説明

有機発光デバイスエレメント中のアズレン基化合物

有機発光デバイスの効率を改善するために、アズレン基化合物が発光層およびまたは、1つまたは1つ以上の電荷輸送層、またはホスト材料として、または有機発光デバイスの機能層中にドープされている有機発光デバイス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、アズレン基化合物(azulene-based compound)が発光層(emissive layer)およびまたは、1つもしくは1つ以上の電荷輸送層(charge transport layer)、またはそのような層の1つもしくは1つ以上のためのホスト材料として用いる有機発光デバイス(organic light-emitting device)用の要素に関する。
【背景技術】
【0002】
有機発光デバイス(「OLED」)は、通常、カソードとアノードの間に発光材料(emissive material)の層を有する。バイアスが電極間を横切って印可されると、正電荷(正孔)と負電荷(電子)はそれぞれアノードとカソードから発光層中に注入される。正孔と電子は発光層中で励起子を形成して光を放出する。
【0003】
電極は電荷注入を容易にするために選択される。透光性のインジウム−すず−酸化物(ITO)アノードは、比較的高い仕事関数をもち、そのため正孔注入電極として使用するために適しているが、一方、Al,Mg,Caのような低い仕事関数の金属は電子の注入に適している。
【0004】
有機発光デバイスの電力効率を改善するために、電極界面で電荷注入を高めることは絶えず要求されている。正孔輸送層(hole transport layer)と電子輸送層(electron transport layer)は、電荷輸送を促進するためにそれぞれの電極に隣接して加えられ得る。正孔輸送または電子輸送のいずれかが好まれるかに依存して、発光層はアノード又はカソードにより近く配置され得る。ある場合には、発光層は、正孔輸送または電子輸送層中に配置される。
【0005】
ブロッキング層(blocking layer)が、隣接する層からの正孔または電子の注入およびそれらのそれに続く有機発光デバイスからの漏れ(escape)を阻止するために提供される場合には、性能が改良され得る。同様に、修正(modifying)された層は電極の一方又は両方との接触を改良する、あるいは2つの他の層の間の界面を改良するために使用され得る。
【0006】
これらの層のいくつかは、結合され得る。例えば、2層構造は、結合された正孔注入及び輸送層と、結合された電気輸送及び発光層とから作られる。同様に、3層構造は、正孔注入及び輸送層と、発光層と、電子注入および輸送層とから構成される。
【0007】
多くの他の正孔輸送材料が知られているが、正孔輸送層は、トリアリルアミン基材料を含み得る。同様に、他の電子輸送材料が知られているが、AlQとして知られているアルミニウムキノリノレート(aluminum quinolinolate)錯体は、有機発光デバイス中で使用されているよく知られている電子輸送材料である。
【0008】
いろいろな種類の構造を持つ発光材料は、技術的に知られており、一般的には、色、明るさ、効率及び寿命に基づいて選択される。これらの発光材料は、それ自身もまた電子輸送または正孔輸送特性を持っている。
【0009】
さらに、その層の望ましい効果を達成する(例えば、正孔輸送効果、電子輸送効果、又は発光効果を達成する)ために設計された別の材料でドープされたホスト材料からこれらの層を形成することが可能である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
明るさ、高純度の発光を有する適切な材料および注入された電荷に対してより大きな発光に貢献する材料の必要性が続いている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
発明の概要
1形態において、本願発明は、1つのアノードと、1つのカソードと、前記アノードと前記カソードとの間に配置され、次式の構造をもつアズレン基化合物を有する少なくとも1つの機能層と、からなる有機発光デバイスである。
【0012】
【化7】

