説明

有機EL基板、有機EL装置、電子機器、有機EL装置の製造方法及び有機EL基板の検査方法

【課題】有機EL素子を構成するいずれの層が不良であるかを正確に判別可能とする。
【解決手段】発光層と電極層とを含む多層構造を有する有機EL素子4が基板の所定領域
A1に複数形成される有機EL基板2であって、上記基板上の所定領域A1外に、上記有
機EL素子4を構成する層のうち少なくとも一層を備えかつ上記有機EL素子4と異なる
層構造を有する検査用素子10〜70が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機EL基板、有機EL装置、電子機器、有機EL装置の製造方法及び有機
EL基板の検査方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネッセンス(以下、ELと略す)装置は、陰極と陽極との間に有機
材料からなる発光層を有している。このような有機EL装置の場合、電極間に電圧を印加
すると、陰極より電子が、陽極より正孔(ホール)が発光層に注入され、印加された電場
により発光層中を移動し、再結合する。この再結合の際に放出されたエネルギーにより、
励起子(エキシトン)が生成し、この励起子が基底状態に戻る際に蛍光や燐光という形で
エネルギーを放出する。発光層を構成する分子は、低分子系と高分子系とに大別される。
一般に、低分子系の場合は真空蒸着法により成膜することができ、高分子系の場合はスピ
ンコート法やインクジェット法といった塗布法により成膜される。
【0003】
ところで、有機EL装置では、その発光特性を検査するために、有効画素領域の外部に
有効画素領域に形成される有機EL素子と同様の層構造を有する検査用の有機EL素子を
形成し、当該検査用の有機EL素子を検査することによって、有効画素領域に形成された
有機EL素子の発光特性を検査する場合がある。
このように有効画素領域の外部に形成される検査用の有機EL素子を検査することによ
って、有効画素領域に形成された有機EL素子に影響を与えることなく検査を行うことが
可能となる。
【特許文献1】特開2004−192925号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、有機EL素子は、陰極や陽極である電極層、発光層さらには発光層への
正孔の注入を促進するための正孔注入層(発光層と異なる有機層)等が積層された多層構
造を有している。このため、仮に検査用の有機EL素子を検査した結果が悪い場合であっ
ても、有機EL素子を構成するいずれの層が不良であるかを判定することはできなかった

【0005】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、有機EL素子を構成するいずれの
層が不良であるかを正確に判別可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の有機EL基板は、発光層と電極層とを含む多層構
造を有する有機EL素子が基板の所定領域に複数形成される有機EL基板であって、上記
基板上の所定領域外に、上記有機EL素子を構成する層のうち少なくとも一層を備えかつ
上記有機EL素子と異なる層構造を有する検査用素子が形成されていることを特徴とする

【0007】
このような特徴を有する本発明の有機EL基板によれば、基板の所定領域(有効画素領
域)外に、当該所定領域に形成される有機EL素子を構成する層のうち少なくとも一層を
備えかつ所定領域に形成される有機EL素子と異なる層構造を有する検査用素子が形成さ
れている。そして、このような検査用素子では、検査用素子が備える有機EL素子を構成
する層の特性をより正確に判別する環境を整えることができる。したがって、このような
所定領域に形成される有機EL素子と異なる層構造を有する検査用素子を検査した場合に
は、検査用素子が備える有機EL素子を構成する層の特性をより正確に判別することが可
能となる。
したがって、本発明の有機EL基板によれば、有機EL素子を構成するいずれの層が不
良であるかを正確に判別することが可能となる。
【0008】
例えば、上記有機EL素子が上記発光層と該発光層と異なる有機層とを備え、上記検査
用素子が、上記発光層及び上記電極層のみを有する場合には、検査用素子を検査すること
によって、発光層と異なる有機層の特性に影響されることなく、発光層の特性のみを正確
に判別することが可能となる。したがって、有効画素領域に形成された有機EL素子の発
