説明

有機EL表示装置

【課題】有機EL素子を複数積層した有機EL表示装置において、バンク層の表面に異物が付着した場合においても、第二電極と第三電極との短絡が起こらない有機EL表示装置を提供する。
【解決手段】第一サブピクセルP1に、対向する第一電極21と第二電極22との間に挟持された発光層を含む第一有機化合物層31を有し、第二サブピクセルに、対向する第一電極21と第二電極22との間に挟持された発光層を含む第二有機化合物層32を有し、第一サブピクセルP1及び第二サブピクセルP2に共通に、対向する第二電極22と第三電極23との間に挟持された発光層を含む第三有機化合物層33を有し、第一電極21の端部はバンク層13によって覆われ、バンク層13の開口領域においてのみ、第二電極22と第三電極23とが対向している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極間に発光層を含む有機化合物層を有する有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)を複数備えた有機EL表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、フラットパネルディスプレイとして、自発光型のデバイスである有機EL表示装置が注目されている。この有機EL表示装置において、有機EL素子を複数積層することで実質的な発光面積を増やし、素子寿命を向上させる技術がある。例えば、並列に配置した二つのサブピクセルで1画素を構成し、各サブピクセルは、発光層を含む有機化合物層を電極で挟持した有機EL素子であって、異なる発光色を示すものを二つ積層した構成の有機EL表示装置が提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
このような積層構成の有機EL表示装置の一般的な製造方法として、シャドーマスクを用いた蒸着法により有機EL素子を形成する方法を以下に説明する。
【0004】
第一電極を成膜及びパターニングした後、第一電極の端部を覆うようにバンク層を形成すると同時に、第一電極の中央部が露出するようにバンク層に開口部を設け、さらにコンタクトホールを形成する。このコンタクトホールは、第一電極と第三電極と電源配線との接続に用いられる。
【0005】
次に、シャドーマスクを用いた蒸着法により、第一サブピクセルに第一有機化合物層を形成する共に、第二サブピクセルに第二有機化合物層を形成する。次に、第二電極を成膜及びパターニングした後、その上にシャドーマスクを用いた蒸着法により第三有機化合物層を形成する。
【0006】
有機化合物層の形成時には、コンタクトホールに有機化合物層が形成されないようにすべく、コンタクトホール部をシャドーマスクで遮蔽したり、或いは有機化合物層の蒸着後にレーザー照射等でコンタクトホール上の有機化合物膜を除去する必要がある。
【0007】
続いて、第三電極を成膜及びパターニングする。第一電極と第三電極とはコンタクトホールを介して電気的に接続されている。
【0008】
上述の製造方法において、有機化合物層上の電極のパターニングについては、フォトリソグラフィー技術を使用すると有機化合物層にダメージを与えてしまう。これは、有機化合物層は水分により劣化しやすいためである。そのため、ドライプロセスで電極を形成する必要がある。その形成方法としては、シャドーマスクを用いた蒸着やYAGレーザー(SHG、THG含む)やエキシマレーザーなどを用いたレーザーアブレーションによるパターニングが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2005−174639号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、特許文献1には、バンク層と第二電極と第三電極の平面位置関係については開示されていない。したがって、第二電極と第三電極がバンク層上において対向する領域が存在する場合には、下記の問題が発生する。
【0011】
即ち、シャドーマスクを用いて第一有機化合物層及び第二有機化合物層を蒸着する際、シャドーマスクはバンク層の表面に近接或いは接触する。そのため、シャドーマスクに異物が付着している場合、この異物がバンク層の表面に付着することがある。このように異物がバンク層の表面に付着した状態で、バンク層上に第二電極が形成されると、異物上の第二電極の表面に異物の大きさ程度の凸部が形成される。シャドーマスクに付着している異物には数μm程度の大きさのものがあるため、この第二電極の表面の凸部は数μm程度の高さとなる。
【0012】
第二電極の形成後、第三有機化合物層が形成されるが、有機EL素子における有機化合物層の総厚は1μm程度であることが好ましく、第三有機化合物層の総厚は1μm程度であることが好ましい。したがって、数μmの高さの第二電極の表面の凸部を第三有機化合物層で被覆しきれないことがある。このような箇所では、第三有機化合物層の形成後も第二電極の表面が露出していることになる。
【0013】
第三有機化合物層の形成後、第三電極が形成されるが、上述のようにバンク層上で第二電極の表面が露出した箇所がある状態でバンク層上に第三電極が形成されると、第二電極と第三電極とが接触して短絡が起こるという問題があった。
【0014】
そこで本発明の目的は、有機EL素子を複数積層した有機EL表示装置において、バンク層の表面に異物が付着した場合においても、第二電極と第三電極との短絡が起こらない有機EL表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の目的を達成すべく成された本発明の構成は以下の通りである。
【0016】
即ち、本発明に係る有機EL表示装置は、表示領域に複数の画素を備え、各画素に二以上の複数のサブピクセルが並列に配置された有機EL表示装置であって、
各サブピクセルは、対向する第一電極と第二電極との間に、発光層を含む有機化合物層をそれぞれ有し、
少なくとも一つのサブピクセルにおける対向する第二電極と第三電極との間に発光層を含む有機化合物層を有し、