【0013】
上式において、各R〜Rは、独立に、水素、ヒドロキシ、アミノ、メルカプト、カルボキシル、ニトロ、シアノ、アジド(azido)またはハロゲン(halo)のグループ(group)、あるいは、アルキル、アルケニル(alkenyl)、アルキニル(alkynyl)、アルコキシ(alkoxy),アルケニルオキシ(alkenyloxy)、アルキニルオキシ(alkynyloxy)、芳香族または複素環式芳香族のグループ(group)であり、前記グループは、置換または無置換である。Arは少なくとも1つの芳香族または複素環式芳香族のグループを有するn価の結合体であり、前記グループもまた置換または無置換である。コアArに付着したアズレン基のグループの数“n”は少なくとも1であり、上限はArの原子価によって定義される。例えば、もしArがベンゼンならばnは1〜6である。実施例において、アズレン基化合物を有する層は発光層である。別の実施例では、アズレン基の機能層は正孔輸送層または電子輸送層であり、その場合、有機発光デバイスはアズレン基の機能層に加えて発光層を要求し得る。多くのアズレン基化合物は、また有機発光デバイス中のゲストーホスト系における機能性(発光または電荷輸送)ゲスト材料と結合され得る適切なホストを作る。
【0014】
1形態では、本願発明は、機能層(すなわち、発光層、電子輸送層、正孔輸送層、またはこれらの機能を結合する層)を、効果的な量のアズレンまたは置換または無置換のアズレン部位を持つ化合物でドープして、有機発光デバイスの効率を改良する方法であり、ドープされていないデバイスと比較して有機発光デバイスの効率が改良される。
【0015】
この簡単な要約は、本願発明の本質が素早く理解されるように提供される。本願発明の更なる完全な理解は、添付された図面を参照する好ましい実施例の以下の詳細な記載を参照することによって得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
アズレンは以下の構造を有する。
【0017】
【化8】

【0018】
縮合した7環/5環構造は分極(polalization)することとなり、著しく安定したアニオンとカチオンを生じる。従って、ここで記載されたアズレン基材料は、ホスト材料、電子輸送材料、正孔輸送材料及び発光材料として有用であって、その材料の効率は酸化還元(redox)機構に依存する。
【0019】
本願発明の実施形態において、アズレンおよび置換又は無置換のアズレン部位を持つ化合物は、有機発光デバイスの発光又は電荷輸送層中にドープされ、デバイス効率を改善する。好ましくは、その化合物は、このアズレン基化合物がドープされる機能層に関して約0.5〜約2重量%の範囲の量で、熱蒸発真空技術を用いて共蒸発および共堆積される。例えば、アズレン基化合物はAlQのような金属錯体と熱蒸着技術を用いて共堆積され得る。いかなるアズレン基化合物もこの方法で使用され、有機発光デバイス中のデバイス効率を改善する。特別の例は以下に示す式I〜式XVIIで提供される。
【0020】
上記示されたアズレンに対する番号を付けるシステムは、アズレン環構造中の8つの置換可能な炭素原子を記載するために共通に使用される。しかしながら、本願発明の化合物において、1つもしくは1つ以上のアズレン部位は、コアArに結合されており、その構造のアズレン部位上の置換可能な炭素原子は、コアに結合された炭素原子に隣接する炭素原子から始まり、右回りで番号付けられたR〜Rである。以下の式I〜式XVIIにおいて、アズレンは6の位置で機能化される。
【0021】
6の位置で機能化されたアズレン部位で置換されたベンゼン環を形成する方法は、S.Itoらの「アズレンで置換されたベンゼン誘導体および(η−シクロペンタジエン)[テトラ−およびジ(6−アズレニル)シクロブタジエン]コバルト複合体」J.Org.Chem.201,66,7090-7101(2001)に開示されている。その方法において、6−アズレニルアセチレンは6−ブロモアズレンから出発して形成され、6−アズレニルアセチレンは、テトラフェニルシクロペンタジエノン(tetraphenylcyclopentadienone)とディールス−アルダー(Diels-Alder)反応を受けて、置換されたベンゼン環を形成する。
【0022】
位置R〜R(およびR1’〜R7’など、事情に応じてコア(Ar)に付着したアズレン基の数に依存する)は、水素によって占有され得る、あるいはこれらの位置は置換され得る。R〜Rに対する適切な置換基(substituent group)は、ここで参照文献として組み込まれる米国特許第6,121,322号で開示されたものから選択され得る。従って、R〜Rのいずれかは、独立に、ヒドロキシ、アミノ、メルカプト、カルボキシル(カルボキシレートを含む)、ニトロ、シアノ、アジドまたはハロゲン(halo)のグループであり得る。さらに、R〜Rのいずれかは、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アルケニルオキシ、アルキニルオキシ、芳香族または複素環式芳香族のグループのような置換可能な部位であり得て、前記グループのいずれも独立に置換または無置換である。こうして、例えば、「アルキル」は、分枝したもの、直線状のもの、あるいは、1原子またはヒドロキシ、ハロゲン(halo)、アミノ、ニトロ、シアノ、アジド、メルカプト、サルフィニル、サルフォニル、カルボキシル及びカルボニルグループを含む水素以外のグループで置換された鎖上の1つまたは1つ以上の水素原子をもち得る炭化水素鎖が飽和された環、を含んでいる。
【0023】
例えば、これにより限定されるものではないが、置換基(substituent group)R〜Rは、アルキルまたはアルコキシのような相対的に電子が豊富な種であり、好ましくは、メチル、メトキシ、エチル、エトキシ、第3−ブチルまた第3−ブトキシを含む低級(C〜C)アルキルまたはアルコキシであり得る。これらおよび他の電子の豊富な種は、アズレン基化合物のカチオン的な形態を安定化するために寄与し得る。このアルキルまたはアルコキシグループはそれ自体が置換され得る。
【0024】
別の実施例として、これにより限定されるものではないが、置換基R〜Rは、また、カルボキシグループ(carboxyl group)のような電子引抜種であり、好ましくは、カルボン酸塩エステルであり、このエステルグループは、限定なしにメチルカルボキシレート(−COOMe)とエチルカルボキシレート(−COOEt)を含むような、低級(C〜C)アルキルであり得る。実施例において、RとRはエチルカルボキシレートであり、更にこの負に帯電された5員環上に電子引抜種を提供する。このような種は、アズレン基化合物のアニオンの形態を安定するために寄与する。
【0025】
他の適切な置換基(substituent group)は、アルケニル、アルキニル、アルケニルオキシ、アルキニルオキシ、芳香族または複素環式芳香族のグループを含み、これらのグループは置換または無置換であり得るし、これらはその化合物に対する電子的なあるいは立体的な貢献に基づいて選択され得る。従って、例えば、アルケニルは、少なくとも1つの2重結合を持つ炭化水素鎖を含み、それは、1原子、あるいは、限定なしにヒドロキシ、ハロゲン(halo)、アミノ、ニトロ、シアノ、アジド、メルカプト、サルフィニル、サルフォニル、カルボキシル及びカルボニルグループを含む鎖上で置換された水素以外のグループをもち得る。
【0026】
要約すると、アズレン部位あるいはコアAr上の自由な位置に付着され得る置換基は、所望の化合物を合成する能力によってのみ限定される。
【0027】
従って、一個のアズレン基化合物は、6位置で機能化され、式IIのように単一環の芳香族コア(Ar)に結合され得る。
【0028】
【化9】

