説明

有機高分子膜、有機圧電膜、超音波振動子、超音波探触子及び超音波医用画像診断装置

【課題】ポリフッ化ビニリデンを超える高い圧電特性を発現する、有機高分子膜及び有機圧電膜、それらを用いた超音波振動子、超音波探触子及び超音波医用画像診断装置を提供する。
【解決手段】高分子電解質からなる有機高分子膜であって、圧電性(強誘電性)を有することを特徴とする有機高分子膜。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電特性および取扱性に優れた有機高分子膜及び有機圧電膜、それらを用いた超音波振動子、超音波探触子及び超音波医用画像診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波探蝕子などのセンサーに用いられる圧電体材料としては、無機圧電材料および有機圧電材料が知られている。
【0003】
無機圧電材料としては、例えば水晶、LiNbO、LiTaO、KNbOなどの単結晶、ZnO、AlNなどの薄膜、Pb(Zr,Ti)O系などの焼結体を分極処理した無機圧材料が知られている。
【0004】
しかしながら、これら無機材質の圧電体材料は、弾性スティフネスが高く、機械的損失係数が高い、密度が高く誘電率も高いなどの性質がある。
【0005】
一方、有機圧電材料としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(以下「PVDF」と略す。)、ポリシアン化ビニリデン(以下「PVDCN」と略す。)等の有機圧電材料が知られている(特許文献1及び2参照)。
【0006】
これらの有機圧電材料は、比較的、薄膜化、大面積化等の加工性に優れ、任意の形状、形態の物が作ることができ、弾性率が低い、誘電率が低い等の特徴を持つため、センサーとしての使用に際しては、高感度な検出を可能とする特徴を持っている。また、これらの有機圧電材料は、高周波特性、広帯域特性を必要とするハーモニックイメージング技術における圧電材料として適す。さらに、有機高分子圧電材料の音響インピーダンスは生体のそれに近いという特徴があり、音響整合をとるうえで重要な利点となっている。
【0007】
しかしながら、これまでの有機圧電材料で最も高い圧電特性を示すPVDF膜を用いたプローブであっても血流検査等の動的超音波診断を行う場合、高解像度につながるシグナルを得ることができなかった。これは、PVDF膜の受信感度の低さ即ち圧電特性の低さが原因であった。
【特許文献1】特開平6−216422号公報
【特許文献2】特開2006−49418号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記問題・状況に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、ポリフッ化ビニリデンを超える高い圧電特性を発現する、有機高分子膜及び有機圧電膜、それらを用いた超音波振動子、超音波探触子及び超音波医用画像診断装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る上記課題は、以下の手段により解決される。
【0010】
1.高分子電解質からなる有機高分子膜であって、圧電性を有することを特徴とする有機高分子膜。
【0011】
2.前記有機高分子膜を構成する高分子化合物の側鎖にイオン性官能基を有することを特徴とする前記1に記載の有機高分子膜。
【0012】
3.前記有機高分子膜を構成する高分子化合物の主鎖が、ポリウレタン又はポリウレアの構造を有することを特徴とする前記1又は2に記載の有機高分子膜。
【0013】
4.前記イオン性官能基が、−SOM、−OSOM、−PO、又は−OPO(ここで、Mは水素原子、アルカリ金属イオン又はアンモニウムイオンを表す。)であることを特徴とする前記2又は3に記載の有機高分子膜。
【0014】
5.前記イオン性官能基が、−SOM、−OSOM、−PO、又は−OPO(ここで、Mは水素原子又はNaイオンを表す。)であることを特徴とする前記2から4のいずれか一項に記載の有機高分子膜。
【0015】
6.前記1から5のいずれか一項に記載の有機高分子膜から形成されたことを特徴とする有機圧電膜。
【0016】
7.前記1から5のいずれか一項に記載の有機高分子膜から形成された有機圧電膜を具備した超音波振動子であって、当該有機圧電膜は、分極処理されて製造された有機圧電膜であることを特徴とする超音波振動子。
【0017】
8.前記7に記載の超音波振動子であって、前記分極処理が、電圧印加処理又はコロナ放電処理であることを特徴とする超音波振動子。
【0018】
9.超音波送信用振動子と超音波受信用振動子を具備する超音波探触子であって、前記1から5のいずれか一項に記載の有機高分子膜から形成された有機圧電膜を具備した超音波振動子を超音波受信用振動子として用いたことを特徴とする超音波探触子。
【0019】
10.電気信号を発生する手段と、前記電気信号を受けて超音波を被検体に向けて送信し、前記被検体から受けた反射波に応じた受信信号を生成する複数の振動子が配置された超音波探触子と、前記超音波探触子が生成した前記受信信号に応じて、前記被検体の画像を生成する画像処理手段とを有する超音波医用画像診断装置において、前記超音波探触子が、前記9に記載の超音波探触子であることを特徴とする超音波医用画像診断装置。
【発明の効果】
【0020】
本発明の上記手段により、ポリフッ化ビニリデンを超える高い圧電特性を発現する、有機高分子膜及び有機圧電膜、それらを用いた超音波振動子、超音波探触子及び超音波医用画像診断装置を提供することができる。
【0021】
すなわち、イオン性官能基には電場応答性が向上させる働きがあることから、高分子鎖にイオン性官能基を導入することにより、電場を印加したとき分子配向は、イオン効果+双極子モーメント効果の二つの働きとなり高配向となる。その結果、高い圧電性が発現する有機高分子膜となる。
【0022】
したがって、有機高分子であっても、セラミックス圧電材料に匹敵する高い圧電特性を発現することを可能とし、血流検査等の動的超音波診断を高解像度で行うのに十分な超音波探触子及び超音波医用画像診断装置等を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明の有機高分子膜は、高分子電解質からなる有機高分子膜であって、圧電性(強誘電性)を有することを特徴とする。この特徴は、請求項1から10に係る発明に共通する技術的特徴である。
【0024】
本発明の実施態様としては、発明の効果発現の観点から、前記有機高分子膜を構成する高分子化合物の側鎖にイオン性官能基を有する態様であることが好ましい。一方、当該高分子化合物の主鎖が、ポリウレタン又はポリウレアの構造を有することが好ましい。
【0025】
本発明においては、前記イオン性官能基が、−SOM、−OSOM、−PO、又は−OPO(ここで、Mは水素原子、アルカリ金属イオン又はアンモニウムイオンを表す。)であることが好ましい。また、Mは、水素原子又はNaイオンであるものが特に好ましい。
【0026】
本発明の有機高分子膜は、圧電特性に優れているという特徴を有することから、有機圧電膜を形成する材料として適している。また、当該有機圧電膜は、超音波振動子に好適に用いることができる。超音波振動子とする場合、当該有機圧電膜の両面に設置される電極の形成前、片側のみ電極形成後又は両側に電極形成後のいずれかで分極処理することが好ましい。また、当該分極処理が、電圧印加処理又はコロナ放電処理であることが好ましい。
【0027】
本発明に係る超音波振動子は、特に、超音波送信用振動子と超音波受信用振動子を具備する超音波探触子において、超音波受信用振動子に好適に用いることができる。更に、この超音波探触子は、超音波医用画像診断装置に用いることができる。例えば、電気信号を発生する手段と、前記電気信号を受けて超音波を被検体に向けて送信し、前記被検体から受けた反射波に応じた受信信号を生成する複数の振動子が配置された超音波探触子と、前記超音波探触子が生成した前記受信信号に応じて、前記被検体の画像を生成する画像処理手段とを有する超音波医用画像診断装置において、前記超音波探触子として好適に用いることができる。
【0028】
以下、本発明とその構成要素、及び発明を実施するための最良の形態・態様等について詳細な説明をする。
【0029】
(本発明の有機高分子膜の特性)
