説明

有機ELディスプレイパネルおよびその製造方法

【課題】ディスプレイパネルの全副画素で開口部内のアノード電極全面に確実に正孔注入層の材料液を塗布する。
【解決手段】走査領域を集積ヘッドで走査し、ノズル孔が吐出する正孔注入層の材料液104,104’,104”の液滴が、アノード電極103の長軸に沿ってバンク開口部109,109’,109”内に複数滴下される(図4(a))。滴下された材料液104,104’,104”は、バンク開口部109,109’,109”内のアノード電極103,103’,103”上に広がり塗布される(図4(b))。材料液を乾燥させてアノード電極上に正孔注入層111,111’,111”が形成される(図4(c))。アノード電極103は走査方向に漸次小さく、面積は103>103’>103”であることから、材料液の1滴あたりのアノード電極103の領域が小さくなって露出しにくくでき、有機EL素子がショートすることを防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機ELディスプレイパネルおよびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
有機ELディスプレイパネルとは、有機化合物の電界発光を利用した発光素子を有するディスプレイパネルである。つまり、有機ELディスプレイパネルは、アノード電極およびカソード電極、並びに両電極の間に配置された電界発光する有機EL層を含む有機EL素子を有する。電界発光する有機EL層の材料は、低分子有機化合物の組合せ(ホスト材料とドーパント材料)と、高分子有機化合物とに大別されうる。電界発光する高分子有機化合物の例には、PPVと称されるポリフェニレンビニレンやその誘導体などが含まれる。
【0003】
高分子有機化合物を材料とした有機EL層は、比較的低電圧で駆動でき、消費電力が少なく、ディスプレイパネルの大画面化に対応し易いことから、現在積極的に研究がなされている。また、高分子有機化合物を材料とした有機EL層はインクジェット法などの塗布法による製作が可能である。したがって、真空プロセスを使用する低分子有機ELディスプレイパネルよりも、高分子有機ELディスプレイパネルの生産性は顕著に高い。
【0004】
また、高分子有機ELディスプレイパネルは通常、アノード電極からの正孔を有機EL層に効率よく輸送するために、アノード電極と有機EL層との間に配置された正孔注入層を有する。正孔注入層の材料としては、塗布法による製作が可能な、ポリスチレンスルホン酸(PSS)をドープしたポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT−PSSと称される)や、その誘導体(共重合体など)などの水溶性高分子が用いられる。
【0005】
水溶性高分子からなる正孔注入層は、各副画素の開口部内のアノード電極上にこのような材料を含む水溶液を滴下し塗布することで形成されていた。正孔注入層の材料液を滴下する手段の1例にノズルを用いて正孔注入層の材料液を噴射して滴下する噴射式印刷方法がある(特許文献1参照)。
【0006】
図9(a),(b)は特許文献1に示された、噴射式印刷方法による正孔注入層の形成方法を示す。図9(a),(b)に示される方法では、マトリクス状に配列された各副画素の開口部18aを規定するバンク18を有する基板10を準備する。開口部18a内にはアノード電極が配置されている。そして、正孔注入層の材料液を吐出するノズルを複数有するノズルヘッド130を用いて開口部18aを走査し、開口部18a内に正孔注入層の材料液を滴下していく。
【0007】
また、基板10上に配列された開口部18aの列の数は、一般的にノズルヘッド130が有するノズルの数よりもはるかに大きいため、通常は、図9(a)に示されるように、有機ELディスプレイパネルを複数の開口部18aの列を有する領域ごとに分けて、開口部18a内に正孔注入層を形成する。
【0008】
図9(a)は第1領域140をノズルヘッド130で走査する様子を示し、図9(b)は第1領域140の走査後、第2領域141をノズルヘッド130で走査する様子を示す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2005−152884号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
前述の図9(a),(b)に示す通り、噴射式印刷方法により、基板10上に配列された開口部18aに正孔注入層の材料液を塗布するには、基板10をノズルヘッド130で複数回走査しながら、材料液を塗布していた。ところが、第1領域140に含まれる開口部18aに正孔注入層の材料液の塗布が終わってから、第2領域141に含まれる開口部18aを塗布しようとすると、第2領域141に含まれる開口部18aのうち、第1領域140に隣接する開口部18a内のアノード電極に充分に正孔注入層の材料液が塗布できず、アノード電極の一部が露出する場合があることが見出された。
【0011】
図10(a)〜(c)はこの現象をより詳細に示す図である。図10(a)に示すように正孔注入層の材料液104は開口部内のアノード電極103上に矢印の塗布方向Aに沿って複数滴下される。複数の滴下された正孔注入層の材料液104の液滴のうち、後に滴下された液滴は、図10(b)に示されるように、前に滴下された液滴に引っ張られて、正孔注入層の材料液104がアノード電極103全体に濡れ広がることができず、アノード電極103の一部が露出することが分かった(図10(c)参照)。露出したアノード電極103には後に設けるカソード電極が接触してしまうことから、有機EL素子をショートさせ、有機ELディスプレイパネルの品質を著しく劣化させる。
【0012】
