有機EL装置およびその製造方法
【課題】低電圧で駆動でき、かつ、長寿命な有機EL表示装置を提供する。
【解決手段】有機EL素子50rの赤色発光層EMLr上に、緑色および副青色発光層EMLg,EMLb2を形成するため、赤色の発光効率を向上できる。また、第3の有機EL素子50では、発光層を厚く形成するため、通電後期の輝度劣化を抑制できる。さらに、有機EL素子50に共通して正孔ブロッキング層HBLを設けることにより、初期の輝度劣化を抑制できる。その結果、駆動電圧を低電圧化でき、かつ、有機EL素子50を長寿命化できる。
【解決手段】有機EL素子50rの赤色発光層EMLr上に、緑色および副青色発光層EMLg,EMLb2を形成するため、赤色の発光効率を向上できる。また、第3の有機EL素子50では、発光層を厚く形成するため、通電後期の輝度劣化を抑制できる。さらに、有機EL素子50に共通して正孔ブロッキング層HBLを設けることにより、初期の輝度劣化を抑制できる。その結果、駆動電圧を低電圧化でき、かつ、有機EL素子50を長寿命化できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機EL素子を備える有機EL表示装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機EL表示装置は自発光素子である有機EL素子を備えており、視野角が広い、バックライトが不要で薄型化が可能、応答速度が早い、等の特徴がある。そのため、有機EL表示装置は次世代の表示装置として注目されている。
【0003】
有機EL素子は、陽極と陰極との間に、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層および電子注入層を積層した構造であり、これら各層は単層であるのが一般的である(例えば特許文献1)。しかしながら、このような構造の有機EL素子の場合、発光効率があまり高くなく、駆動電圧を高くせざるを得ない。また、陽極から注入された正孔が発光層を通過して電子輸送層に漏れ出すと、電子輸送層が劣化し、有機EL素子の寿命が短くなってしまうという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2597377号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、低電圧で駆動でき、かつ、長寿命な有機EL表示装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、基板上に形成される第1電極と、前記第1電極と対向する第2電極と、前記第1および第2電極間に形成され、第1発光色を発する能力を持った第1発光層と、を有する第1有機EL素子と、前記基板上に形成される第3電極と、前記第3電極と対向する第4電極と、前記第3および第4電極間に形成され、前記第1発光色の中心波長よりも長い中心波長の第2発光色を発する能力を持った第2発光層と、を有し、前記第2発光層の上面に前記第1発光層の少なくとも一部が延存している第2有機EL素子と、前記基板上に形成される第5電極と、前記第5電極と対向する第6電極と、前記第5および第6電極間に形成され、前記第2発光色の中心波長よりも長い中心波長の第3発光色を発する能力を持った第3発光層と、を有し、前記第3発光層の上面に前記第1および第2発光層の少なくとも一部が延存している第3有機EL素子と、を備え、前記第1および第2電極間に形成される前記第1発光層の厚さは、前記第2および第3発光層の上面に延存している第1発光層の厚さよりも厚いことを特徴とする有機EL表示装置が提供される。
【0007】
また、本発明の一態様によれば、基板上に形成される第1電極と、前記第1電極と対向する第2電極と、前記第1および第2電極間に形成され、第1発光色を発する能力を持った第1発光層と、を有する第1有機EL素子と、前記基板上に形成される第3電極と、前記第3電極と対向する第4電極と、前記第3および第4電極間に形成され、前記第1発光色の中心波長よりも長い中心波長の第2発光色を発する能力を持った第2発光層と、を有し、前記第2発光層の上面に前記第1発光層の少なくとも一部が延存している第2有機EL素子と、前記基板上に形成される第5電極と、前記第5電極と対向する第6電極と、前記第5および第6電極間に形成され、前記第2発光色の中心波長よりも長い中心波長の第3発光色を発する能力を持った第3発光層と、を有し、前記第3発光層の上面に前記第1発光層の少なくとも一部が延存している第3有機EL素子と、を備え、前記第1および第2電極間に形成される前記第1発光層の厚さは、前記第2および第3発光層の上面に延存している第1発光層の厚さよりも厚いことを特徴とする有機EL表示装置が提供される。
【0008】
また、本発明の一態様によれば、基板上に形成される第1電極と、前記第1電極と対向する第2電極と、前記第1および第2電極間に形成され、第1発光色を発する能力を持った第1発光層と、を有する第1有機EL素子と、前記基板上に形成される第3電極と、前記第3電極と対向する第4電極と、前記第3および第4電極間に形成され、前記第1発光色の中心波長よりも長い中心波長の第2発光色を発する能力を持った第2発光層と、を有し、前記第2発光層の上面に前記第1発光層の少なくとも一部が延存している第2有機EL素子と、前記基板上に形成される第5電極と、前記第5電極と対向する第6電極と、前記第5および第6電極間に形成され、前記第2発光色の中心波長よりも長い中心波長の第3発光色を発する能力を持った第3発光層と、を有し、前記第3発光層の上面に前記第1発光層の少なくとも一部が延存している第3有機EL素子と、を備え、前記第1および第2電極間に形成される前記第1発光層の厚さは、前記第2および第3発光層の上面に延存している第1発光層の厚さよりも厚いことを特徴とする有機EL表示装置が提供される。
【0009】
また、本発明の一態様によれば、基板上にそれぞれ離隔して第1乃至第3電極を形成する工程と、前記第1乃至第3電極の上方にそれぞれ、正孔輸送層を順に形成する工程と、前記第1電極に対応する前記正孔輸送層上に、第1のドーパントを含有し第1の色の光で発光する第1発光層を形成する工程と、前記第2電極に対応する前記正孔輸送層上に、第2のドーパントを含有し第2の色の光で発光する第2発光層を形成する工程と、前記第1発光層上、前記第2発光層上および前記第3電極に対応する前記正孔輸送層上にそれぞれ、第3のドーパントを含有し第3の色で発光する第3発光層を、前記第1発光層および前記第2発光層上に形成される前記第3発光層の膜厚より前記第3電極上に形成される前記第3発光層の膜厚を厚く形成する工程と、前記第3発光層の上方に電子輸送層を順に形成する工程と、を備えることを特徴とする有機EL表示装置の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、有機EL表示装置の駆動電圧の低電圧化および長寿命化ができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態に係る有機EL表示装置の一画素の断面図。
【図2】有機EL素子50r,50g,50bの断面図。
【図3】有機EL素子50rの発光効率を示すグラフ。
【図4】有機EL素子50r,50g,50bの輝度の時間変化を、正孔ブロッキング層HBLの有無で比較したグラフ。
【図5】有機EL素子50bの輝度の時間変化を、青色発光層の膜厚を変化させて比較したグラフ。
【図6】図2の有機EL素子50r,50g,50bの変形例。
【図7】図2の有機EL素子50r,50g,50bの別の変形例。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る有機EL表示装置およびその製造方法の実施形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0013】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の一実施形態に係る有機EL表示装置の一画素の断面図である。有機EL表示装置は、配線基板10と、TFT30r,30g,30bと、金属反射層MRLr,MRLg,MRLbと、有機絶縁層35と、有機EL素子50r,50g,50bと、隔壁70と、を備えている。同図は、有機EL素子50r,50g,50bが発する光を上面から取り出す上面発光素子構成の例である。
【0014】
配線基板10は、ガラス基板1と、アンダーコート層2と、ゲート絶縁膜3と、層間絶縁膜4と、有機絶縁層5とを有する。ガラス基板1上に形成されるアンダーコート層2は、例えばSiNxあるいはSiOxから形成される。このアンダーコート層2上に、TFT30r,30g,30b、不図示の選択素子、画素容量および映像信号線等の各種配線が形成される。
