説明

有機発光素子

【課題】有機発光素子を提供する。
【解決手段】第1電極と、第2電極と、キャリア輸送層及び発光層を含み、第1電極及び第2電極間に介在された有機膜と、を具備した有機発光素子であり、該発光層及び該キャリア輸送層に存在する材料が同じである有機発光素子である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機発光素子に係り、さらに詳細には、第1電極と、第2電極と、該第1電極及び第2電極間に介在された有機膜として、キャリア輸送層及び発光層と、を含む有機発光素子であり、該発光層及び前記キャリア輸送層に存在する材料が同じである有機発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
有機発光素子(organic light−emitting diode)は、ディスプレイや照明への応用の観点から、活発に研究されている開発対象である。有機発光素子は、カソードから注入された電子と、アノードから注入された正孔とが発光層で再結合して発光する注入型発光素子である。従って、素子構造は、注入された電子と正孔とが再結合しやすい構造を有する。すなわち、例えば、アノード上に正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層、カソードが積層される構造を有し、各層の機能は分離されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の一側面は、発光効率が向上し、かつ駆動電圧が低い有機発光素子を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の一側面によって、第1電極と、第2電極と、前記第1電極及び第2電極間に介在された有機膜として、キャリア輸送層及び発光層と、を含む有機発光素子であり、前記発光層に存在する比率が最も大きい材料と、前記発光層に隣接し、前記発光層と界面を有する前記キャリア輸送層に存在する比率が最も大きい材料とが同じである有機発光素子が提供される。
【0005】
本発明の一具現例によれば、前記同じ材料は、金属錯体でありうる。
【0006】
本発明の一具現例によれば、前記同じ材料は、金属錯体であり、中心金属元素は、ベリリウム、アルミニウムまたは亜鉛でありうる。
【0007】
本発明の一具現例によれば、前記同じ材料は、ビス(10−ベンゾキノレート)ベリリウムでありうる。
【0008】
本発明の一具現例によれば、前記同じ材料は、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(パラ−フェニルフェノラート)アルミニウム(III)(BAlq)でありうる。
【0009】
本発明の一具現例によれば、前記同じ材料は、ビス(2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾチアゾレート)亜鉛(ZnBTZ)でありうる。
【0010】
本発明の一具現例によれば、前記同じ材料は、ビス(2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾキサゾレート)亜鉛(ZnPBO)でありうる。
【0011】
本発明の一具現例によれば、前記素子は、第1電極/正孔注入層/発光層/第2電極、第1電極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/第2電極、第1電極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/第2電極、第1電極/正孔注入層/電荷発生層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/第2電極、または第1電極/正孔注入層/電荷発生層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/第2電極の構造を有することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一具現例による有機発光素子では、電子輸送層と発光層のホストとを同じ材料にすることによって、界面でのエネルギー障壁を低くすることができ、良好な特性の素子を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一具現例による有機発光素子の構造を示した図面である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0015】
本発明の一具現例による有機発光素子は、第1電極と、第2電極と、前記第1電極及び第2電極間に介在された有機膜として、キャリア輸送層及び発光層と、を含み、前記発光層に存在する比率が最も大きい材料と、前記発光層に隣接し、前記発光層と界面を有する前記キャリア輸送層に存在する比率が最も大きい材料とが同一である。
【0016】
有機発光素子の積層構造は、すぐれた有機材料と、その材料の配置とを最適化するように積層することにより、発光効率の向上、駆動電圧の低減を達成し、すぐれた特性を有したパネルを具現するための手段になる。
【0017】
現在、市場において、LCD(liquid crystal display)との特性競争が激烈になっており、産業面において有機発光素子を発展させるために、さらなる特性の改善が要求されている状況である。このような要求に応えるためには、すぐれた有機材料をサーチングし、かつ素子構造を最適化することが必須である。
【0018】
有機発光素子の積層構造は、機能面から見て、正孔注入層(HIL)、正孔輸送層(HTL)、発光層(EML)、電子輸送層(ETL)、電子注入層(EIL)のように分かれている。大別すれば、発光層と、キャリア輸送層(正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、電子注入層)とすることができる。このように、各層に機能を分離するのは、カソードに近い層、またはアノードに近い層において、有機層内の多数キャリアが異なるためである。すなわち、カソードに近い層では、電子が豊富であり、アノードに近い層では、正孔が豊富である。従って、それに対応するように、アノードに近い層(正孔注入層、正孔輸送層)では、正孔移動度が高い材料、カソードに近い層(電子注入層、電子輸送層)では、電子移動度が高い材料が利用される。また、アノードとカソードとの中間に位置する発光層には、バイポーラの材料が使われる。
【0019】
有機層の各層は、カソード側であるか、あるいはアノード側であるかによって、そしてキャリアに対する要求性能が異なるために、単一材料をもってしては、ほとんど素子を構成できない。従って、各キャリア層に係わる性能によって、複数の異なる材料が選択され、それが最適場所に配されるように、素子構造が設計される。
【0020】
しかし、性質が異なる複数の材料によって各層が構成されていることは、当然のこととして、そこに複数の界面が存在することになる。性質が異なる材料では、各材料のエネルギー準位(HOMO(highest occupied molecular orbital)、LUMO(lowest unoccupied molecular orbital))が異なる。従って、隣接する各層のHOMOとLUMOとの位置がずれ、それが各キャリアが次の層に注入されることを阻害する要因になる。このようなことが、駆動電圧を上昇させ、発光効率を低減させ、素子寿命を短縮させることによって、有機発光素子に好ましくない影響を与えている。
【0021】
本発明の一具現例による有機発光素子は、このような点を考慮し、同じ材料でもって、隣接する層を構成することを特徴とする。それにより、各層間のキャリア移動に対する障害が発生せず、すぐれた特性を示す有機発光素子を得ることができる。
【0022】
本発明の一具現例によれば、このような同じ材料は、金属錯体でありうる。
【0023】
本発明の他の具現例によれば、前記同じ材料は、金属錯体であり、中心金属元素は、ベリリウム、アルミニウムまたは亜鉛でありうる。
【0024】
本発明の一具現例によれば、前記同じ材料は、さらに具体的には、ビス(10−ベンゾキノレート)ベリリウム(BeBq)、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(パラ−フェニルフェノラート)アルミニウム(III)(BAlq)、ビス(2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾチアゾレート)亜鉛(ZnBTZ)またはビス(2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾキサゾレート)亜鉛(ZnPBO)でありうる(ただし、前記材料がトリス(8−キノリノラト)アルミニウム(Alq3)である場合は除く)。
【0025】
【化1】