これは、第1領域140の走査によって第1領域140に隣接する第2領域141が、何らかの影響を受けていることを示す(図9(b)参照)。その影響は、特に限定されず、第1例として、第1領域140の走査によって第1領域140に滴下された正孔注入層の材料液104のうちの一部が、第2領域141を汚染し、それが第2領域141の開口部内での液滴の濡れ広がりを抑制しているとも考えられる。
【0013】
また、第2例として、第1領域140の走査により、バンク105を構成する成分の一部が、第2領域141を汚染して、それが第2領域141の開口部内での液滴の濡れ広がりを抑制しているとも考えられる。
【0014】
この第2領域141を汚染するバンク105を構成する成分とは、例えばフッ素を含む成分でありうる。バンク105は塗布された機能層の材料液を規定された特定の領域に保持する必要がある。そのため、バンク105の濡れ性が低いことが求められる。濡れ性を下げるために、バンク105表面をフッ素ガスプラズマで処理したり、バンク材料にフッ素含有材料(例えば、フッ素含有樹脂)を用いたりすることがある。このフッ素を含む成分が、第1領域140を走査することにより、第2領域141内の開口部を汚染するとも考えられる。
【0015】
そのため本件発明者たちは、図11(a)に示すように、1つのノズルヘッド130を用いて複数回アノード電極103上に塗布するのではなく、図11(b)に示すように、ノズルヘッド130を集積した集積ヘッド200を用いてアノード電極103上に一括に塗布することを検討した。従来例である図11(a)はアノード電極103の長軸、つまりディスプレイパネルの短辺方向に平行な向きである塗布方向AやA’の矢印の方向にノズルヘッド130を操作させて塗布を行う。
【0016】
図11(b)では、アノード電極130の短軸側、つまりディスプレイパネルの長辺側に平行な方向である塗布方向Bに集積ヘッド200を走査させて、塗布を行う。この場合、アノード電極130の長軸側から一括に塗布できるノズルヘッドより、短軸側から塗ることで、集積ヘッド200を小さくできるので装置コストが安く済むメリットがある。
【0017】
ところが、図11(b)のように、一括に塗布を行う場合でも開口部内のアノード電極103に充分に正孔注入層の材料液が塗布できず、アノード電極103の一部が露出する場合があることが見出された。
【0018】
図12(a)〜(c)にこの現象を詳細に示す。図12(a)に示すように、正孔注入層の材料液104は開口部内のアノード電極103上に矢印の塗布方向Bに沿って複数同時に滴下される。複数の滴下された正孔注入層の材料液104の液滴は、下地の濡れ性と液滴の表面張力のバランスにより、図12(b)のようにアノード電極103上を広がる。しかし塗布方向Bに対して下流側では正孔注入層111の材料液がアノード電極103全体に濡れ広がることができず、アノード電極103の一部が露出することが分かった(図12(c)参照)。
【0019】
これは従来例であるアノード電極103の長軸方向に塗布する場合と同じく、アノード電極103の短軸方向に塗布していく場合でも、先に塗布された正孔注入層の材料液104のうちの一部がノズルヘッドの操作により、次に塗布する領域を汚染し、開口部内での液滴の濡れ広がりを抑制していると考えられる。
【0020】
また、先に塗布した領域からバンク105を構成する成分の一部が塗布されていない領域を汚染することで、開口部内での液滴の濡れ広がりを抑制していると考えられる。なお、図11(a)と図11(b)では簡略のため画素を区別するバンクを記載していない。
【0021】
本発明は、前記従来技術の問題を解決するものであり、ノズルヘッドで基板を走査することにより、全ての副画素の開口部内に正孔注入層の材料液を塗布するときに、全ての開口部のアノード電極全面に確実に正孔注入層の材料液を塗布することができる有機ELディスプレイパネルおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
前記の目的を達成するために、本発明に係る請求項1に記載した有機ELディスプレイパネルの製造方法は、互いに平行である2以上の開口部がライン状に配置された複数のライン領域、開口部を規定するバンク、およびライン領域のライン方向と垂直な短軸を持つ開口部内に配置されたアノード電極を有する基板を準備するステップと、ポリエチレンジオキシチオフェンを含む水溶液を吐出する2以上の吐出ノズルを有するノズルヘッドを用いて、アノード電極の短軸方向に走査して、水溶液の液滴を複数滴下して、アノード電極上に水溶液を塗布するステップと、を有する有機ELディスプレイパネルの製造方法であって、走査方向下流につれてアノード電極の面積が漸次小さくなることを特徴とする。
【0023】
また、請求項2に記載した有機ELディスプレイパネルの製造方法は、互いに平行である2以上の開口部がライン状に配置された複数のライン領域、開口部を規定するバンク、およびライン領域のライン方向に垂直な短軸を持つ開口部内に配置されたアノード電極を有する基板を準備するステップと、ポリエチレンジオキシチオフェンを含む水溶液を吐出する2以上の吐出ノズルを有するノズルヘッドを用いて、アノード電極の短軸方向に走査して、水溶液の液滴を複数滴下して、アノード電極上に水溶液を塗布するステップと、を有する有機ELディスプレイパネルの製造方法であって、開口部とアノード電極との間で短軸方向に空隙を有し、走査方向下流につれて空隙の面積が漸次大きくなり、かつ水溶液は空隙にも塗布されることを特徴とする。
【0024】
