説明

有機酸分離分析装置

【課題】 液混合部で、試料中に含まれる複数種の有機酸から分離された各有機酸を含む溶離液と、該有機酸の酸度を測定するための電解液とを瞬時に混合し、より正確、且つ短時間で複数種の有機酸の測定が行なえる有機酸分離測定装置を提供する。
【解決手段】 分離された有機酸を含む溶離液と、該有機酸の酸度を測定するための電解液とを混合する液混合部5を、酸度測定用の電解液が流れる主管21に、酸分離用の溶離液が流れる側管22の一部を挿入して、該側管端部23を主管21の内径の中央位置で位置決めして構成するとともに、前記側管端部23の内側壁231に、螺旋状の溝を形成して構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、便や飲料物その他に含まれる各種の有機酸を種類毎に分離定量する有機酸分離分析装置に関し、特に、分離させた有機酸を含む溶液を、該有機酸の酸度を測定をするための電解液に瞬時に混合させる有機酸分離分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
潰瘍性大腸炎(ulcerative colitis)の通常の診断方法は、細菌性赤痢、アメーバー赤痢、日本住血吸中病、大腸結核などの感染性大腸炎、及び放射性腸炎、虚血性大腸炎、並びに肉芽腫性大腸炎を除外し、X線所見、内視鏡所見、及び生検組織所見などから総合的に判断される。
この潰瘍性大腸炎の初期的な発見方法の一般的なものとしては、潰瘍性大腸炎の症状で最も多く見られる便中の出血を検査する方法が、集団検診等で行われている。
【0003】
しかしながら、このような出血性の排便があるのは、潰瘍性大腸炎にかぎらず、痔ろう等の慢性疾患でも起こりえる。
そして、痔ろう患者が多いわが国では、前述したような集団検診時に便中の出血が発見され、潰瘍性大腸炎を判定する正確な検査を行ってみると、単なる痔ろうである場合が少なくない。
【0004】
非特許文献1には、潰瘍性大腸炎に関する報告があり、該文献では、便中に含まれる種々の有機酸を測定して比較したときに、非揮発性の乳酸濃度が、揮発性の酢酸、プロピオン酸、吉草酸、イソ吉草酸の濃度の総和に対して高くなると潰瘍性大腸炎の疑いがあるという報告がなされている。
【0005】
そこで、我々は、かかる見解に基づき、便中に含まれる種々の有機酸を分離して各有機酸を測定定量することで、潰瘍性大腸炎を判定する潰瘍性大腸炎診断装置、及び測定方法を提案した(特許文献1参照)。この診断装置、及び測定方法によれば、痔ろうと潰瘍性大腸炎との区別を簡単且つ正確に判定することができる。
【0006】
ところで、飲料物の分野においては、味を決定する要因として、糖と酸とが重要な役割を果たしており、これらの比率を調製することで、飲料物の味を引き締めたり、飲み易くしたりなどの効果的な作用を生じさせることが出来る。
【0007】
例えば、ワインを例に取って説明すると、ワインの重要な酸の一つである酒石(酒石酸水素カリウム)は、ワインの風味の一部を担うものであるが、余剰な酒石はワインをビン詰めした後にビンの底に析出し、商品価値を低くする。よって、ワインはビン詰め前に、その溶解している酒石の一部を取り除く、いわゆる安定化処理を行って品質を高めている。
【0008】
また例えば、酒の場合、酒の酸度(「酸度」;10分の1規定の水酸化ナトリウム溶液のml数を数値で表すもの)は、酒中の有機酸(乳酸、コハク酸、リンゴ酸など)の量を表し、該有機酸は酒の味に酸味、旨味をもたらすものである。そして、一般にこの数値が大きいほど酸味が強くなり、この酸度が大きいほど、酒は辛く、又濃く感じると言うことになる。
【0009】
さらに、酒の酸は、もろみの段階での酸量を100とすれば、そのうち、17は酒母に由来し、残りの73はもろみ行程中に生成される。そして、もろみで生成される酸は、コハク酸とリンゴ酸が大部分(双方で約80%)であり、乳酸は10%内外である。これらの酸は、発酵中に酵母が生成する。酒の酸度は1.3〜1.4を境に、それを上まわるにつれて酸味が増す。酒は、一般に日本酒度(「日本酒度」;水(±0)に対する酒の比重を日本酒度計で計ったもので、比重が重いほど値が低くなる)だけで甘辛の判定ができるように言われるが、日本酒の甘辛の判定は日本酒度だけで行なえるものではなく、前述した「酸度」とのバランスによって甘辛の感じ方は微妙に異なる。すなわち、日本酒度が低い(糖分が多い)場合は、酸度が高くてもすっぱみは目立たず、どっしりとした型になることも多い。
【0010】
このように、飲料物の分野においては、各種の酸を測定することは重要であり、さらに、その味や特性を決定するためには、その酸の種類を限定することも非常に重要である。
【0011】
そして、飲料物中の各種の酸を測定あるいは、その酸の種類を限定する方法は、前述した特許文献1に記載した装置あるいは測定方法が利用できる。
【0012】
図10は、前記特許文献1に示す有機酸分離測定装置の構成を示す図である。図10において、有機酸分離測定装置200は、有機酸を分離する分離部分40と、該分離された各種有機酸の溶離液と有機酸の酸度を測定するための溶離液とを混合し、順次混合される試料中の各有機酸の酸度を電気化学的に測定する測定部分50とからなる。
【0013】
以下詳細に説明すると、8は電気化学的酸度測定を行うための電解液を溜めておくための溶液タンクであり、9は酸分離を行うための溶離液を貯めておくための溶離液タンクである。そして、10は、前記溶液タンク8からの電解液、及び溶離液タンク9からの溶離液に含まれる気泡や溶存酸素を除去するためのデガッサーである。11は前記電解液を送液するポンプAであり、12は前記溶離液を送液するポンプBである。13は試料を前記溶離液中に注入するための試料注入部であり、14は該試料注入部13で注入された試料中に含まれる複数種の有機酸を分離する酸分離カラムである。15は前記酸分離カラム14から流出する溶離液と、前記ポンプA11で送液される電解液とを混合する液混合部であり、その詳細な構成について図11を用いて説明する。
【0014】
図11は、液混合部15の構成を示す断面図である。図11において、21は前記ポンプA11から送液された電解液が流れる主管であり、22は前記分離カラム14から流出された、前記分離された有機酸を含む溶離液が流れる側管である。なお、23は該側管22の先端部を指す。
【0015】
図11に示されるように、液混合部15では、主管21の一部に側管22を突き刺して、側管22の端部23を主管21の内部に挿入し、更に、側管端部23を主管21の中央の位置で位置決めする。この際、側管端部23が、主管21内部を流れる電解液流出方向に対して平行であり、且つ該側管端部23の開口面が、主管21の内径面に対して平行になるようにする。以上の構成により、主管21内部の流れに側管22の流れを混入させて流路を形成し、側管22内部を流れる溶離液を、主管21内部の電解液の流れに対して平行に吐出させる。
【0016】
