説明

有機EL装置、有機EL装置の製造方法、電子機器

【課題】ダークスポットの発生を抑制した信頼性の高い有機EL装置を提供する。
【解決手段】発明の有機EL装置は、素子基板20に形成された有機絶縁膜14と、有機絶縁膜14上に形成された画素電極15と、画素電極15上に形成された有機発光層17と、素子基板20において有機絶縁膜14が露出した部位を覆って形成された無機絶縁膜16と、無機絶縁膜16上に形成された枠状の接合部材31を介して素子基板20と接合された封止基板30と、を備えた有機EL装置であって、接合部材31に囲まれた領域の内側に、有機絶縁膜14の一部を露出させる無機絶縁膜16の開口部H3が設けられ、開口部H3に露出した有機絶縁膜14を覆って乾燥剤32が設けられていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機EL装置、有機EL装置の製造方法、電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、有機EL(エレクトロルミネッセンス)素子は、酸素や水分に極めて弱く、すぐ劣化してしまうという欠点を有している。有機EL素子は、層間絶縁膜を介してTFTと接続される構造が一般的であるが、層間絶縁膜として適した有機絶縁膜は、水蒸気を透過し、水分を吸収しやすいという特性を持っている。そのため、従来は、層間絶縁膜と有機EL素子との間に、層間絶縁膜よりも水分透過率の小さい無機絶縁膜を形成することが行われている。
【0003】
しかしながら、層間絶縁膜の表面を無機絶縁膜で完全に覆った有機EL装置では、有機発光層形成前のベーク工程や信頼性試験における加熱処理等によって、層間絶縁膜に膜剥がれが発生し、必ずしも目的とする効果が得られないという問題があった。これは、層間絶縁膜に含まれていた水分が、熱等の外的要因によって層間絶縁膜を膨張させ、有機発光層へ拡散するためと考えられている。
【0004】
そこで、特許文献1,2では、無機絶縁膜の一部に開口部を形成した有機EL装置が提案されている。この構成によれば、層間絶縁膜からの水分の放出が無機絶縁膜によって妨げられることがないので、開口部を通して層間絶縁膜に含まれる水分を効率よく放出することができる。したがって、層間絶縁膜中の水分に起因したダークスポットの発生が防止され、信頼性に優れた有機EL装置が提供できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−188808
【特許文献2】特開2007−250244
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、無機絶縁膜の一部に開口部を形成した有機EL装置では、外部からの水分の浸入も生じ易いという不具合を有している。そのため、封止基板によって有機EL素子を封止した後、製品として出荷した場合に、無機絶縁膜で完全に層間絶縁膜の表面を覆ったものに比べて、思ったほど寿命が延びず、必ずしも期待した効果が得られないという問題があった。
【0007】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、ダークスポットの発生を抑制した信頼性の高い有機EL装置、有機EL装置の製造方法、及び電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明の有機EL装置は、素子基板に形成された有機絶縁膜と、前記有機絶縁膜上に形成された画素電極と、前記画素電極上に形成された有機発光層と、前記素子基板において前記有機絶縁膜が露出した部位を覆って形成された無機絶縁膜と、前記無機絶縁膜上に形成された枠状の接合部材を介して前記素子基板と接合された封止基板と、を備えた有機EL装置であって、前記接合部材に囲まれた領域の内側に、前記有機絶縁膜の一部を露出させる前記無機絶縁膜の開口部が設けられ、前記開口部に露出した前記有機絶縁膜を覆って乾燥剤が設けられていることを特徴とする。
