説明

有機EL装置の製造方法および有機EL装置製造用基板

【課題】接着シートと樹脂基板との界面、および、接着シートと硬質基板との界面のうち、界面剥離を所望の一方の界面で生じさせることのできる有機EL装置の製造方法およびその方法に用いられる有機EL装置製造用基板を提供すること。
【解決手段】樹脂基板3が上に積層された接着シート2を用意し、樹脂基板3を、硬質基板9の上に接着シート2を介して接着し、有機EL素子10を樹脂基板3の上に形成することにより、樹脂基板3と有機EL素子10とを備える有機EL装置18を製造し、有機EL装置1を硬質基板9から剥離する有機EL装置の製造方法であり、接着シート2は、硬質基板9に貼着される第1接着剤層4と、第1接着剤層4の上に形成され、樹脂基板3に貼着される第2接着剤層6とを備え、第1接着剤層4の接着力A1と、第2接着剤層6の接着力A2とを相異させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機EL装置の製造方法および有機EL装置製造用基板、詳しくは、有機EL装置の製造方法、および、その方法に用いられる有機EL装置製造用基板に関する。
【背景技術】
【0002】
有機EL(エレクトロルミネッセンス)装置は、樹脂基板と、樹脂基板の上に積層される有機EL素子とを備えることが知られている。
【0003】
そのような有機EL装置の製造方法として、例えば、ガラス基板の上に、接着剤層を介してポリエチレンナフタレートからなる樹脂基板を接着し、次いで、樹脂基板の上に、アノード電極、カソード電極および有機半導体層を備える有機EL素子を積層することが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
特許文献1では、有機EL装置の製造後、有機EL装置の下にあるガラス基板を、樹脂基板から剥離している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−271236号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1で提案される方法において、ガラス基板を有機EL装置の樹脂基板から剥離する時には、接着剤層とガラス基板との界面で剥離が生じて、接着剤層が樹脂基板の表面に残存したり、あるいは、接着剤層と樹脂基板との界面で剥離が生じて、接着剤層がガラス基板の表面に残存する。そのため、有機EL装置を安定して製造することができないという不具合がある。
【0007】
本発明の目的は、接着シートと樹脂基板との界面、および、接着シートと硬質基板との界面のうち、界面剥離を所望の一方の界面で生じさせることのできる有機EL装置の製造方法およびその方法に用いられる有機EL装置製造用基板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の有機EL装置の製造方法は、樹脂基板が上に積層された接着シートを用意する工程、前記樹脂基板を、硬質基板の上に前記接着シートを介して接着する工程、有機EL素子を前記樹脂基板の上に形成することにより、前記樹脂基板と前記有機EL素子とを備える有機EL装置を製造する工程、および、前記有機EL装置を前記硬質基板から剥離する工程を含み、前記接着シートは、前記硬質基板に貼着される第1接着剤層と、前記第1接着剤層の上に形成され、前記樹脂基板に貼着される第2接着剤層とを備え、前記第1接着剤層の接着力と、前記第2接着剤層の接着力とが、相異していることを特徴としている。
【0009】
また、本発明の有機EL装置の製造方法では、前記第1接着剤層の接着力が、前記第2接着剤層の接着力より高いことが好適である。
【0010】
また、本発明の有機EL装置の製造方法では、支持シートが、前記第1接着剤層と前記第2接着剤層との間に介在されていることが好適である。
【0011】
また、本発明の有機EL装置製造用基板は、樹脂基板が上に積層された接着シートを用意する工程、前記樹脂基板を、硬質基板の上に前記接着シートを介して接着する工程、有機EL素子を前記樹脂基板の上に形成することにより、前記樹脂基板と前記有機EL素子とを備える有機EL装置を製造する工程、および、前記有機EL装置を前記硬質基板から剥離する工程を含む前記有機EL装置の製造方法に用いられる有機EL装置製造用基板であり、前記接着シートと、前記接着シートの上に積層される前記樹脂基板とを備え、前記接着シートは、前記硬質基板に貼着される第1接着剤層と、前記第1接着剤層の上に形成され、前記樹脂基板に貼着される第2接着剤層とを備え、前記第1接着剤層の接着力と、前記第2接着剤層の接着力とが、相異していることを特徴としている。
【0012】
また、本発明の有機EL装置製造用基板では、前記第1接着剤層の接着力が、前記第2接着剤層の接着力より高いことが好適である。
【0013】
また、本発明の有機EL装置製造用基板では、前記第1接着剤層と前記第2接着剤層との間に介在される支持シートを備えていることが好適である。
【0014】
また、本発明の有機EL装置製造用基板では、前記樹脂基板の上面に形成され、ガスが前記樹脂基板を透過することを防止するための遮蔽層を備えることが好適であり、さらに、前記遮蔽層の上面に形成される透明導電性薄膜を備えることが好適である。
【発明の効果】
【0015】
本発明の有機EL装置の製造方法およびその方法に用いられる有機EL装置製造用基板では、第1接着剤層の接着力と第2接着剤層の接着力とが、相異している。そのため、有機EL装置を硬質基板から剥離する工程において、第1接着剤層と硬質基板との界面、および、第2接着剤層と樹脂基板との界面におけるいずれか一方において、剥離を生じさせることができる。
【0016】
そのため、接着シートを、樹脂基板および硬質基板のうち、一方のみに残存させて、接着シートが他方に残ることを防止することができる。
【0017】
その結果、有機EL装置を安定して製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、本発明の有機EL装置の製造方法の一実施形態に用いられる、本発明の有機EL装置製造基板の一実施形態である積層基板(接着シートおよび樹脂基板を備える態様)を製造するための工程図であり、(a)は、樹脂基板および接着シートを用意する工程、(b)は、樹脂基板を接着シートの上に積層する工程を示す。