前記第一電極の端部はバンク層によって覆われ、前記バンク層の開口領域においてのみ、前記第二電極と前記第三電極とが対向していることを特徴とする有機EL表示装置である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、バンク層の開口領域においてのみ、第二電極と第三電極とが対向しており、バンク層上に第二電極と第三電極とが対向する領域が存在しない。したがって、第一有機化合物層及び第二有機化合物層をシャドーマスクで蒸着する際に、シャドーマスク上の異物がバンク層の表面に付着した場合においても、第二電極と第三電極との短絡が起こらないという優れた効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】第1の実施形態の有機EL表示装置を示す平面図及び断面模式図である。
【図2】有機EL表示装置の外観を示す概略斜視図である。
【図3】第1の実施形態の有機EL表示装置の各画素の等価回路を示す説明図である。
【図4】比較形態となる有機EL表示装置を示す平面図及び断面模式図である。
【図5】第2の実施形態の有機EL表示装置を示す平面図及び断面模式図である。
【図6(a)】第2の実施形態の有機EL表示装置の各画素の等価回路を示す説明図である。
【図6(b)】第2の実施形態の有機EL表示装置の各画素の駆動方法を示す説明図である。
【図7】第3の実施形態の有機EL表示装置を示す平面図及び断面模式図である。
【図8】第3の実施形態の有機EL表示装置の各画素の等価回路を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明するが、本発明はこれらの実施形態に限定されない。なお、図面では、説明の都合上から、各層を認識可能な大きさで表しており、図面の縮尺は実際とは異なっている。また、本明細書で特に図示または記載されない部分に関しては、当該技術分野の周知または公知技術を適用する。
【0020】
以下の説明において、陽極、有機化合物層、陰極からなる構造体を有機エレクトロルミネッセンス(EL)素子と称する。また、複数の有機EL素子、平坦化層等の下地構造、駆動回路や配線構造の回路素子部、及び封止構造等からなる構造体を有機EL表示装置と称する。
【0021】
〔第1の実施形態〕
図1から図4を参照して、本発明に係る第1の実施形態の有機EL表示装置の構成を説明する。本実施形態で例示する有機EL表示装置は、基板側とは反対側(透明電極側)から有機EL素子の光を取り出す、いわゆるトップエミッション型の有機EL表示装置であり、表示装置の利用者は光取り出し側から観察することになる。図1は本発明に係る第1の実施形態の有機EL表示装置を示しており、(a)はその1画素(ピクセル)領域における平面図、(b)は(a)のA−B線断面の模式図、(c)は(a)のC−D−E線断面の模式図である。なお、図1(a)では、第一有機化合物層31、第二有機化合物層32、第三有機化合物層33を省略図示している。図2は有機EL表示装置の外観を示す概略斜視図であり、画素がマトリクス状に複数配置されて有機EL表示装置の表示領域が構成される。
【0022】
第1の実施形態の有機EL表示装置1は、基板10上に回路素子部11が形成されている。この回路素子部11には、スイッチング用トランジスタ、駆動用トランジスタ、走査信号線、情報信号線、電源線の配線構造(いずれも図示せず)が形成されている。回路素子部11上には、平坦化層12が形成されている。平坦化層12には、この平坦化層12の上部に形成される第一電極21と、駆動用トランジスタの電極41との導通をとるための第一コンタクトホール14が形成されている。さらに、平坦化層12には、第三電極23と駆動用トランジスタの電極41との導通をとるための第二コンタクトホール15が形成されている。
【0023】
そして、本実施形態の有機EL表示装置1は、1画素領域に2個の副画素(第一サブピクセルP1、第二サブピクセルP2)が並列に配置されている。
【0024】
各サブピクセルP1,P2のそれぞれにおいて、平坦化層12の上層側に、発光層を含む有機化合物層が対向する二つの電極(陽極と陰極)で挟持され積層されている。各有機化合物層は、発光層の他に、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、電子注入層等を含んでいてもよい。
【0025】
以下、有機EL素子を構成する有機化合物層及び電極の積層構成を製造工程に沿って説明する。
【0026】
各サブピクセルP1、P2において、平坦化層12上に反射機能を有する第一電極(反射電極)21が形成されている。第一電極21は、第一コンタクトホール14を介して、それぞれ駆動用トランジスタと接続されている。
【0027】
第一電極21は、光反射性の部材であることが好ましく、例えばCr、Al、Ag、Au、Pt等の材料を用いることができる。第一電極21として光反射性の部材を用いることで、光取り出し効率を向上させることができる。また第一電極21には、反射機能を上記のような光反射性部材によって確保し、電極としての機能を該光反射性部材上に形成したITO膜(インジウム錫酸化物膜)等の透明導電膜によって確保するような構成も含まれる。この場合の第一電極21の反射面は、上記光反射性部材の表面となる。第一電極21の成膜及びパターニング手法としては、公知の手法を適用することができる。
【0028】
また、第二コンタクトホール15には、第1電極21と同じ工程、同じ材料で金属層210が形成されている。この金属層210は、第1電極21のパターニング時に、回路素子部11が損傷することを低減している。
【0029】
第一電極21上には、この第一電極21の端部を覆うようにバンク層13が形成されている。バンク層13には、第一電極21の中央部が露出するように開口部が設けられている。さらにバンク層13には、第三電極23と駆動用トランジスタの電極41との導通をとるための第二コンタクトホール15が設けられている。バンク層13の材料としては、例えば、アクリル樹脂やポリイミド樹脂等の公知の材料を用いることができる。
【0030】
第一電極21上には、第一サブピクセルP1に第一有機化合物層31が、第二サブピクセルP2に第二有機化合物層32がそれぞれ形成される。第一有機化合物層31及び第二有機化合物層32の各層は、例えば、シャドーマスクを用いた蒸着法により形成される。発光層を含む第一有機化合物層31及び第二有機化合物層32の構成材料には、公知の材料を用いることができる。
【0031】
