説明

有機発光ディスプレイ装置及びその製造方法

【課題】有機発光ディスプレイ装置及びその製造方法を提供する。
【解決手段】第1基板と、第1基板と対向して配された第2基板と、第1基板と第2基板との間に配され、有機発光素子を含むディスプレイ部と、第1基板と第2基板との間にディスプレイ部を取り囲むように配され、第1基板と第2基板とを接合させる密封材と、ディスプレイ部を覆うように密封材の内側に配され、磁性体が分散された充填材と、を備える有機発光ディスプレイ装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機発光ディスプレイ装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機発光ディスプレイ装置は、相互対向する電極間に有機発光層を位置させ、一側電極から注入された電子と他側電極から注入された正孔とが有機発光層で結合し、この時の結合を通じて発光層の発光分子が励起された後、基底状態に戻りつつ放出されるエネルギーを光として発光させる平板ディスプレイ装置のうち一つである。
【0003】
このような有機発光ディスプレイ装置は、視認性が優秀であり、軽量化、薄型化を図ることができ、低電圧で駆動できて、次世代ディスプレイとして注目されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許出願公開第2006−221906号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、有機発光ディスプレイ装置は、外部の酸素及び水分の浸透によって劣化する問題点がある。このような問題を解決するために、フリット(frit)のような無機材シーラントを使用して有機発光素子を密封している。このようなフリット封止構造は、溶融されたフリットを硬化させて、基板と密封基板とを完全に密封させうるので、吸湿剤を使用する必要がないので、さらに効果的に有機発光素子を保護できる。
しかし、フリット封止構造では、外部の衝撃が印加される場合、フリット材料の割れのできる特性によって、フリットの基板の接着面に応力集中現象が発生し、これにより、接着面からクラックが発生して全体基板に広がる問題点がある。
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、機構強度が増大し、有機発光素子の劣化を防止することが可能な、新規かつ改良された有機発光ディスプレイ装置及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、第1基板と、前記第1基板と対向して配された第2基板と、前記第1基板と前記第2基板との間に配され、有機発光素子を含むディスプレイ部と、前記第1基板と前記第2基板との間に前記ディスプレイ部を取り囲むように配され、前記第1基板と前記第2基板とを接合させる密封材と、前記ディスプレイ部を覆うように前記密封材の内側に配され、磁性体が分散された充填材と、を備える有機発光ディスプレイ装置が提供される。
【0007】
前記密封材は、フリットでありうる。
【0008】
前記フリットは、前記ディスプレイ部から延びて前記第1基板上に形成された無機絶縁層上に備えられうる。
【0009】
前記充填材は、前記密封材の前記ディスプレイ部に向かう内側境界と直接接触しうる。
前記磁性体は、強磁性体またはフェリ磁性体を含みうる。
【0010】
前記磁性体は、強磁性体またはフェリ磁性体がキュリー温度以上に加熱されて磁性を喪失した状態でありうる。
【0011】
前記磁性体は、前記有機発光ディスプレイ装置が動作する温度で磁性を有さない。
【0012】
前記有機発光素子は、第1電極、前記第1電極と対向する第2電極、及び前記第1電極と第2電極との間に介された有機発光層を備え、前記充填材は、前記第2電極の全面に直接接触しうる。
【0013】
前記第2電極と前記充填材との間に保護膜がさらに備えられうる。
【0014】
前記磁性体は、1μm以下の粒径を有しうる。
【0015】