【0015】
TFT30rは、ゲート絶縁膜3と、ゲート電極21rと、半導体領域に形成されるドレイン領域22rおよびソース領域23rとを有する。TFT30rのドレイン電極24は有機EL素子50rの陽極ANDrと接続され、映像信号電圧に応じた電流を有機EL素子50rに流す。TFT50g,TFT50bも同様の構成である。このTFT30r,30g,30bは層間絶縁膜4および有機絶縁層5により覆われ、他の素子と分離される。層間絶縁膜4は例えばSiO2であり、有機絶縁層5は例えば樹脂材料により形成される。
【0016】
金属反射層MRLr,MRLg,MRLbは有機絶縁層5上に形成され、有機EL素子50r,50g,50bが下面に向かって発する光を上面に反射する。MRLr,MRLg,MRLbは有機絶縁層35により互いに絶縁される。
【0017】
有機EL素子50r,50g,50bはガラス基板1上にそれぞれ離隔して形成される。有機EL素子50rは、陽極ANDrと、有機物層ORGrと、陰極CTDとを有する。陽極ANDrは、例えばITO(Indium Tin Oxide)を用いて金属反射層MRLr上に形成される、光透過性の電極である。有機物層ORGrはTFT30rが流す電流の大きさに応じた輝度で発光する。陰極CTDは、例えば95%のマグネシウムおよび5%の銀の混合物からなる半透明の電極である。
【0018】
有機EL素子50bは青色(第1発光色)を発する能力を持つ発光層を有する。有機EL素子50gは青色の中心波長よりも長い中心波長の緑色(第2発光色)を発する能力を持つ発光層を有する。有機EL素子50bは緑色の中心波長よりも長い中心波長の赤色(第3発光色)を発する能力を持つ発光層を有する。また、有機物層ORGr,ORGg,ORGbの構成はそれぞれ異なっており、後述する。これらの点を除いて、有機EL素子50r,50g,50bは同様の構成である。また、図1は、陰極CTDが有機EL素子50r,50g,50bで共通して用いられる例を示している。
【0019】
隔壁70は隣接する有機EL素子50r,50g,50b間を電気的に分離するものであり、例えば樹脂材料により形成される。
【0020】
図1は、一画素の断面図を示しており、この画素をマトリクス状に複数個配置することにより、例えば10インチの有機EL表示装置を構成する。
【0021】
図2(a)〜(c)は、有機EL素子50r,50g,50bの断面図である。これらは、図2には不図示の金属反射層MRLr,MRLg,MRLb上に形成される。
【0022】
赤色の光を発する有機EL素子(第3有機EL素子)50rは、陽極ANDrと、正孔注入層HIL(Hole Injection Layer)と、第1正孔輸送層HTL(Hole Transport Layer)1と、第2正孔輸送層HTL2と、赤色発光層EML(Emitting Layer)rと、緑色発光層EMLgと、副青色発光層EMLb2と、正孔ブロッキング層HBL(Hole Blocking Layer)と、電子輸送層ETL(Electron Transport Layer)と、電子注入層EIL(Electron Injection Layer)と、陰極CTDとを有する。赤色発光層EMLrの上面の緑色発光層EMLgおよび副青色発光層EMLbは、有機EL素子50gおよび有機EL素子50bの発光層の一部が延存したものである。陽極ANDrと陰極CTDを除いた部分が有機物層ORGrである。金属反射層MRLrの上面から陰極CTDの下面までの厚さは、例えば126.5nmである。
【0023】
緑色の光を発する有機EL素子(第2有機EL素子)50gは、陽極ANDgと、正孔注入層HILと、第1正孔輸送層HTL1と、第3正孔輸送層HTL3と、緑色発光層EMLgと、副青色発光層EMLb2と、正孔ブロッキング層HBLと、電子輸送層ETLと、電子注入層EILと、陰極CTDとを有する。緑色発光層EMLgの上面の副青色発光層EMLbは、有機EL素子50bの発光層の一部が延存したものである。陽極ANDgと陰極CTDを除いた部分が有機物層ORGgである。金属反射層MRLgの上面から陰極CTDの下面までの厚さは、例えば102.5nmである。
【0024】
青色の光を発する有機EL素子(第1有機EL素子)50bは、陽極ANDbと、正孔注入層HILと、第1正孔輸送層HTL1と、第4正孔輸送層HTL4と、第5正孔輸送層HTL5緑色発光層EMLgと、主青色発光層EMLb1と、副青色発光層EMLb2と、正孔ブロッキング層HBLと、電子輸送層ETLと、電子注入層EILと、陰極CTDとを有する。陽極ANDbと陰極CTDを除いた部分が有機物層ORGbである。金属反射層MRLbの上面から陰極CTDの下面までの厚さは、例えば199.5nmである。主および副青色発光層EMLb1,EMLb2の材料は、同一でもよいし、異なっていてもよい。
【0025】
正孔注入層HILの材料は陽極からの正孔の注入効率が高い材料であり、例えばアモルファスカーボンである。また、この正孔注入層HILを設けることで、ITOからなる陽極AND上に直接第1正孔輸送層HTL1を形成する場合に比べて、界面特性を向上できる。第1〜第5正孔輸送層HTL1〜HTL5は正孔を発光層に輸送する。第2〜第5正孔輸送層HTL2〜HTL5は、有機EL素子50r,50g,50bの厚さがそれぞれ上記の値となるように調整するためにも用いられる。
【0026】
第1〜第5正孔輸送層の材料は、同一でもよいし、異なっていてもよい。異なる材料とする場合、厚く形成する必要がある正孔輸送層は廉価な材料を用い、発光層EMLr,EMLg,EMLb1の直下に形成される各正孔輸送層は、各発光層と相性がよい材料を用いてもよい。
【0027】
各発光層は、ホストと、ホストに添加された数%のドーパントからなる。発光層に電流が流れると、ドーパントはホストからエネルギーを受け取り、ドーパントの種類に応じて赤色(第1の色)、緑色(第2の色)および青色(第3の色)でそれぞれ発光する。
【0028】
正孔ブロッキング層(キャリアブロッキング層)HBLは陽極から注入された正孔(キャリア)を発光層に留め、電子輸送層ETLに漏れ出すのを抑制する。電子注入層EILは陽極から電子を注入し、電子輸送層ETLはこの電子を発光層に輸送する。
【0029】
本実施形態では、有機EL素子50rの赤色発光層EMLr上に副青色発光層EMLb2が形成され、有機EL素子50gの緑色発光層EMLg上に副青色発光層EMLb2が形成され、さらに、有機EL発光素子50bの主および副青色発光層EMLb1,EMLb2の合計膜厚は、有機EL素子50r,50bの副青色発光層EMLb2の膜厚より厚いことを特徴とする。このような構成にすることにより、有機EL素子50rの発光効率が向上するとともに、有機EL素子50bの輝度劣化を抑制できる。
【0030】
また、有機EL素子50r,50g,50bにおける第1正孔輸送層HTL1および副青色発光層EMLb2から上の層と、有機EL50r,50gにおける緑色発光層EMLgとを、同じ材料を用いて形成するため、材料の利用効率を向上でき、製造コストを抑制できる。
【0031】
有機EL素子50rは以下のように動作する。有機EL素子50rの陽極ANDrおよび陰極CTD間に電圧が印加されると、正孔注入層HILから正孔が、電子注入層EILから電子がそれぞれ発光層EMLr,EMLg,EMLb2に注入される。これらの発光層で正孔と電子が再結合すると、励起子が発生する。この励起子が基底状態に戻る際にドーパントの種類に応じた波長の光を発する。
【0032】
発光層は図2の横方向にはほとんど発光せず、主に上または下方向に発光する。発光層が上方向に発した光のうちの一部は陰極CTDを透過して外部に取り出される。残りの光は陰極CTDに反射されて下方向に向かう。下方向に向かう光は、透明な陽極ANDrの下に設けられる金属反射層MRLrで反射され、上方向に向かう。陰極CTDと金属反射層MRLrとの間で光が反射することにより、発光層が発した光のうち、共振波長の光だけが増幅される。その結果、ピーク強度が高く、幅が狭いスペクトルを有する光を取り出すことができ、表示装置の色再現範囲を拡大できる(マイクロキャビティ効果)。
【0033】
有機EL素子50g,50bの動作も同様である。
【0034】
これら有機EL素子50r,50g,50bを備える有機EL表示装置は以下のように製造される。まず、陽極ANDr,ANDg,ANDb上に、有機EL素子50r,50g,50bに共通の正孔注入層HILおよび第1正孔輸送層HTL1を形成する。その後、陽極ANDrに対応する第1正孔輸送層HTL1上に第2正孔輸送層HTL2を、陽極ANDgに対応する第1正孔輸送層HTL1上に第3正孔輸送層HTL3を、陽極ANDbに対応する第1正孔輸送層HTL1上に第4および第5正孔輸送層HTL4,HTL5を、それぞれ形成する。