光層の特性を正確に判別することが可能となる。
また、例えば、上記有機EL素子が上記発光層と該発光層と異なる有機層とを備え、上
記検査用素子が、上記有機層及び上記電極層のみを有する場合には、検査用素子を検査す
ることによって、発光層の特性に影響されることなく、発光層と異なる有機層の特性のみ
を正確に判別することが可能となる。したがって、有効画素領域に形成された有機EL素
子の発光層と異なる有機層の特性を正確に判別することが可能となる。
【0009】
また、本発明の有機EL基板においては、上記検査用素子が、上記有機EL素子が有す
る上記発光層と上記有機EL素子が有する上記電極層と異なる層構造を有する検査用陰極
層とを備えるという構成を採用することができる。
このような構成を採用することによって、発光層の電気抵抗等の電気特性をより正確に
測定することが可能となり、発光層の特性をより正確に判別することが可能となる。
【0010】
また、本発明の有機EL基板においては、上記有機EL素子が上記発光層と該発光層と
異なる有機層とを備え、上記検査用素子は、上記有機層と上記有機EL素子が有する上記
電極層と異なる層構造を有する検査用陰極層とを備えるという構成を採用することもでき
る。
このような構成を採用することによって、発光層と異なる有機層の電気抵抗等の電気特
性をより正確に測定することが可能となり、発光層と異なる有機層の特性をより正確に判
別することが可能となる。
【0011】
次に、本発明の有機EL装置は、本発明の有機EL基板と、該有機EL基板に形成され
る上記有機EL素子の駆動を制御する制御手段とを備えることを特徴とする。
本発明の有機EL基板によれば、有機EL素子を構成するいずれの層が不良であるかを
正確に判別することが可能となる。したがって、このような有機EL基板を備える本発明
の有機EL装置においても、有機EL素子を構成するいずれの層が不良であるかを正確に
判別することが可能となる。
【0012】
次に、本発明の電子機器は、本発明の有機EL装置を備えることを特徴とする。
本発明の有機EL装置によれば、有機EL素子を構成するいずれの層が不良であるかを
正確に判別することが可能となる。したがって、このような有機EL装置を備える本発明
の電子機器においても、有機EL素子を構成するいずれの層が不良であるかを正確に判別
することが可能となる。
【0013】
次に、本発明の有機EL装置の製造方法は、発光層と電極層とを含む多層構造を有する
有機EL素子が基板の所定領域に複数形成される有機EL基板と、該有機EL基板に形成
される上記有機EL素子の駆動を制御する制御手段とを備える有機EL装置の製造方法で
あって、上記基板上の所定領域外に、上記有機EL素子を構成する層のうち少なくとも一
層を備えかつ上記有機EL素子と異なる層構造を有する検査用素子を形成する工程と、上
記検査用素子に電流を流すことによって上記有機EL素子の検査を行う工程とを有するこ
とを特徴とする。
【0014】
このような特徴を有する本発明の有機EL装置の製造方法によれば、基板の所定領域(
有効画素領域)に形成された有機EL素子を構成する層のうち少なくとも一層を備えかつ
有機EL素子と異なる層構造を有する検査用素子が、基板の所定領域外に形成され、この
検査用素子を検査することによって、基板の所定領域に形成された有機EL素子の検査が
行われる。
そして、このような検査用素子では、検査用素子が備える有機EL素子を構成する層の
特性をより正確に判別する環境を整えることができる。したがって、このような所定領域
に形成される有機EL素子と異なる層構造を有する検査用素子を検査した場合には、検査
用素子が備える有機EL素子を構成する層の特性をより正確に判別することが可能となる

したがって、本発明の有機EL装置の製造方法によれば、有機EL素子を構成するいず
れの層が不良であるかを正確に判別することが可能となる。
【0015】
また、本発明の有機EL装置の製造方法においては、上記検査用素子が、上記有機EL
素子を構成する層の中から選択された層のみを有するという構成を採用することができる

このような構成を採用した場合には、有機EL素子を形成する過程において同時に検査
用素子を形成することが可能となる。したがって、容易に検査用素子を形成することが可
能となる。
【0016】
次に、本発明の有機EL基板の検査方法は、発光層と電極層とを含む多層構造を有する
有機EL素子が基板の所定領域に複数形成される有機EL基板の検査方法であって、
