説明

有機電界発光素子

【課題】発熱による劣化を抑制して高輝度で長時間発光させることが可能な新規な構造を有する有機電界発光素子を提供する。
【解決手段】背面電極及び透明電極からなる電極間に発光層を有する有機電界発光素子であって、背面電極の発光層とは反対側の面に、熱放射率が0.8以上で、かつ厚さが50μm〜1000μmのセラミックシート或いは熱伝導率が200W/m・K以上のグラファイトシート、または上記グラファイトシートとこれに隣接した上記セラミックシートを有する有機電界発光素子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気エネルギーを光に変換して発光する有機電界発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
有機電界発光素子による面上発光装置の用途として、一般照明光源、美術館、博物館等の特別照明、又はLCDのバックライト等が期待されているが、未だ本格的な実用化には至っていない。その主な原因の一つに、有機電界発光素子自体の発熱による発光寿命の低下が挙げられる。
【0003】
基板上に設けた一対の電極とこの一対の電極の間に設けた発光帯とを少なくとも有し、基板の一対の電極とは反対側の面に接してグラファイトシートを設けた電界発光素子が開示され、該グラファイトシートを設けることにより発光時に生じる発熱を放熱、均熱化することができることが開示されている(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−59644号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、発熱による劣化を抑制して高輝度で長時間発光させることが可能な新規な構造を有する有機電界発光素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、背面電極の発光層とは反対側の面に、熱放射率の高いセラミックシート又はグラファイトシートを載設し、更に透明導電膜部分と、合金を包含した金属の細線構造部分とを有してなる透明導電膜を用いることによって、発生した熱を放射させ、有機電界発光素子の長寿命化を達成するものである。このような有機電界発光素子によって、上記目的が達成される。
【0006】
1.背面電極及び少なくとも1つの透明電極からなる電極間に少なくとも1つの発光層を有する有機電界発光素子であって、背面電極の発光層とは反対側の面に、熱放射率が0.8以上で、且つ厚さが50μm〜1000μmのセラミックシートを有することを特徴とする有機電界発光素子。
2.背面電極及び少なくとも1つの透明電極からなる電極間に少なくとも1つの発光層を有する有機電界発光素子であって、背面電極の発光層とは反対側の面に、熱伝導率が200W/m・K以上のグラファイトシートを有することを特徴とする有機電界発光素子。
3.背面電極及び少なくとも1つの透明電極からなる電極間に少なくとも1つの発光層を有する有機電界発光素子であって、背面電極の発光層とは反対側の面に隣接するように、熱伝導率が200W/m・K以上のグラファイトシートを有し、更に該グラファイトシートに隣接するように熱放射率が0.8以上で且つ、厚さが50μm〜1000μmのセラミックシートを有する事を特徴とする有機電界発光素子。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、発熱を抑制して長時間高輝度で発光させることができる新規な構造を有する有機電界発光素子を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の有機電界発光素子について以下に詳細に説明する。なお、本明細書において「〜」は、その前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味として使用される。
【0009】
[有機電界発光素子]
以下、本発明の有機電界発光素子(以下、適宜「本発明の素子」、「有機EL素子」と称する場合がある。)について説明する。本発明の素子は基板上に陰極と陽極を有し、両電極の間に有機発光層(以下、単に「発光層」と称する場合がある。)を含む有機化合物層を有する。発光素子の性質上、陽極及び陰極のうち少なくとも一方の電極は、透明であることが好ましい。
【0010】
本発明における有機化合物層の積層の態様としては、陽極側から、正孔輸送層、発光層、電子輸送層の順に積層されている態様が好ましい。更に、正孔輸送層と発光層との間、又は、発光層と電子輸送層との間には、電荷ブロック層等を有していてもよい。陽極と正孔輸送層との間に、正孔注入層を有してもよく、陰極と電子輸送層との間には、電子注入層を有してもよい。また、発光層としては一層だけでも良く、また、第一発光層、第二発光層、第三発光層等に発光層を分割しても良い。さらに各層は複数の二次層に分かれていてもよい。
【0011】
−有機発光層−
有機発光層は、電界印加時に、陽極、正孔注入層、又は正孔輸送層から正孔を受け取り、陰極、電子注入層、又は電子輸送層から電子を受け取り、正孔と電子の再結合の場を提供して発光させる機能を有する層である。
本発明における発光層は、発光材料のみで構成されていても良く、ホスト材料と発光材料の混合層とした構成でも良い。発光材料は蛍光発光材料でも燐光発光材料であっても良く、発光材料は1種であっても2種以上であっても良い。ホスト材料は電荷輸送材料であることが好ましい。ホスト材料は1種であっても2種以上であっても良く、例えば、電子輸送性のホスト材料とホール輸送性のホスト材料を混合した構成が挙げられる。さらに、発光層中に電荷輸送性を有さず、発光しない材料を含んでいても良い。
また、発光層は1層であっても2層以上であってもよく、それぞれの層が異なる発光色で発光してもよい。
【0012】
本発明においては、相異なる二種類あるいは三種類以上の発光材料を用いることにより、任意の色の発光素子を得ることができる。中でも、発光材料を適切に選ぶことにより、高発光効率および高発光輝度である白色発光素子を得ることができる。例えば、青色発光と黄色発光や水色発光と橙色発光、緑色発光と紫色発光のように、補色関係にある色を発光する発光材料を用いて白色を発光させることができる。また、青色発光と緑色発光と赤色発光の発光材料を用いて白色発光させることもできる。
なお、ホスト材料が発光材料の機能を兼ねて発光してもよい。例えば、ホスト材料の発光と発光材料の発光によって、素子を白色発光させてもよい。
【0013】
本発明においては、相異なる二種類以上の発光材料を同一発光層に含んでいても良く、また、例えば、青色発光層と緑色発光層と赤色発光層、あるいは青色発光層と黄色発光層のようにそれぞれの発光材料を含む層を積層した構造であっても良い。
【0014】
発光層の発光色の調整手法には以下のような手法もある。これらの一又は複数の手法を用いて発光色を調整することができる。
【0015】
(発光層よりも光取り出し側にカラーフィルタを設けて調整する手法)
カラーフィルタは、透過する波長を限定することで発光色を調整する。カラーフィルタとしては、例えば青色のフィルターとして酸化コバルト、緑色のフィルターとして酸化コバルトと酸化クロムの混合系、赤色のフィルターとして酸化鉄などの公知の材料を用い、例えば真空蒸着法などの公知の薄膜成膜法を用いて透明基板上に形成してもよい。
【0016】
(発光を促進したり阻害したりする材料を添加して発光色を調整する手法)
例えば、ホスト材料からエネルギーを受け取り、このエネルギーを発光材料へ移す、いわゆるアシストドーパントを添加し、ホスト材料から発光材料へのエネルギー移動を容易にすることができる。アシストドーパントとしては、公知の材料から適宜選択され、例えば後述する発光材料やホスト材料として利用できる材料から選択されることがある。
【0017】
(発光層よりも光取り出し側にある層(透明基板を含む)に、波長を変換する材料を添加して発光色を調整する手法)
この材料としては公知の波長変換材料を用いることができ、例えば、発光層から発せられた光を他の低エネルギー波長の光に変換する蛍光変換物質を採用することができる。蛍光変換物質の種類は目的とする有機EL装置から出射させようとする光の波長と発光層から発せられる光の波長とに応じて適宜選択される。また、蛍光変換物質の使用量は濃度消光を起さない範囲内でその種類に応じて適宜選択可能である。蛍光変換物質は1種のみを用いてもよいし、複数種を併用してもよい。複数種を併用する場合には、その組合せにより青色光、緑色光および赤色光以外に、白色光や中間色の光を放出することができる。
【0018】
本発明に使用できる蛍光発光材料の例としては、特に制限はなく、公知のものから適宜選択することができる。例えば、特開2004−146067号公報の(0027)、特開2004−103577号公報の(0057)等に記載のものを挙げることができるが、本発明はこれに限定されない。
【0019】
また、本発明に使用できる燐光発光材料は、特に制限はなく、公知のものから適宜選択することができる。例えば、特開2004−221068号公報の(0051)から(0057)等に記載のものを挙げることができるが、本発明はこれに限定されない。