本発明の有機高分子膜は、高分子電解質からなる有機高分子膜であって、圧電性(強誘電性)を有することを特徴とし、次のような特性を有する。
【0030】
本発明の有機高分子膜は、当該有機高分子膜に応力が加わると、それに比例して当該高分子膜の両端面に反対符号の電荷が現れる。すなわち、電気分極という現象を生じ、逆に当該圧電材料を電場に入れる(電界を加える)ことで、それに比例した歪みを生じるという性質(圧電性能)を有する。特に本発明に係るポリウレア等よりなる高分子膜にあっては、高分子の主鎖や側鎖の双極子モーメントの配向凍結による分極により大きな圧電効果が生じる。
【0031】
一方、当該有機高分子膜にエネルギー(熱)が加わると、それに対応して当該有機高分子膜内部の自発分極の大きさが変化する。このとき、当該有機高分子膜表面に自発分極を中和するように存在する表面電荷は、上記自発分極ほどにすばやくエネルギー変化に対応できないことから、短時間の間ではあるが、有機高分子膜表面には自発分極の変化分だけ電荷が存在することになる。このエネルギー変化に伴う電気の発生を焦電性というが、特に本発明に係るポリウレア等よりなる有機高分子膜にあっては、高分子の主鎖や側鎖の双極子モーメントの配向凍結による分極により大きな焦電性能が生じる。
【0032】
以上の説明から分かるように、本発明の有機高分子膜は、圧電膜や焦電膜として用いることができる。
【0033】
(イオン性官能基)
本発明においては、有機高分子膜を構成する高分子化合物が、その側鎖にイオン性官能基を有することを特徴とする。すなわち、当該高分子化合物は、その側鎖にイオン性官能基を有することにより、高分子電解質(多数のイオン解離基をもつ巨大分子であり、イオン性高分子ともいう。)としての性質を有していることを特徴とする。
【0034】
本願において、「イオン性官能基」は、その本来の化学的性質により、または媒体に応じておよび/またはそれが存在する媒体のpHに応じて、イオンの形であることができるあらゆる基を意味する。その化学的性質に応じて、イオン性官能基は、アニオン(陰イオン性)性、またはカチオン(陽イオン)性であってよい。なお、これらのイオンを中和する対イオンは、後述する好ましいイオン性官能基の例のように適宜選ぶことができる。
【0035】
アニオン性の基もしくはアニオン性の基にイオン化し得る基(以下、両者を総称して「陰アニオン性基」という。)の好ましい具体例としては、−SO、−PO2−、−OSO、−PO、−OPOが挙げられる。
【0036】
カチオン性基もしくはカチオン性の基にイオン化し得る基(以下、両者を総称して「カチオン性基」という。)としては、例えば、第1級アミノ基、第2級アミノ基、第3級アミノ基及び第4級アミノ基、或いはイミノ基、ニトリロ基、含窒素ヘテロ環式基(例えば、ピリジル基、ピリミジル基、ピラジル基、オキサゾール基、チアゾール基、イミダゾール基、ピラゾール基、ピロリジル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、ピラゾリジル基、ピペリジル基、モルホリル基、キノリル基、ベンゾオキサゾール基など)等が挙げられる。本発明の両性重合体は、陽イオン性の基として第3級アミノ基及び/又は第4級アミノ基を含み、他の任意のカチオン性基を含むことができる。
【0037】
本発明において、好ましいイオン性官能基は、−SOM、−OSOM、−PO、又は−OPO(ここで、Mは水素原子、アルカリ金属イオン又はアンモニウムイオンを表す。)である。
【0038】
これらのうち、特に好ましいイオン性官能基は、イオン性官能基−SOM、−OSOM、−PO、又は−OPOにおいて、Mは水素原子又はNaイオンであるものである。
【0039】
なお、上記イオン性官能基は、双極子モーメント量を増加させる作用を有することから、これらの官能基を側鎖に導入することによって、有機高分子膜は、優れた圧電特性を得ることができる。
【0040】
(有機高分子膜を構成する高分子化合物)
本発明においては、有機高分子膜を構成する高分子化合物としては、種々の高分子化合物を用いることができるが、ポリウレタン及びポリウレアから選ばれる高分子化合物であることが好ましい。
【0041】
本発明において用いられるポリウレタンは、触媒の存在下、イソシアネート残基を有するイソシアネートプレポリマーを含む反応液と、ポリオールを含む反応液との2液を反応させることによって製造されるものである。
【0042】
ポリウレアは、イソシアネート残基を有するイソシアネートプレポリマーを含む反応液とポリアミンを含む反応液の2液を反応させることによって製造されるものである。
【0043】
前記のポリウレタン、ポリウレタンウレアまたはポリウレアからなる膜の形成に用いられるイソシアネート残基を有するイソシアネートプレポリマーは、ポリイソシアネートと活性水素含有化合物との反応生成物であり、イソシアネート基を1分子中に1個以上有するプレポリマーである。また、このイソシアネートプレポリマーは、活性水素含有化合物と反応していないポリイソシアネートモノマーを含有していてもよい。
【0044】
ポリイソシアネートとしては、特に限定されないが、芳香族ポリイソシアネートとしては、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、1−クロロ−2,4−フェニレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメンタンジイソシアネート、2,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3′ジメチル−4,4′−ビフェニレンジイソシアネート、3,3′−ジメチル−4,4′−ジフェニルメンタンジイソシアネート、3,3′−ジメトキシ−4,4′−ビフェニレンジイソシアネート、2,2′,5,5′−テトラメチル−4,4′−ビフェニレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネートおよびこれらの二量体、イソシアヌレート体、カルボジイミド体などの誘導体が挙げられる。脂肪族ポリイソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、水添ジフェニルメンタンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート、リジンエステルトリイソシアネート、1,6,11−ウンデカントリイソシアネート、1,8−ジイソシアネート−4−イソシアネートメチルオクタン、1,3,6−ヘキサメチレントリイソシアネート、ビシクロヘプタントリイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、およびこれらのイソシアヌレート体などの誘導体が挙げられる。
【0045】
これらの中でも、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート等のジフェニルメタンジイソシアネート、カルボジイミド変性ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、キシリレンジイソネートのイソシアヌレート変性体、イソホロンジイソシアネートのイソシアヌレート変性体、ノルボルネンジイソシアネートのイソシアヌレート変性体、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート変性体が、低い蒸気圧と適度な反応性を有するため好適である。これらのポリイソシアネートは、1種単独または2種以上を混合して使用することができる。
【0046】