上記課題を解決するために、本発明の他の観点によれば、(a)有機発光素子を含むディスプレイ部を取り囲むように密封材が備えられた第1基板及び第2基板を準備する工程と、(b)前記密封材の内側に、前記密封材に接触しないように磁性体が分散された充填材をローディングする工程と、(c)前記第1基板及び前記第2基板が対向するように整列し、前記第1基板と第2基板とを合着する工程と、(d)前記密封材を硬化する工程と、(e)前記密封材の外部に磁場をかけて前記磁性体を磁化させ、前記磁化した磁性体を前記密封材の内側境界に拡散させる工程と、を含む有機発光ディスプレイ装置の製造方法が提供される。
【0016】
前記(a)工程で、前記密封材は、フリットで形成されうる。
【0017】
前記(a)工程で、前記フリットは、前記ディスプレイ部から延びて第1基板上に形成された無機絶縁層上に備えられうる。
【0018】
前記(b)工程で、前記磁性体は、強磁性体、またはフェリ磁性体を含みうる。
【0019】
前記(d)工程で、前記密封材の密封ラインに沿ってレーザを照射して前記密封材を硬化しうる。
【0020】
前記(e)工程で、前記充填材は、前記密封材の前記ディスプレイ部に向く内側境界と直接接触しうる。
【0021】
前記(e)工程で、前記密封材の外郭に沿って順次に回り、外部磁場を掛けうる。
【0022】
前記(e)工程で、前記密封材の外郭に同時に外部磁場を掛けうる。
【0023】
前記(e)工程以後、前記磁化した磁性体の磁性が除去されるように、前記磁性体のキュリー温度に当たる熱エネルギーを提供する工程をさらに含みうる。
【0024】
前記磁性体は、前記有機発光ディスプレイ装置が動作する温度で磁性が除去されうる。
【0025】
前記(e)工程以後、前記充填材を硬化する工程をさらに含みうる。
【0026】
前記(e)工程以後、前記充填材を硬化する工程後、前記磁性体の磁性を除去する工程をさらに含みうる。
【0027】
前記(e)工程以後、前記充填材を硬化する工程以前、前記磁性体の磁性を除去する工程をさらに含みうる。
【0028】
前記(e)工程以後、前記充填材を硬化する工程と同時に、前記磁性体の磁性を除去する工程をさらに含みうる。
【0029】
前記充填材の硬化温度範囲に前記磁性体のキュリー温度範囲が含まれうる。
【発明の効果】
【0030】
以上説明したように本発明によれば、充填材が密封材の内側境界面に接触しない状態で密封材を硬化させ、密封材の硬化後、充填材を密封材の内側境界面に接触させうるため、機構強度が増大し、有機発光素子の劣化を防止しうる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の一実施形態による有機発光ディスプレイ装置の一部を概略的に示す平面図である。
【図2】第2基板が合着された有機発光ディスプレイ装置の概略的な断面図である。
【図3】図1及び図2のディスプレイ部をさらに詳細に示す断面図である。
【図4】本発明の実施形態による有機発光ディスプレイ装置の製造方法を概略的に示す図面である。
【図5】本発明の実施形態による有機発光ディスプレイ装置の製造方法を概略的に示す図面である。
【図6A】本発明の実施形態による有機発光ディスプレイ装置の製造方法を概略的に示す図面である。
【図6B】本発明の実施形態による有機発光ディスプレイ装置の製造方法を概略的に示す図面である。
【図7】本発明の実施形態による有機発光ディスプレイ装置の製造方法を概略的に示す図面である。
【図8】本発明の実施形態による有機発光ディスプレイ装置の製造方法を概略的に示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0033】
以下、添付した図面を参照して、本発明をさらに詳細に説明する。
【0034】
図1は、本発明の一実施形態による有機発光ディスプレイ装置の一部を概略的に示した平面図であり、図2は、第2基板が合着された有機発光ディスプレイ装置の概略的な断面図であり、図3は、図1及び図2のディスプレイ部をさらに詳細に示した断面図である。
【0035】
前記図面を参照すれば、本発明の一実施形態による有機発光ディスプレイ装置100は、第1基板110、第2基板120、密封材150、磁性体180(図6A)を備える充填材170を備える。
【0036】
第1基板110の第2基板120に向かう面上に、ディスプレイ部Dとパッド部Pとが形成され、ディスプレイ部Dの外郭には、密封材150がディスプレイ部Dの外郭を取り囲むように配される。
【0037】
ディスプレイ部Dは、複数の有機発光素子(OLED:Organic
