説明

有機EL発光装置

【課題】有機発光層の発光を利用した有機EL発光装置において、光取り出し効率を向上する。
【解決手段】有機EL発光装置1は、有機発光層24を有する複数の発光部2と、透光性の基板3とを備え、発光部2が基板3の一方の面上に配設され、発光部2からの光が基板3を通して他方の面から取り出される。基板3の光取り出し面側に発光部2の各々に対応してレンズ4を備え、レンズ4の各々は、発光部2の周縁の互いに対称な点を第1焦点40a及び第2焦点40bとする略半楕円断面形状を有し、多角形の辺41で互いに隣接する。これにより、発光部2からの光が、基板3を通してレンズ4に入射し、レンズ4の出射面42で反射せずに取り出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、EL素子)の発光を利用した有機EL発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、有機物を発光させて面光源を得る有機EL素子が知られている。図9は、有機EL素子100の一般的な構成を示す。有機EL素子100は、透明電極の陽極102、ホール輸送層103、有機発光層104、電子注入層105、及び金属電極の陰極106の各層が、透明な基板101の一方の面上に、この順で積層されて形成される。陽極102と陰極106の間に通電することによって、陽極102側からホールが注入され、陰極106側から電子が注入される。有機発光層104は、注入されたホールと電子の再結合によって発光し、その光が、陽極102と基板101を通して取り出される。
【0003】
ここで、基板101は、ガラス等から成り、その屈折率が空気の屈折率よりも高い。このため、基板101内から空気との界面107に比較的小さい入射角で入射する光は、空気中に出射されるが、それ以外の光L101は、その界面107で反射され、基板101内において端部方向に導波されて消失し、有機EL素子100から取り出すことができない。また、陽極102は、通常、ITO(Indium Tin Oxide)から成り、その屈折率が約1.8と他層と比較して高い。このため、他層との界面で反射して陽極102内を端部方向に導波される光L102が生じる。これらの界面での反射のため、有機EL素子100の光取り出し効率が低くなっている。
【0004】
そこで、基板の透光性を低くすることによって、基板内で光を散乱させて界面での反射を軽減し、光取り出し効率の向上を図った有機EL素子が知られている(例えば、特許文献1参照)。また、基板と陽極との間に光を散乱する光散乱層を設けることによって、界面での反射を軽減して、光取り出し効率の向上を図った有機EL素子が知られている(例えば、特許文献2参照)。しかしながら、上述したような有機EL素子では、光の散乱による光損失が生じるため、光取り出し効率の向上効果が十分ではない。
【特許文献1】特開2005−38661号公報
【特許文献2】特開2005−63704号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記問題を解決するものであり、有機発光層の発光を利用した有機EL発光装置において、光取り出し効率を向上することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために請求項1の発明は、有機発光層を有する複数の発光部と、透光性の基板とを備え、前記発光部が前記基板の一方の面上に配設され、前記発光部からの光が前記基板を通して他方の面から取り出される有機EL発光装置であって、前記基板の光取り出し面側に前記発光部の各々に対応してレンズを備え、前記レンズの各々は、前記発光部の周縁の互いに対称な点を第1焦点及び第2焦点とする略半楕円断面形状を有し、多角形の辺で互いに隣接するものである。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載の有機EL発光装置において、前記基板は、前記レンズの各辺に対向して、前記発光部から前記基板に入射した光を光取り出し面側に反射する反射面を備えたものである。
【0008】
請求項3の発明は、請求項2に記載の有機EL発光装置において、前記発光部は、前記基板に形成された凹部に内接して設けられているものである。
【0009】
請求項4の発明は、請求項2又は請求項3に記載の有機EL発光装置において、前記基板は、その光取り出し面とは反対側面であって前記発光部と前記反射面との間の領域に反射層をさらに備えたものである。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の発明によれば、発光部から基板に入射した光が、基板の光取り出し面からレンズに入射し、略半楕円断面形状のレンズの出射面で反射が生じないので、光取り出し効率が向上する。また、互いに隣接するレンズの出射面全体から光が出射されるので、有機EL発光装置は、光取り出し側の全面が発光する。
【0011】
請求項2の発明によれば、発光部から基板の導波方向に進行する光が、反射面によって光取り出し面側に反射されて取り出されるので、光取り出し効率がさらに向上する。
【0012】
請求項3の発明によれば、発光部の端部から出るエッジ光が、反射面によって光取り出し面側に反射されて取り出されるので、有機EL発光装置の光取り出し効率が向上する。
【0013】