また、請求項3に記載した有機ELディスプレイパネルは、互いに平行である2以上の開口部がライン状に配置された複数のライン領域と、開口部を規定するバンクと、ライン領域のライン方向に垂直な短軸を持つ開口部内に配置されたアノード電極と、開口部ごとに独立して、かつアノード電極上に配置された正孔注入層と、正孔注入層上に配置された有機EL層と、有機EL層上に設けられたカソード電極とを備えた有機ELディスプレイパネルにおいて、ライン領域のうち、開口部内に配置されたアノード電極の面積が、ライン領域に垂直な一方向に対して漸次小さくなることを特徴とする。
【0025】
また、請求項4に記載した有機ELディスプレイパネルは、互いに平行である2以上の開口部がライン状に配置された複数のライン領域と、開口部を規定するバンクと、ライン領域のライン方向に垂直な短軸を持つ開口部内に配置されたアノード電極と、開口部ごとに独立して、かつアノード電極上に配置された正孔注入層と、正孔注入層上に配置された有機EL層と、有機EL層上に設けられたカソード電極とを備えた有機ELディスプレイパネルにおいて、ライン領域のうち、開口部とアノード電極との間で短軸方向に空隙を有し、空隙がライン領域に垂直な一方向に対して漸次大きくなることを特徴とする。
【0026】
前記構成によれば、ディスプレイパネルの全開口部内のアノード電極全面に確実に正孔注入層の材料液を塗布することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、ノズルヘッドで基板を走査して、全ての副画素の開口部内に正孔注入層の材料液を塗布する場合、全ての開口部内のアノード電極全面に確実に正孔注入層の材料液を塗布することができ、特にアノード電極の短軸側の方向から塗布することで長軸側に比べてノズルヘッドを短くでき、ディスプレイパネルを複数回塗布するのではなく一括に塗布することが可能となり、有機EL素子のショートを防止して、品質が高く低コストな有機ELディスプレイパネルを提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施形態1の第1実施例で有機ELディスプレイパネル製造方法に用いる(a)は基板、(b)は基板に形成したバンクを示す図
【図2】本第1実施の有機ELディスプレイパネル製造方法に用いるアノード電極の形状(a)〜(f)を示す図
【図3】本第1実施例の有機ELディスプレイパネル製造方法で正孔注入層の材料液の塗布過程(a),(b)を示す図
【図4】本第1実施例のアノード電極に正孔注入層の材料液の塗布過程(a)〜(c)を示す図
【図5】本第1実施例のバンク開口部の回りに設けた無機絶縁膜を示す図
【図6】本実施形態1の第2実施例でバンク開口部内のアノード電極の端とバンク開口部の端との間に設けた(a)は空隙、(b)は別の空隙を示す図
【図7】本第2実施例のアノード電極に正孔注入層の材料液の塗布過程(a)〜(d)を示す図
【図8】本第2実施例のバンク開口部の回りに設けた無機絶縁膜を示す図
【図9】従来の有機ELディスプレイパネルで正孔注入層の材料液の塗布過程(a),(b)を示す図
【図10】従来のアノード電極に正孔注入層の材料液の塗布過程(a)〜(c)を示す図
【図11】従来のアノード電極に正孔注入層の材料液の塗布方法(a),(b)を示す図
【図12】従来のアノード電極に正孔注入層の材料液の塗布過程(a)〜(c)を示す図
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面を参照して本発明における実施の形態を詳細に説明する。
【0030】
本発明の実施形態1における有機ELディスプレイパネルの製造方法は、マトリクス状に配置された開口部を規定するバンク並びに開口部内に配置された短軸および長軸を有するアノード電極を含む基板を準備する第1ステップ、およびノズルヘッドを用いて、基板上の各開口部内にアノード電極の短軸に沿ってノズルヘッドを走査し、正孔注入層の材料液の液滴を複数滴下して、この材料液をアノード電極に塗布し、正孔注入層を形成する第2ステップ、を有する。
【0031】
有機ELディスプレイパネルにおける各画素はRGBの3つの「副画素」からなる。すなわちRGBの3つの副画素が1つの画素を構成する。本発明の有機ELディスプレイパネルでは、各副画素の長軸は225〜480μmであり、短軸は75〜160μmである。また、「開口部」とは各副画素内においてバンクによって規定された正孔注入層の材料液が塗布される領域を意味する。以下、バンクによって規定された開口部を「バンク開口部」という。ライン領域とはバンク開口部がライン状に配置された領域を意味する。
【0032】
本実施形態1の有機ELディスプレイパネルの製造方法は、好ましい第1実施例および好ましい第2実施例を含む。以下、図面を用いて第1実施例と第2実施例とに分けて本発明の有機ELディスプレイパネルの製造方法について説明する。
【0033】
A)本実施形態1における有機ELディスプレイパネル製造方法の第1実施例は、基板を準備する第1ステップ、基板上にアノード電極を形成する第2ステップ、バンク開口部を規定するバンクを形成する第3ステップ、および正孔注入層の材料液を吐出するノズルを複数有するノズルヘッドで基板を走査領域ごとに走査する第4ステップを有する。また、第2ステップと第3ステップとの間に絶縁性の無機膜を形成するステップを有していてもよい。
【0034】
1)第1ステップでは、基板101を準備する。基板101の材料は、有機ELディスプレイパネルがボトムエミッション型か、トップエミッション型かによって異なる。例えば、ボトムエミッション型の場合、基板101は、透明であることが求められる。したがってボトムエミッション型の場合、基板101の材料の例にはガラスや透明樹脂などが含まれる。一方、トップエミッション型の場合、基板101が透明である必要はない。したがってトップエミッション型の場合、基板101の材料は絶縁性であれば任意である。
【0035】