【0020】
本発明の有機電界発光素子における、基板、電極、各有機層、その他の層、等の他の構成要素については、例えば、特開2004−221068号公報の(0013)から(0082)、特開2004−214178号公報の(0017)から(0091)、特開2004−146067号公報の(0024)から(0035)、特開2004−103577号公報の(0017)から(0068)、特開2003−323987号公報(出光)の(0014)から(0062)、特開2002−305083号公報(三菱化学)の(0015)から(0077)、特開2001−172284号公報の(0008)から(0028)、特開2000−186094号公報(出光)の(0013)から(0075)、特表2003−5897号公報(プリンストン)の(0016)から(0118)等に記載のものが本発明においても同様に適用することができる。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0021】
本発明の有機電界発光素子は、陽極と陰極との間に直流(必要に応じて交流成分を含んでもよい)電圧、又は直流電流を印加することにより、発光を得ることができる。
本発明の有機電界発光素子の駆動方法については、特開平2−148687号、同6−301355号、同5−29080号、同7−134558号、同8−234685号、同8−241047号の各公報、特許第2784615号、米国特許5828429号、同6023308号の各明細書、等に記載の駆動方法を適用することができる。
【0022】
本発明の有機EL素子は、特に強い発熱を伴う高輝度発光させた場合、好ましくは輝度が1000cd/m2以上、より好ましくは3000cd/m2以上で発光させた場合に、特に顕著な放熱効果を奏する。
【0023】
次に、本発明の実施形態に係る有機EL素子について図1を参照し、以下に説明する。
[放熱板組み合わせ構成1]
図1に示すように、本発明の実施の形態に係る有機EL素子は、透明基板5上に、陽極である透明電極1が形成され、該透明電極1上に有機発光材料を含む有機層(発光層)2が形成され、該有機層2上に陰極である背面電極3が形成され、該背面電極に隣接する有機層2の反対側の面に放熱板4が密着されており、透明電極1−対向電極3間に電流が流されると有機層2で光を発生し、発生した光を透明電極1側の光取り出し出向面5から素子外部へ取り出す素子である。
【0024】
[セラミックシート]
以下、本発明で用いられるセラミックシートについて、詳細に説明する。
本発明のセラミックシートは、基材上に珪酸ナトリウム及び珪酸カリウムの少なくともいずれかを含有する塗膜を有することを特徴とする。
【0025】
基材としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルサルフォン、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリアリレート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリイミド、トリアセチルセルロース等の可撓性ポリマーのほか、住友3M製アクリルソフトテープ9894FR−10等の両面粘着テープ等が挙げられる。
【0026】
セラミックシートの厚さは50μm〜1000μmであり、好ましくは80μm〜800μm、より好ましくは100μm〜500μmである。シート厚みが50μm未満であると、熱放射率が低下してしまい、さらには脆くなって折り曲げ強度が低下してしまう。一方、1000μmを超えると、熱容量が大きくなることから、熱を放射しにくくなり、さらには折り曲げにくくなって可撓性とは言いがたい。また、本発明のセラミックシートの熱放射率(JIS A 1423)は0.8以上であり、0.85以上であることが好ましく、0.9以上0.99以下であることがより好ましい。保熱性の観点から、熱放射率は高い程好ましい。熱放射とは、熱エネルギーの電磁波変換による熱放出のことであり、熱放射率とは、物体が熱を帯びている時に出す赤外線の強さを表す数値を、「理想黒体」を1.0(100%)にしたときの比率で表したものである。
【0027】
本発明のセラミックシートは、基材上に、珪酸ナトリウム及び珪酸カリウムの少なくともいずれかを含有する塗膜を有する。特に、珪酸ナトリウム、珪酸カリウムの両者を混合使用することが好ましい。塗膜には、ナトリウムやカリウム以外のアルカリ珪酸塩、例えば、珪酸リチウムも含有させることができる。この塗膜は、更に、金属酸化物を含有することができる。該金属酸化物として、酸化珪素、酸化アルミニウムが好ましい。また、塗膜は、更に酸化錫を含有することができる。酸化錫は、珪酸ナトリウム及び珪酸カリウムの少なくともいずれかの系に添加しても良いし、珪酸ナトリウム及び珪酸カリウムの少なくともいずれかの系に金属酸化物を添加し、更に酸化錫を加えても良い。本発明の塗膜に含有させる金属酸化物としては、珪酸アルミニウム(カオリン)、珪酸マグネシウム(タルク)、酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化錫の他に、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化アンチモン、酸化ゲルマニウム、酸化硼素、酸化カルシウム、酸化バリウム、酸化ストロンチウム、酸化ビスマス等を挙げることができる。
【0028】
これらの金属化合物を含むカオリン、タルク等の天然鉱物も含有させることができる。また、金属の窒化物を含有させることができる。金属窒化物として、具体的には、窒化硼素、窒化ジルコニウム、窒化錫、窒化ストロンチウム、窒化チタン、窒化バリウム等を挙げることができる。本発明における塗膜に含有させる上記金属酸化物、金属窒化物等は、微粉末の状態で使用するのがよい。微粉末にするには、ボールミル、ジェットミル等で粉砕するのがよい。
【0029】
珪酸ナトリウムと珪酸カリウムを混合使用する場合、珪酸ナトリウムと珪酸カリウムの割合は重量比で、珪酸カリウム1に対して珪酸ナトリウム0.5〜7(固形分ベース)が好ましい。珪酸アルカリの塗膜中の含有量は、3〜30重量%が好ましい。また、金属酸化物の量的割合は、塗膜固形分中12〜92重量%が好ましい。酸化錫の塗膜中固形分に対する割合は、6〜45重量%が好ましい。
【0030】
塗膜を形成するためのコーティング材は、基本成分として、珪酸ナトリウム及び珪酸カリウムの少なくともいずれかを含む。珪酸ナトリウム及び珪酸カリウムは、それぞれ水溶液の形態で入手できる。珪酸ナトリウムの水溶液は水ガラスとして知られるものである。珪酸ナトリウム、珪酸カリウムの水溶液は、水で希釈して使用して用いることができる。この珪酸ナトリウム及び珪酸カリウムの少なくともいずれかを含有する水溶液をコーティング材として、吹き付け、刷毛等による塗布又はスクリーン印刷等の方法で、基材上にコーティングする。コーティングした後は、大気中で風乾する。風乾後には基材の表面に塗膜が生成する。得られたセラミックシートは、優れた放熱性を示す。
【0031】
塗膜を形成するコーティング材には、更に、酸化珪素や酸化アルミニウムの微粒子を添加することができる。この場合は、コーティング液は懸濁液となる。この懸濁液を同様にして基材上にコーティングして得られた放熱体は、顕著な放熱効果を示す。更に、酸化錫の微粉末を添加することができる。酸化錫を添加したコーティング材は、更に優れた放熱性を示す。コーティング液は適度の粘度にする必要があるので、添加物の種類や量に応じて適宜水を添加して液の粘度を調整するのがよい。
【0032】
本発明では、背面電極の発光層を有する側とは反対面にセラミックシートを載設する。なお、本発明のEL素子は、放熱性の観点から、必ずしも防湿フィルムを必要としないが、図2に示される態様のように、発光部7の全体または発光部7および供電部5の全体を防湿フィルム6で被覆する場合には、防湿フィルム6を挟んで背面電極1に載設することができる。但し、放熱性の観点からは、背面電極に直接接するように載設することが好ましい。
【0033】
セラミックシートの面積には特に制限はなく、素子設計上に制約がない限り、より大面積なものが放熱性の観点から好ましいが、面積が大き過ぎるとEL素子の軽量性、柔軟性、設置場所の自由度の観点では好ましくない。セラミックシートの面積は、EL素子の発光部分の面積の 0.7倍〜 2倍であることが好ましく、 0.9倍〜 1.5倍であることがさらに好ましい。
【0034】
EL素子へのセラミックシートの載設方法は、特に制限はなく、例えば、接着剤による装着、EL素子防湿フィルム6への埋め込み、樹脂による基板への塗り固め等の方法を挙げることができる。
【0035】
セラミックシートは、放熱効果を高める目的で、これらを冷却する機構を備えていることも好ましい。具体的には、セラミックシートに冷却フィンを設置する方法や、ペルチェ素子等の電子冷却素子を設置する方法等が挙げられる。
【0036】
[グラファイトシート]