Light Emitting Diode)140、及び各OLED 140に接続された複数の薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)130を含む。各OLED
140の駆動をTFT 130で制御するか否かによって、受動駆動型(PM:Passive Matrix)及び能動駆動型(AM:Active Matrix)に分けられうる。本実施形態による有機発光ディスプレイ装置100は、能動及び受動駆動型のうちいかなる場合にも適用されうる。以下では、AM有機発光ディスプレイ装置100を一例として、本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0038】
第1基板110及び第2基板120は、SiOを主成分とする透明なガラス材基板を使用できるが、必ずしもこれに限定されず、プラスチック材など多様な材質の基板を利用しうる。
【0039】
バッファ層111上には、TFT 130の活性層131が半導体材料によって形成され、これを覆うようにゲート絶縁膜112が形成される。活性層131は、非晶質シリコンまたはポリシリコンのような無機材半導体や有機半導体が使われ、ソース領域131b、ドレイン領域131c及び、これらの間にチャンネル領域131aを有する。
【0040】
ゲート絶縁膜112上には、ゲート電極133が備えられ、これを覆うように層間絶縁膜113が形成される。そして、層間絶縁膜113上には、ソース電極135及びドレイン電極136が備えられ、これを覆うようにパッシベーション膜114及び平坦化膜115が順次に備えられる。
【0041】
前記のゲート絶縁膜112、層間絶縁膜113、パッシベーション膜114、及び平坦化膜115は、絶縁体で形成され、無機物、有機物、または有/無機複合物で単層または複数層の構造で形成されうる。一方、前述したTFTの積層構造は、一例示であり、それ以外にも、多様な構造のTFTがいずれも適用可能である。
【0042】
ディスプレイ部Dの外郭には、パッド部Pが形成される。パッド部Pは、複数のパッド電極(図示せず)を含み、パッド電極(図示せず)は、ディスプレイ部Dに備えられた多様な導線(図示せず)、例えば、データライン、スキャンライン、または電源供給ラインのように、ディスプレイ素子を駆動するための多様な導線に対応するように連結されることによって、外部信号を各連結された導線を通じてディスプレイ部Dに備えられたOLEDに伝達する。
【0043】
平坦化膜115の上部には、OLED 140のアノード電極となる第1電極141が形成され、これを覆うように絶縁物で画素定義膜144が形成される。画素定義膜144に所定の開口部を形成した後、この開口部で限定された領域内に、OLEDの有機発光層142が形成される。そして、全体画素をいずれも覆うように、OLEDのカソード電極となる第2電極143が形成される。もちろん、第1電極141と第2電極143との極性は、相互逆になってもよい。
【0044】
第1電極141は、透明電極または反射型電極となる。第1電極141が透明電極となる場合、第1電極141は、ITO(Indium
Tin Oxide)、IZO(Indium Zinc Oxide)、ZnOまたはInで構成される。一方、第1電極141が反射型電極となる場合、第1電極141は、Ag、Mg、Al、Pt、Pd、Au、Ni、Nd、Ir、Crまたはこれらの化合物で形成された反射膜と、ITO、IZO、ZnOまたはInで形成された透明膜とを備えうる。
【0045】
第2電極143も、透明電極または反射型電極となる。第2電極143が透明電極となる場合、第2電極143は、Li、Ca、LiF/Ca、LiF/Al、Al、Mgまたはこれらの化合物が有機発光層142に向かうように蒸着して形成された膜と、その上のITO、IZO、ZnOまたはInなどの透明な導電性物質で形成された補助電極やバス電極ラインとを備えうる。一方、第2電極143が反射型電極となる場合には、第2電極143は、前記のLi、Ca、LiF/Ca、LiF/Al、Al、Mg及びこれらの化合物で形成されうる。
【0046】