第一有機化合物層31及び第二有機化合物層32上には、第一サブピクセルP1及び第二サブピクセルP2に共通に、第二電極22が第二コンタクトホール15を覆わないようパターン形成されている。このようにパターン形成することで、第二コンタクトホール15を介して、後述する第三電極23を駆動用トランジスタに接続することができる。第二電極22の形成方法としては、第二コンタクトホール15を覆わないようにシャドーマスクを用いた蒸着法で選択的に形成する方法がプロセス上簡便で好ましい。しかし、これに限定されず、例えば、表示領域の全領域に電極材料を成膜した後に前述のレーザー加工で第二コンタクトホール15の部分を除去してもよい。また、電極材料が形成された基板を基板10と対向させてレーザーアブレーションにより選択的に転写形成してもよい。第二電極22としては、例えば、ITO(インジウム錫酸化物)、IZO(インジウム亜鉛酸化物)などの透明導電膜や、Ag、Alなどの金属材料を10nm〜30nm程度の膜厚で形成した半透過膜を用いることができる。なお、第二電極22は、表示領域外で駆動回路と接続されていてもよいし、表示領域内で駆動回路と接続されていてもよい。
【0032】
第二電極22上には、第一サブピクセルP1及び第二サブピクセルP2に共通に、第三有機化合物層33が形成されている。第三有機化合物層33の各層は、例えば、シャドーマスクを用いた蒸着法などの公知の手法で形成される。また、発光層を含む第三有機化合物層33の構成材料には、公知の材料を用いることができる。
【0033】
本実施形態の有機EL表示装置1では、第三有機化合物層33の極性が、第一有機化合物層31及び第二有機化合物層32と逆方向になるよう形成されている。このように構成することで、後述する駆動方法により、有機EL表示装置1を駆動発光することができる。なお、異なる有機化合物層の間に位置する第2電極(中間電極)22は、導電層/絶縁層/導電層のように二つ以上の導電層の間に絶縁層を有する構成とし、異なる有機化合物層を独立駆動できるよう構成されていてもよい。この場合には、第三有機化合物層33と、第一有機化合物層31及び第二有機化合物層32との極性を必ずしも逆方向にする必要はない。
【0034】
第一有機化合物層31、第二有機化合物層32及び第三有機化合物層33の形成後、第二コンタクトホール15上の有機化合物層にコンタクトホール16を形成する。コンタクトホール16の形成方法としては、例えばレーザー加工が好ましく、YAGレーザー(SHG、THG含む)、エキシマレーザーなど一般に薄膜加工に使用する公知の手法を用いることができる。これらのレーザー光を数μmに絞って走査したり、面状光源にしてコンタクトホール16を形成する部分を透過するマスクを介したりして、第一有機化合物層31及び第二有機化合物層32上に所定のパターンで照射が行なわれる。これにより、所望の位置にコンタクトホール16を形成することが可能である。コンタクトホール16の径としては、例えば2μm〜15μmが好ましい。
【0035】
第三有機化合物層33上には、各サブピクセルP1,P2に個別に、第三電極23が形成されている。第三電極23は、第二コンタクトホール15を介して(詳しくは、第二コンタクトホール15内の金属層210を介して)、それぞれ駆動用トランジスタに接続されている。第三電極23のパターン形成の手法としては、例えば、表示領域の全領域に電極材料を成膜した後に前述のレーザー加工で行ってもよいし、シャドーマスクを用いた蒸着法により選択的に形成するようにしてもよい。また、電極材料が形成された基板を基板10と対向させてレーザーアブレーションにより選択的に転写形成してもよい。第三電極23には、第二電極22と同様に、例えばITO、IZOなどの透明導電膜、AgやAlなどの金属材料を10nm〜30nm程度の膜厚で形成した半透過膜を用いることができる。
【0036】
本実施形態の有機EL表示装置1は、図1(a)、(b)に示すように、第二電極22と第三電極23とがバンク層13の開口領域においてのみ対向するよう形成されている。このように構成することで、第一有機化合物層及び第二有機化合物層をシャドーマスクで蒸着する際に、シャドーマスク上の異物がバンク層13の表面に付着した場合においても、第二電極22と第三電極23が短絡を起こさない。
【0037】
ここで図4を参照して、本実施形態の比較形態となる有機EL表示装置について説明する。図4は比較形態となる有機EL表示装置を示しており、(a)は比較形態の有機EL表示装置1’の1画素(ピクセル)領域の平面図、(b)は(a)のA−B線断面の模式図である。
【0038】
図4に示すように、比較形態の有機EL表示装置1’は、第二電極22と第三電極23がバンク層43上で対向する領域Xを有する点以外は、図1の本実施形態の有機EL表示装置1と同じ構造を有する。
【0039】
この有機EL表示装置1’では、図4の領域Xに示すように、第二電極22と第三電極23がバンク層13上で対向している。したがって、第一有機化合物層31及び第二有機化合物層32をシャドーマスクを用いて蒸着する際に、シャドーマスク上の異物がバンク層13の表面に付着した場合、以下の問題が生じる。即ち、第二電極22が異物上に形成されることによって、第二電極22の表面に凸部が生じ、この凸部を第三有機化合物層33で被覆しきれず、第三電極23と接触し短絡を起こすことがある。
【0040】
また、有機EL表示装置1の第三有機化合物層33及び第三電極23上部には、有機EL表示装置1と酸素や水分等との接触を防止する目的で、ガラス基板や封止缶等からなる封止部材(図示せず)を配設してもよい。
【0041】
本発明の有機EL表示装置は、表示装置として機能できるように、例えば赤(R)、緑(G)、青(B)の発光を生じる発光層を全て含んでいる。本発明の有機EL表示装置は、第一有機化合物層31、第二有機化合物層32、第三有機化合物層33の各発光層は赤(R)、緑(G)、青(B)のいずれかに発光するが、発光色は限定されない。
【0042】
次に、図3を参照して、本実施形態の有機EL表示装置の具体的な駆動方法について説明する。図3は、本実施形態の有機EL表示装置の各画素の等価回路の一例を示す説明図である。
【0043】
各画素は、スイッチング用トランジスタ61a,61b,61cと、駆動用トランジスタ62a,62b,62cと、積層された発光素子とコンデンサ63a,63b,63cとで構成されている。
【0044】
ここで、スイッチング用トランジスタ61a,61b,61cのゲート電極は、ゲート信号線51に接続されている。また、スイッチング用トランジスタ61a,61b,61cのソース領域は、ソース信号線52a,52b,52cに、ドレイン領域は駆動用トランジスタ62a,62b,62cのゲート電極に接続されている。
