説明

有機発光物質及びデバイス

有機発光デバイスが提供される。このデバイスは、アノード、カソード、及びアノードとカソードの間に配置された発光層を含む。前記発光層は、構造(I)(Mは40より大きな原子量を有する金属、mは少なくとも1、nは少なくとも0、R’’はH又はいずれかの置換基、Xは補助配位子、及びAはアリール及びヘテロアリール環からなる群から選択され、そしてBはアリール環である。)を有する物質を含む。上記物質の光活性配位子を含む物質もまた提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は有機発光デバイス(OLED)、及びより具体的にはそのようなデバイスに用いられる有機物質(有機材料)に関する。
【背景技術】
【0002】
有機材料を利用する光電子(オプトエレクトリック)デバイスは、多くの理由のためにますます魅力あるものになってきている。そのようなデバイスを作るために用いられる多くの材料はかなり安価であり、そのため有機光電子デバイスは無機デバイスよりもコスト優位性についての潜在力を有する。加えて、有機材料の生来の特性、例えばそれらの柔軟性は有機材料を柔軟な基材上への加工などの特定用途に非常に適したものにしている。有機光電子デバイスの例は、有機発光デバイス(OLED)、有機光トランジスター、有機光電池セル、及び有機光センサーを含む。OLEDについては、有機材料は従来材料よりも性能の優位性を有することができる。例えば、有機発光層が発光する波長は、一般に適当なドーパントで容易に調整されうる。
【0003】
本明細書で用いるように、「有機」の語は、光電子デバイスを製造するために用いることができる高分子物質並びに小分子有機物質を含む。「小分子(スモールモレキュール)」は、高分子でない全ての有機物質をいい、「小分子」は、実際は非常に大きいこともできる。小分子は、いくつかの状況においては繰り返し単位を含むこともできる。例えば、置換基として長鎖アルキル基を用いることは、「小分子」の種類からその分子を除外することにはならない。小分子はまた、例えば、高分子骨格上の側鎖(ペンダント基)又は骨格の一部として、高分子中に組み込まれることもできる。小分子はまた、デンドリマーの中心基としての役割も果たすことができ、デンドリマーは中心基の上に構築された一連の化学的外殻構造からなる。デンドリマーの中心基は、蛍光又は燐光小分子発光体であることができる。
【0004】
OLEDは、デバイスを横切って電圧が印加された場合に発光する有機薄膜を用いる。OLEDは、フラットパネルディスプレイ、イルミネーション、及びバックライトなどの用途に使用するためのますます興味ある技術になっている。様々なOLED材料及び構成が、米国特許第5,844,363号、同6,303,238号、及び同5,707,745号明細書に記載されており、それら全てを本願に援用する。
【0005】
OLEDデバイスは通常(しかし常にではない)、電極の少なくとも1つを通して発光することが意図されており、そして1以上の透明電極が有機光電子デバイスにおいて有用でありえる。例えば、インジウム錫オキシド(ITO)などの透明電極材料は、ボトム電極として使用されうる。米国特許第5,703,436号及び同5,707,745号明細書(これら全てを本願に援用する)に開示されているような、透明なトップ電極もまた使用されうる。ボトム電極を通してのみ発光することを意図されたデバイスにとっては、トップ電極は透明である必要はなく、そして高い電気伝導度を有する厚い且つ反射性の金属層から構成されることができる。同様に、トップ電極を通してのみ発光することを意図されたデバイスにとっては、ボトム電極は不透明及び/又は反射性であることができる。電極が透明である必要がない場合には、より厚い層を用いることはより高い導電性を与え、そして反射性電極を用いることは、透明電極に向けて光を反射することによって、他の電極を通して発光する光の量を増加させうる。完全に透明なデバイスもまた製造することができ、この場合双方の電極が透明である。側方発光OLEDもまた製造されることができ、そして、そのようなデバイスにおいて1つ又は両方の電極が不透明又は反射性であることができる。
【0006】
ここで使用するように、「トップ」は基材から最も離れていることを意味し、「ボトム」は基材に最も近いことを意味する。例えば、2つの電極を有するデバイスに対して、ボトム電極は基材に最も近い電極であり、そして通常は最初に作られる電極である。ボトム電極は2つの表面、基材に最も近いボトム面、及び基材からより遠くのトップ面、を有する。第一の層が第二の層の「上に配置される」として説明される場合は、第一の層は基材からより離れて配置される。第一の層が第二の層と「物理的に接触して」いると明示されていない限り、第一及び第二の層の間に他の層があることができる。例えば、間に様々な有機層がある場合であっても、カソードはアノードの「上に配置される」として説明されうる。
【0007】
燐光発光材料に対する1つの用途は、フルカラーディスプレイである。そのようなディスプレイのための工業規格は、飽和色といわれる特定色を発するように適合された画素(ピクセル)を要求する。特に、これらの規格は飽和赤、飽和緑、飽和青の画素を要求する。色はCIE座標を用いて測定されることができ、これは当技術分野で周知である。CIE座標はH. Zollinger, “Color Chemistry” VCH Publishers, 1991 及び、H. J. A. Dartnall, J. K. Bowmaker, 及びJ. D. Mollon, Proc. Roy. Soc. B(London), 1983, 220, 115-130に記載されており、これらを本願に援用する。
【0008】
燐光発光材料の別の応用はフルカラー又は別のディスプレイであり、それは電池によって駆動されることが意図されており、例えば、携帯電話又はデジタルカメラのディスプレイである。そのような用途に対しては、電力効率が特に重要なパラメータであるが、なぜなら効率的な発光は著しくバッテリー寿命を延ばすことができ、及び/又は小さな電池の使用を可能にするからである。照明は別の用途であり、ここでは効率が特に重要であるが、なぜなら照明用途に使用される莫大な量の電力のためである。効率も多くの他の用途にとって同様に重要である。さらに、高効率はより長い寿命をもたらすことができ、なぜなら非効率的なデバイスは、通常、発光するのに代えて熱に電力を消費し、そして熱はデバイスの寿命に不利に影響しうるからである。
【特許文献1】米国特許第5,844,363号明細書
【特許文献2】米国特許第6,303,238号明細書
【特許文献3】米国特許第5,707,745号明細書
【特許文献4】米国特許第5,703,436号明細書
【特許文献5】米国特許第4,769,292号明細書
【非特許文献1】Baldoら、Nature, Vol. 395, 151-154頁, 1998年
【非特許文献2】Baldoら、Appl. Phys. Lett., vol. 75, No.3, 4-6頁、1999年
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0009】
〔本発明のまとめ〕
有機発光デバイスを提供する。このデバイスは、アノード、カソード、及び前記アノード及び前記カソードの間に配置された発光層を含む。この発光層は以下の構造を有する物質を含む:
【0010】
【化1】

