説明

有機物発酵装置及び有機物発酵施設

【課題】 有機物から効率よく水分を除去しつつ発酵することが可能な有機物発酵装置及びこれを備えた有機物発酵施設を提供する。
【解決手段】 発酵槽12に充填された透水性を有する床材40により水分を除去しつつ有機物を発酵する装置であって、発酵槽12は、地盤20が地表面21から掘り下げられて形成された畝24を有する底床面22と該底床面22の周囲の法面23と該法面23の周囲の一部又は全部に沿って地表面21から立ち上げられた立上壁30とで形成され、発酵槽12が遮水シート41により覆われるとともに、畝24の基部25に排水路44が設けられていることを特徴とする有機物発酵装置11。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家畜の糞尿などの有機物から水分を除去しつつ発酵する有機物発酵装置及びこれを備えた有機物発酵施設に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、家畜の糞尿(排泄物)、生ごみ、剪定枝、刈草、食品廃棄物などの有機物は、微生物発酵を利用して堆肥化し、有機肥料などとして広く用いられている。この種の堆肥化装置としては、プール状のくぼ地を形成した中に遮水シートを敷き、遮水シートで囲まれた中に土壌を積層(充填)した上に有機物を入れ、土壌中の好気性発酵菌の作用で有機物を発酵するものがある(例えば特許文献1参照)。
また、有機物廃材を処理する方法として、敷地内に排水用のパイプを敷設することも行われている(例えば特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2003−183093号公報
【特許文献2】特開平10−314708号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
発酵させようとする有機物が多量の水分を含む場合、発酵に適した条件を維持するためには、効率よく排水することが望まれる。しかしながら、従来は、発酵装置の全域から効率よく排水することは難しく、局所的に水がたまる箇所が生じるなどの不都合が生じるおそれがある。
【0004】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、有機物から効率よく水分を除去しつつ発酵することが可能な有機物発酵装置及びこれを備えた有機物発酵施設を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するため、本発明は、発酵槽に充填された透水性を有する床材により水分を除去しつつ有機物を発酵する装置であって、前記発酵槽は、地盤が地表面から掘り下げられて形成された畝を有する底床面と該底床面の周囲の法面と該法面の周囲の一部又は全部に沿って地表面から立ち上げられた立上壁とで形成され、前記発酵槽が遮水シートにより覆われるとともに、前記畝の基部に排水路が設けられていることを特徴とする有機物発酵装置を提供する。
前記畝の上面は、前記畝の長手方向に沿う稜線を有するとともに、該稜線の両側に漸次傾斜が強まる下り勾配を有することが好ましい。
さらに、前記排水路の下流側に接続された貯液槽を前記発酵槽の外側に備えることが好ましい。
前記排水路は、前記遮水シートの上側に敷設された集液管を有することが好ましい。
前記集液管は、水分が通過可能な孔が多数穿設された管体から構成することができる。
【0006】
前記遮水シートの少なくとも前記畝の上面を覆う部位には、前記床材が充填される側の面に外面保護材が積層されていることが好ましい。前記外面保護材は、前記遮水シートの前記法面を覆う部位にも積層されていることが好ましい。前記外面保護材は、透水性を有するとともに、前記畝の基部近傍まで延設されて前記排水路を区分していることが好ましい。
前記遮水シートと前記底床面との間には、前記遮水シートを保護する内面保護材が積層されていることが好ましい。
前記外面保護材及び/又は前記内面保護材が不織布であることが好ましい。
【0007】
前記遮水シートは、少なくとも一部が土中に埋められたコンクリートで下端が固定された前記立上壁を支持する壁用支柱と該壁用支柱より発酵槽の内側に位置して地表面に立設されたシート固定板との間に挟持されている構成とすることができる。