【図2】図2は、本発明の有機EL装置の製造方法の一実施形態に用いられる、本発明の有機EL装置製造基板の他の実施形態である積層基板(接着シート、樹脂基板および遮蔽層を備える態様)を製造するための工程図であり、(a)は、遮蔽層が積層された樹脂基板、および、接着シートを用意する工程、(b)は、樹脂基板を接着シートの上に積層する工程を示す。
【図3】図3は、本発明の有機EL装置の製造方法の一実施形態に用いられる、本発明の有機EL装置製造基板の他の実施形態である積層基板(接着シート、樹脂基板、遮蔽層および透明導電性薄膜を備える態様)を製造するための工程図であり、(a)は、遮蔽層および透明導電性薄膜が積層された樹脂基板、および、接着シートを用意する工程、(b)は、樹脂基板を接着シートの上に積層する工程を示す。
【図4】図4は、図3(b)に示す積層基板を用いて、有機EL装置を製造する方法を説明するための工程図であり、(a)は、樹脂基板を、硬質基板の上に接着シートを介して接着する工程、(b)は、有機EL素子を樹脂基板の上に形成する工程、(c)は、有機EL装置を硬質基板から剥離する工程(界面剥離を樹脂基板と第2接着剤層との間の界面で生じさせる態様)を示す。
【図5】図5は、図3(b)に示す積層基板を用いて、有機EL装置を製造する方法を説明するための工程図であり、有機EL装置を硬質基板から剥離する工程(界面剥離を硬質基板と第1接着剤層との間の界面で生じさせる態様)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1〜図3は、本発明の有機EL装置の製造方法の一実施形態に用いられる、本発明の有機EL装置製造基板の一実施形態および他の実施形態である積層基板を示し、図1は、積層基板が、接着シートおよび樹脂基板を備える態様、図2は、積層基板が、接着シート、樹脂基板および遮蔽層を備える態様、図3は、積層基板が、接着シート、樹脂基板、遮蔽層および透明導電性薄膜を備える態様である。図4は、図3(b)に示す積層基板を用いて、有機EL装置を製造する方法を説明するための工程図を示す。
【0020】
図1(b)において、本発明の有機EL装置製造用基板の一実施形態である積層基板1は、接着シート2と、接着シート2の上に積層される樹脂基板3とを備えている。
【0021】
接着シート2は、第1接着剤層4と、第1接着剤層4の上に形成される支持シート5と、支持シート5の上に形成される第2接着剤層6とを備えている。
【0022】
支持シート5は、第1接着剤層4と第2接着剤層6との間に介在されており、例えば、可撓性のシートからなる。そのような可撓性材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)などのポリエステル、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィンなどの熱可塑性樹脂などが挙げられる。好ましくは、ポリエステルが挙げられる。
【0023】
支持シート5の厚みは、例えば、25〜250μm、好ましくは、25〜75μmである。
【0024】
第1接着剤層4は、支持シート5の下面全面に形成されている。
【0025】
第1接着剤層4を形成する接着剤組成物は、後述する有機EL層13(図4(b)参照)に影響を与える成分の発生量が低減された感圧接着剤組成物であって、例えば、アクリル系ポリマーを含有している。
【0026】
アクリル系ポリマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分として含むモノマー成分を重合させることにより得られる。
【0027】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、アクリル酸アルキルエステルおよび/またはメタクリル酸アルキルエステルであって、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸sec−ブチル、(メタ)アクリル酸tert−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ペンチル、(メタ)アクリル酸イソペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸n−デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシルなどの、アルキル部分が直鎖アルキルまたは分岐アルキルである、(メタ)アクリル酸アルキル(アルキル部分が炭素数1〜12)エステルが挙げられる。
【0028】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、単独使用または併用することができる。
【0029】
上記した主成分のうち、好ましくは、アクリル酸アルキル(アルキル部分が炭素数2〜8)エステル、さらに好ましくは、アクリル酸エチルおよびアクリル酸n−ブチルが挙げられる。
【0030】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルの配合割合は、モノマー成分100モルに対して、例えば、50〜99.9モル、好ましくは、60〜99モルである。また、(メタ)アクリル酸アルキルエステルの配合割合は、モノマー成分100質量部に対して、例えば、50〜99.9質量部、好ましくは、60〜99質量部でもある。
【0031】
また、モノマー成分には、好ましくは、(メタ)アクリル酸エステルと共重合可能な共重合性ビニルモノマーを含有させる。
【0032】
共重合性ビニルモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸5−ヒドロキシペンチル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸7−ヒドロキシヘプチル、(メタ)アクリル酸8−ヒドロキシオクチルなどのヒドロキシル基含有ビニルモノマー、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸などのカルボキシル基含有ビニルモノマーなどの反応性基含有ビニルモノマーが挙げられる。