【0011】
上記式中、Mは40より大きな原子量を有する金属であり、mは少なくとも1であり、nは少なくとも0であり、R’’はH又は任意の置換基であり、Xは補助配位子であり、かつ、Aはアリール及びヘテロアリール環からなる群から選択され、かつ、Bはアリール環である。上記物質の、光活性配位子を含む物質もまた提供される。
【0012】
〔詳細な説明〕
一般に、OLEDは、アノード及びカソードに電気的に接続され且つこれらの間に配置された少なくとも1つの有機層を含む。電流が流された場合、(場合により2以上の)有機層中にアノードはホールを注入し且つカソードは電子を注入する。この注入されたホール及び電子はそれぞれ逆に帯電した電極に向かって移動する。電子及びホールが同じ分子上に局在化した場合、励起エネルギー状態を有する局在化した電子−ホール対である「励起子」が形成される。この励起子が発光機構を通じて緩和するときに、光が放射される。いくつかの場合、この励起子はエキシマー(excimer)又はエキシプレックス(exciplex)上に局在化されうる。無放射機構、例えば熱的緩和もまた生じうるが、通常は好ましくないと考えられる。
【0013】
最初のOLEDは、例えば、米国特許第4,769,292号明細書(その全体を本願に援用する。)に開示されたように、一重項状態からの光(「蛍光」)を発する発光分子を用いた。蛍光発光は通常、10ナノ秒未満の概算時間で起こる。
【0014】
より最近では、三重項状態からの光(「燐光」)を発する発光物質を有するOLEDが実証されている。Baldoら、「有機エレクトロルミネッセンスデバイスからの高効率燐光発光」, Nature, Vol. 395, 151-154, 1998;(「Baldo-I」)、及びBaldoら、「エレクトロフォスフォレッセンスに基づく非常に高効率の緑の有機発光デバイス」、Appl. Phys. Lett., vol. 75, No.3, 4-6 (1999)(「Baldo-II」)、これら全体を本願に援用する。燐光は、その遷移がスピン状態の変化を必要とするために、「禁制」遷移ともいわれ、そして量子力学はそのような遷移が好まれないことを示している。結果として、燐光は通常少なくとも10ナノ秒を超える概算時間、そして典型的には100ナノ秒より長い概算時間で起きる。燐光の自然な発光寿命が長すぎる場合、三重項は無放射機構によって緩和することができ、そのためいかなる光も放射されない。有機燐光はまた、しばしば非常に低温で、非共有電子対をもつヘテロ原子を含む分子内において観測される。2,2’−ビピリジンはそのような分子である。無放射減衰機構は典型的に温度依存性であり、すなわち、液体窒素温度で燐光を示す物質が室温で燐光を示さないこともある。しかし、Baldoによって示されたように、この問題は、室温で燐光を発する燐光化合物を選択することによって解決されうる。
【0015】
一般に、OLED中の励起子は、約3:1の割合、すなわち、約75%の三重項及び25%の一重項、で作り出されると考えられている。Adachiらの「有機発光デバイスにおけるほぼ100%の内部燐光効率」、J. Appl. Phys., 90, 5048 (2001)を参照されたい。この全体を本願に援用する。多くの場合に、一重項励起子は「項間交差」によって容易にそのエネルギーを三重項励起状態に移す。結果として、燐光OLEDについては100%の内部量子効率が理論的には可能である。蛍光デバイスにおいては、三重項励起子のエネルギーが通常はデバイスを加熱する無放射減衰過程で失われ、非常に低い内部量子効率しか得られない。三重項励起状態から発光する燐光物質を利用するOLEDは、例えば、米国特許第6,303,238号に開示されており、その全体を本願に援用する。
【0016】
燐光は、三重項励起状態から中間の非三重項状態への遷移によって進み、中間の非三重項状態から発光減衰が起こる。例えば、ランタノイド元素に配位した有機分子は、しばしば、そのランタノイド金属上に局在した励起状態から燐光を発する。しかし、そのような物質は、三重項励起状態から直接に燐光を発するのではなく、その代わりにそのランタノイド金属イオンに集中する原子の励起状態から発光する。ユーロピウム・ジケトネート錯体は、これらのタイプの種類の1つのグループの例である。
【0017】
三重項からの燐光は、好ましくは結合することを通して、有機分子を高い原子番号の原子に非常に近接してとどめておくことによって、蛍光よりも強められうる。この現象は、重原子効果とよばれ、スピン−軌道カップリングとして知られる機構によって作り出される。そのような燐光遷移は、トリス(2−フェニルピリジン)イリジウム(III)などの有機金属分子の励起した金属−配位子電荷移動(MLCT)状態から観測されうる。
【0018】
図1は、有機発光デバイス100を示す。この図は必ずしも一定の比率で拡大されたものではない。デバイス100は基材110、アノード115、ホール注入層120、ホール輸送層125、電子阻止層130、発光層135、ホール阻止層140、電子輸送層145、電子注入層150、保護層155、及びカソード160を含むことができる。カソード160は、第一の導電層162及び第二の導電層164を有する複合カソードである。デバイス100は説明した層を順番に堆積させることによって作ることができる。
【0019】
基材110は、所望の構造特性を提供できる任意の適した基材であることができる。基材110は、柔軟又は硬いことが可能である。基材110は、透明、半透明、又は不透明であることができる。プラスチック及びガラスは、好ましい硬い基材の例である。プラスチック及び金属箔は、好ましい柔軟な基材材料の例である。基材110は、回路の加工を容易にするために半導体材料であることができる。例えば、基材110は、基材上に続いて堆積されたOLEDを制御することができる回路がその上に作られたシリコンウエハーであることができる。その他の基材が使用できる。基材110の材料及び厚さは、所望する構造及び光学特性が得られるように選択できる。
【0020】
アノード115は、ホールを有機層に輸送するために充分に導電性である任意の適したアノードであることができる。アノード115の材料は、好ましくは、約4eVより大きな仕事関数を有する(高仕事関数材料)。好ましいアノード材料は、導電性金属酸化物、例えば、インジウム錫オキシド(ITO)及びインジウム亜鉛オキシド(IZO)、アルミニウム亜鉛オキシド(AlZnO)、並びに金属、であることができる。アノード115(及び基材110)は、ボトム発光デバイスを作るために充分透明であることができる。好ましい透明基材及びアノードの組み合わせは、購入可能な、ITO(アノード)が堆積されたガラス又はプラスチック(基材)である。柔軟かつ透明な基材−アノード組み合わせ物は、米国特許第5,844,363号に開示されており、その全体を本願に援用する。アノード115は不透明及び/又は反射性であることができる。反射性アノード115は、デバイスのトップからの発光量を増加するために、いくつかのトップ発光デバイスにとって好ましい。アノード115の材料及び厚さは、所望する導電性及び光学特性が得られるように選択できる。アノード115が透明な場合は、具体的材料について厚さの範囲があり、それは所望する導電性を備えるために充分に厚く、さらに所望する程度の透明性を備えるために充分薄い範囲である。その他のアノード材料及び構成が使用されうる。
【0021】
ホール輸送層125は、ホールを輸送することができる物質を含む。ホール輸送層130は、真性(アンドープ)又はドープされていることができる。ドーピングは導電性を高めるために用いることができる。α−NPD及びTPDは、真性ホール輸送層の例である。p−ドープされたホール輸送層の例は、F−TCNQでドープされたm−MTDATA(m−MTDATAとF−TCNQのモル比は50:1)であり、これはForrestらの米国特許出願第10/173,682号に開示されているとおりであり、その全体を本願に援用する。その他のホール輸送層が使用できる。
【0022】
発光層135は、電流をアノード115及びカソード160の間に通じたときに、発光可能な有機物質を含むことができる。好ましくは、発光層135は、燐光発光物質を含むが、ただし蛍光発光物質も使用できる。燐光物質が好ましく、なぜならそのような物質に伴う、より高い発光効率(ルミネッセント効率)のためである。発光層135はまた、電子及び/又はホールを輸送することができるホスト物質であって、電子、ホール、及び/又は励起子を捕捉できる発光物質でドープされているものであり、それにより励起子は発光機構を通って発光物質から緩和する。発光層135は、輸送及び発光特性が結合された単一材料を含むことができる。発光物質がドーパントか又は主要成分であるかに関わらず、発光層135はその他の物質、例えば発光物質の発光を調整するドーパント類を含むことができる。発光層135は、組み合わせて、所望する光スペクトルを放射することができる複数の発光物質を含むことができる。燐光発光物質の例は、Ir(ppy)を含む。蛍光発光物質の例は、DCM及びDMQAを含む。ホスト物質の例は、Alq、CBP、及びmCP、を含む。発光及びホスト物質の例は、Thompsonらの米国特許第6,303,238号に開示されており、その全体を本願に援用する。発光物質は、多くのやり方で発光層135に含有されうる。例えば、発光性小分子は、ポリマー又はデンドリマー分子中に組み込まれることができる。その他の発光層の物質及び構成が用いられうる。
【0023】
電子輸送層140は電子を輸送可能な物質を含むことができる。電子輸送層140は、真性(アンドープ)又はドープされていることができる。ドーピングは導電性を高めるために用いられうる。Alqは真性の電子輸送層の例である。n−ドープされた電子輸送層の例は、1:1のモル比でLiでドープされたBPhenであり、Forrestらの米国特許出願第10/173,682号に開示されており、その全体を本願に援用する。その他の電子輸送層が使用されうる。
【0024】