前記シート固定板より発酵槽の内側に位置して地表面に立設された保護板により、前記シート固定板の少なくとも一部が覆われて保護されていることが好ましい。
前記立上壁は、少なくとも一部が土中に埋められたコンクリートで下端が固定された補助支柱により、前記発酵槽の反対側から支持されていることが好ましい。
前記立上壁は、出入口となる開口部を有することが好ましい。
【0008】
また本発明は、上述の有機物発酵装置の発酵槽の上方に柱を介して屋根が付設されたことを特徴とする有機物発酵施設を提供する。
前記屋根を支持する柱は、前記立上壁を支持する壁用支柱が延長されたものとすることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の有機物発酵装置によれば、発酵槽内の水分を畝の基部に設けられた排水路に集めて排水することができるので、有機物に含まれる水分を効率よく除去して、有機物の発酵に適した最適な条件を維持するのに有利である。
畝の上面が畝の長手方向に沿う稜線を有するとともに、該稜線の両側に漸次傾斜が強まる下り勾配を有する場合、床材の上部の水分が下り勾配に沿って畝の長手方向に直交する方向に円滑に下降しやすくなり、水分が排水路に到達するまでの経路の長さ及び時間を短縮することができる。
排水路の下流側に接続された貯液槽を発酵槽の外側に備える場合、排水路を通じて排出された水分を貯液槽に貯留することができる。この水分は床材で濾過されているので液肥として利用する際に好都合である。
排水路が遮水シートの上側に敷設された集液管により構成されている場合、床材の深部で床材の圧力を受けても排水路の断面形状を確実に維持することができ、排水路に沿った水分の排出を効率よく行うことができる。
集液管を水分が通過可能な孔を多数穿設した管体から構成した場合、水分を集液管内に集めやすい。
【0010】
遮水シートの少なくとも畝の上面を覆う部位において、床材が充填される側の面に外面保護材が積層されている場合、発酵装置の施工や使用時における有機物の掘り起こしや撹拌などに重機類などを使用した場合に重機類などによる遮水シートの破れを抑制することができる。
同様に、外面保護材は、遮水シートの法面を覆う部位にも積層されている場合、法面の遮水シートの破れも抑制することができる。
外面保護材は、透水性を有するとともに、前記排水路にまで延設されて前記排水路を区分している場合、外面保護材が遮水シートの表面を保護することに加えて、床材の圧力を受けても外面保護材の層内が水分の流路となり排水路に導水することができる。また、外面保護材と遮水シートで排水路を形成することができる。そして、排水路が集液管を有する場合、外面保護材により、集液管の孔が床材で目詰まりすることを防止する。
遮水シートと底床面との間に遮水シートを保護する内面保護材が積層されている場合、発酵装置の施工や使用時に底床面にガラスの破片や鋭利な岩の角などが露出していても遮水シートの破れを抑制することができる。
外面保護材及び/又は内面保護材が不織布である場合、軽量で施工が容易であり、突き差しや引き裂きに対する強度が大きく保護材として信頼性が高い。
【0011】
遮水シートは、少なくとも一部が土中に埋められたコンクリートで下端が固定された立上壁を支持する壁用支柱と該壁用支柱より発酵槽の内側に位置して地表面に立設されたシート固定板との間に挟持されていることにより、地上に露出される遮水シートの表面をシート固定板で重機類などから保護することができる。
シート固定板より発酵槽の内側に位置して地表面に立設された保護板により、シート固定板の少なくとも一部が覆われて保護されている場合、シート固定板の表面が保護板で保護され、遮水シートの表面をより確実に保護することができる。
立上壁は、少なくとも一部が土中に埋められたコンクリートで下端が固定された補助支柱により発酵槽の反対側から支持されている場合、発酵槽の内部スペースを有効に利用でき、また、発酵槽の内側や外側から立上壁を押圧する方向の力や衝撃などに対して、立上壁が倒れることを防ぐことができる。
立上壁は、出入口となる開口部を有する場合、発酵槽内への有機物、床材等の搬入や、有機物が発酵して得られる堆肥、肥沃土等の搬出、あるいは、使用時における有機物の掘り起こしや撹拌などに重機類などを使用する場合の入出が容易になる。