ここで、液混合部15にて電解液に混入した分離された有機酸は、後述する酸度測定部16に送液されるが、液混合部15と酸度測定部16の間の流路においても該有機酸を分離した溶離液と電解液との混合が行なわれるため、液混合部15と酸度測定部16の間の長さが短いと、十分な混合が行なわれず、ピークが低くなる。一方で、液混合部15と酸度測定部16の間の長さが長いと酸が拡散するため、有機酸のピーク幅が広がり、ピーク高さが低下する。このため、最も良好なピーク高さを得るためには、液混合部15と酸度測定部16の間の流路の長さを40〜60cmとするのが好ましい。なお、液混合部15と酸度測定部16の間の流路は、20〜80cmであれば良好なピーク高さを得ることができるため、装置の設計に応じて、液混合部15と酸度測定部16の間の長さを変更することが可能である。
【0017】
16は分離された有機酸の酸度を測定する酸度測定部であり、その詳細な構成を図12を用いて説明する。図12は、酸度測定部の電極詳細図である。図12において、24は作用電極であり、25は該作用電極の電位制御の基準となる参照電極であり、26は該作用電極と対になり電極を流す対極である。そして27は電解液の通路を確保するためのスペーサ、28は電極中を流れていく電解液である。酸度測定部16では、作用電極24の電位が参照電極25に対して一定となるように電位制御装置(ポテンシオスタット)を用いて電圧を印加し、作用電極24に流れる電解液の電流を測定する。
【0018】
17は測定後の電解液と溶離液とを貯蔵する廃液槽であり、18は装置200の電源を供給する電源ボックスであり、19は装置200を制御する制御基板であり、20は種々の有機酸の酸度に対する還元電流値を表示するディスプレーである。
【0019】
以上のように構成される従来装置200の動作について説明する。
まず、複数種類の有機酸を含有する試料20μlを、試料注入部13に注入する。溶離液は、ポンプB12により、流量0.6ml/分で溶離液タンク9からデガッサー10を通って酸分離カラム14へ送られ、酸分離カラム14を通過後、液混合部15に到達する。また、電解液は、ポンプA11により、流量1ml/分で溶液タンク8からデガッサー10を通って液混合部15まで供給される。そして、前記試料注入部13において、試料に含まれる複数種の有機酸がポンプB12から送液された溶離液に混入され、酸分離カラム14に運ばれる。
酸分離カラム14では、試料に含まれる複数の有機酸が分離され、分離した有機酸は順次液混合部15に送られる。
【0020】
液混合部15は、図11に示すように、側管22の側管端部23が主管21の中央に位置し、かつ側管端部23の開口面が、主管の内径面に平行になるよう構成しているので、主管21内の電解液の流れにより側管端部23の出口部分の圧力が低圧になり、このため、側管22内を通過してきた溶離液は側管22の出口で圧力が開放され、図11に示されるように、溶離液は側管22の出口で霧状に拡散しながら電解液に混入していく。液混合部15にて電解液中に混入された有機酸は、液混合部15と酸度測定部16の間の流路においてさらに電解液と混合されながら酸度測定部16に送液される。
【0021】
酸度測定部16に送られた混合液は、図12に示すように、スペーサ27によって形成された流路を矢印の方向に流れていく。酸度測定部16内では、参照電極25に対して作用電極24の電位が−0.53Vになるように作用電極24と対極26の間に電圧が印加されており、前記酸分離カラム14にて分離された各有機酸を含む電解液が酸度測定部16を通過すると、該有機酸の酸度に比例する電流が得られる。有機酸を含む電解液は、酸分離カラム14から有機酸が分離される毎に液混合部15を経て酸度測定部16に供給されるため、酸度測定部16は、試料に含まれる短鎖脂肪酸の酸度に比例する電流を連続的に検出していく。
【非特許文献1】中村正樹著,日本消化器病学会雑誌,(財)日本消火器病学会,1989年8月,第86巻,第8号,p.1627〜1637
【特許文献1】国際公開第2005/012898号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
前述したような装置200において、分離された各有機酸の酸度を酸度測定部16で連続して正確に測定するためには、前記液混合部15において、分離された有機酸を含む溶離液と、電解液とをうまく混合させることが非常に重要である。これは、溶離液と電解液との混合が不均一だと、酸度測定部16にて作用電極24の表面に形成される電気二重層が乱れて、測定時にノイズが発生して、正確な測定値が得られない問題を生じさせるからである。更に、前記混合の不均一は、酸度試料に含有されている複数種類の有機酸が近接したピークをもつ場合は、より確実に溶離液を電解液に混合しないと、酸度測定部16で測定した際に、その酸のピークが重なってしまい、測定に誤差が生じてしまうという問題も生じさせる。
【0023】
このため、従来装置200では、側管22と主管21との位置関係や、側管端部23の主管21内での配置位置、あるいは液混合部15と酸度測定部16間の距離などを工夫し、前記溶離液と電解液との混合が一瞬のうちに行なえるようにしている。
【0024】
しかしながら、前述したような工夫を従来装置に施しても、測定対象が、非常に近隣したピークを持つ複数種の有機酸である場合は、いまだ、その測定を正確に行なうことができないという課題を有していた。
【0025】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、非常に近隣したピークを持つ各種有機酸の測定を、正確に且つ短時間で行なうことのできる有機酸分離測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0026】
前記課題を解決するために、本発明にかかる有機酸分離測定装置は、試料に含まれる複数種の有機酸を分離し、該分離した各有機酸の酸度を連続して測定する有機酸分離測定装置において、前記複数種の有機酸を分離する有機酸分離部と、前記有機酸分離で分離された有機酸を含む溶液と、キノン及び支持電解質が含有された電解液とを混合する液混合部と、前記液混合部で混合された混合液中に含まれる前記分離された有機酸の酸度を連続して測定する測定部と、を備え、前記液混合部は、前記電解液が流れる主管の内部に、前記分離された有機酸を含む溶液が流れる側管の一部を、該側管の端部が前記主管の内径の中央に配置されるよう、挿入すると共に、前記主管の前記側管挿入部及びその前後の部分、または前記側管の一部、のいずれか、あるいはその両方に、前記溶液が前記電解液中で分散されるのを促進する構造を有するものである。
【0027】
これにより、前記分離された有機酸を含む溶液を前記電解液中で拡散させ、該記溶液と前記電解液とを素早く混合することが可能な、高効率な混合能力を有する液混合部を得ることができる。
【0028】
また、本発明にかかる有機酸分離測定装置は、試料に含まれる複数種の有機酸を分離し、該分離した各有機酸の酸度を連続して測定する有機酸分離測定装置において、有機酸の分離を行うための溶液を貯めた溶液タンクと、前記溶液を送液する少なくとも1つのポンプと、前記試料を前記溶液に注入する試料注入部と、キノン及び支持電解質が含有された電解液を貯めた電解液タンクと、前記試料注入部から注入された前記試料に含まれる複数種の有機酸を分離する酸分離カラムを有する系から供給される、前記分離した有機酸を含む溶液と、前記電解液を送液する少なくとも1つのポンプを有する系から供給される電解液とを混合する液混合部と、前記分離された有機酸の酸度を連続して測定する測定部と、を備え、前記液混合部は、前記電解液が流れる主管の内部に、前記分離された有機酸を含む溶液が流れる側管の一部を、該側管の端部が前記主管の内径の中央に配置されるよう、挿入すると共に、前記主管の前記側管挿入部及びその前後の部分、または前記側管の一部、のいずれか、あるいはその両方に、前記溶液が前記電解液中で分散されるのを促進する構造を有するものである。