カソード160は、電子を通し且つ電子をデバイス100の有機層中に注入することができるように、当技術分野で公知の任意の適した材料又は材料の組み合わせであることができる。カソード160は透明又は不透明であることができ、そして反射性であることができる。金属及び金属酸化物は、適したカソード材料の例である。カソード160は単一層であることができ、又は複合構造を有することができる。図1は薄い金属層162及び厚い導電性金属酸化物層164を有する複合カソード160を示している。複合カソードにおいて、厚い層164のための好ましい材料は、ITO、IZO、及び当技術分野で公知のその他の材料、を含む。その全体を本願に援用する米国特許第5,703,436号及び同5,707,745号は、上にかぶせた透明な、電気伝導性の、スパッター堆積されたITO層をもつ、Mg:Agなどの金属の薄層を有する複合カソードを含むカソードの例を開示している。下に配置された有機層と接触しているカソード160の部分は、それが単一層カソード160、複合カソードの薄い金属層162、又はいずれかの他の部分であるかにかかわらず、約4eV未満の仕事関数を有する材料で作られていること(「低仕事関数材料」)が好ましい。その他のカソード材料及び構成が使用されうる。
【0025】
発光層を離れる荷電粒子(電子又はホール)及び/又は励起子の数を低減するために、阻止層(ブロッキング層)が用いられうる。電子がホール輸送層125の方向へ発光層135を離れることを阻止するために、発光層135とホール輸送層125の間に電子阻止層130を配置することができる。同様に、ホールが電子輸送層145の方向へ発光層135から離れることを阻止するために、発光層135及び電子輸送層145の間にホール阻止層140を配置することができる。阻止層はまた、励起子が発光層から外へ拡散することを阻止するために用いられることができる。阻止層の理論及び使用は、Forrestらの米国特許第6,097,147号明細書及び米国特許出願第10/173,682号中により詳細に記載されており、それら全体を本願に援用する。
【0026】
通常、注入層は、1つの層、例えば電極又は有機層から、隣接する有機層中に荷電粒子を注入することを改善できる材料からなる。注入層はまた、荷電輸送機能を行うことができる。デバイス100において、ホール注入層120は、アノード115からホール輸送層125内へのホールの注入を改善する任意の層であることができる。CuPcはITOアノード115、及びその他のアノード類からのホール注入層として用いられうる。デバイス100において、電子注入層150は、電子輸送層145内への電子の注入を改良する任意の層であることができる。LiF/Alは、隣接する層から電子輸送層内への電子注入層として使用されうる材料の例である。その他の材料又は材料の組み合わせが、注入層のために用いられうる。具体的なデバイスの構成に応じて、注入層はデバイス100に示された注入層と異なる位置に配置されうる。注入層のさらなる例は、Luらの米国特許出願第09/931,948号に提供されており、その全体を本願に援用する。
【0027】
保護層は、その後に続く加工工程の間、下にある層を保護するために用いられることができる。例えば、金属又は金属酸化物のトップ電極を作るために用いられる方法は、有機層を損傷するかもしれず、そのような損傷を低減又は排除するために保護層が使用されうる。デバイス100において、保護層155は、カソード160を作製する間、下の有機層への損傷を低減することができる。デバイス100の作動電圧を顕著に増加させないように、保護層が輸送するタイプの担体(キャリアー)に対する高いキャリアー移動度を保護層が有することが好ましい。CuPc、BCP、及び様々な金属フタロシアニン類が、保護層に用いられうる材料の例である。その他の材料又は材料の組み合わせが使用されうる。保護層155の厚さは、有機保護層160が堆積された後に生じる加工工程のために下の層にいかなる損傷もないように厚く、さらにデバイス100の作動電圧を顕著に増加させるほど厚くないことが好ましい。保護層155はその導電性を増加させるためにドープされていることができる。例えば、CuPc又はBCP保護層160は、Liでドープされていることができる。保護層のより詳細な説明は、Luらの米国特許出願第09/931,948号に発見することができ、その全体を本願に援用する。
【0028】
図2は、反転型OLED200を示す。このデバイスは、基材210、カソード215、発光層220、ホール輸送層225、及びアノード230を含む。デバイス200は、説明した層を順に堆積することによって作製されうる。最も一般的なOLED構成は、アノードの上に配置されたカソードを有し、且つデバイス200はアノード230の下に配置されたカソード215を有することから、デバイス200は「反転型」OLEDといわれる。デバイス100に関して説明したものと同様の材料が、デバイス200の対応する層において使用されうる。図2は、デバイス100の構造からどのようにいくつかの層が除外されうるかの1つの例を提供する。
【0029】
図1及び図2に示した単純な層構造は非制限的な例の目的で提供され、そして本発明の態様は、広く多様なその他の構造と関連して使用されうることが理解される。記載した特定の材料及び構造は、実質上、例示であり、そしてその他の材料及び構造が使用されうる。機能的OLEDは、さまざまな方法で説明されるさまざまな層を結合すること、又は、設計、性能、及びコスト要因を基にして、層を完全に削除することによって達成されうる。具体的に説明していないその他の層もまた含まれることができる。これらの具体的に説明したもの以外の材料が使用されうる。ここで提供した多くの例は、様々な層を単一材料を含むものとして説明したが、材料の組み合わせ、例えば、ホスト及びドーパントの混合物、又はより一般的な混合物、が使用されうることが理解される。さらに、層は様々な副層をもつことができる。ここで様々な層につけた名称は、厳密に制限することを目的とするものではない。例えば、デバイス200において、ホール輸送層225はホールを輸送し且つホールを発光層220に注入し、ホール輸送層又はホール注入層として説明されうる。1つの態様において、OLEDはカソード及びアノードの間に配置された「有機層」を有するものとして説明されうる。この有機層は、例えば、図1及び図2について、単一層を含むか、又はさらに説明したように異なる有機物質の複数層をさらに含むことができる。
【0030】
Friendらの米国特許第5,247,190号に開示された、ポリマー材料からなるOLED(その全体を本願に援用する。)などの、特に説明していない構造及び材料もまた使用することができる。さらなる例の目的で、単一の有機層を有するOLEDを使用することができる。例えば、Forrestらの米国特許第5,707,745号(その全体を本願に援用する。)に記載されているように、OLEDを積み重ねることもできる。OLEDの構造は、図1及び図2に示した単純な層構造から外れることができる。例えば、基材は、アウト・カップリング(out-coupling)を改善するための傾斜のある反射面、例えば、Forrestらの米国特許第6,091,195号中に記載されたメサ構造、及び/又はBulovicらの米国特許第5,834,893号に記載されたピット構造、を含むことができ、それらの全体を本願に援用する。
【0031】
様々な態様のいずれの層も、任意の適切な方法で堆積されることができる。有機層については、好ましい方法は、熱蒸発、例えば米国特許第6,013,982号及び同6,087,196号に記載されているインクジェット(それら全体を本願に援用する。)、例えばForrestらの米国特許第6,337,102号に記載されている有機気相堆積(OVPD)(それら全体を本願に援用する。)、及び、例えば米国特許出願第10/233,470号に記載されている有機気相ジェット堆積(OVJD)(その全体を本願に援用する。)、を含む。その他の適切な堆積方法には、スピンコーティング、及びその他の溶液を基礎とする方法が含まれる。その他の層については、好ましい方法には熱蒸発が含まれる。好ましいパターン形成方法には、マスクを通しての堆積、米国特許第6,294,398号及び同6,468,819号に記載されているような低温溶着(コールド・ウェルディング)(それらの全体を本願に援用する。)、及びインクジェット及びOVJDなどの堆積方法のいくつかと結合されたパターン形成方法、が含まれる。その他の方法もまた使用できる。堆積する材料は、具体的な堆積方法を適合性の材料にするために変性することができる。
【0032】
本発明の態様に従って作製されたデバイスは広範囲の消費財中に組み込まれることができ、それにはフラットパネルディスプレイ、コンピュータ・モニター、テレビ、広告板、室内又は屋外の照明及び/又は信号のための明かり、ヘッドアップディスプレイ、完全に透明なディスプレイ、柔軟なディスプレイ、レーザープリンタ、電話、携帯電話、個人用デジタル補助装置(PDA)、ラップトップコンピュータ、デジタルカメラ、ビデオカメラ、ビューファインダー、マイクロディスプレイ、自動車;広い面積の壁、劇場又はスタジアムのスクリーン;又は信号、が含まれる。本発明に従って作製されたデバイスを制御するために、様々な制御機構を使用することができ、それにはパッシブマトリクス及びアクティブマトリクスが含まれる。多くのデバイスは、人間にとって快適な温度範囲内、例えば10℃〜30℃、そしてさらに好ましくは室温(20〜25℃)における使用を目的とする。
【0033】
本明細書に記載した材料(物質)及び構造は、OLED以外のデバイスに応用することができる。例えば、有機太陽電池及び有機光センサーなどのその他の光電子デバイスが、上記材料(物質)及び構造を採用できる。より一般的に、有機トランジスタなどの有機デバイスが、上記材料(物質)及び構造を採用できる。
【0034】
フルカラーディスプレイのための工業規格は、飽和赤、飽和緑、及び飽和青の発光材料を要求している。特定の色、例えば高い飽和色、が得られるように、色座標の広い範囲にわたって調整することができる材料(物質)をもつことが望ましい。
【0035】
燐光発光物質は、ある程度、そのような材料で達成されうる高い効率のために興味がもたれる。そのような物質の例は、Ir(ppy)である:
【0036】
【化2】