【0045】
駆動用トランジスタ62aのソース領域は電源供給線53に、ドレイン領域は第一サブピクセルP1の第一電極21に接続されている。また、駆動用トランジスタ62bのソース領域は電源供給線53に、ドレイン領域は第二サブピクセルP2の第一電極21に接続されている。さらに、駆動用トランジスタ62cのソース領域は電源供給線53に、ドレイン領域は第二サブピクセルP2の第三電極23に接続されている。
【0046】
コンデンサ63a,63b,63cは、電極のそれぞれが駆動用トランジスタ62a,62b,62cのゲート電極とGND(接地)に接続されるように形成されている。
【0047】
このように、駆動用トランジスタ62a,62b,62cと有機EL素子が直列に接続されている。有機EL素子に流れる電流をソース信号線52a,52b,52cから供給されるデータ信号に応じて駆動用トランジスタ62a,62b,62cで制御することで、有機EL素子は発光制御される。
【0048】
以上、説明した構成とすることで、第一有機化合物層31、第二有機化合物層32、第三有機化合物層33を独立に駆動することができる。
【0049】
なお、図3では、第一サブピクセルP1において、第二電極22と第一サブピクセルP1の第三電極23とに第三有機化合物層33が挟持されて構成される有機EL素子については、省略図示している。この有機EL素子については、第一サブピクセルP1の第三電極23を駆動用トランジスタ62cと接続して駆動してもよいし、駆動用トランジスタ62cと独立な駆動用トランジスタと接続して駆動してもよい。
【0050】
以上説明したように、第1の実施形態の有機EL表示装置1によれば、バンク層13の開口領域においてのみ、第二電極22と第三電極23とが対向しており、バンク層13の上に第二電極22と第三電極23とが対向する領域が存在しない。したがって、第一有機化合物層31及び第二有機化合物層32をシャドーマスクで蒸着する際に、シャドーマスク上の異物がバンク層13の表面に付着した場合でも、第二電極22と第三電極23との短絡は起こらない。
【0051】
第1の実施形態の有機EL表示装置1では、第一サブピクセルP1及び第二サブピクセルP2に共通に、第三有機化合物層33が形成され、第三有機化合物層33上に各サブピクセルP1、P2に個別に、第三電極23が形成された構成を示した。この変形例として、第一サブピクセルP1、第二サブピクセルP2のいずれか一つのサブピクセルのみに第三有機化合物層33を形成した構成としてもよい。こうすることで、第三有機化合物層33を形成しないサブピクセルにおいて、第一電極21と第二電極22に挟持された有機化合物層からの発光光の、第三有機化合物層による減衰を防止することができる。
【0052】
また、このように第三有機化合物層33を第一サブピクセルP1、第二サブピクセルP2のいずれか一つのサブピクセルのみに形成する構成の場合、第三有機化合物層33を形成しないサブピクセルにおいて、第三電極23は形成しないのが好ましい。こうすることで、第三有機化合物層33を形成しないサブピクセルにおいて、第一電極21と第二電極22に挟持された有機化合物層からの発光光の、第三電極による減衰を防止することができる。
【0053】
また、第三有機化合物層33を第一サブピクセルP1、第二サブピクセルP2のいずれか一つのサブピクセルのみに形成し、第三有機化合物層33を形成しないサブピクセルにおいて、第三電極23を形成する場合、第三有機化合物層33を形成しないサブピクセルにおいて、第二電極22と第三電極23が導通する。このため、この構成の場合は、第三有機化合物層33を形成しないサブピクセルに形成された第三電極23は、駆動用トランジスタと接続しない構成とする。これは、例えば、第三有機化合物層33を形成しないサブピクセルにおいて、第二コンタクトホール15を形成しない構成とすればよい。
【0054】
以上説明した第1の実施形態の変形例の有機EL表示装置においても、バンク層13の開口領域においてのみ、第二電極22と第三電極23とが対向しており、バンク層13の上に第二電極22と第三電極23とが対向する領域が存在しない。したがって、第1の実施形態の有機EL表示装置と同様の作用効果を奏する。
【0055】
〔第2の実施形態〕
次に、図5及び図6を参照して、第2の実施形態の有機EL表示装置の積層構成を製造工程に沿って説明する。図5は第2の実施形態の有機EL表示装置を示しており、(a)はその1画素(ピクセル)領域における平面図、(b)は(a)のA−B線断面の模式図、(c)は(a)のC−D−E線断面の模式図である。なお、図5(a)では、第一有機化合物層31、第二有機化合物層32、第三有機化合物層33を省略図示している。
【0056】
第1の実施形態では、第二電極22が第一サブピクセルP1及び第二サブピクセルP2に共通に、第三電極23が各サブピクセルP1,P2に個別に形成された積層構成を示した。第2の実施形態では、第二電極22が各サブピクセルP1,P2に個別に、第三電極23が第一サブピクセルP1及び第二サブピクセルP2に共通に形成された積層構成を示す。即ち、第1の実施形態との違いは、第二電極22と第三電極23の形成領域と各電極の駆動用トランジスタとの配線接続形態だけである。
【0057】
平坦化層12には、該平坦化層12の上部に形成される第一電極21と、駆動用トランジスタの電極41との導通をとるための第一コンタクトホール14、及び第二電極22と駆動用トランジスタの電極41との導通をとるための第二コンタクトホール15が形成されている。
【0058】
平坦化層42上に、反射機能を有する第一電極(反射電極)21が形成されている。第一電極21は、第一コンタクトホール14を介して、それぞれ駆動用トランジスタと接続されている。
【0059】
また、第二コンタクトホール15に第1電極21と同じ工程、同じ材料で金属層210が形成されている。この金属層210は、第1電極21のパターニング時に、回路素子部11が損傷することを低減している。
【0060】
第一電極21上には、この第一電極21のエッジを覆うようにバンク層13が形成されている。バンク層13には、第一電極21の中央部が露出されるように開口部が設けられている。さらに、バンク層13には、第二電極22と駆動用トランジスタの電極41との導通をとるための第二コンタクトホール15が設けられている。
