有機EL照明装置用の電極基板およびそれを用いた有機EL照明装置
【課題】高い輝度を安定して維持することができ信頼性の高い有機EL照明装置と、このような有機EL照明装置を可能とする電極基板を提供する。
【解決手段】電極基板1を、透明基板2と、透明基板2の一方の面2aに位置する放熱層3と、透明基板2の他方の面2bに位置する透明電極4と、透明電極4上に位置する補助電極5と、この補助電極を被覆する絶縁層6と、を備える構成とし、この電極基板1の透明電極4および絶縁層6を被覆するように有機EL発光層32と陰極33を配設し、さらに、陰極33を覆う保護封止部材34を配設して有機EL照明装置31とする。
【解決手段】電極基板1を、透明基板2と、透明基板2の一方の面2aに位置する放熱層3と、透明基板2の他方の面2bに位置する透明電極4と、透明電極4上に位置する補助電極5と、この補助電極を被覆する絶縁層6と、を備える構成とし、この電極基板1の透明電極4および絶縁層6を被覆するように有機EL発光層32と陰極33を配設し、さらに、陰極33を覆う保護封止部材34を配設して有機EL照明装置31とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機EL照明装置、有機EL照明装置用の電極基板に関する。
【背景技術】
【0002】
有機のエレクトロルミネッセンス(EL)素子は、有機EL発光層を一対の電極で挟持して構成されており、低電圧の駆動により高輝度で発光することが可能なので、照明装置として実用化が進んでいる。
しかし、有機EL照明装置では、電極間に電圧を印加することにより有機EL発光層において大きな熱が発生し、このような駆動中の温度上昇により経時的な劣化が促進されて発光効率が低下するという問題があった。このような熱的劣化を防止するために、有機EL素子の光取出し側とは反対側にフィン形状を有する放熱部材等を配設して、発光中に有機EL素子から生じる熱を放熱させるという方法が従来から知られている(特許文献1〜3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−343559号公報
【特許文献2】特開2008−181832号公報
【特許文献3】特開2010−80307号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
通常、有機EL照明装置では、有機EL素子の光取出し側に透明基板があり、この透明基板に熱が蓄積されると有機EL素子の熱的劣化を生じるおそれがあり、特に、有機EL照明装置では、輝度が数千カンデラになることもあり、透明基板への熱蓄積による悪影響を無視することはできない。しかし、従来の有機EL照明装置では、光取出し側に位置する透明基板からの放熱ができないものであった。
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、高い輝度を安定して維持することができ信頼性の高い有機EL照明装置と、このような有機EL照明装置を可能とする電極基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような目的を達成するために、本発明の有機EL照明装置用の電極基板は、透明基板と、該透明基板の一方の面に位置する放熱層と、前記透明基板の他方の面に位置する透明電極と、該透明電極上に位置する補助電極と、該補助電極を被覆する絶縁層と、を備えるような構成とした。
また、本発明の有機EL照明装置用の電極基板は、透明基板と、該透明基板の一方の面に位置する放熱層と、前記透明基板の他方の面に位置する補助電極と、該補助電極を被覆するように前記透明基板上に位置する透明電極と、該透明電極を介して前記補助電極を被覆するように位置する絶縁層と、を備えるような構成とした。
本発明の他の態様として、前記放熱層は、前記透明基板を介して前記補助電極の真裏に位置するような構成とした。
本発明の他の態様として、前記放熱層が位置する側の前記透明基板上に光散乱層を有しているような構成とした。
本発明の他の態様として、前記放熱層は、凹凸構造あるいは粗面を有するような構成とした。
【0006】
本発明の有機EL照明装置は、上述の本発明の電極基板と、該電極基板の所定領域の前記透明電極および前記絶縁層を被覆する有機EL発光層と、該有機EL発光層を被覆する陰極と、前記陰極を覆う保護封止部材と、を備えるような構成とした。
本発明の他の態様として、前記陰極と前記保護封止部材との間に伝熱部材が介在するような構成とした。
本発明の他の態様として、前記保護封止部材上に放熱部材を備えるような構成とした。
【発明の効果】
【0007】
本発明の有機EL照明装置用の電極基板は、放熱層が透明基板の熱を外部に放熱する作用をなすので、この電極基板を用いた有機EL照明装置では、有機EL発光層の光取出し側に位置する透明基板に熱が蓄積されることが抑制され、有機EL発光層の熱的劣化が防止され、これにより、発光が高い輝度でありながら寿命の長い有機EL照明装置が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の有機EL照明装置用の電極基板の一実施形態を示す部分縦断面図である。
【図2】本発明の有機EL照明装置用の電極基板の他の実施形態を示す部分縦断面図である。
【図3】本発明の有機EL照明装置用の電極基板における放熱層と補助電極との位置関係の一例を説明するための図である。
【図4】本発明の有機EL照明装置用の電極基板における放熱層と補助電極との位置関係の他の例を説明するための図である。
【図5】本発明の有機EL照明装置用の電極基板における放熱層と補助電極との位置関係の他の例を説明するための図である。
【図6】本発明の有機EL照明装置用の電極基板における放熱層と補助電極との位置関係の他の例を説明するための図である。
【図7】本発明の有機EL照明装置用の電極基板における放熱層と補助電極との位置関係の他の例を説明するための図である。
【図8】本発明の有機EL照明装置用の電極基板における放熱層と補助電極との位置関係の他の例を説明するための図である。
【図9】本発明の有機EL照明装置用の電極基板の他の実施形態を示す部分縦断面図である。
【図10】本発明の有機EL照明装置の一実施形態を示す部分縦断面図である。
【図11】本発明の有機EL照明装置の他の実施形態を示す部分縦断面図である。
【図12】本発明の有機EL照明装置の他の実施形態を示す部分縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明について図面を参照しながら説明する。
[有機EL照明装置用の電極基板]
図1は、本発明の有機EL照明装置用の電極基板の一実施形態を示す部分縦断面図である。図1において、本発明の電極基板1は、透明基板2と、この透明基板2の一方の面2aに位置する放熱層3と、透明基板2の他方の面2bに位置する透明電極4と、透明電極4上に位置する補助電極5と、この補助電極を被覆する絶縁層6と、を備えている。また、補助電極5は、透明基板2の周辺部に位置し外部電源等との接続に供されるリード部(図示せず)まで延設されている。
また、図2は、本発明の有機EL照明装置用の電極基板の他の実施形態を示す部分縦断面図である。図2において、本発明の電極基板11は、透明基板12と、この透明基板12の一方の面12aに位置する放熱層13と、透明基板12の他方の面12bに位置する補助電極15と、この補助電極15を被覆するように透明基板2上に位置する透明電極14と、透明電極14を介して補助電極15を被覆するように位置する絶縁層16と、を備えている。また、補助電極15は、透明基板12の周辺部に位置し外部電源等との接続に供されるリード部(図示せず)まで延設されている。
【0010】
電極基板1,11を構成する透明基板1,11としては、ガラス材料、樹脂材料、または、これらの複合材料からなるもの、例えば、ガラス板に保護プラスチックフィルムもしくは保護プラスチック層を設けたもの等が用いられる。
上記の樹脂材料、保護プラスチック材料としては、例えば、フッ素系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニル、ポリスチレン、ABS樹脂、ポリアミド、ポリアセタール、ポリエステル、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル、ポリスルホン、ポリアリレート、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリフェニレンスルフィド、液晶性ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリオキシメチレン、ポリエーテルサルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアクリレート、アクリロニトリル−スチレン樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン、シリコーン樹脂、非晶質ポリオレフィン等が挙げられる。この他の樹脂材料であっても、有機EL照明装置用として使用できる高分子材料であれば、使用可能である。透明基板1,11の厚さは、通常、50μm〜2.0mm程度とすることができる。
【0011】
このような透明基板1,11は、水蒸気や酸素等のガスバリア性の良好なものであれば更に好ましい。また、透明基板1,11に水蒸気や酸素等のガスバリア層を形成してもよい。このようなガスバリア層としては、例えば、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン等の無機酸化物をスパッタリング法や真空蒸着法等の物理蒸着法により形成したものであってよい。
電極基板1,11を構成する放熱層3,13は、熱伝導率の高い材料で形成することができ、例えば、銅、銀、アルミニウム等の金属、これらの金属の合金、グラファイト、カーボンナノチューブ等の材料を用いて形成することができる。放熱層3,13の形成方法としては、例えば、上記の材料をバインダー中に含有するインクを、スクリーン印刷法、インクジェット法、ノズルジェット法等で透明基板2に所望の形状で印刷、吐出して形成する方法、上記の金属、合金からなる薄膜をスパッタリング法等の真空成膜法で形成し、これをフォトリソグラフィー法でパターニングして形成する方法等を挙げることができる。
このような放熱層3,13の厚みは、例えば、0.2〜2000μm、好ましくは0.3〜1.0μmの範囲で設定することができる。また、放熱層3,13のパターン幅(線幅)は、本発明の電極基板が有機EL照明装置に使用されたときに、有機EL発光層からの光取出しをできるだけ阻害せず、また、透明基板2,12から熱を放出し易いように適宜設定することができ、例えば、パターン幅(線幅)を10〜2000μm、好ましくは50〜500μmの範囲とすることができる。また、放熱層3,13は、放熱性を向上させるために、表面に凹凸構造あるいは粗面を設け、表面積を大きくしたものであってもよい。凹凸構造としては、微細な溝を有する構造や波形の表面構造等であってよく、また、粗面としては、化学エッチングあるいは物理エッチングを施して表面粗度を大きくしたものであってよい。
