説明

有機発光ダイオードデバイスのための防湿コーティング

可撓性又は剛性基材と、有機電子デバイスと、1つ以上のダイヤモンド様フィルム層の1つ以上とを有する、障壁アセンブリ。ダイヤモンド様フィルム層は、有機発光ダイオードデバイス、光電池デバイス、有機トランジスタ、及び無機薄膜トランジスタ等の、水分又は酸素に敏感な物品を保護するための複合アセンブリを実装、被覆、封入、又は形成するために使用され得る。又、ダイヤモンド様フィルム層は、アセンブリにおける接着剤結合線の縁部封止も提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、OLEDデバイス等の水分又は酸素に敏感な物品を保護するための障壁フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
有機発光ダイオード(OLED)デバイスは、水蒸気又は酸素に暴露される際、出力の減少又は初期故障を被り得る。OLEDデバイスを封入し、耐用期間を延長するために金属類及びガラス類が使用されているが、典型的に金属類は透明性に欠け、ガラスは可撓性に欠ける。OLED及びその他の電子デバイスのための代替封入物質を発見するために、熱心な努力が行われている。真空プロセスの様々な種類の例が、障壁コーティングを形成するための特許及び技術文献に記載されている。これらの方法は、電子ビーム蒸着、熱蒸着、電子サイクロトロン共鳴プラズマ励起化学蒸着(PECVD)、磁気励起PECVD、反応性スパッタリング、及びその他の範囲に及ぶ。これらの方法によって蒸着されるコーティングの障壁性能は、特定のプロセスによるが、通常、水蒸気透過速度(MVTR)が0.1〜5g/m/日である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
したがって、OLED、有機光電池デバイス(OPV)、及び有機トランジスタ等の有機電子デバイス、並びに薄膜トランジスタ(酸化亜鉛(ZnO)、非晶質ケイ素(a−Si)、及び低温ポリシリコン(LTPSi)を使用して作製されたものを含む)等の無機電子デバイス、特に剛性基材に加えて可撓性基材上のデバイスの封入を改善する必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
水分又は酸素に敏感な物品を保護するための複合アセンブリは、基材と、該基材にオーバーコートされる有機電子デバイスと、該有機電子デバイス上にオーバーコートされるダイヤモンド様フィルムと、を含む。
【0005】
プロセスは、本アセンブリを製造するいずれかの方法を含む。
【0006】
障壁アセンブリ又はデバイス内の様々な層の場所に関する「上部」、「上」、「最上部」等のような配向の言葉は、水平な支持層に対する1つ以上の層の相対位置を指す。障壁アセンブリ又はデバイスが、それらの製造中又は製造後にいずれかの特定の空間的配向を有するべきであることを意図しない。
【0007】
障壁アセンブリの基材又はその他の要素に対する層の位置を記載するための「オーバーコートされた」という用語は、層が基材又はその他の要素の上部にあることを指すが、基材又はその他の要素のいずれかと隣接する必要は無い。
【0008】
「ポリマー」という用語は、ホモポリマー類及びコポリマー類、並びに例えば共押し出しによって、又は例えば、エステル交換を含む反応によって混和性混合物を形成する場合があるホモポリマー類又はコポリマー類を指す。又、「ポリマー」という用語は、プラズマ蒸着ポリマー類も含む。「コポリマー」という用語は、ランダム及びブロックコポリマーの両方を含む。「硬化性ポリマー」という用語は、架橋及び非架橋ポリマーの両方を含む。「架橋」ポリマーという用語は、通常、架橋分子又は基を介して、ポリマー鎖が共有化学結合で互いに結合され、ネットワークポリマーを形成するポリマーを指す。架橋ポリマーは、一般的に不溶性によって特徴付けられるが、適切な溶媒の存在下で膨潤性であってもよい。
【0009】
「可視光透過性」支持体、層、アセンブリ、又はデバイスという用語は、スペクトルの可視部分に渡り、垂直軸に沿って測定される平均透過率Tvisが、少なくとも約20%である支持体、層、アセンブリ、又はデバイスであることを意味する。
【0010】
「ダイヤモンド様フィルム」(DLF)という用語は、炭素及びケイ素を含み、所望により水素、窒素、酸素、フッ素、イオウ、チタン、及び銅を含む群から選択される追加の構成要素を1つ以上含む、実質的に又は完全に非晶質のガラスを指す。ある実施形態において、その他の要素が存在してもよい。非晶質ダイヤモンド様フィルムは、短距離秩序を付与するために原子のクラスタリングを含んでもよいが、180ナノメートル(nm)〜800nmの波長を有する放射線を悪影響を及ぼすように散乱させる可能性のあるミクロ又はマクロ結晶性につながる中距離及び長距離秩序は本質的に欠いている。ダイヤモンド様フィルムの具体的な種類には、ダイヤモンド様炭素(DLC)、ダイヤモンド様ガラス(DLG)、ダイヤモンド様ナノ複合物質(DYLYN)、非晶質ダイヤモンド、四面体非晶質炭素、四面体非晶質水素化炭素、ドープダイヤモンド様炭素フィルム等が挙げられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
より優れた水蒸気障壁性能を有するコーティングを得られる、改善されたPECVDプロセスを使用することができる。優れた障壁性能は、有意なエネルギーイオン衝撃下で低酸素酸化ケイ素コーティングを得られる高周波(RF)プラズマ条件を利用して、電極に密接に接触する基材上にSiOCHフィルムを形成することによって達成することができる。50℃でASTM F−1219を使用して測定された、本プロセスを使用して蒸着された障壁コーティングのMVTRは、0.005g/m/日未満であった。高自己バイアス及び低圧力(およそ0.7〜1.3Pa(5〜10ミリトル))の下で蒸着される、厚さが少なくとも100nmの障壁コーティングは、優れた水蒸気透過速度をもたらす。コーティングは、少なくとも0.1W/sq.cmの順電力で動作するRF源を使用して電力供給される電極上に蒸着される。真空槽は、これらの動作条件が極めて高い(>500V)負電位をドラム電極に生じるように構成される。高い基材バイアスを有することによるイオン衝撃の結果として形成されるコーティングは、極めて低い自由体積を有する。通常、電極は水冷式である。テトラメチルシラン(TMS)及び酸素等のケイ素源は、結果として生じるコーティングが低酸素となるような量で注入される。コーティングの酸素が不足しているとしても、コーティングは高い光透過率を有する。SiOCNHコーティングを獲得するために、酸素に加えて窒素が注入されてもよい。又、SiOCNHコーティングも優れた障壁特性を有する。
【0012】
したがって、より優れた障壁コーティングが得られるプロセス条件は、(1)障壁コーティングが、RF PECVDプロセスによって、高い自己バイアス下で電力供給される電極上に基材を配置することによって形成されること、(2)CVDプロセスが、気相核生成及び粒子形成を回避し、より高い圧力でのイオンエネルギーの衝突反応停止を防ぐために、6.7Pa(50ミリトル)未満、好ましくは3.3Pa(25ミリトル)未満、最も好ましくは1.3Pa(10ミリトル)未満の極めて低い圧力で実施されること、及び(3)コーティングが極めて「低酸素」、つまりコーティング内に存在する酸素原子が、Si原子1個に対し1.5個未満である(O/Si原子比率<1.5)こと、である。
【0013】
障壁コーティングは、例えば、有機エレクトロルミネセント薄膜、光電池デバイス、トランジスタ、及び他のそのようなデバイス等の様々な種類のパッケージ用途に使用されてもよい。障壁コーティングを有する基材は、OLED、有機トランジスタ、OPV、液晶ディスプレイ(LCD)、及びその他のデバイス等の可撓性電子デバイスの製造に使用されてもよい。又、コーティングは、電子デバイスを直接封入するために使用することができ、障壁フィルムは、封入ガラス又はプラスチック基材デバイスのカバーとして使用することができる。記載されるPECVD条件を使用して実現される優れたコーティングの障壁性能のため、そのようなデバイスは、より優れた性能を有しつつ、より低コストで製造できる可能性がある。
【0014】
例示的な障壁アセンブリ構造
図1は、水分及び酸素、又はその他の汚染物質が、下に横たわる基材102への実質的な移動を減少する又は防止するためのコーティング100を有する障壁アセンブリの概略図である。アセンブリは、上記に提供される実施例等、水分又は酸素から保護する必要がある、又は保護することによって利益を得る、いずれの種類の物品を示してもよい。特定の種類の電子又は表示デバイスでは、例えば、酸素及び水分がそれらの性能又は耐用期間を大幅に低下させる可能性があり、したがってコーティング100は、デバイスの性能に有意な利点を提供することができる。
【0015】