活性水素含有化合物としては、特に限定されないが、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン等の多価アルコール類、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のポリエーテルポリオール類、ポリエチレンアジペートグリコール、ポリエチレンプロピレンアジペートグリコール、ポリブチレンアジペートグリコール、ポリヘキサメチレンアジペートグリコール、ポリカプロラクトングリコール等のポリエステルポリオール類、アクリルポリオール、フェノールレジンポリオール、エポキシポリオール、ポリブタジエンポリオール、ポリエステル−ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、植物油等のポリオールが例示される。また、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン等の多価アルコールを重合開始剤に、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド等の低級アルキレンオキシドまたはその混合物を反応させて得られるポリエーテルポリオールの末端ヒドロキシル基をアミノ基に置換することによって得られるポリエーテルポリアミンが挙げられる。このポリエーテルポリアミンとしては、例えば、エチレングリコールまたはプロピレングリコールを開始剤としたポリプロピレングリコールの末端二級炭素に結合したヒドロキシル基の還元アミノ化反応により得られる平均分子量200〜4100のジアミン、トリメチロールプロパンまたはグリセリンを開始剤としたポリプロピレントリオールの末端二級炭素に結合したヒドロキシル基の還元アミノ化反応により得られる平均分子量400〜5500のトリアミン等が例示される。
【0047】
これらのポリオール類またはポリエーテルポリアミンは、1種単独でも2種以上を組み合わせても用いられる。これらのポリオールの内、ポリエーテルポリオール類、ポリエステルポリオール類がイソシアネートプレポリマーの粘度を低くできる点で好適である。
【0048】
ポリウレタンの製造に使用されるポリオールとしては、前記のエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン等の多価アルコール類、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のポリエーテルポリオール類、ポリエチレンアジペートグリコール、ポリエチレンプロピレンアジペートグリコール、ポリブチレンアジペートグリコール、ポリヘキサメチレンアジペートグリコール、ポリカプロラクトングリコール等のポリエステルポリオール類、アクリルポリオール、フェノールレジンポリオール、エポキシポリオール、ポリブタジエンポリオール、ポリエステル−ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、植物油等が例示される。これらのポリオールは、1種単独または2種以上を混合して使用することができる。
【0049】
また、ポリウレタンの製造に用いられる鎖延長剤としては、例えば、エチレングリコール、1,4−ブタングリコール、ハイドロキノンジエチロールエーテル、2,3−ブタングリコール等が例示される。
【0050】
ポリウレタンの製造に使用される触媒としては、例えば、錫、鉛、ビスマス、亜鉛等の脂肪酸塩等の有機金属化合物、有機酸が例示される。有機金属化合物としては、鉛およびビスマスが発泡防止の点で好適であり、その使用量は使用原料(ポリオール成分とイソシアネートプレポリマー成分)の総量に対して0.01〜5%が適当である。
【0051】
有機酸としては、COOH基、SOH基、フェノール性OH基等の、酸性を示す基を分子中に少なくとも1つ有する化合物であり、脂肪酸、オキシカルボン酸、ノニルフェノール等が好ましい。有機酸の使用量は、使用原料(ポリオール成分とイソシアネートプレポリマー成分)の総量に対して0.01〜5%が適当である。
【0052】
ポリウレアの製造に使用されるポリアミンとしては、例えば、3,3′−ジクロロ−4,4′−ジアミノジフェニルメタン、2−クロロアニリンとアニリンとホルムアルデヒドの縮合物、4,4′−ジアミノジフェニル、4,4′−ジアミノジフェニルエーテル、2,3−ジアミノトルエン、3,4−ジアミノトルエン、2,4−ジアミノトルエン、2,6−ジアミノトルエン、4,4′−ジアミノジフェニルメタン、2,4−ジアミノジフェニルメタン、1,3−フェニレンジアミン、1,4−フェニレンジアミン、ナフチレン−1,5−ジアミン、アニリン−ホルムアルデヒド縮合物、1,3−ジメチル−2,4−ジアミノベンゼン、1,3−ジメチル−2,5−ジアミノベンゼン、1,3−ジエチル−2,4−ジアミノベンゼン、1,3−ジエチル−2,5−ジアミノベンゼン、1,4−ジイソプロピル−2,5−ジアミノベンゼン、2,4−ジアミノメシチレン、1,3,5−トリエチル−2,4−ジアミノベンゼン、1,3,5−トリエチル−2,6−ジアミノベンゼン、1,3,5−トリイソプロピル−2,4−ジアミノベンゼン、1,3,5−トリイソプロピル−2,6−ジアミノベンゼン、1−メチル−3,5−ジエチル−2,4−ジアミノベンゼン、1−メチル−3,5−ジエチル−2,6−ジアミノベンゼン、2,3−ジメチル−1,4−ジアミノナフタレン、2,6−ジメチル−1,5−ジアミノナフタレン、2,6−ジイソプロピル−1,5−ジアミノナフタレン、2,6−ジブチル−1,5−ジアミノナフタレン、3,3′,5,5′−テトライソプロピル−ベンチジン、3,3′,5,5′−テトラメチル−4,4′−ジアミノジフェニルメタン、3,3′,5,5′−テトラエチル−4,4′−ジアミノジフェニルメタン、3,3′,5,5′−テトライソプロピル−4,4′−ジアミノジフェニルメタン、3,3′,5,5′−テトラブチル−4,4′−ジアミノジフェニルメタン、3,5−ジエチル−3′−メチル−2′,4−ジアミノジフェニルメタン、3,3′−ジエチル−4,4′−ジアミノジフェニルメタン、3,3′−ジエチル−2,2′−ジアミノジフェニルメタン、3,3′,5,5′−テトラエチル−4,4′−ジアミノジフェニルエーテル、3,3′,5,5′−テトライソプロピル−4,4′−ジアミノジフェニルエーテル、tert−ブチルトルエンジアミン、1,3,5−トリイソプロピル−2,4−ジアミノベンゼン、4,4′−ビス(sec−ブチルアミノ)ジフェニルメタン、1,4−(sec−ブチルアミノ)ベンゼン、トリメチレンオキサイド−ジ−p−アミノベンゾエート、テトラメチレンオキサイド−ジ−p−アミノベンゾエート等のポリテトラメチレンオキサイド−ジ−p−アミノベンゾエート類などが挙げられる。また、エチレングリコール、トリメチロールプロパン等の多価アルコールを重合開始剤に、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド等の低級アルキレンオキシドまたはその混合物を反応させて得られるポリエーテルポリオールの末端ヒドロキシル基をアミノ基に置換することによって得られるポリエールポリアミンが挙げられ、具体的には、エチレングリコールを開始剤としたポリプロピレングリコールの末端二級炭素に結合したヒドロキシル基の還元アミノ化反応により得られる平均分子量200〜4100のジアミン、トリメチロールプロパンを開始剤としたポリプロピレントリオールの末端二級炭素に結合したヒドロキシル基の還元アミノ化反応により得られる平均分子量400〜5500のトリアミン等が例示される。これらのアミンは1種単独または2種以上を混合して使用することができる。
【0053】
なお、本発明の有機高分子膜を形成するための樹脂組成物には、必要に応じて、可塑剤、難燃剤、消泡剤、着色剤、安定剤、充填材、カップリング剤、改質剤等を添加することができる。
【0054】
また、−SOM、−OSOM、−PO、又は−OPO基(ここで、Mは水素イオン、アルカリ金属イオン又はアンモニウムイオンを表す。)を有するポリウレタンおよびポリウレアは、−SOM、−OSOM、−PO、又は−OPO基(ここで、Mは水素イオン、アルカリ金属イオン又はアンモニウムイオンを表す。)を有するジアミン、ジイソシアネート、ジオールを用いることにより、容易に合成することができる。
【0055】
また、−SOM、−OSOM、−PO、又は−OPO基(ここで、Mはアルカリ金属イオン又はアンモニウムイオンを表す。)を有するポリウレタンおよびポリウレアを得る他の方法としては、例えば−SOH、−OSOH、−PO、又は−OPO基を有するポリウレタンまたはポリウレアを1Mのアルカリ金属酢酸水、1Mのアンモニウム塩水溶液中で撹拌すること等により容易に得ることができる。
【0056】
アルカリ金属酢酸としては、酢酸リチウム、酢酸ナトリウムが挙げられる。アンモニウム塩としては塩化アンモニウム、臭化アンモニウム、フッ化アンモニウム、ヨウ化アンモニウムを用いることができる。また、アンモニア水を利用することも可能である。
【0057】
以下に、本発明の有機高分子膜を構成する高分子化合物の具体例を示すが、これらに限定されるものではない。
【0058】
1.SOM基を有するポリウレタン
【0059】
【化1】