2)第2ステップ(図1(a)参照)では、基板101上にアノード電極103(厚さ10〜100nm)を配置する。アノード電極103は、例えばスパッタリング法などにより、電極材料の膜を基板101上に形成し、電極材料の膜をレジストによりマスキングし、エッチングしてパターニングすることにより形成される。
【0036】
ボトムエミッション型の場合、アノード電極103は、透明電極であることが求められることから、アノード電極103の材料の例は、ITO(酸化インジウム・スズ)やIZO(酸化インジウム・亜鉛)、ZnO(酸化亜鉛)などを含む。
【0037】
トップエミッション型の場合、アノード電極103に光反射性が求められることから、アノード電極103の材料の例は、銀を含む合金、より具体的には銀−パラジウム−銅合金(APCとも称する)や銀−ルテニウム−金合金(ARAとも称する)、MoCr(モリブデンクロム)、NiCr(ニッケルクロム)などを含む。
【0038】
また、後述する正孔注入層の材料液がアノード電極表面によく馴染むよう、アノード電極を覆うITO膜を形成してもよい。
【0039】
3)第3ステップ(図1(b)参照)ではバンクを形成する。バンクには、各副画素のバンク開口部109を規定するバンク105が含まれ、さらにライン状バンク106も含まれうる。ライン状バンク106の頂点は、バンク105の頂点よりも高い。バンク105は、正孔注入層の材料液が塗布されるバンク開口部109を規定し、ライン状バンク106は、例えば有機EL層の材料液が塗布されるライン領域108を規定することができる。
【0040】
図1(b)に示されるように基板101は、互いに平行な複数のライン領域108を有し、かつライン領域108のそれぞれには、複数のバンク開口部109が列状に配置されている。複数のバンク開口部109が列状に配置されたライン領域108は、図1(b)に示すようにライン状バンク106とそのライン状バンク106と直交して上下端を囲むバンク107によって区分されていてもよい。図1(b)に示すようにライン状バンク106のライン方向は互いに平行である。
【0041】
バンクとしては、例えばフォトリソグラフィ技術や凹版印刷、凸版印刷などによって形成されうる。バンクの高さは0.5〜1μmであることが好ましい。バンクの材料は絶縁性であれば任意であるが、絶縁性樹脂(ポリイミドなど)であることが好ましい。さらに、バンクの表面は濡れ性が低い(例えば、撥水性である)ことが好ましい。そのため、バンクの材料をフッ素樹脂を含む絶縁性樹脂としてもよいし、バンクの表面をフッ素系ガスプラズマでフッ素化させてもよい。それにより、濡れ性を低下させることができる。
【0042】
各バンク開口部109内のアノード電極103は長軸および短軸を有する。すなわちアノード電極103は1方向に長い形状を有し、楕円形であってもよい。アノード電極103の長軸はライン領域108のライン方向と平行であることが好ましい。バンク開口部109内に配置されたアノード電極103の長軸の長さは、205〜460μmであり、アノード電極103の短軸は55〜140μmであることが好ましい。
【0043】
本第1実施例の製造方法では、所定のバンク開口部内に配置されたアノード電極の面積がノズルヘッドの走査方向(図2(a)〜(f)に示す塗布方向Bの矢印の方向)に対して、漸次小さくなることを特徴とする。ここで「面積が小さくなる」とは、
[1]アノード電極103の走査方向下流の端部を走査方向上流の端部よりも短軸方向に縮める(図2(a),(b)参照)。この場合、所定の各バンク開口部内に配置されたアノード電極103’,103”を、アノード電極の長軸Yの中点を通る短軸Xに関して対称とする。
[2]アノード電極103を長軸Y方向に縮ませることを含む(図2(c),(d)参照)。この場合、所定の各バンク開口部内に配置されたアノード電極103’,103”を、アノード電極の長軸Yの中点を通る短軸X、長軸Yに関して対称とする。
[3]アノード電極103の長軸Y方向および短軸X方向に縮ませることを含む(図2(e),(f)参照)。この場合、所定の各バンク開口部内に配置されたアノード電極103’,103”を、アノード電極の長軸Yの中点を通る短軸X、長軸Yに関して対称とする。
【0044】
このようにアノード電極103の面積を、ディスプレイパネルの短辺側の左端から右端までの間で漸次小さくする若しくは大きくするが、アノード電極103の面積比で1割に収まることが好ましい。なお、図2(a)〜(f)では形状(面積)を変えることを分かり易くするために強調して描いている。
【0045】
本第1実施例の製造方法では、このように走査方向下流に対してアノード電極の面積が漸次小さくなるように形状を変えたアノード電極103’,103”が、バンク開口部109内に順次配置されることを特徴とする。
【0046】
アノード電極103の走査方向下流の面積を小さくするには、アノード電極103自体をパターニングして図2(a)〜(f)に示すアノード電極103’やアノード電極103”のようにしてもよいし、アノード電極103自体は任意の形状にパターニングし、バンク105によって、バンク開口部109に露出するアノード電極103の面積を図2(a)〜(f)に示すアノード電極103’やアノード電極103”のように小さくなるようパターニングしてもよい。
【0047】
4)第4ステップは、正孔注入層の材料液を吐出するノズル孔201を複数有するノズルヘッド130と、これを複数揃えた集積ヘッド200を用意するステップa(図3(a)参照)、走査領域113が有する各バンク開口部109内に配置されたアノード電極103に、正孔注入層の材料液を塗布するステップb(図3(b)参照)を含む。
【0048】