【0061】
そして、第一電極21上には、第1の実施形態と同様に、第一サブピクセルP1に第一有機化合物層31が、第二サブピクセルP2に第二有機化合物層32がそれぞれ形成される。第一有機化合物層31及び第二有機化合物層32の各層は、例えば、シャドーマスクを用いた蒸着法により形成される。発光層を含む第一有機化合物層31及び第二有機化合物層32の構成材料には、公知の材料を用いることができる。第一有機化合物層31及び第二有機化合物層32の形成後、第二コンタクトホール15上の有機化合物層にコンタクトホール16を形成する。コンタクトホール16の形成方法は、第1の実施形態と同様である。
【0062】
第一有機化合物層31及び第二有機化合物層32上には、各サブピクセルP1,P2に個別に、第二電極22が形成されている。第二電極22は、第二コンタクトホール15を介して(詳しくは、第二コンタクトホール15内の金属層210を介して)、それぞれ駆動用トランジスタに接続されている。第二電極22のパターン形成の方法としては、例えば、表示領域の全領域に電極材料を成膜した後に前述のレーザー加工で行ってもよいし、シャドーマスクを用いた蒸着法により選択的に形成するようにしてもよい。また、電極材料が形成された基板を基板10と対向させてレーザーアブレーションにより選択的に転写形成してもよい。
【0063】
第二電極22上には、第一サブピクセルP1及び第二サブピクセルP2に共通に、第三有機化合物層33が形成されている。第三有機化合物層33の各層は、例えば、シャドーマスクを用いた蒸着法などの公知の手法で形成される。また、発光層を含む第三有機化合物層33の構成材料には、公知の材料を用いることができる。
【0064】
本実施形態の有機EL表示装置2では、第三有機化合物層33の極性が、第一有機化合物層31及び第二有機化合物層32と同一方向になるよう形成されている。このように構成することで、後述する駆動方法により、有機EL表示装置2を駆動発光することができる。なお、異なる有機化合物層の間に位置する第2電極(中間電極)22は、導電層/絶縁層/導電層のように二つ以上の導電層の間に絶縁層を有する構成とし、異なる有機化合物層を独立駆動できるよう構成されていてもよい。この場合には、第三有機化合物層33と、第一有機化合物層31及び第二有機化合物層32との極性を必ずしも同一方向にする必要はない。
【0065】
第三有機化合物層33上には、第一サブピクセルP1及び第二サブピクセルP2に共通に、第三電極23が形成されている。第三電極23は、表示領域外で駆動回路と接続されていてもよいし、表示領域内で駆動回路と接続されていてもよい。第三電極23のパターン形成の手法としては、例えば、表示領域の全領域に電極材料を成膜した後に前述のレーザー加工で行ってもよいし、シャドーマスクを用いた蒸着法により選択的に形成するようにしてもよい。また、電極材料が形成された基板を基板10と対向させてレーザーアブレーションにより選択的に転写形成してもよい。
【0066】
本実施形態の有機EL表示装置2は、図5(a)、(b)に示すように、第二電極22と第三電極23がバンク層13の開口領域上でのみ対向するよう形成されている。このように構成することで、第一有機化合物層31及び第二有機化合物層32をシャドーマスクで蒸着する際に、シャドーマスク上の異物がバンク層13の表面に付着した場合においても、第二電極22と第三電極23との短絡は起こらない。
【0067】
本発明の有機EL表示装置は、表示装置として機能できるように、例えば赤(R)、緑(G)、青(B)の発光を生じる発光層を全て含んでいる。本発明の有機EL表示装置は、第一有機化合物層31、第二有機化合物層32、第三有機化合物層33の各発光層は赤(R)、緑(G)、青(B)のいずれかに発光するが、発光色は限定されない。
【0068】
次に、図6(a)を参照して、第2の実施形態の有機EL表示装置の各画素の等価回路について説明する。図6(a)は、第2の実施形態の有機EL表示装置の各画素の等価回路の一例を示す説明図である。
【0069】
図6(a)に示すように、各画素は、スイッチング用トランジスタ61a,61bと駆動用トランジスタ62a,62bと積層された有機EL素子とコンデンサ63a,63bで構成されている。ここで、スイッチング用トランジスタ61a,61bのゲート電極は、ゲート信号線51に接続されている。また、スイッチング用トランジスタ61a,61bのソース領域はソース信号線52a,52bに、ドレイン領域は駆動用トランジスタ62a,62bのゲート電極に接続されている。
【0070】
駆動用トランジスタ62aのソース領域は電源供給線53に、ドレイン領域は第一サブピクセルP1の第二電極22に接続されている。また、駆動用トランジスタ62bのソース領域は電源供給線53に、ドレイン領域は第二サブピクセルP2の第二電極22に接続されている。
【0071】
コンデンサ63a,63bは、電極のそれぞれが駆動用トランジスタ62a,62bのゲート電極とGND(接地)とに接続されるように形成されている。
【0072】
このように、駆動用トランジスタ62a,62bと有機EL素子が直列に接続されている。有機EL素子に流れる電流をソース信号線52a,52bから供給されるデータ信号に応じて駆動用トランジスタ62a,62bで制御することで、有機EL素子は発光制御される。
【0073】
次に、図6(a)及び(b)を参照して、第2の実施形態の有機EL表示装置の駆動方法について説明する。図6(b)は、有機EL表示装置の駆動波形の一例を示す説明図である。
【0074】
図6(b)に示すように、時間t1において、ゲート信号線51の電位をVgに設定すると、スイッチングトランジスタ61a,61bがオン状態となる。これにより、ソース信号線52aの電位Vsig_a1及びソース信号線52bの電位Vsig_b1がスイッチングトランジスタ61a,61bを介してコンデンサ63a,63b及び駆動用トランジスタ62a,62bのゲート容量に充電される。ここで、Vsig_a1は第一有機化合物層31を発光させるために設定されたソース信号線52aの電位であり、Vsig_b1は第二有機化合物層32を発光させるために設定されたソース信号線52bの電位である。
【0075】
時間t2において、ゲート信号線51の電位が0Vに設定され、スイッチングトランジスタ61a,61bがオフ状態となり、コンデンサ63a,63bに充電された電圧が保持される。
【0076】
