説明

有機EL表示パネルとその製造方法および検査方法

【課題】 有機EL素子基板上の各部材の形成位置のずれ、あるいは有機EL素子基板と封止基板との接合位置のずれ等、有機EL表示パネル製造工程の精度を簡便に測定できる有機EL表示パネルとその製造方法および検査方法を提供する。
【解決手段】 基板上に陽極電極、絶縁層、隔壁、有機発光層および陰極電極が形成された有機EL素子基板2と、前記有機EL素子基板2に対向する封止基板3と、該封止基板3の外周部に配設され、前記有機EL素子基板2と前記封止基板3とを封止するシール材4とを備えた有機EL表示パネルであって、前記有機EL素子基板2が、そのEL素子表示領域外に目盛り13を備えたものであり、該目盛り13は、有機EL素子基板2の製造工程において、いずれかの部材と同時に形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、目盛りを備えた有機EL表示パネルとその製造方法および検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の情報通信分野における急速な技術開発の進展に伴い、フラットパネルディスプレイ、なかでも有機EL(Electro Luminescence)表示パネルは、次世代の表示装置として大きな期待が寄せられている。
有機EL表示パネルとは、電極間に有機発光層を挟持してなる有機EL素子基板と、この有機EL素子基板に対向する封止基板とを、封止基板の外周部に配設したシール材により封止したものである。
有機EL素子は、電極間に電圧を印加すると、陽極からは正孔が、陰極からは電子が、それぞれ有機EL層に注入されて再結合し、その際に生ずるエネルギーにより有機EL層に含まれる有機発光性化合物の分子が励起される。このようにして励起された分子が基底状態に戻る際のエネルギーが光として放出されて発光現象を生じる。有機EL素子はこの発光現象を利用した自発光素子であり、高速応答性、視認性、輝度などの点で優れている。さらに、液晶表示パネルで必要とされるバックライトが不要なため電力消費が少なく、パネルの薄型化にも有利である。
【0003】
その反面、有機EL表示パネルは、その製造工程において、有機EL素子基板上の各部材の形成、あるいは有機EL素子基板と封止基板との接合を精密に制御して行うことが必要であり、これらに不備があると、画質が損なわれてしまうことがある。特に、有機EL素子基板上に形成された有機発光層は、パネル内に侵入した水分により特性劣化を起こし、輝度低下や画素の縮小、有機EL表示パネルの寿命低下等を生じることが知られている。
【0004】
そこで、有機EL素子基板と封止基板との接合に際しては、接合位置のずれを抑制する方法として、有機EL素子基板と封止基板の外周部にアライメントマークを設けて、有機EL素子基板と封止基板との接合を、このアライメントマークを基準として、CCDカメラを用いて位置あわせをしながら行う方法が開示されている(特許文献1参照)。
【0005】
一方、有機EL表示パネルの製造においては、このように各工程を精密に行うだけではなく、有機EL素子基板上の各部材の形成位置のずれ幅、あるいは有機EL素子基板と封止基板との接合位置のずれ幅等を確認し、これらデータに基づいて、製造工程の改良を行っていくことも必要とされている。
【0006】
そのため、従来、有機EL素子基板上の各部材の形成位置のずれ幅に関しては、光学顕微鏡等を用いて、各部材の拡大写真を撮影した後、この写真と同等の倍率で拡大撮影したメジャーを用いて測定したり、測長機能を有する顕微鏡を用いて測定する方法等が採用されている。
【特許文献1】特開2005−71646号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、前記メジャーを用いる方法あるいは測長機能を有する顕微鏡を用いる方法は、作業効率が低く、特殊な機器を必要とするなどの問題点がある。
また、特許文献1に記載の方法でも、位置あわせの精度が十分とは言えず、接合位置のずれ幅を測定することができないという問題点がある。
【0008】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、有機EL素子基板上の各部材の形成位置のずれ、あるいは有機EL素子基板と封止基板との接合位置のずれ等、有機EL表示パネル製造工程の精度を簡便に測定できる有機EL表示パネルとその製造方法および検査方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、