【0029】
また、2もしくは2以上のアズレン基グループは、式III〜Vのように単一環のコアに結合され得る。
【0030】
【化10】

【0031】
【化11】

【0032】
当業者は、上記の式(V)中のアズレン部位上の番号が付いていない置換可能な炭素原子のいずれかは、一般式(I)に従って、独立に、R〜Rで置換され得ることを認めるであろう。実際上の問題として、置換されたアズレン部位の全てが同一であるという場合がしばしばである。式III〜Vの化合物は、600〜1200nmで吸収し、ゲスト化合物に対し効率的で、安定化したエネルギー輸送を許容するゲストーホスト系における適切なホストを作り得そうである。
【0033】
また、1つもしくは1つ以上のアズレン部位は、複合的に縮合した芳香族環を持つコアに結合し得る。その結果として生じる化合物は、コア中の高い共役の程度に依存する発光材料を形成する候補となりそうである。例えば、コアArは、式VIのようにナフタレンから形成され得る。
【0034】
【化12】

【0035】
より小さな芳香族または複素環式芳香族のコアのように、複合リングコアArは、複合アズレンまたはアズレン基グループに結合され得る。例は、式VII,VIIIおよびIXに示される。
【0036】
【化13】

【0037】
フルオレンのような知られた発光化学構造は、アズレン基の置換基で適合され、有機発光デバイス中で使用する安定した発光材料を形成し得る。
【0038】
【化14】

【0039】
【化15】

【0040】
ここで、R’とR”は、R〜Rに対して上記説明されたような同様の方法で、先行技術で利用可能な発光性のフルオレン誘導体に関する情報に基づいて、置換され得る。
【0041】
実施例において、コア(Ar)は、式XIIのような正孔輸送能力をもつアズレン基化合物を提供するために、トリフェニルアニンのような正孔輸送部位を有し得る。
【0042】
【化16】

【0043】
同様に、芳香族コア(Ar)は、式XIIIに示されるトリフェニルトリアジン(triphenyl triazine)のような複素環式芳香族複合環構造からなり得る。アジン部位は電子輸送能力を持っている。従って、アジンを組み込んで結果として生じるアズレン基化合物は、正孔輸送能力を持つことが期待される。
【0044】
【化17】