【0026】
一方、前記第1電極はアノードであり、前記第2電極はカソードであり、これとは反対極性になることも可能である。
【0027】
前述のような有機発光素子は、必要に応じて、前記有機膜が、正孔注入層、正孔輸送層、電子阻止層、発光層、正孔阻止層、電子輸送層及び電子注入層のうち1層以上の層をさらに具備することが可能であり、必要に応じて、前記有機膜の各層は、2層に形成することも可能である。
【0028】
例えば、本発明の一具現例による有機発光素子は、第1電極/正孔注入層/発光層/第2電極、第1電極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/第2電極、第1電極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/第2電極、第1電極/正孔注入層/電荷発生層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/第2電極、または第1電極/正孔注入層/電荷発生層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/第2電極の構造を有することができる。または前記有機発光素子は、第1電極/正孔注入機能及び正孔輸送機能を同時に有する単一膜/発光層/電子輸送層/第2電極、または第1電極/正孔注入機能及び正孔輸送機能を同時に有する単一膜/発光層/電子輸送層/電子注入層/第2電極の構造を有することができる。
【0029】
本発明の一具現例による有機発光素子は、前面発光型、背面発光型などの多様な構造に適用可能である。
【0030】
以下、本発明による有機発光素子の製造方法について、図1に図示された有機発光素子を参照しつつ、述べることとする。図1の有機発光素子は、基板、第1電極(アノード)、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層及び第2電極(カソード)を具備している。
【0031】
まず、基板上部に、大きい仕事関数を有する第1電極用物質を、蒸着法またはスパッタリング法などによって形成し、第1電極を形成する。前記第1電極は、アノードでありうる。ここで、基板としては、一般的な有機発光素子で使われる基板を使用するが、機械的強度、熱的安定性、透明性、表面平滑性、取扱容易性及び防水性にすぐれるガラス基板または透明プラスチック基板が望ましい。第1電極用物質としては、伝導性にすぐれる酸化インジウムスズ(ITO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)、酸化スズ(SnO)、酸化亜鉛(ZnO)、Al、Ag、Mgなどを利用でき、透明電極または反射電極として形成されうる。
【0032】
次に、前記第1電極の上部に、真空蒸着法、スピン・コーティング法、キャスト法、LB(Langmuir−Blodgett)法などの多様な方法を利用し、正孔注入層を形成できる。
【0033】
真空蒸着法によって正孔注入層を形成する場合、その蒸着条件は、正孔注入層の材料として使用する化合物、目的とする正孔注入層の構造及び熱的特性などによって異なるが、一般的に、蒸着温度100ないし500℃、真空度10−8ないし10−3torr、蒸着速度0.01ないし100Å/secの範囲で適切に選択することが望ましい。
【0034】
スピン・コーティング法によって正孔注入層を形成する場合、そのコーティング条件は、正孔注入層の材料として使用する化合物、目的とする正孔注入層の構造及び熱的特性によって異なるが、約2,000rpmないし5,000rpmのコーティング速度、コーティング後の溶媒除去のための熱処理温度は、約80℃ないし200℃の温度範囲で適切に選択することが望ましい。
【0035】
前記正孔注入層物質としては、公知の正孔注入材料を使用できるが、例えば、銅フタロシアニンなどのフタロシアニン化合物、4,4’,4”−トリス(3−メチルフェニルフェニルアミノ)トリフェニルアミン(m−MTDATA)、N,N’−ジ(1−ナフチル)−N,N’−ジフェニルベンジジン(NPB)、4,4’,4”−トリス{N,Nジフェニルアミノ}トリフェニルアミン(TDATA)、4,4’−ビス[N−(ナフチル)−N−フェニル−アミノ]ビフェニル(2−TNATA)、ポリアニリン/ドデシルベンゼンスルホン酸(Pani/DBSA)、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(4−スチレンスルホネート)(PEDOT/PSS)、ポリアニリン/カンファースルホン酸(Pani/CSA)、またはポリアニリン/ポリ(4−スチレンスルホネート)(PANI/PSS)などを使用できるが、これらに限定されるものではない。
【0036】
【化2】