請求項1に記載の発明は、基板上に陽極電極、絶縁層、隔壁、有機発光層および陰極電極が形成された有機EL素子基板と、前記有機EL素子基板に対向する封止基板と、前記封止基板の外周部に配設され、前記有機EL素子基板と前記封止基板とを接合するシール材とを備えた有機EL表示パネルであって、前記有機EL素子基板が、そのEL素子表示領域外に目盛りを備えたものであり、前記目盛りが、互いに直交する二本の目盛りであり、前記二本の目盛りのうち一本の目盛りが前記隔壁に平行であることを特徴とする有機EL表示パネルである。
【0010】
請求項2に記載の発明は、前記目盛りが、前記有機EL素子基板と前記封止基板と前記シール材とで囲まれた密封空間から、前記有機EL素子基板の端縁にかけて配記されていることを特徴とする請求項1に記載の有機EL表示パネルである。
【0011】
請求項3に記載の発明は、前記目盛りが、陽極電極、陰極電極および絶縁層のいずれかと同じ材料からなるものであることを特徴とする請求項1または2に記載の有機EL表示パネルである。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の有機EL表示パネルの製造方法であって、有機EL素子基板上のEL素子表示領域外に、目盛りを形成する工程を有することを特徴とする有機EL表示パネルの製造方法である。
【0013】
請求項5に記載の発明は、陽極電極、絶縁層および陰極電極を形成するいずれかの工程において、前記目盛りを同時に形成することを特徴とする請求項4に記載の有機EL表示パネルの製造方法である。
【0014】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の有機EL表示パネルに設けられた目盛りを用いて、有機EL表示パネル製造工程の精度を確認することを特徴とする有機EL表示パネルの検査方法である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、有機EL素子基板上の各部材の形成位置のずれ、あるいは有機EL素子基板と封止基板との接合位置のずれ等、有機EL表示パネル製造工程の精度を簡便に測定でき、得られた測定結果の情報に基いて工程条件を改良していくことで、高品質な有機EL表示パネルを効率よく製造することができる。また、本発明の実施に際しては、特殊な設備等は不要であり、簡便に行うことができるため、コスト的にも優れた有機EL表示パネルを製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態に係る有機EL表示パネルの例を図面に示し、詳細に説明する。
図1は、本実施形態に係る有機EL表示パネル1の一例を示す概略断面図である。
有機EL表示パネル1は、有機EL素子基板2と、有機EL素子基板2に対向する封止基板3と、これら基板を接合して有機EL素子を封止するシール材4と、有機EL素子基板2と封止基板3とシール材4とから形成される密封空間に設けた捕水材5とから概略構成されている。
【0017】
有機EL素子基板2は、厚さ0.4〜1.1mmの透明なガラス基板からなり、その上には、ITO等の透明な陽極電極30が形成されている。有機EL素子基板2の下部側10は、いわゆる視認側に当たる。
【0018】
そして、陽極電極30上には、自発光源となる有機発光層7,7・・・、アルミニウム等の金属材料からなる陰極電極8,8・・・、ポリイミド樹脂等からなる絶縁層6,6・・・、およびノボラック樹脂等からなる隔壁9,9・・・が形成されていて、陽極電極30と陰極電極8とで有機発光層7を挟み込んで電流を印加できるようになっている。
【0019】
封止基板3は、ガラス、アクリル系樹脂などからなり、有機EL素子基板2を覆うように設けられている。また、封止基板3の形状は、平板上の基板の外周部に凸部が設けられたものとなっており、この凸部が、シール材4を介して有機EL素子基板2と接合されることにより、有機EL素子が封止されている。
【0020】
シール材4は、エポキシ系、アクリル系等の紫外線硬化型樹脂からなるものである。これらのなかでも、外部からの水分の浸入を防止する点から、透水性の低い樹脂であることが好ましい。
【0021】
凸部で囲まれた封止基板3の表面上には、全面に渡って捕水材5が設けられている。捕水材5は、凸部で囲まれた封止基板3の表面全面ではなく、一部に設けても良いが、パネル内における捕水効率を上げるために、全面に渡って設けることが好ましい。
なお、捕水材とは、捕水機能を有する物質を粘性のある溶媒に混合したものであり、捕水機能を有する物質としては、例えば、ゼオライト、アルミナ、シリカゲル、モレキュラーシーブなどの物理吸着型のものや、酸化カルシウム、酸化バリウム、酸化マグネシウム、硫酸ナトリウム、硫酸カルシウム、硫酸チタンなどの化学吸着型のものを挙げることができる。