【0033】
また、共重合性ビニルモノマーとして、二重結合を複数有する多官能性ビニルモノマーを挙げることもできる。
【0034】
多官能性ビニルモノマーとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレートなどの(モノまたはポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレートや、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレートなどの(モノまたはポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレートなどの(モノまたはポリ)アルキレングリコールジ(メタ)アクリレートの他、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどの多価アルコールの(メタ)アクリル酸エステルモノマーなどが挙げられる。
【0035】
共重合性ビニルモノマーは、単独使用または2種以上併用することができる。
【0036】
好ましくは、反応性基含有ビニルモノマー、さらに好ましくは、ヒドロキシル基含有ビニルモノマーが挙げられる。ヒドロキシル基含有ビニルモノマーであれば、ヒドロキシル基が、後述する反応性ビニルモノマーおよび/または架橋剤との反応に供されて、第1接着剤層4がより強固な接着作用を奏することができる。
【0037】
共重合性ビニルモノマーの配合割合は、(メタ)アクリル酸エステル100モルに対して、例えば、0.1〜50モル、好ましくは、1〜40モルである。また、共重合性ビニルモノマーの配合割合は、(メタ)アクリル酸エステル100質量部に対して、例えば、0.1〜50質量部、好ましくは、1〜40質量部でもある。
【0038】
そして、アクリル系ポリマーは、上記したモノマー成分を、例えば、重合開始剤などの存在下で、例えば、溶液重合、塊状重合、乳化重合など、公知の重合方法によって反応させることによって得ることができる。好ましくは、溶媒としてトルエンなどの芳香族系溶媒を用いる溶液重合が採用される。
【0039】
重合開始剤としては、例えば、熱重合開始剤、光重合開始剤などが挙げられる。
【0040】
熱重合開始剤としては、例えば、ペンゾイルパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、過酸化水素などの過酸化物系熱重合開始剤、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二硫酸塩、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]水和物、2,2’−アゾビス(N,N’−ジメチレンイソブチルアミジン)、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二塩酸塩などのアゾ系熱重合開始剤などが挙げられる。
【0041】
光重合開始剤としては、例えば、ベンゾインエーテル系光重合開始剤、アセトフェノン系光重合開始剤、α−ケトール系光重合開始剤、ケタール系光重合開始剤、ベンゾイン系光重合開始剤、ベンジル系光重合開始剤、ベンゾフェノン系光重合開始剤、チオキサントン系光重合開始剤、置換アルキル系光重合開始剤などが挙げられる。
【0042】
ベンゾインエーテル系光重合開始剤としては、例えば、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オンなどが挙げられる。
【0043】
アセトフェノン系光重合開始剤としては、例えば、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、4−フェノキシジクロロアセトフェノン、4−(t−ブチル)ジクロロアセトフェノンなどが挙げられる。
【0044】
α−ケトール系光重合開始剤としては、例えば、2−メチル−2−ヒドロキシプロピオフェノン、1−[4−(2−ヒドロキシエチル)フェニル]−2−メチルプロパン−1−オンなどが挙げられる。
【0045】
ケタール系光重合開始剤としては、例えば、アセトフェノンジエチルケタール、ベンジルジメチルケタールなどが挙げられる。
【0046】
ベンゾイン系光重合開始剤としては、例えば、ベンゾインなどが挙げられる。
【0047】
ベンジル系光重合開始剤としては、例えば、ベンジル、ジベンジルなどが挙げられる。
【0048】
ベンゾフェノン系光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、3、3′−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、ポリビニルベンゾフェノン、α−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンなどが挙げられる。
【0049】
チオキサントン系光重合開始剤としては、例えば、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、ドデシルチオキサントン、ミヒラーズケトンクロロチオキサントンなどが挙げられる。
【0050】
置換アルキル系光重合開始剤としては、例えば、2−ヒドロキシジメチルフェニルプロパン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノンなどが挙げられる。
【0051】
重合開始剤は、単独使用または併用することができる。
【0052】
重合開始剤としては、好ましくは、熱重合開始剤、さらに好ましくは、アゾ系熱重合開始剤が挙げられる。
【0053】
重合開始剤の配合割合は、例えば、モノマー成分100モルに対して、例えば、0.01〜1モルである。また、重合開始剤の配合割合は、例えば、モノマー成分100質量部に対して、例えば、0.01〜1質量部でもある。
【0054】
接着剤組成物は、上記のようにして得られるアクリル系ポリマーを含有しており、また、好ましくは、上記したアクリル系ポリマーの他に、反応性ビニルモノマー、架橋剤および重合開始剤が配合されている。