【0037】
前記正孔注入層の厚みは、約100Åないし10,000Å、望ましくは、100Åないし1,000Åでありうる。前記正孔注入層の厚みが前記範囲を満足する場合、駆動電圧の上昇なしに、優秀な正孔注入特性を得ることができる。
【0038】
次に、前記正孔注入層の上部に、真空蒸着法、スピン・コーティング法、キャスト法、LB法などの多様な方法を利用し、正孔輸送層を形成できる。真空蒸着法及びスピン・コーティング法によって正孔輸送層を形成する場合、その蒸着条件及びコーティング条件は、使用する化合物によって異なるが、一般的に、正孔注入層の形成とほぼ同じ条件範囲で選択される。
【0039】
前記正孔輸送層物質は、公知の正孔輸送層物質を利用できるが、例えば、N−フェニルカルバゾール、ポリビニルカルバゾールのようなカルバゾール誘導体;N,N’−ジ(1−ナフチル)−N,N’−ジフェニルベンジジン(NPB)、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ジフェニル−[1,1−ビフェニル]−4,4’−ジアミン(TPD)などの芳香族縮合環を有するアミン誘導体などを使用できる。例えば、(4,4−トリ(N−カルバゾリル)トリフェニルアミン)(TCTA)の場合、正孔輸送の役割以外にも、発光層から励起子が拡散することを防止する役割を行うことができる。
【0040】
【化3】

【0041】
前記正孔輸送層の厚みは、約50Åないし1,000Å、望ましくは、100Åないし600Åでありうる。前記正孔輸送層の厚みが前述のような範囲を満足する場合、実質的な駆動電圧の上昇なしに、優秀な正孔輸送特性を得ることができる。
【0042】
次に、前記正孔輸送層の上部に、真空蒸着法、スピン・コーティング法、キャスト法、LB法などの方法を利用し、発光層を形成できる。真空蒸着法及びスピン・コーティング法によって発光層を形成する場合、その蒸着条件は、使用する化合物によって異なるが、一般的に、正孔注入層の形成とほぼ同じ条件範囲で選択される。
【0043】
前記発光層は、公知の多様な発光物質を利用して形成できるが、公知のホスト及びドーパントを利用して形成できる。前記ドーパントの場合、公知の蛍光ドーパント及び公知のリン光ドーパントをいずれも使用できる。
【0044】
例えば、ホストとしては、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(Alq3)、4,4’−N,N’−ジカルバゾール−ビフェニル(CBP)、9,10−ジ(ナフタレン−2−イル)アントラセン(ADN)またはジスチリルアリーレン(DSA)などを使用できるが、これらに限定されるものではない。
【0045】
一方、公知の赤色ドーパントとして、PtOEP、Ir(piq)、BtpIr(acac)、4−(ジシアノメチレン)−2−t−ブチル−6−(1,1,7,7−テトラメチルジュロリジル−9−エニル)−4H−ピラン(DCJTB)などを利用できるが、これらに限定されるものではない。
【0046】
【化4】