【0029】
これにより、液混合部おいて、ポンプによって送液された前記分離された有機酸を含む溶液と、前記電解液とを素早く混合でき、この結果、前記試料に含まれる複数種の有機酸の酸度を連続して測定する際に、正確且つ短時間で測定値を得ることができる。
【0030】
さらに、本発明にかかる有機酸分離測定装置は、前記側管の端部は、その内側壁に螺旋状の溝を有するものである。
【0031】
これにより、前記側管の端部から吐出される前記分離された有機酸を含む溶液が、該側管端部の螺旋溝によって圧迫されるため、前記主管中に前記溶液をより小さい粒で拡散でき、この結果、前記溶液と前記電解液とを素早く混合することが可能となる。 さらに、本発明にかかる有機酸分離測定装置は、前記側管の端部は、その外側壁に螺旋状の溝を有するものである。
【0032】
これにより、前記側管端部の螺旋溝により、前記主管中の、該側管端部の回りを流れる電解液が渦状になるため、前記側管端部から吐出された前記分離された有機酸を含む溶液と、前記主管の電解液とを素早く混合させることが可能となる。
【0033】
さらに、本発明にかかる有機酸分離測定装置は、前記側管の一部は、螺旋状になっているものである。
【0034】
これにより、前記側管の螺旋部分により、前記主管内を流れる電解液がかき回されて乱流になるため、前記側管の端部から吐出される前記分離された有機酸を含む溶液と、前記電解液とを素早く混合させることができる。
【0035】
さらに、本発明にかかる有機酸分離測定装置は、前記主管の前記側管挿入部、及びその前または後ろの部分は、その内側壁に螺旋状の溝を有するものである。
【0036】
これにより、前記主管内部の、前記側管挿入部の前後に形成された螺旋溝により、前記主管を流れる電解液が渦状になるため、前記側管の端部から吐出される前記分離された有機酸を含む溶液と、前記電解液とを素早く混合させることができる。 さらに、本発明にかかる有機酸分離測定装置は、前記主管は、前記側管端部の前記分離された有機酸を含む溶液が吐出される吐出部が位置する部分から、その内径が大きくなるものである。
【0037】
これにより、前記主管の、前記側管の吐出部より下流側で、該主管を流れる電解液の内部圧力が低くなるため、前記側管の吐出部から吐出される前記分離された有機酸を含む溶液と、前記電解液とを素早く混合させることができる。 さらに、本発明にかかる有機酸分離測定装置は、前記主管は、前記側管端部の前記分離された有機酸を含む溶液が吐出される吐出部が位置する部分より下流側に、前記電解液の流れを一部分阻害する障害物か、小さい網目で構成されたメンブレンフィルタの少なくとも一つを有するものである。
【0038】
これにより、前記主管中を流れる電解液が、前記障害物や前記メンブレンフィルタによって流速を妨げられ乱流となるため、前記側管の吐出部から吐出される前記分離された有機酸を含む溶液と、前記電解液とを素早く混合させることができる。 さらに、本発明にかかる有機酸分離測定装置は、前記主管は、前記側管端部の前記分離された有機酸を含む溶液が吐出される部分より下流側に、前記電解液と前記溶液を機械的に混合するプロペラを有するものである。
【0039】
これにより、前記主管中を流れる電解液が前記プロペラによって拡散され、前記側管の吐出部から吐出される前記分離された有機酸を含む溶液と、前記電解液とを素早く混合させることができる。
【発明の効果】
【0040】
本発明によれば、有機酸分離測定装置の液混合部を、酸度測定用の電解液が流れる主管の一部に、有機酸分離用の溶離液が流れる側管の一部を挿入し、該側管の端部を前記主管の一部の内径の中央位置で位置決めして構成するとともに、該主管の一部に挿入された前記側管端部の形状や、該側管の一部の形状や、前記主管の一部の内部形状や、該主管の内部に、障害物やプロペラ等を設けることにより、前記主管を流れる電解液を乱流化にし、前記側管端部の吐出部から吐出される分離された有機酸を含む溶離液を、該電解液中で一瞬に拡散して混入することが可能となるため、前記液混合部に、高効率の混合能力を持たせることができ、これにより、非常に近隣したピークを持つ各種有機酸の分離ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
(実施の形態1)
以下に、本発明の実施の形態1による有機酸分離測定装置について図面を用いて詳細に説明する。
図1は、本発明の有機酸分離測定装置の構成を示す図である。図1において、8は電気化学的酸度測定時に必要な電解液を貯蔵しておくための溶液タンクである。前記溶液タンク8に貯蔵されている電解液は、溶媒中に支持電解質とキノンとを含有するものである。
【0042】
ここで、前記溶媒は、メタノール、エタノール、プロパノールの単独または2〜3種混合系、あるいはアセトニトリルとメタノール、エタノール、プロパノールの2〜4種混合系などであり、また、前記支持電解質は、過塩素酸リチウム、塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、過塩素酸テトラメチルアンモニウム、過塩素酸テトラエチルアンモニウムなどであり、前記キノンは、ビタミンK3(以降「VK3」と呼ぶ。)、3,5−ジ−t−ブチル 1,2ベンゾキノン(DBBQ)、テトラブロモ 1,2ベンゾキノンなどが例に挙げられる。
【0043】
9は複数種の有機酸が混合された試料を、各々の有機酸に分離するための溶離液を貯蔵しておくための溶離液タンクである。前記溶離液タンク9に貯蔵されている溶離液は、後述する酸分離カラム14がイオン排除型カラムの場合は、過塩素酸水溶液、リン酸、塩酸、ベンゼンスルホン酸が適しており、逆相カラムの場合は、水とメタノール、エタノール、アセトニトリル、プロパノールの2〜4種混合系が適しており、イオン交換カラムの場合は、過塩素酸水溶液、リン酸、塩酸、ベンゼンスルホン酸が適している。
【0044】
10は前記溶液タンク8の電解液、及び前記溶離液タンク9の溶離液に含まれる溶存気体を脱気するためのデガッサー、11は前記溶液タンク8に貯蔵されている電解液を一定量送液するポンプA、12は前記溶離液タンク9に貯蔵されている溶離液を一定量送液するポンプBである。なお、ポンプA11、ポンプB12は、JIS K0124 高速液体クロマトグラフ分析通則4.2分離部(2)ポンプで規定されるポンプが望ましい。
【0045】
13は前記試料を前記溶離液中に注入するための試料注入部であり、14は該試料中に含有される複数種の有機酸を分離する酸分離カラムである。前述したように、酸分離カラム14としては、サンプルの2相間(移動相と固定相)の分配平衡の差によって目的試料を分離するODSなどの逆相カラムと、イオン交換基と同じ電荷をもつイオン(共通イオン)を静電的な斥力の差によって目的試料を分離するイオン排除型カラム、また、イオン交換基と反対の電荷をもつイオン(対イオン)を静電的な親和力の差によって目的試料を分離するイオン交換カラムがある。しかし、測定精度を高めるためには、酸分離カラム14としてイオン排除型カラムを使用するのが望ましい。