【0045】
前述の例のように、式XIIまたはXIIIにおけるアズレン環上の炭素原子のいずれかは、独立にR〜Rに対して上記説明したのと同じ方法で置換され得る。
【0046】
また更なる実施例において、コア(Ar)は式XIVと式XVのように芳香族基が結合されている1つの炭素又は珪素原子を有し得る。
【0047】
【化18】

【0048】
式XIVと式XVの材料は、ゲスト材料に安定とエネルギー輸送を提供することが期待される。したがって、これらはホスト材料のよい候補である。
【0049】
前述の式のいずれかにおけるコア(Ar)上の置換可能な炭素原子は、これらの炭素原子はアズレン基グループに結合しておらずオプションの置換基をもつとして示されていないが、R〜Rに対して上記説明したような同じ方法でやはり置換できることは、当業者によって容易に理解され得る。
【0050】
コア(Ar)が複素環式芳香族である例が、式XVIに示されており、ここで、Arはチオフェンである。
【0051】
【化19】

【0052】
このコア(Ar)部位は、限定なしに、ピロール、ピラゾール、トリアゾール(triazole)、イミダゾール、ジチオール(dithiole)、オキサゾール、オキサチアゾール(oxatiazole)、チアゾール、ピラン、ピリジン、ピリミジン、ピラジン(pyrazine)、オキサジン、およびこれらのいずれかを組み込んだ縮合環種を含む、他の複素環式芳香族種に基づいて存在もし得る。
【0053】
コア(Ar)が芳香族コア上にエチレン連鎖を有する例が式XVIに示されている。
【0054】
【化20】