【0047】
また、公知の緑色ドーパントとして、Ir(ppy)(ppy=フェニルピリジン)、Ir(ppy)(acac)、Ir(mpyp)、10−(2−ベンゾチアゾリル)−2,3,6,7−テトラヒドロ−1,1,7,7−テトラメチル−1H,5H,11H−(1)ベンゾピロピラノ(6,7−8−i,j)キノリジン−11−オン(C545T)などを利用できるが、これらに限定されるものではない。
【0048】
【化5】

【0049】
一方、公知の青色ドーパントとして、FIrpic、(Fppy)Ir(tmd)、Ir(dfppz)、ter−フルオレン、4,4’−ビス(4−ジフェニルアミノスチリル)ビフェニル(DPAVBi)、2,5,8,11−テトラ−t−ブチルペリレン(TBP)などを利用できるが、これらに限定されるものではない。
【0050】
【化6】

【0051】
前記ドーパントの含有量は、発光層形成材料100重量部(すなわち、ホストとドーパントとの総重量は、100重量部である)を基準として、0.1ないし20重量部、特に0.5〜12重量部であることが望ましい。ドーパントの含有量が前記範囲を満足するならば、濃度消光現象が実質的に防止されうる。
【0052】
前記発光層の厚みは、約100Åないし1,000Å、望ましくは、200Åないし600Åでありうる。前記発光層の厚みが前記範囲を満足する場合、実質的な駆動電圧の上昇なしに、優秀な発光特性を得ることができる。
【0053】
発光層がリン光ドーパントを含む場合、三重項励起子または正孔が、電子輸送層に拡散する現象を防止するために、正孔阻止層を発光層の上部に形成できる(図1には図示せず)。このときに使用できる正孔阻止層物質は、特別に制限されるものではなく、公知の正孔阻止層物質のうち任意に選択して利用できる。例えば、オキサジアゾール誘導体やトリアゾール誘導体、2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(BCP)のようなフェナントロリン誘導体、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)−(p−フェニルフェノラート)−アルミニウム(BAlq)などを利用できる。
【0054】
前記正孔阻止層の厚みは、約50Åないし1,000Å、望ましくは、100Åないし300Åでありうる。前記正孔阻止層の厚みが50Å未満である場合、正孔阻止特性が低下し、前記正孔阻止層の厚みが1,000Åを超える場合、駆動電圧が上昇しうるのである。
【0055】
次に、電子輸送層を、真空蒸着法またはスピン・コーティング法、キャスト法などの多様な方法を利用して形成する。真空蒸着法及びスピン・コーティング法によって、電子輸送層を形成する場合、その条件は、使用する化合物によって異なるが、一般的に、正孔注入層の形成とほぼ同じ条件範囲で選択される。
【0056】
前記電子輸送層物質は、公知の電子輸送層の形成材料のうちから任意に選択されうる。例えば、その例としては、Alq3、BAlqのようなキノリン誘導体;1,2,4−トリアゾール誘導体(TAZ)のような公知の材料を使用することができるが、これらに限定されるものではない。
【0057】
【化7】