【0055】
反応性ビニルモノマーは、例えば、上記した共重合性ビニルモノマー(反応性基含有ビニルモノマー、好ましくは、ヒドロキシル基含有ビニルモノマー)の反応性基(好ましくは、ヒドロキシル基)と反応可能な反応性基(好ましくは、イソシアネート基)と、二重結合との両方を含有している。
【0056】
そのような反応性ビニルモノマーとしては、例えば、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネートなどのイソシアネート基含有ビニルモノマーなどが挙げられる。
【0057】
架橋剤は、不揮発性で、かつ、重量平均分子量(GPC法による標準ポリスチレン換算)が、例えば、1万以下、好ましくは、架橋(硬化)時における三次元網状化の効率化の観点から、5000以下である。
【0058】
そのような架橋剤としては、例えば、イソシアネート系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、エポキシ系架橋剤、アジリジン系架橋剤、金属キレート系架橋剤などが挙げられる。好ましくは、イソシアネート系架橋剤(例えば、2,4−トリレンジイソシアネートのトリメチロール変性体など)が挙げられる。
【0059】
重合開始剤としては、上記と同様の重合開始剤が挙げられ、好ましくは、光重合開始剤、さらに好ましくは、ケタール系光重合開始剤が挙げられる。
【0060】
反応性ビニルモノマー、架橋剤および重合開始剤は、それぞれ、単独使用または2種以上併用することができる。
【0061】
反応性ビニルモノマー、架橋剤および重合開始剤は、アクリル系ポリマーに対して、同時に配合することができ、あるいは、適宜のタイミングで、順次、配合することもできる。
【0062】
好ましくは、まず、アクリル系ポリマーに、反応性ビニルモノマーを配合して、それらを、例えば、30〜60℃に加熱することにより反応させ、その後、架橋剤および重合開始剤を配合する。
【0063】
アクリル系ポリマーと反応性ビニルモノマーとの反応では、共重合性ビニルモノマーの反応性基(ヒドロキシル基)と、反応性ビニルモノマーの反応性基(イソシアネート基)とを反応(化学結合)させることができる。これによって、アクリル系ポリマーは、その側鎖に二重結合が導入されることから、硬化性アクリル系ポリマー(重合性アクリル系ポリマー)とされる。
【0064】
なお、反応後、硬化性アクリル系ポリマーを含む反応物を洗浄(精製)して、副成分(例えば、低分子量成分)を除去することができる。精製は、例えば、再沈殿法などによって実施する。
【0065】
精製後の硬化性アクリル系ポリマーの重量平均分子量(GPC法による標準ポリスチレン換算値)は、例えば、10万〜100万であり、分子量10万以下の成分が、例えば、10.0質量%以下である。
【0066】
反応性ビニルモノマーは、共重合性ビニルモノマーの反応性基(ヒドロキシル基)100モルに対して反応性ビニルモノマーの反応性基(イソシアネート基)が、例えば、100モル未満、好ましくは、1〜95モルとなるように、配合される 硬化性アクリル系ポリマーは、後述するが、その後、熱または光などのエネルギーが付与されることによって、さらに二重結合部分が重合(つまり、架橋(自己架橋))して、硬化する。
【0067】
架橋剤は、硬化性アクリル系ポリマーに配合される場合には、その後の硬化反応において、硬化性アクリル系ポリマーの二重結合部分と重合(つまり、架橋)する。
【0068】
架橋剤の配合割合R1は、硬化性アクリル系ポリマー(アクリル系ポリマーおよび反応性ビニルモノマーの総量)100質量部に対して、例えば、0.2〜20質量部、好ましくは、0.5〜5質量部である。
【0069】
重合開始剤は、硬化性アクリル系ポリマーに配合される場合には、その後の硬化反応において、上記した重合反応(架橋反応)を促進させる。
【0070】
重合開始剤の配合割合は、硬化性アクリル系ポリマー(アクリル系ポリマーおよび反応性ビニルモノマーの総量)100質量部に対して、例えば、0.2〜20質量部、好ましくは、1〜10質量部である。
【0071】
硬化性アクリル系ポリマーと、架橋剤と、重合開始剤とが配合された接着剤組成物は、硬化性接着剤組成物とされる。
【0072】
そして、上記した接着剤組成物を、公知の方法により支持シート5の表面(下面)に塗布し、その後、乾燥させることにより、第1接着剤層4を得る。
【0073】
第1接着剤層4の厚みは、例えば、1〜200μm、好ましくは、5〜50μmである。
【0074】
第1接着剤層4は、その後の硬化において、上記した重合反応(架橋反応)が進行し、これによって、より強固な接着作用を奏する。
【0075】
第2接着剤層6は、支持シート5の上面全面に形成されている。
【0076】
第2接着剤層6を形成する接着剤組成物は、感圧接着剤組成物であって、例えば、上記同様のアクリル系ポリマーを含有し、好ましくは、アクリル系ポリマーと、反応性ビニルモノマーと、重合開始剤と、架橋剤とが配合されており、さらに好ましくは、硬化性アクリル系ポリマーと、架橋剤と、重合開始剤とが配合された重合性接着剤組成物とされている。
【0077】
第2接着剤層6を形成する接着剤組成物は、後述するが、硬化後の接着力A2が、硬化後の第1接着剤層4の接着力A1と相異するように調製されている。
【0078】
具体的には、第2接着剤層6を形成する接着剤組成物に配合される架橋剤の配合割合R2(硬化性アクリル系ポリマー100質量部に対する配合割合)が、第1接着剤層4を形成する接着剤組成物に配合される架橋剤の配合割合R1(硬化性アクリル系ポリマー100質量部に対する配合割合)に比べて、好ましくは、低く、具体的には、それらの比(=R2/R1)が、例えば、1未満、好ましくは、0.001〜0.999、さらに好ましくは、0.01〜0.5である。
【0079】
具体的には、第2接着剤層6を形成する接着剤組成物に配合される架橋剤の配合割合R2は、硬化性アクリル系ポリマー100質量部に対して、例えば、0.1〜10質量部、好ましくは、0.5〜5質量部である。
【0080】