【0012】
電極基板1,11を構成する透明電極4,14の材料としては、仕事関数の大きい(4eV以上)金属、合金、これらの混合物を使用することができ、例えば、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化第二スズ等の導電材料を挙げることができる。このような透明電極4,14はシート抵抗が数百Ω/□以下が好ましく、材質にもよるが、透明電極4,14の厚みは、例えば、0.005〜1μm程度とすることができる。
【0013】
また、電極基板1,11を構成する補助電極5,15は、透明電極4,14の電気抵抗による電力損失を低減するとともに、リード部と外部のタブとの接触抵抗を低減するための層である。このような補助電極5,15の材質は、例えば、金、銀、銅、銀合金(Ag−Pd、Ag−Cu、Ag−Al、Ag−Au等)、マグネシウム合金(Mg−Ag等)、アルミニウム合金(Al−Li、Al−Ca、Al−Mg等)、金属カルシウム等を挙げることができる。このような補助電極5,15の厚みは、例えば、0.2〜2.0μm、好ましくは0.4〜0.7μmの範囲で設定することができる。また、補助電極5,15のパターン幅(線幅)は、本発明の電極基板が有機EL照明装置に使用されたときに、有機EL発光層からの光取出しをできるだけ阻害しないように適宜設定することができ、例えば、パターン幅(線幅)を10〜2000μm、好ましくは50〜500μmの範囲とすることができる。
【0014】
また、電極基板1,11を構成する絶縁層6,16は、例えば、チタン窒化物、チタン酸化物、チタン酸窒化物等のチタン系黒色顔料を用いて真空蒸着法、イオンプレーティング蒸着法等の方法により成膜し、その後、エッチングによるパターニング等を行なうことにより形成することができる。このような絶縁層6,16の厚み、パターン幅(線幅)は、本発明の電極基板が有機EL照明装置に使用されたときに、補助電極5,15から有機EL発光層へ電子が流れることを防止でき、かつ、有機EL発光層からの光取出しをできるだけ阻害しないように適宜設定することができ、例えば、厚みを0.2〜2.0μm、好ましくは0.5〜1.5μmの範囲、パターン幅(線幅)を20〜2500μm、好ましくは60〜700μmの範囲とすることができる。また、絶縁層6,16は、感光性樹脂材料を用いてパターニングした後、硬化させたものであってもよい。この場合、脱ガス性が低く、有機EL発光層へ脱ガス成分の拡散による画像表示品質の低下、短寿命化を防止できるポジ型感光性樹脂材料を使用することが好ましい。例えば、このようなポジ型感光性樹脂材料に、上述のようなチタン系黒色顔料の1種、あるいは2種以上を含有させた塗布液を用いて、フォトリソグラフィー法により絶縁層6,16を形成することができる。このような樹脂材料からなる絶縁層6,16の厚みは、例えば、0.2〜2.0μm、好ましくは0.5〜1.5μmの範囲とすることができる。尚、絶縁層6,16は、多層構造であってもよい。
【0015】
上述のような構成の電極基板1,11において、放熱層3,13の形成位置は、電極基板1,11が有機EL照明装置に使用されたときに、有機EL発光層からの光取出しをできるだけ阻害せず、また、透明基板2,12から熱を放出し易いような位置であり、補助電極5,15の配設位置を考慮して設定することができる。以下に、放熱層3と補助電極5とを例として、両者の位置関係を説明する。
図3は、放熱層3と補助電極5との位置関係の一例を説明するための図である。この例では、放熱層3は、矢印a方向に延設されているラインのピッチがP1であり、矢印b方向(矢印a方向に直交しており、以下の説明においても同様である)に延設されているラインのピッチがP2であり、碁盤の目のように透明基板2上に形成されている(図3(A))。また、補助電極5も矢印a方向に延設されているラインのピッチがP1であり、矢印b方向に延設されているラインのピッチがP2であり、碁盤の目のように透明電極5上に形成されている(図3(B))。そして、放熱層3は、透明基板2を介して補助電極5の真裏に位置するように形成されており、したがって、補助電極5側から透明基板2を介して放熱層3を見ると、放熱層3と補助電極5は完全に重なった状態となっている。尚、ピッチP1とピッチP2は適宜設定することができ、例えば、0.1〜50mm程度の範囲で設定することができる。また、ピッチP1とピッチP2は同一であってもよく、異なるものであってもよい。
【0016】
また、図4は、放熱層3と補助電極5との位置関係の他の例を説明するための図である。この例では、放熱層3は、矢印a方向に延設されているラインのピッチが2×P1であり、矢印b方向に延設されているラインのピッチが2×P2であり、碁盤の目のように透明基板2上に形成されている(図4(A))。また、補助電極5は、矢印a方向に延設されているラインのピッチがP1であり、矢印b方向に延設されているラインのピッチがP2であり、碁盤の目のように透明電極5上に形成されている(図4(B))。この例では、放熱層3は補助電極5の2倍の大きさのピッチで形成されており、放熱層3は、透明基板2を介して補助電極5の真裏に位置するように形成されている。したがって、補助電極5側から透明基板2を介して放熱層3を見ると、全ての放熱層3が補助電極5に重なった状態となっている。尚、ピッチP1とピッチP2は適宜設定することができ、例えば、0.1〜50mm程度の範囲で設定することができる。また、ピッチP1とピッチP2は同一であってもよく、異なるものであってもよい。
【0017】
また、図5は、放熱層3と補助電極5との位置関係の他の例を説明するための図である。この例では、放熱層3は、矢印a方向に延設されているラインのピッチが1/2×P1であり、矢印b方向に延設されているラインのピッチが1/2×P2であり、碁盤の目のように透明基板2上に形成されている(図5(A))。また、補助電極5は、矢印a方向に延設されているラインのピッチがP1であり、矢印b方向に延設されているラインのピッチがP2であり、碁盤の目のように透明電極5上に形成されている(図5(B))。この例では、放熱層3は補助電極5の1/2倍の大きさのピッチで形成されており、放熱層3は、透明基板2を介して補助電極5の真裏に位置するように形成されている。したがって、補助電極5側から透明基板2を介して放熱層3を見ると、放熱層3は1本おきに補助電極5に重なった状態となり、補助電極5が存在しない領域に放熱層3が交差した状態で存在(鎖線で示している)することになる。尚、ピッチP1とピッチP2は適宜設定することができ、例えば、0.1〜50mm程度の範囲で設定することができる。また、ピッチP1とピッチP2は同一であってもよく、異なるものであってもよい。
【0018】
また、図6は、放熱層3と補助電極5との位置関係の他の例を説明するための図である。この例では、放熱層3は、矢印b方向の対角線長が2×P1、矢印a方向の対角線長が2×P2であるひし形(P1≠P2)、あるいは正方形(P1=P2)をなすように透明基板2上に形成されている(図6(A))。一方、補助電極5は、矢印a方向に延設されているラインのピッチがP1であり、矢印b方向に延設されているラインのピッチがP2であり、碁盤の目のように透明電極5上に形成されている(図6(B))。この例では、放熱層3の交差部位が、透明基板2を介して補助電極5の交差部位の真裏に位置するように形成されている。したがって、補助電極5側から透明基板2を介して放熱層3を見ると、補助電極5が存在しない領域に放熱層3が存在(鎖線で示している)することになる。尚、ピッチP1とピッチP2は適宜設定することができ、例えば、0.1〜50mm程度の範囲で設定することができる。
【0019】
図7は、放熱層3と補助電極5との位置関係の他の例を説明するための図である。この例では、放熱層3は対角線長がPである正6角形の連続形状で透明基板2上に形成されており(図7(A))、補助電極5も対角線長がPである正6角形の連続形状で透明電極4上に形成されている(図7(B))。そして、放熱層3は、透明基板2を介して補助電極5の真裏に位置するように形成されており、したがって、補助電極5側から透明基板2を介して放熱層3を見ると、放熱層3と補助電極5は完全に重なった状態となっている。尚、放熱層3および補助電極5の正6角形パターンの対角線長Pは適宜設定することができ、例えば、0.1〜50mm程度の範囲で設定することができる。
【0020】
また、図8は、放熱層3と補助電極5との位置関係の他の例を説明するための図である。この例では、補助電極5は、対角線長がPである正6角形の連続形状で透明電極4上に形成されている(図8(B))。一方、放熱層3は、矢印a方向に延設されているラインのピッチが31/2×P/2であり、矢印b方向に延設されているラインのピッチが3P/4であり、碁盤の目のように透明基板2上に形成されている(図8(A))。そして、補助電極5側から透明基板2を介して放熱層3を見ると、補助電極5が存在しない領域に放熱層3が存在(鎖線で示している)することになる。尚、補助電極5の正6角形パターンの対角線長Pは適宜設定することができ、例えば、0.1〜50mm程度の範囲で設定することができる。
【0021】
上記の放熱層3と補助電極5との位置関係の例示のなかで、光取出しをできるだけ阻害しないような位置関係としては、図3、図4、図7に示されるように、補助電極5側から透明基板2を介して放熱層3を見ると、放熱層3が補助電極5に重なるものが好ましい。一方、透明基板2から熱を放出し易いような位置関係としては、図5に示されるように、放熱層3の形成ピッチが狭いものが好ましいが、光取出しを考慮する必要がある。また、補助電極5による電力損失の作用の点では、図4、図6に示されるように、補助電極5の形成ピッチが狭いものが好ましいが、光取出しを考慮する必要がある。そして、上述したように、放熱層3,13の形成位置は、電極基板1,11が有機EL照明装置に使用されたときに、有機EL発光層からの光取出しをできるだけ阻害せず、また、透明基板2,12から熱を放出し易いような位置とすることが好ましく、補助電極5,15の配設位置を考慮して適宜設定することができる。
【0022】
上記の放熱層3と補助電極5との位置関係は例示であり、例えば、放熱層3と補助電極5が同方向に延設されたストライプ形状であり、補助電極5のピッチがPであるときに、放熱層のピッチがP×nまたはP×1/n(nは2以上の整数)であるものでもよい。
本発明の電極基板は、上述の実施形態に限定されるものではない。例えば、図9に示すように、電極基板1は、透明基板2の一方の面2aに散乱層7を備えるものであってもよい。この散乱層7は、電極基板1が有機EL照明装置に使用されたときに、有機EL発光層から取出した光を散乱させるための層である。このような散乱層7としては、例えば、透明樹脂中にシリカ等の微粒子を分散させた層とすることができ、微粒子を含有する樹脂組成物を用いてフォトリソグラフィー法でパターニングして形成することができる。また、散乱層7は、透明基板2の一方の面2aに透明樹脂層を形成し、この透明樹脂層の表面に粗面化処理を施したものであってもよい。