第1電極141と第2電極143との間に備えられる有機発光層142は、低分子または高分子有機物で備えられうる。低分子有機物を使用する場合、有機発光層142を介して、ホール注入層(HIL:Hole Injection Layer)(図示せず)、ホール輸送層(HTL:Hole Transport Layer)(図示せず)、電子輸送層(ETL:Electron Transport Layer)(図示せず)、電子注入層(EIL:Electron Injection Layer)(図示せず)などが単一あるいは複合の構造で積層されて形成され、使用可能な有機材料も、銅フタロシアニン(CuPc)、N,N−ジ(ナフタレン−1−イル)−N,N'−ジフェニル−ベンジジン(NPB)、トリス−8−ヒドロキシキノリンアルミニウム(Alq3)をはじめとして、多様に適用可能である。これらの低分子有機物は、マスクを利用して真空蒸着法で形成されうる。
【0047】
高分子有機物の場合、有機発光層142からアノード電極側にホール輸送層(HTL)(図示せず)がさらに備えられた構造を有し、この時、ホール輸送層(HTL)にPEDOT(Poly−(2,4)−Ethylene−Dihydroxythiophene)を使用し、発光層にPPV(Poly−PhenyleneVinylene)系及びポリフルオレン系などの高分子有機物質を使用する。
【0048】
前記図面には示されていないが、画素定義膜144の上部には、OLED 140と第2基板120とのギャップを維持するためのスペーサ(図示せず)がさらに備えられうる。
第1基板110の第2基板120に向かう面上に、ディスプレイ部Dの外郭を取り囲むように密封材150が備えられる。もちろん、密封材150は、第2基板120の第1基板110に向かう面上に備えられうる。このような密封材150は、第1基板110と第2基板120とを接合し、外部からOLED
140への酸素及び水分の浸透を防止する。
【0049】
密封材150は、エポキシのような有機材も使用可能であるが、別途の吸湿剤の使用が不要なフリットのような無機材を使用することが望ましい。フリットは、ガラス材料をペースト状態で第1基板110及び/または第2基板120に塗布し、レーザまたは紫外線で溶融した後、硬化しつつ第1基板110と第2基板120とを密封する。
【0050】
一方、第1基板110上に、密封材150としてフリットを使用する場合、無機材であるフリットと第1基板110との界面接触を強化するために、フリットをディスプレイ部Dから直接延設された無機絶縁層上に直接形成しうる。ここで、ディスプレイ部Dから直接延設された無機絶縁層というのは、例えば、前述したTFT
130の製造時に形成されるゲート絶縁膜112、層間絶縁膜113、パッシベーション膜114のような無機絶縁層が、フリットが形成されるディスプレイ部Dの外郭にも共に形成されることを意味する。
【0051】
しかし、外部衝撃が有機発光ディスプレイ装置100に印加される場合、フリットの割れのできる特性によって、フリットと第1基板110及び/または第2基板120との接着面に応力集中現象が発生し、これにより、接着面からクラックが発生し、全体基板に拡散しうる。
【0052】
これを防止するために、第1基板110と第2基板120とが接合されながら作られる内部空間に充填材170が備えられる。充填材170は、ディスプレイ装置100の内部空間を所定の弾性及び粘性を有する物質で充填することによって、外部衝撃から有機発光ディスプレイ装置100の損傷を防止する。
【0053】
フリットを含む密封材150は、硬化工程を経ねばならないが、密封材150の硬化時、高温の紫外線やレーザが照射される。この時、密封材150に隣接した周辺の充填材170にも、高温の紫外線やレーザが照射されて、充填材170が高温に劣化すれば、OLED
140の変性をもたらす恐れがある。もし、このような高温による充填材170の劣化を防止するために、充填材170を密封材150と接触しないように形成する場合、すなわち、密封材150の内側境界面と所定間隔のギャップを置いて充填材170を形成する場合、外部衝撃の拡散を防止するための充填材170本来の機能を十分に発揮できない。
【0054】
本発明は、前記のような問題点を解決するために、磁性体180を充填材170の内部に分散させる。
【0055】
本実施形態による磁性体180は、強磁性体、またはフェリ磁性体を含みうる。強磁性体またはフェリ磁性体は、外部から強い磁場を掛けた時、その磁場の方向に強く磁化した後、外部磁場が消えても磁化が残っている物質を称す。