【0035】
続いて、第2正孔輸送層HTL2上に赤色発光層EMLrを形成する。さらに、赤色発光層EMLr上および第3正孔輸送層HTL3上に緑色発光層EMLgを形成する。また、赤色発光層EMLrを形成する前もしくは後、または、緑色発光層EMLgの形成後に、第5正孔輸送層HTL5上に主青色発光層EMLb1を形成する。その後、緑色発光層EMLgおよび主青色発光層EMLb1の上に、有機EL素子50r,50g,50bに共通の副青色発光層EMLb2を形成する。
【0036】
その後、副青色発光層EMLb2上に、正孔ブロッキング層HBL、電子輸送層ETL、電子注入層EILを形成する。
【0037】
このように製造すると、有機EL素子50rの緑色発光層EMLgと、有機EL素子50gの緑色発光層EMLgの膜厚は等しくなる。さらに、副青色発光層EMLb2から上の各層は、有機EL素子50r,50g,50bに共通して同時に形成されるため、どの有機EL素子においても膜厚は等しくなる。これらを共通して形成することで、製造コストを抑制できる。
【0038】
なお、主および副青色発光層EMLb1,EMLb2を同一の材料とする場合は、主青色発光層EMLb1の形成を省略し、代わりに、有機EL素子50bのみ、副青色発光層EMLb2を厚く形成すればよい。
【0039】
次に、有機EL素子50r,50g,50bの特性について説明する。
【0040】
図3は、有機EL素子50rの発光効率を示すグラフであり、横軸は電流密度、縦軸は正規化した発光効率である。同図の実施素子とは、図2(a)に示す有機EL素子50rであり、比較素子とは、図2(a)の緑色発光層EMLgおよび副青色発光層EMLb2にドーパントを添加していない有機EL素子である。
【0041】
図3のグラフは以下のようにして得られたものである。まず、有機EL素子に電流を流し、電流値を電流計で測定する。その電流値を有機EL素子の面積で除した値を横軸の電流密度とする。一方、有機EL素子が発する光の輝度を輝度計で測定し、その輝度を電流密度で除した値を発光効率とする。各電流密度で発光効率を測定した後、比較素子の最大発光効率で発光効率を正規化した値を縦軸の正規化発光効率とする。
【0042】
図3から分かるように、緑色および副青色発光層EMLg,EMLb2にドーパントを添加することにより、発光効率が約2.2倍になっている。このように発光効率が向上するため、駆動電圧を低減できる。
【0043】
発光効率が向上する理由は、まず、緑色および副青色発光層EMLg,EMLb2が、赤色発光層EMLrに注入された正孔が電子輸送層ETLに漏れ出すのを抑制しているためと考えられる。赤色より、緑色および青色の方がエネルギーが高いため、赤色発光層EMLrより緑色および副青色発光層EMLg,EMLb2の方がバンドギャップが大きい。したがって、正孔注入層HILおよび正孔輸送層HTL1,HTL2から注入された正孔の多くは緑色発光層EMLg側に移動できず、赤色発光層EMLrに留まる。そのため、正孔が赤色発光層EMLrで効率よく電子と再結合し、結果として、発光効率が向上する。
【0044】
また、別の理由として、発光層界面での局所的な蓄積電子による消光を抑制できることが考えられる。図3の比較素子の場合、緑色発光層EMLgにドーパントが添加されていないため、赤色発光層EMLrと緑色発光層EMLgとの界面に電子が蓄積される。この蓄積された電子が発光層EMLrで発生した励起子と相互作用すると、消光してしまう。これに対し、実施素子である有機EL素子50rの場合、ドーパントが添加された緑色および副青色発光層EMLg,EMLb2が設けられるため、緑色発光層EMLgと副青色発光層EMLb2との界面に電子が蓄積される。ところが、緑色発光層EMLgと副青色発光層EMLb2との界面は、赤色発光層EMLrと離れているために、励起子との相互作用は小さい。その結果、消光が抑制され、発光効率が向上する。
【0045】
さらに、上述したように、正孔が赤色発光層EMLrに留まるため、主に赤色発光層EMLrが発光し、緑色および副青色発光層EMLg,EMLb2からの発光はわずかである。しかし、これらの層からの緑色および青色の発光は、よりエネルギーが低い赤色へと変換されるため(色変換効果)、さらに赤色の発光効率を向上することになる。
【0046】
このように、有機EL素子50rの赤色発光層EMLr上に、緑色および副青色発光層EMLg,EMLb2を形成することにより、赤色の発光効率を向上でき、駆動電圧を低電圧化できる。
【0047】
図4は、有機EL素子50r,50g,50bの輝度の時間変化を、正孔ブロッキング層HBLの有無で比較したグラフであり、横軸は任意に正規化した時間、縦軸は初期の輝度で正規化した輝度である。同図(a)〜(c)はそれぞれ有機EL素子50r,50g,50bの正規化輝度を示す。副青色発光層EMLb2の影響を取り除き、正孔ブロッキング層HBLの有無による寿命の違いのみを検証するため、同図の実施素子は、図2(a)〜(c)において、副青色発光層EMLb2を設けない有機EL素子50r,50g,50bとしている。なお、副青色発光層EML2を設けない代わりに、電子輸送層ETLを厚く形成して、全体の膜厚は図2(a)〜(c)と等しくしている。また、比較素子とは、実施素子において、正孔ブロッキング層HBLを形成していない有機EL素子である。
【0048】
図4のグラフは、有機EL素子に一定の電流を流しつつ、各時間における輝度を輝度計で測定し、時間0における輝度で正規化して得られたものである。なお、図4は加速試験により得られた特性であるため、横軸に示す時間も正規化している。
【0049】
図4から分かるように、比較素子に比べて、実施素子では通電初期の輝度劣化が抑制されている。正孔ブロッキング層HBLがない場合、発光層から電子輸送層ETLに漏れ出した正孔により電子輸送層ETLが劣化し、通電初期に輝度が大きく低下してしまう。これに対し、実施素子では、正孔ブロッキング層HBLを設けるため、電子輸送層ETLに漏れ出す正孔が少なくなり、初期の輝度劣化を抑制できる。その結果、有機EL素子50r,50g,50bを長寿命化できる。
【0050】
このように、正孔ブロッキング層HBLを設けることにより、通電初期の輝度劣化を抑制できる。なお、正孔ブロッキング層HBLは必須の構成ではなく、輝度劣化があまり問題にならない場合等には、正孔ブロッキング層HBLを設けなくてもよい。
【0051】
図4では、通電初期の輝度劣化後、例えば、図4の正規化時間25以降の輝度劣化は、正孔ブロッキング層HBLの有無で、ほとんど差異はない。特に、正規化時間150での、第1および第2の有機EL素子50r,50gの輝度劣化はわずかに数%程度であるが、第3の有機EL素子50は、正孔ブロッキング層HBLを設けた場合でも10%を超えており、通電後期の輝度劣化は十分に改善されてはいない。
図5は、有機EL素子50bの輝度の時間変化を、青色発光層の膜厚を変化させて比較したグラフである。横軸および縦軸は図4と同様であり、図4と同様の測定により得られたグラフである。同図の実施素子は図2(c)に示す有機EL素子50bである。比較素子は図4(c)の実施素子と同じ素子であり、図2(c)において副青色発光層EMLb2を設けない代わりに、電子輸送層ETLを厚く形成して、全体の膜厚を図2(c)と等しくしたものである。すなわち、実施素子の主および副青色発光層EMLb1,EMLb2を合わせた膜厚は、比較素子の主青色発光層EMLb1の膜厚より厚い。
【0052】
図5から分かるように、有機EL素子50bの青色発光層EMLb1,EMLb2を厚く形成することにより、通電後期(例えば正規化時間25以降)の輝度劣化を抑制できる。
【0053】
このように、本実施形態では、有機EL素子50rの赤色発光層EMLr上に、緑色および副青色発光層EMLg,EMLb2を形成するため、赤色の発光効率を向上できる。また、有機EL素子50bの発光層を厚く形成するため、有機EL素子50bの通電後期の輝度劣化を抑制できる。さらに、有機EL素子50r,50g,50bに共通して正孔ブロッキング層HBLを設けることにより、通電初期の輝度劣化を抑制できる。その結果、駆動電圧を低電圧化でき、かつ、有機EL素子50r,50g,50bを長寿命化できる。また、副青色発光層EMLb2から上の各層は、有機EL素子50r,50g,50bで共通に用いるため、製造コストを抑制できる。
【0054】