なお、第2接着剤層6を形成する接着剤組成物のアクリル系ポリマーのモノマー成分における各成分と、アクリル系ポリマーに配合される反応性ビニルモノマーおよび重合開始剤との配合割合については、第1接着剤層6のそれらと同一とすることができ、あるいは、相異させることもできる。それらは、好ましくは、同一である。
【0081】
上記した接着剤組成物を、公知の方法により支持シート5の表面(上面)に塗布し、その後、乾燥させることにより、第2接着剤層6を得る。
【0082】
第2接着剤層6の厚みは、例えば、0.5〜100μm、好ましくは、1〜25μmである。
【0083】
第2接着剤層6は、その後の硬化において、重合反応(架橋反応)が進行し、これによって、より強固な接着作用を奏する。
【0084】
樹脂基板3は、図1(b)に示すように、第1接着剤層4の上面全面に積層されている。
【0085】
樹脂基板3は、透明性および可撓性のシートからなり、そのような透明可撓性材料としては、例えば、上記した熱可塑性樹脂と同様のものが挙げられる。好ましくは、低コスト化の観点から、ポリエステルが挙げられる。
【0086】
樹脂基板3の厚みは、例えば、1〜500μm、好ましくは、10〜100μmである。
【0087】
積層基板1を得るには、樹脂基板3と接着シート2とをそれぞれ用意し、次いで、樹脂基板3を接着シート2の第2接着剤層6の上面に貼着する。換言すれば、第1接着剤層4が、樹脂基板3の下面に貼着される。
【0088】
これにより、接着シート2と、樹脂基板3とを備える積層基板1を得ることができる。
【0089】
なお、上記した図1(a)の説明では、接着シート2において、支持シート5を、第1接着剤層4と第2接着剤層6との間に介在させているが、例えば、図示しないが、第1接着剤層4と第2接着剤層6との間に介在させることなく、第1接着剤層4と第2接着剤層6とから接着シート2を形成することもできる。その場合には、第1接着剤層4と第2接着剤層6とは直接接触して、互いに貼着されている。
【0090】
好ましくは、図1(a)に示すように、接着シート2において、支持シート5を第1接着剤層4と第2接着剤層6との間に介在させる。
【0091】
これにより、第1接着剤層4と第2接着剤層6とを容易に積層することができ、さらには、後述する有機EL装置18の硬質基板9に対する剥離(図4(c)参照)を容易に実施することができる。
【0092】
また、図2(b)に示すように、積層基板1に、遮蔽層7を設けることもできる。
【0093】
遮蔽層7は、樹脂基板3の上面全面に形成されている。遮蔽層7は、ガスが樹脂基板3を透過することを防止(遮断)して、後述する有機EL層13(図4(b)参照)を遮蔽するためのガスバリア層である。ガスとしては、例えば、水蒸気、空気(酸素を含む)などが挙げられる。
【0094】
遮蔽層7を形成する材料としては、例えば、SiN、SiC、薄膜金属などの無機材料が挙げられる。
【0095】
遮蔽層7の厚みは、例えば、0.01〜100μm、好ましくは、0.1〜10μmである。
【0096】
このような積層基板1を得るには、図2(a)に示すように、例えば、樹脂基板3の上に遮蔽層7を、例えば、スパッタリング法により形成し、その後、図2(b)に示すように、遮蔽層7が上に形成された樹脂基板3を、接着シート2の第2接着剤層6の上に貼着する。
【0097】
また、図3(b)に示すように、上記した積層基板1の上に、上記した遮蔽層7に加え、透明導電性薄膜8を設けることもできる。
【0098】
透明導電性薄膜8は、遮蔽層7の上面全面に形成されている。透明導電性薄膜8は、後述するパターンニングによって電極(具体的には、アノード電極11、図4(b)参照)となる。
【0099】
透明導電性薄膜8を形成する透明導電材料としては、例えば、インジウム・錫複合酸化物(ITO)などの酸化物が挙げられる。
【0100】
透明導電性薄膜8の厚みは、例えば、10〜1000nm、好ましくは、50〜500nmである。
【0101】
このような透明導電性薄膜8の表面抵抗は、例えば、所定の透明性を確保する観点から、1〜50Ω/□である。表面抵抗は、4端針法によって測定される。
【0102】
透明導電性薄膜8を予め積層基板1に設けておけば、その後に、アノード電極11を形成する工程(図4(b)参照)において、透明導電性薄膜8を、別途積層することなく、パターンニングするだけで、アノード電極11を簡単に形成することができる。
【0103】
このような積層基板1を得るには、まず、図2(a)に示すように、例えば、樹脂基板3の上に遮蔽層7を形成し、次いで、図3(a)に示すように、遮蔽層7の上に透明導電性薄膜8を形成する。透明導電性薄膜8は、例えば、真空蒸着などの蒸着法など、公知の薄膜形成法によって形成される。
【0104】
その後、図3(b)に示すように、遮蔽層7および透明導電性薄膜8が上に順次形成された樹脂基板3を、接着シート2の第2接着剤層6の上に貼着する。
【0105】
次に、図3(b)に示す積層基板1を用いて有機EL装置18を製造する方法について、図4を参照して説明する。
【0106】
この方法では、図3(b)に示すように、まず、樹脂基板3が上に積層された接着シート2、つまり、上記した積層基板1を用意する。
【0107】
次いで、この方法では、図4(a)に示すように、積層基板1の樹脂基板3を、硬質基板9の上に、接着シート2を介して接着する。
【0108】
すなわち、接着シート2の第1接着剤層4を硬質基板9の上面に貼着することによって、樹脂基板3が硬質基板9の上に接着する。換言すれば、第1接着剤層4の下面が、硬質基板9に貼着される。
【0109】
硬質基板9を形成する硬質材料としては、例えば、ガラス、セラミックス、金属(例えば、鉄、アルミニウム、ステンレスなど)などの無機硬質材料が挙げられる。好ましくは、透明性(後述する接着剤組成物に対する光の照射の容易性)の観点から、硬化性アクリル系ポリマーに光重合開始剤が配合されている場合には、ガラスが挙げられる。
【0110】
硬質基板9の厚みは、例えば、0.5〜2mmである。
【0111】
次いで、この方法では、図4(b)に示すように、有機EL素子10を、樹脂基板3の上に形成する。
【0112】