時間t3において、第一サブピクセルP1の第一電極21、第二サブピクセルP2の第一電極21及び第三電極23の電位がVcに設定される。このとき、電源供給線53は0Vのままなので、有機化合物層及び駆動用トランジスタ62a,62bのソースドレイン間に電位差が生じる。これにより、第一有機化合物層31に第一サブピクセルP1の第一反射電極21から正孔が注入されるとともに、第一サブピクセルP1の第二電極22から電子が注入される。また、第二有機化合物層32に第二サブピクセルP2の第一電極21から正孔が、第二サブピクセルP2の第二電極22から電子が注入される。これにより、第一有機化合物層31及び第二有機化合物層32が発光する。なお、このとき第一及び第二サブピクセルP1,P2の第三有機化合物層33には逆方向電圧が印加されるため発光しない。発光層に流れる電流は駆動用トランジスタ62a,62bで制御され、コンデンサ63a,63bに充電された電圧に応じて、駆動用トランジスタ62a,62bのソースドレイン間に電流I_a1、I_b1が流れる。この状態は、時間t4まで維持される。
【0077】
時間t4において、第一サブピクセルP1の第一電極21、第二サブピクセルP2の第一電極21及び第三電極23の電位が0Vに設定される。すると、発光層及び駆動用トランジスタ62a,62bのソースドレイン間に電位差がなくなるので、第一有機化合物層31及び第二有機化合物層32は発光しなくなる。続いて、第二サブピクセルP2の第三有機化合物層33を発光させるための信号Vsig_b2がソース信号線52bに設定される。また、第一サブピクセルP1の第三有機化合物層33を発光制御するための信号Vsig_a2がソース信号線52aに設定される。信号Vsig_a2は、第一サブピクセルP1の第三有機化合物層33を発光させるような電圧として設定してもよいし、非発光とするような電圧として設定してもよい。図6(b)では、第一サブピクセルP1の第三有機化合物層33を非発光とする電圧を設定した場合の駆動波形を示している。
【0078】
時間t5において、ゲート信号線51の電位をVgに設定すると、スイッチングトランジスタ61a,61bがオン状態となる。これにより、ソース信号線52a,52bの電位Vsig_a2,Vsig_b2がスイッチングトランジスタ61a,61bを介してコンデンサ63a,63b及び駆動用トランジスタ62a,62bのゲート容量に充電される。
【0079】
時間t6において、ゲート信号線51の電位が0Vに設定され、スイッチングトランジスタ61a,61bがオフ状態となり、コンデンサ63a,63bに充電された電圧が保持される。
【0080】
時間t7において、電源供給線53の電位がVcに設定される。このとき、第一サブピクセルP1の第一電極21、第二サブピクセルP2の第一電極21及び第三電極23の電位が0Vなので、発光層及び駆動用トランジスタ62a,62bのソースドレイン間に電位差が生じる。これにより、第二サブピクセルP2の第三有機化合物層33に第二サブピクセルP2の第二電極22から正孔が注入されるとともに、第三電極23から電子が注入され発光が得られる。発光層に流れる電流は駆動用トランジスタ62bで制御され、コンデンサ63bに充電された電圧に応じて、駆動用トランジスタ62bのソースドレイン間に電流I_b2が流れる。また、第一サブピクセルP1の第三有機化合物層33は、信号Vsig_a2の電圧に従ってコンデンサ63aに充電された電圧に応じ、発光制御される。図6(b)では、第一サブピクセルP1の第三有機化合物層33を非発光とする電圧としてVsig_a2を設定した場合の駆動波形を示しているため、駆動用トランジスタ62aのソースドレイン間には電流が流れていない。また、このとき、第一有機化合物層31、第二有機化合物層32には逆方向電圧が印加されるため発光しない。この状態は、時間t8まで維持される。
【0081】
時間t8において、電源供給線53の電位が0Vに設定される。すると、発光層及び駆動用トランジスタ62a,62bのソースドレイン間に電位差がなくなるので、第二サブピクセルP2の第三有機化合物層33は発光しなくなる。
【0082】
上述の動作を繰り返すことで、第一有機化合物層31、第二有機化合物層32、第三有機化合物層33を時分割で発光させることができる。具体的には、人間が識別できない程度、例えば60Hz程度あるいはそれ以上高い周期で駆動することにより、第一有機化合物層31の発光色と、第二有機化合物層32、第三有機化合物層33の発光色との任意の混合色の光を表現することができる。
【0083】
以上説明したように、第2の実施形態の有機EL表示装置2によれば、バンク層13の開口領域においてのみ、第二電極22と第三電極23とが対向しており、バンク層13の上に第二電極22と第三電極23とが対向する領域が存在しない。したがって、第2の実施形態の有機EL表示装置2は、基本的に第1の実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0084】
第2の実施形態の有機EL表示装置2では、第一サブピクセルP1及び第二サブピクセルP2に共通に、第三有機化合物層33が形成され、第三有機化合物層33上に各サブピクセルP1、P2に共通に、第三電極23が形成された構成を示した。
【0085】
この変形例として、第2の実施例の変形例と同様に、第一サブピクセルP1、第二サブピクセルP2のいずれか一つのサブピクセルのみに第三有機化合物層33を形成した構成としてもよい。
【0086】
第2の実施形態の変形例の有機EL表示装置においても、バンク層13の開口領域においてのみ、第二電極22と第三電極23とが対向しており、バンク層13の上に第二電極22と第三電極23とが対向する領域が存在しない。したがって、第1の実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0087】
〔第3の実施形態〕
第1及び第2の実施形態では、有機EL素子を複数積層した有機EL表示装置であって、1画素領域に2個の副画素(サブピクセル)が並列に配置された構成を説明したが、本発明は、1画素領域に3個以上の副画素を並列に配置した場合にも適用できる。
【0088】
以下図7を参照して、第3の実施形態の有機EL表示装置の積層構成を製造工程に沿って説明する。第3の実施形態の有機EL表示装置は、1画素領域に3個の副画素が並列に配置された構成を有しており、第1の実施形態の有機EL表示装置1との相違点を中心に説明する。