アノード電極103は走査方向に対して面積が漸次小さくなるように形成されており、例えば図中の面積は103>103’>103”となっている(ただし、図3(a)の中では違いが分かるように図示していない。また、103”以降もアノード電極の面積が漸次小さくなったアノード電極が配置されている)。
【0049】
正孔注入層の材料液は、溶媒としての水および正孔注入材料を含む。正孔注入材料の例には、ポリスチレンスルホン酸(PSS)をドープしたポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT−PSSと称される)や、その誘導体(共重合体など)が含まれる。図3(b)に示されるように本発明で正孔注入層111は、各副画素のバンク開口部109ごとに形成される。
【0050】
図4(a)〜(c)は、図3(a)のバンク開口部109内のアノード電極103,103’,103”に正孔注入層の材料液が塗布される様子を示す。以下、図4(a)〜(c)を用いて、アノード電極103に正孔注入層の材料液を塗布する方法について説明する。
【0051】
まず、走査領域113を集積ヘッド200で走査すると、ノズル孔201が吐出する正孔注入層の材料液104,104’,104”の液滴が、アノード電極103の長軸に沿ってバンク開口部109,109’,109”内に複数滴下される(図4(a)参照)。図4(a)の塗布方向Bの矢印で示す集積ヘッド200の走査方向はアノード電極103の短軸と平行であることが好ましい。滴下された正孔注入層の材料液104,104’,104”の液滴は、バンク開口部109,109’,109”内のアノード電極103,103’,103”上に広がり、正孔注入層の材料液104,104’,104”が塗布される(図4(b)参照)。その後、正孔注入層の材料液104を乾燥させることでアノード電極上に正孔注入層111,111’,111”が形成される(図4(c)参照)。
【0052】
また、アノード電極の面積を漸次小さくした図2(a)〜(f)を用いた場合も同様にアノード電極103,103’,103”上に正孔注入層111,111’,111”が形成される(図示せず)。
【0053】
従来の有機ELディスプレイパネルでは、ノズルヘッドでライン領域に対して垂直な方向から正孔注入層の材料液104を塗布した場合、アノード電極103の走査方向の下流で、正孔注入層111の材料液が広がらず、アノード電極103が露出することがあった(図12(c)参照)。しかし、本第1実施例の製造方法では、前述したように、各バンク開口部内に配置されたアノード電極の走査方向下流の面積は、走査方向上流の端部よりも小さくなっている。そのため、アノード電極の走査方向下流の端部において、滴下された正孔注入層の材料液の1滴あたりのアノード電極の領域が小さくなる。したがって、正孔注入層の材料液をアノード電極の短軸に沿って複数滴下した場合であっても、アノード電極が露出しにくい。これにより有機EL素子がショートすることを防ぐことができる。
【0054】
また、本第1実施例の有機ELディスプレイパネルの製造方法は、前記ステップに加え、中間層および有機EL層を形成するステップ、有機EL層上にカソード電極を形成するステップを有していてもよい。
【0055】
中間層および有機EL層は、例えば正孔注入層上にインクジェット法などを用いて、中間層および有機EL層の材料液を塗布することで形成される。また中間層および有機EL層は図1(b)のライン領域108ごとに形成されてもよい。
【0056】
中間層は正孔注入層に電子が輸送されるのをブロックする役割や、有機EL層に正孔を効率よく運ぶ役割などを有し、例えばポリアニリン系の材料からなる層である。中間層は中間層の材料液(中間層の材料をアニソールやシクロベンゼンなどの有機溶媒に溶解したインク)をバンク開口部に塗布することで形成される。中間層の厚さは、10〜40nmであることが好ましい。
【0057】
また、有機EL層の材料は高分子有機EL材料であっても低分子有機EL材料であってもよい。高分子有機EL材料を材料とする有機EL層は、容易にかつ他の材料に損傷を与えることなく形成されることができることから好ましい。
【0058】
高分子有機EL材料の例には、ポリフェニレンビニレンおよびその誘導体、ポリアセチレン(Poly acetylene)およびその誘導体、ポリフェニレン(Poly phenylene(PP))およびその誘導体、ポリパラフェニレンエチレン(Poly para phenylene ethylene)およびその誘導体、ポリ3−ヘキシルチオフェン(Poly 3-hexyl thiophene(P3HT))およびその誘導体、ポリフルオレン(Poly fluorene(PF))およびその誘導体などが含まれる。また、有機EL層の厚さは約50〜100nmであることが好ましい。
【0059】
カソード電極としては、例えば蒸着法やスパッタリング法を利用して形成すればよい。カソード電極の材料は、ボトムエミッション型か、トップエミッション型かによってその材料が異なる。トップエミッション型の場合には、カソード電極が透明である必要があるのでITO電極やIZO電極などを含む材料で形成することが好ましい。また、Ba、Al、WOxで構成してもよい。
【0060】
また、ボトムエミッション型の場合にはカソード電極が透明である必要はなく、任意の材料でカソード電極を形成すればよい。ボトムエミッション型の場合、カソード電極の材料の例は、BaやBaO、Alなどを含む。
【0061】
カソード電極を形成した面に、さらにカバー材(封止材)を設けて本発明の有機ELディスプレイパネルを封止してもよい。カバー材により水分や酸素の浸入が抑制される。
【0062】