有機EL素子10は、公知の有機EL素子であって、例えば、アノード電極11、絶縁層12、有機EL層13およびカソード電極14を備えている。また、有機EL素子10は、例えば、封止層15と、アノード電極11に接続されるアノード端子16と、カソード電極14を封止する封止層15と、カソード端子17とを備えている。
【0113】
アノード電極11は、遮蔽層7の上に形成されており、図4(b)に示される透明導電性薄膜8を、例えば、エッチングなどの公知のパターンニング法によってパターンニングすることにより形成される。
【0114】
絶縁層12は、遮蔽層7の上に、透明導電性薄膜8の一端を被覆するように形成されている。
【0115】
有機EL層13は、アノード電極11および絶縁層12の上に形成されている。
【0116】
カソード電極14は、遮蔽層7および絶縁層12の上に、有機EL層13を被覆するように形成されている。
【0117】
封止層15は、カソード電極14の一端を被覆し、他端を露出するように形成されている。封止層15から露出するカソード電極14の他端は、カソード端子17とされている。
【0118】
アノード端子16は、一端がアノード電極11に接触して封止層15に封止されるとともに、他端が封止層15から露出するように形成されている。
【0119】
有機EL素子10が備える各部材の材料としては、公知の有機EL素子が備える各部材の材料と同様のものが挙げられる。なお、アノード電極11を形成する電極材料としては、上記した透明導電材料と同様のものが挙げられる。
【0120】
上記した有機EL素子10を樹脂基板3の上に形成するには、例えば、まず、透明導電性薄膜8から、公知のパターンニング法によって、アノード電極11を形成する。
【0121】
続いて、絶縁層12、有機EL層13、カソード電極14(カソード端子17を含む)、アノード端子16および封止層15を、公知の方法に従って、順次形成する。
【0122】
これにより、樹脂基板3(遮蔽層7)の上に形成される有機EL素子10を得る。
【0123】
これによって、硬質基板9の上に、接着シート2を介して接着された、樹脂基板3と遮蔽層7と有機EL素子10とを備える有機EL装置18を製造することができる。
【0124】
その後、第1接着剤層4および第2接着剤層6における接着剤組成物が、硬化性アクリル系ポリマーおよび/または架橋剤を含有している場合には、加熱または光などのエネルギーによって、それらを反応させる。
【0125】
好ましくは、光の照射によって、硬化性アクリル系ポリマーの二重結合の重合反応を進行させて、接着剤組成物を硬化させる。
【0126】
詳しくは、光、好ましくは、紫外線、具体的には、波長100〜400nmの紫外線を、硬質基板9側から接着シート2に向けて照射する。
【0127】
光は、接着シート2に対する光量が、積算値で、例えば、100〜10000mJ/cmとなるように、照射する。
【0128】
これによって、接着剤組成物が硬化する。
【0129】
そして、積層基板1の接着シート2では、硬化後の第1接着剤層4の接着力A1と、硬化後の第2接着剤層6の接着力A2とが、相異している。
【0130】
好ましくは、硬化後の第1接着剤層4の接着力A1が、硬化後の第2接着剤層6の接着力A2より高く設定されている。これにより、後述するが、界面剥離を、第2接着剤層6と樹脂基板3との間の界面IF1(図4(b)の実線矢印)で生じさせることにより、有機EL装置18に不要となる接着シート2(第1接着剤層4)が樹脂基板3に残存(付着)することを防止することができる。
【0131】
硬化後の第1接着剤層4の接着力A1の、硬化後の第2接着剤層6の接着力A2に対する比(=A1/A2)は、例えば、0.99以下、好ましくは、0.9以下、さらに好ましくは、0.7以下であり、通常、0.01以上、好ましくは、0.1以上である。上記した比(A1/A2)が、上記範囲を超えると、硬化後の第1接着剤層4の接着力A1と、硬化後の第2接着剤層6の接着力Aとの差が不十分となり、後述する界面剥離を達成することができない場合がある。
【0132】
具体的には、硬化後の第2接着剤層6の接着力A2から、硬化後の第1接着剤層4の接着力A1を差し引いた値(=A2−A1)は、例えば、0.01〜10(1.02〜1020gf/20mm)、好ましくは、0.1〜1.0(10.2〜102gf/20mm)である。
【0133】
なお、各接着シートの接着力は、JIS Z0237に準じて、シリコンウエハに対する180度引き剥がし接着力(剥離接着力)として測定される。
【0134】
その後、図4(c)の矢印で示すように、有機EL装置18を硬質基板9から上方に剥離する。
【0135】
すなわち、第2接着剤層6の接着力A2が、第1接着剤層4の接着力A1より低い場合には、界面剥離が、第2接着剤層6の上面と樹脂基板3の下面との間の界面IF1(図4(b)の実線矢印)で生じる。
【0136】
そのため、接着シート2は、図4(c)に示すように、硬質基板9に残存(付着)する。
【0137】
一方、第2接着剤層6の接着力A2が、第1接着剤層4の接着力A1より高い場合には、図5に示すように、界面剥離が、第1接着剤層4の下面と硬質基板9の上面との間の界面(図4の仮想線矢印)で生じる。
【0138】
そのため、接着シート2は、樹脂基板3に残存(付着)する。
【0139】
上記した剥離によって、有機EL装置18を得ることができる。
【0140】
そして、上記した方法では、硬化後の第1接着剤層4の接着力A1と硬化後の第2接着剤層6の接着力A2とが、相異している。そのため、有機EL装置18を硬質基板9から剥離する工程において、第1接着剤層4と硬質基板9との界面IF1、および、第2接着剤層6と樹脂基板3との界面IF2におけるいずれか一方において、剥離を生じさせることができる。
【0141】
そのため、接着シート2を、樹脂基板3および硬質基板9のうち、一方のみに残存させて、接着シート2が他方に残存させることを防止することができる。
【0142】
その結果、有機EL装置18を安定して製造することができる。
【0143】
とりわけ、硬化後の第1接着剤層4の接着力A1が、硬化後の第2接着剤層6の接着力A2より高い場合には、図4(c)に示すように、界面剥離を、第2接着剤層6の上面と樹脂基板3の下面との間の界面IF1(図4(b)実線矢印)で生じさせることができる。
【0144】