上記基板上の所定領域外に、上記有機EL素子を構成する層のうち少なくとも一層を備
えかつ上記有機EL素子と異なる層構造を有する検査用素子を形成し、該検査用素子に電
流を流すことによって上記有機EL素子の検査を行うことを特徴とする。
【0017】
このような特徴を有する本発明の有機EL基板の検査方法では、基板の所定領域(有効
画素領域)に形成された有機EL素子を構成する層のうち少なくとも一層を備えかつ有機
EL素子と異なる層構造を有する検査用素子が、基板の所定領域外に形成され、この検査
用素子を検査することによって、基板の所定領域に形成された有機EL素子の検査が行わ
れる。
そして、このような検査用素子では、検査用素子が備える有機EL素子を構成する層の
特性をより正確に判別する環境を整えることができる。したがって、このような所定領域
に形成される有機EL素子と異なる層構造を有する検査用素子を検査した場合には、検査
用素子が備える有機EL素子を構成する層の特性をより正確に判別することが可能となる

したがって、本発明の有機EL基板の検査方法によれば、有機EL素子を構成するいず
れの層が不良であるかを正確に判別することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明に係る有機EL基板、有機EL装置、電子機器、有機E
L装置の製造方法及び有機EL基板の検査方法の一実施形態について説明する。なお、以
下の図面において、各部材を認識可能な大きさにするために、各部材の縮尺を適宜変更し
ている。
【0019】
(有機EL装置)
図1は、本実施形態の有機EL(エレクトロルミネッセンス)装置1を模式的に示した
図である。この図に示すように、有機EL装置1は、有機EL基板2と素子制御部3(制
御手段)とを備えている。
【0020】
有機EL基板2の有効画素領域A1には、複数の有機EL素子4(4R,4G,4B)
が形成されている。なお、有機EL素子4のうち、4Rの符合にて示す有機EL素子が赤
色光を発光する有機EL素子であり、4Gの符合にて示す有機EL素子が緑色光を発光す
る有機EL素子であり、4Bの符合にて示す有機EL素子が青色光を発光する有機EL素
子である。そして、図1に示すように、有機EL基板2の有効画素領域A1には、赤色光
を発光する有機EL素子4Rと、緑色光を発光する有機EL素子4Gと、青色光を発光す
る有機EL素子4Bとがアレイ状に配列されている。
【0021】
図2は、有効画素領域A1に形成される有機EL素子4の概略構成を模式的に示した断
面図である。
この図に示すように、有機EL素子4は、基板41上に陽極42(電極層)と、陰極4
7(電極層)とを有し、これら陽極42と陰極47との間に有機層48を備えたものであ
る。陽極42と陰極47とには、素子制御部3(図1参照)が接続され、両電極42,4
7に任意の電圧を印加可能になっている。有機層48は、正孔注入層43、発光層46が
積層されて構成される。この有機EL素子4は、発光層46で発光した光を基板41側か
ら射出する、いわゆるボトムエミッション方式のものである。
【0022】
基板41は、ガラス基板等の透明基板上にTFT素子からなる駆動素子(図示略)や各
種配線(図示略)等を形成して構成されたもので、これら駆動素子や各種配線の上に絶縁
層や平坦化膜を介して陽極を形成したものである。なお、基板41に適用可能な材料とし
ては、上記透明なガラス以外にも、石英、サファイア、あるいはポリエステル、ポリアク
リレート、ポリカーボネート、ポリエーテルケトンなどの透明な合成樹脂などが挙げられ
る。特に、基板41の形成材料としては、安価なソーダガラスが好適に用いられる。
【0023】
陽極42は、基板41上にパターニングされて形成され、かつTFT素子からなる駆動
素子や各種配線等と接続されたものである。本実施形態では、インジウム錫酸化物(Indi
um Tin Oxide:ITO)からなるものを採用している。
【0024】
なお、基板41とは反対の側から発光を取り出す、いわゆるトップエミッション方式の
場合には、基板41を構成する材料は不透明であってもよく、その場合、アルミナ等のセ
ラミック、ステンレス等の金属シートに表面酸化などの絶縁処理を施したもの、熱硬化性
樹脂、熱可塑性樹脂などを用いることができる。この場合、陽極42は遮光性や光反射性
の材料で形成することができる。
【0025】
正孔注入層43は、陽極42上に形成されている。正孔注入層43は、陽極42から注