【0060】
2.SOM基を有するポリウレア
【0061】
【化2】

【0062】
3.OSOM基を有するポリウレタン
【0063】
【化3】

【0064】
4.OSOM基を有するポリウレア
【0065】
【化4】

【0066】
5.PO基を有するポリウレタン
【0067】
【化5】

【0068】
6.PO基を有するポリウレア
【0069】
【化6】

【0070】
7.OPO基を有するポリウレタン
【0071】
【化7】

【0072】
8.OPO基を有するポリウレア
【0073】
【化8】

【0074】
〈有機高分子膜の形成方法〉
本発明の係る有機高分子膜を形成する方法としては、従来公知の蒸着重合法や溶液重合塗布法などを採用することができる。
【0075】
蒸着重合法の具体的方法・条件については、特開平7−258370号公報、特開平5−311399号公報、及び特開2006−49418号公報に開示されている方法等が参考となる。
【0076】
溶液重合塗布法の具体的方法・条件については、従来公知の種々の方法等に従って行うことができる。好ましい態様としては、本発明にかかるポリウレア等の樹脂組成物(例えば原料の当量混合溶液)を基板上に塗布し、減圧条件下である程度乾燥後(溶媒を除去した後)、加熱し、熱重合と分極処理を同時進行させながら有機圧電体膜を形成する方法が好ましい。
【0077】
なお、本発明においては、熱重合と後述する分極処理を同時進行させてもよい。この場合の温度は、−50〜250℃であることが好ましい。より好ましくは、−50〜200℃であることが好ましい。また場合によっては、熱重合と分極処理の同時進行中に、上述の温度範囲で、温度を徐々に上げる、もしくは温度を徐々に下げる、というような途中で温度を変化させることも好ましい。
【0078】
《蒸着重合》
蒸着重合法は、通常、1.33×10−2〜1.33×10−3Pa程度の圧力下で二つの蒸発源からそれぞれ二種類のモノマーを蒸発させて被蒸着面上で重合反応を起こさせ、被蒸着面上に重合体薄膜を形成する方法である。蒸着重合法では、上記圧力下で被蒸着面上に到達したモノマー同士をそれぞれのモノマーに固有の蒸気圧によって定まる一定の滞留時間内に反応させる必要がある。この滞留時間は一般的に非常に短いため、それぞれのモノマーは反応性が極めて高いことが望まれる。蒸着重合法によって2種類のモノマーを重付加してポリウレア等の樹脂組成物を形成する際には、蒸着装置本体のチャンバー内側上部に、被蒸着面を下側に向けて被蒸着基板がセットされる。チャンバー内側下部にはタングステンボードなどの容器が2つあり、それぞれの容器の底部には抵抗加熱器などの加熱手段が付設され、2つの容器にそれぞれ収容された蒸着源を加熱できるようになっている。
【0079】
《溶液重合》
溶液重合法の場合は、ポリウレア等の樹脂組成物にゲルなどの異物の発生が少なく仕込み比により重合度を制御することで、ポリウレア樹脂組成物の重合度を制御することができ、溶解性や物性を制御することが可能である。また、溶液重合法の場合、溶液にする労が省け、生産効率の観点からも好ましい。ポリウレア等の樹脂組成物の重量平均分子量は、1000〜1000000であることが、好ましく特に、好ましくは10000〜50000であることが好ましい。
【0080】
(有機圧電膜)
本発明に係る有機圧電膜は、上記高分子材料を用いて、溶融法、流延法など従来公知の種々の方法で有機高分子膜を作製し、延伸、加熱処理、分極処理等することによって作製することができる。
【0081】
すなわち、有機圧電膜の作製方法として、基本的には、上記高分子材料等の溶液を基板上に塗布し、乾燥して得る方法、又は上記高分子材料の原料化合物を用いて従来公知の溶液重合塗布法などにより有機高分子膜を形成する方法を採用することができる。
【0082】
溶液重合塗布法の具体的方法・条件については、従来公知の種々の方法等に従って行うことができる。例えば、原料の混合溶液を基板上に塗布し、減圧条件下である程度乾燥後(溶媒を除去した後)、加熱し、熱重合し、その後又は同時に分極処理をして有機圧電膜を形成する方法が好ましい。
【0083】
なお、圧電特性を上げるには、分子配列を揃える処理を加えることが有用である。手段としては、延伸製膜、分極処理などが挙げられる。
【0084】
延伸製膜の方法については、種々の公知の方法を採用することができる。例えば、上記有機高分子材料をエチルメチルケトン(MEK)などの有機溶媒に溶解した液をガラス板などの基板上に流延し、常温にて溶媒を乾燥させ、所望の厚さのフィルムを得て、このフィルムを室温で所定の倍率の長さに延伸する。当該延伸は、所定形状の有機圧電膜が破壊されない程度に一軸・ニ軸方向に延伸することができる。延伸倍率は2〜10倍、好ましくは2〜6倍である。
【0085】
(分極処理)
本発明に係る分極処理における分極処理方法としては、従来公知の直流電圧印加処理、交流電圧印加処理又はコロナ放電処理等の方法が適用され得る。
【0086】
例えば、コロナ放電処理法による場合には、コロナ放電処理は、市販の高電圧電源と電極からなる装置を使用して処理することができる。
【0087】
放電条件は、機器や処理環境により異なるので適宜条件を選択することが好ましい。高電圧電源の電圧としては−1〜−20kV、電流としては1〜80mA、電極間距離としては、1〜10cmが好ましく、印加電圧は、0.5〜2.0MV/mであることが好ましい。
【0088】
電極としては、従来から用いられている針状電極、線状電極(ワイヤー電極)、網状電極が好ましいが、本発明ではこれらに限定されるものではない。
【0089】
本発明の有機圧電材料は、コロナ放電により分極処理を施す場合においては、当該有機圧電材料の第1の面上に接するように平面電極を設置し、かつ前記第1の面に対向する第2の面側に円柱状のコロナ放電用電極を設置して、コロナ放電による分極処理が施されることが好ましい。
【0090】
当該分極処理は、水・酸素に起因する材料表面の酸化を防ぎ、圧電性を損なわないため等の理由から、窒素もしくは希ガス(ヘリウム、アルゴン等)気流下、質量絶対湿度が0.004以下の環境中で施される態様が好ましい。特に窒素気流下が好ましい。
【0091】
また、前記第1面上に接するように設置された平面電極を含む有機圧電材料、もしくは第2の面側に設けられた円柱状のコロナ放電用電極の少なくとも一方が、一定の速度で移動しながらコロナ放電が施されることが好ましい。
【0092】
なお、本願において、「質量絶対湿度」とは、乾き空気の質量mDA[kg]に対して湿り空気中に含まれる水蒸気(water vapor)の質量がm[kg]であるとき、下記式で定義される比SH(Specific humidity)をいい、単位は[kg/kg(DA)]で表される(DAはdry air の略)。但し、本願においては、当該単位を省略して表現する。
【0093】
(式):SH=m/mDA[kg/kg(DA)]
ここで、水蒸気を含む空気を「湿り空気」といい、湿り空気から水蒸気を除いた空気を「乾き空気(dry air)」という。
【0094】
なお、窒素もしくは希ガス(ヘリウム、アルゴン等)気流下での質量絶対湿度の定義は、上記の空気の場合に準じ、乾き気体の質量mDG[kg]に対して湿り気体に含まれる水蒸気の質量がm[kg]であるとき、上記式に準じて定義される比SHをいい、単位は[kg/kg(DG)]で表される(DGはdry gasの略)。但し、本願においては、当該単位を省略して表現する。
【0095】
また、「設置」とは、予め別途作製された既存の電極を有機圧電材料面上に接するように設け置くこと、又は電極構成材料を有機圧電材料面上に蒸着法等により付着させ、当該面上において電極を形成することをいう。
【0096】
なお、本発明の有機圧電材料により形成される有機圧電膜は、その形成過程において電場中で形成されること、すなわち、当該形成過程において分極処理を施すことが好ましい。このとき磁場を併用しても良い。
【0097】
本発明に係るコロナ放電処理法では、市販の高電圧電源と電極からなる装置を使用して処理することができる。
【0098】
放電条件は、機器や処理環境により異なるので適宜条件を選択することが好ましいが、高電圧電源の電圧としては正電圧・負電圧ともに1〜20kV、電流としては1〜80mA、電極間距離としては、0.5〜10cmが好ましく、印加電界は、0.5〜2.0MV/mであることが好ましい。分極処理中の有機圧電材料もしくは有機圧電膜は、50〜250℃が好ましく、70〜180℃がより好ましい。
【0099】
コロナ放電に使用する電極としては、分極処理を均一に施すために、上記のように円柱状の電極を用いることを要する。
【0100】
なお、本願において、円柱状の電極の円の直径は、0.1mm〜2cmであることが好ましい。当該円柱の長さは、分極処理を施す有機圧電材料の大きさに応じて適切な長さにすることが好ましい。例えば、一般的には、分極処理を均一に施す観点から、5cm以下であることが好ましい。
【0101】
これらの電極は、コロナ放電を行う部分では張っていることが好ましく、それらの両端に一定の加重をかける、もしくは一定の加重をかけた状態で固定するなどの方法で実現できる。また、これらの電極の構成材料としては、一般的な金属材料が使用可能だが、特に金、銀、銅が好ましい。
【0102】
前記第1の面上に接するように設置する平面電極は、均一な分極処理を行うためには有機圧電材料に均一に密着していることが好ましい。すなわち平面電極が施された基板上に有機高分子膜または有機圧電膜を形成した後にコロナ放電を行うことが好ましい。
【0103】
なお、本発明に係る超音波振動子の製造方法としては、有機圧電(体)膜の両面に設置される電極の形成前、片側のみ電極形成後又は両側に電極形成後のいずれかで分極処理する態様の製造方法であることが好ましい。また、当該分極処理が、電圧印加処理であることが好ましい。
【0104】
(基板)
基板としては、本発明に係る有機圧電体膜の用途・使用方法等により基板の選択は異なる。本発明においては、ポリイミド、ポリアミド、ポリイミドアミド、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリカーボネート樹脂、シクロオレフィンポリマーのようなプラスチック板又はフィルムを用いることができる。また、これらの素材の表面をアルミニウム、金、銅、マグネシウム、珪素等で覆ったものでもよい。またアルミニウム、金、銅、マグネシウム、珪素単体、希土類のハロゲン化物の単結晶の板又はフィルムでもかまわない。また基板自体使用しないこともある。
