説明

有機発光ディスプレイ装置及びその製造方法

【課題】有機発光ディスプレイ装置及びその製造方法を提供する。
【解決手段】基板と、基板上に形成されたディスプレイ部と、ディスプレイ部と前記ディスプレイ部周辺の非発光領域とを覆い、中央部からエッジ部に行くほど密度及び厚さが増大する封止膜と、を備える有機発光ディスプレイ装置である。これにより、側面方向の水分や酸素の浸透を防止して有機発光ディスプレイ装置の寿命を延長させうる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機発光ディスプレイ装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機発光素子(Organic Light
Emitting Diode:OLED)は、自発光型素子であって、厚さを薄くし、可撓性(flexible)ディスプレイなど、応用製品を多様にできる。しかし、このような有機発光表示素子は、外部環境から流入される水分や酸素に露出される場合、素子特性が急に劣化する傾向がある。
【0003】
したがって、有機発光素子を構成した後、缶やガラス基板を使用してシーリングするが、一般的に、UVあるいは熱硬化性エポキシやアクリルのような高分子材料をシーラント材料として使用する。しかし、高分子材料は、水分に対する防湿能が落ちるため、経時的に有機発光素子側に流入される水分及び酸素の影響によって輝度特性が劣化して寿命が短縮される。これを防止するために、水分を吸湿する吸湿材をデバイスの内部に装着し、シーラントを通過した水分が有機発光素子に影響を与えることを防止する。しかし、このような方式は、製造工程を複雑にし、ディスプレイ装置の重量と体積とが増大するという問題点をもたらす。
【0004】
このような問題点を解決するために、表示素子を保護膜でもって覆って封じ込める薄膜封止技術が提案された。薄膜封止技術に使われる薄膜封止は、有機発光素子の寿命と直接的に関連する材料であるため、低い透湿度、デバイス材料との接着力及び温度による熱膨張係数が適切に調節されなければならない。特に、素子の寿命に絶対的な影響を与える透湿度は、最も重要な開発項目である。薄膜封止材料を通じた透湿は、薄膜面に対して垂直方向に浸透するものと、デバイス切断面、すなわち、非発光領域を通じた側面透湿とがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4106076号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来の薄膜封止技術は、基板に対して垂直方向への水分や酸素の浸透は、効果的に防止できるが、基板と平行な方向で膜の末端部分から封止層の界面に沿って水分または酸素が浸透する(側面透湿)という問題点がある。
【0007】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、側面防湿特性を改善することが可能な、新規かつ改良された有機発光ディスプレイ装置及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、基板と、前記基板上に形成されたディスプレイ部と、前記ディスプレイ部と前記ディスプレイ部周辺の非発光領域とを覆い、中央部からエッジ部に行くほど密度及び厚さが増加する封止膜と、を備える有機発光ディスプレイ装置が提供される。
【0009】
また、前記封止膜は、前記基板に形成された温度勾配によって形成されてもよい。
【0010】
また、前記温度勾配は、熱線が備えられたマスクを使用して、前記非発光領域を加熱することによって形成されてもよい。
【0011】
また、前記封止膜は、無機膜または有機膜が一層以上に形成されるか、または前記無機膜と前記有機膜とが交互に形成されてもよい。
【0012】
また、前記無機膜は、SiNx、SiOx、AlOx、SiCxNy、SiOxNy、非結晶性炭素、InOx、及びYbOxのうち選択された一つ以上の物質を含んでもよい。
【0013】
また、前記封止膜は、スパッタ、熱蒸着、CVD(Chemical Vapor Deposition)、PECVD(Plasma Enhanced Chemical Vapor Deposition)、IBAD(Ion Beam Assisted Deposition)、及びALD(Atomic Layer Deposition)のうち選択された一つの方法によって形成されてもよい。