【0012】
上述の有機物発酵装置の発酵槽の上方に柱を介して屋根が付設された有機物発酵施設によれば、発酵槽内への降雨、降雪や降霜などによる水分の侵入を防止できる。
屋根を支持する柱は、立上壁を支持する壁用支柱が延長されたものである場合、柱を共通化することにより、柱の設置本数の増大を抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、最良の形態に基づき、図面を参照して本発明を説明する。
図1は、本発明の一実施例に係る有機物発酵施設の側面図である。図2は、図1の有機物発酵施設の正面図である。図3は、図1のA−A線に沿う断面図である。図4は、図1の有機物発酵施設の屋根を省略した平面図である。図5は、図4のB−B線に沿う断面図である。図6は、図5の排水路付近を示す部分拡大図である。図7は、立上壁の壁用支柱に対する補助支柱の取り付けを示す部分拡大図である。
【0014】
図1及び図2に示す有機物発酵施設10は、有機物発酵装置11の発酵槽12の上方に、柱51を介して屋根50を付設したものである。ここで発酵槽12は、図3に示すように、地盤20が地表面21から掘り下げられて形成された畝24を有する底床面22と、該底床面22の周囲の法面23と、該法面23の周囲に沿って地表面21から立ち上げられた立上壁30とで形成されている。
【0015】
図5に示すように、発酵槽12の底床面22、法面23及び立上壁30は、遮水シート41により覆われている。この遮水シート41は、水分が発酵槽12から外部に漏れ出さない役割を有する。遮水シート41は、水分を通さない遮水性、発酵槽12の各部に対する追従性のほか、耐久性、耐候性を備えた柔軟なプラスチックシートが好適である。具体的には、厚さ0.3mm〜1.5mm程度のポリエチレン(LLDPEやEVA等)などの合成樹脂製シートが挙げられる。
【0016】
発酵槽12中、遮水シート41の上には、図3及び図5に示すように、透水性を有する床材40が充填されている。床材40に適する透水性材料としては、例えば火山礫、砂利、火山灰、砂、土など、またはこれらの2種類以上の組み合わせを用いることができる。
【0017】
畝24の基部25には、後述する遮水シート41の外面保護材43で区分されるとともに、遮水シート41の上側に敷設された集液管45により、排水路44が構成されている。本実施例の場合、図6に示すように、集液管45は、水分が通過可能な孔46、46、…が多数形成された管体から構成されている。孔46は、管体45の周方向のみならず、長手方向にも多数適宜の間隔を介して多数形成されており、これら多数の孔46、46、…を通して、周囲の水分を集液管45内に集めて排水することができる。集液管45は、硬質塩化ビニルやポリエチレンなど、耐久性を有するプラスチック製のものが好適である。これにより、床材40の深部で床材の圧力を受けても排水路44の断面形状を確実に維持することができ、効率よく排水することができる。なお、排水路44は床材40の侵入で流路が塞がれ、排水が妨げられない構成であればよく、例えば、合成樹脂や金属製の多孔質板や格子蓋で排水路44への床材40の侵入を阻止してもよい。あるいは、後述する遮水シート41の外面保護材43を透水性のよい、例えば、ポリオレフィン製の不織布とし、この不織布で排水路44を区分して床材40の侵入を阻止してもよい。
【0018】
畝24の上面26は、畝24の長手方向(図3の紙面に垂直な方向)に沿う稜線27を有するとともに、該稜線27の両側に漸次傾斜が強まる下り勾配を有する。つまり、本形態例では2段の勾配で構成され、畝24の斜面28の勾配は、上面26の勾配より大きくされている。勾配は3段以上で構成されてもよいし、段同士の境は曲面に面取りされていてもよい。これにより、稜線27が分水境界となり、畝24より上側にある床材40の水分が下り勾配に沿って畝24の長手方向に直交する方向に下降しやすくなる。この結果、水分が畝24の基部25に設けられた排水路44に到達するまでの経路の長さ及び時間を短縮することができる。なお、稜線27は分水境界となる態様であれば、面取りされて断面形状が円弧状であってもよく、明確な線分を形成している必要はない。畝24の上面26の稜線27の位置は地表面21と同じでもよいが、本実施例のように地表面21より低いと、床材40が所定の厚さ以上となるように畝24を覆い尽くしたとき、床材40の表面が地表面21と略同一面とすることができ、好ましい。そのように構成すると、有機物の搬出入が容易となり、床材40の上で有機物(図示略)を空気と混ぜ合わせる作業がしやすく、有機物の発酵が促進される。また、立上壁30の開口部15から有機物があふれ出るおそれもない。