これによって、接着シート2を硬質基板9の上面のみに残存させて、有機EL装置18に不要となる接着シート2が樹脂基板3の下面に残存(付着)することを防止することができる。
【0145】
そのため、有機EL装置18を優れた信頼性で製造することができる。
【実施例】
【0146】
以下に、調製例、実施例および比較例を示し、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、何らそれらに限定されない。
【0147】
調製例1
(接着剤組成物Aの調製)
温度計、攪拌機、窒素導入管および還流冷却管を備えた500m1の反応器内に、アクリル酸エチル0.59モル(59g)、アクリル酸n−ブチル0.59モル(75.5g)、アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル0.26モル(45.8g)を含むモノマー成分(180.6g)と、2、2’−アゾビスイソブチロニトリル2ミリモル(0.33g)と、トルエン19.4gとを投人し、窒素ガスを1時聞導入しながら撹絆し、反応器内の空気を窒素に置換した。その後、系内の温度を60℃で加熱し、その状態で6時間保持して、上記したモノマー成分を重合反応させることにより、アクリル系ポリマーのトルエン溶液を得た。
【0148】
続いて、アクリル系ポリマーのトルエン溶液に、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(反応性ビニルモノマー)0.21モル(50.8g)を配合して、それらを55℃に加熱することにより、反応させた。つまり、アクリル酸6−ヒドロキシヘキシルのヒドロキシル基と、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネートのイソシアネート基とを重縮合反応させ、これにより、アクリル系ポリマーの側鎖に、不飽和結合(炭素−炭素二重結合)が導入された硬化性アクリル系ポリマーを得た。
【0149】
なお、硬化性アクリル系ポリマーの側鎖(具体的には、−COO−(CH−OCONH−C−COC(CH)=CH)の鎖長は、原子数で16個(側鎖において直列する原子(C、O、Nなど)の数であり、Cが13個、Oが2個、Nが1個。)である。
【0150】
その後、得られた硬化性アクリル系ポリマーをメタノール再沈殿法により精製して、低分子量成分を除去した。精製後の硬化性アクリル系ポリマーの、GPC法による標準ポリスチレン換算の重量平均分子量は60万であり、分子量10万以下の成分が7.3重量%であった。
【0151】
続いて、硬化性アクリル系ポリマー100質量部に、架橋剤(商品名:コロネートL、イソシアネート系架橋剤、2,4−トリレンジイソシアネートのトリメチロール変性体、イソシアネート含量12.7〜13.7質量%、日本ポリウレタン工業社製)2質量部と、光重合開始剤(イルガキュア651、ベンジルジメチルケタール、チバ・スペシャリティケミカルズ社製)5質量部とを添加して、それらを均一に混合することにより、接着剤組成物Aを調製した。
【0152】
調製例2
(接着剤組成物Bの調製)
硬化性アクリル系ポリマー100質量部に対する架橋剤(商品名:コロネートL)の配合部数を、2質量部から1質量部に変更した以外は、接着剤組成物Aの調製と同様に処理することにより、接着剤組成物Bを調製した。
【0153】
実施例1
(積層基板の作製)
厚み25μmのPETからなる支持シートを用意し、調製例2の接着剤組成物Bを、支持シートの一方の面(上面)に、乾燥後の厚みが5μmとなるように塗布し、その後、乾燥させることにより、第2接着剤層を形成した。
【0154】
続いて、調製例1の接着剤組成物Aを、支持シートの他方の面(下面)に、乾燥後の厚みが10μmとなるように塗布し、乾燥させることにより、第1接着剤層を形成した。これにより、支持シートが間に介在された第1接着剤層および第2接着剤層を備える接着シートを作製した(図3(a)参照)。
【0155】
別途、厚み50μmのPETからなる樹脂基板を用意し、次いで、樹脂基板の上面に、厚み0.5μmのSiCからなる遮蔽層をスパッタリング法により形成し(図2(a)参照)、続いて、遮蔽層の上面に、厚み130nmのITOからなる透明導電性薄膜を真空蒸着により形成した(図3(a)参照)。
【0156】
なお、透明導電性薄膜の表面抵抗(シート抵抗)を測定したところ、10Ω/□であった。
【0157】
続いて、遮蔽層および透明導電性薄膜が上に順次形成された樹脂基板を、接着シートの第2接着剤層の上面に貼着した。これにより、樹脂基板、遮蔽層および透明導電性薄膜が上に順次積層された接着シート、つまり、積層基板を作製した(図3(b)参照)。
【0158】
(有機EL装置の製造)
積層基板の樹脂基板を、厚み0.75mm、大きさ100mm×100mmのガラスからなる硬質基板の上に、接着シートを介して接着した(図4(a)参照)。
【0159】
すなわち、接着シートの第1接着剤層を硬質基板の上面に貼着することによって、樹脂基板を硬質基板の上に接着した。
【0160】
次いで、有機EL素子を、樹脂基板の上に形成した。具体的には、積層基板および硬質基板を、有機EL素子試作実験装置(Try−ELLVESS、トッキ社製)に投入し、遮蔽層の上に有機EL素子を作製した(図4(b)参照)。
【0161】
これによって、接着シートの上に、樹脂基板と遮蔽層と有機EL素子とを備える有機EL装置を製造した。
【0162】
その後、中心波長365nmの紫外線を、硬質基板側から接着シートに向けて、積算光量1500mJ/cmで照射した。
【0163】
これによって、接着剤組成物を硬化させた。
【0164】
その後、有機EL装置を樹脂基板から剥離した(図4(c)参照)。
【0165】
その後、樹脂基板の下面を観察したところ、接着シートが残存していないことを確認した。
【0166】
つまり、界面剥離が、樹脂基板と接着シート(第2接着剤層)との間の界面(IF1)で生じた。
【0167】
そして、上記した有機EL装置の製造、接着シートの硬化、および、有機EL装置の剥離の一連の操作を複数回繰り返した。
【0168】
その結果、いずれの場合においても、樹脂基板の下面に、接着シートが残存していないことを確認した。