入した正孔を発光層46に注入する。正孔注入層43の形成材料としては、アリールアミ
ン誘導体、フタロシアニン誘導体、ポリアニリン誘導体+有機酸、ポリチオフェン誘導体
+ポリマー酸等を用いることができる。
【0026】
発光層46は、正孔注入層43上に形成されており、陰極47から注入される電子と、
正孔注入層43から注入される正孔が結合して所定帯域の波長の光を発光する。この発光
層の材料としては、具体的には、ポリフルオレン誘導体、ポリパラフェニレンビニレン誘
導体、ポリパラフェニレン誘導体、ポリビニルカルバゾール誘導体、ポリチオフェン誘導
体、ポリアニリン誘導体、ポリメチルフェニルシラン誘導体などのポリシラン系などの高
分子有機材料が好適に用いられる。
なお、赤色光を発光する有機EL素子4Rにおいては、赤色光を発光可能な材料が選択
されて発光層46が形成され、緑色光を発光する有機EL素子4Gにおいては、緑色光を
発光可能な材料が選択されて発光層46が形成され、青色光を発光する有機EL素子4B
においては、青色光を発光可能な材料が選択されて発光層46が形成される。なお、以下
の説明において、赤色光を発光する有機EL素子4Rが備える発光層46を赤色発光層4
6R、緑色光を発光する有機EL素子4Gが備える発光層46を緑色発光層46G、青色
光を発光する有機EL素子4Bが備える発光層46を青色発光層46Bと称する。
【0027】
陰極47は、発光層46上にフッ化リチウム層と、カルシウム層と、アルミニウム層と
が積層されて形成されたものである。なお、有機EL素子4では、陰極47を覆う封止部
材を設けることが好ましく、さらには、陽極42と基板41との間に、基板41側から陽
極42、陰極47を含む有機層48に対して大気が侵入するのを遮断するための封止層を
設けることもできる。光取り出し側に設ける封止層は、例えばセラミックや窒化珪素、酸
化窒化珪素、酸化珪素などの透明な材料により形成し、この中でも酸化窒化珪素が透明性
、ガスバリア性の観点から好ましい。なお、封止層の厚さは発光層46から射出される光
の波長より小さくすることが好ましい(例えば0.1μm)。
【0028】
図1に戻り、有機EL基板2の有効画素領域A1の外には、ダミー領域A2が設けられ
ている。このダミー領域A2は、有効画素領域A1に形成された有機EL素子4を検査す
るために用いられる7つの検査用素子10〜70が形成されている。本実施形態において
は、これらの検査用素子10〜70の電気特性を測定し、その測定結果から有効画素領域
A1に形成された有機EL素子4の良悪を判別する。この際、有機EL素子4の特性が悪
い場合には、有機EL素子4を構成するいずれの層に不良があるかを判別する。なお、検
査用素子10〜70には、有機EL素子4とは独立して配線が配設されている。
【0029】
図3〜図9は、検査用素子10〜70の概略構成を模式的に示した断面図である。
検査用素子10は、図3に示すように、有機EL素子4が備える陽極42と、有機EL
素子4が備える正孔注入層43と、有機EL素子4が備える陰極47と異なる層構造を有
する検査用陰極80(例えば、アルミニウムの単層)とが積層された構造を有している。

検査用素子20は、図4に示すように、有機EL素子4が備える陽極42と、有機EL
素子4が備える正孔注入層43と、赤色発光層46Rと、有機EL素子4が備える陰極4
7と異なる層構造を有する検査用陰極80とが積層された構造を有している。
検査用素子30は、図5に示すように、有機EL素子4が備える陽極42と、有機EL
素子4が備える正孔注入層43と、緑色発光層46Gと、有機EL素子4が備える陰極4
7と異なる層構造を有する検査用陰極80とが積層された構造を有している。
検査用素子40は、図6に示すように、有機EL素子4が備える陽極42と、有機EL
素子4が備える正孔注入層43と、青色発光層46Bと、有機EL素子4が備える陰極4
7と異なる層構造を有する検査用陰極80とが積層された構造を有している。
検査用素子50は、図7に示すように、有機EL素子4が備える陽極42と、赤色発光
層46Rと、有機EL素子4が備える陰極47とが積層された構造を有している。
検査用素子60は、図8に示すように、有機EL素子4が備える陽極42と、緑色発光
層46Gと、有機EL素子4が備える陰極47とが積層された構造を有している。
検査用素子70は、図9に示すように、有機EL素子4が備える陽極42と、青色発光
層46Bと、有機EL素子4が備える陰極47とが積層された構造を有している。
