速度に依存する。約3,500乃至20,000mg/lの揮発性酸である酸反応器20内の条件は、pHが約5.0乃至7.0であり、温度は約80〜155°F(即ち、約27〜68℃)である。
【0016】
酸反応器20は、酸分離素子22に流体的に連結され、この酸分離素子22に連通するスラッジ流出口24を有する。この酸分離素子22は、固体バリア、皮膜等の物理的又は機械的バリアを有し、水及び揮発性酸を有する流体は通過させるが、固体の通過を阻止する。しかしながら、固体の分離は、物理的又は機械的バリアを必要としない遠心分離又はその他の既知技術により達成することも可能である。酸フェーズのバクテリア及び劣化しない固体は、酸反応器20にリサイクルでき、微生物母集団(microbial population)を維持し、揮発性固体の退化に使用する。
【0017】
濃縮されたスラッジ又は固体のリサイクル流れ26を、酸分離素子22から酸反応器20へ連通させてもよい。例えば、退化しない有機物及び不揮発性固体等の過剰な固体は、過剰固体廃棄物40として排出してもよい。また、過剰酸反応器固体パージ46は、このシステムから排出してもよい。過剰固体は、存在する無機又は不活性固体の濃度及び固体と液体を分離する分離素子の能力に応じて排出してもよい。
【0018】
酸分離素子22は、メタン反応器30と流体的に連通されてもよい。主として水及び揮発性酸である液体流れ32は、メタン反応器30へ移送され、ここでバクテリアが揮発性脂肪酸をメタン及び二酸化炭素に変換する。メタン反応器30は、1個のタンク又は一連のタンク又は容器であってもよい。メタン反応器30の動作条件は、pHが7.0乃至9.0であり、温度は約80乃至155°F(約27乃至68℃)である。全体的な揮発性酸の濃度は、約0乃至1,500mg/lである。保水時間は、固体保持時間の10日乃至40日に対して、2時間乃至18日である。生成されたメタンガス及び二酸化炭素又はバイオガス50は、エネルギー回収のために排出してもよい。
【0019】
メタン反応器30は、メタン分離素子34に連通された排出液体36を有するメタン分離素子34と流体的に連通されている。このメタン分離素子34は、皮膜等の物理的又は機械的バリアである固体バリアを有してもよく、これは主として水である液体は通過させ、固体の通過を阻止する。固体の分離は、物理的又は機械的バリアを有しない遠心分離又はその他の既知技術により達成してもよい。メタンフェーズのバクテリア及び退化しない固体は、メタン反応器30へ固体リサイクル流れ38としてリサイクルし、またオプションとして更なる退化のために酸反応器20へリサイクルしてもよい。微生物及び生成された無機固体等の過剰固体は、過剰メタン固体排出物44としてシステムから廃棄してもよい。また、過剰固体は、過剰メタン反応器固体パージ48としてメタン反応器30から直接廃棄してもよい。水42も、排出してもよい。
【0020】
以上、本発明の好適実施形態について図示し且つ詳述した。しかし、本発明の要旨や精神を逸脱することなく、特定の用途に応じて上述及びその他種々の変形変更が可能であること、当業者には容易に理解できよう。従って、本発明は、斯かる変形変更をも含むものであると解するべきである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明による嫌気性2フェーズ処理システムによる有機物処理システムの好適実施形態の構成を示す機能ブロック図である。
【符号の説明】
【0022】
10 嫌気性有機物処理プロセス(有機物処理システム)
20 酸反応器
22 酸分離デバイス(酸分離素子)
24 スラッジ排出
26 固体リサイクル流れ
30 メタン反応器
32 液流
34 メタン分離デバイス(メタン分離素子)
36 流出液体
38 固体リサイクル流れ
40 過剰酸固体排出
44 過剰メタン固体排出
46 過剰酸反応器固体パージ
48 過剰メタン反応器固体パージ
50 メタンガス及び二酸化炭素又はバイオガス


【特許請求の範囲】
【請求項1】
流入する有機物を処理する有機物処理方法において、
嫌気性2フェーズ処理システムで処理される前記流入有機物を酸反応器へ供給するステップと、
前記酸反応器の条件を維持して水及び懸濁固体を含み流出スラッジを形成する流体内に揮発性酸を生成させるステップと、
前記流出スラッジを酸分離素子へ連通するステップと、
前記懸濁固体から水と揮発性酸を分離するステップと、
液流を前記酸分離素子からメタン反応器へ連通するステップと、
固体リサイクル流れを前記酸分離素子から前記酸反応器へ連通するステップと、
前記メタン反応器内の条件を維持してバイオガスを生成するステップと、
前記メタン反応器からの液流をメタン分離素子へ連通するステップと、
固体から液体を分離するステップと、
第2固体リサイクル流れを前記メタン分離素子から前記メタン反応器へ連通するステップと、
前記バイオガスを前記メタン反応器から連通するステップと、
過剰固体を前記嫌気性2フェーズ処理システムから排出するステップとを備えることを特徴とする有機物処理方法。
【請求項2】
前記第2固体リサイクル流れの一部を前記メタン反応器から前記酸反応器へ連通するステップを更に備えることを特徴とする請求項1に記載の有機物処理方法。
【請求項3】
前記過剰固体の排出は、前記酸反応器から前記酸分離素子への第1過剰固体排出と、
前記メタン反応器から前記メタン分離素子への第2過剰固体排出とよりなることを特徴とする請求項1に記載の有機物処理方法。
【請求項4】
流入する有機物を処理する有機物処理システムにおいて、
酸分離素子に連通された酸反応器と、
前記酸分離素子に連通すると共に前記酸反応器とのリサイクル連通リンクを有するメタン反応器とを備え、
前記メタン反応器は、バイオガスを生成すると共にメタン分離素子と連通し、
該メタン分離素子は、前記メタン反応器とリサイクル連通リンクを有すると共に排出液体を生成することを特徴とする有機物処理システム。

【図1】
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【公表番号】特表2006−520684(P2006−520684A)
【公表日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−506952(P2006−506952)
【出願日】平成16年3月8日(2004.3.8)
【国際出願番号】PCT/US2004/007038
【国際公開番号】WO2004/085316
【国際公開日】平成16年10月7日(2004.10.7)
【出願人】(505178516)
【氏名又は名称原語表記】CAROLLO ENGINEERS, P.C.
【Fターム(参考)】