この構成によれば、無機絶縁膜の一部に開口部が形成されているので、有機絶縁膜からの水分の放出が無機絶縁膜によって妨げられることがない。そのため、開口部を介して有機絶縁膜に含まれている水分を容易に放出することができる。また、外部からの水分の浸入は乾燥剤によって防止されるため、製品出荷後に開口部を介して水分が浸入することもない。さらに、封止基板で発光部を封止した後において、有機絶縁膜中の水分を乾燥剤によって吸収することができるため、例えば、製品出荷前の信頼性試験において加熱処理を行った場合でも、有機EL装置に有機絶縁膜の膜剥がれや、それによるダークスポットの発生等が生じることはない。したがって、長寿命で信頼性に優れた有機EL装置が提供できる。
【0009】
本発明においては、前記接合部材に囲まれた領域の内側に、複数の前記画素電極が形成されてなる発光領域が設けられ、前記発光領域の周囲を囲んで1つ又は複数の前記開口部が形成されていることが望ましい。
この構成によれば、無機絶縁膜の開口部が発光領域の外側に配置されているため、例えば発光領域の内部(すなわち、画素電極間の領域)に開口部を形成する場合に比べて、開口部の大きさやレイアウトを自由に設計することができる。また、乾燥剤が発光領域の周囲を囲むように配置されるため、乾燥剤の量を多くすることができ、素子基板と封止基板との接合部から侵入する水分を効果的に捕捉することができる。そのため、例えばトップエミッション構造の有機EL装置に適用した場合には、発光領域と重なる部分に配置される乾燥剤を薄くすることができ、或いは、完全に省略することにより、封止基板側からの光の取り出し効率を向上させることができる。
【0010】
本発明においては、前記乾燥剤は、前記開口部を覆って前記発光領域の周囲を囲むと共に、前記封止基板と前記無機絶縁膜の開口部に露出した前記有機絶縁膜との双方に密着していることが望ましい。
この構成によれば、乾燥剤が素子基板と封止基板との双方に密着しているので、素子基板と封止基板との接合部から侵入する水分をより効果的に捕捉することができる。
【0011】
本発明の有機EL装置の製造方法は、素子基板に形成された有機絶縁膜と、前記有機絶縁膜上に形成された画素電極と、前記画素電極上に形成された有機発光層と、前記素子基板において前記有機絶縁膜が露出した部位を覆って形成された無機絶縁膜と、前記無機絶縁膜上に形成された枠状の接合部材を介して前記素子基板と接合された封止基板と、を備えた有機EL装置の製造方法であって、前記有機発光層の形成前に、前記接合部材に囲まれた領域の内側に、前記有機絶縁膜の一部を露出させる前記無機絶縁膜の開口部を形成し、前記有機絶縁膜を加熱することにより、前記開口部を介して前記有機絶縁膜に含まれている水分を放出する工程を含み、前記有機発光層の形成後、前記封止基板を前記素子基板に接合する前又は接合する際に、前記無機絶縁膜の開口部に露出した前記有機絶縁膜を覆って乾燥剤を配置する工程を含むことを特徴とする。
この方法によれば、無機絶縁膜の一部に開口部が形成されているので、有機絶縁膜からの水分の放出が無機絶縁膜によって妨げられることがない。そのため、開口部を介して有機絶縁膜に含まれている水分を容易に放出することができる。また、外部からの水分の浸入は乾燥剤によって防止されるため、製品出荷後に開口部を介して水分が浸入することもない。さらに、封止基板で発光部を封止した後において、有機絶縁膜中の水分を乾燥剤によって吸収することができるため、例えば、製品出荷前の信頼性試験において加熱処理を行った場合でも、有機EL装置に有機絶縁膜の膜剥がれや、それによるダークスポットの発生等が生じることはない。したがって、長寿命で信頼性に優れた有機EL装置が提供できる。
【0012】
本発明においては、前記無機絶縁膜を形成する工程は、前記画素電極を覆って前記有機絶縁膜上に無機材料膜を形成する工程と、前記無機材料膜の一部を除去して前記画素電極の一部を露出させる開口部を形成する工程と、を含み、前記有機絶縁膜の一部を露出させる前記開口部の形成工程は、前記画素電極の一部を露出させる開口部の形成工程と同時に行われることが望ましい。
この方法によれば、製造工程を増加させずに効率的に開口部を形成することができる。
【0013】
本発明においては、前記封止基板と前記素子基板とを接合する工程は、前記乾燥剤が付着した前記封止基板を前記素子基板上に配置し、前記乾燥剤を前記無機絶縁膜の開口部に露出した前記有機絶縁膜に密着させる工程を含むことが望ましい。