図2は、下に横たわる基材112を保護する、交互のDLF層116、120、及びポリマー層114、118から形成される多層膜を有する、積層された障壁アセンブリ110の概略図である。図3は、下に横たわる基材132を保護する、交互の異なる種類のポリマー層、例えば交互のポリマー層136、140及びポリマー層134、138から形成される多層膜を有する積層された障壁アセンブリ130の概略図である。本実施例では、層136及び140は、第1の種類のポリマーからなり、層134及び138は、第1の種類のポリマーと異なる第2の種類のポリマーからなる。いずれの高架橋ポリマー類が層に使用されてもよく、その例を以下に提供する。したがってアセンブリ130は、その他の種類の層を含むこともできるが、全体が障壁アセンブリのポリマー多層構造体である。異なるポリマー類のそれぞれのグループ(例えば、134及び136)、又はDLFを含むポリマー類の組み合わせ(例えば、114及び116)は、ダイアドと称され、アセンブリには、いかなる数のダイアドを含むことができる。又、ダイアド間に様々な種類の任意の層を含むこともでき、その例を以下に提供する。
【0016】
アセンブリ110及び130は、いかなる数の交互層又はその他の層も含むことができる。更に層を追加することによって、酸素、水分、又はその他の汚染物質に対するそれらの不浸透性が向上され、アセンブリの耐用期間が改善される可能性がある。又、より多くの層又は多層を使用することによって、層内の欠陥の被覆又は封入を助長できる可能性もある。層の数は、特定の実施又はその他の要因に基づき、最適化する、ないしは別の方法で選択することができる。
【0017】
基材
防湿コーティングを有する基材は、ディスプレイ又は電子デバイスの作製に使用されるいずれの種類の基材物質をも含むことができる。基材は、例えばガラス又はその他の物質を使用することによって、剛性にすることができる。又、基材は、例えばプラスチック又はその他の物質を使用することによって、曲線状又は可撓性にすることもできる。基材は、いずれの所望の形状であってもよく、透明であっても不透明であってもよい。特に好ましい支持体は、ポリエステル類(例えば、PET)、ポリアクリレート類(例えば、ポリメチルメタクリレート)、ポリカーボネート類、ポリプロピレン類、高又は低密度ポリエチレン類、ポリエチレンナフタレート類、ポリスルホン類、ポリエーテルスルホン類、ポリウレタン類、ポリアミド類、ポリビニルブチラール、ポリ塩化ビニル、二フッ化ポリビニリデン、及びポリエチレン硫化物等の熱可塑性フィルム、並びにセルロース誘導体、ポリイミド、ポリイミドベンゾキサゾール、及びポリベンゾキサゾール等の熱硬化性フィルムを含む、可撓性プラスチック物質である。
【0018】
基材に好適なその他の物質には、クロロトリフルオロエチレン−フッ化ビニリデンコポリマー(CTFE/VDF)、エチレン−クロロトリフルオロエチレンコポリマー(ECTFE)、エチレン−テトラフルオロエチレンコポリマー(ETFE)、フッ素化エチレン−プロピレンコポリマー(FEP)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ペルフルオロアルキル−テトラフルオロエチレンコポリマー(PFA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリビニリデンフッ化物(PVDF)、ポリビニルフッ化物(PVF)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレンコポリマー(TFE/HFP)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン−フッ化ビニリデンターポリマー(THV)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ヘキサフルオロプロピレン−フッ化ビニリデンコポリマー(HFP/VDF)、テトラフルオロエチレン−プロピレンコポリマー(TFE/P)、及びテトラフルオロエチレン−ペルフルオロメチルエーテルコポリマー(TFE/PFMe)が挙げられる。
【0019】
基材に好適なその他の物質には、金属類及び金属合金類が挙げられる。基材のための金属類の例には、銅、銀、ニッケル、クロム、スズ、金、インジウム、鉄、亜鉛、及びアルミニウムが挙げられる。基材のための金属合金類の例には、記載される金属の合金が挙げられる。基材に特に好適な別の物質は、スチールである。金属類及び金属合金類は、例えば可撓性デバイスにホイルで実装することができる。金属又は金属合金基材は、ポリマーフィルム上の金属コーティング等の追加の物質を含むことができる。
【0020】
代替的な基材には、好ましくは熱設定、張力下でのアニーリング、又は支持体が拘束されていない場合に少なくとも熱安定化温度まで収縮を抑制するその他の技術を使用して熱安定化された、高ガラス転移温度(Tg)障壁を有する物質が挙げられる。支持体が熱安定化されていない場合、好ましくは、ポリメチルメタクリレートのTg(PMMA、Tg=105℃)を上回るTgを有する。より好ましくは、支持体のTgは、少なくとも約110℃、更により好ましくは少なくとも約120℃、及び最も好ましくは少なくとも約128℃である。熱安定化されたポリエチレンテレフタレート(HSPET)に加え、その他の好ましい支持体には、その他の熱安定化された高Tgポリエステル類、PMMA、スチレン/アクリロニトリル(SAN、Tg=110℃)、スチレン/無水マレイン酸(SMA、Tg=115℃)、ポリエチレンナフタレート(PEN、Tg=約120℃)、ポリオキシメチレン(POM、Tg=約125℃)、ポリビニルナフタレン(PVN、Tg=約135℃)、ポリエーテルケトン(PEEK、Tg=約145℃)、ポリアリールエーテルケトン(PAEK、Tg=145℃)、高Tgフルオロポリマー類(例えば、ヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン、及びエチレンのダインオン(DYNEON)(商標)HTEターポリマー、Tg=約149℃)、ポリカーボネート(PC、Tg=約150℃)、ポリアルファ−メチルスチレン(Tg=約175℃)、ポリアリレート(PAR、Tg=325℃)、ポリノルボレン(PCO、Tg=330℃)、ポリスルホン(PSul、Tg=約195℃)、ポリフェニレンオキシド(PPO、Tg=約200℃)、ポリエーテルイミド(PEI、Tg=約218℃)、ポリアリールスルホン(PAS、Tg=220℃)、ポリエーテルスルホン(PES、Tg=約225℃)、ポリアミドイミド(PAI、Tg=約275℃)、ポリイミド(Tg=約300℃)、及びポリフタルアミド(熱たわみ温度120℃)が挙げられる。材料費が重要である用途の場合、HSPET及びPENから作製される支持体が特に好ましい。障壁性能が最重要である用途の場合、より高価な材料から作製される支持体が採用される場合がある。好ましくは基材は、約0.01ミリメートル(mm)〜約1mm、より好ましくは約0.05mm〜約0.25mmの厚さを有する。
【0021】
DLF層
ダイヤモンド様フィルムは、ダイヤモンド様特性を呈する相当量のケイ素及び酸素を含む、非晶質炭素系である。これらのフィルムには、水素を含まないという条件で、少なくとも30%の炭素、相当量のケイ素(通常、少なくとも25%)、及び45%以下の酸素が存在する。かなり大量のケイ素と、有意な量の酸素及び相当量の炭素との独自の混合が、これらの膜の透明性及び可撓性を高くする(ガラスと異なる)。
【0022】
ダイヤモンド様薄膜は、様々な光透過性特性を有し得る。組成物によるが、薄膜は、様々な周波数で透過性特性を向上できる可能性がある。いずれにせよ、特定の実施では、薄膜(厚さがおよそ1ミクロン)は、約250nm〜約800nm、及びより好ましくは約400nm〜約800nmの実質的にすべての波長の放射線に対して、少なくとも70%の透過性を有する。DLFフィルムの減衰係数は、以下のように、厚さ1ミクロンのフィルムの透過率70%が400nm〜800nmの可視波長における0.02未満の消光係数(k)に対応する。
【0023】
本発明の非晶質ダイヤモンド様フィルムと異なる特性を有するダイヤモンド薄膜は、特定の物質における炭素原子の配置及び分子間結合のため、予め基材上に蒸着されている。分子間結合の種類及び量は、赤外線(IR)及び核磁気共鳴(NMR)スペクトルによって判断される。蒸着する炭素は、実質的に2種類の炭素−炭素結合、三方晶系グラファイト結合(sp)、及び四面体型ダイヤモンド結合(sp)を含む。ダイヤモンドは、事実上すべて四面体型結合からなる一方、ダイヤモンド様フィルムは、およそ50%〜90%が四面体型結合からなり、グラファイトは、事実上すべてが三方晶系結合からなる。
【0024】
炭素系の結晶化度及び結合の性質は、蒸着物の物理的及び化学的特性を決定する。x線回析によって判定されるように、ダイヤモンドが結晶性であるのに対して、ダイヤモンド様フィルムは、非結晶性ガラス状の非晶質物質である。ダイヤモンドが本質的に純炭素であるのに対して、ダイヤモンド様フィルムは、ケイ素を含む非炭素構成要素を相当量含む。
【0025】