本発明で用いられるグラファイトシートについて、詳細に説明する。ここで用いられるグラファイトシートとは、グラファイトを実質的に主成分とするシートであり、グラファイトシート中、炭素原子を好ましくは98.0質量%以上、より好ましくは99.0質量%以上、更に好ましくは99.5質量%以上含有するものである。
本発明で用いるグラファイトシートは、上記の中でも、特に電気伝導性および熱伝導性に優れた高配向性グラファイトシートであることが好ましい。以下、高配向性グラファイトシートの製法について記すが、これらに限定されるものではない。
【0037】
高配向性グラファイトシートは、延伸した芳香族イミドフィルムを不活性ガス雰囲気で2600℃で処理することにより得られる。フィルムを延伸することで、芳香族ユニットがフィルム面に平行に配向し、配向性グラファイトが得やすくなると考えられる。さらに別の製法として、炭素粉末と、フェノール樹脂との混合物を、所定形状になるよう加熱し加圧硬化することによっても高配向性グラファイトシートが得られる。ここでいう炭素粉末は、炭素を主成分とするものであれば適用可能で、例えばカーボンブラック、グラファイト、木炭粉等を挙げることができる。炭素粉末の形状は、特に限定されるものではないが、中でも球状の炭素粉末は、フェノール樹脂中に均一に分散し易く、素子を形成したときの信頼性が高く好ましい。フェノール樹脂としては、その合成条件によってノボラック型とレゾール型が知られているが、本発明はいずれも適用可能である。
【0038】
さらに、グラファイトシートの電気伝導度は高いほど好ましく、1000 S/cm以上であることが好ましく、5000 S/cm以上であることがより好ましい。
有機EL素子における発熱による温度上昇を抑制する観点では、熱伝導率が高いことが好ましく、具体的には熱伝導率が200W/m・K以上1000W/m・K以下であることが好ましく、より好ましくは300W/m・K以上1000W/m・K以下、更に好ましくは400W/m・K以上1000W/m・K以下である。
また、グラファイトシートの厚みは、50μm〜5nmであることが好ましく、80μm〜3nmがより好ましく、100μm〜1nmがさらに好ましい。
【0039】
[セラミックシートとグラファイトシートの組み合わせ効果]
本発明における有機電界発光素子は電流駆動により発光する機構であることから透明電極の抵抗に影響され、透明電極と電気配線の接触部分と該接触部分から最も離れた透明電極部分では発熱分布が大きく異なる。本発明によるグラファイトシートは、熱伝導率が優れるため、この発熱分布を均一化する役割を有する。該グラファイトシートにより発熱分布が均一化された状態で、更に放熱性の優れるセラミックシートを組み合わせる事で、最も効率よく放熱が実現できるのが本発明の大きな特徴の一つである。
【0040】
本発明の素子は、外部環境からの湿度、酸素の影響を排除するための水蒸気バリア膜が有してもよい。該水蒸気バリア膜は蒸着またはCVDにより直接膜として該素子を被服してもよいし、該水蒸気バリア膜を付与した水蒸気バリアフィルムで被覆してもよい。また、ガラス又は金属板により挟んで淵を防湿樹脂等で被覆してもよい。以下において、本発明で用いる水蒸気バリアフィルムについて詳細に説明する。
【0041】
《水蒸気バリアフィルム》
本発明で用いる水蒸気バリアフィルムは、基材フィルム上に、少なくとも2層の無機ガスバリア層を有する水蒸気バリアフィルムであり、2層の無機ガスバリア層の間に少なくとも1層のアルカリ土類金属一酸化物からなる吸湿性層を有することを特徴とする。本発明で用いる水蒸気バリアフィルムは積層型の水蒸気バリアフィルムであり、少なくとも2層の無機ガスバリア層の間にアルカリ土類金属一酸化物からなる吸湿性層を有することで、高いガスバリア能と高い吸湿能とを両立させることができる。
本発明で用いる水蒸気バリアフィルムは、基材フィルム上に、少なくとも2層の無機ガスバリア層と、少なくとも1層の吸湿性層とを有し、更に、必要に応じて有機層や帯電防止層等を設けることができる。
【0042】
(無機ガスバリア層)
本発明における「無機ガスバリア層」とは、無機材料で構成されるガス分子の透過を抑制しうる緻密な構造の薄膜である層を意味し、例えば、金属化合物からなる薄膜(金属化合物薄膜)が挙げられる。無機ガスバリア層の形成方法は、目的の薄膜を形成できる方法であればいかなる方法でも用いることができる。無機ガスバリア層の形成方法としては、例えば、スパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法、プラズマCVD法などが適しており、具体的には特許第3400324号、特開2002−322561号、特開2002−361774号各公報記載の形成方法を採用することができる。
無機ガスバリア層に含まれる成分は、上記性能を満たすものであれば特に限定されないが、例えば、Si、Al、In、Sn、Zn、Ti、Cu、Ce、またはTa等から選ばれる1種以上の金属を含む酸化物、窒化物もしくは酸化窒化物などを用いることができる。
【0043】
また、前記無機ガスバリア層の厚みに関しても特に限定されないが、厚みが厚すぎると曲げ応力によるクラックの恐れがあり、薄すぎると膜が島状に分布するため、いずれも水蒸気バリア性が悪くなる傾向がある。このため、各無機ガスバリア層の厚みは、それぞれ5nm〜1000nmの範囲内であることが好ましく、さらに好ましくは、10nm〜1000nmであり、最も好ましくは、10nm〜200nmである。
また、2層以上の無機ガスバリア層は、各々が同じ組成であってもよいし、異なる組成であってもよく、特に制限はされない。
【0044】
本発明において、水蒸気バリア性と高透明性とを両立させるには機ガスバリア層として、珪素酸化物や珪素窒化物または珪素酸化窒化物を用いるのが好ましい。無機ガスバリア層として珪素酸化物であるSiOxを用いる場合、良好な水蒸気バリア性と高い光線透過率とを両立させるためには1.6<x<1.9であることが望ましい。無機ガスバリア層として珪素窒化物であるSiNyを用いる場合は、1.2<y<1.3であることが好ましい。yがこの範囲であれば、着色も殆どなく、ディスプレイ用途に好適い用いられる。
【0045】
また、無機ガスバリア層として珪素酸化窒化物であるSiOxyを用いる場合、密着性向上を重視するのであれば、酸素リッチの膜とすることが好ましく、具体的には1<x<2および、0<y<1を満足することが好ましい。一方、水蒸気バリア性の向上を重視する場合には、窒素リッチの膜とすることが好ましく、具体的には0<x<0.8および0.8<y<1.3を満足することが好ましい。
【0046】
(吸湿性層)
本発明において「吸湿性層」とは、アルカリ土類金属一酸化物から構成される層を意味する。前記アルカリ土類金属一酸化物に含まれるアルカリ土類金属としては、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Raが挙げられる。本発明においては何れのアルカリ土類金属をも使用することができるが、コスト、高純度材料の入手性、実用性を考慮すると、Mg、Ca、Sr、Baが好適である。さらに吸湿能や安全性の観点からはCa、Srが好ましく、Srが最も好ましい。
【0047】
前記「アルカリ土類一酸化物」とは、アルカリ土類金属1原子に酸素約1原子が結合した酸化物である。アルカリ土類金属を「M」とすると、吸湿性層の組成は「MOz」と表記することができ、zは0.8<z<1.2を満足することが好ましく、0.9<z<1.1を満足することが最も好ましい。
アルカリ土類一酸化物は、十分に高い吸湿性と透明性とを両立し、かつ吸湿前後の体積変化が比較的小さいという特徴を有する。またアルカリ金属に比べて層内拡散が起こりにくく、イオン性金属の拡散を嫌うようなデバイス材料への適用には好適である。更に、シリカゲルやゼオライトのような物理吸着ではなく分子内に水分子を取り込むものであるため、吸湿した水分子が再脱着することもなく本発明の目的には好適である。
【0048】
吸湿性層の成膜法としては、アルカリ土類金属一酸化物の分散物を塗設してから400℃以上の高温で焼結する方法を用いてもよいが、この場合、基材フィルムが耐熱性上の制約を受けたり、高吸湿性材料を不活性雰囲気下でハンドリングすることが困難になったりすることがある。従って、安定した性能を得る観点からは、吸湿性層は後述する真空成膜法により形成されることが好ましい。真空成膜法としては、例えば、アルカリ土類金属一酸化物のソースを真空蒸着する方法、アルカリ土類金属または同部分酸化物を酸化雰囲気で真空蒸着する方法、アルカリ土類金属過酸化物を真空蒸着する方法等が挙げられる。また、上記真空成膜法においては、イオンアシストを組み合わせたイオンプレーティング法を用いてもよい。また、真空成膜法としては、特開2000−26562号公報に記載されているような、ソースの取扱いが容易で品質のよい成膜が可能なアルカリ土類金属過酸化物をターゲットとしたスパッタリング法が最も望ましい。
【0049】
共蒸着法や共スパッタ法により、アルカリ土類金属一酸化物にSiOx、SiNy、SiOxy、SiCなどの無機化合物を共存させた吸湿性層を形成したり、塗設法により無水酢酸・アセト酢酸をアルカリ土類金属一酸化物に共存させた吸湿性層を形成したりすることも技術的には可能である。しかし、これらの複合層に比して、本発明にしたがってアルカリ土類金属一酸化物を単独で成膜した吸湿性層は、均一性、透明性、酸素バリア性に優れている。不活性な共存物との間で物理的または化学的な変化を起こすとは考えにくいことから、本発明の吸湿性層がこのような特徴を有することは予想外であった。