【0022】
前記捕水材5は、水分の浸入を遮断した窒素雰囲気下または真空下で、ディスペンサ等を用いて、封止基板3の凸部で囲まれた表面に塗布して設けることができる。塗布量は、0.01〜0.5mm/mmであることが好ましい。また、表面積を大きくして捕水効率を向上させる観点から、厚さ10〜300μmの膜状に塗布することが好ましい。
【0023】
図2は、図1に示した有機EL表示パネル1の、封止基板側11から見た概略平面図である。
符号13は、有機EL素子基板2上に設けられた目盛りであり、図2に示す座標軸におけるX軸目盛り13aおよびY軸目盛り13bとからなる。なお、ここでは、目盛り13は簡略化して線で表示している。有機EL素子基板2の製造工程において、蒸着あるいはスパッタによって成膜した後、フォトリソグラフィーおよびエッチングにより部材を形成するいずれかの工程において、目盛り13は、これら部材と同じ材料を用いて同時に形成される。具体的には、例えば、陽極電極30、絶縁層6および陰極電極8を形成する工程のいずれかにおいて、これら部材と同時に形成される。
【0024】
封止基板3が着色されていて、封止基板側11から目盛り13を読み取ることが難しい場合、あるいは、目盛り13の形成場所近傍に、陰極電極8や配線があって電極材料で目盛り13を形成することができない場合などは、陽極電極30あるいは絶縁層6形成時に目盛り13を形成すると良い。
このように、本発明において目盛り13は、有機EL表示パネル1の製造工程において、各部材と同時に形成することができるので、その形成にあたっては、特殊な設備を必要とせず簡便に行うことができる。
【0025】
目盛り13は、有機EL表示パネル1の四隅の一つに設けられている。すなわち、有機EL表示パネル1の切断位置12から、素子表示領域外のX軸方向およびY軸方向に、互いに直交するように二つ設けられており、いずれも密封空間内であるパネル内にまで伸ばされている。なお、前記切断位置12は有機EL表示パネルにおいて、有機EL素子基板2の端縁となる。また、パネル内にある最外郭の隔壁9と平行になるようにされており、このように設けることで、後述するように、隔壁9を基準位置として、有機EL素子基板2上の各部材の位置のずれ、あるいは有機EL素子基板2と封止基板3との接合位置のずれを容易に計測することができる。
なおここでは、目盛り13は、有機EL表示パネル1の四隅の一つに設けた例を示しているが、数はこれに限定されず、四隅の二つ以上に設けても良い。
【0026】
次に、本実施形態に係る有機EL表示パネル1の製造方法について、目盛り13を陽極電極30形成時に同時に形成する方法を例にとり、以下に説明する。なお、本発明は、以下に示す方法に何ら限定されるものではない。
まず、有機EL素子基板2の製造方法について述べる。
ガラス基板上に、陽極電極材料であるITOを蒸着あるいはスパッタにより、膜厚150nm程度となるように成膜する。続いて、フォトリソグラフィーおよびエッチングによりITOパターンを形成する。このITOパターンが陽極電極30となる。エッチングは、ウェットエッチングあるいはドライエッチングのいずれでも良い。
【0027】
またこの時、目盛り13も同時に形成する。目盛り13は、有機EL表示パネル1の切断位置12から、その対向する切断位置に向かって伸びるように設けるが、その際、素子表示領域外に設けることが必要である。また、目盛り13は、後述する隔壁9のうちパネル内で最外郭のものに対して平行となるように設けることが好ましい。これは、他の工程で目盛り13を形成する場合も同様である。
【0028】
次に、陽極電極30の上に、補助配線材料を成膜する。補助配線材料としては、Al、Al合金、AgおよびAg合金等の低抵抗性金属を用い、蒸着あるいはスパッタによって成膜する。続いて、成膜した補助配線材料を、フォトリソグラフィーおよびエッチングによりパターニングして、補助配線パターンを形成する。この補助配線(図示略)により、陽極電極30または陰極電極8に信号が伝達される。
なお、陽極電極30および補助配線の形成は、これに限定されず、例えば、陽極電極材料と補助配線材料を順番にガラス基板上に成膜した後、補助配線材料と陽極電極材料を順番にパターニングする方法で形成しても良い。
【0029】
続いて、絶縁層6を形成する。補助配線を形成済みのガラス基板上に、感光性のポリイミド樹脂をスピンコーティングした後、有機発光層7に相当する部分が開口するよう、フォトリソグラフィー工程でパターニングして、キュアすることにより絶縁層6を形成する。
なお、目盛り13は、陽極電極30形成時に代わって、この絶縁層6形成時に、同時に形成することもできる。
【0030】