ダイヤモンドは、周囲気圧で、いずれの物質の中でも最も高い充填密度又はグラム原子密度(GAD)を有する。そのGADは、0.28グラム原子/ccである。非晶質ダイヤモンド様フィルムのGADは、約0.20〜0.28グラム原子/ccである。対照的に、グラファイトのGADは、0.18グラム原子/ccである。ダイヤモンド様フィルムの高充填密度は、液体又はガス状物質の拡散に対する優れた耐性を提供する。グラム原子密度は、物質の重量及び厚さの測定値から計算される。「グラム原子」という用語は、グラムで表される物質の原子重量を指す。
【0026】
非晶質ダイヤモンド様フィルムは、ダイヤモンドと類似する前述の物理的特性に加え、極度の硬度(通常1000〜2000kg/mm)、高い電気抵抗(多くの場合10〜1013オーム−cm)、低摩擦係数(例えば、0.1)、及び幅広い波長に渡る光透過性(通常、400nm〜800nmの範囲において消光係数が約0.01〜0.02)等、ダイヤモンドの望ましい性能特性の多くを有するため、ダイヤモンド様である。
【0027】
又、ダイヤモンドフィルムは、多くの用途において、非晶質ダイヤモンド様フィルムほど有益ではない原因となる、幾つかの特性も有する。通常ダイヤモンドフィルムは、電子顕微鏡で判断されるように、粒構造を有する。粒界は、基材への化学的攻撃及び劣化の経路であり、化学線の散乱も引き起こす。非晶質ダイヤモンド様フィルムは、電子顕微鏡で判断されるように、粒構造を有さず、したがって、化学線がフィルムを通過する用途に非常に適している。ダイヤモンドフィルムの多結晶性構造は、粒界からの光散乱も引き起こす。
【0028】
ダイヤモンド様フィルムの形成において、基本的なSiOCH組成物に様々な追加の構成要素を組み込むことができる。ダイヤモンド様フィルムが基材に付与する特性を変更し、向上するために、これらの追加の構成要素を使用してもよい。例えば、障壁及び表面特性を更に向上することが望ましい場合がある。
【0029】
追加の構成要素は、水素(まだ組み込まれていない場合)、窒素、フッ素、イオウ、チタン、又は銅の1つ以上を含んでもよい。又、その他の追加の構成要素も有益であり得る。水素の追加は、四面体型結合の形成を促進する。フッ素の追加は、不適合なマトリックスに分散する能力を含む、ダイヤモンド様フィルムの障壁及び表面特性の向上において特に有用である。耐酸化性を強化し、導電率を向上するために窒素が追加されてもよい。イオウを追加することによって、接着を強化することができる。チタンの追加は、拡散及び障壁特性に加えて、接着を強化する傾向がある。
【0030】
これらのダイヤモンド様物質は、例えば、蒸気源を使用してアセンブリ上に蒸着することができる、プラズマポリマー形態と見なすことができる。「プラズマポリマー」という用語は、低温気相内で前駆体モノマーを使用してプラズマから合成される部類の物質に適用される。前駆体分子は、プラズマ内に存在するエネルギー電子によって破壊され、フリーラジカル種を形成する。これらのフリーラジカル種は、基材表面で反応し、ポリマー薄膜の成長をもたらす。気相及び基材の両方における反応プロセスの非特異性により、結果として生じるポリマーフィルムの性質は、極めて架橋性かつ非晶質である。これらの部類の物質は、研究されており、次の、H.ヤスダ(H. Yasuda)、「プラズマ重合(Plasma Polymerization)」、ニューヨーク(New York)、アカデミック・プレス社(Academic Press Inc.,)(1985)、R.ド・アゴスチノ(R. d’Agostino)(編集)、「プラズマ蒸着、ポリマー類の処理及び&エッチング(Plasma Deposition, Treatment & Etching of Polymers)、ニューヨーク(New York)、アカデミック・プレス(Academic Press)(1990)、並びにH.ビーダーマン(H. Biederman)及びY.オサダ(Y. Osada)、「プラズマ重合プロセス(Plasma Polymerization Processes)」、ニューヨーク(New York)、エルスエバー(Elsever)(1992)等の出版物に概要されている。
【0031】
通常、これらのポリマー類は、CH、CH、CH、Si−C、Si−CH、Al−C、Si−O−CH等の炭化水素及び炭素官能基の存在により、それらに対して有機性である。これらの官能基の存在は、IR、核磁気共鳴(NMR)、及び二次イオン質量(SiMS)分光法等の分析技術によって確認することができる。フィルム内の炭素含有量は、化学分析のための電子分光法(ESCA)によって定量化することができる。
【0032】
すべてのプラズマ蒸着プロセスがプラズマポリマーをもたらすわけではない。しばしば無機薄膜は、上昇した基材温度で、PECVDによって蒸着され、非晶質ケイ素、酸化ケイ素、窒化ケイ素、窒化アルミニウム等のような薄い無機フィルムを生成する。より低い温度のプロセスが、シラン(SiH)及びアンモニア(NH)等の無機前駆体と共に使用されてもよい。場合によっては、前駆体混合物に過流量の酸素を供給することによって、前駆体内に存在する有機構成要素がプラズマ内で除去される。しばしば高ケイ素フィルムは、テトラメチルジシロキサン(TMDSO)−酸素混合物であって、酸素の流量がTMDSOの流量の10倍である、混合物から生成される。これらの場合、生成されるフィルムは、酸素対ケイ素の比率が約2であり、これは二酸化ケイ素の比率と近い。
【0033】
本発明のプラズマポリマー層は、フィルム内の酸素対ケイ素の比率及びフィルム内に存在する炭素の量によって、無機プラズマ蒸着したその他の薄膜とは差異化される。ESCA等の表面分析技術が分析に使用される場合、フィルムの元素原子組成物は、水素を含まないものとして取得され得る。本発明のプラズマポリマーフィルムは、それらの無機組成物において実質的に半化学量論的であり、かつ実質的に高炭素であり、それらが有機性であることを示す。例えばケイ素を含むフィルムでは、酸素対ケイ素の比率は、好ましくは1.8未満(二酸化ケイ素の比率は2.0である)、DLFの場合、より好ましくは1.5未満であり、炭素含有量は、少なくとも約10%である。好ましくは、炭素含有量は、少なくとも約20%であり、より好ましくは少なくとも約25%である。更に、フィルムの有機シロキサン構造は、Si−CH基の存在下の1250cm−1及び800cm−1でのフィルムのIRスペクトルによって、及び二次イオン質量分光法(SiMS)によって検出され得る。
【0034】
DLFコーティング又はフィルムの利点の1つは、その他のフィルムと比較した場合のそれらの亀裂に対する耐性である。DLFコーティングは、完全に説明するように参照として本明細書に組み込まれる、2005年7月20日に出願された米国特許出願シリアル番号第11/185078号、名称「防湿コーティング(Moisture Barrier Coatings)」に記載されるように、印加される応力又はフィルムの製造から生じる固有応力のいずれかの下での亀裂に対して本質的に耐性がある。
【0035】
ポリマー層
障壁アセンブリの多層の積み重ねに使用されるポリマー層は、好ましくは架橋可能である。架橋ポリマー層は、基材又はその他の層の上部に横たわり、様々な物質から形成することができる。好ましくはポリマー層は、下に横たわる層の上部で架橋される。所望により、ポリマー層は、ロールコーティング(例えば、グラビアロールコーティング)又はスプレーコーティング(例えば、静電気スプレーコーティング)等の従来のコーティング方法を使用して塗布し、次いで、例えば紫外線(UV)を使用して架橋することができる。より好ましくは、ポリマー層は、本明細書に記載されるように、フラッシュ蒸着、蒸着、及びモノマーの架橋から形成される。蒸着させることが可能なアクリレートモノマーが特に好まれるため、蒸着させることが可能な(メタ)アクリレートモノマーは、該プロセスでの使用に好ましい。好ましい(メタ)アクリレートは、約150〜約600、より好ましくは約200〜約400の分子量を有する。その他の好ましい(メタ)アクリレート類の分子当たりの分子量対アクリレート官能基の数の比率の値は、約150〜約600g/mole/(メタ)アクリレート基、より好ましくは約200〜約400g/mole/(メタ)アクリレート基である。フッ素化(メタ)アクリレート類は、より高い分子量又は比率、例えば、約400〜約3000の分子量、又は約400〜約3000g/mole/(メタ)アクリレート基の比率で使用することができる。コーティング効率は、支持体を冷却することによって向上できる。特に好ましいモノマーには、多官能性(メタ)アクリレート類が挙げられ、単独又はヘキサンジオールジアクリレート、エトキシエチルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、シアノエチル(モノ)アクリレート、イソボルニルアクリレート、イソボルニルメタクリレート、オクタデシルアクリレート、アクリル酸イソデシル、ラウリルアクリレート、β−カルボキシエチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、ジニトリルアクリレート、ペンタフルオロフェニルアクリレート、ニトロフェニルアクリレート、2−フェノキシエチルアクリレート、2−フェノキシエチルメタクリレート、2,2,2−トリフルオロメチル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、プロポキシル化ネオペンチルグリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ビスフェノールAエポキシジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート、プロピル化トリメチロールプロパントリアクリレート、トリ(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、フェニルチオエチルアクリレート、ナフチルオキシエチルアクリレート、サイテック・インダストリー社(CYTEC INDUSTRIES, INC.,)からのIRR−214環状ジアクリレート、ラッド−キュア・コーポレーション(Rad-Cure Corporation)からのエポキシアクリレートRDX80095、及びこれらの混合物等の他の多官能性又は1官能性(メタ)アクリレート類と組み合わせて使用される。例えば、ビニルエーテル類、ビニルナフチレン、アクリロニトリル、及びこれらの混合物等の様々なその他の硬化性物質を架橋ポリマー層に含むことができる。