このような散乱層7は、上述の電極基板11の一方の面12aにも配設することができる。
【0023】
[有機EL照明装置]
次に、本発明の有機EL照明装置について説明する。
図10は、本発明の有機EL照明装置の一実施形態を示す部分縦断面図である。図10において、本発明の有機EL照明装置31は、上述の本発明の電極基板1を用いた例であり、電極基板1と、この電極基板1の所定領域の透明電極4および絶縁層6を被覆する有機EL発光層32と、この有機EL発光層32を被覆する陰極33と、陰極33を覆う保護封止部材34と、を備えている。
【0024】
有機EL照明装置31を構成する有機EL発光層32は、例えば、透明電極4から正孔注入層、発光層、および電子注入層が積層された構造、発光層単独からなる構造、正孔注入層と発光層とからなる構造、発光層と電子注入層とからなる構造、さらに、正孔注入層と発光層との間に正孔輸送層を介在させた構造、発光層と電子注入層との間に電子輸送層を介在させた構造等とすることができる。
また、発光波長を調整したり、発光効率を向上させる等の目的で、上記の各層に適当な材料をドーピングすることもできる。
有機EL発光層32を構成する発光層は、有機EL照明装置31の使用目的等に応じて、所望の発光色、例えば、赤色発光、緑色発光、青色発光の三原色とすることができ、あるいは、黄色、水色、オレンジ色である発光層を単独で、また、赤色発光、緑色発光、青色発光以外の他の複数の発光色の所望の組み合わせ等、いずれであってもよい。
【0025】
有機EL発光層を構成する発光層に用いる有機発光材料としては、例えば、下記のような色素系、金属錯体系、高分子系のものを挙げることができる。
(1)色素系発光材料
シクロペンタジエン誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体、トリフェニルアミン誘導体、オキサジアゾール誘導体、ピラゾロキノリン誘導体、ジスチリルベンゼン誘導体、ジスチリルアリーレン誘導体、シロール誘導体、チオフェン環化合物、ピリジン環化合物、ペリノン誘導体、ペリレン誘導体、オリゴチオフェン誘導体、トリフマニルアミン誘導体、オキサジアゾールダイマー、ピラゾリンダイマー等が挙げられる。
(2)金属錯体系発光材料
アルミキノリノール錯体、ベンゾキノリノールベリリウム錯体、ベンゾオキサゾール亜鉛錯体、ベンゾチアゾール亜鉛錯体、アゾメチル亜鉛錯体、ポリフィリン亜鉛錯体、ユーロピウム錯体等、中心金属にAl、Zn、Be等、または、Tb、Eu、Dy等の希土類金属を有し、配位子にオキサジアゾール、チアジアゾール、フェニルピリジン、フェニルベンゾイミダゾール、キノリン構造等を有する金属錯体が挙げられる。
(3)高分子系発光材料
ポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリパラフェニレン誘導体、ポリシラン誘導体、ポリアセチレン誘導体、ポリビニルカルバゾール誘導体、ポリフルオレン誘導体等が挙げられる。
【0026】
また、青色発光である有機発光材料として、例えば、ベンゾチアゾール系、ベンゾイミダゾール系、ベンゾオキサゾール系等の蛍光増白剤、金属キレート化オキシノイド化合物、スチリルベンゼン系化合物、ジスチリルピラジン誘導体、芳香族ジメチリディン系化合物等を挙げることができる。
具体的には、2−2′−(p−フェニレンジビニレン)−ビスヘンゾチアゾール等のベンゾチアゾール系; 2−[2−[4−(2−ベンゾイミダゾリル)フェニル]ビニル]ベンゾイミダゾール、2−[2−(4−カルボキシフェニル)ビニル]ベンゾイミダゾール等のベンゾイミダゾール系; 2,5−ビス(5,7−ジ−t−ペンチル−2−ベンゾオキサゾリル)−1,3,4−チアジアゾール、4,4′−ビス(5,7−t−ペンチル−2−ベンゾオキサゾリル)スチルベン、2−[2−(4−クロロフェニル)ビニル]ナフト[1,2−d]オキサゾール等のベンゾオキサゾール系等の蛍光増白剤を挙げることができる。
また、上記の金属キレート化オキシノイド化合物としては、トリス(8−キノリノール)アルミニウム、ビス(8−キノリノール)マグネシウム、ビス(ベンゾ[f]−8−キノリノール)亜鉛等の8−ヒドロキシキノリン系金属錯体やジリチウムエピントリジオン等を挙げることができる。
【0027】
また、上記のスチリルベンゼン系化合物としては、1,4−ビス(2−メチルスチリル)ベンゼン、1,4−ビス(3−メチルスチリル)ベンゼン、1,4−ビス(4−メチルスチリル)ベンゼン、ジスチリルベンゼン、1,4−ビス(2−エチルスチリル)ベンゼン、1,4−ビス(3−エチルスチリル)ベンゼン、1,4−ビス(2−メチルスチリル)−2−メチルベンゼン、1,4−ビス(2−メチルスチリル)−2−エチルベンゼン等を挙げることができる。
また、上記のジスチリルピラジン誘導体としては、2,5−ビス(4−メチルスチリル)ピラジン、2,5−ビス(4−エチルスチリル)ピラジン、2,5−ビス[2−(1−ナフチル)ビニル]ピラジン、2,5−ビス(4−メトキシスチリル)ピラジン、2,5−ビス[2−(4−ビフェニル)ビニル]ピラジン、2,5−ビス[2−(1−ピレニル)ビニル]ピラジン等を挙げることができる。
【0028】
また、上記の芳香族ジメチリディン系化合物としては、1,4−フェニレンジメチリディン、4,4−フェニレンジメチリディン、2,5−キシレンジメチリディン、2,6−ナフチレンジメチリディン、1,4−ビフェニレンジメチリディン、1,4−p−テレフェニレンジメチリディン、9,10−アントラセンジイルジルメチリディン、4,4′−ビス(2,2−ジ−t−ブチルフェニルビニル)ビフェニル、4,4′−ビス(2,2−ジフェニルビニル)ビフェニル等、およびその誘導体を挙げることができる。
さらに、発光層の材料として、一般式(Rs−Q)2−AL−O−Lで表される化合物も挙げることができる(上記式中、ALはベンゼン環を含む炭素原子6〜24個の炭化水素であり、O−Lはフェニラート配位子であり、Qは置換8−キノリノラート配位子であり、Rsはアルミニウム原子に置換8−キノリノラート配位子が2個以上結合するのを立体的に妨害するように選ばれた8−キノリノラート置換基を表す)。具体的には、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(パラーフェニルフェノラート)アルミニウム(III)、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(1−ナフトラート)アルミニウム(III)等が挙げられる。
【0029】
有機EL発光層32を構成する各層に用いるドーピング材料、正孔輸送材料、正孔注入材料、電子注入材料等は、下記に例示するような無機材料、有機材料いずれでもよい。有機EL発光層32を構成する各層の厚みは特に制限はなく、例えば、10〜1000nm程度とすることができる。
【0030】
(ドーピング材料)
ペリレン誘導体、クマリン誘導体、ルブレン誘導体、キナクリドン誘導体、スクアリウム誘導体、ポリフィリン誘導体、スチリル系色素、テトラセン誘導体、ピラゾリン誘導体、デカシクレン、フェノキサゾン等が挙げられる。
【0031】
(正孔輸送材料)
オキサジアゾール系、オキサゾール系、トリアゾール系、チアゾール系、トリフェニルメタン系、スチリル系、ピラゾリン系、ヒドラゾン系、芳香族アミン系、カルバゾール系、ポリビニルカルバゾール系、スチルベン系、エナミン系、アジン系、トリフェニルアミン系、ブタジエン系、多環芳香族化合物系、スチルベン二量体等が挙げられる。
また、π共役系高分子として、ポリアセチレン、ポリジアセチレン、ポリ(P−フェニレン)、ポリ(P−フェニレンスルフィド)、ポリ(P−フェニレンオキシド)、ポリ(1,6−ヘプタジエン)、ポリ(P−フェニレンビニレン)、ポリ(2,5−チエニレン)、ポリ(2,5−ピロール)、ポリ(m−フェニレンスルフィド)、ポリ(4,4′−ビフェニレン)等が挙げられる。
【0032】
また、電荷移動高分子錯体として、ポリスチレン・AgC104、ポリビニルナフタレン・TCNE、ポリビニルナフタレン・P−CA、ポリビニルナフタレン・DDQ、ポリビニルメシチレン・TCNE、ポリナフタアセチレン・TCNE、ポリビニルアントラセン・Br2、ポリビニルアントラセン・I2、ポリビニルアントラセン・TNB、ポリジメチルアミノスチレン・CA、ポリビニルイミダゾール・CQ、ポリ−P−フェニレン・I2、ポリ−1−ビニルピリジン・I2、ポリ−4−ビニルピリジン・I2、ポリ−P−1−フェニレン・I2、ポリビニルピリジウム・TCNQ等が挙げられ、さらに、電荷移動低分子錯体として、TCNQ−TTF等が、高分子金属錯体としては、ポリ銅フタロシアニン等が挙げられる。
正孔輸送材料としては、イオン化ポテンシャルの小さい材料が好ましく、特に、ブタジエン系、エナミン系、ヒドラゾン系、トリフェニルアミン系が好ましい。
【0033】
(正孔注入材料)
フェニルアミン系、スターバースト型アミン系、フタロシアニン系、酸化バナジウム、酸化モリブデン、酸化ルテニウム、酸化アルミニウム等の酸化物、アモルファスカーボン、ポリアニリン、ポリチオフェン誘導体、トリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、オキサゾール誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、ポリシラン系、アニリン系共重合体、チオフェンオリゴマー等の誘電性高分子オリゴマー等、を挙げることができる。
【0034】
さらに、正孔注入材料として、ポリフィリン化合物、芳香族第三級アミン化合物、スチリルアミン化合物を挙げることもできる。上記のポリフィリン化合物としては、ポリフィン、1,10,15,20−テトラフェニル−21H、23H−ポリフィン銅(II)、アルミニウムフタロシアニンクロリド、銅オクタメチルフタロシアニン等を挙げることができる。また、芳香族第三級アミン化合物およびスチリルアミン化合物としては、N,N,N′,N′−テトラフェニル−4,4′−ジアミノフェニル、N,N′−ジフェニル−N,N′−ビス(3−メチルフェニル)−[1,1′−ビフェニル]−4,4′−ジアミン、4−(ジ−p−トリルアミノ)−4′−[4(ジ−p−トリルアミノ)スチリル]スチルベン、3−メトキシ−4′−N,N−ジフェニルアミノスチルベンゼン、4,4′−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル、4,4′,4″−トリス[N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ]トリフェニルアミン等を挙げることができる。
【0035】
(電子注入材料)