なお、正孔輸送層等の膜厚は、各有機EL素子50r,50g,50bが発する光が金属反射層と陰極との間で反射し、共振動作を行うのに適した厚さに調整すればよい。この厚さは、取り出す光の波長、各層の屈折率等に基づいて算出できるものであり、算出された厚さでマイクロキャビティ効果を実験的に確認してもよい。具体的には、各層の材料に関わらず、この厚さを、有機EL素子50rでは110nm〜130nm、有機EL素子50gでは85nm〜105nm、有機EL素子50bでは182nm〜202nmとすればよい。
【0055】
図6は、図2の有機EL素子50rの変形例である。図6(a)では、図2(a)の有機EL素子50rにおいて、緑色発光層EMLgを設けない代わりに、赤色発光層EMLrを厚く形成する。図6(b)および(c)の構造は、それぞれ図2(b)および(c)と同様である。
【0056】
図7は、図2の有機EL素子50rの別の変形例である。図7では、図2(a)の有機EL素子50rにおいて、緑色発光層EMLgを設けない代わりに、青色発光層EMLbを形成する。この場合、青色発光層EMLbの材料は、主または副青色発光層EMLb1,EMLb2のいずれかの材料と同一でもよいし、異なっていてもよい。青色発光層EMLbの材料および膜厚を副青色発光層EMLb2と同一にすることにより、青色発光層EMLbおよび副青色発光層EMLb2を同時に形成できるため、製造プロセスを簡略化できる。図7(b)および(c)の構造は、それぞれ、図2(b)および(c)と同様である。
【0057】
図6および図7の有機EL素子50も、図2の有機EL素子50と同様に、厚く形成された赤色発光層EMLrと副青色発光層EMLb2(図6)または青色発光層EMLb,EMLb2(図7)が、発光層界面での局所的な蓄積キャリアによる消光を抑制し、かつ、正孔が電子輸送層ETLに漏れ出すのを抑制するため、赤色の発光効率を向上できる。
【0058】
本実施形態では、陰極CTDが有機EL素子に共通に設けられる例を示したが、各有機EL素子に対応して、別個に設けられてもよい。
【0059】
上記の記載に基づいて、当業者であれば、本発明の追加の効果や種々の変形を想到できるかもしれないが、本発明の態様は、上述した個々の実施形態には限定されるものではない。特許請求の範囲に規定された内容およびその均等物から導き出される本発明の概念的な思想と趣旨を逸脱しない範囲で種々の追加、変更および部分的削除が可能である。
【符号の説明】
【0060】
50r,50g,50b 有機EL素子
MRLr,MRLg,MRLb 金属反射層
ANDr,ANDg,ANDb 陽極
ORGr,ORGg,ORGb 有機物層
HIL 正孔注入層
HTL1〜HTL5 正孔輸送層
EMLr 赤色発光層
EMLg 緑色発光層
EMLb,EMLb1,EMLb2 青色発光層
HBL 正孔ブロッキング層
ETL 電子輸送層
EIL 電子注入層
CTD 陰極
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機EL素子を備える有機EL表示装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機EL表示装置は自発光素子である有機EL素子を備えており、視野角が広い、バックライトが不要で薄型化が可能、応答速度が早い、等の特徴がある。そのため、有機EL表示装置は次世代の表示装置として注目されている。
【0003】
有機EL素子は、陽極と陰極との間に、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層および電子注入層を積層した構造であり、これら各層は単層であるのが一般的である(例えば特許文献1)。しかしながら、このような構造の有機EL素子の場合、発光効率があまり高くなく、駆動電圧を高くせざるを得ない。また、陽極から注入された正孔が発光層を通過して電子輸送層に漏れ出すと、電子輸送層が劣化し、有機EL素子の寿命が短くなってしまうという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2597377号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、低電圧で駆動でき、かつ、長寿命な有機EL表示装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、基板上に形成される第1電極と、前記第1電極と対向する第2電極と、前記第1および第2電極間に形成され、第1発光色を発する能力を持った第1発光層と、を有する第1有機EL素子と、前記基板上に形成される第3電極と、前記第3電極と対向する第4電極と、前記第3および第4電極間に形成され、前記第1発光色の中心波長よりも長い中心波長の第2発光色を発する能力を持った第2発光層と、を有し、前記第2発光層の上面に前記第1発光層の少なくとも一部が延存している第2有機EL素子と、前記基板上に形成される第5電極と、前記第5電極と対向する第6電極と、前記第5および第6電極間に形成され、前記第2発光色の中心波長よりも長い中心波長の第3発光色を発する能力を持った第3発光層と、を有し、前記第3発光層の上面に前記第1および第2発光層の少なくとも一部が延存している第3有機EL素子と、を備え、前記第1および第2電極間に形成される前記第1発光層の厚さは、前記第2および第3発光層の上面に延存している第1発光層の厚さよりも厚いことを特徴とする有機EL表示装置が提供される。
【0007】
また、本発明の一態様によれば、基板上に形成される第1電極と、前記第1電極と対向する第2電極と、前記第1および第2電極間に形成され、第1発光色を発する能力を持った第1発光層と、を有する第1有機EL素子と、前記基板上に形成される第3電極と、前記第3電極と対向する第4電極と、前記第3および第4電極間に形成され、前記第1発光色の中心波長よりも長い中心波長の第2発光色を発する能力を持った第2発光層と、を有し、前記第2発光層の上面に前記第1発光層の少なくとも一部が延存している第2有機EL素子と、前記基板上に形成される第5電極と、前記第5電極と対向する第6電極と、前記第5および第6電極間に形成され、前記第2発光色の中心波長よりも長い中心波長の第3発光色を発する能力を持った第3発光層と、を有し、前記第3発光層の上面に前記第1発光層の少なくとも一部が延存している第3有機EL素子と、を備え、前記第1および第2電極間に形成される前記第1発光層の厚さは、前記第2および第3発光層の上面に延存している第1発光層の厚さよりも厚いことを特徴とする有機EL表示装置が提供される。
【0008】
また、本発明の一態様によれば、基板上に形成される第1電極と、前記第1電極と対向する第2電極と、前記第1および第2電極間に形成され、第1発光色を発する能力を持った第1発光層と、を有する第1有機EL素子と、前記基板上に形成される第3電極と、前記第3電極と対向する第4電極と、前記第3および第4電極間に形成され、前記第1発光色の中心波長よりも長い中心波長の第2発光色を発する能力を持った第2発光層と、を有し、前記第2発光層の上面に前記第1発光層の少なくとも一部が延存している第2有機EL素子と、前記基板上に形成される第5電極と、前記第5電極と対向する第6電極と、前記第5および第6電極間に形成され、前記第2発光色の中心波長よりも長い中心波長の第3発光色を発する能力を持った第3発光層と、を有し、前記第3発光層の上面に前記第1発光層の少なくとも一部が延存している第3有機EL素子と、を備え、前記第1および第2電極間に形成される前記第1発光層の厚さは、前記第2および第3発光層の上面に延存している第1発光層の厚さよりも厚いことを特徴とする有機EL表示装置が提供される。
【0009】
また、本発明の一態様によれば、基板上にそれぞれ離隔して第1乃至第3電極を形成する工程と、前記第1乃至第3電極の上方にそれぞれ、正孔輸送層を順に形成する工程と、前記第1電極に対応する前記正孔輸送層上に、第1のドーパントを含有し第1の色の光で発光する第1発光層を形成する工程と、前記第2電極に対応する前記正孔輸送層上に、第2のドーパントを含有し第2の色の光で発光する第2発光層を形成する工程と、前記第1発光層上、前記第2発光層上および前記第3電極に対応する前記正孔輸送層上にそれぞれ、第3のドーパントを含有し第3の色で発光する第3発光層を、前記第1発光層および前記第2発光層上に形成される前記第3発光層の膜厚より前記第3電極上に形成される前記第3発光層の膜厚を厚く形成する工程と、前記第3発光層の上方に電子輸送層を順に形成する工程と、を備えることを特徴とする有機EL表示装置の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、有機EL表示装置の駆動電圧の低電圧化および長寿命化ができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態に係る有機EL表示装置の一画素の断面図。