【0105】
(超音波振動子)
本発明に係る超音波振動子は、本発明の有機圧電材料を用いて形成した有機圧電膜を用いたことを特徴とする。当該超音波振動子は、超音波送信用振動子と超音波送信用振動子を具備する超音波医用画像診断装置用探触子(プローブ)に用いられる超音波受信用振動子とすることが好ましい。
【0106】
なお、一般に、超音波振動子は膜状の圧電材料からなる層(又は膜)(「圧電膜」、「圧電体膜」、又は「圧電体層」ともいう。)を挟んで一対の電極を配設して構成され、複数の振動子を例えば1次元配列して超音波探触子が構成される。
【0107】
そして、複数の振動子が配列された長軸方向の所定数の振動子を口径として設定し、その口径に属する複数の振動子を駆動して被検体内の計測部位に超音波ビームを収束させて照射すると共に、その口径に属する複数の振動子により被検体から発する超音波の反射エコー等を受信して電気信号に変換する機能を有している。
【0108】
以下、本発明に係る超音波受信用振動子と超音波送信用振動子それぞれについて詳細に説明する。
【0109】
〈超音波受信用振動子〉
本発明に係る超音波受信用振動子は、超音波医用画像診断装置用探触子に用いられる超音波受信用圧電材料を有する振動子であって、それを構成する圧電材料が、本発明の有機圧電材料を用いて形成した有機圧電膜を用いた態様であることが好ましい。
【0110】
なお、超音波受信用振動子に用いる有機圧電材料ないし有機圧電膜は、厚み共振周波数における比誘電率が10〜50であることが好ましい。比誘電率の調整は、当該有機圧電材料を構成する化合物が有する前記置換基R、CF基、CN基のような極性官能基の数量、組成、重合度等の調整、及び上記の分極処理によって行うことができる。
【0111】
なお、本発明の受信用振動子を構成する有機圧電体膜は、複数の高分子材料を積層させた構成とすることもできる。この場合、積層する高分子材料としては、上記の高分子材料の他に下記の比誘電率の比較的低い高分子材料を併用することができる。
【0112】
なお、下記の例示において、括弧内の数値は、高分子材料(樹脂)の比誘電率を示す。
【0113】
例えば、メタクリル酸メチル樹脂(3.0)、アクリルニトリル樹脂(4.0)、アセテート樹脂(3.4)、アニリン樹脂(3.5)、アニリンホルムアルデヒド樹脂(4.0)、アミノアルキル樹脂(4.0)、アルキッド樹脂(5.0)、ナイロン−6−6(3.4)、エチレン樹脂(2.2)、エポキシ樹脂(2.5)、塩化ビニル樹脂(3.3)、塩化ビニリデン樹脂(3.0)、尿素ホルムアルデヒド樹脂(7.0)、ポリアセタール樹脂(3.6)、ポリウレタン(5.0)、ポリエステル樹脂(2.8)、ポリエチレン(低圧)(2.3)、ポリエチレンテレフタレート(2.9)、ポリカーポネート樹脂(2.9)、メラミン樹脂(5.1)、メラミンホルムアルデヒド樹脂(8.0)、酢酸セルロース(3.2)、酢酸ビニル樹脂(2.7)、スチレン樹脂(2.3)、スチレンブタジエンゴム(3.0)、スチロール樹脂(2.4)、フッ化エチレン樹脂(2.0)等を用いることができる。
【0114】
なお、上記比誘電率の低い高分子材料は、圧電特性を調整するため、或いは有機圧電体膜の物理的強度を付与するため等の種々の目的に応じて適切なものを選択することが好ましい。
【0115】
〈超音波送信用振動子〉
本発明に係る超音波送信用振動子は、上記受信用圧電材料を有する振動子との関係で適切な比誘電率を有する圧電体材料により構成されることが好ましい。また、耐熱性・耐電圧性に優れた圧電材料を用いることが好ましい。
【0116】
超音波送信用振動子構成用材料としては、公知の種々の有機圧電材料及び無機圧電材料を用いることができる。
【0117】
有機圧電材料としては、上記超音波受信用振動子構成用有機圧電材料と同様の高分子材料を用いることできる。
【0118】
無機材料としては、水晶、ニオブ酸リチウム(LiNbO)、ニオブ酸タンタル酸カリウム[K(Ta,Nb)O]、チタン酸バリウム(BaTiO)、タンタル酸リチウム(LiTaO)、又はチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO)、チタン酸バリウムストロンチウム(BST)等を用いることができる。尚、PZTはPb(Zr1−nTi)O(0.47≦n≦1)が好ましい。
【0119】
〈電極〉
本発明に係る圧電(体)振動子は、圧電体膜(層)の両面上又は片面上に電極を形成し、その圧電体膜を分極処理することによって作製されるものである。有機圧電材料を使用した超音波受信用振動子を作製する際には、分極処理を行う際に使用した前記第1面の電極をそのまま使用してもよい。当該電極は、金(Au)、白金(Pt)、銀(Ag)、パラジウム(Pd)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、スズ(Sn)などを主体とした電極材料を用いて形成する。電極材料としては上記の中でも、金(Au)、白金(Pt)、銀(Ag)が好ましい。
【0120】
電極の形成に際しては、まず、チタン(Ti)やクロム(Cr)などの下地金属をスパッタ法により0.02〜1.0μmの厚さに形成した後、上記金属元素を主体とする金属及びそれらの合金からなる金属材料、さらには必要に応じ一部絶縁材料をスパッタ法、蒸着法その他の適当な方法で1〜10μmの厚さに形成する。これらの電極形成はスパッタ法以外でも微粉末の金属粉末と低融点ガラスを混合した導電ペーストをスクリーン印刷やディッピング法、溶射法で形成することもできる。
【0121】
さらに、圧電体膜の両面に形成した電極間に、所定の電圧を供給し、圧電体膜を分極することで圧電素子が得られる。
【0122】
(超音波探触子)
本発明に係る超音波探触子は、超音波送信用振動子と超音波受信用振動子を具備する超音波医用画像診断装置用探触子(プローブ)であり、受信用振動子として、本発明に係る上記超音波受信用振動子を用いることを特徴とする。
【0123】
本発明においては、超音波の送受信の両方をひとつの振動子で担ってもよいが、より好ましくは、送信用と受信用で振動子は分けて探触子内に構成される。
【0124】
送信用振動子を構成する圧電材料としては、従来公知のセラミックス無機圧電材料でも、有機圧電材料でもよい。
【0125】
本発明に係る超音波探触子においては、送信用振動子の上もしくは並列に本発明の超音波受信用振動子を配置することができる。
【0126】
より好ましい実施形態としては、超音波送信用振動子の上に本発明の超音波受信用振動子を積層する構造が良く、その際には、本発明の超音波受信用振動子は他の高分子材料(支持体として上記の比誘電率が比較的低い高分子(樹脂)フィルム、例えば、ポリエステルフィルム)の上に添合した形で送信用振動子の上に積層してもよい。その際の受信用振動子と他の高分子材料と合わせた膜厚は、探触子の設計上好ましい受信周波数帯域に合わせることが好ましい。実用的な超音波医用画像診断装置および生体情報収集に現実的な周波数帯から鑑みると、その膜厚は、40〜150μmであることが好ましい。
【0127】
なお、当該探触子には、バッキング層、音響整合層、音響レンズなどを設けても良い。また、多数の圧電材料を有する振動子を2次元に並べた探触子とすることもできる。複数の2次元配列した探触子を順次走査して、画像化するスキャナーとして構成させることもできる。
【0128】
(超音波医用画像診断装置)
本発明に係る上記超音波探触子は、種々の態様の超音波診断装置に用いることができる。例えば、図1及び図2に示すような超音波医用画像診断装置において好適に使用することができる。
【0129】
図1は、本発明の実施形態の超音波医用画像診断装置の主要部の構成を示す概念図である。この超音波医用画像診断装置は、患者などの被検体に対して超音波を送信し、被検体で反射した超音波をエコー信号として受信する圧電体振動子が配列されている超音波探触子(プローブ)を備えている。また当該超音波探触子に電気信号を供給して超音波を発生させるとともに、当該超音波探触子の各圧電体振動子が受信したエコー信号を受信する送受信回路と、送受信回路の送受信制御を行う送受信制御回路を備えている。
【0130】
更に、送受信回路が受信したエコー信号を被検体の超音波画像データに変換する画像データ変換回路を備えている。また当該画像データ変換回路によって変換された超音波画像データでモニタを制御して表示する表示制御回路と、超音波医用画像診断装置全体の制御を行う制御回路を備えている。
【0131】
制御回路には、送受信制御回路、画像データ変換回路、表示制御回路が接続されており、制御回路はこれら各部の動作を制御している。そして、超音波探触子の各圧電体振動子に電気信号を印加して被検体に対して超音波を送信し、被検体内部で音響インピーダンスの不整合によって生じる反射波を超音波探触子で受信する。
【0132】
なお、上記送受信回路が「電気信号を発生する手段」に相当し、画像データ変換回路が「画像処理手段」に相当する。
【0133】
上記のような超音波診断装置によれば、本発明の圧電特性及び耐熱性に優れかつ高周波・広帯域に適した超音波受信用振動子の特徴を生かして、従来技術と比較して画質とその再現・安定性が向上した超音波像を得ることができる。
【実施例】
【0134】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0135】
実施例1
<試料作製>
合成例1.(−SOM基を有するポリウレタンの合成)
グリセリン酸(東京化成製)と2−アミノエタンスルホン酸の縮合反応により得られたジオールを還流式冷却器、撹拌機を具備し、窒素置換した容器に加え、ここへ1,5−ペンタンジオール(東京化成製)を原料の5モル%加えシクロヘキサノン中にて窒素気流下、60℃で溶解した。ついで触媒として、ジ−n−ジブチルスズジラウレート(シグマアルドリッチ製)を使用した原料の総量に対して60ppm加えた。さらに、1,5−ペンタンジイソシアネートを加え90℃にて6時間加熱反応し、側鎖に−SOH基を有するポリウレタンを得た。
【0136】
上記の方法により、得られた−SOH基を有するポリウレタン0.5gをDMF100ml中に溶解させた。ここへ、1Mの酢酸ナトリウム水溶液50mlを加え、10分間撹拌した。得られた溶液をエバポレーターで20mlまで濃縮後、メタノール:水=9:1溶液添加による際沈殿を3回繰り返すことにより、−SONa基を有するポリウレタンを得た。
【0137】
【化9】