【0030】
このように本実施形態においては、有機EL基板2のダミー領域A2に、有効画素領域
A1に形成された有機EL素子4を構成する層のうち少なくとも一層を備えかつ有機EL
素子4と異なる層構造を有する検査用素子10〜70が形成されている。
そして、検査用素子10は、有機EL素子4と比較して発光層46を備えずかつ陰極4
7と異なる層構造を有する検査用陰極80を備えている。このため、検査用素子10を用
いて、発光層46の特性に影響されることなく正孔注入層43の電気抵抗を測定すること
が可能となる。
また、検査用素子20は、赤色発光層46Rを備えるとともに有機EL素子4と比較し
て陰極47と異なる層構造を有する検査用陰極80を有している。このため、検査用素子
20を用いて、赤色発光層46Rの正孔輸送性を正確に測定することが可能となる。
また、検査用素子30は、緑色発光層46Gを備えるとともに有機EL素子4と比較し
て陰極47と異なる層構造を有する検査用陰極80を有している。このため、検査用素子
30を用いて、緑色発光層46Gの正孔輸送性を正確に測定することが可能となる。
また、検査用素子40は、青色発光層46Bを備えるとともに有機EL素子4と比較し
て陰極47と異なる層構造を有する検査用陰極80を有している。このため、検査用素子
40を用いて、青色発光層46Bの正孔輸送性を正確に測定することが可能となる。
また、検査用素子50は、赤色発光層46Rを備えかつ正孔注入層43を有していない
。このため、検査用素子50を用いて、正孔注入層43の特性に影響されることなく、赤
色発光層46Rの電子輸送性を測定することが可能となる。
また、検査用素子60は、緑色発光層46Gを備えかつ正孔注入層43を有していない
。このため、検査用素子60を用いて、正孔注入層43の特性に影響されることなく、緑
色発光層46Gの電子輸送性を測定することが可能となる。
また、検査用素子70は、青色発光層46Bを備えかつ正孔注入層43を有していない
。このため、検査用素子70を用いて、正孔注入層43の特性に影響されることなく、青
色発光層46Bの電子輸送性を測定することが可能となる。
【0031】
例えば、検査用素子10の電気特性を測定した結果が異常であった場合には、有機EL
素子4を構成する層のうち、正孔注入層43に異常があることを判別することができる。
また、検査用素子10〜70のうち、検査用素子20あるいは検査用素子50の測定結
果に異常がある場合には、赤色発光層46Rの正孔輸送性あるいは電子輸送性に異常があ
ることを判別することができる。
また、検査用素子10〜70のうち、検査用素子30あるいは検査用素子60の測定結
果に異常がある場合には、緑色発光層46Gの正孔輸送性あるいは電子輸送性に異常があ
ることを判別することができる。
また、検査用素子10〜70のうち、検査用素子40あるいは検査用素子70の測定結
果に異常がある場合には、青色発光層46Bの正孔輸送性あるいは電子輸送性に異常があ
ることを判別することができる。
【0032】
このように、本実施形態においては、有機EL基板2のダミー領域A2に形成された検
査用素子10〜70を検査することによって、有機EL素子4を構成するいずれの層が不
良であるかを正確に判別することが可能となる。
【0033】
図1に戻り、素子制御部3は、有効画素領域A1に形成された複数の有機EL素子4の
駆動、すなわち有機EL素子4の発光状態を制御するものである。そして、この素子制御
部3によって各有機EL素子4が制御され、これによって有効画素領域A1にフルカラー
の画像が表示可能とされている。
【0034】
以上のような構成を有する本実施形態の有機EL装置1においては、有機EL基板2の
ダミー領域A2に形成された検査用素子10〜70の電気特性を測定することによって、
有機EL基板2の有効画素領域A1に形成された有機EL素子4の良悪を判別することが
できるとともに、有機EL素子4を構成するいずれの層に不良があるかを容易に判別する
ことが可能となる。
【0035】
(有機EL装置の製造方法)
次に、上記有機EL装置1の製造方法について説明する。当該有機EL装置1の製造工
程は、概ね基板処理工程、正孔注入層形成工程、発光層形成工程、陰極形成工程及び検査
工程等からなるものである。
【0036】
<基板処理工程>
ガラスからなる基板41上にTFT素子や各種配線等を形成し、さらに、層間絶縁層や
平坦化膜を形成した後、蒸着法等によってITOを成膜し、さらにパターニングすること