【0036】
ポリマー層の代替的な物質には、HSPETのTg以上のTgを有する物質を含む。様々な代替的なポリマー物質を採用することができる。適切に高いTgのポリマー類を形成する、蒸着させることが可能なモノマーが特に好ましい。代替的なポリマー層は、好ましくはPMMAを上回るTg、より好ましくは少なくとも約110℃、更により好ましくは少なくとも約150℃、及び最も好ましくは少なくとも約200℃のTgを有する。薄層を形成するために使用することができる、特に好ましいモノマーには、ウレタンアクリレート類(例えば、CN−968、Tg=約84℃、及びCN−983、Tg=約90℃、両方ともサートマー社(Sartomer Co.)から市販される)、イソボルニルアクリレート(例えば、サートマー社(Sartomer Co.)から市販されるSR−506、Tg=約88℃)、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート類(例えば、サートマー社(Sartomer Co.)から市販されるSR−399、Tg=約90℃)、スチレンと混合されたエポキシアクリレート類(例えば、サートマー社(Sartomer Co.)から市販される、CN−120S80、Tg=約95℃)、ジ−トリメチロールプロパンテトラアクリレート類(例えば、サートマー社(Sartomer Co.)から市販される、SR−355、Tg=約98℃)、ジエチレングリコールジアクリレート類(例えば、サートマー社(Sartomer Co.)から市販される、SR−230、Tg=約100℃)、1,3−ブチレングリコールジアクリレート(例えば、サートマー社(Sartomer Co.)から市販される、SR−212、Tg=約101℃)、ペンタアクリレートエステル類(例えば、サートマー社(Sartomer Co.)から市販される、SR−9041、Tg=約102℃)、ペンタエリスリトールテトラアクリレート類(例えば、サートマー社(Sartomer Co.)から市販される、SR−295、Tg=約103℃)、ペンタエリスリトールトリアクリレート類(例えば、サートマー社(Sartomer Co.)から市販される、SR−444、Tg=約103℃)、エトキシ化(3)トリメチロールプロパントリアクリレート類(例えば、サートマー社(Sartomer Co.)から市販される、SR−454、Tg=約103℃)、エトキシ化(3)トリメチロールプロパントリアクリレート類(例えば、サートマー社(Sartomer Co.)から市販される、SR−454HP、Tg=約103℃)、アルコキシル化三官能アクリレートエステル類(例えば、サートマー社(Sartomer Co.)から市販される、SR−9008、Tg=約103℃)、ジプロピレングリコールジアクリレート類(例えば、サートマー社(Sartomer Co.)から市販される、SR−508、Tg=約104℃)、ネオペンチルグリコールジアクリレート類(例えば、サートマー社(Sartomer Co.)から市販される、SR−247、Tg=約107℃)、エトキシ化(4)ビスフェノールAジメタクリレート類(例えば、サートマー社(Sartomer Co.)から市販される、CD−450、Tg=約108℃)、シクロヘキサンジメタノールジアクリレートエステル類(例えば、サートマー社(Sartomer Co.)から市販される、CD−406、Tg=約110℃)、イソボルニルメタクリレート(例えば、サートマー社(Sartomer Co.)から市販される、SR−423、Tg=約110℃)、環状ジアクリレート類(例えば、サイテック・インダストリーズ社(Cytec Industries, Inc.,)から市販される、IRR−214、Tg=約208℃)、並びにトリ(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート(例えば、サートマー社(Sartomer Co.)から市販される、SR−368、Tg=約272℃)、前述のメタクリレート類のアクリレート類及び前述のアクリレート類のメタクリレート類が挙げられる。
【0037】
その他の任意の層、コーティング、及び処理
任意の層は、障壁コーティング内又は隣接して機能的に組み込まれる「ゲッター」又は「乾燥剤」層を含むことができ、該層の例は、完全に説明されるように参照として本明細書に組み込まれる、同時系属の米国特許出願シリアル番号第10/948013号、及び第10/948011号に記載される。ゲッター層は、酸素を吸収又は不活性化する物質を有する層を含み、乾燥剤層は、水を吸収又は不活性化する物質を有する層を含む。
【0038】
任意の層は、例えば障壁層、光学フィルム、又は構造化フィルム等の封入性フィルムを含むことができる。光学フィルムは、例えば、光抽出フィルム、ディフューザー、又は偏光子を含むことができる。構造化フィルムは、角柱、溝、又は小型レンズ等のミクロ構造(ミクロン規模の)特性を有するフィルムを含むことができる。
【0039】
任意の障壁層は、無機障壁層を1つ以上含む。無機障壁層は、複数の該層が使用される際、同一である必要はない。様々な無機障壁物質を採用することができる。好ましい無機障壁物質には、例えば、シリカ等の酸化ケイ素、アルミナ等の酸化アルミニウム、チタニア等の酸化チタン、酸化インジウム、酸化スズ、酸化インジウムスズ(「ITO」)、酸化タンタル、酸化ジルコニウム、酸化ニオビウム、炭化ホウ素、炭化タングステン、炭化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化ホウ素、酸化窒化アルミニウム、酸化窒化ケイ素、酸化窒化ホウ素、酸化ホウ化ジルコニウム、酸化ホウ化チタン、及びこれらの組み合わせ等の金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物、金属酸化窒化物、金属酸化ホウ化物、及びこれらの組み合わせが挙げられる。酸化インジウムスズ、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、及びこれらの組み合わせは、特に好ましい無機障壁物質である。ITOは、それぞれの元素構成要素を適切に選択することによって導電性になり得るセラミック物質の特殊部類の一例である。
【0040】
アセンブリに組み込まれる場合、好ましくは無機障壁層は、スパッタリング(例えば、カソード又は平面マグネトロンスパッタリング)、蒸着(例えば、抵抗又は電子ビーム蒸着)、化学蒸着、めっき等のようなフィルム金属化技術に採用される技術を使用して形成される。より好ましくは無機障壁層は、例えば反応性スパッタリング等のスパッタリングを使用して形成される。又は代替的に、それらは、障壁コーティング内のピンホールを封止することを助長する、原子層成長法によって形成することができる。
【0041】
従来の化学蒸着プロセスなどの低エネルギー技術と比較して、スパッタリング等の高エネルギー蒸着技術によって無機層が形成される場合の障壁特性の向上が観察されている。理論に束縛されるものではないが、特性の向上は、基材に到達する種をより大きな運動エネルギーで凝縮することによるものであり、圧縮の結果としてより低い空隙率に繋がると考えられる。それぞれの無機障壁層の平坦度及び連続性並びにその下に横たわる層との接着性は、上に記載されるもののように前処理(例えば、プラズマ前処理)によって向上することができる。
【0042】
又、障壁アセンブリは、保護ポリマートップコートを有することもできる。所望により、トップコートポリマー層は、ロールコーティング(例えば、グラビアロールコーティング)、スプレーコーティング(例えば、静電気スプレーコーティング)、又はプラズマ蒸着等の従来のコーティング方法を使用して塗布することができる。前処理(例えば、プラズマ前処理)は、トップコートポリマー層を形成する前に使用してもよい。トップコートポリマー層の所望の化学組成及び厚さは、下に横たわる層の性質及び表面トポグラフィー、障壁アセンブリがさらされる可能性のある危険、及び適用可能なデバイス要件に部分的に依存する。好ましくはトップコートポリマー層の厚さは、下に横たわる層を通常の危険から保護する、平坦で欠陥のない表面を提供するために十分である。