【0138】
合成例2.(−SOM基を有するポリウレアの合成)
1,3−ジアミノ−2−プロパノール(シグマアルドリッチ製)と3−ブロモプロパンスルホン酸ナトリウム塩(シグマアルドリッチ製)の反応により得られたジアミンを原料の5モル%加えシクロヘキサノン中にて窒素気流下、60℃で溶解した。さらに、1,5−ペンタンジイソシアネートを加え90℃にて6時間加熱反応し、側鎖に−SONa基を有するポリウレアを得た。
【0139】
上記の方法により、得られた−SONa基を有するポリウレア0.5gをDMF100ml中に溶解させた。ここへ、1Mの酢酸水溶液50mlを加え、10分間撹拌した。得られた溶液をエバポレーターで20mlまで濃縮後、メタノール:水=9:1溶液添加による際沈殿を3回繰り返すことにより、−SOH基を有するポリウレアを得た。
【0140】
【化10】

【0141】
合成例3.(−OSOM基を有するポリウレタンの合成)
硫酸水素2−アミノエチル(東京化成製)と2,3−ジヒドロキシプロピオン酸(東京化成製)の縮合反応により得られたジオールを原料の5モル%加えシクロヘキサノン中にて窒素気流下、60℃で溶解した。ついで、触媒として、ジ−n−ジブチルスズジラウレート(シグマアルドリッチ製)を使用した原料の総量に対して60ppm加えた。さらに、1,5−ペンタンジイソシアネートを加え90℃にて6時間加熱反応し、側鎖に−OSOH基を有するポリウレタンを得た。
【0142】
上記の方法により、得られた−OSOH基を有するポリウレタン0.5gをDMF100ml中に溶解させた。ここへ、1Mの酢酸ナトリウム水溶液50mlを加え、10分間撹拌した。得られた溶液をエバポレーターで20mlまで濃縮後、メタノール:水=9:1溶液添加による際沈殿を3回繰り返すことにより、OSONa基を有するポリウレタンを得た。
【0143】
【化11】