【図2】有機EL素子50r,50g,50bの断面図。
【図3】有機EL素子50rの発光効率を示すグラフ。
【図4】有機EL素子50r,50g,50bの輝度の時間変化を、正孔ブロッキング層HBLの有無で比較したグラフ。
【図5】有機EL素子50bの輝度の時間変化を、青色発光層の膜厚を変化させて比較したグラフ。
【図6】図2の有機EL素子50r,50g,50bの変形例。
【図7】図2の有機EL素子50r,50g,50bの別の変形例。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る有機EL表示装置およびその製造方法の実施形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0013】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の一実施形態に係る有機EL表示装置の一画素の断面図である。有機EL表示装置は、配線基板10と、TFT30r,30g,30bと、金属反射層MRLr,MRLg,MRLbと、有機絶縁層35と、有機EL素子50r,50g,50bと、隔壁70と、を備えている。同図は、有機EL素子50r,50g,50bが発する光を上面から取り出す上面発光素子構成の例である。
【0014】
配線基板10は、ガラス基板1と、アンダーコート層2と、ゲート絶縁膜3と、層間絶縁膜4と、有機絶縁層5とを有する。ガラス基板1上に形成されるアンダーコート層2は、例えばSiNxあるいはSiOxから形成される。このアンダーコート層2上に、TFT30r,30g,30b、不図示の選択素子、画素容量および映像信号線等の各種配線が形成される。
【0015】
TFT30rは、ゲート絶縁膜3と、ゲート電極21rと、半導体領域に形成されるドレイン領域22rおよびソース領域23rとを有する。TFT30rのドレイン電極24は有機EL素子50rの陽極ANDrと接続され、映像信号電圧に応じた電流を有機EL素子50rに流す。TFT50g,TFT50bも同様の構成である。このTFT30r,30g,30bは層間絶縁膜4および有機絶縁層5により覆われ、他の素子と分離される。層間絶縁膜4は例えばSiO2であり、有機絶縁層5は例えば樹脂材料により形成される。
【0016】
金属反射層MRLr,MRLg,MRLbは有機絶縁層5上に形成され、有機EL素子50r,50g,50bが下面に向かって発する光を上面に反射する。MRLr,MRLg,MRLbは有機絶縁層35により互いに絶縁される。
【0017】
有機EL素子50r,50g,50bはガラス基板1上にそれぞれ離隔して形成される。有機EL素子50rは、陽極ANDrと、有機物層ORGrと、陰極CTDとを有する。陽極ANDrは、例えばITO(Indium Tin Oxide)を用いて金属反射層MRLr上に形成される、光透過性の電極である。有機物層ORGrはTFT30rが流す電流の大きさに応じた輝度で発光する。陰極CTDは、例えば95%のマグネシウムおよび5%の銀の混合物からなる半透明の電極である。
【0018】
有機EL素子50bは青色(第1発光色)を発する能力を持つ発光層を有する。有機EL素子50gは青色の中心波長よりも長い中心波長の緑色(第2発光色)を発する能力を持つ発光層を有する。有機EL素子50bは緑色の中心波長よりも長い中心波長の赤色(第3発光色)を発する能力を持つ発光層を有する。また、有機物層ORGr,ORGg,ORGbの構成はそれぞれ異なっており、後述する。これらの点を除いて、有機EL素子50r,50g,50bは同様の構成である。また、図1は、陰極CTDが有機EL素子50r,50g,50bで共通して用いられる例を示している。
【0019】
隔壁70は隣接する有機EL素子50r,50g,50b間を電気的に分離するものであり、例えば樹脂材料により形成される。
【0020】
図1は、一画素の断面図を示しており、この画素をマトリクス状に複数個配置することにより、例えば10インチの有機EL表示装置を構成する。
【0021】
図2(a)〜(c)は、有機EL素子50r,50g,50bの断面図である。これらは、図2には不図示の金属反射層MRLr,MRLg,MRLb上に形成される。
【0022】
赤色の光を発する有機EL素子(第3有機EL素子)50rは、陽極ANDrと、正孔注入層HIL(Hole Injection Layer)と、第1正孔輸送層HTL(Hole Transport Layer)1と、第2正孔輸送層HTL2と、赤色発光層EML(Emitting Layer)rと、緑色発光層EMLgと、副青色発光層EMLb2と、正孔ブロッキング層HBL(Hole Blocking Layer)と、電子輸送層ETL(Electron Transport Layer)と、電子注入層EIL(Electron Injection Layer)と、陰極CTDとを有する。赤色発光層EMLrの上面の緑色発光層EMLgおよび副青色発光層EMLbは、有機EL素子50gおよび有機EL素子50bの発光層の一部が延存したものである。陽極ANDrと陰極CTDを除いた部分が有機物層ORGrである。金属反射層MRLrの上面から陰極CTDの下面までの厚さは、例えば126.5nmである。
【0023】
緑色の光を発する有機EL素子(第2有機EL素子)50gは、陽極ANDgと、正孔注入層HILと、第1正孔輸送層HTL1と、第3正孔輸送層HTL3と、緑色発光層EMLgと、副青色発光層EMLb2と、正孔ブロッキング層HBLと、電子輸送層ETLと、電子注入層EILと、陰極CTDとを有する。緑色発光層EMLgの上面の副青色発光層EMLbは、有機EL素子50bの発光層の一部が延存したものである。陽極ANDgと陰極CTDを除いた部分が有機物層ORGgである。金属反射層MRLgの上面から陰極CTDの下面までの厚さは、例えば102.5nmである。
【0024】
青色の光を発する有機EL素子(第1有機EL素子)50bは、陽極ANDbと、正孔注入層HILと、第1正孔輸送層HTL1と、第4正孔輸送層HTL4と、第5正孔輸送層HTL5緑色発光層EMLgと、主青色発光層EMLb1と、副青色発光層EMLb2と、正孔ブロッキング層HBLと、電子輸送層ETLと、電子注入層EILと、陰極CTDとを有する。陽極ANDbと陰極CTDを除いた部分が有機物層ORGbである。金属反射層MRLbの上面から陰極CTDの下面までの厚さは、例えば199.5nmである。主および副青色発光層EMLb1,EMLb2の材料は、同一でもよいし、異なっていてもよい。
【0025】
正孔注入層HILの材料は陽極からの正孔の注入効率が高い材料であり、例えばアモルファスカーボンである。また、この正孔注入層HILを設けることで、ITOからなる陽極AND上に直接第1正孔輸送層HTL1を形成する場合に比べて、界面特性を向上できる。第1〜第5正孔輸送層HTL1〜HTL5は正孔を発光層に輸送する。第2〜第5正孔輸送層HTL2〜HTL5は、有機EL素子50r,50g,50bの厚さがそれぞれ上記の値となるように調整するためにも用いられる。
【0026】
第1〜第5正孔輸送層の材料は、同一でもよいし、異なっていてもよい。異なる材料とする場合、厚く形成する必要がある正孔輸送層は廉価な材料を用い、発光層EMLr,EMLg,EMLb1の直下に形成される各正孔輸送層は、各発光層と相性がよい材料を用いてもよい。
【0027】
各発光層は、ホストと、ホストに添加された数%のドーパントからなる。発光層に電流が流れると、ドーパントはホストからエネルギーを受け取り、ドーパントの種類に応じて赤色(第1の色)、緑色(第2の色)および青色(第3の色)でそれぞれ発光する。
【0028】
正孔ブロッキング層(キャリアブロッキング層)HBLは陽極から注入された正孔(キャリア)を発光層に留め、電子輸送層ETLに漏れ出すのを抑制する。電子注入層EILは陽極から電子を注入し、電子輸送層ETLはこの電子を発光層に輸送する。
【0029】
本実施形態では、有機EL素子50rの赤色発光層EMLr上に副青色発光層EMLb2が形成され、有機EL素子50gの緑色発光層EMLg上に副青色発光層EMLb2が形成され、さらに、有機EL発光素子50bの主および副青色発光層EMLb1,EMLb2の合計膜厚は、有機EL素子50r,50bの副青色発光層EMLb2の膜厚より厚いことを特徴とする。このような構成にすることにより、有機EL素子50rの発光効率が向上するとともに、有機EL素子50bの輝度劣化を抑制できる。
【0030】
また、有機EL素子50r,50g,50bにおける第1正孔輸送層HTL1および副青色発光層EMLb2から上の層と、有機EL50r,50gにおける緑色発光層EMLgとを、同じ材料を用いて形成するため、材料の利用効率を向上でき、製造コストを抑制できる。