【0050】
吸湿性層の厚みは、吸湿性、平滑性、透過性、屈曲耐性の観点から、10nm〜200nmが好ましく、10nm〜100nmが更に好ましく、10nm〜50nmが特に好ましい。吸湿性層の厚みが上記範囲であると、アルカリ土類金属一酸化物が連続層を形成することが容易であり、吸湿能力を有し十分な効果が得られる。また、欠陥が発生せず、剥離破壊、白色化や光学干渉模様が観られない。
【0051】
また、吸湿性層は均一層であることが好ましい。特に、厚みが10nm〜200nmの均一層であることが好ましい。ここで「均一層」とは、層内の組成が均一である層を意味する。均一層であれば、力学的、光学的に不連続な境界が生じにくく、ディスプレイ材料として好適であるという利点がある。
【0052】
(有機層)
本発明で用いる水蒸気バリアフィルムは、前記無機ガスバリア層および前記吸湿性層の脆性やバリア性を向上させる為に、各層に隣接した有機層を設けることができる。有機層は、紫外線もしくは電子線硬化性モノマー、オリゴマーまたは樹脂を、塗布または蒸着で成膜したのち、紫外線または電子線で硬化させた層であることが好ましい。
【0053】
有機層について、モノマーを架橋させて得られた高分子を主成分として形成した有機層を用いる場合を例に説明する。モノマーとしては、紫外線もしくは電子線の照射により架橋できる基を有するモノマーであれば特に限定は無いが、アクリロイル基またはメタクリロイル基、オキセタン基を有するモノマーを用いることが好ましい。
上記有機層は、例えば、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトール(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン(メタ)アクリレート、エチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレートなどのうち、2官能以上のアクリロイル基またはメタクリロイル基を有するモノマーを架橋させて得られる高分子を主成分とすることが好ましい。これらの2官能以上のアクリロイル基またはメタクリロイル基を有するモノマーは2種類以上を混合して用いてもよいし、また1官能の(メタ)アクリレートを混合して用いてもよい。
【0054】
前記オキセタン基を有するモノマーとしては、例えば、特開2002−356607号公報の一般式(3)〜(6)に記載されている構造を有するモノマーが好適に挙げられる。この場合、これらを任意に混合してもよい。
【0055】
前記有機層は、ディスプレイ用途に要求される耐熱性、耐溶剤性の観点から、特に架橋度が高く、ガラス転移温度が200℃以上である、イソシアヌル酸アクリレート、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレートを主成分とすることがさらに好ましい。有機層の厚みについても特に限定はされないが、有機層の厚みが薄すぎると、厚みの均一性を得ることが困難となるため、無機ガスバリア層の構造欠陥を効率よく有機層で埋めることができずに、バリア性の向上は見られない。また、逆に有機層の厚みが厚すぎると、曲げ等の外力により有機層がクラックを発生し易くなるためバリア性が低下してしまう不具合が発生してしまう。かかる観点から、上記有機層の厚みは、10nm〜5000nmが好ましく、10nm〜2000nmさらに好ましく、10nm〜5000nmが最も好ましい。
【0056】
本発明の有機層の形成方法としては、まず、架橋性のモノマー等を含む塗膜を形成し、その後、該塗膜に電子線もしくは紫外線を照射して硬化させる方法が挙げられる。塗膜を形成する方法としては、例えば、塗布による方法、真空成膜法等を挙げることができる。真空成膜法としては、特に制限はないが、蒸着、プラズマCVD等の成膜方法が好ましく、有機物質モノマーの成膜速度を制御しやすい抵抗加熱蒸着法がより好ましい。架橋性モノマー等の架橋方法に関しては特に制限はないが、電子線や紫外線等による架橋が、真空槽内に容易に取り付けられる点や架橋反応による高分子量化が迅速である点で望ましい。
【0057】
塗布方式で塗膜を塗設する場合には、従来用いられる種々の塗布方法、例えば、スプレーコート、スピンコート、バーコート等の方法を用いることができる。
塗膜の形成方法として、塗布法、蒸着法のいずれを用いてもよいが、直下の無機ガスバリア層成膜後に機械的な応力がかかりにくく、かつ薄膜形成に有利な真空成膜法を用いることが好ましい。
【0058】
(その他の機能層ならびに各層の構成)
本発明で用いる水蒸気バリアフィルムは、基材フィルムと無機ガスバリア層との間に、公知のプライマー層または無機薄膜層を設置することができる。前記プライマー層としては、例えばアクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂等の樹脂層、親水性樹脂共存下でゾルーゲル反応により形成する有機無機ハイブリッド層、無機蒸着層またはゾル−ゲル法による緻密な無機層を挙げることができる。この無機蒸着層としては、シリカ、ジルコニア、アルミナ等の蒸着層が好ましい。無機蒸着層は、真空蒸着法、スパッタリング法等により形成することができる。
【0059】
本発明において、吸湿性層は基材フィルム上の2つの無機ガスバリア層の間に設置してあれば、2つの無機ガスバリア層と隣接する位置、無機ガスバリア層と有機層とに隣接する位置、2つの有機層に隣接する位置のいずれに配置してもよいが、吸湿性層の脆弱性や吸湿後の体積膨張による変形の影響を少なくするという観点からは、2つの有機層に隣接する形で2つの無機ガスバリア層の間に配置されることが最も望ましい。
【0060】
吸湿性層の基材フィルムとは反対側、即ち、基材フィルムが設けられている側を内側とみなした際に、吸湿性層の外側に設置した無機ガスバリア層のさらに外側に、無機ガスバリア層・吸湿性層・有機層を任意の順序で1層以上設置してもよい。また吸湿性層の外側に設置した無機ガスバリア層の外側または最外層にそれぞれ種々の機能層を設置してもよい。該機能層の例としては、反射防止層、偏光層、カラーフィルター、紫外線吸収層および光取出効率向上層等の光学機能層;ハードコート層や応力緩和層等の力学的機能層;帯電防止層や導電層などの電気的機能層;防曇層;防汚層;被印刷層などが挙げられる。これらの機能層は無機ガスバリア層、吸湿性層および有機層を設置した基材フィルムの反対側に設置してもよい。
また、本発明で用いる水蒸気バリアフィルムは、基材フィルムの両面に無機ガスバリア層、吸湿性層および有機層などを設けることができる。
更に、前記吸湿性層の基材フィルムとは反対側に、少なくとも無機ガスバリア層と有機層と無機ガスバリア層とがこの順に積層されたガスバリア性ラミネート層を設けることもできる。ガスバリア性ラミネート層は、フィルム反対面からの水分子の侵入を防ぐことでフィルム基板の寸法変化を抑制することでガスバリア層への応力集中や破壊を防止し、結果として耐久性の高いディスプレイを供給しうるという特徴を有する。
【0061】
(基材フィルム)
本発明で用いる水蒸気バリアフィルムに用いられる基材フィルムは、上記各層を保持できるフィルムであれば特に制限はなく、使用目的等に応じて適宜選択することができる。前記基材フィルムとしては、具体的に、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、メタクリル酸−マレイン酸共重合体、ポリスチレン、透明フッ素樹脂、ポリイミド樹脂、フッ素化ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、セルロースアシレート樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリカーボネート樹脂、脂環式ポリオレフィン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスルホン樹脂、シクロオレフィルンコポリマー、フルオレン環変性カーボネート樹脂、脂環変性ポリカーボネート樹脂、アクリロイル化合物などの熱可塑性樹脂が挙げられる。これらの樹脂のうち、好ましい例としては、ポリエステル樹脂で特にポリエチルナフタレート樹脂(PEN)、ポリアリレート樹脂(PAr)、ポリエーテルスルホン樹脂(PES)、フルオレン環変性カーボネート樹脂(BCF−PC:特開2000−227603号公報の実施例−4の化合物)、脂環変性ポリカーボネート樹脂(IP−PC:特開2000−227603号公報の実施例―5の化合物)、アクリロイル化合物(特開2002−80616号公報の実施例−1の化合物)等の化合物からなるフィルムが挙げられる。
【0062】
前記基材フィルムを構成する化合物としては、下記一般式(1)で表されるスピロ構造を有する樹脂または下記一般式(2)で表されるカルド構造を有する樹脂が好ましい。
【0063】
一般式(1)
【化1】