【0144】
合成例4.(−OSOM基を有するポリウレアの合成)
還流式冷却器、撹拌機を具備し、窒素置換した容器に1,5−ペンタンジアミン(東京化成製)、に2−アミノ−1−アミノメチルエチルエステルスルホン酸(シグマアルドリッチ製)を原料の5モル%加えシクロヘキサノン中にて窒素気流下、60℃で溶解した。さらに、1,5−ペンタンジイソシアネートを加え90℃にて6時間加熱反応し、側鎖に−OSOH基を有するポリウレアを得た。
【0145】
上記の方法により、得られた−OSOH基を有するポリウレア0.5gをDMF100ml中に溶解させた。ここへ、1Mの酢酸ナトリウム水溶液50mlを加え、10分間撹拌した。得られた溶液をエバポレーターで20mlまで濃縮後、メタノール:水=9:1溶液添加による際沈殿を3回繰り返すことにより、−OSONa基を有するポリウレアを得た。
【0146】
【化12】

【0147】
合成例5.(−PO基を有するポリウレタンの合成)
ホスホノ酢酸(東京化成製)と2−アミノ−1,3−プロパンジオール(シグマアルドリッチ製)の縮合反応により得られたジオールを原料の5モル%加えシクロヘキサノン中にて窒素気流下、60℃で溶解した。ついで触媒として、ジ−n−ジブチルスズジラウレート(シグマアルドリッチ製)を使用した原料の総量に対して60ppm加えた。さらに、1,5−ペンタンジイソシアネートを加え90℃にて6時間加熱反応し、側鎖に−PO基を有するポリウレタンを得た。
【0148】
上記の方法により、得られた−PO基を有するポリウレタン0.5gをDMF100ml中に溶解させた。ここへ、1Mの酢酸ナトリウム水溶液50mlを加え、10分間撹拌した。得られた溶液をエバポレーターで20mlまで濃縮後、メタノール:水=9:1溶液添加による際沈殿を3回繰り返すことにより、−PONa基を有するポリウレタンを得た。
【0149】
【化13】

【0150】
合成例6.(−PO基を有するポリウレアの合成)
1,3−ジアミノ−2−プロパノール(シグマアルドリッチ製)と2−クロロエチルリン酸(シグマアルドリッチ製)の反応により得られたジアミンを原料の5モル%加えシクロヘキサノン中にて窒素気流下、60℃で溶解した。さらに、1,5−ペンタンジイソシアネートを加え90℃にて6時間加熱反応し、側鎖に−PO基を有するポリウレアを得た。
【0151】
上記の方法により、得られた−PO基を有するポリウレア0.5gをDMF100ml中に溶解させた。ここへ、1Mの酢酸ナトリウム水溶液50mlを加え、10分間撹拌した。得られた溶液をエバポレーターで20mlまで濃縮後、メタノール:水=9:1溶液添加による際沈殿を3回繰り返すことにより、−PONa基を有するポリウレアを得た。
【0152】
【化14】

【0153】
合成例7.(−OPO基を有するポリウレタンの合成)
ホスホエノールピルビン酸(シグマアルドリッチ製)のC=C2重結合を水素化還元した。続いて2−アミノ−1,3−プロパンジオール(シグマアルドリッチ製)と縮合反応させることにより得られたジオールを原料の5モル%加えシクロヘキサノン中にて窒素気流下、60℃で溶解した。ついで触媒として、ジ−n−ジブチルスズジラウレート(シグマアルドリッチ製)を使用した原料の総量に対して60ppm加えた。さらに、1,5−ペンタンジイソシアネートを加え90℃にて6時間加熱反応し、側鎖に−OPO基を有するポリウレタンを得た。
【0154】
上記の方法により、得られた−OPO基を有するポリウレタン0.5gをDMF100ml中に溶解させた。ここへ、1Mの酢酸ナトリウム水溶液50mlを加え、10分間撹拌した。得られた溶液をエバポレーターで20mlまで濃縮後、メタノール:水=9:1溶液添加による際沈殿を3回繰り返すことにより、−OPONa基を有するポリウレタンを得た。
【0155】
【化15】

【0156】
合成例8.(−OPO基を有するポリウレアの合成)
ホスホエノールピルビン酸(シグマアルドリッチ製)のC=C2重結合を水素化還元した。続いてトリアミノメタン(シグマアルドリッチ製)の縮合反応により得られたジアミンを原料の5モル%加えシクロヘキサノン中にて窒素気流下、60℃で溶解した。さらに、1,5−ペンタンジイソシアネートを加え90℃にて6時間加熱反応し、側鎖に−OPO基を有するポリウレアを得た。
【0157】
上記の方法により、得られた−OPO基を有するポリウレア0.5gをDMF100ml中に溶解させた。ここへ、1Mの酢酸ナトリウム水溶液50mlを加え、10分間撹拌した。得られた溶液をエバポレーターで20mlまで濃縮後、メタノール:水=9:1溶液添加による際沈殿を3回繰り返すことにより、−OPONa基を有するポリウレアを得た。
【0158】
【化16】

【0159】
前記の方法により得られたポリウレタンおよびポリウレア、また、PVDFを用い、次の手順によりフィルムを作製した。前記高分子粉末0.97gを60℃に加熱したジメチルホルムアミド(以下DMF)に溶解した。この溶液をガラス板上に塗布した。その後、常温にて溶媒を乾燥させ、厚さ約120μmのフィルムを得た。このフィルムを室温で4倍に延伸した後、延伸した長さを保ったまま135℃1時間熱処理を行い、有機圧電膜を得た。
【0160】
得られたフィルムの両面に表面抵抗が1Ω以下になるように金/アルミニウムを2μmの厚さで蒸着塗布して表面電極付の試料を得た。つづいて、この電極に室温にて、0.1Hzの交流電圧を印加しながら分極処理を行い、超音波振動子を得た。分極処理は低電圧から行い、最終的に電極間電場が50MV/mになるまで徐々に電圧をかけることで超音波振動子を得た。
【0161】
[残留分極測定]
ポリウレタンおよびポリウレアの残留分極値は、分極処理において電極間電場が50MV/mとなった際に記録されたD−Eヒステリシスから読み取った。D−Eヒステリシス上、E=0V/mにおける単位面積当たりの電荷量mC/mの値を残留分極Prとして記録した。
【0162】
[分子量および分子量分布の測定方法]
数平均分子量Mn、重量平均分子量Mwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算の値である。東ソー社製高速液体クロマトグラフィーHLC−8220に東ソー社製カラムTSKgelα−M(7.8mmI.D.×30cm)を2本装填し、検出器は示差屈折率検出器として測定を行った。展開溶媒にN,N−ジメチルホルムアミドを用い、流速1.0ml/分、40℃にて行った。
【0163】
[圧電特性評価方法]
上記のようにして得られた電極付の超音波振動子の両面の電極にリード線を付け、アジレントテクノロジー社製インピーダンスアナライザ4294Aを用いて、25℃雰囲気下において、40Hzから110MHzまで等間隔で600点周波数掃引した。厚み共振周波数における比誘電率の値を求めた。同様に、厚み共振周波数付近の抵抗値のピーク周波数P、コンダクタンスのピーク周波数Sをそれぞれ求めたとき、下記式にて電気機械結合定数kを求めた。
【0164】
=(α/tan(α))1/2 ただし、α=(π/2)×(S/P)
インピーダンスアナライザを用いて厚み共振周波数から電気機械結合定数を求める方法としては、電子情報技術産業協会規格JEITA EM−4501(旧EMAS−6100)圧電セラミック振動子の電気的試験方法に記載の円盤状振動子の厚みたて振動に4.2.6項に準拠した。
【0165】
前記方法により、作製した各高分子膜の残留分極および圧電定数の測定を行った結果を表1にまとめて示す。
【0166】
【表1】