請求項4の発明によれば、発光部から光取り出し面とは反対側面に入射した光が、反射層によって反射され、さらに反射面によって光取り出し面側に反射されて取り出されるので、有機EL発光装置の光取り出し効率が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態に係る有機EL発光装置を図1乃至図5を参照して説明する。図1は本実施形態の有機EL発光装置1(以下、発光装置という)の断面構成を示す。なお、図は端面を示し、基板3とレンズ5の断面ハッチングは図示を省いている。図2は発光装置1を光取り出し側から見た構成を示す。発光装置1は、有機発光層24を有する複数の発光部2と、透光性の基板3とを備え、発光部2が基板3の一方の面32上に配設され、発光部2からの光が基板3を通して他方の面31から取り出される。基板3の光取り出し面31側に発光部2の各々に対応してレンズ4を備える。レンズ4の各々は、発光部2の周縁の互いに対称な点を第1焦点40a及び第2焦点40bとする略半楕円断面形状を有し、多角形の辺41で互いに隣接する。
【0015】
基板3は、レンズ4の各辺41に対向して、発光部2から基板3に入射した光を光取り出し面31側に反射する反射面33を備える。また、発光部2を発光装置1外の電源に接続するための配線51、52を基板3上に備える。
【0016】
図3は、発光部2の構成を示す。発光部2は、透明電極から成る陽極22、ホール輸送層23、有機発光層24、電子注入層25、及び陰極26の各層が、この順で積層された有機EL素子である。各層の材料は、例えば、陽極22がITO(Indium Tin Oxide)、ホール輸送層23がアリールアミン類、有機発光層24がアルミ錯体(Alq)、電子注入層25がアルカリ金属でドーピングした有機層又はリチウム錯体、陰極26がアルミニウム等の金属である。有機発光層24からの光は、透明な陽極22を通して取り出される。金属から成る陰極26は、有機発光層24からの光を光取り出し側に反射する。発光部2は、少なくとも一層の有機発光層24が発光するように構成されていれば、他の層の種類や層数は限定されるものではない。例えば、陽極22とホール輸送層23との間に、銅フタロシアニン等から成るホール注入層を設けてもよいし、有機発光層24と電子注入層25との間にオキサジアゾール類等から成る電子輸送層を設けてもよい。発光部2のこれら各層は、例えば、真空蒸着法によって基板3の一方の面上に成膜される。
【0017】
再び、図1及び図2を参照して説明する。基板3は、例えば、ガラス又はポリスチレン等の樹脂から成る。基板3の一方の面32に、発光部2が略等間隔に面状に配設される。発光部2の各層を成膜する際のマスクによって、発光部2の平面形状は、中心に対して点対称な円等の形状にされる。発光部2の陽極22及び陰極26は、それぞれ配線51及び配線52に接続される。
【0018】
レンズ4は、例えば、ポリスチレン又はアクリル等の透光性樹脂を成型したものであり、基板3の光取り出し面31側に設けられる。基板3とレンズ4間の界面での光の反射を防止するため、レンズ4の屈折率は、基板3の屈折率と略同じにすることが望ましく、樹脂に酸化モリブデン等を添加して屈折率を調整してもよい。また、レンズ4は、樹脂を基板3と一体成型したものであってもよい。基板3を樹脂とする場合、基板3と発光部2間にSiOの薄膜を成膜し、発光部2の保護性を高めてもよい。レンズ4は、発光装置1の光取り出し側が凸形状であり、発光部2の中心21Cを含む任意の断面において、発光部2の周縁の互いに対称な点をそれぞれ第1焦点40a、第2焦点40bとする略半楕円断面形状を有する。レンズ4の光軸6は、発光部2の中心21Cを通り、基板3の法線方向となる。平面視では、複数の多角形のレンズ4が、互いに隣接して配設される。多角形は、例えば、六角形であり、矩形でもよい。なお、レンズ4は、略半楕円断面形状を有するが、多角形の辺41で互いに隣接することから、光軸6から辺41までの距離が一定ではないので、形成される凸形状は楕円面ではない。
【0019】
基板3の反射面33は、基板3の切削又は型による成型によって、レンズ4の辺41に対向して、断面V字形状に形成される。基板3内から反射面33に入射した光は、基板3と空気の屈折率差によって、光取り出し面31側に反射される。反射面33は、アルミニウム又は銀等の反射膜を蒸着等により設けて反射率を高めてもよい。反射面33に反射膜を設ける場合、反射面33による断面V字形状の凹部に樹脂等を充填することにより、基板3を補強してもよい。
【0020】
図4は、一つのレンズ4の断面形状を示す。レンズ4は、発光部2の周縁の互いに対称な点を第1焦点40a及び第2焦点40bとする略半楕円断面形状を有するので、レンズ4の出射面42への入射角が最大になる光は、第1焦点40a及び第2焦点40bから出射面42の中心421に入射する光である。このときの入射角を臨界角以下の所定の大きさの角度αに設定することによって、発光部2から出射される任意の光について、その入射角θは角度α以下となり、出射面42で反射が生じない。上記の角度αの設定は、発光部2及びレンズ4の径等を定めることによって行われる。
【0021】
上記のように構成された発光装置1の光路について図5を参照して説明する。図5は、発光装置1の断面を示す。発光部2から出射された光のうち、基板3の光取り出し面31に入射した光L1は、レンズ4に入射し、出射面42で反射されることなく、取り出される。また、発光部2から出射された光のうち、基板3の光取り出し面31に直接入射しない光L2は、基板3の導波方向に進行し、反射面33により反射されて、レンズ4に入射し、出射面42で反射されることなく、取り出される。複数の発光部2は、離散的に配設されるが、レンズ4の出射面42全体から光が出射され、レンズ4が多角形の辺41で互いに隣接して隙間無く配設されるので、発光装置1は、光取り出し側の全面が発光する。