この方法によれば、乾燥剤を素子基板と封止基板との双方に密着させることができる。そのため、素子基板と封止基板との接合部から侵入する水分を効果的に捕捉することができる。
【0014】
本発明の電子機器は、上述した本発明の有機EL装置を備えていることを特徴とする。
この構成によれば、ダークスポットの発生を抑制した信頼性の高い電子機器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】有機EL装置の一例であるラインヘッドの平面図である。
【図2】図1のA−A′断面図である。
【図3】ラインヘッドの製造方法の説明図である。
【図4】ラインヘッドの製造方法の説明図である。
【図5】ラインヘッドの製造方法の説明図である。
【図6】ラインヘッドの製造方法の説明図である。
【図7】電子機器の一例であるが画像形成装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[有機EL装置]
図1は、本発明の有機EL装置の一例であるラインヘッド1の平面図である。ラインヘッド1は、長細い矩形の素子基板20上に、複数の有機EL(エレクトロルミネセンス)素子19を配列してなる発光領域1Aを有している。なお、図1では有機EL素子19を2列にしてこれらを千鳥状に配置したが、1列の有機EL素子19で形成してもよい。
【0017】
図2は、ラインヘッド1の断面図である。ラインヘッド1は、有機EL素子19が形成された素子基板20と、素子基板20の有機EL素子19が形成された面を封止する封止基板30とを備えている。素子基板20と封止基板30は、両基板の対向領域の周縁部に設けられた枠状の接合部材31を介して接合され一体化されている。
【0018】
素子基板20は、ガラス等からなる基板10上に、半導体層123及びゲート電極124を有するTFT(スイッチング素子)12を含む回路部11を備えている。回路部11の表面には、TFT12のソース電極121及びドレイン電極122を覆って、SiOを主体とする無機絶縁膜13が形成されている。無機絶縁膜13上には、感光性、絶縁性および耐熱性を備えたアクリル系やポリイミド系等の樹脂材料を主体とする有機絶縁膜(平坦化膜)14が形成されている。
【0019】
有機絶縁膜14上には、ITO等からなる画素電極(第1電極)15が形成されている。画素電極15は、有機絶縁膜14及び無機絶縁膜13を貫通するコンタクトホールH1を介してTFT12のドレイン電極122と接続されている。
【0020】
有機絶縁膜14上には、画素電極15を覆って、SiOやSiN等の無機絶縁膜16が形成されている。無機絶縁膜16は、有機絶縁膜14よりも水分透過率が低い材料で形成され、有機絶縁膜14中に含まれる水分が有機EL素子19に拡散するのを防止している。また、無機絶縁膜16は、素子基板20において有機絶縁膜14が露出する部位全体を覆って形成され、外部から有機絶縁膜14に水分が浸入することを防止している。
【0021】
無機絶縁膜16には、画素電極15の一部を露出させる開口部H2が形成されている。無機絶縁膜16上には、開口部H2に露出した画素電極15を覆って、有機低分子材料又は有機高分子材料からなる有機発光層17が形成されている。また、有機発光層17を覆って、MgAgからなる共通電極(第2電極)18が形成されている。画素電極15、有機発光層17、及び共通電極18によって有機EL素子19が形成され、有機EL素子19が素子基板20の長手方向に沿って複数形成されることにより、素子基板20に細長いライン状の発光領域1Aが形成されている(図1参照)。
【0022】
なお、図2では、有機EL素子19を画素電極15と共通電極18との間に有機発光層17を挟持することにより形成したが、画素電極15と有機発光層17との間には、必要に応じて正孔注入層や正孔輸送層等を形成することができる。また、有機発光層17と共通電極18との間にも、必要に応じて電子輸送層や電子注入層を形成することができる。本発明では、有機発光層に付加して形成される正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、電子注入層等の層を含めて「有機発光層」と定義する。