【0037】
本発明のある態様においては、高度に調整可能な燐光発光物質が提供される。この物質は以下の構造を有する配位子を含むことができる:
【0038】
【化3】

【0039】
式2において、環A及び環Bは、任意のアリール又はヘテロアリール環であることができる。環Bはアリール環であることが好ましく、なぜなら、ヘテロアリール環Bの合成は困難な可能性があるからである。環A及び環Bは、5又は6員アリール環システムであることが好ましい。アリール環はまた、ヘテロアリール環よりも好ましく、なぜなら、A及びBがアリール環である場合、デバイスの安定性がより良好であると考えられるからである。環A及びBは、一つ又は複数のヘテロ原子を含むことができる。窒素が、適したヘテロ原子の例である。環A及びBは、ベンゼン環が縮合していることができ、そして置換基を有することができる。H又は任意の置換基が、環A及びB、並びにR’’上にあることができる。好ましい置換基には、アルキル、アルコキシ、アミノ、ハロゲン、カルボキシ、アリール、ヘテロアリール、アルケニル、及びアルキニルが含まれる。環A及びBは、同一の環システムから選択することも、異なることもできる。環A及びBは、同じ又は異なる置換基を含むことができる。R’’は、H又は任意の置換基でありうる。
【0040】
式2の配位子は、40より大きな原子量を有する金属Mに結合していることができる。好ましい金属には、Ir、Pt、Pd、Rh、Re、Ru、Os、Tl、Pb、Bi、In、Sn、Sb、Te、Au、及びAgが含まれる。さらに好ましくは、上記金属はPtである。最も好ましくは、上記金属はIrである。複数の配位子が、上記金属に結合されうる。1つの態様において、配位子は金属Mに以下のように結合する:
【0041】
【化4】