【0169】
比較例1
積層基板の作製において、第1接着剤層および第2接着剤層を、同一の接着剤組成物Aから形成した以外は、実施例1と同様にして、積層基板を作製し、続いて、有機EL装置の製造、接着シートの硬化、および、有機EL装置の剥離を実施した。
【0170】
そして、上記した一連の操作を複数回繰り返した。
【0171】
その結果、有機EL装置の樹脂基板の下面に、第2接着剤層が残存(付着)したり、あるいは、硬質基板の上面に、第1接着剤層が残存していたことを確認した。
【0172】
つまり、界面剥離が、硬質基板と接着シート(第1接着剤層)との界面(IF2、図4(b)の仮想線矢印参照)、および、樹脂基板と接着シート(第2接着剤層)との間の界面(IF1、図4(b)の実線矢印参照)の両方で生じていた。
【0173】
比較例2
積層基板の作製において、第1接着剤層のみからなる接着シート(つまり、第2接着剤層および支持シートを設けず、第1接着剤層の1層のみからなる接着シート)を用意した以外は、実施例1と同様に処理して、接着シートの上面に、遮蔽層および透明導電性薄膜が上に順次形成された樹脂基板を貼着して、積層基板を作製し、続いて、有機EL装置の製造、接着シートの硬化、および、有機EL装置の剥離を実施した。
【0174】
そして、上記した一連の操作を複数回繰り返した。
【0175】
その結果、有機EL装置の樹脂基板の下面に、第1接着剤層が残存(付着)したり、あるいは、硬質基板の上面に、第1接着剤層が残存していたことを確認した。
【0176】
つまり、界面剥離が、硬質基板と接着シートとの界面(IF2、図4(b)の仮想線の矢印参照)、あるいは、樹脂基板と接着シートとの間の界面(IF1、図4(b)の実線の矢印参照)で生じていた。
【0177】
(硬化後の第1接着剤層および第2接着剤層の接着力の評価)
コロナ処理された厚み38μmのPETシートの処理面に、乾燥後の厚みが20μmとなるように、接着剤組成物Aおよび接着剤組成物Bを、それぞれ塗布し、その後、乾燥させることにより、第1接着剤層および第2接着剤層をそれぞれ形成した。
【0178】
その後、各接着剤層が形成されたPETシートを幅20mmに加工し、次いで、それらを、各接着剤層を介してシリコンウエハ(シリコン基板)のミラー面に貼着した。
【0179】
その後、高圧水銀ランプにて中心波長365nmの紫外線を、積算光量1500mJ/cmでPETシート側から各接着剤層に向けて照射して、各接着剤層をそれぞれ硬化させた。
【0180】
その後、JIS Z0237に準じて、各接着剤層のシリコンウエハに対する180度引き剥がし接着力(剥離接着力)を測定した。
【0181】
その結果、第1接着剤層の剥離接着力が0.59N(60.2gf/20mm)であり、第2接着剤層の剥離接着力が0.030N(3.06gf/20mm)であった。
【符号の説明】
【0182】
1 積層基板(有機EL装置製造用基板)
2 接着シート
3 樹脂基板
4 第1接着剤層
5 支持シート
6 第2接着剤剤層
7 遮蔽層
8 透明導電性薄膜
9 硬質基板
10 有機EL素子
18 有機EL装置
A1 第1接着剤層の接着力
A2 第2接着剤層の接着力



【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂基板が上に積層された接着シートを用意する工程、
前記樹脂基板を、硬質基板の上に前記接着シートを介して接着する工程、
有機EL素子を前記樹脂基板の上に形成することにより、前記樹脂基板と前記有機EL素子とを備える有機EL装置を製造する工程、および、
前記有機EL装置を前記硬質基板から剥離する工程を含み、
前記接着シートは、
前記硬質基板に貼着される第1接着剤層と、
前記第1接着剤層の上に形成され、前記樹脂基板に貼着される第2接着剤層と
を備え、
前記第1接着剤層の接着力と、前記第2接着剤層の接着力とが、相異していることを特徴とする、有機EL装置の製造方法。
【請求項2】
前記第1接着剤層の接着力が、前記第2接着剤層の接着力より高いことを特徴とする、請求項1に記載の有機EL装置の製造方法。
【請求項3】
支持シートが、前記第1接着剤層と前記第2接着剤層との間に介在されていることを特徴とする、請求項1または2に記載の有機EL装置の製造方法。
【請求項4】
樹脂基板が上に積層された接着シートを用意する工程、
前記樹脂基板を、硬質基板の上に前記接着シートを介して接着する工程、
有機EL素子を前記樹脂基板の上に形成することにより、前記樹脂基板と前記有機EL素子とを備える有機EL装置を製造する工程、および、
前記有機EL装置を前記硬質基板から剥離する工程
を含む前記有機EL装置の製造方法に用いられる有機EL装置製造用基板であり、
前記接着シートと、
前記接着シートの上に積層される前記樹脂基板と
を備え、
前記接着シートは、
前記硬質基板に貼着される第1接着剤層と、
前記第1接着剤層の上に形成され、前記樹脂基板に貼着される第2接着剤層と
を備え、
前記第1接着剤層の接着力と、前記第2接着剤層の接着力とが、相異していることを特徴とする、有機EL装置製造用基板。
【請求項5】
前記第1接着剤層の接着力が、前記第2接着剤層の接着力より高いことを特徴とする、請求項4に記載の有機EL装置製造用基板。
【請求項6】
前記第1接着剤層と前記第2接着剤層との間に介在される支持シートを備えていることを特徴とする、請求項4または5に記載の有機EL装置製造用基板。
【請求項7】
前記樹脂基板の上面に形成され、ガスが前記樹脂基板を透過することを防止するための遮蔽層を備えることを特徴とする、請求項4〜6のいずれか一項に記載の有機EL装置製造用基板。
【請求項8】
前記遮蔽層の上面に形成される透明導電性薄膜を備えることを特徴とする、請求項7に記載の有機EL装置製造用基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−142189(P2012−142189A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−294120(P2010−294120)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】