【0043】
ポリマー層をコーティングするための一般技術
ポリマー層は、モノマー又はオリゴマーの層を基材に塗布し、層を架橋し、例えばフラッシュ蒸着及び放射線架橋可能なモノマーの蒸着によってその位置でポリマーを形成し、続いて例えば、電子ビーム装置、UV光源、放電装置、又はその他の適したデバイスを使用して架橋することによって形成することができる。コーティング効率は、支持体を冷却することによって向上できる。モノマー又はオリゴマーは、上記に明確に記載されるように、ロールコーティング(例えば、グラビアロールコーティング)、スプレーコーティング(例えば、静電気スプレーコーティング)、又はプラズマ蒸着等の従来のコーティング方法を使用して基材に塗布され、続いて架橋され得る。ポリマー層は、溶媒中にオリゴマー又はポリマーを含む層を塗布し、溶媒を除去するために、その塗布された層を乾燥することによって形成され得る。より好ましくは、ポリマー層は、フラッシュ蒸着及び続いてその場で架橋が起こる蒸着によって形成される。
【0044】
製造プロセス
障壁アセンブリを作製するためのロール・ツー・ロール製造(ウェブ処理)が、参照として本明細書に組み込まれる米国特許番号第5,888,594号に記載される。ウェブ処理に加え、障壁アセンブリは、以下の実施例に記載されるようなバッチ処理で作製することができる。
【0045】
DLFコーティングを有するOLEDデバイスの封入
OLEDデバイス、OPV、及び有機トランジスタ等の有機電子デバイスは、通常、雰囲気中に存在する酸素及び水分に敏感である。本発明の実施形態は、優れた水蒸気障壁性能を有するDLFコーティングをもたらす、改善されたPECVDプロセスの使用を含む。一特定の実施形態では、SiOCH障壁コーティングは、少なくとも蒸着プロセスによって大幅なデバイス性能の劣化を引き起こされることなく、裸のOLEDデバイス上に直接蒸着される。第2の実施形態では、障壁コーティングは、少なくとも蒸着プロセスによって大幅なデバイス性能の劣化を引き起こされることなく、OLED構造体と密接に接触する保護フィルムで予め封入されたOLEDデバイス上に直接蒸着される。第3の実施形態では、障壁コーティングは、少なくとも蒸着プロセスによって大幅なデバイス性能の劣化を引き起こされることなく、OLED構造体と密接に接触しない保護フィルムで予め封入されたOLEDデバイス上に直接蒸着される。更なる実施形態では、障壁コーティングは、デバイスを持ち運ぶ面と反対の基材の表面にも塗布することができる。
【0046】
通常OLEDは、ガラス又は透明なプラスチック等の基材上に形成される薄膜構造体である。有機エレクトロルミネセント(EL)物質の発光層及び任意の隣接する半導体層は、カソードとアノードとの間に位置する。EL物質は、例えば、カソードとアノードとの間に挟む、又は相互嵌合することができる。従来のOLEDデバイスの代替として、発光電気化学セルを使用してもよく、その実施例が、参照として本明細書に組み込まれる米国特許番号第5,682,043号に記載される。半導体層は、成孔注入(正電荷)又は電子注入(負電荷)層のいずれかであってもよく、有機物質も含む。発光層の物質は、多くの有機EL物質から選択されてもよい。発光有機層自体が、それぞれが異なる有機EL物質を含む、多重の副層を含んでもよい。有機EL物質の例には、次の、蒸着された小分子物質、並びにスピンコーティング、インクジェット印刷、又はスクリーン印刷によって塗布された、溶液コーティングされた発光ポリマー及び小分子が挙げられる。有機EL物質は、レーザー誘発赤外線画像(LITI)によってレセプタに移動し、LITI模様付きデバイスを作製することができる。OLEDデバイスは、受動マトリックスOLED又は能動マトリックスOLEDを含むことができる。又、デバイスは、導電性リード線及びアンテナ等、それらを励起するために使用するその他の構成要素を含むこともできる。
【0047】
図4Aから4C、5Aから5C、及び6Aから6Cは、障壁アセンブリの様々な例示的な実施形態を示すダイアグラムである。図4Aは、示される構造体とともに、有機体302、カソード304、DLF306、アノード及びリード線308、基材310、並びにカソードリード線312を有するデバイスを図示する。図4Bは、示される構造体とともに、有機体314、カソード316、DLF318、アノード及びリード線320、基材322、並びにカソードリード線324を有するデバイスを図示する。図4Cは、示される構造体とともに、有機体326、カソード328、DLF330、アノード及びリード線332、基材334、カソードリード線336、並びに接触バイアス338を有するデバイスを図示する。バイアスは、例えばバイアス導電性接着剤、銀インク、又ははんだ付けを使用して、カソード及びアノードリード線又はその他の電極に電気的接続を提供することができる。
【0048】
図5Aは、示される構造体とともに、有機体340、接着剤342、カソード344、カバーフィルム346、DLF 348、アノード及びリード線350、基材352、並びにカソード354を有するデバイスを図示する。図5Bは、示される構造体とともに、有機体356、接着剤358、カソード360、カバーフィルム362、DLF 364、アノード及びリード線366、基材368、並びにカソードリード線370を有するデバイスを図示する。図5Cは、示される構造体とともに、有機体372、接着剤374、カソード376、カバーフィルム378、DLF 380、アノード及びリード線382、基材384、カソードリード線386、並びに接触バイアス388を有するデバイスを図示する。
【0049】
図6Aは、示される構造体とともに、有機体390、空間392、カソード394、カバーフィルム396、DLF 398、アノード及びリード線400、基材402、接着剤404、並びにカソードリード線406を有するデバイスを図示する。図6Bは、示される構造体とともに、有機体408、開放空間410、カソード412、カバーフィルム414、DLF 416、アノード及びリード線418、基材420、接着剤422、並びにカソードリード線424を有するデバイスを図示する。図6Cは、示される構造体とともに、有機体426、開放空間428、カソード430、カバーフィルム432、DLF 434、接触バイアス436、アノード及びリード線438、基材440、接着剤442、カソードリード線444を有するデバイスを図示する。
【0050】
図4Aから4C、5Aから5C、及び6Aから6Cでは、列挙される要素は、例えば次の、OLED又はいずれかの有機電子デバイスを含むことができる有機体、可撓性又は剛性物質を含む、上記に特定される基材の物質のいずれかを含むことができる基材、金属又はいずれかの導体素子を含むことができるアノード、カソード、及び接触バイアス(又はトランジスタのソース、ドレイン、及びゲート等の他の種類の電極)、2つ以上の構成要素を互いに接着することができる、いずれかの物質を含むことができる、光学接着剤等の接着剤、ガラス及び金属等の基材及び剛性物質で前述されたPET等のポリマー層又はフィルム等のいずれかの物質を含むことができるカバーフィルム、及び上記に記載されるようなDLFのフィルム又はその他のDLFを含むことができるDLFとともに実装することができる。又、図6Aから6C、7Aから7C、及び8Aから8Cに示されるデバイスの封入又は保護層は、いずれかの数のダイアドを形成するために繰り返されてもよく、デバイスは、上記に特定されるような追加の層を代替的に含むことができる。
【0051】
接触バイアスの代わりに、封入性フィルム層間に導電路を挟むことによって、電気接点を作成してもよい。そのような接点は、薄膜封入物質を有する有機電子デバイスの第1のコーティングを通して、デバイス電極の残りが暴露されるように、例えばかなりの部分、通常半分より多くをシャドーマスクすることによって形成することができる。金属又は透明な伝導性酸化物等の導電フィルムは、次いで異なるマスクによって、暴露された電極で接点が作成され、導電フィルムが一次封入フィルム上に配置されるように、蒸着される。次いで第2の封入フィルムは、第1の封入フィルム及び導電フィルムの一部分に加えて、デバイスの暴露された部分が被覆されるように、蒸着される。最終的に、薄膜封入物質及び電極からデバイスの外部への導電路によって被覆された有機電子デバイスが出来上がる。
【0052】
この種類の封入は、底面電極の最低限のパターン形成が必要であるため、直接駆動型OLED固体照明及び信号用途に特に有用であり得る。挟まれた伝導体を有する多層膜が置かれてもよく、単一基材上の複数の電極への導電路が確立されてもよい。薄膜封入物質は、DLF、スパッタ酸化物、プラズマ重合フィルム、SiO及びGeO等の熱蒸着物質、並びにポリマー/障壁多層を含んでもよい。
【0053】
又、本発明の様々な実施形態を組み合わせることも可能である。図4Aから4Cに示される実施形態に図示されるように、例えばOLEDデバイスは、DLFで直接封入され、続いてDLFの保護膜及び第2の層が積層されてもよく、本質的にこれは、図4Aから4C及び5Aから5Cに示される実施形態を組み合わせる。