【0042】
環A及び環B、並びにR’’は、式2に関して記載したとおりである。
【0043】
「X」は、「補助配位子」ということができる。好ましい配位子には、全てのモノアニオン性配位子が含まれる。Xは1つ又は複数の位置で金属に配位することができる。例えば、Xは二座配位子であることができる。このX配位子は、「補助」といわれるが、なぜなら、それが、光活性特性に直接寄与するのではなく、物質の光活性特性を変性することができると考えられるからである。対比する目的で、左の配位子を「光活性」というが、なぜなら、それが材料の光活性特性に寄与すると考えられるからである。光活性及び補助の定義は、非制限的な理論を目的とする。
【0044】
「m」は、特定のタイプの光活性配位子の数であり、そして「n」は特定のタイプの補助配位子の数である。金属Mに応じて、特定の数の配位子が金属に結合することができる。一般に、上記配位子は二座であり、これはそれらが金属と2つの結合を形成することを意味するが、二座配位子が必要とされるものではない。例えば、2つの塩素は、二座の補助配位子に代わって、金属に結合することができる。「m」は少なくとも1であり、且つ、金属に結合できる配位子の最大数までの、0より大きないずれかの整数であることができる。「n」は0であることができ、且つ、「m」が少なくとも1であるという条件のもので、0より大きな整数であることができる。「m」+「n」は、Mに結合することができる配位子の最大数よりも小さいことができ、それにより図2に具体的に示したもの以外の配位子もまた、Mに結合しうる。これらの追加の配位子は、光活性又は補助であることができる。イリジウムについては、3つの二座配位子が結合でき、「m」は1、2、又は3であることができ、「n」は0、1、又は2であることができる。
【0045】
好ましい補助配位子には、アセチルアセトナート(acac)、ピコリナート(pic)、及びジピバロイルメタネート(t−ブチルacac)が含まれる。いくつかの好ましい補助配位子は、式4(pic)、式5(acac)、及び式6(t−ブチルacac)による以下の構造を有する。その他の補助配位子が使用できる。補助配位子のさらなる非制限的な例は、LamanskyらのPCT出願公開WO02/15645A1の89〜90頁にあり、それらを本願に援用する:
【0046】
【化5】