一方、絶縁層6形成時には、陰極電極8と補助配線とのコンタクトホール(図示略)も形成する。例えば、前記開口部は、300μm×300μm程度、陰極電極8と補助配線とのコンタクトホールは200μm×200μm程度となるように形成することが好ましい。
【0031】
次に、隔壁9を形成する。絶縁層6を形成済みのガラス基板上に、感光性のノボラック樹脂をスピンコーティングした後、フォトリソグラフィー工程でパターニングして、光反応させることで隔壁9を形成する。
また、隔壁9は帯状逆台形型となるように形成することが好ましい。このようにすることで、陰極電極8が、隔壁9下部近傍には形成されず、陰極同士を分離することが出来る。隔壁9を帯状逆台形型に成型するためには、例えば、ネガタイプの感光性樹脂を用いることが好ましい。ネガタイプの感光性樹脂を用いると、上から光を照射した時に深い部分ほど光反応が進行しにくいため、隔壁9を逆台形状に成型することが容易である。また、露光時間やエッチングの液温、時間を変更することで成型することもできる。なお、隔壁9を形成すると同時に、最外隔壁をEL素子表示領域の外方に枠状に形成する。この最外隔壁は、EL素子表示領域外で陰極引き廻し配線の短絡を防止するものである。
【0032】
続いて、絶縁層6の開口部に、蒸着により有機発光層7を形成する。有機発光層7は、界面層、正孔輸送層、発光層、電子注入層等(図示略)からなり、これらを順次蒸着することで得られる。
【0033】
さらに有機発光層7上へ、陰極電極材料を蒸着あるいはスパッタリングした後、フォトリソグラフィー工程でパターニングすることにより、陰極電極8を形成する。
陰極電極材料としては、Alを用いることが多いが、その他にも例えば、Li等のアルカリ金属、Ag、Ca、Mg、Y、In、あるいはこれらを含む合金を用いることもできる。
なお、目盛り13は、陽極電極30あるいは絶縁層6形成時に代わって、この陰極電極8形成時に、同時に形成することもできる。
以上により、有機EL素子基板2が完成される。
【0034】
次に、封止基板3の製造方法について述べる。
ガラス基板上の外周部に、有機EL素子基板2との接合部位である凸部を形成するため、凸部相当部位以外のガラス基板表面を、エッチングあるいはサンドブラスト等により掘り込む。このようにして形成された凸部で囲まれたガラス基板表面が、捕水材5を配置するための捕水材収納部となる。
そして、凸部形成後、この捕水材収納部に捕水材5を配置する。
【0035】
次に、ディスペンサを用いて、凸部表面の長手方向の中心付近に沿って、シール材4を所定の幅で塗布する。これにより封止基板3が製造される。
【0036】
以上により得られた有機EL素子基板2と封止基板3とを接合し、有機EL素子を封止して、有機EL表示パネル1を得る。有機EL素子基板2と封止基板3との接合は、紫外線を照射してシール材4を露光重合することで行う。
【0037】
通常は、同一の基板上に有機EL表示パネルを複数形成して有機EL表示基板を製造した後、これらを所定の位置で切断することで、複数の有機EL表示パネルを得る。本発明も同様に、図3に示すような有機EL表示基板20を製造した後、切断位置12において、該基板20を切断することで、複数の有機EL表示パネル1を得る。
各々の目盛り13は、その一端が切断位置12に一致するように設けられているので、切断位置のずれも計測することができる。
【0038】
本発明の有機EL表示パネル1を、封止基板側11から目盛り13を用いて観察することで、陽極電極30、絶縁層6および陰極電極8等の各部材について、その配置位置のずれ幅を、また有機EL素子基板2と封止基板3との接合位置のずれ幅を確認することができる。また、目盛り13は、素子表示領域外に設けられているが、その一部はパネル内にまで伸ばされ、さらに、最外郭の隔壁9に平行となるように設けられているため、該隔壁9を基準位置として各部材配置位置あるいは接合位置を読み取ることで、これらのずれ幅を容易に確認することができる。そして、これらのずれ幅を測定することで、有機EL表示パネル1の製造における、各工程の精度を確認することができる。
【0039】
さらに、目盛り13を用いて、有機EL素子基板2と封止基板3との接合位置における、シール材4のはみ出し幅を測定することもできる。図4(a)は、図1に示した有機EL表示パネル1の概略断面図のうち、有機EL素子基板2と封止基板3との接合位置を拡大したものであり、図4(b)は、図2に示した概略平面図のうち、目盛り13、および有機EL素子基板2と封止基板3との接合位置を含む領域を拡大したものである。ここで、符号14は、有機EL素子基板2と封止基板3との接合位置であり、符号40は、該接合位置14からはみ出したシール材4である。