【0046】
7は前記酸分離カラム14にて分離した有機酸を定性的に検出する分離検出部、そして5は前記酸分離カラム14から流出する溶離液と、ポンプA11で送液される電解液とを混合する液混合部である。
【0047】
以下、液混合部5の詳細な構成について、図2を用いて説明する。
図2は、本実施の形態1にかかる液混合部の構成を示す断面図であり、図2において、21は前記ポンプA11から送液された電解液が流れる主管であり、22は前記分離カラム14から流出された、前記分離された有機酸を含む溶離液が流れる側管である。なお、23は該側管22の端部、23aは該側管22を流れる溶離液の吐出部を指し、231は該側管端部23の内側壁を指す。
【0048】
図2に示されるように、液混合部5は、酸度測定用の電解液が流れる主管21に、酸分離用の溶離液が流れる側管22の一部を挿入し、さらに、該側管端部23を主管21の内径の中央位置で位置決めする。この際、前記側管端部23が、主管21内部を流れる電解液流出方向に対して平行であり、且つ該側管端部23の吐出部23aが、主管21の内径面に対して平行になるようにする。
【0049】
ここでは、側管端部23を、主管21の内径の中央位置にて、該主管21に沿って5mmから20mm程度延ばした位置に、側管22を流れる溶離液の吐出部23aを設ける。このときの主管21の内径は、0.5mm〜3mmぐらいが適度であるが、1mmぐらいにするのが望ましい。また、側管22の内径は、前記主管21の内径の1/3以下の大きさであるのが望ましい。
【0050】
さらに、本実施の形態1では、前記側管端部23の内側壁231に、螺旋状の溝を形成するようにする。この内側壁231に形成される溝の大きさは、M1のねじピッチ程度で0.2mm程度が良く、山の高さは0.1mm程度が良い。
【0051】
このように、前記側管端部23の内側壁231に溝を形成した場合は、側管22を流れてきた溶離液が前記螺旋溝によって加速され、該側管端部23の吐出部23aから溶離液が吐出される時に、該溶離液は主管21を流れる電解液中で圧迫されるため、より小さい粒で拡散でき、前記電解液中に前記溶離液がうまく混合される。
【0052】
ここで、液混合部5にて電解液に混入した、有機酸を含む溶離液は、後述する酸度測定部16に送液されるが、その際、液混合部5と酸度測定部16間の流路においても、溶離液と電解液との混合が行なわれる。よって、液混合部5と酸度測定部16間の長さが短いと、十分な混合が行なわれず、酸度測定部16の作用電極の表面に形成される電気二重層が乱れてしまうため、測定時にノイズが発生し、酸度測定時に得られる有機酸のピーク高さが低くなる。一方で、液混合部5にて混合がうまくいっても、液混合部5と酸度測定部16間の長さが長すぎると、酸が拡散するため、有機酸のピーク幅が広がり、ピーク高さが低下する。このため、最も良好なピーク高さを得るための条件として、液混合部5と酸度測定部16間の間隔は、20mm〜80mmぐらいにするのが適当であり、特に、50mmぐらいにするのが望ましい。ただし、本実施の形態1では、側管端内側231に形成された螺旋溝により生じた電解液の乱流がおさまってから、有機酸の酸度を測定するのが望ましいので、液混合部5と酸度測定部16間の間隔は、80mmぐらいが適当である。
【0053】
16は前記酸分離カラム14にて分離された有機酸の濃度を電気化学的に測定する酸度測定部であり、その詳細な構成は従来と同様であるため、ここでは説明を省略する。なお、酸度測定部16の酸度測定感度は、5μM〜2mMまで測定できる。
【0054】
17は測定後の電解液と溶離液とを貯蔵する廃液槽であり、18は当該装置100の電源を供給する電源ボックスであり、19は装置100を制御する制御基板であり、20は種々の有機酸の酸度に対する還元電流値を表示するディスプレーである。また、6は制御基板19や電源18と、酸度測定部16間の配線である。
【0055】
以上のように構成された本発明の実施の形態1による有機酸分離測定装置100の動作、作用を説明する。
まず、複数種の有機酸を含有する試料20μLを、試料注入部13に注入する。
溶離液は、溶離液タンク9からデガッサー10を通って、ポンプB12によって、流量0.6ml/分で酸分離カラム14を通過し、該酸分離カラム14にて、種々の有機酸に分離される。そして分離検出部7で、該酸分離カラム14にて分離した種々の有機酸の存在を検出し、該分離された有機酸を含む溶離液が液混合部5まで到達する。
【0056】
本実施の形態1では、前記溶離液として、0.1mMの過塩素酸水溶液を使用し、酸分離カラム14はイオン排除型カラムである、島津製のshim−pack SPR−H(250mm×7.8mm i.d.)を使用する。なお、前記酸分離カラム14の溶離液の流量は、7.96mm/min〜60.2mm/minになるようにする。
【0057】
また、電解液は、溶液タンク8からデガッサー10を通って、ポンプA11によって流量1ml/分で液混合部5まで供給される。
【0058】
そして、本実施の形態1では、前記電解液として、3mM〜6mMのキノンと、50mM〜150mMの過塩素酸リチウムを含有したエタノール溶液を使用する。なお、前記ポンプA11からの電解液の流量は、891mm/min〜5102mm/minになるようにする。
【0059】
続いて、液混合部5では、図2に示すように、側管22の側管端部23が主管21の内径中央に位置し、且つ側管端部23の吐出部23aが、主管21の内径面に平行になるよう構成されているので、該主管21内の電解液の流れにより側管端部23の吐出部23aでの圧力が低圧になり、側管22内を通過してきた溶離液は側管22の吐出部23aで圧力が開放され、溶離液が霧状に拡散しながら電解液に混入していく。さらに、本実施の形態1では、該側管23の内側壁231に、螺旋状の溝が形成されているため、側管22を流れてきた前記有機酸を含む溶離液の速度が加速され、その結果、前記吐出部23aでの圧力がより大きくなり、溶離液の電解液中での分散がさらによくなる。
【0060】
このようにして、液混合部5にて、電解液中に混入された有機酸は、該液混合部5と酸度測定部16間の流路においてさらに電解液と混合されながら、酸度測定部16に送液される。
【0061】
酸度測定部16では、参照電極に対して作用電極の電位が−0.53Vになるように作用電極と対極の間に電圧を印加している。よって、種々の有機酸を含む溶離液が酸度測定部16を通過すると、有機酸の酸度に比例する電流が得られる。
【0062】
以上のように、本実施の形態1によれば、液混合部5を、酸度測定用の電解液が流れる主管21に、酸分離用の溶離液が流れる側管22の一部を挿入し、該側管端部23を主管21の内径の中央位置に位置決めするとともに、前記側管端部23の内側壁231に、螺旋状の溝を形成するようにしたので、側管22の内部を流れてきた分離された有機酸を含む溶離液が、前記螺旋溝によって加速され、前記側管端部23の吐出部23aから溶離液が吐出される時に、主管21を流れる電解液で圧迫されるため、前記溶離液はより小さい粒で電解液中に拡散され、前記溶離液と前記電解液とを素早く混合することが可能となる。そしてこれにより、液混合部5に高効率の混合能力をもたせることができ、当該装置100において、試料に含まれる非常に近隣したピークを持つ各種有機酸の酸度を、正確且つ短時間で連続して測定することができる。