【0089】
図7は、第3の実施形態の有機EL表示装置を示しており、(a)はその1画素(ピクセル)領域における平面図、(b)は(a)のA−B線断面の模式図である。図8は、第3の実施形態の有機EL表示装置の各画素の等価回路を示す説明図である。なお、図7(a)では、第一有機化合物層31、第二有機化合物層32、第三有機化合物層33、第四有機化合物層34を省略図示している。また、有機EL表示装置1bについて、図7(a)のC−D−E線断面の構造は、図1(c)の有機EL表示装置1の構造と同様である。
【0090】
第3の実施形態の有機EL表示装置1bは、1画素領域に3個の副画素(第一サブピクセルP1、第二サブピクセルP2、第三サブピクセルP3)が並列に配置されている。有機EL表示装置1との違いは、第三サブピクセルP3が存在する点だけである。
【0091】
本実施形態の有機EL表示装置1bは、基板10上に回路素子部11が形成されている。回路素子部11の構成は、有機EL表示装置1と同様である。
【0092】
回路素子部11上には、平坦化層12が形成されている。平坦化層12には、第1の実施形態の有機EL表示装置1と同様に、この平坦化層12の上部に形成される第一電極21と駆動用トランジスタの電極41との導通をとるための第一コンタクトホール14が形成されている。さらに平坦化層12には、第三電極23と駆動用トランジスタの電極41との導通をとるための第二コンタクトホール15が形成されている。
【0093】
各サブピクセルP1,P2、P3のそれぞれにおいて、平坦化層12の上層側に、発光層を含む有機化合物層が対向する二つの電極(陽極と陰極)で挟持され積層されている。即ち、各サブピクセルP1、P2、P3において、平坦化層12上に反射機能を有する第一電極(反射電極)21が形成されている。第一電極21は、第一コンタクトホール14を介して、それぞれ駆動用トランジスタと接続されている。
【0094】
第一電極21上には、この第一電極21の端部を覆うようにバンク層13が形成されている。バンク層13には、第一電極21の中央部が露出するように開口部が設けられている。さらにバンク層13には、第三電極23と駆動用トランジスタの電極41との導通をとるための第二コンタクトホール15が設けられている。
【0095】
第一電極21上には、第一サブピクセルP1に第一有機化合物層31が、第二サブピクセルP2に第二有機化合物層32が、第三サブピクセルP3に第四有機化合物層34がそれぞれ形成される。第一有機化合物層31、第二有機化合物層32、第四有機化合物層34の各層は、第1の実施形態の有機EL表示装置1と同様に、シャドーマスクを用いた蒸着法等により形成される。
【0096】
第一有機化合物層31、第二有機化合物層32、第四有機化合物層34上には、第一サブピクセルP1、第二サブピクセルP2、第三サブピクセルP3に共通に、第二電極22が第二コンタクトホール15を覆わないようパターン形成されている。このようにパターン形成することで、第二コンタクトホール15を介して、後述する第三電極23を駆動用トランジスタに接続することができる。第二電極22の形成方法は、第1の実施形態の有機EL表示装置1と同様である。なお、第二電極22は、表示領域外で駆動回路と接続されていてもよいし、表示領域内で駆動回路と接続されていてもよい。
【0097】
第二電極22上には、第一サブピクセルP1、第二サブピクセルP2、第三サブピクセルP3に共通に、第三有機化合物層33が形成されている。
【0098】
本実施形態の有機EL表示装置1bでは、第三有機化合物層33の極性が、第一有機化合物層31、第二有機化合物層32、第四有機化合物層34と逆方向になるよう形成されている。このように構成することで、後述する駆動方法により、有機EL表示装置1bを駆動発光することができる。なお、異なる有機化合物層の間に位置する第二電極(中間電極)22は、導電層/絶縁層/導電層のように二つ以上の導電層の間に絶縁層を有する構成とし、異なる有機化合物層を独立駆動できるよう構成されていてもよい。この場合には、第三有機化合物層33と、第一有機化合物層31、第二有機化合物層32、第四有機化合物層34との極性を必ずしも逆方向にする必要はない。
【0099】
第一有機化合物層31、第二有機化合物層32、第四有機化合物層34及び第三有機化合物層33の形成後、有機EL表示装置1と同様に、第二コンタクトホール15上の有機化合物層にコンタクトホール16を形成する。
【0100】
第三有機化合物層33上には、各サブピクセルP1、P2、P3に個別に、第三電極23が形成されている。第三電極23は、第二コンタクトホール15を介して(詳しくは、第二コンタクトホール15内の金属層210を介して)、それぞれ駆動用トランジスタに接続されている。
【0101】
本形態の有機EL表示装置1bは、図7(a)(b)に示すように、第二電極22と第三電極23とがバンク層13の開口領域においてのみ対向するよう形成されている。このように構成することで、第一有機化合物層、第二有機化合物層、第四有機化合物層をシャドーマスクで蒸着する際に、シャドーマスク上の異物がバンク層13の表面に付着した場合においても、第二電極22と第三電極23が短絡を起こさない。
【0102】
また、本実施形態の有機EL表示装置1bの第三有機化合物層33及び第三電極23上部には、第1の実施形態と同様に、有機EL表示装置1bと酸素や水分等との接触を防止する目的で、ガラス基板や封止缶等からなる封止部材(図示せず)を配設してもよい。
【0103】
図8を参照して、本実施形態の有機EL表示装置1bの駆動方法を説明する。各画素は、スイッチング用トランジスタ61a,61b,61c,61dと、駆動用トランジスタ62a,62b,62c,62dと、積層された発光素子とコンデンサ63a,63b,63c,63dとで構成されている。
【0104】
ここで、スイッチング用トランジスタ61a,61b,61c,61dのゲート電極は、ゲート信号線51に接続されている。また、スイッチング用トランジスタ61a,61b,61c,61dのソース領域は、ソース信号線52a,52b,52c,52dに、ドレイン領域は駆動用トランジスタ62a,62b,62c,62dのゲート電極に接続されている。
【0105】