【0031】
有機EL素子50rは以下のように動作する。有機EL素子50rの陽極ANDrおよび陰極CTD間に電圧が印加されると、正孔注入層HILから正孔が、電子注入層EILから電子がそれぞれ発光層EMLr,EMLg,EMLb2に注入される。これらの発光層で正孔と電子が再結合すると、励起子が発生する。この励起子が基底状態に戻る際にドーパントの種類に応じた波長の光を発する。
【0032】
発光層は図2の横方向にはほとんど発光せず、主に上または下方向に発光する。発光層が上方向に発した光のうちの一部は陰極CTDを透過して外部に取り出される。残りの光は陰極CTDに反射されて下方向に向かう。下方向に向かう光は、透明な陽極ANDrの下に設けられる金属反射層MRLrで反射され、上方向に向かう。陰極CTDと金属反射層MRLrとの間で光が反射することにより、発光層が発した光のうち、共振波長の光だけが増幅される。その結果、ピーク強度が高く、幅が狭いスペクトルを有する光を取り出すことができ、表示装置の色再現範囲を拡大できる(マイクロキャビティ効果)。
【0033】
有機EL素子50g,50bの動作も同様である。
【0034】
これら有機EL素子50r,50g,50bを備える有機EL表示装置は以下のように製造される。まず、陽極ANDr,ANDg,ANDb上に、有機EL素子50r,50g,50bに共通の正孔注入層HILおよび第1正孔輸送層HTL1を形成する。その後、陽極ANDrに対応する第1正孔輸送層HTL1上に第2正孔輸送層HTL2を、陽極ANDgに対応する第1正孔輸送層HTL1上に第3正孔輸送層HTL3を、陽極ANDbに対応する第1正孔輸送層HTL1上に第4および第5正孔輸送層HTL4,HTL5を、それぞれ形成する。
【0035】
続いて、第2正孔輸送層HTL2上に赤色発光層EMLrを形成する。さらに、赤色発光層EMLr上および第3正孔輸送層HTL3上に緑色発光層EMLgを形成する。また、赤色発光層EMLrを形成する前もしくは後、または、緑色発光層EMLgの形成後に、第5正孔輸送層HTL5上に主青色発光層EMLb1を形成する。その後、緑色発光層EMLgおよび主青色発光層EMLb1の上に、有機EL素子50r,50g,50bに共通の副青色発光層EMLb2を形成する。
【0036】
その後、副青色発光層EMLb2上に、正孔ブロッキング層HBL、電子輸送層ETL、電子注入層EILを形成する。
【0037】
このように製造すると、有機EL素子50rの緑色発光層EMLgと、有機EL素子50gの緑色発光層EMLgの膜厚は等しくなる。さらに、副青色発光層EMLb2から上の各層は、有機EL素子50r,50g,50bに共通して同時に形成されるため、どの有機EL素子においても膜厚は等しくなる。これらを共通して形成することで、製造コストを抑制できる。
【0038】
なお、主および副青色発光層EMLb1,EMLb2を同一の材料とする場合は、主青色発光層EMLb1の形成を省略し、代わりに、有機EL素子50bのみ、副青色発光層EMLb2を厚く形成すればよい。
【0039】
次に、有機EL素子50r,50g,50bの特性について説明する。
【0040】
図3は、有機EL素子50rの発光効率を示すグラフであり、横軸は電流密度、縦軸は正規化した発光効率である。同図の実施素子とは、図2(a)に示す有機EL素子50rであり、比較素子とは、図2(a)の緑色発光層EMLgおよび副青色発光層EMLb2にドーパントを添加していない有機EL素子である。
【0041】
図3のグラフは以下のようにして得られたものである。まず、有機EL素子に電流を流し、電流値を電流計で測定する。その電流値を有機EL素子の面積で除した値を横軸の電流密度とする。一方、有機EL素子が発する光の輝度を輝度計で測定し、その輝度を電流密度で除した値を発光効率とする。各電流密度で発光効率を測定した後、比較素子の最大発光効率で発光効率を正規化した値を縦軸の正規化発光効率とする。
【0042】
図3から分かるように、緑色および副青色発光層EMLg,EMLb2にドーパントを添加することにより、発光効率が約2.2倍になっている。このように発光効率が向上するため、駆動電圧を低減できる。
【0043】
発光効率が向上する理由は、まず、緑色および副青色発光層EMLg,EMLb2が、赤色発光層EMLrに注入された正孔が電子輸送層ETLに漏れ出すのを抑制しているためと考えられる。赤色より、緑色および青色の方がエネルギーが高いため、赤色発光層EMLrより緑色および副青色発光層EMLg,EMLb2の方がバンドギャップが大きい。したがって、正孔注入層HILおよび正孔輸送層HTL1,HTL2から注入された正孔の多くは緑色発光層EMLg側に移動できず、赤色発光層EMLrに留まる。そのため、正孔が赤色発光層EMLrで効率よく電子と再結合し、結果として、発光効率が向上する。
【0044】
また、別の理由として、発光層界面での局所的な蓄積電子による消光を抑制できることが考えられる。図3の比較素子の場合、緑色発光層EMLgにドーパントが添加されていないため、赤色発光層EMLrと緑色発光層EMLgとの界面に電子が蓄積される。この蓄積された電子が発光層EMLrで発生した励起子と相互作用すると、消光してしまう。これに対し、実施素子である有機EL素子50rの場合、ドーパントが添加された緑色および副青色発光層EMLg,EMLb2が設けられるため、緑色発光層EMLgと副青色発光層EMLb2との界面に電子が蓄積される。ところが、緑色発光層EMLgと副青色発光層EMLb2との界面は、赤色発光層EMLrと離れているために、励起子との相互作用は小さい。その結果、消光が抑制され、発光効率が向上する。
【0045】
さらに、上述したように、正孔が赤色発光層EMLrに留まるため、主に赤色発光層EMLrが発光し、緑色および副青色発光層EMLg,EMLb2からの発光はわずかである。しかし、これらの層からの緑色および青色の発光は、よりエネルギーが低い赤色へと変換されるため(色変換効果)、さらに赤色の発光効率を向上することになる。
【0046】
このように、有機EL素子50rの赤色発光層EMLr上に、緑色および副青色発光層EMLg,EMLb2を形成することにより、赤色の発光効率を向上でき、駆動電圧を低電圧化できる。
【0047】
図4は、有機EL素子50r,50g,50bの輝度の時間変化を、正孔ブロッキング層HBLの有無で比較したグラフであり、横軸は任意に正規化した時間、縦軸は初期の輝度で正規化した輝度である。同図(a)〜(c)はそれぞれ有機EL素子50r,50g,50bの正規化輝度を示す。副青色発光層EMLb2の影響を取り除き、正孔ブロッキング層HBLの有無による寿命の違いのみを検証するため、同図の実施素子は、図2(a)〜(c)において、副青色発光層EMLb2を設けない有機EL素子50r,50g,50bとしている。なお、副青色発光層EML2を設けない代わりに、電子輸送層ETLを厚く形成して、全体の膜厚は図2(a)〜(c)と等しくしている。また、比較素子とは、実施素子において、正孔ブロッキング層HBLを形成していない有機EL素子である。
【0048】
図4のグラフは、有機EL素子に一定の電流を流しつつ、各時間における輝度を輝度計で測定し、時間0における輝度で正規化して得られたものである。なお、図4は加速試験により得られた特性であるため、横軸に示す時間も正規化している。
【0049】
図4から分かるように、比較素子に比べて、実施素子では通電初期の輝度劣化が抑制されている。正孔ブロッキング層HBLがない場合、発光層から電子輸送層ETLに漏れ出した正孔により電子輸送層ETLが劣化し、通電初期に輝度が大きく低下してしまう。これに対し、実施素子では、正孔ブロッキング層HBLを設けるため、電子輸送層ETLに漏れ出す正孔が少なくなり、初期の輝度劣化を抑制できる。その結果、有機EL素子50r,50g,50bを長寿命化できる。
【0050】
このように、正孔ブロッキング層HBLを設けることにより、通電初期の輝度劣化を抑制できる。なお、正孔ブロッキング層HBLは必須の構成ではなく、輝度劣化があまり問題にならない場合等には、正孔ブロッキング層HBLを設けなくてもよい。
【0051】
図4では、通電初期の輝度劣化後、例えば、図4の正規化時間25以降の輝度劣化は、正孔ブロッキング層HBLの有無で、ほとんど差異はない。特に、正規化時間150での、第1および第2の有機EL素子50r,50gの輝度劣化はわずかに数%程度であるが、第3の有機EL素子50は、正孔ブロッキング層HBLを設けた場合でも10%を超えており、通電後期の輝度劣化は十分に改善されてはいない。