【0019】
本実施例では、図3に示すように畝24は3本設けられている。また、排水路44は、法面23と畝24との間に2本、畝24と畝24との間に2本の、合わせて4本設けられている。図1に示すように、排水路44は上流から下流に向けて若干の下り勾配(1%〜5%程度)を有しており、排水路44に沿って排水を促進することができる。図4に示すように、4本の排水路44は、平面視で互いに平行に敷設されており、発酵槽12の各部からまんべんなく水分を集めて排水することができる。排水路44の下流側(図4の下側)は、排水路44に対してT字に接続された合流用流路47により発酵槽12の一つの隅部に集められ、さらに発酵槽12の外側に延出された接続用流路14を通じて貯液槽13まで達している。合流用流路47を構成する配管としては、集液管45と同様の多数の孔を有するものを採用して集液管としても機能させることが好ましい。接続用流路14を構成する配管としては、水分の漏出を防止するため、孔のない管体が好ましい。
【0020】
合流用流路47の敷設は、畝24の基部25と同様な断面形状を有する溝を掘って、その溝底に配管を設置し、T字継手を用いて各集液管45と接続することにより実施できる。図2に示すように、合流用流路47は、発酵槽12の正面に向かって右から左へと排水路44と同程度の下り勾配が付けられており、接続用流路14に向けて排水を促進することができる。このため、各排水路44の設置深さ、すなわち畝24の基部25の深さは、発酵槽12の正面に向かって右から左へと、順次深くなるように形成されている。
【0021】
貯液槽13は、発酵槽12の外側に設けられている。貯液槽13は、穴を掘削してその底面及び側面に遮水シート(図示略)を敷設することにより、簡易に設置できる。排水路44は出入口15が設けられた側に向かって下っており、貯液槽13は、出入口15の脇に設けられている。このため、貯液槽13にたまった水分を汲み出し又は吸い出す際に、貯液槽13のそばまで車両を入れやすい。
【0022】
発酵槽12及び貯液槽13の大きさ及び形状は、適宜設計することができる。実施のため一例を挙げるならば、発酵槽12は間口約10m、奥行き約20mの矩形状である。畝24における基部25と上面26との高低差は、例えば0.3m〜1mである。地表面21から畝24の上面26までの深さは、例えば0.1m〜0.6mである。床材40を充填する深さは、例えば畝24の上面26の上に形成される床材40の厚さとして、例えば0.1〜0.4mである。畝24及び排水路44の設置間隔や本数も特に限定されない。
【0023】
遮水シート41と底床面22及び法面23との間には、遮水シート41を保護する内面保護材42が設けられている。内面保護材42としては、各種フェルトや合成樹脂製の不織布が好適である。中でも、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィンからなる不織布が軽量で施工が容易であり、弾力性に富み、突き差しや引き裂きに対する強度が大きく好ましい。不織布としては、軽くて嵩張るもの、例えば、メルトブローン不織布などが好ましい。内面保護材42の厚さは特に制限はないが、保護機能面からは2mm以上であることが好ましい。施工時に、内面保護材42の上に遮水シート41を重ねて敷設することにより、内面保護材42は遮水シート41に積層される。これにより、有機物発酵装置11の施工や使用時、底床面22にガラスの破片や鋭利な岩の角などが露出していても遮水シート41の破れを抑制することができる。
【0024】