【0054】
本発明の実施形態の障壁コーティングは、幾つかの有利な特徴を提供する。障壁コーティングは、硬く、かつ耐磨耗性であり、改善された水分及び酸素からの保護を提供し、単一層又は多層膜であってもよく、優れた光学特性を有し、図4C、5C、及び6Cに図示されるように、縁部封止するための接着剤結合線の方法を提供することができる。障壁コーティングは、可撓性及び剛性デバイス、又は基材に塗布されてもよい。
【0055】
OLEDを直接封入することにより、プロセスを高速で実行することが可能になる。DLF蒸着プロセスは、急速であり、30Å/秒の蒸着速度を示し、より高速度が可能である。DLF蒸着プロセスは、場合によっては多層が望ましい場合もあるが、単一層の直接封入を提供し得る。上記及び実施例に記載されるように、イオン励起プラズマ蒸着プロセスは、OLEDデバイス層を損傷しない。しかしながら、場合によっては、蒸着されたDLFコーティングの応力がOLEDデバイス構造の層間剥離を引き起こす場合がある。DLF封入の前に、OLED上に保護及び/又は応力緩和コーティングを置くことによって、この事態を避けられ得る。保護コーティングには、例えば、一酸化ケイ素又は酸化ホウ素等の金属フィルム若しくはセラミックフィルムを挙げることができる。又、酸化ホウ素は、乾燥剤層としての役割も果たすであろう。金属保護膜は、デバイス上の個々の放射領域間の望ましくない電気的短絡を避けるために、絶縁下層を必要とする場合がある。又、応力緩和コーティングは、DLF封入前に、OLED上に有機コーティングを含むこともできる。
【0056】
応力低減コーティングを塗布する一方法には、DLF蒸着前に、OLED上一面に変形可能な物質の層を蒸着することが挙げられる。OLEDデバイス製造プロセスの最終工程として、例えば、銅フタロシアニン、AlQ、MoS、又は有機ガラス様物質を真空内で加熱されたるつぼから蒸着することができる。連続するDLF層における応力は、弛緩、変形、又はこれらの層の層間剥離によって緩和することができ、従ってOLEDデバイス層の層間剥離を防止する。
【0057】
保護及び/又は応力緩和コーティングを塗布する別の方法には、接着剤でカバーフィルムをOLED上に積層することが挙げられる。カバーフィルムは、サーモボンド(Thermobond)(商標)ホットメルト接着剤等の輸送接着剤層であってもよく、又はPET、PEN等であってもよく、若しくは接着剤層でコーティングされた超障壁フィルム等の障壁フィルムであってもよい。ひずみ緩和を有する実施形態の一実施例には、カバーフィルム346のない、図5Aに示される構造体を含む。超障壁フィルムには、すべて参照として本明細書に組み込まれる米国特許番号第5,440,446号、第5,877,895号、及び6,010,751号に記載されるように、例えば、ガラス又はその他の好適な基材上に2つの無機誘電体で連続的に多数の層を真空蒸着することによって作成された多層フィルム、又は無機物質及び有機ポリマー類の交代層を含む。
【0058】
裸の接着剤又はPET及びPENフィルム層は、OLEDデバイスが周囲条件下でDLF封入ツールに移動されるようにするのに十分な保護を提供し得る。超障壁フィルムは、長期間のデバイス耐用期間を可能にするために十分な封入を提供し得る。封入フィルム上一面へのDLFコーティングの蒸着は、封入性フィルムの表面上に追加の障壁コーティングを提供することに加え、接着剤結合線の縁部を封止する。又、基材は、非障壁基材物質も含むことができ、この場合、図4B、4C、5B、5C、6B、及び6Cに示されるように、DLFは、基材を封入するためにも使用することができる。
【0059】
DLF蒸着プロセスの更なる利点は、ロール・ツー・ロール形式において立証されている。従って、保護応力緩和層及び/又はカバーフィルム層の使用を含むDLF封入方法は、OLEDウェブ製造プロセスに非常に適している。プロセスは、上面放射及び底面放射OLEDデバイス構造の両方に使用することができる。
【0060】
本発明の実施形態を以下の非限定的な実施例を参照して説明する。
【実施例】
【0061】
(実施例1)
表1は、本明細書で使用される略称の説明を提供する。
【0062】
【表1】

【0063】
図7に示されるように、デバイス456条にDLFを蒸着するために、プラズマ蒸着システム450を使用した。システム450は、逆電極としての役割を果たすチャンバを有する30cm×30cm(12”×12”)の底面電極を含むアルミニウムチャンバ452を備える。電力供給される電極と接地電極の間隔は、7.6cm(3インチ)である。接地電極の表面積の方が大きいため、システムは、非対称と見なすことができ、結果として、コーティングされる基材が置かれる、電力供給される電極で大きなシース電位が生じる。チャンバは、機械ポンプ(エドワーズ(Edwards)型番号80)によって支援されるターボ分子ポンプ(ファイファー(Pfeiffer)型番号TPH510)を備えるポンプ装置454によって引かれる。ゲートバルブは、チャンバを通気する際に、ポンプ装置からチャンバを分離する役目を果たす。
【0064】
プロセスガス455及び457は、電極に対して平行であり、2.5cm(1インチ)の間隔だけ離れている多数のより小さな穴(0.152cm(0.060”)直径)によってチャンバと連結するガンドリル穴451及び453を通してそれらがチャンバに注入される前に、質量流コントローラ(ブルクス(Brooks)型番号5850S)によって測定され、多岐管内で混合される。空気バルブは、ガス/上記蒸気供給管から流量コントローラを分離する役割を果たす。プロセスガスである酸素(スコット・スペシャルティー・ガシズ(Scott Specialty Gases)からの超高純度99.99%)及びテトラメチルシラン(シグマ・アルドリッチ(Sigma Aldrich)のTMS NMR等級、99.9%)がガスキャビネット内に離れて貯蔵され、0.64cm(0.25”)(直径)のステンレススチールガス管によって質量流コントローラにパイプで送られる。チャンバ内の標準的な底面圧は、ポンプ装置の寸法及び種類に基づき、1.3mPa(1×10−5トル)である。チャンバ内の圧力は、133Pa(1トル)キャパシタンスマノメータ(MKSインストルメンツ(MKS Instruments)のタイプ390)で測定される。
【0065】
プラズマは、13.56MHz高周波電源(アドバンスド・エナジー(Advanced Energy)、モデルRFPP−RF10S)及びインピーダンス整合回路網(アドバンスド・エナジー(Advanced Energy)、モデルRFPP−AM20)で電力供給される。AM−20インピーダンス回路網は、構成されたプラズマシステムに適合させるために、負荷コイル及び並列容量を変更して改良した。インピーダンス整合回路網は、電力結合を最大化するために、自動的にプラズマ負荷を電源の50オームインピーダンスに調節する役割を果たす。標準条件下において、反射電力は、放射電力の2%未満である。
【0066】
結果として生じるコーティングが低酸素となる量のテトラメチルシラン(シグマ・アルドリッチ(Sigma Aldrich)のTMS)等のケイ素源及び酸素が注入される。コーティングの酸素が不足しているとしても、コーティングは高い光透過率を有する。SiOCNHコーティングを獲得するために、酸素に加えて窒素が注入されてもよい。又、SiOCNHコーティングも、優れた障壁特性を有する。
【0067】
0.67mPa(5×10−6トル)まで真空にした釣り鐘状ガラス器蒸発器内で、シャドーマスクによる従来の熱蒸着によって、パターン形成ITOコーティングガラス(20オーム/sq、ミネソタ州スティルウォーター(Stillwater)にあるデルタ・テクノロジーズ社(Delta Technologies Ltd.,)から入手可能)基材上に、独立して応答可能な5mm×5mmピクセルを4つ有する底面放射ガラスOLEDを作製した。パターン形成ITOアノードの上面に蒸着されたOLEDデバイス層は、(蒸着順):FTCNQドープMTDATA(2.8%ドーピング、1.8Å/sで3000Å)/NPD(1Å/sで400Å)/C545TドープAlQ(1%ドーピング、1Å/sで300Å)/AlQ(1Å/sで200Å)/LiF(0.5Å/sで7Å)/Al(25Å/sで2500Å)であった。
【0068】
上記に記載され、図7(OLEDコーティング面が上向き)に示されるDLFバッチコーター内に未封入ガラス4ピクセル底面放射緑色OLEDデバイスを置き、図8に示されるように、デバイスの縁部のそれぞれに沿って、取り外し可能なテープである3Mスコッチ(3M Scotch)(商標)811のストリップで電極を保持した。概略図は、図8に示される構造体、テープ462及び464、ITOカソードパッド466、カソード468、有機電子デバイス470、ITOアノード472、デバイス基材474、及びDLF電極476を図示する。テープ(462及び464)は、DLF蒸着中にデバイスが移動するのを防止し、ITOカソード及びアノードリード線上にDLFが蒸着するのを防ぎ、それによって封入後の電気接点を可能にする、マスクとしての役割を果たす。