【0047】
好ましい態様において、nは0、且つ、mはその金属に結合されうる配位子の最大数である。例えば、Irについては、この好ましい態様においてmは3であり、そして構造は「トリス」構造ということができる。特に安定であると考えられることから、トリス構造は好ましい。トリス構造の安定性、R基によって与えられるこの安定性及び色調整が結合されて、特に安定な青色発光燐光物質がもたらされる。
【0048】
1つの態様において、m+nは、問題の金属に結合しうる二座配位子の合計数に等しい−例えば、Irについては3である。別な態様においては、m+nはその金属に結合しうる二座配位子の最大数未満であることができ、この場合は他の配位子−補助、光活性、又はその他−もまたその金属に結合できる。金属に結合した異なる光活性配位子がある場合、それぞれの光活性配位子が、式2に示される構造を有することが好ましい。
【0049】
1つの態様において、式3の物質は式7の構造を有する:
【0050】
【化6】

【0051】
Yは、C及びNからなる群から選択されうる。好ましくは、YはCであり、なぜなら、上及び下の環がヘテロアリール環であるよりもアリール環である場合に、式3に従う化合物を使用することが、より安定なデバイスをもたらすと考えられるからである。R2、R3、R4、R5、R’2、R’3、R’4、R’5、及びR’’は、それぞれ独立して、H及び任意の置換基からなる群から選択されうる。複数の置換基がある場合、R’’、R2、R3、R4、R5、R’2、R’3、R’4、及びR’5は、それとは別のR’’、R2、R3、R4、R5、R’2、R’3、R’4、及びR’5基と連結して、環を形成することができる。
【0052】
ここで説明した様々な態様は、例示のみの目的であり、そして本発明の範囲を制限することを意図していないことが理解される。例えば、本明細書中で説明した物質及び構造の多くは、本発明の精神から離れることなく、その他の物質及び構造で置換されることができる。なぜ本発明が機能するかについての様々な理論は、制限されることを意図したものではない。例えば、電荷移動に関する理論は、制限されることを目的としない。
【0053】
〔物質の定義〕
本明細書で用いるとおり、略語は以下の物質を示す。:
CBP: 4,4’−N,N’−ジカルバゾール−ビフェニル
m-MTDATA: 4,4’,4’’−トリス(3−メチルフェニルフェニルアミノ)トリフェニルアミン
Alq3: 8-トリス-ヒドロキシキノリンアルミニウム
BPhen: 4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン
n-BPhen: n-ドープしたBPhen(リチウムでドープ)
F4-TCNQ: テトラフルオロ−テトラシアノ−キノジメタン
p-MTDATA: p-ドープしたm-MTDATA(F4-TCNQでドープ)
Ir(ppy)3: トリス(2-フェニルピリジン)-イリジウム
Ir(ppz)3: トリス(1-フェニルピラゾロト,N,C(2’)イリジウム(III)
BCP: 2,9-ジメチル-4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン
TAZ: 3-フェニル-4-(1’-ナフチル)-5-フェニル-1,2,4-トリアゾール
CuPc: 銅フタロシアニン
ITO: インジウム錫オキサイド
NPD: ナフチル-フェニル-ジアミン
TPD: N,N’−ビス(3-メチルフェニル)-N,N’-ビス-(フェニル)-ベンジジン
BAlq: アルミニウム(III)ビス(2-メチル-8-キノリナト)4-フェニルフェノラート
mCP: 1,3-ジカルバゾール-ベンゼン
DCM: 4-(ジシアノメチレン)-6-(4-ジメチルアミノスチリル-2-メチル)-4H-ピラン
DMQA: N,N’-ジメチルキナクリドン
【0054】
〔実施例〕
本発明の特に代表的な態様を、どのようにそのような態様を作ることができるかを含めて、これから説明する。この具体的な方法、物質(材料)、条件、方法のパラメータ、装置、及びその他同様のものは、本発明の範囲を必ずしも制限しないことが理解される。
【0055】
一般に、ベンゾイミダゾール配位子の合成は、反応A及びBで表した以下の2段階に示されるように行うことができる。置換又は無置換の芳香族ジアミン類は、市販のものがあるか又は反応Aによって合成することができる。反応Aにおいて、式Iで表される置換又は無置換の2−クロロニトロベンゼン類は、窒素雰囲気下で還流させることによって、置換基を有するアニリン(置換アニリン)及びNaHCOなどの塩基とそのまま反応して式IIで表される化合物を与える。精製後の生成物は、多量の還元剤、すなわちヒドラジンを用い、そしてFeCl・6HOの添加によって、対応する芳香族ジアミンに還元し、IIIを得ることができる。
【0056】
【化7】

【0057】
置換又は無置換のベンゾイミダゾール配位子の合成は、反応Bに示したように、式IIIで表されるジアミンを用いて行うことができる。ジアミンIIIは、Synthesis 2000, 10, 1380-90に記載されたとおり反応式Bに示したように、次に置換又は無置換のベンズアルデヒドと反応し、式IVで表される置換ベンゾイミダゾール配位子(置換基を有するベンゾイミダゾール配位子)を得ることができる。
【0058】
【化8】

【0059】
反応Cにおいては、反応Bによって製造され且つ式IVによって表される上記ベンゾイミダゾール配位子を、溶媒(例えば2−メトキシエタノール又は2−エトキシエタノール及び水)の存在下に、還流条件で、様々な金属(例えば、イリジウム、白金)と反応させ、式Vで表されるジクロロ架橋ダイマーを製造することができる。この反応の完結時に形成される固体沈殿物を真空濾過法によって集め、必要な場合にはさらに精製する。
【0060】
【化9】

【0061】
反応Dにおいて、式VIで表されるジクロロ架橋ダイマーは、様々なモノアニオン性配位子(例えば、アセトンアセチル(acac)、ピコリン酸、4−ジメチルアミノピコリン酸(DMAPic)、及びモノアニオン性金属炭素配位子(例えば置換2−フェニルピリジン類などで、Xによって表される。)と反応させることができる。式VIIで表される、最終的に単離される生成物は、標準的な方法によって精製される。
【0062】
【化10】