前記した第1実施例の製造方法は、絶縁性の無機膜(以下「無機絶縁膜」という)を形成するステップをさらに有していてもよい。無機絶縁膜は電気絶縁性であることはもちろんであるが、濡れ性が高いことも好ましい。無機絶縁膜の材料の例には、シリコンオキサイド(SiO)やシリコンナイトライド(Si)、シリコンオキシナイトライド(SiON)などが含まれる。無機絶縁膜の厚さは10nm〜200nmであることが好ましい。
【0063】
無機絶縁膜は図5に示すようにバンク開口部109からバンク105まではみ出していることが好ましい。より好ましくは、無機絶縁膜110はバンク開口部109からバンク105まで5〜10μmはみ出している。また、無機絶縁膜110はアノード電極103の縁を覆うように配置されてもよい。無機絶縁膜110により正孔注入層の材料液はバンク開口部全体に均一に塗布され、膜厚が均一な機能層を得ることができる。
【0064】
B)本実施形態1における有機ELディスプレイパネル製造方法の第2実施例は、基板を準備する第1ステップ、基板上にアノード電極を形成する第2ステップ、バンク開口部を規定するバンクを形成する第3ステップ、および正孔注入層の材料液を吐出するノズルを複数有するノズルヘッドで基板を走査領域ごとに走査する第4ステップを有する。また、第2ステップと第3ステップとの間に絶縁性の無機膜を形成するステップを有していてもよい。
【0065】
1)第1ステップで準備される基板101は、前述の第1実施例で準備する基板と同じである。
【0066】
2)第2ステップで形成されるアノード電極の製造方法およびアノード電極の材料はともに、前述の第1実施例で形成されるアノード電極103と同じである(図1(a)参照)。
【0067】
3)第3ステップでは、副画素ごとのバンク開口部109を規定するバンク105を形成する。バンクの形成方法、バンクの材料などは、前述の第1実施例と同様である(図1(b)参照)。そして、第1実施例と同様に、バンク開口部109内のアノード電極103は長軸および短軸を有する。すなわちアノード電極103は1方向に長い形状を有し、楕円形であってもよい。アノード電極103の長軸はライン領域108のラインと平行であることが好ましい。バンク開口部109内に配置したアノード電極103の長軸の長さは205〜460μmであり、アノード電極103の短軸は55〜140μmであることが好ましい。
【0068】
本第2実施例の製造方法では、所定のバンク開口部がアノード電極よりも走査方向下流に位置する程長く形成されている。したがって、所定のバンク開口部は、アノード電極の走査方向下流の端とバンク開口部の走査方向下流の端との間に空隙を有する。ここで、「空隙」とはアノード電極とバンク開口部との間に形成された領域であって、アノード電極の下地層が露出した領域を意味する。
【0069】
図6(a)にこの空隙を示す。バンク105のバンク開口部109’,109”はアノード電極103’,103”との間に空隙112’,112”を有する。アノード電極103’の走査方向下流の端とバンク開口部109’の走査方向下流の端との間隔d(図6(a)参照)は10〜20μmであることが好ましい。また、アノード電極103’,103”の短軸方向の両端とバンク開口部109’,109”の短軸方向の両端との間に空隙112’,112”が形成されていてもよい(図6(b)参照)。
【0070】
このようにアノード電極103’とバンク開口部109’との間に空隙112’を設け、ディスプレイパネルの短辺側の左端から右端までの間でその空隙112’を漸次小さくする若しくは大きくする。その空隙112’の面積はアノード電極103の面積比で1割に収まることが好ましい。なお、図2(a)〜(f)、図4(a)〜(c)、図6(a),(b)ではアノード電極、バンク開口部の形状(面積)を変えることが分かるために強調して描いている。
【0071】
4)第4ステップは、正孔注入層の材料液を吐出するノズル孔201を複数有するノズルヘッド130と、これを複数揃えた集積ヘッド200を用意するステップa(図3(a)参照)、走査領域113が有する各バンク開口部109内に配置されたアノード電極103に、正孔注入層の材料液を塗布するステップ(図3(b)参照)を含む。正孔注入層の材料液は、第1実施例で説明した正孔注入層の材料液と同じである。図3(b)に示されるように、本発明で正孔注入層111は、各副画素のバンク開口部109ごとに形成される。
【0072】
図7(a)〜(d)は、図3(a)のバンク開口部109内のアノード電極103,103’,103”に正孔注入層の材料液が塗布される様子を示す。以下図7(a)〜(d)を用いて、アノード電極103に正孔注入層の材料液を塗布する方法について説明する。
【0073】
まず、走査領域113を集積ヘッド200で走査すると、ノズル孔201が吐出する正孔注入層の材料液104の液滴が、アノード電極103の長軸に沿ってバンク開口部109内に複数滴下される(図7(a)参照)。図7(a)の塗布方向Bの矢印で示す集積ヘッド200の走査方向はアノード電極103の短軸と平行であることが好ましい。滴下された正孔注入層の材料液104,104’,104”の液滴は、バンク開口部109,109’,109”内のアノード電極103,103’,103”上に広がる(図7(b)参照)。さらに、アノード電極103’,103”上から空隙112’,112”へ正孔注入層の材料液が広がり、正孔注入層の材料液104’,104”が塗布される(図7(c)参照)。その後、正孔注入層の材料液を乾燥させることでアノード電極103,103’,103”上に正孔注入層111,111’,111”が形成される(図7(d)参照)。
【0074】
正孔注入層の材料液は空隙112’,112”にも滴下されることが好ましい。したがって、本第2実施例の製造方法では、バンク開口部109’,109”に滴下される正孔注入層の材料液の量は、バンク開口部109に滴下される正孔注入層の材料液の量よりも多くてもよい。また、アノード電極103’,103”の短軸方向の両端とバンク開口部109’,109”の短軸方向の両端との間に空隙112’,112”が形成されている図6(b)も同様に、アノード電極103上に正孔注入層111が形成される(図示せず)。