【0056】
後述するが、このように磁性体(図示せず)を含む充填材170は、密封材150の硬化時、硬化温度による充填材170の劣化を防止するために、まず、充填材170が密封材150と接触しないように密封材150の内側境界面と所定間隔のギャップが維持された状態でディスプレイ部Dの中央にローディングされた後、密封材150の外部に磁場を掛けて磁化した磁性体(図示せず)を含む充填材170を密封材150の内側境界に拡散させて形成されたものである。
【0057】
このように、本実施形態による有機発光ディスプレイ装置100の充填材170は、密封材150の硬化時には、密封材150の境界から離隔されて高温による熱損傷を受けないが、密封材150の硬化後には、密封材150の内側境界と直接接触する構造であるため、ディスプレイ装置100の劣化防止と同時に、機構強度の向上が可能である。
【0058】
一方、充填材170に分散された磁性体180は、密封材150の硬化後にも続けて磁性が残存するようにできるが、必要な場合、有機発光ディスプレイ装置100が動作する範囲、例えば、−20℃ないし80℃の範囲で前記磁性体180の磁性を除去することもできる。
【0059】
強磁性体またはフェリ磁性体がキュリー温度以上に加熱されれば、磁性を失わせることができるので、密封材150の硬化後、密封材150の内側境界まで拡散された磁性体に所定の熱エネルギーを印加して、磁性体の磁性を除去することもできる。
【0060】
図3に示したように、前述した磁性体180が分散された充填材170は、OLED 140の第2電極143の全面に直接接触しうる。また、磁性体180が導電性を有する場合、必要に応じて、前記第2電極143と充填材170との間に絶縁保護膜がさらに備えられうる。
【0061】
一方、薄型のディスプレイ装置を具現するために、ディスプレイ部Dが形成された第1基板110と封止層として使われる第2基板120との距離は、狭く形成されることが望ましい。本実施形態で、第1基板110と第2基板120との距離は、2〜4μmに形成される。したがって、第1基板110と第2基板120との間に充填される充填材170に含まれた本実施形態による磁性体180は、ディスプレイ部Dに対する損傷を防止するために、少なくとも1μm以下の粒径(例えば、公知の手法(例えば画像解析法)によって磁性体180を球体に換算したときの直径)を有することが望ましく、さらに望ましくは、数十ないし数百nmの粒径を有することが望ましい。
【0062】
図4ないし図8は、本発明の実施形態による有機発光ディスプレイ装置の製造方法を概略的に示した図面である。
【0063】
図4を参照すれば、OLEDを含むディスプレイ部Dを取り囲むように、密封材150の備えられた第1基板110が準備される。そして、前記図面には示されていないが、封止部材として使われる第2基板120(図5)も準備される。もちろん、密封材150は、第2基板120にも形成されうる。
【0064】
この時、密封材150は、フリットで備えられ、フリットは、前述したように、ディスプレイ部Dから直接延設された無機絶縁層上に直接形成されうる。
【0065】
密封材150の内側に、密封材150に接触しないように、1μm以下の粒径を有する磁性体180(図6A)が分散された充填材170aがローディングされる。この時、充填材170aは、密封材150と接触しないように、密封材150の内側境界面と所定間隔のギャップが維持された状態でディスプレイ部Dの中央にローディングされる。
【0066】
図5を参照すれば、第1基板110と第2基板120とが相互対向するように整列された後、第1基板110と第2基板120とを合着し、充填材170aと密封材150とに所定間隔のギャップが維持された状態で、密封材150の密封ラインに沿ってレーザまたは紫外線を照射して密封材150を硬化する。
【0067】
この時、充填材170aは、密封材150から離れているため、レーザまたは紫外線の照射による熱損傷を避けうる。
【0068】
図6Aを参照すれば、密封材150外部に磁石Mが配される。前記図面に示された磁石Mは、密封材150の外部に印加される磁場形成を説明するための概念的なものであって、前記図面に示された磁石Mの形状や磁性の配列(N極、S極)に、本発明が限定されない。