カルシウム、バリウム、アルミリチウム、フッ化リチウム、ストロンチウム、酸化マグネシウム、フッ化マグネシウム、フッ化ストロンチウム、フッ化カルシウム、フッ化バリウム、酸化アルミニウム、酸化ストロンチウム、酸化カルシウム、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム、ニトロ置換フルオレン誘導体、アントラキノジメタン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、ナフタレンペリレン等の複素環テトラカルボン酸無水物、カルボジイミド、フレオレニリデンメタン誘導体、アントラキノジメタンおよびアントロン誘導体、オキサジアゾール誘導体、上記のオキサジアゾール環の酸素原子をイオウ原子に置換したチアゾール誘導体、電子吸引基として知られているキノキサリン環を有したキノキサリン誘導体、トリス(8−キノリノール)アルミニウム等の8−キノリノール誘導体の金属錯体、フタロシアニン、金属フタロシアニン、ジスチリルピラジン誘導体等を挙げることができる。
有機EL発光層32を構成する各層は、例えば、所望の開口マスクを介して真空蒸着法等により成膜して形成することができる。
【0036】
有機EL照明装置31を構成する陰極33の材料としては、仕事関数の小さい(4eV以下)金属、合金、これらの混合物で形成される。具体的には、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム、リチウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al2O3)混合物、インジウム、リチウム/アルミニウム混合物、希土類金属等が挙げられる。電子注入性および電極としての酸化等に対する耐久性を考えると、電子注入性金属と、これより仕事関数の値が大きく安定な金属である第二金属との混合物が好ましく、例えば、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al2O3)混合物、リチウム/アルミニウム混合物等が挙げられる。このような陰極33はシート抵抗が数百Ω/□以下が好ましく、このため、陰極33の厚みは、例えば、10nm〜1μm、好ましくは50〜200nm程度とすることができる。このような陰極33は、所望の開口マスクを介し、上述の電極材料を用いて真空蒸着法、イオンプレーティング蒸着法等の方法により成膜して形成することができる。
【0037】
有機EL照明装置31を構成する保護封止部材34は、有機EL発光層32への水分の悪影響を防止するものであり、例えば、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂等の光硬化性樹脂材料を用いて形成することができる。保護封止部材34の形成は、例えば、ロールコート法、スピンコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法等のコーティング法や印刷法により行うことができる。
また、有機EL照明装置31の保護封止部材34上に放熱部材36(図示例では二点鎖線で示す)を配設してもよい。放熱部材36は、熱伝導率の高い材料で形成することができ、例えば、銅、銀、アルミニウム等の金属、これらの金属の合金、グラファイト、カーボンナノチューブ等の材料を用いて形成することができ。また、放熱部材36の形状は、複数のフィンを設けた構造、角柱形状、円柱形状、円錐形状、角錐形状等の複数の突起を設けた構造等、適宜設定することができる。
【0038】
図11は、本発明の有機EL照明装置の一実施形態を示す部分縦断面図である。図11において、本発明の有機EL照明装置41は、上述の本発明の電極基板1を用いた例であり、電極基板1と、この電極基板1の所定領域の透明電極4および絶縁層6を被覆する有機EL発光層42と、この有機EL発光層42を被覆する陰極43と、陰極43を覆う保護封止部材44と、を備えている。
有機EL照明装置41を構成する有機EL発光層42と陰極43は、上述の有機EL照明装置31を構成する有機EL発光層32と陰極33と同様であり、ここでの説明は省略する。
【0039】
有機EL照明装置41を構成する保護封止部材44は、電極基板1の透明基板2に固着された支持部44aと、この支持部44aにより支持されている封止板44bからなるケース状のものであり、空隙45を介して有機EL発光層42と陰極43を封止するものである。このような保護封止部材44は、金属板をプレス加工したもの、ガラスをエッチング加工したもの等であってよく、また、樹脂基板を加工して形成したものであってもよい。
また、有機EL照明装置41の保護封止部材44上に放熱部材46(図示例では二点鎖線で示す)を配設してもよい。放熱部材46は、熱伝導率の高い材料で形成することができ、例えば、銅、銀、アルミニウム等の金属、これらの金属の合金、グラファイト、カーボンナノチューブ等の材料を用いて形成することができ。また、放熱部材46の形状は、複数のフィンを設けた構造、角柱形状、円柱形状、円錐形状、角錐形状等の複数の突起を設けた構造等、適宜設定することができる。
さらに、図12に示すように、有機EL照明装置41の保護封止部材44と陰極43との間に伝熱部材47を充填配設してもよい。伝熱部材47としては、シリコングリース、カーボングラファイト等の熱伝導率が高いものを使用することができる。
上述の有機EL照明装置の実施形態は、本発明の電極基板1を用いた例であるが、使用する本発明の電極基板は、この電極基板1に制限されないことは勿論である。
尚、本発明の有機EL照明装置は、上述の実施形態に限定されるものではない。
【実施例】
【0040】
次に、実施例を示して本発明を更に詳細に説明する。
[実施例]
透明基材として、100mm×100mm、厚み0.7mmのソーダガラス(セントラル硝子(株)製)を準備した。
上記の透明基材の一方の面に、Agペースト(藤倉化成(株)製 XAQ436)を用いてスクリーン印刷法で放熱層を形成した。
このように形成された放熱層は、厚みが500μm、線幅が400μmであって、縦横のピッチが共に15mmである碁盤の目の形状であった。
次に、透明基板の他方の面の全域に、イオンプレーティング法により膜厚150nmの酸化インジウムスズ(ITO)膜を形成して透明電極とした。
【0041】
次いで、上記の透明電極上に、スパッタリング法により厚み0.6μmのAg/Pd合金層(Ag含有量=80重量%)を形成し、このAg/Pd合金層上に感光性レジスト(シプレー(株)製 S1805)をスピンコート法により塗布し乾燥し、次いで、所望のフォトマスクを介して露光、現像してレジストパターンを設けた。このレジストパターンをマスクとし、硝酸・リン酸・酢酸混合液を用いてAg/Pd合金層をエッチングし、その後、レジストパターンを除去した。これにより、厚みが0.6μm、線幅が400μmであって、縦横のピッチが共に15mmである碁盤の目の形状の補助電極を形成した。この補助電極は、透明基板を介して放熱層の真裏に位置するものであった。
次に、上記の透明電極、補助電極を覆うように感光性絶縁樹脂材料(新日鉄化学(株)製 V−259PA)をスピンコート法により塗布し、次いで、絶縁層形成用のマスクを介して塗布膜を露光し、その後、現像して、厚み1.5μm、線幅600μmの絶縁層を、縦横のピッチが共に15mmである碁盤の目の形状に形成した。これにより、補助電極は絶縁層で被覆された状態となった。
【0042】
このように作製した電極基板を、絶縁層を下にしてホットプレート上に載置し、60℃で加熱して10分経過後、30分経過後、60分経過後に、透明基板の温度をサーモグラフィー(NEC Avio 赤外線テクノロジー(株)製 TVS−200EX)で測定し、結果を下記の表1に示した。この測定により、絶縁層側に供給された熱が透明基板の反対側へ効率よく伝導されるか否かが判断され、透明基板の温度が低いほど、絶縁層、補助電極側(有機EL素子側)での熱の蓄積が抑制されることを意味する。
【0043】
[比較例]
放熱層を形成しない他は、実施例と同様にして、電極基板を作製した。
作製した電極基板を、絶縁層を下にしてホットプレート上に載置し、60℃で加熱して10分経過後、30分経過後、60分経過後に、透明基板の温度を実施例と同様に測定し、結果を下記の表1に示した。
【0044】
【表1】
表1に示される結果では、本発明の電極基板は、比較例の電極基板に比べて、透明基板の温度が低くなっている。このことから、本発明の電極基板では、透明基板の熱が放熱層から外部に放熱されるので、ホットプレートから絶縁層、補助電極を介して透明電極への熱伝導が積極的に行われ、したがって、絶縁層、補助電極側(有機EL素子側)での熱蓄積を抑制できることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0045】
種々の用途に使用する有機EL照明装置の製造において有用である。
【符号の説明】
【0046】
1,11…電極基板
2,12…透明基板
3,13…放熱層
4,14…透明電極
5,15…補助電極
6,16…絶縁層
7…散乱層
31,41…有機EL照明装置
32,42…有機EL発光層
33,43…陰極
34,44…保護封止部材
36,46…放熱部材
47…伝熱部材
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機EL照明装置、有機EL照明装置用の電極基板に関する。
【背景技術】
【0002】
有機のエレクトロルミネッセンス(EL)素子は、有機EL発光層を一対の電極で挟持して構成されており、低電圧の駆動により高輝度で発光することが可能なので、照明装置として実用化が進んでいる。
しかし、有機EL照明装置では、電極間に電圧を印加することにより有機EL発光層において大きな熱が発生し、このような駆動中の温度上昇により経時的な劣化が促進されて発光効率が低下するという問題があった。このような熱的劣化を防止するために、有機EL素子の光取出し側とは反対側にフィン形状を有する放熱部材等を配設して、発光中に有機EL素子から生じる熱を放熱させるという方法が従来から知られている(特許文献1〜3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−343559号公報
【特許文献2】特開2008−181832号公報
【特許文献3】特開2010−80307号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
通常、有機EL照明装置では、有機EL素子の光取出し側に透明基板があり、この透明基板に熱が蓄積されると有機EL素子の熱的劣化を生じるおそれがあり、特に、有機EL照明装置では、輝度が数千カンデラになることもあり、透明基板への熱蓄積による悪影響を無視することはできない。しかし、従来の有機EL照明装置では、光取出し側に位置する透明基板からの放熱ができないものであった。