【0014】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、有機発光ディスプレイ装置の製造方法は、基板を提供する工程と、前記基板上にディスプレイ部を形成する工程と、前記ディスプレイ部と前記ディスプレイ部周辺の非発光領域とを覆い、中央部からエッジ部に行くほど密度及び厚さが増大する封止膜を形成する工程と、を含む有機発光ディスプレイ装置の製造方法が提供される。
【0015】
また、前記封止膜の形成工程は、前記基板に温度勾配を形成する工程と、前記温度勾配が形成された基板に封止膜材料を塗布する工程と、を含んでもよい。
【0016】
また、前記温度勾配の形成工程は、前記基板に熱線が備えられたマスクを配する工程と、前記熱線を加熱して前記非発光領域を加熱する工程と、を含んでもよい。
【0017】
また、前記マスクの開口は、前記ディスプレイ部及び前記非発光領域の一部をカバーするサイズに形成してもよい。
【0018】
また、前記封止膜の形成工程は、無機膜または有機膜を一層以上に積層するか、または前記無機膜と前記有機膜とを交互に積層する工程と、を含んでもよい。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように本発明によれば、封止膜の中央部からエッジ部に行くほど密度及び厚さが増大するため、側面方向の水分や酸素の浸透を防止して有機発光ディスプレイ装置の寿命を延長させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態による有機発光ディスプレイ装置を概略的に示す平面図である。
【図2】図1のA−A'線による断面図である。
【図3】図1のディスプレイ部の部分拡大断面図である。
【図4A】本発明の一実施形態による基板に封止膜を形成する工程のうち、上部にディスプレイ部を形成する工程を概略的に説明する図面である。
【図4B】図4AのB−B'線による断面図である。
【図5】本発明の一実施形態によるディスプレイ部が形成された基板に封止膜を形成する工程を概略的に説明する図面である。
【図6】本発明の一実施形態による封止膜の形成工程のうち、使用可能なマスクの例を概略的に示す図面である。
【図7】本発明の一実施形態による封止膜の形成工程のうち、使用可能なマスクの例を概略的に示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の望ましい実施形態を添付した図面を参照して説明する。本発明の実施形態を説明する図面において、ある層や領域の厚さは、明細書の明確性のために誇張されたものであって、図面上の同じ符号は、同じ要素を表す。以下の本発明の説明において、関連した公知機能または構成についての具体的な説明が、本発明の要旨を不明確にする恐れがあると判断される場合には、その詳細な説明を省略する。
【0022】
また、ある部分がある構成要素を“含む”とする時、これは、特別に反対となる記載がない限り、他の構成要素を除外するものではなく、他の構成要素をさらに含みうることを意味する。
【0023】
以下、添付した図面を参照して、本発明の望ましい実施形態を詳細に説明すれば、次の通りである。
【0024】
図1は、本発明の一実施形態による有機発光ディスプレイ装置を概略的に示す平面図である。図2は、図1のA−A'線による断面図である。図3は、図1のディスプレイ部の部分拡大断面図である。
【0025】
図1及び図2を参照すれば、本発明の有機発光ディスプレイ装置100は、基板120、及び基板120上のディスプレイ部140を覆う封止膜200を備える。
【0026】
前記基板120は、SiOを主成分とする透明なガラス材の基板でもあり、それ以外にも、プラスチック材基板または金属基板でもあるなど、多様な材質の基板を利用できる。
【0027】
前記基板120上に備えられたディスプレイ部140は、図3に示したように、有機薄膜トランジスタ層300aと画素部300bとを備えうる。
【0028】
基板120の上面には、不純物イオンが広がることを防止し、水分や外気の浸透を防止し、表面を平坦化するためのバリヤ層及び/またはバッファ層のような絶縁層312が形成されうる。
【0029】
前記絶縁層312上に駆動回路として薄膜トランジスタ(TFT:Thin
Film Transistor)320を形成する。本実施形態では、TFTの一例として、トップゲート方式のTFTを示している。しかし、これとは異なり、他の構造のTFTが備えられうる。
【0030】
前記絶縁層312上にTFTの活性層321が半導体材料によって形成され、これを覆うように、ゲート絶縁膜313が形成される。活性層321は、アモルファスシリコンまたはポリシリコンのような無機材半導体や有機半導体が使われ、ソース領域、ドレイン領域、及びこれらの間のチャンネル領域を有する。