【0022】
このように、発光部2から基板3に入射した光L1が、基板3の光取り出し面31からレンズ4に入射し、略半楕円断面形状のレンズ4の出射面42で反射が生じないので、光取り出し効率が向上する。また、発光部2から基板3の導波方向に進行する光L2が、反射面33によって光取り出し面側に反射されて取り出されるので、光取り出し効率がさらに向上する。
【0023】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態に係る発光装置を図6を参照して説明する。図6は本実施形態の発光装置11の構成を示す。本実施形態の発光装置11は、第1の実施形態における発光部2を基板3の一方の面上に配設することに替えて、基板3に形成された凹部34に内接して設けた。凹部34は、基板3の光取り出し面側とは反対側面32に、基板3の切削又は型による成型によって形成される。なお、発光部2の陽極22は、凹部34の内面に沿った配線(図示せず)を介して基板3上の配線51(図2参照)に接続される。
【0024】
上述した第1の実施形態の発光装置1では、発光部2の端部から出る光(エッジ光)を基板3及びレンズ4を通して取り出すことができないのに対して、本実施形態の発光装置11では、発光部2の端部から出るエッジ光L3が、凹部34から基板3に入射し、反射面33によって光取り出し面側に反射され、レンズ4を通して取り出されるので、発光装置11の光取り出し効率が向上する。
【0025】
(第3の実施形態)
本発明の第3の実施形態に係る発光装置を図7を参照して説明する。図7は本実施形態の発光装置12の構成を示す。本実施形態の発光装置12は、第2の実施形態と同様の構成を有し、基板3は、その光取り出し面31とは反対側面であって発光部2と反射面33との間の領域に反射層35をさらに備えた。反射層35は、例えば、基板3にアルミニウム又は銀等を蒸着して形成される。反射層35は、マスクによって、配線51、52(図2参照)の近傍には形成しないようにし、配線51、52から電気的に絶縁される。
【0026】
本実施形態の発光装置12によれば、発光部2から光取り出し面31とは反対側面に入射した光L4が、反射層35によって反射され、さらに反射面33によって光取り出し面側に反射され、レンズ4を通して取り出されるので、発光装置12の光取り出し効率が向上する。
【0027】
図8は、本実施形態の発光装置12の一変形例の構成を示す。基板3は、その光取り出し面31とは反対側面であって発光部2以外の反射面33を含む領域に反射層36を形成するようにした。これにより、反射面33で光が反射より確実に反射され、発光装置12の光取り出し効率が向上する。
【0028】
なお、本発明は、上記の実施形態の構成に限られず、発明の要旨を変更しない範囲で種々の変形が可能である。例えば、発光部2の平面形状は、四角形又は六角形であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る有機EL発光装置の端面図。
【図2】同装置の平面図。
【図3】同装置における発光部の断面図。
【図4】同装置におけるレンズの断面形状の説明図。
【図5】同装置における光路例を示す端面図。
【図6】本発明の第2の実施形態に係る有機EL発光装置の端面図。
【図7】本発明の第3の実施形態に係る有機EL発光装置の端面図。
【図8】同装置の一変形例の端面図。
【図9】一般的な有機EL素子の断面図。
【符号の説明】
【0030】
1、11、12 有機EL発光装置
2 発光部
24 有機発光層
3 基板
33 反射面
34 凹部
35、36 反射層
4 レンズ
40a 第1焦点
40b 第2焦点
41 辺

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機発光層を有する複数の発光部と、透光性の基板とを備え、前記発光部が前記基板の一方の面上に配設され、前記発光部からの光が前記基板を通して他方の面から取り出される有機EL発光装置であって、
前記基板の光取り出し面側に前記発光部の各々に対応してレンズを備え、
前記レンズの各々は、前記発光部の周縁の互いに対称な点を第1焦点及び第2焦点とする略半楕円断面形状を有し、多角形の辺で互いに隣接することを特徴とする有機EL発光装置。
【請求項2】
前記基板は、前記レンズの各辺に対向して、前記発光部から前記基板に入射した光を光取り出し面側に反射する反射面を備えたことを特徴とする請求項1に記載の有機EL発光装置。
【請求項3】
前記発光部は、前記基板に形成された凹部に内接して設けられていることを特徴とする請求項2に記載の有機EL発光装置。
【請求項4】
前記基板は、その光取り出し面とは反対側面であって前記発光部と前記反射面との間の領域に反射層をさらに備えたことを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の有機EL発光装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2010−146951(P2010−146951A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−325730(P2008−325730)
【出願日】平成20年12月22日(2008.12.22)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】