説明

有機ELデバイスおよび有機ELデバイスを用いた照明装置

【課題】 信頼性を向上させた可撓性有機EL素子を有する有機ELデバイスを提供する。
【解決手段】 フィルム基板11上に接触配置された第1電極12a、第1電極12a上に有機層12b、有機層12b上に第2電極12cを設けた有機EL素子1と、有機EL素子1を密着させ、前記フィルム基板と比べて放熱性のよい外部基板2とを有する。有機EL素子1と外部基板2とが密着されることにより、有機EL素子1が外部基板2とよく接触するため、有機EL素子1の放熱性を高めることができる。また、有機EL素子1を外部基板2に密着させることで、可撓性を有する有機EL素子1に発生しうるたわみを軽減できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は有機ELデバイスおよび有機ELデバイスを用いた照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ガラスなどの堅固な基板を用いた発光素子を備えた照明装置が知られている。特開2008−107726公報(以下、特許文献1)では、ガラス基板上に有機EL素子が配置された有機EL表示装置が提示されている。
【0003】
【特許文献1】特開2008−107726公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
大面積の有機ELデバイス照明を用いる際に問題となることは、ガラスなど堅固な基板で作製した有機ELデバイスでは自重が重く、また割れる問題が生じてしまう。この課題を解決しようと考えると高分子などの柔軟なフィルム基板を用いた有機ELデバイスが望ましい。しかし、柔軟な有機ELデバイスでは自重によるたわみが生じる。自重によりたわみが生じると、放熱板などとの密着性が悪くなり、EL素子の放熱性が悪くなる。放熱性が悪くなると、ELデバイスの発光効率が低下し、輝度低下が発生、ELデバイスの寿命が短くなるという課題が出てくる。
【0005】
本発明の目的は、これらの問題を解決するために放熱効果のある外部基板を装着させ、信頼性を向上させた可撓性有機EL素子を有する有機ELデバイスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る有機ELデバイスは、フィルム基板上に接触配置された第1電極、前記第1電極上に有機層、前記有機層上に第2電極を設けた有機EL素子と、前記有機EL素子を密着させ、前記フィルム基板と比べて放熱性のよい外部基板とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
上記構成によれば、有機EL素子を放熱性のよい外部基板に密着させることができるため、有機EL素子の放熱性を高めることができる。よって、信頼性を向上させた可撓性有機EL素子を有する有機ELデバイスを得ることが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
(第1の実施の形態)
本発明の第1の実施の形態を図1に示す。図1は、本発明の第1の実施形態を示す斜視図、図2は、図1のポイントAとA’の間の断面を矢印方向から見た図である。
【0009】
本発明に係る有機ELデバイスは、有機EL素子1と、外部基板2からなる。
【0010】
有機EL素子1は、フィルム基板11上に、有機EL層12が形成されている。なおここでいう「上」とは、フィルム基板11からより遠方側の面のことを指す。
【0011】
フィルム基板11は、後述する有機EL層12が配置されている。フィルム基板11は、ポリエチレンテレフタレートで構成されており、フィルム基板11及び有機EL素子1、封止膜12dの合計膜厚は1mm以下であることが望ましい。
【0012】
有機EL層12は、第1電極12a、有機層12b、第2電極12c、封止層12dを有する。
【0013】
第1電極12aは、後述する有機層12bに対して、正孔を提供する。第1電極12aは透明電極であり、例えばITOなどで構成される。
【0014】
有機層12bは、その両端にある第1電極12aと第2電極12c第1電極12a、第2電極12cより電界が生じることにより発光する。有機層12bは、有機物が蒸着されており、例えばαNPD、Alq3などの有機物などで構成される。有機層12bは、真空蒸着法により形成される。
【0015】
第2電極12cは、有機層11bに対して、電子を提供する。また、第2電極12cは、有機層12bが発光したときに効率よく光線を放射するために反射する物質が望ましく、例えばアルミニウムなどにより構成される。第2電極12cは、真空蒸着法により形成される。
【0016】
封止膜12dは、第1電極12a、有機層12b、第2電極12cが大気に暴露されることを抑制するため、第1電極12a、有機層12b、第2電極12cを覆う。封止膜11dは、ガスバリア性に優れたSiN層と樹脂層とを交互に成膜したものである。なお、封止層12dで完全に第1電極12a、有機層12b、第2電極12cを封止すると、有機層12bに電界をかけられなくなるため、図2(b)に示すように、例えば第1電極12a、第2電極12cは封止層12dの外部と導通するように構成されるのが望ましい。
【0017】