【0063】
表1に列挙した物質は、上述した合成経路又は類似の経路を用いて、式7に基づいて製造した。
【0064】
【表1】

【0065】
製造した物質のそれぞれについて、R’3=R’5=Hである。補助配位子Xについて「tris(トリス)」の項目は、式7からの逸脱を示し、ここにはいかなる補助配位子Xもなく且つ3つの光活性配位子(m=3、n=0)がある。化合物28において、R’’及びR’2置換基は連結しており、すなわち、この2つの置換位置はエチレン基によって連結されている。PLは、nmで測定したフォトルミネッセンス極大波長である。Ptは2つの二座配位子とのみ配位できるのでPt化合物もまた式7から逸脱し、したがって、表1に記載したPt化合物は1つの補助配位子及び1つのみの光活性配位子(m=1、n=1)を有し、式7に示したような2つの光活性配位子をもたない。
【0066】
化合物1〜28のそれぞれについて、少量の化合物をジクロロメタンに溶解した。それぞれの溶液を光ポンプし、生じたフォトルミネッセンススペクトルを測定した。得られた極大(ピーク)波長、及びCIE座標を表1に集めた。
【0067】
好ましい態様である化合物1、は式8の構造を有する:
【0068】
【化11】

【0069】
化合物1、3、及び5、並びにIr(ppy)を組み込んだデバイスを製造し、特性評価した。全てのサンプルは、Colorado州LongmontのApplied Films社から入手した約130〜150nm厚さのITOアノードで被覆されたガラス基材上に製作した。薄膜は1×10−6Torr未満の圧力において熱蒸発によって堆積した。最初にCuPcを、アノード上にホール注入層として、0.3オングストローム/sの速度で10nmの厚さまで堆積させた。次に、NPDを、ホール輸送層として、1.5オングストローム/sの速度で30nmの厚さまで堆積させた。次に、発光層を、様々な源からの同時蒸発によって堆積させた。それぞれのデバイスは、特性評価される化合物で6質量%ドープされたホスト材料としてCBPを有する発光層をもっていた。ドーパントとして、化合物1、3、及び5、並びにIr(ppy)を有するデバイスを作製した。発光層のCBPは、1.6オングストローム/sの速度で、(6%ドーピングで)、30nmの厚さまで堆積させた。次に、発光層の上に、BAlqをホール阻止層として、1.0オングストローム/sの速度で10nmの厚さまで堆積させた。次に、このホール阻止層の上に電子輸送層としてAlqを、1.0オングストローム/sの速度で40nmの厚さまで堆積させた。次に、この電子輸送層の上に、フッ化リチウム(LiF)を電子注入層として、0.5オングストローム/sの速度で0.5nmの厚さで堆積させた。最後に、アルミニウム(Al)のカソードを2オングストローム/sの速度で100nmの厚さで電子注入層の上に堆積させて、有機発光デバイスを完成させた。
【0070】
化合物1、3、及び5、並びにIr(ppy)を組み込んだデバイスを、様々な輝度において特性評価した。図3は、発光効率対輝度のグラフを示す。グラフ310、320、330、及び340はそれぞれ、化合物1、化合物3、化合物5、及びIr(ppy)でドープしたデバイスに対するものである。図4は、外部量子効率対輝度を示す。グラフ410、420、430、及び440は、それぞれ化合物1、化合物3、化合物5、及びIr(ppy)でドープしたデバイスに対するものである。
【0071】
図3及び図4は、化合物1を用いて製作したデバイスが、Ir(ppy)で製作した類似のデバイスよりも高効率であることを示している。化合物3はIr(ppy)とほぼ同程度の効率であり、そして化合物5は低い効率のように思われるが、このデバイス構造はIr(ppy)のために最適化されている。異なる構造の使用は、Ir(ppy)と比較した化合物1、3、及び5の効率を改善することができる。Ir(ppy)のために最適化されたデバイス構造において、Ir(ppy)と比較した化合物1のより高い効率は、化合物1が効率の著しい改善を示していることを表す。図3は、化合物1を用いたデバイスが、500cd/mの輝度において、少なくとも20cd/A、そしてより好ましくは22.5cd/Aの発光効率を達成しうることを示しており、これは、試験したIr(ppy)デバイスに優っている。
【0072】
化合物5を6%の代わりに12%の濃度で発光層中にドープしたことを除いて、上述したようにデバイスを製作した。12%ドーピングしたデバイスは、6%のドーピングで化合物5を用いたデバイスよりも若干高い効率を示し、効率のいくらかの改善はデバイスの最適化によって得ることができることを示唆している。
【0073】
本発明を、具体的な例及び好ましい態様について説明したが、本発明はこれらの例及び態様に限定されないことが理解される。請求項に記載した本発明はしたがって、ここに記載した特定の例及び好ましい態様からの変形、当業者に明らかであるもの、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】図1は、別個の電子輸送層、ホール輸送層、及び発光層、並びにその他の層を有する有機発光デバイスを示す。
【図2】図2は、別個の電子輸送層をもたない反転型有機発光デバイスを示す。
【図3】図3は、様々なデバイスについての発光効率対輝度のグラフを示す。
【図4】図4は、様々なデバイスについての外部量子効率対輝度のグラフを示す。
【符号の説明】
【0075】
100…有機発光デバイス、110…基材、115…アノード、120…ホール注入層、125…ホール輸送層、130…電子阻止層、135…発光層、140…ホール阻止層、145…電子輸送層、150…電子注入層、155…保護層、160…カソード、162…第一の導電層、164…第二の導電層、200…反転型有機発光デバイス、210…基材、215…カソード、220…発光層、225…ホール輸送層、230…アノード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)アノード;
(b)カソード;及び
(c)以下の構造:
【化1】