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、高い輝度を安定して維持することができ信頼性の高い有機EL照明装置と、このような有機EL照明装置を可能とする電極基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような目的を達成するために、本発明の有機EL照明装置用の電極基板は、透明基板と、該透明基板の一方の面に位置する放熱層と、前記透明基板の他方の面に位置する透明電極と、該透明電極上に位置する補助電極と、該補助電極を被覆する絶縁層と、を備えるような構成とした。
また、本発明の有機EL照明装置用の電極基板は、透明基板と、該透明基板の一方の面に位置する放熱層と、前記透明基板の他方の面に位置する補助電極と、該補助電極を被覆するように前記透明基板上に位置する透明電極と、該透明電極を介して前記補助電極を被覆するように位置する絶縁層と、を備えるような構成とした。
本発明の他の態様として、前記放熱層は、前記透明基板を介して前記補助電極の真裏に位置するような構成とした。
本発明の他の態様として、前記放熱層が位置する側の前記透明基板上に光散乱層を有しているような構成とした。
本発明の他の態様として、前記放熱層は、凹凸構造あるいは粗面を有するような構成とした。
【0006】
本発明の有機EL照明装置は、上述の本発明の電極基板と、該電極基板の所定領域の前記透明電極および前記絶縁層を被覆する有機EL発光層と、該有機EL発光層を被覆する陰極と、前記陰極を覆う保護封止部材と、を備えるような構成とした。
本発明の他の態様として、前記陰極と前記保護封止部材との間に伝熱部材が介在するような構成とした。
本発明の他の態様として、前記保護封止部材上に放熱部材を備えるような構成とした。
【発明の効果】
【0007】
本発明の有機EL照明装置用の電極基板は、放熱層が透明基板の熱を外部に放熱する作用をなすので、この電極基板を用いた有機EL照明装置では、有機EL発光層の光取出し側に位置する透明基板に熱が蓄積されることが抑制され、有機EL発光層の熱的劣化が防止され、これにより、発光が高い輝度でありながら寿命の長い有機EL照明装置が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の有機EL照明装置用の電極基板の一実施形態を示す部分縦断面図である。
【図2】本発明の有機EL照明装置用の電極基板の他の実施形態を示す部分縦断面図である。
【図3】本発明の有機EL照明装置用の電極基板における放熱層と補助電極との位置関係の一例を説明するための図である。
【図4】本発明の有機EL照明装置用の電極基板における放熱層と補助電極との位置関係の他の例を説明するための図である。
【図5】本発明の有機EL照明装置用の電極基板における放熱層と補助電極との位置関係の他の例を説明するための図である。
【図6】本発明の有機EL照明装置用の電極基板における放熱層と補助電極との位置関係の他の例を説明するための図である。
【図7】本発明の有機EL照明装置用の電極基板における放熱層と補助電極との位置関係の他の例を説明するための図である。
【図8】本発明の有機EL照明装置用の電極基板における放熱層と補助電極との位置関係の他の例を説明するための図である。
【図9】本発明の有機EL照明装置用の電極基板の他の実施形態を示す部分縦断面図である。
【図10】本発明の有機EL照明装置の一実施形態を示す部分縦断面図である。
【図11】本発明の有機EL照明装置の他の実施形態を示す部分縦断面図である。
【図12】本発明の有機EL照明装置の他の実施形態を示す部分縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明について図面を参照しながら説明する。
[有機EL照明装置用の電極基板]
図1は、本発明の有機EL照明装置用の電極基板の一実施形態を示す部分縦断面図である。図1において、本発明の電極基板1は、透明基板2と、この透明基板2の一方の面2aに位置する放熱層3と、透明基板2の他方の面2bに位置する透明電極4と、透明電極4上に位置する補助電極5と、この補助電極を被覆する絶縁層6と、を備えている。また、補助電極5は、透明基板2の周辺部に位置し外部電源等との接続に供されるリード部(図示せず)まで延設されている。
また、図2は、本発明の有機EL照明装置用の電極基板の他の実施形態を示す部分縦断面図である。図2において、本発明の電極基板11は、透明基板12と、この透明基板12の一方の面12aに位置する放熱層13と、透明基板12の他方の面12bに位置する補助電極15と、この補助電極15を被覆するように透明基板2上に位置する透明電極14と、透明電極14を介して補助電極15を被覆するように位置する絶縁層16と、を備えている。また、補助電極15は、透明基板12の周辺部に位置し外部電源等との接続に供されるリード部(図示せず)まで延設されている。
【0010】
電極基板1,11を構成する透明基板1,11としては、ガラス材料、樹脂材料、または、これらの複合材料からなるもの、例えば、ガラス板に保護プラスチックフィルムもしくは保護プラスチック層を設けたもの等が用いられる。
上記の樹脂材料、保護プラスチック材料としては、例えば、フッ素系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニル、ポリスチレン、ABS樹脂、ポリアミド、ポリアセタール、ポリエステル、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル、ポリスルホン、ポリアリレート、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリフェニレンスルフィド、液晶性ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリオキシメチレン、ポリエーテルサルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアクリレート、アクリロニトリル−スチレン樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン、シリコーン樹脂、非晶質ポリオレフィン等が挙げられる。この他の樹脂材料であっても、有機EL照明装置用として使用できる高分子材料であれば、使用可能である。透明基板1,11の厚さは、通常、50μm〜2.0mm程度とすることができる。
【0011】
このような透明基板1,11は、水蒸気や酸素等のガスバリア性の良好なものであれば更に好ましい。また、透明基板1,11に水蒸気や酸素等のガスバリア層を形成してもよい。このようなガスバリア層としては、例えば、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン等の無機酸化物をスパッタリング法や真空蒸着法等の物理蒸着法により形成したものであってよい。
電極基板1,11を構成する放熱層3,13は、熱伝導率の高い材料で形成することができ、例えば、銅、銀、アルミニウム等の金属、これらの金属の合金、グラファイト、カーボンナノチューブ等の材料を用いて形成することができる。放熱層3,13の形成方法としては、例えば、上記の材料をバインダー中に含有するインクを、スクリーン印刷法、インクジェット法、ノズルジェット法等で透明基板2に所望の形状で印刷、吐出して形成する方法、上記の金属、合金からなる薄膜をスパッタリング法等の真空成膜法で形成し、これをフォトリソグラフィー法でパターニングして形成する方法等を挙げることができる。
このような放熱層3,13の厚みは、例えば、0.2〜2000μm、好ましくは0.3〜1.0μmの範囲で設定することができる。また、放熱層3,13のパターン幅(線幅)は、本発明の電極基板が有機EL照明装置に使用されたときに、有機EL発光層からの光取出しをできるだけ阻害せず、また、透明基板2,12から熱を放出し易いように適宜設定することができ、例えば、パターン幅(線幅)を10〜2000μm、好ましくは50〜500μmの範囲とすることができる。また、放熱層3,13は、放熱性を向上させるために、表面に凹凸構造あるいは粗面を設け、表面積を大きくしたものであってもよい。凹凸構造としては、微細な溝を有する構造や波形の表面構造等であってよく、また、粗面としては、化学エッチングあるいは物理エッチングを施して表面粗度を大きくしたものであってよい。
【0012】
電極基板1,11を構成する透明電極4,14の材料としては、仕事関数の大きい(4eV以上)金属、合金、これらの混合物を使用することができ、例えば、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化第二スズ等の導電材料を挙げることができる。このような透明電極4,14はシート抵抗が数百Ω/□以下が好ましく、材質にもよるが、透明電極4,14の厚みは、例えば、0.005〜1μm程度とすることができる。
【0013】
また、電極基板1,11を構成する補助電極5,15は、透明電極4,14の電気抵抗による電力損失を低減するとともに、リード部と外部のタブとの接触抵抗を低減するための層である。このような補助電極5,15の材質は、例えば、金、銀、銅、銀合金(Ag−Pd、Ag−Cu、Ag−Al、Ag−Au等)、マグネシウム合金(Mg−Ag等)、アルミニウム合金(Al−Li、Al−Ca、Al−Mg等)、金属カルシウム等を挙げることができる。このような補助電極5,15の厚みは、例えば、0.2〜2.0μm、好ましくは0.4〜0.7μmの範囲で設定することができる。また、補助電極5,15のパターン幅(線幅)は、本発明の電極基板が有機EL照明装置に使用されたときに、有機EL発光層からの光取出しをできるだけ阻害しないように適宜設定することができ、例えば、パターン幅(線幅)を10〜2000μm、好ましくは50〜500μmの範囲とすることができる。
【0014】
また、電極基板1,11を構成する絶縁層6,16は、例えば、チタン窒化物、チタン酸化物、チタン酸窒化物等のチタン系黒色顔料を用いて真空蒸着法、イオンプレーティング蒸着法等の方法により成膜し、その後、エッチングによるパターニング等を行なうことにより形成することができる。このような絶縁層6,16の厚み、パターン幅(線幅)は、本発明の電極基板が有機EL照明装置に使用されたときに、補助電極5,15から有機EL発光層へ電子が流れることを防止でき、かつ、有機EL発光層からの光取出しをできるだけ阻害しないように適宜設定することができ、例えば、厚みを0.2〜2.0μm、好ましくは0.5〜1.5μmの範囲、パターン幅(線幅)を20〜2500μm、好ましくは60〜700μmの範囲とすることができる。また、絶縁層6,16は、感光性樹脂材料を用いてパターニングした後、硬化させたものであってもよい。この場合、脱ガス性が低く、有機EL発光層へ脱ガス成分の拡散による画像表示品質の低下、短寿命化を防止できるポジ型感光性樹脂材料を使用することが好ましい。例えば、このようなポジ型感光性樹脂材料に、上述のようなチタン系黒色顔料の1種、あるいは2種以上を含有させた塗布液を用いて、フォトリソグラフィー法により絶縁層6,16を形成することができる。このような樹脂材料からなる絶縁層6,16の厚みは、例えば、0.2〜2.0μm、好ましくは0.5〜1.5μmの範囲とすることができる。尚、絶縁層6,16は、多層構造であってもよい。