によって陽極42を形成する。これにより、図10に示すように、基板41上に陽極42
が形成される。この後、陽極42が形成された基板41を洗浄後、大気圧において酸素プ
ラズマ処理を行い、基板41表面を親水性に改質する。これにより、陽極42の仕事関数
を上げることができる。
このような基板処理工程によって、有機EL素子4の陽極42及び検査用素子10〜7
0の陽極42が同時に形成される。
【0037】
<正孔注入層形成工程>
次に、基板41上にパターニングされた陽極42上に、正孔注入層材料である3,4−
ポリエチレンジオシチオフェン/ポリスチレンスルフォン酸(PEDOT/PSS)の分
散液を含む液状体をインクジェット法により所定の膜厚(20nm〜100nm)で配置
し、乾燥・焼成を行って(200℃で10分間)、図11に示すように正孔注入層43を
形成する。
なお、本正孔注入層形成工程において、検査用素子50,60,70には正孔注入層4
3を形成しない。このため、正孔注入層材料を配置する際に、検査用素子50,60,7
0に対応する箇所には、正孔注入層材料が配置されないようにパターニングする。このよ
うなパターンニングは、上述のようなインクジェット法を用いることによって容易に行う
ことができる。
このような正孔注入層形成工程によって、有機EL素子4の正孔注入層43及び検査用
素子10,20,30,40の正孔注入層43が同時に形成される。
【0038】
<発光層形成工程>
次に、正孔注入層43上に、発光層の形成材料を有機溶媒に溶解させた液状体をインク
ジェット法により所定の膜厚(50nm〜200nm)で配置した後、乾燥・窒素雰囲気
下で焼成(130℃で30分間)を行って溶媒を蒸発させることで、図12に示すように
発光層46を形成する。
なお、本発光層形成工程では、有機EL素子4R及び検査用素子20,50に対応する
箇所に赤色発光層46Rの形成材料を配置し、有機EL素子4G及び検査用素子30,6
0に対応する箇所に緑色発光層46Gの形成材料を配置し、有機EL素子4B及び検査用
素子40,70に対応する箇所に青色発光層46Bの形成材料を配置する。そして、検査
用素子10には発光層の形成材料を配置しない。このような各発光層の形成材料のパター
ニングも、上述のインクジェット法によって容易に行うことが可能となる。
このような発光層形成工程によって、有機EL素子4の発光層46及び検査用素子20
〜70の発光層46が同時に形成される。
【0039】
<陰極形成工程>
次に、発光層46上に真空蒸着法で、フッ化リチウム、カルシウム、アルミニウムを順
次積層させて、図13に示すようにフッ化リチウム層、カルシウム層、アルミニウム層か
らなる陰極47を形成する。
なお、陰極形成工程では、検査用素子10,20,30,40には、フッ化リチウム及
びカルシウムの層は形成せずにアルミニウムの層のみを形成する。これによって、検査用
素子10には、アルミニウム単層の検査用陰極80が形成される。なお、検査用素子10
,20,30,40以外に対応する箇所にフッ化リチウム及びカルシウムの層を真空蒸着
法で形成する場合には、検査用素子10,20,30,40に対応する箇所にマスクをす
ることによって、検査用素子10,20,30,40に対応する箇所を避けてフッ化リチ
ウム及びカルシウムの層を形成することができる。
【0040】
<検査工程>
次に、上記工程によって有機EL基板2に形成された検査用素子10〜70に電流を流
すことによって有機EL基板2の有効画素領域A1に形成された有機EL素子4の検査(
有機EL基板の検査方法)を行う。
ここで、上述のように、検査用素子10の電気特性を測定した結果が異常であった場合
には、有機EL素子4を構成する層のうち、正孔注入層43に異常があることを判別する
ことができる。また、検査用素子10〜70のうち、検査用素子20あるいは検査用素子
50の測定結果に異常がある場合には、赤色発光層46Rの正孔輸送性あるいは電子輸送
性に異常があることを判別することができる。また、検査用素子10〜70のうち、検査
用素子30あるいは検査用素子60の測定結果に異常がある場合には、緑色発光層46G
の正孔輸送性あるいは電子輸送性に異常があることを判別することができる。また、検査
用素子10〜70のうち、検査用素子40あるいは検査用素子70の測定結果に異常があ
る場合には、青色発光層46Bの正孔輸送性あるいは電子輸送性に異常があることを判別
することができる。
【0041】