【0058】
前記電子輸送層の厚みは、約100Åないし1,000Å、望ましくは、100Åないし500Åでありうる。前記電子輸送層の厚みが前述のような範囲を満足する場合、実質的な駆動電圧の上昇なしに、優秀な電子輸送特性を得ることができる。
【0059】
また、電子輸送層の上部に、カソードからの電子の注入を容易にする機能を有する物質である電子注入層が積層されうる。
【0060】
電子注入層物質としてはLiF、NaCl、CsF、LiO、BaOのような電子注入層の形成材料として公知の任意の物質を利用できる。前記電子注入層の蒸着条件及びコーティング条件は、使用する化合物によって異なるが、一般的に、正孔注入層の形成とほぼ同じ条件範囲で選択される。
【0061】
前記電子注入層の厚みは、約1Åないし100Å、望ましくは、5Åないし90Åでありうる。前記電子注入層の厚みが前述の範囲を満足する場合、実質的な駆動電圧の上昇なしに、優秀な電子注入特性を得ることができる。
【0062】
最後に、電子注入層の上部に、真空蒸着法やスパッタリング法などの方法を利用し、第2電極を形成できる。前記第2電極は、アノードまたはカソードとして使われうる。前記第2電極形成用物質としては、小さい仕事関数を有する金属、合金、導電性化合物及びそれらの混合物を使用することができる。具体的な例として、はリチウム(Li)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、アルミニウム−リチウム(Al−Li)、カルシウム(Ca)、マグネシウム−インジウム(Mg−In)、マグネシウム−銀(Mg−Ag)等を挙げることができる。また、前面発光素子を得るために、ITO、IZOを使用した透明アノードを使用することもできる。
【0063】
前述の有機発光素子の製造方法において、発光層と、該発光層と接するキャリア輸送層(例えば、電子輸送層または正孔輸送層)とに存在する比率が最も大きい材料が同一であるということはいうまでもない。
【0064】
以下、本発明の実施例を具体的に例示するが、本発明が下記の実施例に限定されるということを意味するものではない。
【0065】
実施例1
ITO/NPB(700Å)/ヘキサアザトリフェニレン ヘキサカルボニトリル(HAT−CN6)(50Å)/NPB(1,550Å)/BeBq+2%Ir(piq)(400Å)/BeBq(300Å)/Liq(5Å)/MgAg(150Å)
【0066】
アノードは、コーニング(Corning)15Ωcm(1,200Å)ITOガラス基板を50mm×50mm×0.7mmサイズに切り、イソプロピルアルコールと純水とを利用し、それぞれ5分間超音波洗浄した後、30分間紫外線を照射してオゾンに露出させて洗浄し、真空蒸着装置に該ガラス基板を載置する。
【0067】
前記基板上部に、まず正孔注入層として公知の物質である4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(NPB)を真空蒸着し、700Å厚に形成した後、次に電荷発生性化合物として、公知の物質であるHAT−CN6を50Å厚に真空蒸着した後、続けてNPBを1,550Å厚に真空蒸着して正孔輸送層を形成する。
【0068】
前記正孔輸送層の上部に、BeBq及びIr(piq)を、重量比98:2で同時蒸着し、400Å厚に発光層を形成する。
【0069】
次に、前記発光層の上部に、電子輸送層として、BeBqを300Å厚に蒸着した後、該電子輸送層の上部に、ハロゲン化アルカリ金属であるLiqを電子注入層として、5Å厚に蒸着し、MgAgを150Å(カソード電極)厚に真空蒸着して電極を形成することによって、有機発光素子を製造する。
【0070】
該素子は、電流密度4.9mA/cmで駆動電圧4.2Vを示し、色座標は(0.667,0.339)であり、発光効率は29.6cd/Aであった。
【0071】
実施例2
ITO/NPB(700Å)/HAT−CN6(50Å)/NPB(1,550Å)/BAlq+35%Ir(piq)(200Å)/BAlq(300Å)/Liq(5Å)/MgAg(150Å)
【0072】
発光層の形成時に、BeBq及びIr(piq)の代わりに、BAlq及びIr(piq)を重量比65:35で同時蒸着し、電子輸送層としてBeBqの代わりに、BAlqを蒸着させたことを除いては、実施例1と同一に行って有機発光素子を製作する。
【0073】
該素子は、電流密度5.2mA/cmで駆動電圧4.8Vを示し、色座標は(0.665,0.334)であり、発光効率は25.5cd/Aであった。
【0074】
実施例3
ITO/NPB(750Å)/NPB(1,100Å)/ZnBTZ+Coumarin C−545 5%(200Å)/ZnBTZ+Liq40%(300Å)/Liq(5Å)/MgAg(150Å)
【0075】
発光層の形成時に、BeBq及びIr(piq)の代わりに、ZnBTZ及びCoumarin C−545を重量比95:5で同時蒸着し、電子輸送層としてBeBqの代わりに、ZnBTZ及びLiqを重量比60:40で同時蒸着させ、正孔注入層としてNPBを750Å厚に形成し、正孔輸送層としてNPBを1,100Å厚に形成し、HAT−CN6を蒸着しないことを除いては、実施例1と同じ方式で有機発光素子を製作する。
【0076】
該素子は、電流密度5.0mA/cmで駆動電圧4.5Vを示し、蛍光greenの色座標は(0.314,0.662)であり、発光効率は25.1cd/Aであった。
【0077】
実施例4
ITO/NPB(700Å)/HAT−CN6(50Å)/NPB(850Å)/ZnPBO+ペリレンTBP3%(200Å)/ZnPBO(300Å)/Liq(5Å)/MgAg(150Å)
【0078】
発光層の形成時に、BeBq及びIr(piq)の代わりに、ZnPBO及びペリレンTBPを、重量比97:3で同時蒸着し、電子輸送層としてBeBqの代わりに、ZnPBOを蒸着させたことを除いては、実施例1と同一に行って有機発光素子を製作する。
【0079】
該素子は、電流密度16.6mA/cmで駆動電圧4.9Vを示し、色座標は(0.14,0.06)であり、発光効率は2.9cd/Aであった。
【0080】
比較例
ITO/NPB(700Å)/HAT−CN6(50Å)/NPB(1,550Å)/BeBq+2%Ir(piq)(400Å)/TAZ(300Å)/Liq(5Å)/MgAg(150Å)
【0081】
アノードは、コーニング(Corning)15Ωcm(1,200Å)のITOガラス基板を50mm×50mm×0.7mmサイズに切り、イソプロピルアルコールと純水とを利用し、それぞれ5分間超音波洗浄した後、30分間紫外線を照射してオゾンに露出させて洗浄し、真空蒸着装置に該ガラス基板を載置する。
【0082】
前記基板上部に、まず正孔注入層として公知の物質であるNPBを真空蒸着し、700Å厚に形成した後、次に電荷発生性化合物として、公知の物質であるHAT−CN6を50Å厚に真空蒸着した後、続けてNPBを1,550Å厚に真空蒸着し、正孔輸送層を形成する。
【0083】
次に、前記発光層の上部に、電子輸送層としてTAZを300Å厚に蒸着した後、該電子輸送層の上部に、Liqを電子注入層として5Å厚に蒸着し、MgAgを150Å厚に真空蒸着してカソード電極を形成することによって、有機発光素子を製造する。
【0084】
該素子は、電流密度6.7mA/cmで駆動電圧7.2Vを示し、色座標は(0.666,0.338)であり、発光効率は19.2cd/Aであった。
【0085】
実施例1ないし4及び比較例の有機発光素子の駆動電圧、色座標及び発光効率を、下記表1に示した。
【0086】
【表1】