【0069】
前記図面で、磁石Mは、密封材150の外部である第1基板110の第1コーナー部X1に配されて磁場を形成する。この時、充填材170aは、磁性体180を含んでいるため、磁場によって磁化される。磁性体180が強磁性体、またはフェリ磁性体を含む場合、磁性体180は、外部磁場の方向に強く磁化される。したがって、前記図面に示されたように、磁性体180と磁石Mとの間に強い磁気力Faが発生し、この磁気力Faによって、充填材170aに含まれた磁性体180は、磁気力Faの方向に移動する。したがって、磁性体180の含まれた充填材170aが全体的に第1コーナー部X1方向に移動して、第1コーナー部X1周辺の密封材150の境界面に直接接触し、密封材150と充填材170aとのギャップを埋め込む。
【0070】
図6Bを参照すれば、磁石Mは、密封材150の外部である第1基板110の第2コーナー部X2に配されて磁場を形成する。磁性体180と磁石Mとの間に強い磁気力Fbが発生し、この磁気力Fbによって、充填材170aに含まれた磁性体180は、磁気力Fbの方向に移動する。したがって、磁性体180の含まれた充填材170aが全体的に第2コーナー部X2方向に移動して、第2コーナー部X2周辺の密封材150の境界面に直接接触し、密封材150と充填材170aとのギャップを埋め込む。
【0071】
図6A及び図6Bは、磁石Mが密封材150の外郭に沿って順次に回りつつ外部磁場を形成する一例示を示すためのものであって、前記図面には示されていないが、磁石Mは、密封材150の外部である第1基板110の第3コーナー部X3及び第4コーナー部X4に配されて磁場を形成しうる。もちろん、この時にも、磁性体180と磁石Mとの間に強い磁気力(図示せず)が形成され、この磁気力(図示せず)によって充填材170aに含まれた磁性体180は、第3コーナー部X3及び第4コーナー部X4方向に移動して密封材150と充填材170aとのギャップを埋め込み、全体的に図1に示したように、充填材170が密封材150のディスプレイ部Dに向く内側境界と直接接触する。
【0072】
一方、図7を参照すれば、磁石Mは、密封材150の外部である第1基板110の各コーナー部X1,X2,X3,X4に同時に配されて磁場を形成する。
【0073】
前述した図6A及び図6Bが、磁石Mが密封材150の外郭に沿って順次に磁場が形成される例を示したものならば、図7は、密封材150の外郭に磁場が同時に形成される例を示したものである。
【0074】
詳細には、磁石Mは、密封材150の外部である第1基板110の各コーナー部X1,X2,X3,X4に同時に配されて磁場を形成する。この時に形成される磁場は、対称的でありうる。したがって、磁性体180と各磁石Mとの間に強い磁気力Fa,Fb,Fc,Fdが発生し、この磁気力Fa,Fb,Fc,Fdによって充填材170aに含まれた磁性体180は、各磁気力Fa,Fb,Fc,Fdの方向に移動する。したがって、磁性体180の含まれた充填材170aが全体的に各コーナー部X1,X2,X3,X4方向に移動して密封材150と充填材170aとのギャップを埋め込む。
【0075】
一方、図6A、図6B、及び図7には、密封材150のコーナーにのみ磁場が形成されると示されたが、これは、密封材150のコーナーと充填材170aとのギャップが最も大きいことを考慮して、密封材150のコーナー側に最も大きい磁場を形成しただけである、本発明は、これに限定されない。すなわち、多様な位置で磁場を形成しうる。
【0076】
図8を参照すれば、密封材150の硬化及び磁化した磁性体180を含む充填材170aを密封材150の内側境界面まで拡散させた後、紫外線の照射を利用して、充填材170を硬化する。これにより、図2に示された本実施形態による有機発光ディスプレイ装置100が完成される。
【0077】
一方、磁化した磁性体180は、密封材150の硬化後にも磁性が残存し続けるようにできるが、必要に応じて、有機発光ディスプレイ装置が動作する範囲、例えば、−20℃ないし80℃の範囲で磁化した磁性体180の磁性を除去することもできる。
【0078】
強磁性体またはフェリ磁性体がキュリー温度以上に加熱されれば、磁性を失うので、密封材150の硬化後、密封材150の内側境界まで拡散された磁性体に、所定のキュリー温度以上の熱エネルギーを印加して、磁性体の磁性を除去することもできる。