【0064】
〔一般式(1)中、環αは単環式または多環式の環を表し、2つの環はスピロ結合によって結合している。〕
【0065】
一般式(2)
【化2】

【0066】
〔一般式(2)中、環βおよび環γは単環式または多環式の環を表し、2つの環γはそれぞれ同一若しくは異なっていてもよい。また、環βおよび環γは、環β上の1つの4級炭素原子によって連結される。〕
【0067】
前記一般式(1)および(2)で表される樹脂は、高耐熱性、高弾性率かつ高い引張り破壊応力を有する化合物であるため、製造プロセスにおいて種々の加熱操作が要求され、かつ屈曲させても破壊しにくい性能が要求される有機EL素子等の基板材料として好適に用いることができる。
【0068】
一般式(1)における環αとしては、例えば、インダン、クロマン、ベンゾフランが挙げられる。一般式(1)で表されるスピロ構造を有する樹脂の好ましい例としては、下記一般式(3)で表されるスピロビインダン構造を繰り返し単位中に含むポリマー、下記一般式(4)で表されるスピロビクロマン構造を繰り返し単位中に含むポリマー、下記一般式(5)で表されるスピロビベンゾフラン構造を繰り返し単位中に含むポリマーを挙げることができる。
【0069】
一般式(3)
【化3】