(式中、Mは40より大きな原子量を有する金属であり、mは少なくとも1であり、nは少なくとも0であり、R’’はH又は任意の置換基を表し、Xは補助配位子であり、そしてAはアリール及びヘテロアリール環からなる群から選択され、そしてBはアリール環である。)を有する物質を含み、前記アノードと前記カソードの間に配置された発光層、
を含む有機発光デバイス。
【請求項2】
A及びBの少なくとも1つが置換基を有する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
Mが、Ir、Pt、Pd、Rh、Re、Ru、Os、Tl、Pb、Bi、In、Sn、Sb、Te、Au、及びAgからなる群から選択される、請求項1に記載のデバイス。
【請求項4】
MがIrである、請求項1に記載のデバイス。
【請求項5】
MがPtである、請求項1に記載のデバイス。
【請求項6】
nが0である、請求項1に記載のデバイス。
【請求項7】
前記発光物質がポリマー中に組み込まれている、請求項1に記載のデバイス。
【請求項8】
前記発光物質がデンドリマー中に組み込まれている、請求項1に記載のデバイス。
【請求項9】
前記発光層がさらにホスト物質を含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項10】
前記発光物質が前記ホスト物質中のドーパントである、請求項9に記載のデバイス。
【請求項11】
前記発光物質が本質的に前記発光物質そのものの薄膜からなる、請求項1に記載のデバイス。
【請求項12】
mが2、且つnが1である、請求項3に記載のデバイス。
【請求項13】
前記発光層が以下の構造:
【化2】

(式中、MはIrであり;
YはCであり;かつ、
R2、R3、R4、R5、R’2、R’3、R’4、およびR’5は、H及び任意の置換基からなる群から、それぞれ独立に選択される。)
を有する物質を含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項14】
R2、R3、R4、R5、R’2、R’3、R’4、及びR’5は、それぞれ水素原子であり、R’’は-CHであり、且つXがacacである、請求項13に記載のデバイス。
【請求項15】
R2、R3、R4、R5、R’2、R’3、R’4、及びR’5の少なくとも1つの基が、R2、R3、R4、R5、R’2、R’3、R’4、及びR’5の別の基と連結して環を形成している、請求項13に記載のデバイス。
【請求項16】
(a)アノード;
(b)カソード;及び
(c)以下の構造を有する配位子:
【化3】

(式中、前記配位子は40よりも大きな原子量を有する金属に結合しており、かつA及びBはヘテロ環であり、かつR’’はH及び任意の置換基から選択される。)をもつ物質を含み、前記アノードと前記カソードの間に配置された発光層、
を含む有機発光デバイス。
【請求項17】
(a)アノード;
(b)カソード;及び
(c)以下の構造:
【化4】

を有する物質を含み、前記アノードと前記カソードの間に配置された発光層、
を含む有機発光デバイス。
【請求項18】
前記デバイスが500cd/mの輝度において、少なくとも22.5cd/Aの発光効率を有する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項19】
以下の構造:
【化5】

(式中、Mは40より大きな原子量を有する金属であり、mは少なくとも1であり、nは少なくとも0であり、R’’はH又は任意の置換基であり、Xは補助配位子であり、そしてAはアリール及びヘテロアリール環からなる群から選択され、そしてBはアリール環である。)
を有する発光物質。
【請求項20】
A及びBの少なくとも1つが置換基を有する、請求項19に記載の発光物質。
【請求項21】
Mが、Ir、Pt、Pd、Rh、Re、Ru、Os、Tl、Pb、Bi、In、Sn、Sb、Te、Au、及びAgからなる群から選択される、請求項19に記載の発光物質。
【請求項22】
MがIrである、請求項19に記載の発光物質。
【請求項23】
MがPtである、請求項19に記載の発光物質。
【請求項24】
nが0である、請求項19に記載の発光物質。
【請求項25】
前記発光物質がポリマー中に組み込まれている、請求項19に記載の発光物質。
【請求項26】
前記発光物質がデンドリマー中に組み込まれている、請求項19に記載の発光物質。
【請求項27】
前記発光層がホスト物質をさらに含む、請求項19に記載の発光物質。
【請求項28】
前記発光物質が前記ホスト物質中のドーパントである、請求項27に記載の発光物質。
【請求項29】
前記発光物質が本質的に前記発光物質そのものの薄膜からなる、請求項19に記載の発光材料。
【請求項30】
mが2であり、且つnが1である、請求項21に記載の発光物質。
【請求項31】
前記発光層が以下の構造:
【化6】

(式中、MはIrであり;
YはCであり;そして、
R2、R3、R4、R5、R’2、R’3、R’4、及びR’5は、水素原子及び任意の置換基からなる群からそれぞれ独立に選択される。)
を有する物質を含む、請求項19に記載の発光物質。
【請求項32】
R2、R3、R4、R5、R’2、R’3、R’4、及びR’5はそれぞれ水素原子であり、R’’は-CHであり、且つXはacacである、請求項31に記載の発光物質。
【請求項33】
R2、R3、R4、R5、R’2、R’3、R’4、及びR’5の基の少なくとも1つが、R2、R3、R4、R5、R’2、R’3、R’4、及びR’5の別の基と連結して環を形成している、請求項31に記載の発光物質。
【請求項34】
以下の構造をもつ配位子:
【化7】

(ここで、前記配位子は40より大きな原子量を有する金属に結合しており、かつA及びBはヘテロ環であり、かつR’’はH及び任意の置換基からなる群から選択される。)
を有する発光物質。
【請求項35】
以下の構造:
【化8】

を有する発光物質。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2006−505956(P2006−505956A)
【公表日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−551868(P2004−551868)
【出願日】平成15年11月7日(2003.11.7)
【国際出願番号】PCT/US2003/035535
【国際公開番号】WO2004/045002
【国際公開日】平成16年5月27日(2004.5.27)
【出願人】(503055897)ユニバーサル ディスプレイ コーポレイション (61)
【出願人】(502023332)ザ ユニバーシティ オブ サザン カリフォルニア (20)
【Fターム(参考)】