【0069】
図7に示されるチャンバ内の図8に示されるデバイスであるシステムは、底面圧(約133mPa(1×10−3トル)未満)まで引かれ、流量250sccmで酸素ガスが注入された。酸素プラズマ(200ワットのRF電源)に10秒間暴露することによって、試料表面を準備した。次いで酸素流量を250sccmに維持しながら、テトラメチルシランガスを注入した(50sccm)。200ワットで5分間プラズマを打ち付けられ、厚さがおよそ500nmのダイヤモンド様フィルムをOLEDデバイス上に提供した。DLFチャンバから取り出した後、デバイスをある角度から見たとき、無色に近い光学的に均一なダイヤモンド様フィルムをデバイスの上面に見ることができた。このフィルムの他には、蒸着プロセスによる、OLEDデバイスの目に見える変化は無かった。約9ボルトでバイアスをかけた際、それぞれのピクセルからの発光は、DLF蒸着前の発光と本質的に同一であった。オフィス環境内で3ヶ月間周囲空気に暴露した後、4ピクセルのすべては、DLF蒸着直後に観測されたものと極めて類似する発光を示した。DLF蒸着の前に空気に暴露されたことによって引き起こされた幾つかの小さなダークスポットは、3ヶ月間の観測期間において、いかなる有意な成長も示さなかった。更に、ピクセルの収縮は、ほとんど観測されなかった。
【0070】
(実施例2)
0.67mPa(5×10−6トル)まで真空にした釣り鐘状ガラス器蒸発器内で、シャドーマスクによる従来の熱蒸着によって、超障壁基材上に、独立して応答可能な5mm×5mmピクセルを4つ有する底面放射ガラスOLEDを作製した。反射アノードは、最初にCr(1Å/sで100Å)、続いてAg(1Å/sで1000Å)を蒸着して作製された。Cr/Agアノードの上部に蒸着されたOLEDデバイス層は、(蒸着順):FTCNQドープMTDATA(2.8%ドーピング、1.8Å/sで3000Å)/NPD(1Å/sで400Å)/C545TドープAlQ(1%ドーピング、1Å/sで300Å)/AlQ(1Å/sで200Å)/LiF(0.5Å/sで7Å)/Al(5Å/sで50Å)/Ag(1Å/sで200Å)であった。
【0071】
上記に記載されるような超障壁基材フィルム上に、感圧性接着剤(PSA)輸送接着剤フィルム(3M8141光学接着剤)を使用してピクセル領域上に第2の超障壁フィルムを積層することによって、4ピクセル上面放射緑色OLEDを封入した。超障壁層は、OLEDデバイス構造体に向いていた。実施例1に記載されるものと同一方法でデバイスをDLFチャンバ内に置いた。システムは、底面圧(約133mPa(1×10−3トル)未満)まで引かれ、流量250sccmで酸素ガスが注入された。酸素プラズマ(200ワットのRF電源)に10秒間暴露することによって、試料表面を準備した。次いで酸素流量を250sccmに維持しながら、テトラメチルシランガスを注入した(50sccm)。200ワットで5分間プラズマを攻撃し、厚さがおよそ500nmのダイヤモンド様フィルムをOLEDデバイス上に提供した。DLFチャンバから取り出した後、デバイスをある角度から見たとき、無色に近い光学的に均一なダイヤモンド様フィルムをデバイスの上面に見ることができた。金属アノード及びカソードリード線に、幾つかの亀裂様欠陥及び幾つかの層間剥離が観測され、そこには、DLFがリード線上に直接蒸着されていた。積層された超障壁封入フィルムによって被覆されたデバイス内の領域では、DLF蒸着後、かろうじて目に見えるダイヤモンド様フィルムが検出されたことの他には、目に見える変化は無かった。約9ボルトでバイアスをかけた際、それぞれのピクセルからの発光は、DLF蒸着前の発光と本質的に同一であった。
【0072】
(実施例3)
PSA輸送接着剤フィルム(3M8141光学接着剤)の正方形(およそ35mm)のガスケットを使用して、正方形(およそ35mm)の超障壁フィルムの断片をより大きな正方形(およそ50mm)の超障壁フィルムの中央に積層した。超障壁層は互いに向いていた。ガスケットの幅は、およそ5mmであり、2つの超障壁フィルム間に正方形(およそ25mm)の空洞を残していた。実施例1に記載されるものと同一方法で、表面に上方向を向くより小さな超障壁フィルムを有する構造体をDLFチャンバ内に置いた。システムは、底面圧(約133mPa(1×10−3トル)未満)まで引かれ、流量250sccmで酸素ガスが注入された。酸素プラズマ(200ワットのRF電源)に10秒間暴露することによって、試料表面を準備した。次いで酸素流量を250sccmに維持しながら、テトラメチルシランガスを注入した(50sccm)。200ワットで5分間プラズマを攻撃し、厚さがおよそ500nmのダイヤモンド様フィルムをフィルム構造体上に提供した。DLFチャンバから取り出した後、構造体の上面に、無色に近い光学的に均一なダイヤモンド様フィルムをデバイスの上面に見ることができた。このDLFは、デバイスをある角度から見ることによって容易に見られた。構造体は、その他の点では、DLF蒸着プロセスによって変化しなかったように見えた。
【0073】
(実施例4)
カリフォルニア州アナハイム(Anaheim)にあるシン・フィルム・デバイスズ社(Thin Film Devices, Inc.,)からITOコーティングガラス基材(50×50×0.5mm、20オーム/平方)を入手した。メタノールを染み込ませた防塵布(ベクトラ・アルファ10(Vectra Alpha 10)、ニュージャージー州(New Jersey)アッパーサドルリバー(Upper Saddle River)にあるテックスワイプ社(Texwipe Co.,LLC))で基材の汚れを拭き取り、続いて酸素プラズマ処理(全出力かつ34kPa(5psi)の酸素、プラズマ・プリーンII−973、ニュージャージー州(New Jersey)ノースブランズウィック(North Brunswick)にあるプラズマティック・システムズ社(Plasmatic Systems, Inc.,))を5分間行った。薄膜蒸発器(エドワーズ(Edwards)500、英国のBOCエドワーズ(BOC Edwards))を含むグローブボックス(M.ブラウン(M. Braun)、独国)に基材を移動した。4つの基材を、チャンバ内の、50×50mmのステンレススチールマスクの向かい合う角部の縁部から内側4mmの位置に配置された2つの「L」字型開口部を組み込むシャドーマスク上に置いた。開口部の幅は、4mmであり、「L」のそれぞれの足の長さは、26mmであった。チャンバを約0.07mPa(5×10−7トル)まで引き、2000ÅのSiOを約2Å/秒でMoカヌー型源(レスカー(Lesker)部品番号EVS13005Mo、ペンシルバニア州クレアトン(Clairton))から蒸着した。蒸着中、基材ホルダーを継続的に回転した。チャンバを通気し、基材をシャドーマスクに対して90°回転した。チャンバを0.07mPa(5×10−7トル)まで引き、上記に記載されるように別の2000ÅのSiOを蒸着し、50mmの基材上に中心をとる、外側寸法が42×42mmであり、内側寸法が34×34mmであり、それぞれの側面の中間点でSiO層が約10mm重なり合う、正方形のSiOガスケットを生じさせた。
【0074】
ガスケット付基材をグローブボックスから取り出し、酸素プラズマ(プラズマ・プリーン(Plasma-Preen))に3分間暴露した。ポリチオフェンの水溶液(固体1%、バイトロン(Baytron)P4083、独国レーバークーゼン(Leverkuesen)にあるバイエル(Bayer))を、基材上に2500rpmで30秒間ローレル(Laurell)スピンコーター上でスピンコートした。湿らせた綿棒で注意深く拭いて、基材の縁部周辺のポリチオフェンをSiOガスケットの中間点付近まで除去した。コーティングされた基材を質素流量下で110℃で30分間乾燥した。次いでそれらを釣り鐘状ガラス器OLED製造チャンバ内の、50mmのステンレススチールマスクの中心に38×38mmの開口部を有するシャドーマスク上に置いた。これを、SiOガスケットのそれぞれの側面の大体の中心線に沿ってマスクの縁部に置いた。チャンバを約0.67mPa(5×10−6トル)まで引いた。厚さが2000Åの約6%FTCNQドープMTDATAの緩衝層を、1.8Å/秒で蒸着した。次いで、同一ポンプダウン、NPD(1Å/秒で300Å)、1%C545TドープAlQ(1Å/秒で300Å)、及びAlQ(1Å/秒で200Å)中に、緑色の小分子有機積み重ね体を蒸着した。真空を中断し、カソードを熱蒸着するために、空気への暴露を最小化するために真空デシケータを介して、薄膜蒸着チャンバ(エドワーズ(Edwards)500、英国のBOCエドワーズ(BOC Edwards))を含むグローブボックスにデバイスの一部を移動した。AlQ(約1.6Å/秒で200Å、フロリダ州ジュピター(Jupiter)にあるH.W.サンズコープ(H. W. Sands Corp.,)、LiF(約0.5Å/秒で7Å、マサチューセッツ州ワードヒル(Ward Hill)にあるアルファ・エイサー社(Alfa-Aesar Co.,))、Al(約1.0Å/秒で150Å、マサチューセッツ州ワードヒル(Ward Hill)にあるアルファ・エイサー社(Alfa-Aesar Co.,))、Ag(約2.5Å/秒で1,500Å、マサチューセッツ州ワードヒル(Ward Hill)にあるアルファ・エイサー社(Alfa-Aesar Co.,))を約0.1mPa(8×10−7トル)で、有機蒸着で使用されたものと同一の金属シャドーマスクで有機コーティング基材上に連続して蒸着した。通気し、蒸着チャンバから取り出した後、4つすべてのデバイスは、6ボルトで運転した場合に相当する明るさの均一な緑色光を放射した。