【0031】
ゲート絶縁膜313上には、ゲート電極322が備えられ、これを覆うように層間絶縁膜314が形成される。そして、層間絶縁膜314上には、ソース及びドレイン電極323が備えられ、これを覆うように平坦化膜315が順次備えられる。
【0032】
前述したようなTFTの積層構造は、必ずしもこれに限定されず、多様な構造のTFTがいずれも適用可能である。
【0033】
前記平坦化膜315の上部には、有機発光素子(Organic
Light Emitting Diode Display:OLED)の一電極である第1電極331が形成され、コンタクトホール330を通じてソースまたはドレイン電極323と電気的に連結される。
【0034】
第1電極331の上部には、対向して位置した第2電極333を備える。
【0035】
前記第1電極331は、アノード電極の機能を行い、前記第2電極333は、カソード電極の機能を行う。もちろん、前記第1電極331と第2電極333との極性は、逆になってもよい。
【0036】
第1電極331は、透明電極または反射型電極として備えられうる。透明電極として備えられる時には、ITO(Indium
Tin Oxide)、IZO(Indium Zinc Oxide)、ZnOまたはInで備えうる。反射型電極として備えられる時には、Ag、Mg、Al、Pt、Pd、Au、Ni、Nd、Ir、Crまたはこれらの化合物で形成された反射膜と、ITO、IZO、ZnOまたはInで形成された透明膜と、を備えうる。第2電極333も、透明電極または反射型電極として備えられうるが、透明電極として備えられる時には、Li、Ca、LiF/Ca、LiF/Al、Al、Mgまたはこれらの化合物が中間層に向かって蒸着して形成された膜と、その上のITO、IZO、ZnOまたはInなどの透明な導電性物質で形成された補助電極やバス電極ラインとを備えうる。そして、反射型電極として備えられる時には、前記のLi、Ca、LiF/Ca、LiF/Al、Al、Mg及びこれらの化合物で形成されうる。
【0037】
一方、前述したように、基板120が薄膜トランジスタを含む場合、サブピクセル別にパターニングされた第1電極331は、各サブピクセルの薄膜トランジスタに電気的に連結される。そして、この時、第2電極333は、すべてのサブピクセルにわたって相互連結されている共通電極として形成されうる。基板120がサブピクセル別に薄膜トランジスタを含んでいない場合、第1電極330と第2電極333とは、相互交差するストライプパターンにパターニングされてPM(Passive Matrix)駆動できる。
【0038】
前記第1電極331と第2電極333との間には、有機膜層332が介在される。
【0039】
有機膜層332は、低分子または高分子有機物で備えられうる。低分子有機物を使用する場合、ホール注入層(HIL:Hole Injection Layer)、ホール輸送層(HTL:Hole Transport Layer)、有機発光層(EML:Emission Layer)、電子輸送層(ETL:Electron Transport Layer)、電子注入層(EIL:Electron Injection Layer)などが単一あるいは複合構造に積層されて形成され、使用可能な有機材料も銅フタロシアニン(CuPc)、N,N−ジ(ナフタレン−1−イル)−N,N'−ジフェニル−ベンジジン(NPB)、トリス−8−ヒドロキシキノリンアルミニウム(Alq3)をはじめとして、多様に適用可能である。これらの低分子有機物は、マスクを利用して真空蒸着の方法で形成されうる。高分子有機物の場合には、ほぼHTL及びEMLで備えられた構造を有し、この時、前記HTLとしてPEDOT(Poly(3,4−Ethylene
Dioxythiophene)を使用し、発光層としてPPV(Poly−Phenylene Vinylene)系及びポリフルオレン系などの高分子有機物質を使用する。
【0040】
ディスプレイ部140上には、ディスプレイ部140を覆う封止膜200が備えられる。前述したように、ディスプレイ部140の有機発光素子は、外部の水分または酸素などの外的要因によって容易に劣化するところ、封止膜200は、外部の酸素または水分がディスプレイ部140に浸透することを防止する。前記封止膜200は、無機膜または有機膜が一層以上に形成されるか、または前記無機膜と前記有機膜とが交互に形成されうる。図2では、3層の多層膜200a,200b,200cを開示しているが、これに限定されず、最適の膜厚によって適切に構成されうる。
【0041】