【0087】
前記表1を参照すれば、実施例1ないし4の有機発光素子が、比較例の有機発光素子よりすぐれているということが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極と、
第2電極と、
前記第1電極及び第2電極間に介在された有機膜として、キャリア輸送層及び発光層と、を含む有機発光素子であり、
前記発光層に存在する比率が最も大きい材料と、前記発光層に隣接し、前記発光層と界面を有する前記キャリア輸送層に存在する比率が最も大きい材料とが同じである有機発光素子。
【請求項2】
前記同じ材料が金属錯体であることを特徴とする請求項1に記載の有機発光素子。
【請求項3】
前記同じ材料が金属錯体であり、中心金属元素が、ベリリウム、アルミニウムまたは亜鉛であることを特徴とする請求項1に記載の有機発光素子。
【請求項4】
前記同じ材料が、ビス(10−ベンゾキノレート)ベリリウムであることを特徴とする請求項1に記載の有機発光素子。
【請求項5】
前記同じ材料が、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(パラ−フェニルフェノラート)アルミニウム(III)(BAlq)であることを特徴とする請求項1に記載の有機発光素子。
【請求項6】
前記同じ材料が、ビス(2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾチアゾレート)亜鉛(ZnBTZ)であることを特徴とする請求項1に記載の有機発光素子。
【請求項7】
前記同じ材料が、ビス(2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾキサゾレート)亜鉛(ZnPBO)であることを特徴とする請求項1に記載の有機発光素子。
【請求項8】
前記素子が第1電極/正孔注入層/発光層/第2電極、第1電極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/第2電極、第1電極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/第2電極、第1電極/正孔注入層/電荷発生層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/第2電極、または第1電極/正孔注入層/電荷発生層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/第2電極の構造を有することを特徴とする請求項1に記載の有機発光素子。

【図1】
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【公開番号】特開2011−228640(P2011−228640A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−30633(P2011−30633)
【出願日】平成23年2月16日(2011.2.16)
【出願人】(308040351)三星モバイルディスプレイ株式會社 (764)
【氏名又は名称原語表記】Samsung Mobile Display Co., Ltd.
【住所又は居所原語表記】San #24 Nongseo−Dong,Giheung−Gu,Yongin−City,Gyeonggi−Do 446−711 Republic of KOREA
【Fターム(参考)】