遮水シート41の床材40が充填される側の面には、畝24の上面26を覆う部位と、法面23を覆う部位の上部に、外面保護材43が積層されている。外面保護材43としては、内面保護材42と同様な各種フェルトや合成樹脂製の不織布が好適である。施工時に、遮水シート41の上に外面保護材43を重ねて敷設することにより、外面保護材43は遮水シート41に積層される。これにより、有機物発酵装置11の施工や使用時に空気と混合させるための有機物の掘り起こしや撹拌などにブルドーザーやショベルカーなどの重機類を使用した場合に重機類による遮水シート41の破れを抑制することができる。法面23を覆う外面保護材43は、下端が少なくとも床材40の下に埋没する深さまで設ける。法面23上の外面保護材43は、図8及び図9に示すように、畝24の上面26と同程度の深さまででもよいし、畝24の基部25まで達していてもよい。また、畝24の上面26を覆う外面保護材43についても、畝24の斜面28又は基部25まで達していてもよい。
【0025】
特に、外面保護材43が、例えば上述したポリオレフィン製不織布など、透水性を有する場合、図5及び図6に示すように、法面23および/または畝24の上面を覆う外面保護材43は、畝24の基部25まで達していて、かつ、集液管45の上面を覆う態様で排水路44を床材40から区分することが好ましい。このように構成することにより、外面保護材43が遮水シート41の表面を保護することに加えて、充填された床材40の重力による圧力を受けても、外面保護材43の層内が水分の流路となり、排水路44(集液管45)に円滑に導水することができる。そして、外面保護材43により、集液管45の孔46が床材40で目詰まりすることを防止することができる。
【0026】
図3に示すように、立上壁30は、法面23の周囲に沿って立設されている。図2及び図4に示すように、立上壁30は発酵槽12の正面側の一部で開口部15が空けられており、使用時の出入口として利用できるようにしてもよい。出入口15から有機物や排水などの漏れ出しを防止するため、出入口15の全幅にわたってU字溝16を埋設し、格子蓋を嵌め込んでおくことも好ましい。
【0027】
図5に示すように、立上壁30は、少なくとも一部が土中に埋められたコンクリート32で下端が固定されて立上壁30を支持する壁用支柱31と、遮水シート41と、壁用支柱31より発酵槽12の内側に位置して地表面21に立設されたシート固定板35と、シート固定板35より発酵槽12の内側に位置して地表面21に立設された保護板36とを備える。さらに、図2に示すように、立上壁30の上端および壁用支柱31、壁用支柱31、…の間が鋼材等からなる補強材38、38、…により水平方向に連結され、補強されている。ここで、壁用支柱31は、法面23の周囲に沿って上下方向に立設されている。補助支柱33は、壁用支柱31から外側に水平距離を離した位置に少なくとも一部が土中に埋められたコンクリート34で固定された下端を有し、上部で屈曲して発酵槽12の反対側から立上壁30を支持している。図7に示すように、補助支柱33の上端は、金具37を介して壁用支柱31に側方から連結されている。なお、コンクリート32、34は、支柱31、33を挿入したコンクリートブロックとして予め形成したものを用いてもよいが、現場で、型枠を地中に埋設し、支柱31、33を挿入してコンクリートを流し込んで形成してもよい。
【0028】
図5に示すように、立上壁30に張られた遮水シート41は、直接または補強材38を介して壁用支柱31により、壁用支柱31とシート固定板35との間に挟持され固定されている。このシート固定板35の下部は、保護板36により覆われて保護されている。シート固定板35としては、例えば、木製板やプラスチックボードなどが用いられ、保護板36としては、例えば、各種フェルトや合成樹脂製不織布などのマット材が用いられる。特に限定されるものではないが、シート固定板35の厚さは例えば10mm以上、保護板36の厚さは例えば20mm以上である。シート固定板35及び保護板36を遮水シート41上に設けることにより、有機物の搬入や発酵によって生成した堆肥などの搬出、有機物の撹拌など各種作業に用いられる重機や機械などによって遮水シート41が損傷することを防止できる。遮水シート41は、壁用支柱31、補強材38やシート固定板35に対して接着剤やクリップなどを用いて固定することが好ましい。
【0029】