【0063】
(実施の形態2)
以下に、本発明の実施の形態2による有機酸分離測定装置について図面を用いて詳細に説明する。
図3は、本実施の形態2にかかる液混合部の断面図である。図3において、21は前記ポンプA11から送液された電解液が流れる主管であり、22は前記分離カラム14から流出された、前記分離された有機酸を含む溶離液が流れる側管である。なお、23は該側管22の端部、23aは該側管22を流れる溶離液の吐出部を指し、232は該側管端部23の外側壁を指す。
【0064】
図3に示されるように、液混合部5は、酸度測定用の電解液が流れる主管21に、酸分離用の溶離液が流れる側管22の一部を挿入し、さらに、該側管端部23を主管21の内径の中央位置で位置決めする。この際、前記側管端部23が、主管21内部を流れる電解液流出方向に対して平行であり、且つ該側管端部23の吐出部23aが、主管21の内径面に対して平行になるようにする。なお、側管端部23の吐出部23aの主管21に対する設置位置、ないし主管21及び側管22の内径は、前記実施の形態1と同様である。
【0065】
さらに、本実施の形態2では、前記側管先端部23の外側壁232に、螺旋状の溝を形成するようにする。この外側壁232に形成される溝の大きさは、M2のねじピッチ程度で0.25mm程度が良く、山の高さは0.135mm程度が良い。
【0066】
このように、前記側管端部23の外側壁232に、螺旋状の溝を形成した場合は、該側管端外側232の螺旋溝により、主管21内部を流れてきた電解液が、側管端部に形成された溝により乱流となり、該側管端部23の吐出部23aから吐出した溶離液は、該乱流となった前記電解液によってかき回されるため、前記電解液と前記溶離液とがうまく混合される。
【0067】
この後、液混合部5にて電解液に混入した有機酸を含む溶離液は、酸度測定部16に送液されるが、前記実施の形態1で述べたように、前記溶離液と電解液との混合は、該液混合部5と酸度測定部16間の流路においても行なわれる。この液混合部5と酸度測定部16間の距離は、前記実施の形態1で述べたように、50mmぐらいであることが望ましいが、本実施の形態2においても、前記側管端外側232に形成された螺旋溝により生じた電解液の乱流がおさまってから有機酸の酸度を測定するのが望ましいので、液混合部5と酸度測定部16間の間隔は、80mmぐらいが適当である。
なお、そのほかの本実施の形態2の有機酸分離測定装置100の構成ならびに動作は、前記実施の形態1と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0068】
以上のように、本実施の形態2によれば、液混合部5を、酸度測定用の電解液が流れる主管21に、酸分離用の溶離液が流れる側管22の一部を挿入し、該側管端部23を主管21の内径の中央位置に位置決めするとともに、前記側管端部23の外側壁232に、螺旋状の溝を形成するようにしたので、主管21内部を流れてきた電解液が、側管端部23付近で螺旋溝により乱流化され、この乱流となった前記電解液により、前記側管22内部を流れてきた有機酸を含む溶離液が吐出部23aから吐出された時点でかき回されて前記電解液中で拡散し、前記溶離液と前記電解液とを素早く混合させることが可能となる。そしてこれにより、液混合部5に高効率の混合能力をもたせることができ、当該装置100において、試料に含まれる非常に近隣したピークを持つ各種有機酸の酸度を、正確且つ短時間で連続して測定することができる。
【0069】
(実施の形態3)
以下に、本発明の実施の形態3による有機酸分離測定装置について図面を用いて詳細に説明する。
図4は、本実施の形態3にかかる液混合部の断面図である。図4において、21は前記ポンプA11から送液された電解液が流れる主管であり、22は前記分離カラム14から流出された、前記分離された有機酸を含む溶離液が流れる側管である。なお、23は該側管22の端部、23aは該側管22を流れる溶離液の吐出部を指す。さらに221は側管22の一部の螺旋形状部分を指す。
【0070】
図4に示されるように、液混合部5は、酸度測定用の電解液が流れる主管21に、酸分離用の溶離液が流れる側管22の一部を挿入し、さらに、該側管端部23を主管21の内径の中央位置で位置決めする。この際、前記側管端部23が、主管21内部を流れる電解液流出方向に対して平行であり、且つ該側管端部23の吐出部23aが、主管21の内径面に対して平行になるようにする。なお、側管端部23の吐出部23aの主管21に対する設置位置、ないし主管21及び側管22の内径は、前記実施の形態1と同様である。
【0071】
さらに、本実施の形態3では、主管21内に挿入された側管22の一部に、螺旋形状部分221を有するようにする。このように、主管21内部に挿入された側管22の一部が、螺旋状部分221をもつ場合は、主管21を流れてきた電解液が、該側管22の螺旋形状部分221によって乱流を形成する。そして、側管端部23の吐出部23aから吐出した溶離液は、該乱流となった前記電解液によってかき回されるため、前記電解液中に前記溶離液がうまく混合される。
【0072】
この後、液混合部5にて電解液に混入した有機酸を含む溶離液は、酸度測定部16に送液されるが、前記実施の形態1で述べたように、前記溶離液と電解液との混合は、該液混合部5と酸度測定部16間の流路においても行なわれる。この液混合部5と酸度測定部16間の距離は、前記実施の形態1で述べたように、50mmぐらいであることが望ましいが、本実施の形態3においても、前記側管22の螺旋形状部分221により生じた電解液の乱流がおさまってから、有機酸の酸度を測定するのが望ましいので、液混合部5と酸度測定部16間の間隔は、80mmぐらいが適当である。
【0073】
なお、そのほかの本実施の形態3の有機酸分離測定装置100の構成ならびに動作は、前記実施の形態1と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0074】
以上のように、本実施の形態3によれば、液混合部5を、酸度測定用の電解液が流れる主管21に、酸分離用の溶離液が流れる側管22の一部を挿入し、該側管端部23を主管21の内径の中央位置に位置決めするとともに、該挿入された側管22に螺旋形状部分221を有するようにしたので、主管21内部を流れてきた電解液が、側管22の螺旋形状部分221により乱流化され、この乱流となった前記電解液によって、前記側管22内部を流れてきた有機酸を含む溶離液が吐出部23aから吐出された時点でかき回されて前記電解液中で拡散し、これにより、前記溶離液と前記電解液とを素早く混合することが可能となる。この結果、液混合部5に高効率の混合能力をもたせることができ、当該装置100において、試料に含まれる非常に近隣したピークを持つ各種有機酸の酸度を、正確且つ短時間で連続して測定することができる。
【0075】