【0075】
このように、本第2実施例の製造方法では、バンク開口部内のアノード電極の走査方向下流の端とバンク開口部の走査方向下流の端との間に空隙112’,112”を設け、空隙112’,112”まで正孔注入層111’,111”の材料液を塗布することで、アノード電極が露出することが防止され(図7(d)参照)、有機EL素子がショートすることを防ぐことができる。
【0076】
図7(c)に示すように本第2実施例の製造方法では、空隙112’,112”の一部に正孔注入層の材料液を塗布することができず、空隙112’,112”が露出することがあるが、空隙112’,112”にはアノード電極が配置されていないことから、空隙112’,112”が露出しても有機EL素子がショートする恐れはない。
【0077】
また、本第2実施例の有機ELディスプレイパネルの製造方法は、前記ステップに加え、中間層および有機EL層を形成するステップ、有機EL層上にカソード電極を形成するステップを有していてもよい。各部材の構成および作製方法は、前述した第1実施例と同じである。
【0078】
前述した第1実施例と同様に、第2実施例における製造方法でも、絶縁性の無機膜(無機絶縁膜)を形成するステップをさらに有していてもよい。また無機絶縁膜の厚さおよび材料は第1実施例と同じであってよい。
【0079】
第1実施例と同様に、図8に示す無機絶縁膜110は、バンク開口部109からバンク105まではみ出していることが好ましい。より好ましくは、無機絶縁膜110はバンク開口部109からバンク105まで5〜10μmはみ出している。無機絶縁膜110により正孔注入層の材料液はバンク開口部全体に均一に塗布され、膜厚が均一な機能層を得ることができる。
【0080】
また、前述のように、本実施形態1の製造方法である第1実施例および第2実施例では、バンク表面はフッ素系ガスプラズマによってフッ素化されることがある。この場合、走査領域の走査によりフッ素成分によって汚染される恐れがある。フッ素は濡れ性を下げる作用を有することから、フッ素成分によって汚染されたアノード電極は濡れ性が低下し、アノード電極上に正孔注入層の材料液が塗布されにくくなる恐れがある。
【0081】
しかし、本実施形態1の製造方法の第1実施例および第2実施例のように、各バンク開口部内のアノード電極を走査方向下流に小さく絞り込んだり、各バンク開口部内のアノード電極の走査方向下流の端とバンク開口部の走査方向下流の端との間に空隙を設け、空隙まで正孔注入層の材料液を塗布したりすることで、例えフッ素成分によって汚染されたとしても、アノード電極全体に正孔注入層の材料液が塗布され、アノード電極が露出することが防止される。
【0082】
したがって、本実施形態1は、バンク表面をフッ素系ガスプラズマによってフッ素化するような場合、特に有効である。
【0083】
次に、本発明の実施形態2における有機ELディスプレイパネルは、基板、アノード電極、カソード電極、並びに両電極に挟まれた正孔注入層および有機EL層を有する有機EL素子からなる。本実施形態2の有機ELディスプレイパネルでは、このような有機EL素子が基板上にマトリクス状に配置され、副画素として機能する。
【0084】
基板には、アノード電極が形成されている。有機ELディスプレイパネルがパッシブマトリクス型である場合、アノード電極はライン状に、複数本形成される。ライン状のアノード電極は、互いに平行であることが好ましい。有機ELディスプレイパネルがアクティブマトリクス型である場合、アノード電極は基板上に有機EL素子ごと独立して配置される。
【0085】
また、正孔注入層はバンクによって規定されたバンク開口部ごとに独立してアノード電極上に配置される。さらに有機EL層は正孔注入層上に配置され、正孔注入層と有機EL層との間には中間層が配置されていてもよい。
【0086】
本実施形態2の有機ELディスプレイパネルは、有機EL層上にカソード電極を有する。またカソード電極と有機EL層との間には電子注入層が配置されていてもよい。
【0087】
さらに、カソード電極を形成した面にカバー材(封止材)を設けて有機ELディスプレイパネルを封止してもよい。カバー材により水分や酸素の浸入が抑制される。
【0088】
本実施形態2における有機ELディスプレイパネルの構造は、前述した実施形態1の第1実施例によって製造されるか、第2実施例によって製造されるかによって異なる。以下、本実施形態2における有機ELディスプレイパネルの構造について、第1実施例の製造方法によって製造された場合と、第2実施例の製造方法によって製造された場合とに分けて説明する。
【0089】
(a)第1実施例の製造方法によって製造された場合
図3(b),図4(c)は、第1実施例の製造方法によって製造された有機ELディスプレイパネルからカソード電極や有機EL層を除去して正孔注入層を露出させた状態の平面図である。図4(c)に示されるように、正孔注入層111’,111”の面積は(走査方向下流につれて)漸次小さくなっている。
【0090】
また、図2(a),図3(a)は、有機ELディスプレイパネルから正孔注入層111を除去した有機ELディスプレイパネルの平面図である。図2(a)に示されるように、アノード電極103,103’,103”の面積は(走査方向下流につれて)漸次小さくなっている。
【0091】
このため、各バンク開口部109内に配置されたアノード電極103の走査方向下流の面積は、走査方向上流の端部よりも小さいため、走査方向下流の端部において、滴下された正孔注入層の材料液の1滴あたりのアノード電極103の領域が小さくなり、アノード電極103を露出しにくくでき、有機EL素子がショートすることを防ぐことができる。