【0079】
一方、充填材170にキュリー温度以上の熱を加えて磁性体180の磁性を除去する工程は、前述した充填材170の硬化工程前、または充填材170の硬化工程後、または充填材170の硬化工程と同時に進めうる。
【0080】
もし、充填材170の硬化工程と磁性体180の磁性除去工程とを同時に進める場合には、充填材170の硬化温度範囲に、充填材170に含まれた磁性体180のキュリー温度範囲が含まれることが望ましい。
【0081】
前述したような有機発光ディスプレイ装置の製造方法によれば、充填材170aは、密封材150の硬化時には、密封材150の境界から離れて高温による熱損傷を受けないが、密封材150の硬化後には、密封材150の内側境界と直接接触する構造であるため、有機発光ディスプレイ装置の劣化防止と同時に、機構強度の向上が可能である。
【0082】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。また、前記図面に示された構成要素は、説明の便宜上、拡大または縮小して表示されうるので、図面に示された構成要素のサイズや形状に本発明は拘束されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明は、ディスプレイ関連の技術分野に好適に適用可能である。
【符号の説明】
【0084】
100 有機発光ディスプレイ装置
110 第1基板
120 第2基板
130 薄膜トランジスタ
140 OLED
150 密封材
170 充填材
180 磁性体
D ディスプレイ部
M 磁石



【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1基板と、
前記第1基板と対向して配された第2基板と、
前記第1基板と前記第2基板との間に配され、有機発光素子を含むディスプレイ部と、
前記第1基板と前記第2基板との間に前記ディスプレイ部を取り囲むように配され、前記第1基板と前記第2基板とを接合させる密封材と、
前記ディスプレイ部を覆うように前記密封材の内側に配され、磁性体が分散された充填材と、を備える有機発光ディスプレイ装置。
【請求項2】
前記密封材は、フリットであることを特徴とする請求項1に記載の有機発光ディスプレイ装置。
【請求項3】
前記フリットは、前記ディスプレイ部から延びて前記第1基板上に形成された無機絶縁層上に備えられたことを特徴とする請求項2に記載の有機発光ディスプレイ装置。
【請求項4】
前記充填材は、前記密封材の前記ディスプレイ部に向かう内側境界と直接接触することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の有機発光ディスプレイ装置。
【請求項5】
前記磁性体は、強磁性体またはフェリ磁性体を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の有機発光ディスプレイ装置。
【請求項6】
前記磁性体は、強磁性体またはフェリ磁性体がキュリー温度以上に加熱されて磁性を失った状態であることを特徴とする請求項5に記載の有機発光ディスプレイ装置。
【請求項7】
前記磁性体は、前記有機発光ディスプレイ装置が動作する温度で磁性を有さないことを特徴とする請求項6に記載の有機発光ディスプレイ装置。
【請求項8】
前記有機発光素子は、第1電極、前記第1電極と対向する第2電極、及び前記第1電極と第2電極との間に介された有機発光層を備え、前記充填材は、前記第2電極の全面に直接接触することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の有機発光ディスプレイ装置。
【請求項9】
前記第2電極と前記充填材との間に保護膜がさらに備えられたことを特徴とする請求項8に記載の有機発光ディスプレイ装置。
【請求項10】
前記磁性体は、1μm以下の粒径を有することを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の有機発光ディスプレイ装置。
【請求項11】
(a)有機発光素子を含むディスプレイ部を取り囲むように密封材が備えられた第1基板及び第2基板を準備する工程と、
(b)前記密封材の内側に、前記密封材に接触しないように磁性体が分散された充填材をローディングする工程と、