本実施例の有機物発酵施設10においては、発酵槽12内への降雨、降雪や降霜による水分の侵入を防ぐため、発酵槽12の上方に屋根50が付設される。屋根50の構造は特に限定されるものではないが、例えば、鉄骨等からなるフレーム53の上に透明または半透明の合成樹脂製フィルム52を張ったものは、施工が容易、日照が得られること、軽量性等の観点から好ましい。屋根50に用いる前記フィルム52としては、ポリエチレン等のポリオレフィンフィルム、フッ素系樹脂フィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、薄くて強度が大きいスパンボンド不織布、フラットヤーンなどの繊維基材にポリエチレンなどをラミネートしたクロスシートなどが好適である。屋根50を支持する柱51は、立上壁30を支持する壁用支柱31が延長された、屋根・壁兼用支柱となっている。立上壁30の上端と屋根50の軒先との間において、鋼材等からなる補強材54により柱51、51、…の間が水平方向に連結され、補強されている。季節や天候によっては、この部分にも屋根50に用いるものと同様な合成樹脂製フィルムを張ってもよい。
【0030】
本実施例の有機物発酵施設10の施工手順は特に限定されるものではないが、例えば、まず、地盤20を掘って畝24を有する底床面22及び法面23を形成した後、内面保護材42、遮水シート41を順に敷設して積層する。次に、畝24の基部25の遮水シート41上に排水路44及び合流用流路47を配設し、外面保護材43を敷設する。そして、床材40を充填した後に立上壁30及び屋根50を設置することにより完成させることができる。立上壁30の遮水シート41は法面23を覆う遮水シート41と重ね合わせるだけでもよいが、熱融着して接合部の強度および液密性を高めることが好ましい。
【0031】
本実施例の有機物発酵施設10を使用するには、床材40上に家畜の糞尿(排泄物)などの有機物を堆積し、必要に応じて有機物を空気と混ぜ合わせつつ、貯蔵する。この間に、有機物中の余剰な水分が浸出して発酵が進み、堆肥化させることができる。有機物から浸出した余剰な水分は、床材40を浸透して畝24の基部25に設けられた複数本の排水路44に流れ込み、排水して貯液槽13に保管することができる。
【0032】
本実施例の有機物発酵施設10及び装置11によれば、発酵槽12内の水分を畝24の基部25に設けられた排水路44に集めて効率よく排水することができる。排水路44を適宜の間隔で並設し、排水路44に向かって畝24の斜面28が下り勾配で傾斜しているので、発酵槽12の全域から水分を効率よく排水路44に集めることができ、発酵槽12内で局所的に水がたまる箇所が生じるなどの不都合を防止できる。この結果、有機物に含まれる水分を効率よく除去して、有機物の発酵に適した最適な条件を維持することができ、良質な堆肥を製造することができる。
【0033】
畝24の上面26が畝24の長手方向に沿う稜線27を有するとともに、該稜線27の両側に漸次傾斜が強まる下り勾配を有する場合、床材40の上部の水分が下り勾配に沿って畝24の長手方向に直交する方向に円滑に下降しやすくなり、水分が排水路44に到達するまでの経路の長さ及び時間を短縮することができる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は、家畜の糞尿(排泄物)、生ごみ、剪定枝、刈草、食品廃棄物などの有機物の発酵により堆肥化する目的などに利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】実施例に係る有機物発酵施設の側面図である。
【図2】図1の有機物発酵施設の正面図である。
【図3】図1のA−A線に沿う断面図である。
【図4】図1の有機物発酵施設の屋根を省略した平面図である。
【図5】図4のB−B線に沿う断面図である。
【図6】図5の排水路付近を示す部分拡大図である。
【図7】立上壁の壁用支柱に対する補助支柱の取り付けを示す部分拡大図である。
【図8】遮水シートに外面保護材を積層する形態の他の例を示す断面図である。
【図9】図8の排水路付近を示す部分拡大図である。
【符号の説明】
【0036】