このように、本検査工程において、有機EL基板2のダミー領域A2に形成された検査
用素子10〜70を検査することによって、有機EL素子4を構成するいずれの層が不良
であるかを正確に判別することが可能となる。このため、不良が発生した原因を迅速に究
明し、次回以降の有機EL装置の製造工程にフィードバックすることが可能となる。
【0042】
そして、検査工程において不良が発見されない場合には、封止工程を行うとともに素子
制御部3と有機EL基板2とを電気的に接続することによって、有機EL装置1が製造さ
れる。
【0043】
なお、検査工程において不良が発見されなかった場合には、有機EL基板2のダミー領
域A2を有機EL基板2から切り離しても良い。これによって、有機EL基板2のサイズ
を小さくすることが可能となり、小型の有機EL装置1を製造することが可能となる。
【0044】
このような本実施形態の有機EL装置の製造方法によれば、検査用素子40を検査する
ことによって、有機EL素子を構成するいずれの層に不良があるかを判別することが可能
となる。
【0045】
また、本実施形態の有機EL装置の製造方法においては、検査用素子10〜70は、有
機EL素子4を構成する層の組合わせによって構成されている。すなわち、有機EL素子
を構成する層の中から選択された層のみによって検査用素子10〜70が構成されている
。このため、検査用素子10〜70を形成するために新たな工程を設ける必要がなく、有
機EL素子4を形成する過程において検査用素子10〜70を形成することができる。
【0046】
(電子機器)
次に、上記有機EL装置を利用した電子機器の一実施形態について説明する。
図14は、本発明の有機EL装置を携帯電話に適用した例を示す斜視図であり、携帯電
話1300は、本発明の有機EL装置を小サイズの表示部1301として備える。携帯電
話1300は、複数の操作ボタン1302、受話口1303、及び送話口1304を備え
て構成されている。このような携帯電話は、本発明の有機EL装置を表示部1301に備
えたものであるため、有機EL素子4を構成するいずれの層に不良があるかを容易に判別
することが可能となる。
【0047】
なお、電子機器としては、上述した携帯電話の例に加えて、他の例として、腕時計、モ
バイル型コンピュータ、テレビ、ビューファインダ型やモニタ直視型のビデオテープレコ
ーダ、カーナビゲーション装置、ページャ、電子手帳、電卓、ワードプロセッサ、ワーク
ステーション、テレビ電話、POS端末、タッチパネルを備えた機器等が挙げられる。本
発明の有機EL装置は、こうした電子機器の表示部としても適用できる。また、照明装置
やプリンタヘッド等の光源としても用いることが可能である。
【0048】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る有機EL基板、有機EL装置、電子機器、
有機EL装置の製造方法及び有機EL基板の検査方法の好適な実施形態について説明した
が、本発明は上記実施形態に限定されないことは言うまでもない。上述した実施形態にお
いて示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱し
ない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0049】
例えば、上記実施形態においては、検査用素子の陽極として、有機EL素子と同様にI
TOからなる電極層を用いた。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、
検査用素子の陽極として、ITOよりも導電率の高い金属(例えば、ニッケルやアルミニ
ウム等)を用いても良い。
このような場合には、検査用素子の陽極を形成するために、あらたな工程を行う必要が
あるが、より正確に発光層や正孔注入層の電気特性を測定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の一実施形態である有機EL装置を模式的に示した図である。
【図2】本発明の一実施形態である有機EL装置が備える有機EL素子の概略構成を模式的に示した断面図である。
【図3】本発明の一実施形態である有機EL装置が備える検査用素子の概略構成を模式的に示した断面図である。
【図4】本発明の一実施形態である有機EL装置が備える検査用素子の概略構成を模式的に示した断面図である。
【図5】本発明の一実施形態である有機EL装置が備える検査用素子の概略構成を模式的に示した断面図である。