なお、目盛り13は、その間隔が0.005〜0.1mmとなるように設けることが好ましい。
【0040】
有機EL素子基板2と封止基板3とを接合する際は、接合の圧力により、封止基板3の凸部に塗布されたシール材4の一部は、図4(a)に示すように、接合位置14からはみ出して、はみ出し部位40となる。この時、図4(b)に示すように、はみ出し部位40の幅を、目盛り13を用いて測定することにより、シール材4の塗布量あるいは塗布速度等の精度を確認することができる。
【0041】
一方、封止基板3に設けた捕水材5は、硬化を行わなかった場合、保存温度あるいは振動の影響を受けて、その一部から溶媒が分離してしまうことがあり、この場合、分離した溶媒はパネル内に貯留される。この分離した溶媒の量を、目盛り13を用いて測定することもできる。
図5に示すように、目盛り13が設けられている角を下にして、有機EL表示パネル1を鉛直方向に立て、パネル内の分離溶媒をパネル内の下部に集めると、目盛り13aおよび13bの値を読み取ることで、分離した溶媒の量を簡便に確認することができる。これにより、捕水材5の調製に際して、捕水機能を有する物質と溶媒との混合比、あるいは捕水材5の量を管理することができる。なお、図5においては、接合位置14、はみ出し部位40および隔壁9は省略してある。
【0042】
以上のように、これら測定データを解析し、有機EL表示パネル1の製造工程を改良していくことで、高品質な有機EL表示パネル1を安定して製造することができる。
【実施例】
【0043】
以下に具体的実施例を挙げて、本発明についてさらに詳細に説明する。なお、本発明は、以下に示す実施例に何ら限定されるものではない。
(実施例1)
陽極電極30形成時に形成した目盛り13を用いて、有機EL素子基板2の絶縁層6、隔壁9、有機発光層7および陰極電極8の配置位置を確認した。具体的手順は以下の通りである。
図2に示すように、陽極電極30形成時において、ガラス基板の四隅の一つに、互いに直交する二つの目盛り13を設けた。そして、前記製造方法に従って、図3に示すような、複数の有機EL表示パネル1を含む有機EL表示基板20を製造した。
該表示基板中20の一つの有機EL表示パネル1について、絶縁層6、隔壁9、有機発光層7および陰極電極8の配置位置を、最外郭の隔壁9を基準位置として、前記目盛り13を用いて測定した。
次に、同様の測定を、同じ表示基板20中の、他の有機EL表示パネル1についても行った。この測定により、平面内二方向(X軸およびY軸方向)および該平面内における回転方向に関する、前記各部材の配置位置のずれを確認した。
さらに、以上のような測定を、他の有機EL表示基板の有機EL表示パネルに対しても行った。
【0044】
このように、各部材の配置位置のずれを、有機EL表示基板のロット間、および一つの有機EL表示基板中のパネル間で比較することにより、有機EL素子基板の製造工程における、各部材形成工程の精度を、特殊な装置を用いることなく容易に確認することができた。
【0045】
(実施例2)
実施例1で製造した有機EL表示パネル1について、有機EL素子基板2と封止基板3との接合位置を確認した。具体的手順は以下の通りである。
有機EL表示基板20中の一つの有機EL表示パネル1について、図4(b)に示すように、目盛り13を用い、最外郭の隔壁9を基準位置として、接合位置14を測定した。
次に、同様の測定を、同じ表示基板20中の、他の有機EL表示パネル1についても行った。この測定により、平面内二方向(X軸およびY軸方向)および該平面内における回転方向に関する、接合位置14のずれを確認した。
さらに、以上のような測定を、他の有機EL表示基板の有機EL表示パネルに対しても行った。
【0046】
以上のように、接合位置14のずれを、有機EL表示基板のロット間、および一つの有機EL表示基板中のパネル間で比較することにより、有機EL素子基板の製造工程における、有機EL素子封止工程の精度を、特殊な装置を用いることなく容易に確認することができた。
【0047】
(実施例3)
実施例1で製造した有機EL表示パネル1について、有機EL素子基板2と封止基板3との接合位置における、シール材4のはみ出し幅を測定した。具体的手順は以下の通りである。
まず、有機EL表示基板20中の一つの有機EL表示パネル1について、目盛り13を用いて、前記はみ出し部位40の幅を測定した。
次に、同様の測定を、同じ表示基板20中の、他の有機EL表示パネル1についても行い、さらに、以上のような測定を、他の有機EL表示基板の有機EL表示パネルに対しても行った。
【0048】