【0070】
一般式(3)中、R31、R32、R33はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表す。また、R31、R32、R33のそれぞれが連結して環を形成してもよい。mおよびnはそれぞれ独立に1〜3の整数を表す。上記置換基の好ましい例としては、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基が挙げられる。R31およびR32はそれぞれ独立して、水素原子、メチル基またはフェニル基であることが更に好ましい。また、R33としては、水素原子、塩素原子、臭素原子、メチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基またはフェニル基であることが更に好ましい。
【0071】
一般式(4)
【化4】

【0072】
一般式(4)中、R41およびR42はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表す。また、R41およびR42のそれぞれが連結して環を形成してもよい。mおよびnはそれぞれ独立に1〜3の整数を表す。前記置換基の好ましい例としては、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基が挙げられる。R41としては、水素原子、メチル基またはフェニル基が更に好ましく、R42としては、水素原子、塩素原子、臭素原子、メチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基またはフェニル基が更に好ましい。
【0073】
一般式(5)
【化5】

【0074】
一般式(5)中、R51およびR52はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表す。また、R51、R52のそれぞれが連結して環を形成してもよい。mおよびnはそれぞれ独立に1〜3の整数を表す。上記置換基の好ましい例としては、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基が挙げられる。R51としては、水素原子、メチル基またはフェニル基が好ましい。また、R52としては、水素原子、塩素原子、臭素原子、メチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基またはフェニル基が好ましい。
【0075】
また、前記一般式(2)における環βとしては、例えばフルオレン、1,4−ビベンゾシクロヘキサンが挙げられ、環γとしては、例えばフェニレン、ナフタレンが挙げられる。前記一般式(2)で表されるカルド構造を有する樹脂の好ましい例として、下記一般式(6)で表されるフルオレン構造を繰り返し単位中に含むポリマーを挙げることができる。
【0076】
一般式(6)
【化6】

【0077】
一般式(6)中、R61およびR62はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表す。また、R51、R52のそれぞれが連結して環を形成してもよい。jおよびkはそれぞれ独立に1〜4の整数を表す。上記置換基の好ましい例としては、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基が挙げられる。R51およびR52としては、それぞれ独立に、水素原子、塩素原子、臭素原子、メチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基またはフェニル基であることが更に好ましい。
【0078】
前記一般式(3)〜(6)で表される構造を繰り返し単位中に含む樹脂は、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミドまたはポリウレタンなど種々の結合方式で連結されたポリマーであってもよいが、一般式(3)〜(6)で表される構造を有するビスフェノール化合物から誘導されるポリカーボネート、ポリエステルまたはポリウレタンであることが好ましい。
【0079】
以下に一般式(1)または一般式(2)で表される構造を有する樹脂の好ましい具体例(樹脂化合物(I−1)〜(FL−11))を挙げる。但し、本発明はこれに限定されるものではない。
【0080】
【化7】