無機膜は、SiNx、SiOx、AlOx、SiCxNy、SiOxNy、非結晶性炭素、InOx、及びYbOxを含み、これに限定されない。有機膜は、PPX(Parylene(Poly−p−Xylylene)、PCPX(Poly−2−Chloro−p−Xylylene)、MEH−PPV(Poly[2−Methoxy−r−(2'Ethyhexylloxy)−1,4−Phenylene Vinylene])を含み、これに限定されない。有機発光ディスプレイがトップエミッション型である場合、前記無機膜及び有機膜は、透明度の高い材料であることが望ましい。
【0042】
前記封止膜200は、スパッタ、熱蒸着、CVD(ChemicalVapor Deposition)、PECVD(Plasma Enhanced Chemical Vapor Deposition)、IBAD(Ion Beam Assisted Deposition)、及びALD(Atomic Layer Deposition)の工法を使用して成膜できる。
【0043】
封止膜200は、発光領域DAであるディスプレイ部140と、ディスプレイ部140の周辺の非発光領域NDAの一部とを覆う。この時、封止膜200は、中央部からエッジ部に向けて厚さが厚くなり、密度が高くなるように形成される。
【0044】
一般的に、薄膜を蒸着すると厚さ及び特性が均一な薄膜が得られる。薄膜の密度、厚さ、及び接着力は、薄膜の透湿に最も大きい影響を与える変数であると言える。したがって、このような厚さ及び特性が均一な薄膜では、発光領域に垂直に浸透する水分を防止できるとしても、側面から浸透する水分を防止できない場合が発生する。したがって、本実施形態では、封止膜200の密度が中央部からエッジ部に行くほど高くなり、封止膜200の厚さが中央部からエッジ部に向けて厚くなるように形成する。
【0045】
蒸着速度は基板の温度によって変わる。基板の温度が高いほど蒸着速度は速い。したがって、本実施形態では、封止膜200の膜密度及び厚さを領域別に異ならせるため、封止膜200の各膜200a,200b,200cの積層時に、ディスプレイ部140が位置する基板120の発光領域DAとディスプレイ部140周辺の非発光領域NDAとの基板温度を異なって設定する。これにより、基板120に温度勾配が生じる。かかる温度勾配は、非発光領域NDAの基板温度が発光領域DAの基板温度より高くなるように形成される。基板に温度勾配を形成するために、本実施形態では、封止膜材料の積層時に使われるマスクにヒータを備えうる。マスクの構成は、後述する。
【0046】
一般的に、封止膜の形成工程は、有機発光素子が構成された後に行う工程である。したがって、有機発光素子が構成された発光領域DAの基板温度は、有機材料の物性が変更されないように設定された温度に維持されるため、非発光領域NDAの基板温度は、さらに高く設定する必要がある。これにより、発光領域DAに形成される封止膜の厚さ及び密度より、非発光領域NDAに形成される封止膜の厚さ及び密度をさらに高くできる。
【0047】
基板120に設定される温度及び温度勾配は、封止膜200全体の厚さ、封止膜200の材料、蒸着方法によって変わる。また、基板120に形成される温度勾配によって、封止膜200の中央部とエッジ部との密度差及び厚さ差が変わる。
【0048】
前記基板120の温度勾配の形成は、封止膜200を構成する多層の薄膜がそれぞれ蒸着される度に行われる。したがって、封止膜200のエッジ部の密度及び厚さは、封止膜200を構成する多層の薄膜が蒸着される度に、中央部の密度及び厚さより大きくなり、ディスプレイ部140の側面を界面として通じる水分の浸透影響を効果的に減らすことができる。
【0049】
図4Aは、本発明の一実施形態による基板に封止膜を形成する工程のうち、上部にディスプレイ部を形成する工程を概略的に説明する図面である。図4Bは、図4AのB−B'線による断面図である。
【0050】
図4A及び図4Bを参照すれば、まず、基板420に複数のパネル領域を備え、各パネル領域に有機発光素子を含むディスプレイ部440を形成する。各ディスプレイ部440は、複数の画素を有するが、各画素は、少なくとも一つの有機発光素子を含む。各有機発光素子は、その発光如何を各有機発光素子に電気的に連結された薄膜トランジスタを利用して制御するか否かによって、能動駆動型(AM:Active Matrix)有機発光素子と受動駆動型(PM:Passive Matrix)有機発光素子とに分けられる。本実施形態による有機発光ディスプレイ装置の場合には、AM有機発光素子及びPM有機発光素子のうちいずれのものを備える場合にも適用されうる。図4Aでは、基板420に6個のパネル領域を備える例を示すが、パネル領域の数は、これに限定されない。基板420上に複数のディスプレイ部440が離隔されて形成された後、ディスプレイ部440を覆う封止膜が形成される。