【0023】
無機絶縁膜16には、画素電極15と重ならない領域に開口部H3が形成されている。開口部H3の位置は、図1に示すように、接合部材31と発光領域1Aとの間である。開口部H3は、発光領域1Aの周囲を囲むように、素子基板20の長手方向に沿って多数形成されている。本実施形態では、複数の開口部H3を発光領域1Aの上下にそれぞれ1列ずつ配置したが、複数列ずつ配置しても良い。また、素子基板20の長手方向だけでなく短手方向にも形成し、発光領域1Aの周囲を枠状に取り囲むように配置しても良い。さらに、素子基板20の長手方向に配列した複数の開口部H3を繋げて、連続した一本の細長い開口部H3を形成しても良い。
【0024】
無機絶縁膜16の開口部H3には、乾燥剤32が配置されている。乾燥剤32は、開口部H3に露出する有機絶縁膜14を覆うと共に、その上部が封止基板30と接触している。乾燥剤32は、開口部H3と共に発光領域1Aの周囲を囲むように配置され、素子基板20、封止基板30、及び接合部材31によって囲まれた封止空間内に収容されている。乾燥剤32は、開口部H3毎に形成しても良く、一方向に配列した複数の開口部H3に対して共通の細長いライン状の乾燥剤を形成しても良い。
【0025】
乾燥剤32は、封止空間内の雰囲気下で吸湿効果を発揮するものであれば、特に限定されることはなく種々のものが使用可能である。例えば、酸化ナトリウム(NaO)、酸化カリウム(KO)、酸化カルシウム(CaO)、酸化バリウム(BaO)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化ストロンチウム(SrO)、硫酸リチウム(LiSO)、硫酸ナトリウム(NaSO)、硫酸カルシウム(CaSO)、硫酸マグネシウム(MgSO)、硫酸コバルト(CoSO)、硫酸ガリウム(Ga(SO)、硫酸チタン(Ti(SO)、硫酸ニッケル(NiSO)、塩化カルシウム(CaCl)、塩化マグネシウム(MgCl)、塩化ストロンチウム(SrCl)、塩化イットリウム(YCl)、塩化銅(CuCl)、フッ化セシウム(CsF)、フッ化タンタル(TaF)、フッ化ニオブ(NbF)、臭化カルシウム(CaBr)、臭化セリウム(CeBr)、臭化セレン(SeBr)、臭化バナジウム(VBr)、臭化マグネシウム(MgBr)、ヨウ化バリウム(BaI)、ヨウ化マグネシウム(MgI)、過塩素酸バリウム(Ba(ClO)、過塩素酸マグネシウム(Mg(ClO)等が挙げられる。
【0026】
乾燥剤32は、必要に応じて、封止基板30の発光領域1Aと対向する面に形成しても良い。この場合、発光領域1Aの周囲に十分な厚みの乾燥剤32が形成されているため、発光領域1Aと対向する面に配置する乾燥剤の厚みは必要最小限に抑えることができる。特に、本実施形態のラインヘッド1では、乾燥剤32が素子基板20と封止基板30との双方に密着し、接合部材31と発光領域1Aとの間を隔離するように形成されているため、接合領域からの水分の浸入が効果的に抑制される。そのため、発光領域1Aと対向する面に配置する乾燥剤を完全に省略することもでき、この場合、トップエミッション型の有機EL装置に適用した場合に、封止基板30側からの光の取り出し効率を最大限高めることができる。
【0027】
無機絶縁膜16上には、発光領域1A及び乾燥剤32を内側に囲む枠状の接合部材31が形成されている。接合部材31は、エポキシ樹脂やガラスフリット等からなり、接合部材31を介して素子基板20と封止基板30とが接合されている。
【0028】
図3〜図6は、ラインヘッド1の製造方法の一例を示す工程図である。まず、図3に示すように、公知の手法を用いて、基板10上に回路部11、無機絶縁膜13、有機絶縁膜14、画素電極15を形成する。そして、有機絶縁膜14上に、画素電極15を覆って無機材料膜16Aを形成し、無機材料膜16A上にフォトレジストMを形成する。フォトレジストMには、画素電極15上及び画素電極15の非形成領域上(発光領域と接合部材との間の位置)に開口部H4,H5が形成されている。
【0029】