(c)前記第1基板及び前記第2基板が対向するように整列し、前記第1基板と第2基板とを合着する工程と、
(d)前記密封材を硬化する工程と、
(e)前記密封材の外部に磁場を掛けて前記磁性体を磁化させ、前記磁化した磁性体を前記密封材の内側境界に拡散させる工程と、を含む有機発光ディスプレイ装置の製造方法。
【請求項12】
前記(a)工程で、前記密封材は、フリットで形成されることを特徴とする請求項11に記載の有機発光ディスプレイ装置の製造方法。
【請求項13】
前記(a)工程で、前記フリットは、前記ディスプレイ部から延びて第1基板上に形成された無機絶縁層上に備えられることを特徴とする請求項12に記載の有機発光ディスプレイ装置の製造方法。
【請求項14】
前記(b)工程で、前記磁性体は、強磁性体、またはフェリ磁性体を含むことを特徴とする請求項11〜13のいずれか1項に記載の有機発光ディスプレイ装置の製造方法。
【請求項15】
前記(d)工程で、前記密封材の密封ラインに沿ってレーザを照射して、前記密封材を硬化することを特徴とする請求項11〜14のいずれか1項に記載の有機発光ディスプレイ装置の製造方法。
【請求項16】
前記(e)工程で、前記充填材は、前記密封材の前記ディスプレイ部に向く内側境界と直接接触することを特徴とする請求項11〜15のいずれか1項に記載の有機発光ディスプレイ装置の製造方法。
【請求項17】
前記(e)工程で、前記密封材の外郭に沿って順次に回りつつ外部磁場を掛けることを特徴とする請求項11〜16のいずれか1項に記載の有機発光ディスプレイ装置の製造方法。
【請求項18】
前記(e)工程で、前記密封材の外郭に同時に外部磁場を掛けることを特徴とする請求項11〜17のいずれか1項に記載の有機発光ディスプレイ装置の製造方法。
【請求項19】
前記(e)工程以後、前記磁化した磁性体の磁性が除去されるように、前記磁性体のキュリー温度に当たる熱エネルギーを提供する工程をさらに含むことを特徴とする請求項11〜18のいずれか1項に記載の有機発光ディスプレイ装置の製造方法。
【請求項20】
前記磁性体は、前記有機発光ディスプレイ装置が動作する温度で磁性が除去されることを特徴とする請求項19に記載の有機発光ディスプレイ装置の製造方法。
【請求項21】
前記(e)工程以後、前記充填材を硬化する工程をさらに含むことを特徴とする請求項11〜20のいずれか1項に記載の有機発光ディスプレイ装置の製造方法。
【請求項22】
前記(e)工程以後、前記充填材を硬化する工程後、前記磁性体の磁性を除去する工程をさらに含むことを特徴とする請求項21に記載の有機発光ディスプレイ装置の製造方法。
【請求項23】
前記(e)工程以後、前記充填材を硬化する工程以前、前記磁性体の磁性を除去する工程をさらに含むことを特徴とする請求項21に記載の有機発光ディスプレイ装置の製造方法。
【請求項24】
前記(e)工程以後、前記充填材を硬化する工程と同時に、前記磁性体の磁性を除去する工程をさらに含むことを特徴とする請求項21に記載の有機発光ディスプレイ装置の製造方法。
【請求項25】
前記充填材の硬化温度範囲に、前記磁性体のキュリー温度範囲が含まれることを特徴とすることを特徴とする請求項24に記載の有機発光ディスプレイ装置の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6A】
image rotate

【図6B】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2011−222486(P2011−222486A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−290256(P2010−290256)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(308040351)三星モバイルディスプレイ株式會社 (764)
【氏名又は名称原語表記】Samsung Mobile Display Co., Ltd.
【住所又は居所原語表記】San #24 Nongseo−Dong,Giheung−Gu,Yongin−City,Gyeonggi−Do 446−711 Republic of KOREA
【Fターム(参考)】