【0051】
図5は、本発明の一実施形態によるディスプレイ部が形成された基板に封止膜を形成する工程を概略的に説明する図面である。図6及び図7は、本発明の一実施形態による封止膜の形成工程のうち、使用可能なマスクの例を概略的に示した図面である。
【0052】
図5を参照すれば、ディスプレイ部440が形成された基板420にマスク500が位置する。マスク500は、ディスプレイ部440及び前記ディスプレイ部周辺に対応して開口し、複数のディスプレイ部440の間の基板420に遮蔽部が位置する。
【0053】
基板420にマスク500が整列されると、蒸着ソースから図5に示す矢印方向に沿って封止膜を形成する材料を蒸着する。封止膜材料として、SiNx、SiOx、AlOx、SiCxNy、SiOxNy、非結晶性炭素、InOx、及びYbOxを含む無機材料を使用でき、樹脂などの有機材料がさらに含まれることもある。また、封止膜材料として、PPX(Parylene(Poly−p−Xylylene)、PCPX(Poly−2−Chloro−p−Xylylene)、MEH−PPV(Poly[2−Methoxy−r−(2'Ethyhexylloxy)−1,4−Phenylene Vinylene])を含む有機材料を使用できる。封止膜が無機膜、または無機膜と有機膜とが交互になる多層構造である場合、各膜を形成する度にマスク500を再整列して積層工程が行われる。
【0054】
図6及び図7を参照すれば、マスク500は、ディスプレイ部440及びその周辺に対応する複数の開口510と、開口510間の遮蔽部で構成される。蒸着材料は、開口510を通過して基板420に蒸着されうる。各開口510は、ディスプレイ部440及びその周辺の非発光領域の一部をカバーするように、ディスプレイ部440のサイズより大きく形成する。したがって、封止膜材料は、発光領域のディスプレイ部440及び周辺の非発光領域の一部まで積層されうる。
【0055】
真空蒸着方式で薄膜を形成する場合、蒸着全領域にわたって、膜厚及び特性は均一になる。また、同一材料であるといっても、基板の温度によって蒸着速度及び膜密度に大きな差が生じる。したがって、蒸着変数で領域別膜特性が異なって蒸着するため、本実施形態では、蒸着時に使われるマスクにヒータを備える。
【0056】
マスク500は、遮蔽部、すなわち開口510の間及び開口510の外部に、ヒータ、例えば熱線550を備える。熱線550は、図6に示したように、開口510間に一つの熱線550が備えられるか、または図7に示したように、開口510間に一つ以上、例えば二つの熱線550が備えられうる。前記熱線550は、開口510の外郭ラインに近接して位置し、基板420の非発光領域を加熱させうる。
【0057】
封止膜材料の蒸着時、マスク500の熱線550を加熱すれば、基板120で熱線550が備えられたマスクに接触するか、または近接した部分が加熱される。したがって、基板420には、ディスプレイ部440の中央部から周辺部方向に温度が高まる温度勾配が形成されうる。基板温度が高くなれば、蒸着速度も速くなるため、開口510の外郭ライン付近の基板温度が開口510の中央より相対的に高くて、さらに早く蒸着されうる。したがって、成膜された封止膜は、エッジ部が中央部より厚さ及び密度が増大しうる。
【0058】
基板420の領域別温度及び温度勾配は、封止膜全体の厚さ、封止膜の材料、蒸着方法によって異なって設定されうる。例えば、封止膜の形成時、PECVD法が使われる場合、本実施形態では、ディスプレイ部440が位置する発光領域の基板420の温度を100℃以下に維持し、マスク500の熱線550を加熱して非発光領域の温度を発光領域より高い140℃に維持できる。ここで、発光領域の有機素子に影響を与えない範囲内で、前記マスク500の熱線550によって加熱される非発光領域の温度は、140℃以上に設定できる。
【0059】
封止膜は、無機膜または有機膜が一層以上に形成されるか、または無機膜と有機膜とが交互に形成されうる。封止膜が多層構造である場合、前記方法によって最下層封止膜を形成した後、前述した工程によって、順次に次の層の封止膜を形成する。この時に使われる各膜の材料によって、基板420に設定される温度及び基板420に形成される温度勾配の程度が変わり、温度勾配の程度によって、形成された封止膜の中央部とエッジ部との密度差及び厚さ差も変わりうる。
【0060】