【0081】
【化8】

【0082】
【化9】

【0083】
【化10】

【0084】
【化11】

【0085】
【化12】

【0086】
本発明における基材フィルムに用いることのできる一般式(1)および一般式(2)で表される構造を有する樹脂は、単独で用いてもよく、複数種混合して用いてもよい。また、ホモポリマーであってもよく、複数種構造を組み合わせたコポリマーであってもよい。樹脂をコポリマーとする場合、一般式(1)または(2)で表される構造を繰り返し単位中に含まない公知の繰り返し単位を本発明の効果を損ねない範囲で重合体の成分とすることができる。なお、ホモポリマーとして用いた場合よりも溶解性および透明性の観点で優れている場合が多いことから、上記樹脂はコポリマー(共重合体)であることが好ましい。
【0087】
本発明に用いることのできる一般式(1)および(2)で表される構造を有する樹脂の好ましい分子量は、フィルム成形の容易さ、力学特性、合成時の分子量のコントロールの容易さ、溶液の粘度と溶液の取り扱いの容易さ等の観点から、重量平均分子量で1万〜50万が好ましく、2万〜30万が更に好ましく、3万〜20万が特に好ましい。分子量は、これに対応する粘度を目安にすることもできる。本発明における基材フィルムを構成する樹脂は、ガラス転移温度(Tg)が250℃以上の熱可塑性樹脂であることが好ましく、ガラス転移温度(Tg)が300℃以上の熱可塑性樹脂であることがさらに好ましい。
【0088】
本発明における基材フィルムは、その性質上、水を取り込まないことが望ましい。すなわち水素結合性官能基を持たない樹脂から形成されていることが望ましい。前記基材フィルムの平衡含水率は0.5質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以下であることがさらに好ましく、0.05質量%以下であることが特に好ましい。
【0089】
平衡含水率の低い基材フィルムを用いると、基材フィルムの帯電が起こりやすくなってしまう傾向がある。基材フィルムの帯電はパーティクルを吸着してバリア層の性能を損ねたり、接着によるハンドリング不良などの原因となり好ましくない。このため、係る問題を解決するために、基材フィルムの表面には、これに隣接して帯電防止層が設置されることが好ましい。帯電防止層とは、50℃、相対湿度30%における表面抵抗値が1Ω/□〜1013 Ω/□である層をいう。前記帯電防止層の50℃、相対湿度30%における表面抵抗値は、1×108Ω/□〜1×1013Ω/□であることが好ましく、1×108/□〜1×1011Ω/□であることがより好ましく、1×108Ω/□〜1×109Ω/□であることが特に好ましい。
【0090】
[透明電極]
本発明で用いる透明電極は、一般的に用いられる任意の透明電極材料で形成することができる。そのような透明電極材料としては、例えば、錫ドープ酸化錫、アンチモンドープ酸化錫、亜鉛ドープ酸化錫、錫ドープインジウム(ITO)などの酸化物、銀の薄膜を高屈折率層で挟んだ多層構造、ポリアニリン、ポリピロールなどのπ共役系高分子などが挙げられる。透明電極は、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリエチレンナフタレート(PEN)等の透明シートからなる基材上に、上記透明電極材料から形成される透明導電膜を設けることによって形成することができる。
【0091】
本発明で用いられる透明電極として好ましく用いられる電極の抵抗値は、発光面における輝度の均一性の観点では、表面抵抗率が0.05〜50Ω/□であることが好ましく、0.1〜30Ω/□であることがさらに好ましい。
【0092】
該透明電極の調製法はスパッター法および真空蒸着等の気相法のいずれであってもよい。しかし、これらの単独では十分に低抵抗化できず、結果として輝度の面内分布が生じてしまい、また抵抗が高いことによる発光面から発熱を生じてしまい、大きく発光寿命を劣化させる場合がある。
【実施例】
【0093】
以下に本発明の有機EL素子の具体的な実施例を記載するが、本発明はこの実施例に制限されるものではない。
【0094】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。
【0095】
実施例1
25mm×25mm×0.5mmのガラス支持基板上に直流電源を用い、スパッタ法にてインジウム錫酸化物(ITO、インジウム/錫=95/5モル比)の陽極を形成した(厚み0.2μm)。この陽極上に正孔注入層として銅フタロシアニン(CuPc)を真空蒸着法にて10nm設け、その上に正孔輸送層として、N,N’−ジナフチル−N,N’−ジフェニルベンジジンを真空蒸着法にて40nm設けた。この上にホスト材4,4’−N,N’−ジカルバゾ−ルビフェニル、青発光材としてビス[(4,6−ジフルオロフェニル)−ピリジナート−N,C2’](ピコリネート)イリジウム錯体(Firpic)、緑発光材としてトリス(2−フェニルピリジン)イリジウム錯体(Ir(ppy)3)、赤発光材としてビス(2−フェニルキノリン)アセチルアセトナ−トイリジウムをそれぞれ100/2/4/2の重量比になるように共蒸着して40nmの発光層を得た。さらにその上に電子輸送材として2,2’,2’’−(1,3,5−ベンゼントリイル)トリス[3−(2−メチルフェニル)−3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン]を1nm/秒の速度で蒸着して24nmの電子輸送層を設けた。この有機化合物層の上にパタ−ニングしたマスク(発光面積が5mm×5mmとなるマスク)を設置し、蒸着装置内でフッ化リチウムを1nm蒸着し、さらにアルミニウムを100nm蒸着して陰極を設けた。さらに、有機化合物層を有するアルミニウム陰極面とは反対側に、セラミックシート(熱放射率;0.96、シート厚み300μm)を貼付した。陽極、陰極よりそれぞれアルミニウムのリード線を出して発光素子を作成した。有機EL層が外気と接触しないようにガラスカバーで封止されている。以上の如くにして本発明における発光素子を得た。
【0096】
実施例2
上記セラミックシートの替わりにグラファイトシート(PGSグラファイトシート、熱伝導率;800W/m・K)を用いたこと以外は、実施例1と同様に行い発光素子を得た。
【0097】
実施例3
実施例2において、アルミニウム陰極上のグラファイトシート(PGSグラファイトシート、熱伝導率;800W/m・K)の上に更に、セラミックシート(セラミッション製、熱放射率;0.96、シート厚み300μm)を貼付した以外は実施例1と同様に行い発光素子を得た。
【0098】
実施例4
実施例1において、ガラス支持基板にかえて、以下に示す方法1〜4により作製された水蒸気バリアフィルムを用いた以外は実施例1と同様に行い発光素子を得た。
【0099】
1.無機ガスバリア層の形成
図2に示すロールトゥーロール方式のスパッタリング装置を用いて、基材フィルム上に無機ガスバリア層を形成した。なお該基材フィルムは500μm厚の平坦性に優れるPENフィルムを用いた。図2に示すように、スパッタリング装置(11)は、真空槽(12)を有しており、その中央部にはプラスチックフィルム(16)を表面に接触させて冷却するためのドラム(13)が配置されている。また、上記真空槽(12)にはプラスチックフィルム(16)を巻くための送り出しロール(14)および巻き取りロール(15)が配置されている。送り出しロール(4)に巻かれたプラスチックフィルム(16)はガイドロール(17)を介してドラム(13)に巻かれ、さらにプラスチックフィルム(16)はガイドロール(18)を介して巻き取りロール(15)に巻かれる。真空排気系としては排気口(19)から真空ポンプ(20)によって真空槽(12)内の排気が常に行われている。成膜系としてはパルス電力を印加できる直流方式の放電電源(21)に接続されたカソード(22)上にターゲット(図示せず)が装着されている。この放電電源(21)は制御器(23)に接続されており、さらに制御器(23)は真空槽(12)へ配管(25)を介して反応ガス導入量を調整しながら供給するガス流量調整ユニット(24)に接続されている。また、真空槽(12)には一定流量の放電ガスが供給されるよう構成されている(図示せず)。
【0100】
以下、無機ガスバリア層の形成時における具体的な条件を示す。
ターゲットとしてSiをセットし、放電電源(21)としてパルス印加方式の直流電源を用意した。また、プラスチックフィルム(16)として厚み100μmの基材フィルム(PETフィルム)を用意し、これを送り出しロール(14)に掛け、巻き取りロール(15)まで通した。スパッタリング装置(11)への基材の準備が終了した後、真空槽(12)の扉を閉めて真空ポンプ(20)を起動し、真空引きとドラムとの冷却を開始した。到達圧力が4×10-4Pa、ドラム温度が5℃になったところで、プラスチックフィルム(16)の走行を開始した。放電ガスとしてアルゴンを導入して放電電源(21)をONし、放電電力5kW、成膜圧力0.3PaでSiターゲット上にプラズマを発生させ、3分間プレスパッタを行った。この後、反応ガスとして酸素を導入し、放電が安定してからアルゴンおよび酸素ガス量を徐々に減らして成膜圧力を0.1Paまで下げた。0.1Paでの放電の安定を確認してから、一定時間酸化ケイ素の成膜を行った。成膜終了後、真空槽(12)を大気圧に戻して酸化ケイ素(無機ガスバリア層)を成膜したフィルムを取り出した。無機ガスバリア層の膜厚は約50nmであった。尚、表1における各構造内容に従って、吸湿性層または有機層上に無機ガスバリア層を形成する場合においても同様の方法によって無機ガスバリア層を形成した。
【0101】
【表1】