図5は、有機EL素子50bの輝度の時間変化を、青色発光層の膜厚を変化させて比較したグラフである。横軸および縦軸は図4と同様であり、図4と同様の測定により得られたグラフである。同図の実施素子は図2(c)に示す有機EL素子50bである。比較素子は図4(c)の実施素子と同じ素子であり、図2(c)において副青色発光層EMLb2を設けない代わりに、電子輸送層ETLを厚く形成して、全体の膜厚を図2(c)と等しくしたものである。すなわち、実施素子の主および副青色発光層EMLb1,EMLb2を合わせた膜厚は、比較素子の主青色発光層EMLb1の膜厚より厚い。
【0052】
図5から分かるように、有機EL素子50bの青色発光層EMLb1,EMLb2を厚く形成することにより、通電後期(例えば正規化時間25以降)の輝度劣化を抑制できる。
【0053】
このように、本実施形態では、有機EL素子50rの赤色発光層EMLr上に、緑色および副青色発光層EMLg,EMLb2を形成するため、赤色の発光効率を向上できる。また、有機EL素子50bの発光層を厚く形成するため、有機EL素子50bの通電後期の輝度劣化を抑制できる。さらに、有機EL素子50r,50g,50bに共通して正孔ブロッキング層HBLを設けることにより、通電初期の輝度劣化を抑制できる。その結果、駆動電圧を低電圧化でき、かつ、有機EL素子50r,50g,50bを長寿命化できる。また、副青色発光層EMLb2から上の各層は、有機EL素子50r,50g,50bで共通に用いるため、製造コストを抑制できる。
【0054】
なお、正孔輸送層等の膜厚は、各有機EL素子50r,50g,50bが発する光が金属反射層と陰極との間で反射し、共振動作を行うのに適した厚さに調整すればよい。この厚さは、取り出す光の波長、各層の屈折率等に基づいて算出できるものであり、算出された厚さでマイクロキャビティ効果を実験的に確認してもよい。具体的には、各層の材料に関わらず、この厚さを、有機EL素子50rでは110nm〜130nm、有機EL素子50gでは85nm〜105nm、有機EL素子50bでは182nm〜202nmとすればよい。
【0055】
図6は、図2の有機EL素子50rの変形例である。図6(a)では、図2(a)の有機EL素子50rにおいて、緑色発光層EMLgを設けない代わりに、赤色発光層EMLrを厚く形成する。図6(b)および(c)の構造は、それぞれ図2(b)および(c)と同様である。
【0056】
図7は、図2の有機EL素子50rの別の変形例である。図7では、図2(a)の有機EL素子50rにおいて、緑色発光層EMLgを設けない代わりに、青色発光層EMLbを形成する。この場合、青色発光層EMLbの材料は、主または副青色発光層EMLb1,EMLb2のいずれかの材料と同一でもよいし、異なっていてもよい。青色発光層EMLbの材料および膜厚を副青色発光層EMLb2と同一にすることにより、青色発光層EMLbおよび副青色発光層EMLb2を同時に形成できるため、製造プロセスを簡略化できる。図7(b)および(c)の構造は、それぞれ、図2(b)および(c)と同様である。
【0057】
図6および図7の有機EL素子50も、図2の有機EL素子50と同様に、厚く形成された赤色発光層EMLrと副青色発光層EMLb2(図6)または青色発光層EMLb,EMLb2(図7)が、発光層界面での局所的な蓄積キャリアによる消光を抑制し、かつ、正孔が電子輸送層ETLに漏れ出すのを抑制するため、赤色の発光効率を向上できる。
【0058】
本実施形態では、陰極CTDが有機EL素子に共通に設けられる例を示したが、各有機EL素子に対応して、別個に設けられてもよい。
【0059】
上記の記載に基づいて、当業者であれば、本発明の追加の効果や種々の変形を想到できるかもしれないが、本発明の態様は、上述した個々の実施形態には限定されるものではない。特許請求の範囲に規定された内容およびその均等物から導き出される本発明の概念的な思想と趣旨を逸脱しない範囲で種々の追加、変更および部分的削除が可能である。
【符号の説明】
【0060】
50r,50g,50b 有機EL素子
MRLr,MRLg,MRLb 金属反射層
ANDr,ANDg,ANDb 陽極
ORGr,ORGg,ORGb 有機物層
HIL 正孔注入層
HTL1〜HTL5 正孔輸送層
EMLr 赤色発光層
EMLg 緑色発光層
EMLb,EMLb1,EMLb2 青色発光層
HBL 正孔ブロッキング層
ETL 電子輸送層
EIL 電子注入層
CTD 陰極
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に形成される第1電極と、前記第1電極と対向する第2電極と、前記第1および第2電極間に形成され、第1発光色を発する能力を持った第1発光層と、を有する第1有機EL素子と、
前記基板上に形成される第3電極と、前記第3電極と対向する第4電極と、前記第3および第4電極間に形成され、前記第1発光色の中心波長よりも長い中心波長の第2発光色を発する能力を持った第2発光層と、を有し、前記第2発光層の上面に前記第1発光層の少なくとも一部が延存している第2有機EL素子と、
前記基板上に形成される第5電極と、前記第5電極と対向する第6電極と、前記第5および第6電極間に形成され、前記第2発光色の中心波長よりも長い中心波長の第3発光色を発する能力を持った第3発光層と、を有し、前記第3発光層の上面に前記第1および第2発光層の少なくとも一部が延存している第3有機EL素子と、を備え、
前記第1および第2電極間に形成される前記第1発光層の厚さは、前記第2および第3発光層の上面に延存している第1発光層の厚さよりも厚いことを特徴とする有機EL表示装置。
【請求項2】
基板上に形成される第1電極と、前記第1電極と対向する第2電極と、前記第1および第2電極間に形成され、第1発光色を発する能力を持った第1発光層と、を有する第1有機EL素子と、
前記基板上に形成される第3電極と、前記第3電極と対向する第4電極と、前記第3および第4電極間に形成され、前記第1発光色の中心波長よりも長い中心波長の第2発光色を発する能力を持った第2発光層と、を有し、前記第2発光層の上面に前記第1発光層の少なくとも一部が延存している第2有機EL素子と、
前記基板上に形成される第5電極と、前記第5電極と対向する第6電極と、前記第5および第6電極間に形成され、前記第2発光色の中心波長よりも長い中心波長の第3発光色を発する能力を持った第3発光層と、を有し、前記第3発光層の上面に前記第1発光層の少なくとも一部が延存している第3有機EL素子と、を備え、
前記第1および第2電極間に形成される前記第1発光層の厚さは、前記第2および第3発光層の上面に延存している第1発光層の厚さよりも厚いことを特徴とする有機EL表示装置。
【請求項3】
基板上に形成される第1電極と、前記第1電極と対向する第2電極と、前記第1および第2電極間に形成され、第1発光色を発する能力を持った第1発光層と、を有する第1有機EL素子と、
前記基板上に形成される第3電極と、前記第3電極と対向する第4電極と、前記第3および第4電極間に形成され、前記第1発光色の中心波長よりも長い中心波長の第2発光色を発する能力を持った第2発光層と、を有し、前記第2発光層の上面に前記第1発光層の少なくとも一部が延存している第2有機EL素子と、
前記基板上に形成される第5電極と、前記第5電極と対向する第6電極と、前記第5および第6電極間に形成され、前記第2発光色の中心波長よりも長い中心波長の第3発光色を発する能力を持った第3発光層と、を有し、前記第3発光層の上面に前記第1発光層の少なくとも一部が延存している第3有機EL素子と、を備え、
前記第2発光層の上面に延存している前記第1発光層の厚さは、前記第1および第2電極間に形成される第1発光層および前記第3発光層の上面に延存している前記第1発光層の厚さより薄いことを特徴とする有機EL表示装置。
【請求項4】
前記第1有機EL素子は、前記第1発光層上に形成され、前記第1電極から注入されるキャリアを前記第1発光層内に留める第1キャリアブロッキング層を有し、
前記第2有機EL素子は、前記第2発光層の上面に延存している前記第1発光層上に形成され、前記第3電極から注入されるキャリアを前記第2発光層内に留める第2キャリアブロッキング層を有し、
前記第3有機EL素子は、前記第3発光層の上面に延存している前記第1発光層上に形成され、前記第5電極から注入されるキャリアを前記第3発光層内に留める第3キャリアブロッキング層を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の有機EL表示装置。
【請求項5】
前記第1乃至第3電極の下にそれぞれ形成される第1乃至第3反射層を備え、
前記第2、第4および第6電極は、前記第1乃至第3有機EL素子が発する光の一部を前記第1乃至第3反射層へそれぞれ反射し、
前記第1反射層の上面から前記第2電極の下面までの厚さは、前記第1の色の光が前記第1反射層と前記第2電極との間で反射して光の共振動作を行うのに適した厚さであり、