次に、図4に示すように、フォトレジストMをマスクとして無機材料膜16Aをウェットエッチングし、画素電極15上及び画素電極15の非形成領域上に開口部H2,H3を有する無機絶縁膜16を形成する。続いて、有機絶縁膜14を加熱し、有機絶縁膜14に含まれている水分を放出する。例えば、ドライエアー雰囲気で、有機絶縁膜14を約150〜250℃に加熱して、約5〜120分間保持する。これにより、有機絶縁膜14に含まれている水分が無機絶縁膜16の開口部H3を通って外部に放出される。
【0030】
次に、図5に示すように、公知の手法を用いて、開口部H2に露出した画素電極15上に有機発光層17と共通電極18を形成し、有機EL素子19を形成する。
【0031】
次に、図6に示すように、有機EL素子19が形成された素子基板20と、接合部材31及び乾燥剤32が付着した封止基板30とを対向配置し、乾燥剤32と開口部H3とを位置決めしつつ、接合部材31によって素子基板20と封止基板30とを接合する。このとき、乾燥剤32の厚みは、最終的に得られる封止空間のギャップ(封止基板30と開口部H3に露出した有機絶縁膜14との間の間隔)よりも厚く形成しておく。こうすることで、封止基板30を素子基板20上に加圧したときに、乾燥剤32が押しつぶされて開口部H3全体を覆うと共に、開口部H3内に露出した有機絶縁膜14と密着する。
【0032】
乾燥剤32の形成方法としては、真空蒸着法、スピンコート法、インクジェット法等の公知の手法を用いることができる。シート状の乾燥剤を封止基板30に接着してもよい。この場合、封止基板30に溝を設け、この溝に接着剤を用いて乾燥剤を固定することにより、十分な厚みの乾燥剤を形成することができる。
【0033】
本実施形態のラインヘッド1によれば、無機絶縁膜16の一部に開口部H3が形成されているので、有機絶縁膜14からの水分の放出が無機絶縁膜16によって妨げられることがない。そのため、開口部H3を介して有機絶縁膜14に含まれている水分を容易に放出することができる。また、外部からの水分の浸入は乾燥剤32によって防止されるため、製品出荷後に開口部H3を介して水分が浸入することもない。さらに、封止基板30で発光部を封止した後において、有機絶縁膜14中の水分を乾燥剤32によって吸収することができるため、例えば、製品出荷前の信頼性試験において加熱処理を行った場合でも、ラインヘッド1に有機絶縁膜14の膜剥がれや、それによるダークスポットの発生等が生じることはない。したがって、長寿命で信頼性に優れたラインヘッド1が提供できる。
【0034】
また、無機絶縁膜16の開口部H3が発光領域1Aの外側に配置されているため、例えば発光領域1Aの内部(すなわち、画素電極15間の領域)に開口部H3を形成する場合に比べて、開口部H3の大きさやレイアウトを自由に設計することができる。また、乾燥剤32が発光領域1Aの周囲を囲むように配置されるため、乾燥剤32の量を多くすることができ、素子基板20と封止基板30との接合部から侵入する水分を効果的に捕捉することができる。そのため、例えばトップエミッション構造のラインヘッドに適用した場合には、発光領域1Aと重なる部分に配置される乾燥剤を薄くすることができ、或いは、完全に省略することにより、封止基板30側からの光の取り出し効率を向上させることができる。
【0035】
以上、有機EL装置の一例としてラインヘッドを説明したが、本発明はラインヘッドに限らず、有機ELディスプレイ等、種々の有機EL装置に適用可能である。有機EL装置の構成や形状も上述のものに限定されず、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0036】
[電子機器]
図7は、本発明の有機EL装置を備えた電子機器の一例である画像形成装置1000の概略図である。画像形成装置1000は、ラインヘッド1を露光手段として組み込んだラインヘッドモジュール1003を備えている。ラインヘッドモジュール1003は、複数の有機EL素子を整列配置したラインヘッド1と、ラインヘッド1からの光を正立等倍結像させるレンズ素子を整列配置したSLアレイ(レンズアレイ)1001と、ラインヘッド1およびSLアレイ1001の外周部を保持するヘッドケース1002と、を備えている。ラインヘッド1とSLアレイアレイ1001とは、互いにアライメントされた状態でヘッドケース1002に保持されており、これによってSLアレイ1001は、ラインヘッド1からの光を感光体ドラム1004に正立等倍結像させるようになっている。本実施形態の画像形成装置1000は、上述した本発明に係るラインヘッド1を備えているため、ダークスポットの発生を抑制した信頼性の高い画像形成装置となる。