【0055】
本願発明によるデバイスは、テレビジョンのスクリーン、コンピュータのスクリーン、デジタル複写機やプリンタ用の画像の長方形のコンポーネントなどディスプレイアプリケーションに使用されるが、本願発明はこれらの使用に限定されない。
【0056】
図1は、基板1,基板に隣接するアノード2、アノードに隣接するオープションの正孔注入層3、発光層4、発光層に隣接するオープションの電子輸送層5およびカソード6を含む、有機発光デバイスを概略的に示している。これらの層のそれぞれは、それ自身、同じ組成と機能を持つ材料の複合層を有し得る。機能層もまた結合され得る。例えば、発光層は、電子輸送特性を示すように適合され得る。オープションの修正された層(optional modifying layers)は、本願発明の範囲から離れることなく、機能層1〜6のいずれか2つの間に配置され得る。たとえば、緩衝層は電極と隣接の電荷輸送層の間に配置され、漏れ電流を低減することができる。
【0057】
本願発明の有機発光デバイスは、0.1〜100V、好ましくは1〜15Vの間の駆動電圧をもち、アノード/正孔注入層界面で、約0.01〜約1000mA/cmの範囲で、電流密度を生成し得る。
【0058】
基板1に対する適切な材料はガラス、石英などおよびポリマー(限定なしに、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリサルフォンを含む)を含む。基板の厚さは臨界点がなく、デバイスの構造の要求に依存して、例えば、約25〜1000μm以上に及ぶことができる。基板は好ましくは透光性である。
【0059】
基板に隣接するアノードは、金属、合金、電気伝導性の化合物またはそれらの混合物から構成され、好ましくは約4.0eVと同じ又はそれより大きい仕事関数を有する。アノードの特別な例は、インジウムスズ酸化物(ITO)、酸化スズ、酸化亜鉛、金、白金、電気伝導性カーボン、およびポリアニリン、ポリピロールなどの共役ポリマーなどのような正孔注入電極を含む。アノードとカソードのうちの少なくとも1つは、機能性有機発光デバイスを作るために透光性でなければならない。ITOは、可視光に対する良好な透光性を有するので、好ましい。アノードの厚さは、約10nm〜1μm以上の範囲である得る。アノードは、スパッタリングあるいは公知の薄膜堆積方法、好ましくは高真空下の熱蒸発堆積によって堆積され得る。
【0060】
銅フタロシアニン(CuPc)のような相対的に薄い修正層(図示しない)は、アノードから公知のように電荷が結合して励起子を形成する領域まで正孔輸送を改良するために使用される。
【0061】
10〜1000Å以上の範囲の厚さをもつ正孔輸送層3は、アノード上または修正層上に直接堆積される。よく知られた正孔輸送材料は、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)(1,1’−ビフェニル)4,4’−ジアミン(TPD)、N,N,N’,N’−テトラキス(4−メチルフェニル)(1,1’−ビフェニル)4,4’−ジアミン(TTB)、およびN,N’−ビス(1−ナフチル)−N、N’−ジフェニル−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン(NPB)を含み、これらは広く現在の有機発光デバイスの研究で使用されている。しかしながら、本願発明はこれらの材料の使用によって限定されない。
【0062】
本願発明の有機発光デバイスで使用する適切な発光材料(luminescent material)は、この目的のために有用であるとしてこれまで技術的に記載された材料を含み、B.R.Hsieh編集の「有機発光材料とデバイス」Mcromolecular Symposia,vol.125,pp.1-48(January,1998)およびここで参考文献として組み込まれる米国特許第5,294,869号において記載された材料を限定なしに含む。しかしながら、本願発明はこれらの材料の使用に限定されない。発光層(luminescent layer)4 は、10〜1000Å以上の範囲の厚さを持ち得る。
【0063】
10〜1000Å以上の範囲の厚さを持つ電子輸送層5は技術的に知られた多くの適切な材料から選択され得る。最も知られた電子輸送材料は、AlQおよびBeBqのような金属錯体、PBDのような1,3,4−オキサゾール誘導体(OXD)および1,2,4−トリアゾール(TAZ)である。しかしながら、本願発明はこれらの材料の使用に限定されない。
【0064】
薄膜発光デバイスに対し、蒸発された金属膜は、一般に電子注入コンタクト6として使用されるが、これは、主に、この膜が大きな領域上の制御された環境中で適用され得るという理由からである。少量の銀で合金化され蒸発されたMgは、優れた選択であり、低い仕事関数を有する。Al,CaおよびLi−Al合金もまた使用される。
【0065】
有機発光デバイスの製造で有用と知られている、電子注入、電子輸送、電子輸送/発光、正孔輸送/発光、電荷遮断、あるいは緩衝層は、どのようなものでも本願発明の有機発光デバイスで使用され得る。
【0066】
先に記載した範囲内にあるアズレン化合物の多くは、550〜1200nmの波長範囲を吸収する。発光放出を観察する場合、発光は、600〜1200nmの波長範囲の傾向がある。
【0067】
先に記載した範囲内にある化合物は、ポリマーに比較して「小さい分子」であるので、高真空下(10−5〜10−7torr)で熱的に蒸発され、薄膜として堆積され得る。次に有機発光デバイスの製造の例を例示する。
【0068】
例1
インジウムスズ酸化物(ITO)アノード材料は、ガラス基板上にパターン化され、正孔輸送能力を持つTPDの膜は、アノード上に真空蒸着され、結合したアノードと正孔輸送層が10〜50nmの範囲の厚さを持つ。アズレン基化合物は、選択され、同様に熱的に蒸発され、20〜60nmの範囲の厚さを持つ層を形成する。AlQ電子輸送層は、10〜30nmの厚さで真空蒸着され、続いて、非常に薄い(0.5〜1.5nm)LiF接触修正層が続き、最後に100〜300nm範囲の厚さを持つAlカソードが真空蒸着される。順バイアスの印可するとその後で、赤い発光が観察される。
【0069】
例2
発光層が、デバイス効率を改良するためにアズレン基化合物の約0.5〜約2重量%でドープしたAlQホスト化合物を有するということを除いては、例1に記載された有機発光デバイスを作る手順が繰り返される。
【0070】
先の例は例示目的であり、本願発明の限界は考慮されず、それは、別紙の特許請求の範囲によって画定される。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本願発明に基づく有機発光デバイスの概略的な断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アノードと、
カソードと、
前記アノードと前記カソードとの間に配置された少なくとも1つの機能層と、
を有し、
前記機能層は、次式の構造を有するアズレン基化合物、
【化1】

ここで、各R〜Rは、独立に、水素、ヒドロキシ、アミノ、メルカプト、カルボキシル、ニトロ、シアノ、アジド(azido)、またはハロゲン(halo)のグループ、あるいは、アルキル、アルケニル(alkenyl)、アルキニル(alkynyl)、アルコキシ(alkoxy)、アルケニルオキシ(alkenyloxy)、アルキニルオキシ(alkynyloxy)、芳香族、または複素環式芳香族のグループであり、前記グループのいずれも独立に置換または無置換である、
Arは、少なくとも1つの芳香族または複素環式芳香族のグループからなるn価の結合体であり、前記グループは置換または無置換である、
を有することを特徴とする有機発光デバイス。
【請求項2】
アズレン基化合物を有する前記機能層は、発光層であることを特徴とする請求項1に記載の有機発光デバイス。
【請求項3】
Arは、共役縮合環構造を有することを特徴とする請求項2に記載の有機発光デバイス。
【請求項4】
前記アズレン基化合物は、(VI)〜(IX)からなるグループ、
【化2】