外部基板2は、有機EL素子1を照明として用いるために必要な部材が搭載されており、有機EL素子1と密着構造をとっている。外部基板2に搭載されている部材とは、例えば、点灯回路、蓄電池、太陽電池などが搭載されている。また外部基板2は、フィルム基板11よりも放熱性がよく、有機EL素子1が発光しても形状が変形しない材質であればどのようなものでもよく、例えば放熱用シリコーンなどの樹脂材料や、アルミニウムなどの金属で構成される。
【0018】
ここで、有機EL素子1と外部基板2の密着様式について、更に詳しく説明する。
【0019】
有機EL素子1と外部基板2は、有機EL層12が形成された面と外部基板2とが接着により密着されている。有機EL素子1と外部基板2とが密着されることにより、有機EL素子1の放熱性を高めることができる。また、有機EL素子1を外部基板2に密着させることで、可撓性を有する有機EL素子1に発生しうるたわみを軽減できる。
【0020】
また、外部基板2に有機EL素子1が接合する面には、有機EL素子1から放射される光線が反射するように構成されており、例えば外部基板2の有機EL素子1が接合する部分にはアルミニウム膜が蒸着されている。これにより、有機EL素子1から放射される光線が外部基板2により反射されるため、結果有機ELデバイスの照度を向上させることができる。
【0021】
したがって、上記構成によれば、信頼性を向上させた可撓性有機EL素子を有する有機ELデバイスを得ることが可能である。
【0022】
なお、図3のように、外部基板2一つに対して、有機ELデバイスを複数接合してもよい。
【0023】
また、図4のように、有機EL素子1の有機EL層12が形成された側の裏面を外部基板2と接合してもよい。
【0024】
また、図5のように、有機EL素子1を、曲面を有する外部基板2と接合してもよい。図5のように、曲面が発光する有機ELデバイスを堅固な基板で実現することは困難である。これは、曲面を有する堅固な基板を形成することが難しく、また曲面を有する堅固な基板を実現できたとしても、基板と外部基板2とを隙間なく接合することが不可能である。しかしながら、可撓性を有する有機EL素子1を、曲面を有する外部基板2と接合することは容易であり、かつ有機EL素子1を曲面を有する外部基板2と接合することで放熱性がよくなるため、結果信頼性を向上させた可撓性有機EL素子を有する有機ELデバイスを得ることが可能である。
(第2の実施の形態)
本発明の第2の実施の形態を図6に示す。ここで、第1の実施の形態と同一の部品については同一の符号で示し、その説明を省略する。図6(a)は本発明を用いた住宅の斜視図、図6(b)は図6(a)のポイントBとB’の断面を矢印方向から見た図である。
【0025】
本実施の形態は、第1の実施の形態の有機ELデバイスを照明として用いた一例である。
【0026】
住宅Hの部屋ROOMの天井には、第1の実施の形態で示された有機ELデバイスOLEDが配置されている。また、住宅Hの屋根ROOFには太陽電池SCが配置され、太陽電池SCはリード線LWにより有機ELデバイスOLEDと接続されている。
【0027】
太陽電池SCは、有機ELデバイスOLEDの電源の一例である。太陽電池SCは、晴天時に起電力を発生し、太陽電池SCに接続されたリード線LWにより有機ELデバイスOLEDに電力を供給する。有機ELデバイスに供給された電力は外部基板2に配置された点灯回路に供給され、必要に応じて有機EL素子1を点灯する。また、有機EL素子1が点灯していないときは、外部基板2に配置された蓄電池に蓄えられ、必要なとき、例えば、夜間や曇天、降雨時など、太陽電池SCが起電力を発生できないときに有機EL素子1に電力を供給する。
【0028】
従って、本実施の形態でも、第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の第1の実施の形態を示す斜視図。
【図2】図1のポイントAとA’の断面を矢印方向から見た図。
【図3】他の変形例1の形態を示す断面図。
【図4】他の変形例2の形態を示す断面図。
【図5】他の変形例3の形態を示す断面図。
【図6】本発明の第2の実施の形態を示す図。
【符号の説明】
【0030】
1 有機EL素子
11 フィルム基板
12 有機EL層
12a 第1電極
12b 有機層
12c 第2電極
12d 封止層
2 外部基板
H 住宅
ROOM 部屋
ROOF 住宅
OLED 有機ELデバイス
SC 太陽電池
LW リード線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルム基板上に接触配置された第1電極、前記第1電極上に有機層、前記有機層上に第2電極を設けた有機EL素子と、
前記有機EL素子を密着させ、前記フィルム基板と比べて放熱性のよい外部基板とを有することを特徴とする有機ELデバイス。
【請求項2】
請求項1記載の有機ELデバイスが配置されたことを特徴とする照明装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−86767(P2010−86767A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−254212(P2008−254212)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(000111672)ハリソン東芝ライティング株式会社 (995)
【Fターム(参考)】