10…有機物発酵施設、11…有機物発酵装置、12…発酵槽、13…貯液槽、15…出入口(開口部)、20…地盤、21…地表面、22…底床面、23…法面、24…畝、25…畝の基部、26…畝の上面、27…畝の稜線、30…立上壁、31…壁用支柱、32…コンクリート、33…補助支柱、34…コンクリート、35…シート固定板、36…保護板、40…床材、41…遮水シート、42…内面保護材、43…外面保護材、44…排水路、45…集液管(管体)、46…孔、50…屋根、51…屋根を支持する柱。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発酵槽に充填された透水性を有する床材により水分を除去しつつ有機物を発酵する装置であって、
前記発酵槽は、地盤が地表面から掘り下げられて形成された畝を有する底床面と該底床面の周囲の法面と該法面の周囲の一部又は全部に沿って地表面から立ち上げられた立上壁とで形成され、前記発酵槽が遮水シートにより覆われるとともに、前記畝の基部に排水路が設けられていることを特徴とする有機物発酵装置。
【請求項2】
前記畝の上面は、前記畝の長手方向に沿う稜線を有するとともに、該稜線の両側に漸次傾斜が強まる下り勾配を有することを特徴とする請求項1に記載の有機物発酵装置。
【請求項3】
さらに、前記排水路の下流側に接続された貯液槽を前記発酵槽の外側に備えることを特徴とする請求項1または2に記載の有機物発酵装置。
【請求項4】
前記排水路は、前記遮水シートの上側に敷設された集液管を有することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の有機物発酵装置。
【請求項5】
前記集液管は、水分が通過可能な孔が多数穿設された管体からなることを特徴とする請求項4に記載の有機物発酵装置。
【請求項6】
前記遮水シートの少なくとも前記畝の上面を覆う部位には、前記床材が充填される側の面に外面保護材が積層されていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の有機物発酵装置。
【請求項7】
前記外面保護材は、前記遮水シートの前記法面を覆う部位にも積層されていることを特徴とする請求項6に記載の有機物発酵装置。
【請求項8】
前記外面保護材は、透水性を有するとともに、前記畝の基部近傍まで延設されて前記排水路を区分していることを特徴とする請求項6または7に記載の有機物発酵装置。
【請求項9】
前記遮水シートと前記底床面との間には、前記遮水シートを保護する内面保護材が積層されていることを特徴とする請求項1ないし8のいずれかに記載の有機物発酵装置。
【請求項10】
前記外面保護材及び/又は前記内面保護材が不織布であることを特徴とする請求項6ないし9のいずれかに記載の有機物発酵装置。
【請求項11】
前記遮水シートは、少なくとも一部が土中に埋められたコンクリートで下端が固定された前記立上壁を支持する壁用支柱と該壁用支柱より発酵槽の内側に位置して地表面に立設されたシート固定板との間に挟持されていることを特徴とする請求項1ないし10のいずれかに記載の有機物発酵装置。
【請求項12】
前記シート固定板より発酵槽の内側に位置して地表面に立設された保護板により、前記シート固定板の少なくとも一部が覆われて保護されていることを特徴とする請求項11に記載の有機物発酵装置。
【請求項13】
前記立上壁は、少なくとも一部が土中に埋められたコンクリートで下端が固定された補助支柱により、前記発酵槽の反対側から支持されていることを特徴とする請求項1ないし12のいずれかに記載の有機物発酵装置。
【請求項14】
前記立上壁は、出入口となる開口部を有することを特徴とする請求項1ないし13のいずれかに記載の有機物発酵装置。
【請求項15】
請求項1ないし14のいずれかに記載の有機物発酵装置の発酵槽の上方に柱を介して屋根が付設されたことを特徴とする有機物発酵施設。
【請求項16】
前記屋根を支持する柱は、前記立上壁を支持する壁用支柱が延長されたものであることを特徴とする請求項15に記載の有機物発酵施設。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−29927(P2007−29927A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−221054(P2005−221054)
【出願日】平成17年7月29日(2005.7.29)
【出願人】(000224101)藤森工業株式会社 (292)
【Fターム(参考)】