【0102】
2.有機層の形成
50.75mLのテトラエチレングリコール・ジアクリレートと14.5mLのトリプロピレングリコールモノアクリレートと7.25mLのカプロラクトンアクリレートと10.15mLのアクリル酸と10.15mLの「EZACURE」(Sartomer社製、ベンゾフェノン混合物光重合開始剤)とのアクリルモノマー混合物を、固体物であるN、N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ジフェニルベンジジン粒子36.25gmと混合し、20kHz超音波ティッシュミンサーで約1時間撹拌した。約45℃に加熱し、沈降を防ぐために撹拌した混合物を内径2.0mm、長さ61mmの毛管を通して1.3mmのスプレーノズルにポンプで送り込んだ。そこで25kHzの超音波噴霧器によって小滴噴霧し、約340℃に維持された無機ガスバリア層または吸湿性層表面に落とした。次いで、ドラム表面温度約13℃の低温ドラムに接触させた基板フィルムの無機ガスバリア層または吸湿性層上に蒸気をクライオ凝結させた後、高圧水銀灯ランプによりUV硬化させ(積算照射量約2000mJ/cm2)、有機層を形成した。膜厚は約500nmであった。
【0103】
3.吸湿性層の形成
上記無機ガスバリア層もしくは有機層上に、それぞれ過酸化ストロンチウム、過酸化カルシウム、過酸化バリウムのターゲット(豊島製作所(株)製)を用い、Arガスを導入、放電電力100W、成膜圧力0.8Paで3分間のプレスパッタの後にそのまま成膜を行った。吸湿性層の膜厚は約20nmであり、元素分析の結果SrとOとの比率、CaとOとの比率およびBaとOとの比率はほぼ1:1であった。尚、表1における構成Gにおいては基材フィルム上に吸湿性層を直接設けた。
また、比較用として上記SrO2ターゲットとSiO2ターゲットとを組み合わせて、RF電源を用いて放電電力100W、0.8Paで成膜した。SrとSiとの組成比はほぼ1:1、膜厚は約40nmであった。
【0104】
4.水蒸気バリアフィルムの形成
上記吸湿性層の基材フィルムとは反対側に、上記2、3に記載した方法にて、無機ガスバリア層、有機層、無機バリア層の3層からなる水蒸気バリアフィルムを形成した。(表1における構成E)
【0105】
実施例5
実施例2において、ガラス基板にかえて、実施例4で使用した水蒸気バリアフィルムを用いた以外は実施例2と同様に行い発光素子を得た。
【0106】
実施例6
実施例3において、ガラス基板にかえて、実施例4で使用した水蒸気バリアフィルム(PEN)を用いた以外は実施例3と同様に行い発光素子を得た。
【0107】
実施例7
実施例4において、基材フィルムをPENにかえて、以下に示す方法により作製された高耐熱性・低伸縮基材フィルムを用いた以外は実施例4と同様に行い発光素子を得た。
【0108】
1.高耐熱性・低伸縮基材フィルムの作製
上述の樹脂化合物(I−1)を、濃度が15質量%になるようにジクロロメタ
ン溶液に溶解し、該溶液をダイコーティング法によりステンレスバンド上に流延した。次いで、バンド上から第一フィルムを剥ぎ取り、残留溶媒濃度が0.08質量%になるまで乾燥させた。乾燥後、第一フィルムの両端をトリミングし、ナーリング加工した後巻き取り、厚み100μmの高耐熱性・低伸縮フィルムを作製した。
【0109】
実施例8
実施例5において、基材フィルムをPENにかえて、実施例7に示された方法により作製された高耐熱性・低伸縮基材フィルムを用いた以外は実施例5と同様に行い発光素子を得た。
【0110】
実施例9
実施例6において、基材フィルムをPENにかえて、実施例7に示された方法により作製された高耐熱性・低伸縮基材フィルムを用いた以外は実施例6と同様に行い発光素子を得た。
【0111】
比較例1
アルミニウム陰極にセラミックシートを貼り付けないこと以外実施例1と同様に行い発光素子を得た。
【0112】
比較例2
アルミニウム陰極にセラミックシート(熱放射率0.5、厚み40μm)を貼り付けた以外は、実施例1と同様に行い発光素子を得た。
【0113】
比較例3
アルミニウム陰極にグラファイトシート(PGSグラファイトシート、熱伝導率;100W/m.K)を貼り付けた以外は、実施例1と同様に行い発光素子を得た。
【0114】
比較例4
比較例1において、ガラス基板にかえて、実施例4により作製された水蒸気バリアフィルム(PEN)を用いた以外は比較例1と同様に行い発光素子を得た。
【0115】
比較例5
比較例1において、ガラス基板にかえて、実施例7により作製された水蒸気バリアフィルム(高耐熱性・低伸縮ベース)を用いた以外は比較例1と同様に行い発光素子を得た。
【0116】
以上作製した該発光素子を、以下の方法で評価した。東洋テクニカ製ソースメジャーユニット2400型を用いて、直流電圧を有機EL素子に印加し発光させた。その時の最高輝度をLmax、Lmaxが得られたときの電圧をVmaxとした。
【0117】
気温20℃、湿度60%の環境において駆動した場合、初期に対し、1000時間連続駆動した場合の、初期輝度に対する相対輝度を表2に示す。
【0118】
【表2】

【0119】
放熱材としてセラミックシートを用いた本発明の実施例1は、比較例1に対し、1000時間後の相対輝度が2倍向上する事が分かる。一方、セラミックシートの厚みが40μmの比較例2では実施例1にみられる顕著な相対輝度の向上が見られないことが分かる。
【0120】
放熱材としてグラファイトシートを用いた本発明の実施例2は、比較例1に対し2倍弱の相対輝度向上が達成される事が分かる。一方、グラファイトシートの熱伝導率が100W/m・Kの比較例3では実施例2にみられる顕著な相対輝度の向上が見られないことが分かる。
【0121】
放熱材としてグラファイトシートとセラミックシートを併用した本発明の実施例3は、該単独での効果よりも更に優れる顕著な相対輝度低下抑制ができている事が分かる。
【0122】
実施例1において、基板を水蒸気バリアフィルム(PEN)とした本発明の実施例4は、放熱材が無い比較例4に対し、約2倍の相対輝度劣化向上が見られることが分かる。基板を水蒸気バリアフィルム(PEN)とした比較例4は、ガラス基板の比較例1よりも相対輝度劣化が激しい。これはガラスに対し放熱能の低いフィルム基板による放熱不足が原因と考えられる。この問題は、本発明の放熱板を付与した構成とすることで明らかに改善できることが分かる。
【0123】
本発明実施例5、6も実施例4同様、比較例4に対し相対輝度劣化向上が見られる。この結果から、フィルム基板による放熱不足を大きく改善していると考えられる。実施例6においては、大きな改善効果が見られた。
【0124】
実施例4において、基板を水蒸気バリアフィルム(高耐熱性低伸縮ベース)とした本発明の実施例7は、比較例5に対し約2倍の相対輝度劣化向上が見られることが分かる。また実施例4に対しても相対輝度劣化が約1割抑制されている事も分かる。これはフィルム基板の放熱不足によりフィルム伸縮が生じ水蒸気バリア性が若干低下するPEN基板に対し、高耐熱性低伸縮フィルム基板は、該熱に対するバリア性低下を抑制できるものと考えられる。
【0125】
本発明実施例8、9も実施例7同様、比較例5に対し相対輝度劣化向上が見られる。実施例9においては、大きな改善効果が見られた。
【図面の簡単な説明】
【0126】
【図1】本発明の有機EL素子の一実施態様であり、概略断面図である。
【図2】実施例において用いたスパッタリング装置を示す説明図である。
【符号の説明】
【0127】
1 透明電極(陽極)
2 有機層(発光層)
3 背面電極(陰極)
4 放熱板
5 透明基板
11 スパッタリング装置
12 真空槽
13 ドラム
14 送り出しロール
15 巻き取りロール
16 プラスチックフィルム
17 ガイドロール
18 ガイドロール
19 排気口
20 真空ポンプ
21 放電電源
22 カソード
23 制御器
24 ガス流量調整ユニット
25 配管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
背面電極及び少なくとも1つの透明電極からなる電極間に少なくとも1つの発光層を有する有機電界発光素子であって、背面電極の発光層とは反対側の面に、熱放射率が0.8以上で、且つ厚さが50μm〜1000μmのセラミックシートを有することを特徴とする有機電界発光素子。
【請求項2】
背面電極及び少なくとも1つの透明電極からなる電極間に少なくとも1つの発光層を有する有機電界発光素子であって、背面電極の発光層とは反対側の面に、熱伝導率が200W/m・K以上のグラファイトシートを有することを特徴とする有機電界発光素子。
【請求項3】
背面電極及び少なくとも1つの透明電極からなる電極間に少なくとも1つの発光層を有する有機電界発光素子であって、背面電極の発光層とは反対側の面に隣接するように、熱伝導率が200W/m・K以上のグラファイトシートを有し、更に該グラファイトシートに隣接するように熱放射率が0.8以上で且つ、厚さが50μm〜1000μmのセラミックシートを有する事を特徴とする有機電界発光素子。

【図1】
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【図2】
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