【符号の説明】
【0037】
1…ラインヘッド(有機EL装置)、1A…発光領域、14…有機絶縁膜、15…画素電極、16…無機絶縁膜、16A…無機材料膜、17…有機発光層、18…共通電極、19…有機EL素子、20…素子基板、30…封止基板、31…接合部材、32…乾燥剤、1000…画像形成装置(電子機器)、H1,H2,H3,H4,H5…開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
素子基板に形成された有機絶縁膜と、前記有機絶縁膜上に形成された画素電極と、前記画素電極上に形成された有機発光層と、前記素子基板において前記有機絶縁膜が露出した部位を覆って形成された無機絶縁膜と、前記無機絶縁膜上に形成された枠状の接合部材を介して前記素子基板と接合された封止基板と、を備えた有機EL装置であって、
前記接合部材に囲まれた領域の内側に、前記有機絶縁膜の一部を露出させる前記無機絶縁膜の開口部が設けられ、前記開口部に露出した前記有機絶縁膜を覆って乾燥剤が設けられていることを特徴とする有機EL装置。
【請求項2】
前記接合部材に囲まれた領域の内側に、複数の前記画素電極が形成されてなる発光領域が設けられ、前記発光領域の周囲を囲んで1つ又は複数の前記開口部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の有機EL装置。
【請求項3】
前記乾燥剤は、前記開口部を覆って前記発光領域の周囲を囲むと共に、前記封止基板と前記無機絶縁膜の開口部に露出した前記有機絶縁膜との双方に密着していることを特徴とする請求項2に記載の有機EL装置。
【請求項4】
素子基板に形成された有機絶縁膜と、前記有機絶縁膜上に形成された画素電極と、前記画素電極上に形成された有機発光層と、前記素子基板において前記有機絶縁膜が露出した部位を覆って形成された無機絶縁膜と、前記無機絶縁膜上に形成された枠状の接合部材を介して前記素子基板と接合された封止基板と、を備えた有機EL装置の製造方法であって、
前記有機発光層の形成前に、前記接合部材に囲まれた領域の内側に、前記有機絶縁膜の一部を露出させる前記無機絶縁膜の開口部を形成し、前記有機絶縁膜を加熱することにより、前記開口部を介して前記有機絶縁膜に含まれている水分を放出する工程を含み、
前記有機発光層の形成後、前記封止基板を前記素子基板に接合する前又は接合する際に、前記無機絶縁膜の開口部に露出した前記有機絶縁膜を覆って乾燥剤を配置する工程を含むことを特徴とする有機EL装置の製造方法。
【請求項5】
前記無機絶縁膜を形成する工程は、前記画素電極を覆って前記有機絶縁膜上に無機材料膜を形成する工程と、前記無機材料膜の一部を除去して前記画素電極の一部を露出させる開口部を形成する工程と、を含み、
前記有機絶縁膜の一部を露出させる前記開口部の形成工程は、前記画素電極の一部を露出させる開口部の形成工程と同時に行われることを特徴とする請求項4に記載の有機EL装置の製造方法。
【請求項6】
前記封止基板と前記素子基板とを接合する工程は、前記乾燥剤が付着した前記封止基板を前記素子基板上に配置し、前記乾燥剤を前記無機絶縁膜の開口部に露出した前記有機絶縁膜に密着させる工程を含むことを特徴とする請求項4に記載の有機EL装置の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の有機EL装置を備えていることを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−170768(P2010−170768A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−10632(P2009−10632)
【出願日】平成21年1月21日(2009.1.21)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】