ここで、各R〜RおよびR1’〜R7’は、独立に、水素またはヒドロキシのグループ、または、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、芳香族、または複素環式芳香族のグループであり、前記グループのいずれも独立に置換または無置換である、
から選択されることを特徴とする請求項3に記載の有機発光デバイス。
【請求項5】
前記化学構造中のArはフルオレン部位を含むことを特徴とする請求項2に記載の有機発光デバイス。
【請求項6】
前記アズレン基化合物は、(XII)〜(XIII)からなるグループ、
【化3】

ここで、各R’およびR”は、独立に、水素またはヒドロキシのグループ、または、アルキル、アルコキシ、または芳香族のグループであり、前記グループは独立に置換または無置換である、
から選択されることを特徴とする請求項5に記載の有機発光デバイス。
【請求項7】
アズレン基化合物を含む前記機能層は、正孔輸送層であることを特徴とする請求項1に記載の有機発光デバイス。
【請求項8】
前記アズレン基化合物が、次の構造、
【化4】

ここで、各R1’〜R7’およびR1”〜R7”は独立に、水素またはヒドロキシのグループ、またはアルキル、アルコキシ、芳香族または複素環式芳香族のグループであり、前記グループのいずれも独立に置換または無置換である、
を有することを特徴とする請求項1に記載の有機発光デバイス。
【請求項9】
アズレン基化合物を含む前記機能層が、電子輸送層であることを特徴とする請求項1に記載の有機発光デバイス。
【請求項10】
前記アズレン基化合物が、次の構造、
【化5】

ここで、各R〜R、R1’〜R7’およびR1”〜R”は、独立に、水素またはヒドロキシのグループ、またはアルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、芳香族または複素環式芳香族のグループであり、前記グループのいずれも独立に置換または無置換である、
を有することを特徴とする請求項9に記載の有機発光デバイス。
【請求項11】
前記機能層は、機能的なゲスト化合物とアズレン基ホスト化合物とを含むゲストーホスト系であることを特徴とする請求項9に記載の有機発光デバイス。
【請求項12】
前記Arは一個のベンゼン環であり、nは1〜6であることを特徴とする請求項1に記載の有機発光デバイス。
【請求項13】
前記Arは一個のチオフェン環であり、nは1〜4であることを特徴とする請求項1に記載の有機発光デバイス。
【請求項14】
前記Arはテトラフェニルメタンまたはテトラフェニルシランであることを特徴とする請求項1に記載の有機発光デバイス。
【請求項15】
アノードと、カソードと、前記アノードと前記カソードとの間に配置された少なくとも1つの有機機能層とを有する有機発光デバイスの効率を改善する方法であって、
前記有機発光デバイスの少なくとも1つの有機機能層を、ドープされていない有機発光デバイスと比較して前記有機発光デバイスの効率を改善するために効果的な量のアズレン、または置換または無置換であるアズレン部位をもつ化合物でドープする工程を有することを特徴とする方法。
【請求項16】
前記アズレンまたはアズレン部位をもつ化合物は、ドープされた前記有機機能層中に約0.5〜2.0重量%の範囲で存在することを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記アズレンまたはアズレン部位をもつ化合物は、発光または電子輸送能力をもつ層中にドープされることを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記アズレン部位をもつ化合物は、有機金属錯体を含む層中にドープされることを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記アズレン部位をもつ化合物は、AlQを含む層中にドープされることを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項20】
前記アズレン部位をもつ化合物は、次式の構造を有するアズレン基化合物、
【化6】

ここで、各R〜Rは、独立に、水素、ヒドロキシ、アミノ、メルカプト、カルボキシル、ニトロ、シアノ、アジドまたはハロゲンのグループ、あるいは、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アルケニルオキシ、アルキニルオキシ、芳香族または複素環式芳香族のグループであり、前記グループのいずれも独立に置換または無置換である、
Arは少なくとも1つの芳香族または複素環式芳香族のグループからなるn価の結合体であり、前記グループは置換または無置換である、
を有することを特徴とする請求項15に記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2006−506824(P2006−506824A)
【公表日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−555706(P2004−555706)
【出願日】平成15年11月26日(2003.11.26)
【国際出願番号】PCT/US2003/037602
【国際公開番号】WO2004/048083
【国際公開日】平成16年6月10日(2004.6.10)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】