前記第2反射層の上面から前記第4電極の下面までの厚さは、前記第2の色の光が前記第2反射層と前記第4電極との間で反射して光の共振動作を行うのに適した厚さであり、
前記第3反射層の上面から前記第6電極の下面までの厚さは、前記第3の色の光が前記第3反射層と前記第6電極との間で反射して光の共振動作を行うのに適した厚さであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の有機EL表示装置。
【請求項6】
前記第1発光層は、
前記第1および第2電極間に形成される主発光層と、
前記第2および第3発光層の上面に延存する副発光層と、を有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の有機EL表示装置。
【請求項7】
基板上にそれぞれ離隔して第1乃至第3電極を形成する工程と、
前記第1乃至第3電極の上方にそれぞれ、正孔輸送層を順に形成する工程と、
前記第1電極に対応する前記正孔輸送層上に、第1のドーパントを含有し第1の色の光で発光する第1発光層を形成する工程と、
前記第2電極に対応する前記正孔輸送層上に、第2のドーパントを含有し第2の色の光で発光する第2発光層を形成する工程と、
前記第1発光層上、前記第2発光層上および前記第3電極に対応する前記正孔輸送層上にそれぞれ、第3のドーパントを含有し第3の色で発光する第3発光層を、前記第1発光層および前記第2発光層上に形成される前記第3発光層の膜厚より前記第3電極上に形成される前記第3発光層の膜厚を厚く形成する工程と、
前記第3発光層の上方に電子輸送層を順に形成する工程と、を備えることを特徴とする有機EL表示装置の製造方法。
【請求項1】
基板上に形成される第1電極と、前記第1電極と対向する第2電極と、前記第1および第2電極間に形成され、第1発光色を発する能力を持った第1発光層と、を有する第1有機EL素子と、
前記基板上に形成される第3電極と、前記第3電極と対向する第4電極と、前記第3および第4電極間に形成され、前記第1発光色の中心波長よりも長い中心波長の第2発光色を発する能力を持った第2発光層と、を有し、前記第2発光層の上面に前記第1発光層の少なくとも一部が延存している第2有機EL素子と、
前記基板上に形成される第5電極と、前記第5電極と対向する第6電極と、前記第5および第6電極間に形成され、前記第2発光色の中心波長よりも長い中心波長の第3発光色を発する能力を持った第3発光層と、を有し、前記第3発光層の上面に前記第1および第2発光層の少なくとも一部が延存している第3有機EL素子と、を備え、
前記第1および第2電極間に形成される前記第1発光層の厚さは、前記第2および第3発光層の上面に延存している第1発光層の厚さよりも厚いことを特徴とする有機EL表示装置。
【請求項2】
基板上に形成される第1電極と、前記第1電極と対向する第2電極と、前記第1および第2電極間に形成され、第1発光色を発する能力を持った第1発光層と、を有する第1有機EL素子と、
前記基板上に形成される第3電極と、前記第3電極と対向する第4電極と、前記第3および第4電極間に形成され、前記第1発光色の中心波長よりも長い中心波長の第2発光色を発する能力を持った第2発光層と、を有し、前記第2発光層の上面に前記第1発光層の少なくとも一部が延存している第2有機EL素子と、
前記基板上に形成される第5電極と、前記第5電極と対向する第6電極と、前記第5および第6電極間に形成され、前記第2発光色の中心波長よりも長い中心波長の第3発光色を発する能力を持った第3発光層と、を有し、前記第3発光層の上面に前記第1発光層の少なくとも一部が延存している第3有機EL素子と、を備え、
前記第1および第2電極間に形成される前記第1発光層の厚さは、前記第2および第3発光層の上面に延存している第1発光層の厚さよりも厚いことを特徴とする有機EL表示装置。
【請求項3】
基板上に形成される第1電極と、前記第1電極と対向する第2電極と、前記第1および第2電極間に形成され、第1発光色を発する能力を持った第1発光層と、を有する第1有機EL素子と、
前記基板上に形成される第3電極と、前記第3電極と対向する第4電極と、前記第3および第4電極間に形成され、前記第1発光色の中心波長よりも長い中心波長の第2発光色を発する能力を持った第2発光層と、を有し、前記第2発光層の上面に前記第1発光層の少なくとも一部が延存している第2有機EL素子と、
前記基板上に形成される第5電極と、前記第5電極と対向する第6電極と、前記第5および第6電極間に形成され、前記第2発光色の中心波長よりも長い中心波長の第3発光色を発する能力を持った第3発光層と、を有し、前記第3発光層の上面に前記第1発光層の少なくとも一部が延存している第3有機EL素子と、を備え、
前記第2発光層の上面に延存している前記第1発光層の厚さは、前記第1および第2電極間に形成される第1発光層および前記第3発光層の上面に延存している前記第1発光層の厚さより薄いことを特徴とする有機EL表示装置。
【請求項4】
前記第1有機EL素子は、前記第1発光層上に形成され、前記第1電極から注入されるキャリアを前記第1発光層内に留める第1キャリアブロッキング層を有し、
前記第2有機EL素子は、前記第2発光層の上面に延存している前記第1発光層上に形成され、前記第3電極から注入されるキャリアを前記第2発光層内に留める第2キャリアブロッキング層を有し、
前記第3有機EL素子は、前記第3発光層の上面に延存している前記第1発光層上に形成され、前記第5電極から注入されるキャリアを前記第3発光層内に留める第3キャリアブロッキング層を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の有機EL表示装置。
【請求項5】
前記第1乃至第3電極の下にそれぞれ形成される第1乃至第3反射層を備え、
前記第2、第4および第6電極は、前記第1乃至第3有機EL素子が発する光の一部を前記第1乃至第3反射層へそれぞれ反射し、
前記第1反射層の上面から前記第2電極の下面までの厚さは、前記第1の色の光が前記第1反射層と前記第2電極との間で反射して光の共振動作を行うのに適した厚さであり、
前記第2反射層の上面から前記第4電極の下面までの厚さは、前記第2の色の光が前記第2反射層と前記第4電極との間で反射して光の共振動作を行うのに適した厚さであり、
前記第3反射層の上面から前記第6電極の下面までの厚さは、前記第3の色の光が前記第3反射層と前記第6電極との間で反射して光の共振動作を行うのに適した厚さであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の有機EL表示装置。
【請求項6】
前記第1発光層は、
前記第1および第2電極間に形成される主発光層と、
前記第2および第3発光層の上面に延存する副発光層と、を有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の有機EL表示装置。
【請求項7】
基板上にそれぞれ離隔して第1乃至第3電極を形成する工程と、
前記第1乃至第3電極の上方にそれぞれ、正孔輸送層を順に形成する工程と、
前記第1電極に対応する前記正孔輸送層上に、第1のドーパントを含有し第1の色の光で発光する第1発光層を形成する工程と、
前記第2電極に対応する前記正孔輸送層上に、第2のドーパントを含有し第2の色の光で発光する第2発光層を形成する工程と、
前記第1発光層上、前記第2発光層上および前記第3電極に対応する前記正孔輸送層上にそれぞれ、第3のドーパントを含有し第3の色で発光する第3発光層を、前記第1発光層および前記第2発光層上に形成される前記第3発光層の膜厚より前記第3電極上に形成される前記第3発光層の膜厚を厚く形成する工程と、
前記第3発光層の上方に電子輸送層を順に形成する工程と、を備えることを特徴とする有機EL表示装置の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【公開番号】特開2011−204373(P2011−204373A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−68030(P2010−68030)
【出願日】平成22年3月24日(2010.3.24)
【出願人】(302020207)東芝モバイルディスプレイ株式会社 (2,170)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月24日(2010.3.24)
【出願人】(302020207)東芝モバイルディスプレイ株式会社 (2,170)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]