【0075】
グローブボックス蒸着チャンバ内の、50mmの金属マスクの上部及び左側縁部から4mmの位置に26×42mmの矩形開口部を含むシャドーマスク上に4つの上記のデバイスの2つを置いた。これにより、SiOガスケット及びOLEDデバイスによって描かれる領域のほぼ2/3に渡り蒸着することが可能になる。サンプルホルダーを回転しながら、一酸化ケイ素(1000Å、約1Å/秒)を約0.027mPa(2×10−7トル)で蒸着した。チャンバを通気し、50mmの金属マスクの中心に30×20mmの開口部を含むマスクとSiO封入マスクを交換した。該マスクの長軸を、前工程で蒸着されたSiO矩形の長軸に対して垂直に配向した。銀(1000Å、約1Å/秒)を約0.013mPa(1×10−7トル)で蒸着した。銀層の一部分がデバイスのカソードと直接接触させる一方、別の部分は、前工程で蒸着されたSiO層上に配置した。チャンバを通気し、第1のSiO封入層蒸着位置から180°回転されたSiO封入マスクとAgカソードリード線マスクを交換した。サンプルホルダーを回転しながら、一酸化ケイ素(1000Å、約1Å/秒)を約0.053mPa(4×10−7トル)で蒸着した。該SiO層は、OLEDの残りの露出領域、Agカソードリード線の一部分、及び第1のSiO封入層の一部分を被覆し、それによってデバイスのカソードに導電路を提供する一方、デバイスを完全に封入した。デバイスの縁部に沿ってITOアノード及びAgカソードリード線と接触することによって6ボルトDCで運転した際、デバイスは、SiO及びAg封入蒸着の前と本質的に同一な方法で発光した。
【0076】
本発明は、添付の図面と共に本発明の様々な実施形態の詳細な説明により更に完全な理解が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】障壁アセンブリの概略図。
【図2】交互のDLF層及びポリマー層から作製された多層膜を有する障壁アセンブリの概略図。
【図3】ポリマー類から作製された多層膜を有する、積層された障壁アセンブリの概略図。
【図4A】DLFコーティングで封入されたOLEDデバイスの第1の実施形態のダイアグラム。
【図4B】DLFコーティングで封入されたOLEDデバイスの第1の実施形態のダイアグラム。
【図4C】DLFコーティングで封入されたOLEDデバイスの第1の実施形態のダイアグラム。
【図5A】DLFコーティングで封入されたOLEDデバイスの第2の実施形態のダイアグラム。
【図5B】DLFコーティングで封入されたOLEDデバイスの第2の実施形態のダイアグラム。
【図5C】DLFコーティングで封入されたOLEDデバイスの第2の実施形態のダイアグラム。
【図6A】DLFコーティングで封入されたOLEDデバイスの第3の実施形態のダイアグラム。
【図6B】DLFコーティングで封入されたOLEDデバイスの第3の実施形態のダイアグラム。
【図6C】DLFコーティングで封入されたOLEDデバイスの第3の実施形態のダイアグラム。
【図7】DLFコーティングを塗布するためのプラズマ蒸着システムのダイアグラム。
【図8】DLFコーティング蒸着で実装する試料の概略図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水分又は酸素に敏感な物品を保護するための複合アセンブリであって、
基材と、
前記基材上にオーバーコートされる有機電子デバイスと、
前記有機電子デバイス上にオーバーコートされるダイヤモンド様フィルム層と、を備える、複合アセンブリ。
【請求項2】
前記有機電子デバイスと前記ダイヤモンド様フィルム層との間に位置するポリマー層を更に備える、請求項1に記載のアセンブリ。
【請求項3】
前記基材は、剛性物質又は可撓性物質を備える、請求項1に記載のアセンブリ。
【請求項4】
前記ダイヤモンド様フィルム層は、炭素及びケイ素を含む、少なくとも実質的に非晶質のガラスを備える、請求項1に記載のアセンブリ。
【請求項5】
前記ダイヤモンド様フィルム層は、ケイ素に対する酸素の比率がおよそ1.5未満である低酸素層を備える、請求項1に記載のアセンブリ。
【請求項6】
前記アセンブリは前記基材上にオーバーコートされる複数のダイアドを有し、それぞれのダイアドは、前記ダイヤモンド様フィルム層でオーバーコートされる前記ポリマー層を備える、請求項2に記載のアセンブリ。
【請求項7】
アノードと、
カソードと、を更に備え、
前記有機電子デバイスは、前記アノードと前記カソードとの間に位置する、請求項1に記載のアセンブリ。
【請求項8】
前記有機電子デバイスと前記ポリマー層との間に位置する接着剤を更に含む、請求項2に記載のアセンブリ。
【請求項9】
前記有機電子デバイスと反対側の前記基材の側面上に、前記基材上にオーバーコートされる別のダイヤモンド様フィルム層を更に備える、請求項1に記載のアセンブリ。
【請求項10】
前記基材は、障壁を備える、請求項1に記載のアセンブリ。
【請求項11】
前記基材は、障壁を備えず、前記ダイヤモンド様フィルム層は、前記有機電子デバイスの反対側の、前記基材の側面上にオーバーコートされる、請求項1に記載のアセンブリ。
【請求項12】
有機電子デバイスは、底面放射有機発光ダイオード、上面放射有機発光ダイオード、有機光電池デバイス、又は有機トランジスタのうちの1つを備える、請求項1に記載のアセンブリ。
【請求項13】
前記ダイヤモンド様フィルム層に隣接して位置する応力緩和層を更に備える、請求項1に記載のアセンブリ。
【請求項14】
前記有機電子デバイスに接続され、前記ダイヤモンド様フィルムの層間に挟まれた電気接点を更に備える、請求項1に記載のアセンブリ。
【請求項15】
水分又は酸素に敏感な物品を保護するための、複合アセンブリを製造するためのプロセスであって、
基材を提供する工程と、
前記基材上に有機電子デバイスをオーバーコートする工程と、
前記有機電子デバイス上にダイヤモンド様フィルム層をオーバーコートする工程と、を含む、プロセス。
【請求項16】
前記ダイヤモンド様フィルム層をオーバーコートする前に、前記有機電子デバイス上にポリマー層をオーバーコートする工程を更に含む、請求項15に記載のプロセス。
【請求項17】
前記ダイヤモンド様フィルム層をオーバーコートする前記工程は、炭素及びケイ素を含む、少なくとも実質的に非晶質のガラスをオーバーコートする工程を含む、請求項15に記載のプロセス。
【請求項18】
前記ダイヤモンド様フィルム層をオーバーコートする前記工程は、ケイ素に対する酸素の比率がおよそ1.5未満である低酸素層をオーバーコートする工程を含む、請求項15に記載のプロセス。
【請求項19】
前記有機電子デバイスをオーバーコートする前記工程は、底面放射有機発光ダイオード、上面放射有機発光ダイオード、有機光電池デバイス、又は有機トランジスタのうちの1つをオーバーコートする工程を含む、請求項15に記載のプロセス。
【請求項20】
水分又は酸素に敏感な物品を保護するための複合アセンブリであって、
基材と、
前記基材上にオーバーコートされる有機電子デバイスと、
前記有機電子デバイス上にオーバーコートされる接着剤を備え、前記基材と接触する縁部を有する、封入性フィルム層と、
前記封入性フィルム層上にオーバーコートされるダイヤモンド様フィルム層であって、前記基材と接触している前記接着剤の該縁部を封止する、ダイヤモンド様フィルム層と、を備える、複合アセンブリ。
【請求項21】
前記有機電子デバイスは、底面放射有機発光ダイオード、上面放射有機発光ダイオード、有機光電池デバイス、又は有機トランジスタのうちの1つを備える、請求項20に記載のアセンブリ。
【請求項22】
前記基材は、剛性物質又は可撓性物質を含む、請求項20に記載のアセンブリ。
【請求項23】
前記封入性フィルムは、障壁、光学フィルム、又は構造化フィルムのうちの1つを備える、請求項20に記載のアセンブリ。
【請求項24】
前記ダイヤモンド様フィルム層に隣接して位置する応力緩和層を更に備える、請求項20に記載のアセンブリ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2009−541939(P2009−541939A)
【公表日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−516622(P2009−516622)
【出願日】平成19年5月29日(2007.5.29)
【国際出願番号】PCT/US2007/069850
【国際公開番号】WO2007/149683
【国際公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】