なお、本実施の形態3では、図4に示すように、側管22の螺旋部分221の直径を、主管21の内径に相当するように形成する例を挙げたが、図5に示すように、螺旋部分221の直径を小さくしてもよい。このように側管22を構成しても、前記同様の効果が得られる。
【0076】
ただし、この螺旋部分221の直径が小さすぎると、前記主管21の内側壁面近くを流れる電解液が乱流化せず、一方、その直径が大きすぎると、前記主管21中央部分を流れる電解液が乱流化されないので、前記主管21内部を流れる電解液の流速、粘度等を考慮して、その直径を選択する必要がある。
【0077】
(実施の形態4)
以下に、本発明の実施の形態4による有機酸分離測定装置について図面を用いて詳細に説明する。
図6は、本実施の形態4にかかる液混合部の断面図である。図6において、21は前記ポンプA11から送液された電解液が流れる主管であり、22は前記分離カラム14から流出された、前記分離された有機酸を含む溶離液が流れる側管である。なお、23は該側管22の端部、23aは該側管22を流れる溶離液の吐出部を指し、211は主管21の内側壁を指す。
【0078】
図6に示されるように、液混合部5は、酸度測定用の電解液が流れる主管21に、酸分離用の溶離液が流れる側管22の一部を挿入し、さらに、該側管端部23を主管21の内径の中央位置で位置決めする。この際、前記側管端部23が、主管21内部を流れる電解液の流出方向に対して平行であり、且つ該側管端部23の吐出部23aが、主管21の内径面に対して平行になるようにする。なお、側管端部23の吐出部23aの主管21に対する設置位置、ないし前記主管21及び側管22の内径は、前記実施の形態1と同様である。
【0079】
さらに、本実施の形態4では、主管21の、前記側管22の挿入部及びその前後の部分の内側壁211に、螺旋溝を形成する。この主管内部211に形成される溝の大きさは、M1のねじピッチ程度で0.2mm程度が良く、山の高さは0.1mm程度が良い。
【0080】
このように、前記主管21の内側壁211に溝を形成した場合は、該内側壁211に形成された螺旋溝により、主管21内部を流れてきた電解液が乱流となり、該側管端部23の吐出部23aから吐出した溶離液は、該乱流となった前記電解液によってかき回されるため、前記電解液と前記溶離液とがうまく混合される。なお、前記実施の形態1〜4でも述べたが、前記有機酸の酸度の測定は、前記主管21の内側壁211の螺旋溝により生じた電解液の乱流がおさまってから行なうのが望ましく、また、前記実施の形態1でも述べたように、前記液混合部5と酸度測定部16間の間隔は、50mmぐらいが特に望ましいことを考慮に入れると、前記主管21の側管22挿入部の前後30mm程度の内側壁211部分に、螺旋溝を形成するのが望ましい。
なお、そのほかの本実施の形態4の有機酸分離測定装置100の構成ならびに動作は、前記実施の形態1と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0081】
以上のように、本実施の形態4によれば、液混合部5を、酸度測定用の電解液が流れる主管21に、酸分離用の溶離液が流れる側管22の一部を挿入し、該側管端部23を主管21の内径の中央位置に位置決めするとともに、前記主管21の、前記側管22の挿入部及びその前後の部分の内側壁211に、螺旋状の溝を形成するようにしたので、主管21内部を流れてきた電解液が、螺旋溝により乱流化され、この乱流となった前記電解液により、前記側管22内部を流れてきた有機酸を含む溶離液が、吐出部23aから吐出された時点でかき回されて、前記電解液中で拡散し、前記溶離液と前記電解液とを素早く混合させることが可能となる。そしてこれにより、液混合部5に高効率の混合能力をもたせることができ、当該装置100において、試料に含まれる非常に近隣したピークを持つ各種有機酸の酸度を、正確且つ短時間で連続して測定することができる。
【0082】
(実施の形態5)
以下に、本発明の実施の形態5による有機酸分離測定装置について図面を用いて詳細に説明する。
図7は、本実施の形態5にかかる液混合部の断面図である。図7において、21は前記ポンプA11から送液された電解液が流れる主管であり、22は前記分離カラム14から流出された、前記分離された有機酸を含む溶離液が流れる側管である。なお、23は該側管22の端部、23aは該側管22を流れる溶離液の吐出部を指す。さらにxは該吐出部23aより上流側の主管内径を指し、yは該吐出部23aより下流側の主管内径を指す。なお、ここでいう下流とは、主管21を流れる電解液の流れる方向を意味する。
【0083】
図7に示されるように、液混合部5は、酸度測定用の電解液が流れる主管21の一部に、酸分離用の溶離液が流れる側管22を挿入し、さらに、該側管端部23を主管21の内径の中央位置で位置決めする。この際、前記側管端部23が、主管21内部を流れる電解液流出方向に対して平行であり、且つ該側管端部23の吐出部23aが、主管21の内径面に対して平行になるようにする。なお、側管端部23の吐出部23aの主管21に対する設置位置、ないし主管21及び側管22の内径は、前記実施の形態1と同様である。
【0084】
さらに、本実施の形態5では、主管21の内径を、前記側管22を流れてきた溶離液が吐出される吐出部23aの配置位置で変化させるようにする。ここでは、主管21の内径を、吐出部23aから下流側にいくにつれて徐々に増大させ、該吐出部23aより下流側の内径yを、該上流側の内径xより大きくする。この主管21の内径の増大比率は、内径yが内径xの1.2倍〜2倍ぐらいが良い。なお、ここでいう下流とは、主管21を流れる電解液の方向をさす。
【0085】
このように、主管21の、前記吐出部23aが位置する部分より下流側の内径を大きした場合、主管21を流れる電解液の圧力が、内径が大きくなることで開放されるため、側管22の吐出部23aから吐出された溶離液が拡散し易くなり、前記電解液と前記溶離液とがうまく混合される。
【0086】
また、本実施の形態5では、前記液混合部5が、前述の実施の形態1〜4と異なり、主管21中を流れる電解液、あるいは側壁22中を流れる溶離液に乱流が生じさせる構成ではないため、該液混合部5と酸度測定部16間の距離については、前記実施の形態1で述べたように、50mmぐらいであるのが望ましい。
【0087】
なお、そのほかの本実施の形態5の有機酸分離測定装置100の構成ならびに動作は、前記実施の形態1と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0088】
以上のように、本実施の形態5によれば、液混合部5を、酸度測定用の電解液が流れる主管21に、酸分離用の溶離液が流れる側管22の一部を挿入し、該側管端部23を主管21の内径の中央位置に位置決めするとともに、前記主管21の、前記吐出部23aが位置する部分より下流側の内径yを、その上流側の内径xより大きくするようにしたので、主管21内部を流れてきた電解液の圧力が、内径が大きくなることで開放されるため、前記側管22内部を流れてきた有機酸を含む溶離液が吐出部23aから吐出されたときに、該電解液中に溶離液が拡散し易くなり、前記溶離液と前記電解液とを素早く混合させることが可能となる。そしてこれにより、前記液混合部5に高効率の混合能力をもたせることができ、当該装置100において、試料に含まれる非常に近隣したピークを持つ各種有機酸の酸度を、正確且つ短時間で連続して測定することができる。