このように、シール材4のはみ出し部位40の幅を、有機EL表示基板のロット間、および一つの有機EL表示基板中のパネル間で比較することにより、有機EL素子基板の製造工程における、シール材4の塗布精度を、特殊な装置を用いることなく容易に確認することができた。
【0049】
(実施例4)
実施例1で製造した有機EL表示パネル1について、パネル内の分離溶媒の量を測定した。具体的手順は以下の通りである。
図5に示すように、目盛り13が設けられている角を下にして、有機EL表示パネル1を鉛直方向に立て、水平面と約45度の角度をなすように傾けて、パネル内の分離溶媒をパネル内の下部に集めた。そして、液面の位置を目盛り13aおよび13bの値から読み取った。
次に、同様の測定を、同じ表示基板20中の、他の有機EL表示パネル1についても行い、さらに、以上のような測定を、他の有機EL表示基板の有機EL表示パネルに対しても行った。
【0050】
このように、パネル内の分離溶媒量を、有機EL表示基板のロット間、および一つの有機EL表示基板中のパネル間で比較することにより、封止基板3の製造工程において、捕水材5の塗布精度、すなわち、捕水機能を有する物質と溶媒との混合比、あるいは捕水材5の量を、特殊な装置を用いることなく容易に管理できることが確認された。
【0051】
以上述べたように、本発明の製造方法により得られる、目盛りを備えた有機EL表示パネルは、従来よりも簡便に、その製造工程の精度を確認することができる。また、目盛りの形成もその製造工程において、同時に簡便に行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明により、有機EL表示パネルの製造工程を改良していくことで、高品質な有機EL表示パネルを得ることができ、また、本発明の実施にあっては、特殊な設備を必要とせず、簡便に行うことができるため、コスト的にも優れた有機EL表示パネルを供給することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の有機EL表示パネルの一例を示す概略断面図である。
【図2】本発明の有機EL表示パネルの一例を示す概略平面図である。
【図3】本発明の有機EL表示パネルを含む有機EL表示基板の一例を示す概略平面図である。
【図4】本発明の有機EL表示パネルの一例を示す拡大図である。
【図5】本発明の有機EL表示パネルの一例を示す拡大図である。
【符号の説明】
【0054】
1・・・有機EL表示パネル、2・・・有機EL素子基板、3・・・封止基板、4・・・シール材、6・・・絶縁層、7・・・有機発光層、8・・・陰極電極、9・・・隔壁、13・・・目盛り、30・・・陽極電極


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に陽極電極、絶縁層、隔壁、有機発光層および陰極電極が形成された有機EL素子基板と、
前記有機EL素子基板に対向する封止基板と、
前記封止基板の外周部に配設され、前記有機EL素子基板と前記封止基板とを接合するシール材とを備えた有機EL表示パネルであって、
前記有機EL素子基板が、そのEL素子表示領域外に目盛りを備えたものであり、前記目盛りが、互いに直交する二本の目盛りであり、前記二本の目盛りのうち一本の目盛りが前記隔壁に平行であることを特徴とする有機EL表示パネル。
【請求項2】
前記目盛りが、前記有機EL素子基板と前記封止基板と前記シール材とで囲まれた密封空間から、前記有機EL素子基板の端縁にかけて配記されていることを特徴とする請求項1に記載の有機EL表示パネル。
【請求項3】
前記目盛りが、陽極電極、陰極電極および絶縁層のいずれかと同じ材料からなるものであることを特徴とする請求項1または2に記載の有機EL表示パネル。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の有機EL表示パネルの製造方法であって、
有機EL素子基板上のEL素子表示領域外に、目盛りを形成する工程を有することを特徴とする有機EL表示パネルの製造方法。
【請求項5】
陽極電極、絶縁層および陰極電極を形成するいずれかの工程において、前記目盛りを同時に形成することを特徴とする請求項4に記載の有機EL表示パネルの製造方法。
【請求項6】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の有機EL表示パネルに設けられた目盛りを用いて、有機EL表示パネル製造工程の精度を確認することを特徴とする有機EL表示パネルの検査方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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