【0167】
表1から明らかなように、ポリウレタン、ポリウレアとも残留分極Prの値はイオン性の−SOM、−OSOM、−PO、又は−OPO基(ここで、Mは水素原子又はNaイオンを表す。)を導入した分子構造からなる高分子膜がイオン性基の無い分子構造からなる高分子膜よりも大きく上回っていることがわかる。また、ポリウレタン、ポリウレアとも圧電定数d31,33の値はイオン性基を導入した分子構造からなる高分子膜がイオン性基の無い分子構造からなる高分子膜よりも大きく上回っていることがわかる。ここで、イオン性基を導入した分子の残留分極、圧電定数はいずれもPVDFよりも上回っており、イオン性基の導入が圧電特性向上に大きく寄与していることがわかる。
【0168】
<膜物性評価>
実施例2
前記圧電性有機高分子膜を用いた超音波探触子を作製した。具体的な超音波探触子の作製と評価は実施例3に示した通りである。作製した超音波プローブを用いて流動血中プラークの観察を検討した結果を表2に示す。
【0169】
【表2】

【0170】
検討の結果、イオン性の−SOM、−OSOM、−PO、又は−OPO基(ここで、Mは水素原子又はNaイオンを表す。)を導入したポリウレタン、ポリウレア膜を用いた超音波探触子を使用した場合、流動血中プラークを高解像度で観察することができることがわかった。特に、前記イオン性基を有するポリウレアを用いた超音波探触子では画像飛びが無く高解像度で流動血中プラークを観察することができた。一方でイオン性基を導入していないポリウレタン及びポリウレア膜を用いた超音波探触子ではプラークの形状さらには血管の形状も超音波造影することができなかった。
【0171】
また、PVDF,PZT4を用いた超音波プローブではプラークの形状を確認することはできたが、クリアでない・画像飛びが目立つという問題が見られた。
【0172】
実施例3
(超音波探触子の作製と評価)
〈送信用圧電材料の作製〉
成分原料であるCaCO、La、BiとTiO、及び副成分原料であるMnOを準備し、成分原料については、成分の最終組成が(Ca0.97La0.03)Bi4.01Ti15となるように秤量した。次に、純水を添加し、純水中でジルコニア製メディアを入れたボールミルにて8時間混合し、十分に乾燥を行い、混合粉体を得た。得られた混合粉体を、仮成形し、空気中、800℃で2時間仮焼を行い仮焼物を作製した。次に、得られた仮焼物に純水を添加し、純水中でジルコニア製メディアを入れたボールミルにて微粉砕を行い、乾燥することにより圧電セラミックス原料粉末を作製した。微粉砕においては、微粉砕を行う時間および粉砕条件を変えることにより、それぞれ粒子径100nmの圧電セラミックス原料粉末を得た。それぞれ粒子径の異なる各圧電セラミックス原料粉末にバインダーとして純水を6質量%添加し、プレス成形して、厚み100μmの板状仮成形体とし、この板状仮成形体を真空パックした後、235MPaの圧力でプレスにより成形した。次に、上記の成形体を焼成した。最終焼結体の厚さは20μmの焼結体を得た。なお、焼成温度は、それぞれ1100℃であった。1.5×Ec(MV/m)以上の電界を1分間印加して分極処理を施した。
【0173】
〈受信用積層振動子の作製〉
前記実施例1において作製した有機圧電体膜1と厚さ50μmのポリエステルフィルムをエポキシ系接着剤にて貼り合わせた積層振動子を作製した。その後、上記と同様に分極処理をした。
【0174】
次に、常法に従って、上記の送信用圧電材料の上に受信用積層振動子を積層し、かつバッキング層と音響整合層を設置し超音波探触子を試作した。
【0175】
なお、比較例として、上記受信用積層振動子の代わりに、ポリフッ化ビニリデン共重合体のフィルム(有機圧電体膜)のみを用いた受信用積層振動子を上記受信用積層振動子に積層した以外、上記超音波探触子と同様の探触子を作製した。
【0176】
次いで、上記2種の超音波探触子について受信感度と絶縁破壊強度の測定をして評価した。
【0177】
なお、受信感度については、5MHzの基本周波数fを発信させ、受信2次高調波fとして10MHz、3次高調波として15MHz、4次高調波として20MHzの受信相対感度を求めた。受信相対感度は、ソノーラメディカルシステム社(Sonora Medical System,Inc:2021Miller Drive Longmont,Colorado(0501 USA))の音響強度測定システムModel805(1〜50MHz)を使用した。
【0178】
絶縁破壊強度の測定は、負荷電力Pを5倍にして、10時間試験した後、負荷電力を基準に戻して、相対受信感度を評価した。感度の低下が負荷試験前の1%以内のときを良、1%を超え10%未満を可、10%以上を不良として評価した。
【0179】
上記評価において、本発明に係る受信用圧電(体)積層振動子を具備した探触子は、比較例に対して約1.2倍の相対受信感度を有しており、かつ絶縁破壊強度は良好であることを確認した。すなわち、本発明の超音波受信用振動子は、図1に示したような超音波医用画像診断装置に用いる探触子にも好適に使用できることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0180】
【図1】超音波医用画像診断装置の主要部の構成を示す概念図
【図2】超音波医用画像診断装置の外観構成図
【符号の説明】
【0181】
P1 受信用圧電膜
P2 支持体
P3 送信用圧電膜
P4 バッキング層
P5 電極
P6 音響レンズ
S 超音波医用画像診断装置
S1 超音波医用画像診断装置の本体
S2 超音波探触子
S3 操作入力部
S4 表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子電解質からなる有機高分子膜であって、圧電性を有することを特徴とする有機高分子膜。
【請求項2】
前記有機高分子膜を構成する高分子化合物の側鎖にイオン性官能基を有することを特徴とする請求項1に記載の有機高分子膜。
【請求項3】
前記有機高分子膜を構成する高分子化合物の主鎖が、ポリウレタン又はポリウレアの構造を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の有機高分子膜。
【請求項4】
前記イオン性官能基が、−SOM、−OSOM、−PO、又は−OPO(ここで、Mは水素原子、アルカリ金属イオン又はアンモニウムイオンを表す。)であることを特徴とする請求項2又は3に記載の有機高分子膜。
【請求項5】
前記イオン性官能基が、−SOM、−OSOM、−PO、又は−OPO(ここで、Mは水素原子又はNaイオンを表す。)であることを特徴とする請求項2から4のいずれか一項に記載の有機高分子膜。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の有機高分子膜から形成されたことを特徴とする有機圧電膜。
【請求項7】
請求項1から5のいずれか一項に記載の有機高分子膜から形成された有機圧電膜を具備した超音波振動子であって、当該有機圧電膜は、分極処理されて製造された有機圧電膜であることを特徴とする超音波振動子。
【請求項8】
請求項7に記載の超音波振動子であって、前記分極処理が、電圧印加処理又はコロナ放電処理であることを特徴とする超音波振動子。
【請求項9】
超音波送信用振動子と超音波受信用振動子を具備する超音波探触子であって、請求項1から5のいずれか一項に記載の有機高分子膜から形成された有機圧電膜を具備した超音波振動子を超音波受信用振動子として用いたことを特徴とする超音波探触子。
【請求項10】
電気信号を発生する手段と、前記電気信号を受けて超音波を被検体に向けて送信し、前記被検体から受けた反射波に応じた受信信号を生成する複数の振動子が配置された超音波探触子と、前記超音波探触子が生成した前記受信信号に応じて、前記被検体の画像を生成する画像処理手段とを有する超音波医用画像診断装置において、前記超音波探触子が、請求項9に記載の超音波探触子であることを特徴とする超音波医用画像診断装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−95606(P2010−95606A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−267245(P2008−267245)
【出願日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】