【0089】
(実施の形態6)
以下に、本発明の実施の形態6による有機酸分離測定装置について図面を用いて詳細に説明する。
図8は、本実施の形態6にかかる液混合部の断面図である。図8において、21は前記ポンプA11から送液された電解液が流れる主管であり、22は前記分離カラム14から流出された、前記分離された有機酸を含む溶離液が流れる側管である。なお、23は該側管22の端部、23aは該側管22を流れる溶離液の吐出部を指す。さらに、212は主管21を流れる電解液の流れを一部分阻害するための障害物であり、213は小さい網目で構成されたメンブレンフィルタである。
【0090】
図8に示されるように、液混合部5は、酸度測定用の電解液が流れる主管21に、酸分離用の溶離液が流れる側管22の一部を挿入し、さらに、該側管端部23を主管21の内径の中央位置で位置決めする。この際、前記側管端部23が、主管21内部を流れる電解液流出方向に対して平行であり、且つ該側管端部23の吐出部23aが、主管21の内径面に対して平行になるようにする。なお、側管端部23の吐出部23aの主管21に対する設置位置、ないし主管21及び側管22の内径は、前記実施の形態1と同様である。
【0091】
さらに、本実施の形態6では、主管21内の、前記側管22の吐出部23aの下流位置に、主管21内部を流れる電解液の流れを一時阻害するための障害物212とメンブレンフィルタ213とを有するようにする。
【0092】
このように、主管21内部の、前記側管22の吐出部23aが位置する部分より下流側に、障害物212及びメンブレンフィルタ213を設けた場合、該障害物212及びメンブレンフィルタ213により、主管21を流れる電解液の流れが一時遮断されるため、その電解液と、前記側管端部23の吐出部23aから吐出した溶離液とが混合し易くなる。但し、障害物212とメンブレンフィルタ213の抵抗が大きい場合は、電解液の流れが遮断される時間が長くなりすぎ、電解液と溶離液との混合に時間がかかり過ぎるため、これらの抵抗を適当なものに合わせる必要がある。
【0093】
また、本実施の形態6の前記液混合部5と酸度測定部16間の距離については、前記実施の形態5と同様の理由により、前記実施の形態1で述べたように、50mmぐらいであるのが望ましい。
【0094】
なお、そのほかの本実施の形態6の有機酸分離測定装置100の構成ならびに動作は、前記実施の形態1と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0095】
以上のように、本実施の形態6によれば、液混合部5を、酸度測定用の電解液が流れる主管21に、酸分離用の溶離液が流れる側管22の一部を挿入し、該側管端部23を主管21の内径の中央位置に位置決めするとともに、主管21内部の、前記側管22の吐出部23aが位置する部分より下流位置に、主管21を流れる電解液の流れを一時阻害するための障害物212とメンブレンフィルタ213とを設けるようにしたので、主管21内部を流れてきた電解液の流れが、該障害物212あるいはメンブレンフィルタ213により一時遮断されるため、前記側管22内部を流れてきた有機酸を含む溶離液と混合されやすくすることが可能となる。そしてこれにより、前記液混合部5に高効率の混合能力をもたせることができ、当該装置100において、試料に含まれる非常に近隣したピークを持つ各種有機酸の酸度を、正確且つ短時間で連続して測定することができる。
【0096】
なお、本実施の形態6では、主管21内部の、前記側管22の吐出部23aが位置する部分より下流側に、障害物212とメンブレンフィルタ213の両方を設ける場合を例に挙げたが、主管21内部の、前記側管22の吐出部23aが位置する部分より下流側に、障害物212あるいはメンブレンフィルタ213のいずれか一方を設ける構成にしてもよい。このように、いずれか一方を設ける構成としても、前述と同様の効果が得られる。
【0097】
(実施の形態7)
以下に、本発明の実施の形態7による有機酸分離測定装置について図面を用いて詳細に説明する。
図9は、本実施の形態7にかかる液混合部の断面図である。図9において、21は前記ポンプA11から送液された電解液が流れる主管であり、22は前記分離カラム14から流出された、前記分離された有機酸を含む溶離液が流れる側管である。なお、23は該側管22の端部、23aは該側管22を流れる溶離液の吐出部を指す。さらに、214は電解液と溶離液を機械的に混合するプロペラである。
【0098】
図9に示されるように、液混合部5は、酸度測定用の電解液が流れる主管21に、酸分離用の溶離液が流れる側管22の一部を挿入し、さらに、該側管端部23を主管21の内径の中央位置で位置決めする。この際、前記側管端部23が、主管21内部を流れる電解液流出方向に対して平行であり、且つ該側管端部23の吐出部23aが、主管21の内径面に対して平行になるようにする。なお、側管端部23の吐出部23aの主管21に対する設置位置、ないし主管21及び側管22の内径は、前記実施の形態1と同様である。
【0099】
さらに、本実施の形態7では、主管21内の、前記側管22の吐出部23aの下流位置に、羽根の回転により、電解液と溶離液とを混合するプロペラ214を設けるようにする。このプロペラ214は主管21の内部を流れる電解液を乱流にする効果を与えられるものであれば良い。
【0100】
このように、主管21内部の、前記側管22の吐出部23aが位置する部分より下流側に、プロペラ214を設けた場合、該プロペラ214の羽根の回転により、主管21を流れる電解液と、前記側管22の吐出部23aから吐出された溶離液とを機械的に混合することができるため、前記電解液と前記溶離液とを素早く混合させることができる。また、本実施の形態7における、液混合部5と酸度測定部16間の距離については、前記実施の形態1で述べたように、50mmぐらいであるのが望ましい。
【0101】
なお、そのほかの本実施の形態7の有機酸分離測定装置100の構成ならびに動作は、前記実施の形態1と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0102】
以上のように、本実施の形態7によれば、液混合部5を、酸度測定用の電解液が流れる主管21に、酸分離用の溶離液が流れる側管22の一部を挿入し、該側管端部23を主管21の内径の中央位置に位置決めするとともに、主管21内部の、前記側管22の吐出部23aが位置する部分より下流側に、プロペラ214を設けるようにしたので、該プロペラ214の羽根の回転により、主管21を流れる電解液と、前記側管22の吐出部23aから吐出された溶離液とを機械的に混合することができるため、前記電解液と前記溶離液とを素早く混合させることができる。そしてこれにより、前記液混合部5に高効率の混合能力をもたせることができ、当該装置100において、試料に含まれる非常に近隣したピークを持つ各種有機酸の酸度を、正確且つ短時間で連続して測定することができる。
【0103】