駆動用トランジスタ62aのソース領域は電源供給線53に、ドレイン領域は第一サブピクセルP1の第一電極21に接続されている。また、駆動用トランジスタ62bのソース領域は電源供給線53に、ドレイン領域は第二サブピクセルP2の第一電極21に接続されている。また、駆動用トランジスタ62dのソース領域は電源供給線53に、ドレイン領域は第三サブピクセルP3の第一電極21に接続されている。さらに、駆動用トランジスタ62cのソース領域は電源供給線53に、ドレイン領域は第二サブピクセルP2の第三電極23に接続されている。
【0106】
コンデンサ63a,63b,63c,63dは、電極のそれぞれが駆動用トランジスタ62a,62b,62c,62dのゲート電極とGND(接地)に接続されるように形成されている。
【0107】
このように、駆動用トランジスタ62a,62b,62c,62dと有機EL素子が直列に接続されている。有機EL素子に流れる電流をソース信号線52a,52b,52c,52dから供給されるデータ信号に応じて駆動用トランジスタ62a,62b,62c,62dで制御することで、有機EL素子は発光制御される。
【0108】
以上のような駆動回路を構成することで、第一有機化合物層31、第二有機化合物層32、第三有機化合物層33、第四有機化合物層34を独立に駆動することができる。
【0109】
なお、図8では、第一サブピクセルP1において、第二電極22と第一サブピクセルP1の第三電極23とに第三有機化合物層33が挟持されて成る有機EL素子について、省略図示している。また、第三サブピクセルP3において、第二電極22と第三サブピクセルP3の第三電極23とに第三有機化合物層33が挟持されて成る有機EL素子について、省略図示している。これらの有機EL素子については、第一サブピクセルP1の第三電極23及び第三サブピクセルP3の第三電極23を駆動用トランジスタ62cと接続して駆動してもよいし、駆動用トランジスタ62cと独立な駆動用トランジスタと接続して駆動してもよい。
【0110】
本実施形態の有機EL表示装置1bは、表示装置として機能できるように、例えば赤(R)、緑(G)、青(B)の発光を生じる発光層を全て含んでいる。本実施形態の有機EL表示装置1bは、第一有機化合物層31、第二有機化合物層32、第三有機化合物層33、第四有機化合物層34の各発光層は赤(R)、緑(G)、青(B)のいずれかに発光するが、発光色は限定されない。
【0111】
本実施形態の有機EL表示装置1bは、四つの有機EL素子を有する。例えば、第一有機化合物層31を緑(G)発光、第二有機化合物層32を青(B)発光、第三有機化合物層33と第四有機化合物層34を同じ赤(R)発光とし、下記のように駆動させてもよい。即ち、画像信号を表示する際には第三有機化合物層33からの発光を用い、白色を表示する際には第四有機化合物層34からの発光を用いる。このようにすることで、第三有機化合物層と第四有機化合物層の使用寿命を延ばすことができる。
【0112】
以上説明したように、本形態の有機EL表示装置1bのように1画素領域に3個の副画素が並列に配置された場合においても、バンク層13の開口領域においてのみ、第二電極22と第三電極23とが対向する構成とする。このように構成することで、第1の実施形態の有機EL表示装置1と同様の作用効果を奏する。即ち、バンク層13の上に第二電極22と第三電極23とが対向する領域が存在しない。したがって、第一有機化合物層31及び第二有機化合物層32をシャドーマスクで蒸着する際に、シャドーマスク上の異物がバンク層13の表面に付着した場合でも、第二電極22と第三電極23との短絡は起こらない。
【0113】
以上、本発明の好適な実施形態を説明したが、これは本発明の説明のための例示であり、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、上記実施形態とは異なる種々の態様で実施することができる。
【0114】
上記の実施形態では、本発明を基板側とは反対側(透明電極側)から有機EL素子の光を取り出す、いわゆるトップエミッション型の有機EL表示装置に適用したが、基板側から光を取り出すボトムエミッション型の有機EL表示装置に適用することもできる。
【符号の説明】
【0115】
13 バンク層、21 第一電極、22 第二電極、23 第三電極、31 第一有機化合物層、32 第二有機化合物層、33 第三有機化合物層、P1 第一サブピクセル、P2 第二サブピクセル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示領域に複数の画素を備え、各画素に二以上の複数のサブピクセルが並列に配置された有機EL表示装置であって、
各サブピクセルは、対向する第一電極と第二電極との間に、発光層を含む有機化合物層をそれぞれ有し、
少なくとも一つのサブピクセルにおける対向する第二電極と第三電極との間に発光層を含む有機化合物層を有し、
前記第一電極の端部はバンク層によって覆われ、前記バンク層の開口領域においてのみ、前記第二電極と前記第三電極とが対向していることを特徴とする有機EL表示装置。
【請求項2】
前記第一電極は各サブピクセルに個別に形成され、
前記第三電極は、前記第二電極の上に発光層を含む有機化合物層を有したサブピクセルに少なくとも形成され、
前記第二電極は、全てのサブピクセルに共通に形成され、
前記第二電極は、前記バンク層の開口領域においてのみ、前記第三電極と対向していることを特徴とする請求項1に記載の有機EL表示装置。
【請求項3】
前記第一電極及び前記第二電極は各サブピクセルに個別に形成され、
前記第三電極は、前記第二電極の上に発光層を含む有機化合物層を有したサブピクセルに少なくとも形成され、
前記第三電極は、前記バンク層の開口領域においてのみ、前記第二電極と対向していることを特徴とする請求項1に記載の有機EL表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6(a)】
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【図6(b)】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−59587(P2012−59587A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−202680(P2010−202680)
【出願日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】