【0015】
上述のような構成の電極基板1,11において、放熱層3,13の形成位置は、電極基板1,11が有機EL照明装置に使用されたときに、有機EL発光層からの光取出しをできるだけ阻害せず、また、透明基板2,12から熱を放出し易いような位置であり、補助電極5,15の配設位置を考慮して設定することができる。以下に、放熱層3と補助電極5とを例として、両者の位置関係を説明する。
図3は、放熱層3と補助電極5との位置関係の一例を説明するための図である。この例では、放熱層3は、矢印a方向に延設されているラインのピッチがP1であり、矢印b方向(矢印a方向に直交しており、以下の説明においても同様である)に延設されているラインのピッチがP2であり、碁盤の目のように透明基板2上に形成されている(図3(A))。また、補助電極5も矢印a方向に延設されているラインのピッチがP1であり、矢印b方向に延設されているラインのピッチがP2であり、碁盤の目のように透明電極5上に形成されている(図3(B))。そして、放熱層3は、透明基板2を介して補助電極5の真裏に位置するように形成されており、したがって、補助電極5側から透明基板2を介して放熱層3を見ると、放熱層3と補助電極5は完全に重なった状態となっている。尚、ピッチP1とピッチP2は適宜設定することができ、例えば、0.1〜50mm程度の範囲で設定することができる。また、ピッチP1とピッチP2は同一であってもよく、異なるものであってもよい。
【0016】
また、図4は、放熱層3と補助電極5との位置関係の他の例を説明するための図である。この例では、放熱層3は、矢印a方向に延設されているラインのピッチが2×P1であり、矢印b方向に延設されているラインのピッチが2×P2であり、碁盤の目のように透明基板2上に形成されている(図4(A))。また、補助電極5は、矢印a方向に延設されているラインのピッチがP1であり、矢印b方向に延設されているラインのピッチがP2であり、碁盤の目のように透明電極5上に形成されている(図4(B))。この例では、放熱層3は補助電極5の2倍の大きさのピッチで形成されており、放熱層3は、透明基板2を介して補助電極5の真裏に位置するように形成されている。したがって、補助電極5側から透明基板2を介して放熱層3を見ると、全ての放熱層3が補助電極5に重なった状態となっている。尚、ピッチP1とピッチP2は適宜設定することができ、例えば、0.1〜50mm程度の範囲で設定することができる。また、ピッチP1とピッチP2は同一であってもよく、異なるものであってもよい。
【0017】
また、図5は、放熱層3と補助電極5との位置関係の他の例を説明するための図である。この例では、放熱層3は、矢印a方向に延設されているラインのピッチが1/2×P1であり、矢印b方向に延設されているラインのピッチが1/2×P2であり、碁盤の目のように透明基板2上に形成されている(図5(A))。また、補助電極5は、矢印a方向に延設されているラインのピッチがP1であり、矢印b方向に延設されているラインのピッチがP2であり、碁盤の目のように透明電極5上に形成されている(図5(B))。この例では、放熱層3は補助電極5の1/2倍の大きさのピッチで形成されており、放熱層3は、透明基板2を介して補助電極5の真裏に位置するように形成されている。したがって、補助電極5側から透明基板2を介して放熱層3を見ると、放熱層3は1本おきに補助電極5に重なった状態となり、補助電極5が存在しない領域に放熱層3が交差した状態で存在(鎖線で示している)することになる。尚、ピッチP1とピッチP2は適宜設定することができ、例えば、0.1〜50mm程度の範囲で設定することができる。また、ピッチP1とピッチP2は同一であってもよく、異なるものであってもよい。
【0018】
また、図6は、放熱層3と補助電極5との位置関係の他の例を説明するための図である。この例では、放熱層3は、矢印b方向の対角線長が2×P1、矢印a方向の対角線長が2×P2であるひし形(P1≠P2)、あるいは正方形(P1=P2)をなすように透明基板2上に形成されている(図6(A))。一方、補助電極5は、矢印a方向に延設されているラインのピッチがP1であり、矢印b方向に延設されているラインのピッチがP2であり、碁盤の目のように透明電極5上に形成されている(図6(B))。この例では、放熱層3の交差部位が、透明基板2を介して補助電極5の交差部位の真裏に位置するように形成されている。したがって、補助電極5側から透明基板2を介して放熱層3を見ると、補助電極5が存在しない領域に放熱層3が存在(鎖線で示している)することになる。尚、ピッチP1とピッチP2は適宜設定することができ、例えば、0.1〜50mm程度の範囲で設定することができる。
【0019】
図7は、放熱層3と補助電極5との位置関係の他の例を説明するための図である。この例では、放熱層3は対角線長がPである正6角形の連続形状で透明基板2上に形成されており(図7(A))、補助電極5も対角線長がPである正6角形の連続形状で透明電極4上に形成されている(図7(B))。そして、放熱層3は、透明基板2を介して補助電極5の真裏に位置するように形成されており、したがって、補助電極5側から透明基板2を介して放熱層3を見ると、放熱層3と補助電極5は完全に重なった状態となっている。尚、放熱層3および補助電極5の正6角形パターンの対角線長Pは適宜設定することができ、例えば、0.1〜50mm程度の範囲で設定することができる。
【0020】
また、図8は、放熱層3と補助電極5との位置関係の他の例を説明するための図である。この例では、補助電極5は、対角線長がPである正6角形の連続形状で透明電極4上に形成されている(図8(B))。一方、放熱層3は、矢印a方向に延設されているラインのピッチが31/2×P/2であり、矢印b方向に延設されているラインのピッチが3P/4であり、碁盤の目のように透明基板2上に形成されている(図8(A))。そして、補助電極5側から透明基板2を介して放熱層3を見ると、補助電極5が存在しない領域に放熱層3が存在(鎖線で示している)することになる。尚、補助電極5の正6角形パターンの対角線長Pは適宜設定することができ、例えば、0.1〜50mm程度の範囲で設定することができる。
【0021】
上記の放熱層3と補助電極5との位置関係の例示のなかで、光取出しをできるだけ阻害しないような位置関係としては、図3、図4、図7に示されるように、補助電極5側から透明基板2を介して放熱層3を見ると、放熱層3が補助電極5に重なるものが好ましい。一方、透明基板2から熱を放出し易いような位置関係としては、図5に示されるように、放熱層3の形成ピッチが狭いものが好ましいが、光取出しを考慮する必要がある。また、補助電極5による電力損失の作用の点では、図4、図6に示されるように、補助電極5の形成ピッチが狭いものが好ましいが、光取出しを考慮する必要がある。そして、上述したように、放熱層3,13の形成位置は、電極基板1,11が有機EL照明装置に使用されたときに、有機EL発光層からの光取出しをできるだけ阻害せず、また、透明基板2,12から熱を放出し易いような位置とすることが好ましく、補助電極5,15の配設位置を考慮して適宜設定することができる。
【0022】
上記の放熱層3と補助電極5との位置関係は例示であり、例えば、放熱層3と補助電極5が同方向に延設されたストライプ形状であり、補助電極5のピッチがPであるときに、放熱層のピッチがP×nまたはP×1/n(nは2以上の整数)であるものでもよい。
本発明の電極基板は、上述の実施形態に限定されるものではない。例えば、図9に示すように、電極基板1は、透明基板2の一方の面2aに散乱層7を備えるものであってもよい。この散乱層7は、電極基板1が有機EL照明装置に使用されたときに、有機EL発光層から取出した光を散乱させるための層である。このような散乱層7としては、例えば、透明樹脂中にシリカ等の微粒子を分散させた層とすることができ、微粒子を含有する樹脂組成物を用いてフォトリソグラフィー法でパターニングして形成することができる。また、散乱層7は、透明基板2の一方の面2aに透明樹脂層を形成し、この透明樹脂層の表面に粗面化処理を施したものであってもよい。
このような散乱層7は、上述の電極基板11の一方の面12aにも配設することができる。
【0023】
[有機EL照明装置]
次に、本発明の有機EL照明装置について説明する。
図10は、本発明の有機EL照明装置の一実施形態を示す部分縦断面図である。図10において、本発明の有機EL照明装置31は、上述の本発明の電極基板1を用いた例であり、電極基板1と、この電極基板1の所定領域の透明電極4および絶縁層6を被覆する有機EL発光層32と、この有機EL発光層32を被覆する陰極33と、陰極33を覆う保護封止部材34と、を備えている。
【0024】
有機EL照明装置31を構成する有機EL発光層32は、例えば、透明電極4から正孔注入層、発光層、および電子注入層が積層された構造、発光層単独からなる構造、正孔注入層と発光層とからなる構造、発光層と電子注入層とからなる構造、さらに、正孔注入層と発光層との間に正孔輸送層を介在させた構造、発光層と電子注入層との間に電子輸送層を介在させた構造等とすることができる。
また、発光波長を調整したり、発光効率を向上させる等の目的で、上記の各層に適当な材料をドーピングすることもできる。
有機EL発光層32を構成する発光層は、有機EL照明装置31の使用目的等に応じて、所望の発光色、例えば、赤色発光、緑色発光、青色発光の三原色とすることができ、あるいは、黄色、水色、オレンジ色である発光層を単独で、また、赤色発光、緑色発光、青色発光以外の他の複数の発光色の所望の組み合わせ等、いずれであってもよい。
【0025】
有機EL発光層を構成する発光層に用いる有機発光材料としては、例えば、下記のような色素系、金属錯体系、高分子系のものを挙げることができる。
(1)色素系発光材料
シクロペンタジエン誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体、トリフェニルアミン誘導体、オキサジアゾール誘導体、ピラゾロキノリン誘導体、ジスチリルベンゼン誘導体、ジスチリルアリーレン誘導体、シロール誘導体、チオフェン環化合物、ピリジン環化合物、ペリノン誘導体、ペリレン誘導体、オリゴチオフェン誘導体、トリフマニルアミン誘導体、オキサジアゾールダイマー、ピラゾリンダイマー等が挙げられる。
(2)金属錯体系発光材料
アルミキノリノール錯体、ベンゾキノリノールベリリウム錯体、ベンゾオキサゾール亜鉛錯体、ベンゾチアゾール亜鉛錯体、アゾメチル亜鉛錯体、ポリフィリン亜鉛錯体、ユーロピウム錯体等、中心金属にAl、Zn、Be等、または、Tb、Eu、Dy等の希土類金属を有し、配位子にオキサジアゾール、チアジアゾール、フェニルピリジン、フェニルベンゾイミダゾール、キノリン構造等を有する金属錯体が挙げられる。