上記説明したように、本実施形態の封止膜は、中央部からエッジ部に行くほど密度及び厚さが増大するため、効果的に側面方向の水分や酸素の浸透を防止して、有機発光ディスプレイ装置の寿命を向上させうる。
【0061】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0062】
100 有機発光ディスプレイ装置
120 基板
140 ディスプレイ部
200 封止膜
DA 発光領域
NDA 非発光領域
200a,200b,200c 多層膜


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に形成されたディスプレイ部と、
前記ディスプレイ部と前記ディスプレイ部周辺の非発光領域とを覆い、中央部からエッジ部に行くほど密度及び厚さが増大する封止膜と、
を備えることを特徴とする有機発光ディスプレイ装置。
【請求項2】
前記封止膜は、前記基板に形成された温度勾配によって形成されることを特徴とする請求項1に記載の有機発光ディスプレイ装置。
【請求項3】
前記温度勾配は、熱線が備えられたマスクを使用して前記非発光領域を加熱することによって形成されることを特徴とする請求項2に記載の有機発光ディスプレイ装置。
【請求項4】
前記封止膜は、無機膜または有機膜が一層以上に形成されるか、または前記無機膜と前記有機膜とが交互に形成されたことを特徴とする請求項1に記載の有機発光ディスプレイ装置。
【請求項5】
前記無機膜は、SiNx、SiOx、AlOx、SiCxNy、SiOxNy、非結晶性炭素、InOx、及びYbOxのうち選択された一つ以上の物質を含むことを特徴とする請求項4に記載の有機発光ディスプレイ装置。
【請求項6】
前記封止膜は、スパッタ、熱蒸着、CVD、PECVD、IBAD、及びALDのうち選択された一つの工法によって形成されることを特徴とする請求項1に記載の有機発光ディスプレイ装置。
【請求項7】
基板を提供する工程と、
前記基板上にディスプレイ部を形成する工程と、
前記ディスプレイ部と前記ディスプレイ部周辺の非発光領域とを覆い、中央部からエッジ部に行くほど密度及び厚さが増大する封止膜を形成する工程と、
を含むことを特徴とする有機発光ディスプレイ装置の製造方法。
【請求項8】
前記封止膜の形成工程は、
前記基板に温度勾配を形成する工程と、
前記温度勾配が形成された基板に封止膜材料を塗布する工程と、を含むことを特徴とする請求項7に記載の有機発光ディスプレイ装置の製造方法。
【請求項9】
前記温度勾配の形成工程は、
前記基板に熱線が備えられたマスクを配する工程と、
前記熱線を加熱して前記非発光領域を加熱する工程と、を含むことを特徴とする請求項8に記載の有機発光ディスプレイ装置の製造方法。
【請求項10】
前記マスクの開口は、前記ディスプレイ部及び前記非発光領域の一部をカバーするサイズを有することを特徴とする請求項9に記載の有機発光ディスプレイ装置の製造方法。
【請求項11】
前記封止膜の形成工程は、
無機膜または有機膜を一層以上に積層するか、または前記無機膜と前記有機膜とを交互に積層する工程と、を含むことを特徴とする請求項7に記載の有機発光ディスプレイ装置の製造方法。
【請求項12】
前記無機膜は、SiNx、SiOx、AlOx、SiCxNy、SiOxNy、非結晶性炭素、InOx、及びYbOxのうち選択された一つ以上の物質を含むことを特徴とする請求項7に記載の有機発光ディスプレイ装置の製造方法。
【請求項13】
前記封止膜は、スパッタ、熱蒸着、CVD、PECVD、IBAD、及びALDのうち選択された一つの工法によって形成されることを特徴とする請求項7に記載の有機発光ディスプレイ装置の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4A】
image rotate

【図4B】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2011−124213(P2011−124213A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−182506(P2010−182506)
【出願日】平成22年8月17日(2010.8.17)
【出願人】(308040351)三星モバイルディスプレイ株式會社 (764)
【氏名又は名称原語表記】Samsung Mobile Display Co., Ltd.
【住所又は居所原語表記】San #24 Nongseo−Dong,Giheung−Gu,Yongin−City,Gyeonggi−Do 446−711 Republic of KOREA
【Fターム(参考)】