【0092】
(b)第2実施例の製造方法によって製造された場合
図3(b),図7(d)は、第2実施例の製造方法によって製造された有機ELディスプレイパネルからカソード電極や有機EL層を除去して正孔注入層を露出させた状態の平面図である。図7(d)に示されるように、正孔注入層111,111’,111”の面積は(走査方向下流につれて)漸次大きくなっている。
【0093】
また、図3(a),図6(a)に示された有機ELディスプレイパネルから正孔注入層111を除去した有機ELディスプレイパネルの平面図である。図6(a)に示されるようにアノード電極103’,103”とバンク開口部109’,109”との間に空隙112’,112”を有しており、その面積は(走査方向下流につれて)漸次大きくなっている。
【0094】
この空隙112’,112”にはアノード電極103の下地層が露出していることから、正孔注入層111’,111”はアノード電極103の下地層と接することとなり、例え空隙112’,112”の一部に正孔注入層の材料液を塗布できず、空隙112’,112”が露出することがあっても、空隙112’,112”にはアノード電極103が配置されていないことから、空隙112’,112”が露出しても有機EL素子がショートする恐れはない。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明の有機ELディスプレイパネルおよびその製造方法は、高品質で低コストのディスプレイパネルが得られ、携帯電話機,テレビ,パーソナルコンピュータなどのあらゆる表示装置に利用できる。
【符号の説明】
【0096】
10,101 基板
18,105 バンク
18a 開口部
103,103’,103” アノード電極
104,104’,104” 材料液
106 ライン状バンク
107 ライン状バンクと直交するバンク
108 ライン領域
109,109’,109” バンク開口部
110 無機絶縁膜
111,111’,111” 正孔注入層
112’,112” 空隙
113 走査領域
130 ノズルヘッド
140 第1領域
141 第2領域
200 集積ヘッド
201 ノズル孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに平行である2以上の開口部がライン状に配置された複数のライン領域、前記開口部を規定するバンク、および前記ライン領域のライン方向と垂直な短軸を持つ前記開口部内に配置されたアノード電極を有する基板を準備するステップと、
ポリエチレンジオキシチオフェンを含む水溶液を吐出する2以上の吐出ノズルを有するノズルヘッドを用いて、前記アノード電極の短軸方向に走査して、前記水溶液の液滴を複数滴下して、前記アノード電極上に前記水溶液を塗布するステップと、を有する有機ELディスプレイパネルの製造方法であって、
前記走査方向下流につれて前記アノード電極の面積が漸次小さくなることを特徴とする有機ELディスプレイパネルの製造方法。
【請求項2】
互いに平行である2以上の開口部がライン状に配置された複数のライン領域、前記開口部を規定するバンク、および前記ライン領域のライン方向に垂直な短軸を持つ前記開口部内に配置されたアノード電極を有する基板を準備するステップと、
ポリエチレンジオキシチオフェンを含む水溶液を吐出する2以上の吐出ノズルを有するノズルヘッドを用いて、前記アノード電極の短軸方向に走査して、前記水溶液の液滴を複数滴下して、前記アノード電極上に前記水溶液を塗布するステップと、を有する有機ELディスプレイパネルの製造方法であって、
前記開口部と前記アノード電極との間で前記短軸方向に空隙を有し、前記走査方向下流につれて前記空隙の面積が漸次大きくなり、かつ前記水溶液は前記空隙にも塗布されることを特徴とする有機ELディスプレイパネルの製造方法。
【請求項3】
互いに平行である2以上の開口部がライン状に配置された複数のライン領域と、前記開口部を規定するバンクと、前記ライン領域のライン方向に垂直な短軸を持つ前記開口部内に配置されたアノード電極と、前記開口部ごとに独立して、かつ前記アノード電極上に配置された正孔注入層と、前記正孔注入層上に配置された有機EL層と、前記有機EL層上に設けられたカソード電極とを備えた有機ELディスプレイパネルにおいて、
前記ライン領域のうち、前記開口部内に配置された前記アノード電極の面積が、前記ライン領域に垂直な一方向に対して漸次小さくなることを特徴とする有機ELディスプレイパネル。
【請求項4】
互いに平行である2以上の開口部がライン状に配置された複数のライン領域と、前記開口部を規定するバンクと、前記ライン領域のライン方向に垂直な短軸を持つ前記開口部内に配置されたアノード電極と、前記開口部ごとに独立して、かつ前記アノード電極上に配置された正孔注入層と、前記正孔注入層上に配置された有機EL層と、前記有機EL層上に設けられたカソード電極とを備えた有機ELディスプレイパネルにおいて、
前記ライン領域のうち、前記開口部と前記アノード電極との間で前記短軸方向に空隙を有し、前記空隙が前記ライン領域に垂直な一方向に対して漸次大きくなることを特徴とする有機ELディスプレイパネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−267577(P2010−267577A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−119883(P2009−119883)
【出願日】平成21年5月18日(2009.5.18)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】