なお、前述の各実施の形態では、前記溶離液が前記電解液中で分散されるのを促進する構造を、前記側管の一部、または前記主管の前記側管挿入部及びその前後の部分のいずれか一方に設ける場合を例に挙げて説明したが、これら各実施の形態で説明した分散促進構造を組み合わせ、前記側管の一部と、前記主管の前記側管挿入部及びその前後の部分の両方に設ける構成にしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0104】
本発明にかかる有機酸分離測定装置は、便や飲料物その他に含まれる各種有機酸を、種類毎に分離定量して、各種有機酸の特性を考察するものとして有用である。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】本発明の実施の形態1にかかる有機酸分離測定装置の構成を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態1にかかる有機酸分離測定装置の液混合部の構成を示す断面図である。
【図3】本発明の実施の形態2にかかる有機酸分離測定装置の液混合部の構成を示す断面図である。
【図4】本発明の実施の形態3にかかる有機酸分離測定装置の液混合部の構成を示す断面図である。
【図5】本発明の実施の形態3にかかる有機酸分離測定装置の液混合部の別の構成例を示す断面図である。
【図6】本発明の実施の形態4にかかる有機酸分離測定装置の液混合部の構成を示す断面図である。
【図7】本発明の実施の形態5にかかる有機酸分離測定装置の液混合部の構成を示す断面図である。
【図8】本発明の実施の形態6にかかる有機酸分離測定装置の液混合部の構成を示す断面図である。
【図9】本発明の実施の形態7にかかる有機酸分離測定装置の液混合部の構成を示す断面図である。
【図10】従来の有機酸分離測定装置の構成を示す図である。
【図11】従来の有機酸分離測定装置の液混合部の構成を示す断面図である。
【図12】従来の有機酸分離測定装置の酸度測定部の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0106】
5,15 液混合部
6 配線
7 分離検出部
8 溶液タンク
9 溶離液タンク
10 デガッサー
11 ポンプA
12 ポンプB
13 液体注入部
14 酸分離カラム
16 酸度測定部
17 廃液タンク
18 電源
19 制御基板
20 ディスプレー
21 主管
22 側管
23 側管端部
23a 吐出部
24 作用電極
25 参照電極
26 対極
27 スペーサ
28 電解液
40 分離部分
50 測定部分
100,200 有機酸分離測定装置
211 内側壁
212 障害物
213 メンブレンフィルタ
214 プロペラ
221 螺旋形状部分
231 内側壁
232 外側壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料に含まれる複数種の有機酸を分離し、該分離した各有機酸の酸度を連続して測定する有機酸分離測定装置において、
前記複数種の有機酸を分離する有機酸分離部と、
前記有機酸分離で分離された有機酸を含む溶液と、キノン及び支持電解質が含有された電解液とを混合する液混合部と、
前記液混合部で混合された混合液中に含まれる前記分離された有機酸の酸度を連続して測定する測定部と、を備え、
前記液混合部は、
前記電解液が流れる主管の内部に、前記分離された有機酸を含む溶液が流れる側管の一部を、該側管の端部が前記主管の内径の中央に配置されるよう、挿入すると共に、
前記主管の前記側管挿入部及びその前後の部分、または前記側管の一部、のいずれか、あるいはその両方に、前記溶液が前記電解液中で分散されるのを促進する構造を有する、
ことを特徴とする有機酸分離測定装置。
【請求項2】
試料に含まれる複数種の有機酸を分離し、該分離した各有機酸の酸度を連続して測定する有機酸分離測定装置において、
有機酸の分離を行うための溶液を貯めた溶液タンクと、
前記溶液を送液する少なくとも1つのポンプと、
前記試料を前記溶液に注入する試料注入部と、
キノン及び支持電解質が含有された電解液を貯めた電解液タンクと、
前記試料注入部から注入された前記試料に含まれる複数種の有機酸を分離する酸分離カラムを有する系から供給される、前記分離した有機酸を含む溶液と、前記電解液を送液する少なくとも1つのポンプを有する系から供給される電解液とを混合する液混合部と、
前記分離された有機酸の酸度を連続して測定する測定部と、を備え、
前記液混合部は、
前記電解液が流れる主管の内部に、前記分離された有機酸を含む溶液が流れる側管の一部を、該側管の端部が前記主管の内径の中央に配置されるよう、挿入すると共に、
前記主管の前記側管挿入部及びその前後の部分、または前記側管の一部、のいずれか、あるいはその両方に、前記溶液が前記電解液中で分散されるのを促進する構造を有する、
ことを特徴とする有機酸分離測定装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の有機酸分離測定装置において、
前記側管の端部は、その内側壁に螺旋状の溝を有する、
ことを特徴とする有機酸分離測定装置。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の有機酸分離測定装置において、
前記側管の端部は、その外側壁に螺旋状の溝を有する、
ことを特徴とする有機酸分離測定装置。
【請求項5】
請求項1または請求項2に記載の有機酸分離測定装置において、
前記側管の一部は、螺旋状になっている、
ことを特徴とする有機酸分離測定装置。
【請求項6】
請求項1または請求項2に記載の有機酸分離測定装置において、
前記主管の前記側管挿入部、及びその前または後ろの部分は、その内側壁に螺旋状の溝を有する、
ことを特徴とする有機酸分離測定装置。
【請求項7】
請求項1または請求項2に記載の有機酸分離測定装置において、
前記主管は、前記側管端部の前記分離された有機酸を含む溶液が吐出される吐出部が位置する部分から、その内径が大きくなる、
ことを特徴とする有機酸分離測定装置。
【請求項8】
請求項1または請求項2に記載の有機酸分離測定装置において、
前記主管は、前記側管端部の前記分離された有機酸を含む溶液が吐出される吐出部が位置する部分より下流側に、前記電解液の流れを一部分阻害する障害物か、小さい網目で構成されたメンブレンフィルタの少なくとも一つを有する、
ことを特徴とする有機酸分離測定装置。
【請求項9】
請求項1または請求項2に記載の有機酸分離測定装置において、
前記主管は、前記側管端部の前記分離された有機酸を含む溶液が吐出される吐出部が位置する部分より下流側に、前記電解液と前記溶液を機械的に混合するプロペラを有する、
ことを特徴とする有機酸分離測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−329890(P2006−329890A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−156355(P2005−156355)
【出願日】平成17年5月27日(2005.5.27)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【出願人】(592068200)学校法人東京薬科大学 (32)