【図6】本発明の一実施形態である有機EL装置が備える検査用素子の概略構成を模式的に示した断面図である。
【図7】本発明の一実施形態である有機EL装置が備える検査用素子の概略構成を模式的に示した断面図である。
【図8】本発明の一実施形態である有機EL装置が備える検査用素子の概略構成を模式的に示した断面図である。
【図9】本発明の一実施形態である有機EL装置が備える検査用素子の概略構成を模式的に示した断面図である。
【図10】本発明の一実施形態である有機EL装置の製造方法を説明するための説明図である。
【図11】本発明の一実施形態である有機EL装置の製造方法を説明するための説明図である。
【図12】本発明の一実施形態である有機EL装置の製造方法を説明するための説明図である。
【図13】本発明の一実施形態である有機EL装置の製造方法を説明するための説明図である。
【図14】本発明の一実施形態である電子機器の斜視図である。
【符号の説明】
【0051】
1……有機EL装置、2……有機EL基板、3……素子制御部(制御手段)、4,4R
,4G,4B……有機EL素子、41……基板、42……陽極(電極層)、43……正孔
注入層、46……発光層、47……陰極(電極層)、48……有機層、10,20,30
,40,50,60,70……検査用素子、80……検査用陰極、A1……有効画素領域
、A2……ダミー領域



【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光層と電極層とを含む多層構造を有する有機EL素子が基板の所定領域に複数形成され
る有機EL基板であって、
前記基板上の所定領域外に、前記有機EL素子を構成する層のうち少なくとも一層を備
えかつ前記有機EL素子と異なる層構造を有する検査用素子が形成されていることを特徴
とする有機EL基板。
【請求項2】
前記有機EL素子が前記発光層と該発光層と異なる有機層とを備え、前記検査用素子は、
前記発光層及び前記電極層のみを有することを特徴とする請求項1記載の有機EL基板。
【請求項3】
前記有機EL素子が前記発光層と該発光層と異なる有機層とを備え、前記検査用素子は、
前記有機層及び前記電極層のみを有することを特徴とする請求項1記載の有機EL基板。
【請求項4】
前記検査用素子は、前記有機EL素子が有する前記発光層と前記有機EL素子が有する前
記電極層と異なる層構造を有する検査用陰極層とを備えることを特徴とする請求項1記載
の有機EL基板。
【請求項5】
前記有機EL素子が前記発光層と該発光層と異なる有機層とを備え、前記検査用素子は、
前記有機層と前記有機EL素子が有する前記電極層と異なる層構造を有する検査用陰極層
とを備えることを特徴とする請求項1記載の有機EL基板。
【請求項6】
請求項1〜5いずれかに記載の有機EL基板と、該有機EL基板に形成される前記有機E
L素子の駆動を制御する制御手段とを備えることを特徴とする有機EL装置。
【請求項7】
請求項6記載の有機EL装置を備えることを特徴とする電子機器。
【請求項8】
発光層と電極層とを含む多層構造を有する有機EL素子が基板の所定領域に複数形成され
る有機EL基板と、該有機EL基板に形成される前記有機EL素子の駆動を制御する制御
手段とを備える有機EL装置の製造方法であって、
前記基板上の所定領域外に、前記有機EL素子を構成する層のうち少なくとも一層を備
えかつ前記有機EL素子と異なる層構造を有する検査用素子を形成する工程と、
前記検査用素子に電流を流すことによって前記有機EL素子の検査を行う工程と
を有することを特徴とする有機EL装置の製造方法。
【請求項9】
前記検査用素子は、前記有機EL素子を構成する層の中から選択された層のみを有するこ
とを特徴とする請求項8記載の有機EL装置の製造方法。
【請求項10】
発光層と電極層とを含む多層構造を有する有機EL素子が基板の所定領域に複数形成され
る有機EL基板の検査方法であって、
前記基板上の所定領域外に、前記有機EL素子を構成する層のうち少なくとも一層を備
えかつ前記有機EL素子と異なる層構造を有する検査用素子を形成し、該検査用素子に電
流を流すことによって前記有機EL素子の検査を行うことを特徴とする有機EL基板の検
査方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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