(3)高分子系発光材料
ポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリパラフェニレン誘導体、ポリシラン誘導体、ポリアセチレン誘導体、ポリビニルカルバゾール誘導体、ポリフルオレン誘導体等が挙げられる。
【0026】
また、青色発光である有機発光材料として、例えば、ベンゾチアゾール系、ベンゾイミダゾール系、ベンゾオキサゾール系等の蛍光増白剤、金属キレート化オキシノイド化合物、スチリルベンゼン系化合物、ジスチリルピラジン誘導体、芳香族ジメチリディン系化合物等を挙げることができる。
具体的には、2−2′−(p−フェニレンジビニレン)−ビスヘンゾチアゾール等のベンゾチアゾール系; 2−[2−[4−(2−ベンゾイミダゾリル)フェニル]ビニル]ベンゾイミダゾール、2−[2−(4−カルボキシフェニル)ビニル]ベンゾイミダゾール等のベンゾイミダゾール系; 2,5−ビス(5,7−ジ−t−ペンチル−2−ベンゾオキサゾリル)−1,3,4−チアジアゾール、4,4′−ビス(5,7−t−ペンチル−2−ベンゾオキサゾリル)スチルベン、2−[2−(4−クロロフェニル)ビニル]ナフト[1,2−d]オキサゾール等のベンゾオキサゾール系等の蛍光増白剤を挙げることができる。
また、上記の金属キレート化オキシノイド化合物としては、トリス(8−キノリノール)アルミニウム、ビス(8−キノリノール)マグネシウム、ビス(ベンゾ[f]−8−キノリノール)亜鉛等の8−ヒドロキシキノリン系金属錯体やジリチウムエピントリジオン等を挙げることができる。
【0027】
また、上記のスチリルベンゼン系化合物としては、1,4−ビス(2−メチルスチリル)ベンゼン、1,4−ビス(3−メチルスチリル)ベンゼン、1,4−ビス(4−メチルスチリル)ベンゼン、ジスチリルベンゼン、1,4−ビス(2−エチルスチリル)ベンゼン、1,4−ビス(3−エチルスチリル)ベンゼン、1,4−ビス(2−メチルスチリル)−2−メチルベンゼン、1,4−ビス(2−メチルスチリル)−2−エチルベンゼン等を挙げることができる。
また、上記のジスチリルピラジン誘導体としては、2,5−ビス(4−メチルスチリル)ピラジン、2,5−ビス(4−エチルスチリル)ピラジン、2,5−ビス[2−(1−ナフチル)ビニル]ピラジン、2,5−ビス(4−メトキシスチリル)ピラジン、2,5−ビス[2−(4−ビフェニル)ビニル]ピラジン、2,5−ビス[2−(1−ピレニル)ビニル]ピラジン等を挙げることができる。
【0028】
また、上記の芳香族ジメチリディン系化合物としては、1,4−フェニレンジメチリディン、4,4−フェニレンジメチリディン、2,5−キシレンジメチリディン、2,6−ナフチレンジメチリディン、1,4−ビフェニレンジメチリディン、1,4−p−テレフェニレンジメチリディン、9,10−アントラセンジイルジルメチリディン、4,4′−ビス(2,2−ジ−t−ブチルフェニルビニル)ビフェニル、4,4′−ビス(2,2−ジフェニルビニル)ビフェニル等、およびその誘導体を挙げることができる。
さらに、発光層の材料として、一般式(Rs−Q)2−AL−O−Lで表される化合物も挙げることができる(上記式中、ALはベンゼン環を含む炭素原子6〜24個の炭化水素であり、O−Lはフェニラート配位子であり、Qは置換8−キノリノラート配位子であり、Rsはアルミニウム原子に置換8−キノリノラート配位子が2個以上結合するのを立体的に妨害するように選ばれた8−キノリノラート置換基を表す)。具体的には、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(パラーフェニルフェノラート)アルミニウム(III)、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(1−ナフトラート)アルミニウム(III)等が挙げられる。
【0029】
有機EL発光層32を構成する各層に用いるドーピング材料、正孔輸送材料、正孔注入材料、電子注入材料等は、下記に例示するような無機材料、有機材料いずれでもよい。有機EL発光層32を構成する各層の厚みは特に制限はなく、例えば、10〜1000nm程度とすることができる。
【0030】
(ドーピング材料)
ペリレン誘導体、クマリン誘導体、ルブレン誘導体、キナクリドン誘導体、スクアリウム誘導体、ポリフィリン誘導体、スチリル系色素、テトラセン誘導体、ピラゾリン誘導体、デカシクレン、フェノキサゾン等が挙げられる。
【0031】
(正孔輸送材料)
オキサジアゾール系、オキサゾール系、トリアゾール系、チアゾール系、トリフェニルメタン系、スチリル系、ピラゾリン系、ヒドラゾン系、芳香族アミン系、カルバゾール系、ポリビニルカルバゾール系、スチルベン系、エナミン系、アジン系、トリフェニルアミン系、ブタジエン系、多環芳香族化合物系、スチルベン二量体等が挙げられる。
また、π共役系高分子として、ポリアセチレン、ポリジアセチレン、ポリ(P−フェニレン)、ポリ(P−フェニレンスルフィド)、ポリ(P−フェニレンオキシド)、ポリ(1,6−ヘプタジエン)、ポリ(P−フェニレンビニレン)、ポリ(2,5−チエニレン)、ポリ(2,5−ピロール)、ポリ(m−フェニレンスルフィド)、ポリ(4,4′−ビフェニレン)等が挙げられる。
【0032】
また、電荷移動高分子錯体として、ポリスチレン・AgC104、ポリビニルナフタレン・TCNE、ポリビニルナフタレン・P−CA、ポリビニルナフタレン・DDQ、ポリビニルメシチレン・TCNE、ポリナフタアセチレン・TCNE、ポリビニルアントラセン・Br2、ポリビニルアントラセン・I2、ポリビニルアントラセン・TNB、ポリジメチルアミノスチレン・CA、ポリビニルイミダゾール・CQ、ポリ−P−フェニレン・I2、ポリ−1−ビニルピリジン・I2、ポリ−4−ビニルピリジン・I2、ポリ−P−1−フェニレン・I2、ポリビニルピリジウム・TCNQ等が挙げられ、さらに、電荷移動低分子錯体として、TCNQ−TTF等が、高分子金属錯体としては、ポリ銅フタロシアニン等が挙げられる。
正孔輸送材料としては、イオン化ポテンシャルの小さい材料が好ましく、特に、ブタジエン系、エナミン系、ヒドラゾン系、トリフェニルアミン系が好ましい。
【0033】
(正孔注入材料)
フェニルアミン系、スターバースト型アミン系、フタロシアニン系、酸化バナジウム、酸化モリブデン、酸化ルテニウム、酸化アルミニウム等の酸化物、アモルファスカーボン、ポリアニリン、ポリチオフェン誘導体、トリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、オキサゾール誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、ポリシラン系、アニリン系共重合体、チオフェンオリゴマー等の誘電性高分子オリゴマー等、を挙げることができる。
【0034】
さらに、正孔注入材料として、ポリフィリン化合物、芳香族第三級アミン化合物、スチリルアミン化合物を挙げることもできる。上記のポリフィリン化合物としては、ポリフィン、1,10,15,20−テトラフェニル−21H、23H−ポリフィン銅(II)、アルミニウムフタロシアニンクロリド、銅オクタメチルフタロシアニン等を挙げることができる。また、芳香族第三級アミン化合物およびスチリルアミン化合物としては、N,N,N′,N′−テトラフェニル−4,4′−ジアミノフェニル、N,N′−ジフェニル−N,N′−ビス(3−メチルフェニル)−[1,1′−ビフェニル]−4,4′−ジアミン、4−(ジ−p−トリルアミノ)−4′−[4(ジ−p−トリルアミノ)スチリル]スチルベン、3−メトキシ−4′−N,N−ジフェニルアミノスチルベンゼン、4,4′−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル、4,4′,4″−トリス[N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ]トリフェニルアミン等を挙げることができる。
【0035】
(電子注入材料)
カルシウム、バリウム、アルミリチウム、フッ化リチウム、ストロンチウム、酸化マグネシウム、フッ化マグネシウム、フッ化ストロンチウム、フッ化カルシウム、フッ化バリウム、酸化アルミニウム、酸化ストロンチウム、酸化カルシウム、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム、ニトロ置換フルオレン誘導体、アントラキノジメタン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、ナフタレンペリレン等の複素環テトラカルボン酸無水物、カルボジイミド、フレオレニリデンメタン誘導体、アントラキノジメタンおよびアントロン誘導体、オキサジアゾール誘導体、上記のオキサジアゾール環の酸素原子をイオウ原子に置換したチアゾール誘導体、電子吸引基として知られているキノキサリン環を有したキノキサリン誘導体、トリス(8−キノリノール)アルミニウム等の8−キノリノール誘導体の金属錯体、フタロシアニン、金属フタロシアニン、ジスチリルピラジン誘導体等を挙げることができる。
有機EL発光層32を構成する各層は、例えば、所望の開口マスクを介して真空蒸着法等により成膜して形成することができる。
【0036】
有機EL照明装置31を構成する陰極33の材料としては、仕事関数の小さい(4eV以下)金属、合金、これらの混合物で形成される。具体的には、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム、リチウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al2O3)混合物、インジウム、リチウム/アルミニウム混合物、希土類金属等が挙げられる。電子注入性および電極としての酸化等に対する耐久性を考えると、電子注入性金属と、これより仕事関数の値が大きく安定な金属である第二金属との混合物が好ましく、例えば、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al2O3)混合物、リチウム/アルミニウム混合物等が挙げられる。このような陰極33はシート抵抗が数百Ω/□以下が好ましく、このため、陰極33の厚みは、例えば、10nm〜1μm、好ましくは50〜200nm程度とすることができる。このような陰極33は、所望の開口マスクを介し、上述の電極材料を用いて真空蒸着法、イオンプレーティング蒸着法等の方法により成膜して形成することができる。
【0037】
有機EL照明装置31を構成する保護封止部材34は、有機EL発光層32への水分の悪影響を防止するものであり、例えば、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂等の光硬化性樹脂材料を用いて形成することができる。保護封止部材34の形成は、例えば、ロールコート法、スピンコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法等のコーティング法や印刷法により行うことができる。
また、有機EL照明装置31の保護封止部材34上に放熱部材36(図示例では二点鎖線で示す)を配設してもよい。放熱部材36は、熱伝導率の高い材料で形成することができ、例えば、銅、銀、アルミニウム等の金属、これらの金属の合金、グラファイト、カーボンナノチューブ等の材料を用いて形成することができ。また、放熱部材36の形状は、複数のフィンを設けた構造、角柱形状、円柱形状、円錐形状、角錐形状等の複数の突起を設けた構造等、適宜設定することができる。
【0038】
図11は、本発明の有機EL照明装置の一実施形態を示す部分縦断面図である。図11において、本発明の有機EL照明装置41は、上述の本発明の電極基板1を用いた例であり、電極基板1と、この電極基板1の所定領域の透明電極4および絶縁層6を被覆する有機EL発光層42と、この有機EL発光層42を被覆する陰極43と、陰極43を覆う保護封止部材44と、を備えている。
有機EL照明装置41を構成する有機EL発光層42と陰極43は、上述の有機EL照明装置31を構成する有機EL発光層32と陰極33と同様であり、ここでの説明は省略する。
【0039】
有機EL照明装置41を構成する保護封止部材44は、電極基板1の透明基板2に固着された支持部44aと、この支持部44aにより支持されている封止板44bからなるケース状のものであり、空隙45を介して有機EL発光層42と陰極43を封止するものである。このような保護封止部材44は、金属板をプレス加工したもの、ガラスをエッチング加工したもの等であってよく、また、樹脂基板を加工して形成したものであってもよい。
また、有機EL照明装置41の保護封止部材44上に放熱部材46(図示例では二点鎖線で示す)を配設してもよい。放熱部材46は、熱伝導率の高い材料で形成することができ、例えば、銅、銀、アルミニウム等の金属、これらの金属の合金、グラファイト、カーボンナノチューブ等の材料を用いて形成することができ。また、放熱部材46の形状は、複数のフィンを設けた構造、角柱形状、円柱形状、円錐形状、角錐形状等の複数の突起を設けた構造等、適宜設定することができる。
さらに、図12に示すように、有機EL照明装置41の保護封止部材44と陰極43との間に伝熱部材47を充填配設してもよい。伝熱部材47としては、シリコングリース、カーボングラファイト等の熱伝導率が高いものを使用することができる。
上述の有機EL照明装置の実施形態は、本発明の電極基板1を用いた例であるが、使用する本発明の電極基板は、この電極基板1に制限されないことは勿論である。
尚、本発明の有機EL照明装置は、上述の実施形態に限定されるものではない。
【実施例】
【0040】
次に、実施例を示して本発明を更に詳細に説明する。
[実施例]
透明基材として、100mm×100mm、厚み0.7mmのソーダガラス(セントラル硝子(株)製)を準備した。
上記の透明基材の一方の面に、Agペースト(藤倉化成(株)製 XAQ436)を用いてスクリーン印刷法で放熱層を形成した。
このように形成された放熱層は、厚みが500μm、線幅が400μmであって、縦横のピッチが共に15mmである碁盤の目の形状であった。
次に、透明基板の他方の面の全域に、イオンプレーティング法により膜厚150nmの酸化インジウムスズ(ITO)膜を形成して透明電極とした。
【0041】
次いで、上記の透明電極上に、スパッタリング法により厚み0.6μmのAg/Pd合金層(Ag含有量=80重量%)を形成し、このAg/Pd合金層上に感光性レジスト(シプレー(株)製 S1805)をスピンコート法により塗布し乾燥し、次いで、所望のフォトマスクを介して露光、現像してレジストパターンを設けた。このレジストパターンをマスクとし、硝酸・リン酸・酢酸混合液を用いてAg/Pd合金層をエッチングし、その後、レジストパターンを除去した。これにより、厚みが0.6μm、線幅が400μmであって、縦横のピッチが共に15mmである碁盤の目の形状の補助電極を形成した。この補助電極は、透明基板を介して放熱層の真裏に位置するものであった。
次に、上記の透明電極、補助電極を覆うように感光性絶縁樹脂材料(新日鉄化学(株)製 V−259PA)をスピンコート法により塗布し、次いで、絶縁層形成用のマスクを介して塗布膜を露光し、その後、現像して、厚み1.5μm、線幅600μmの絶縁層を、縦横のピッチが共に15mmである碁盤の目の形状に形成した。これにより、補助電極は絶縁層で被覆された状態となった。
【0042】
このように作製した電極基板を、絶縁層を下にしてホットプレート上に載置し、60℃で加熱して10分経過後、30分経過後、60分経過後に、透明基板の温度をサーモグラフィー(NEC Avio 赤外線テクノロジー(株)製 TVS−200EX)で測定し、結果を下記の表1に示した。この測定により、絶縁層側に供給された熱が透明基板の反対側へ効率よく伝導されるか否かが判断され、透明基板の温度が低いほど、絶縁層、補助電極側(有機EL素子側)での熱の蓄積が抑制されることを意味する。
【0043】
[比較例]
放熱層を形成しない他は、実施例と同様にして、電極基板を作製した。
作製した電極基板を、絶縁層を下にしてホットプレート上に載置し、60℃で加熱して10分経過後、30分経過後、60分経過後に、透明基板の温度を実施例と同様に測定し、結果を下記の表1に示した。
【0044】
【表1】
表1に示される結果では、本発明の電極基板は、比較例の電極基板に比べて、透明基板の温度が低くなっている。このことから、本発明の電極基板では、透明基板の熱が放熱層から外部に放熱されるので、ホットプレートから絶縁層、補助電極を介して透明電極への熱伝導が積極的に行われ、したがって、絶縁層、補助電極側(有機EL素子側)での熱蓄積を抑制できることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0045】
種々の用途に使用する有機EL照明装置の製造において有用である。
【符号の説明】
【0046】
1,11…電極基板
2,12…透明基板
3,13…放熱層
4,14…透明電極
5,15…補助電極
6,16…絶縁層
7…散乱層
31,41…有機EL照明装置
32,42…有機EL発光層
33,43…陰極
34,44…保護封止部材
36,46…放熱部材
47…伝熱部材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基板と、該透明基板の一方の面に位置する放熱層と、前記透明基板の他方の面に位置する透明電極と、該透明電極上に位置する補助電極と、該補助電極を被覆する絶縁層と、を備えることを特徴とする有機EL照明装置用の電極基板。
【請求項2】
透明基板と、該透明基板の一方の面に位置する放熱層と、前記透明基板の他方の面に位置する補助電極と、該補助電極を被覆するように前記透明基板上に位置する透明電極と、該透明電極を介して前記補助電極を被覆するように位置する絶縁層と、を備えることを特徴とする有機EL照明装置用の電極基板。
【請求項3】
前記放熱層は、前記透明基板を介して前記補助電極の真裏に位置することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の有機EL照明装置用の電極基板。
【請求項4】
前記放熱層が位置する側の前記透明基板上に光散乱層を有していることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の有機EL照明装置用の電極基板。
【請求項5】
前記放熱層は、凹凸構造あるいは粗面を有することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の有機EL照明装置用の電極基板。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の電極基板と、該電極基板の所定領域の前記透明電極および前記絶縁層を被覆する有機EL発光層と、該有機EL発光層を被覆する陰極と、前記陰極を覆う保護封止部材と、を備えることを特徴とする有機EL照明装置。
【請求項7】
前記陰極と前記保護封止部材との間に伝熱部材が介在することを特徴とする請求項6に記載の有機EL照明装置。
【請求項8】
前記保護封止部材上に放熱部材を備えることを特徴とする請求項6または請求項7に記載の有機EL照明装置。
【請求項1】
透明基板と、該透明基板の一方の面に位置する放熱層と、前記透明基板の他方の面に位置する透明電極と、該透明電極上に位置する補助電極と、該補助電極を被覆する絶縁層と、を備えることを特徴とする有機EL照明装置用の電極基板。
【請求項2】
透明基板と、該透明基板の一方の面に位置する放熱層と、前記透明基板の他方の面に位置する補助電極と、該補助電極を被覆するように前記透明基板上に位置する透明電極と、該透明電極を介して前記補助電極を被覆するように位置する絶縁層と、を備えることを特徴とする有機EL照明装置用の電極基板。
【請求項3】
前記放熱層は、前記透明基板を介して前記補助電極の真裏に位置することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の有機EL照明装置用の電極基板。
【請求項4】
前記放熱層が位置する側の前記透明基板上に光散乱層を有していることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の有機EL照明装置用の電極基板。
【請求項5】
前記放熱層は、凹凸構造あるいは粗面を有することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の有機EL照明装置用の電極基板。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の電極基板と、該電極基板の所定領域の前記透明電極および前記絶縁層を被覆する有機EL発光層と、該有機EL発光層を被覆する陰極と、前記陰極を覆う保護封止部材と、を備えることを特徴とする有機EL照明装置。
【請求項7】
前記陰極と前記保護封止部材との間に伝熱部材が介在することを特徴とする請求項6に記載の有機EL照明装置。
【請求項8】
前記保護封止部材上に放熱部材を備えることを特徴とする請求項6または請求項7に記載の有機EL照明装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−69450(P2012−69450A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−214821(P2010−214821)
【出願日】平成22年9月27日(2010.9.27)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月27日(2010.9.27)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】
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