説明

有機EL装置及び電子機器

【課題】従来の有機EL装置では、製造にかかる効率を向上させることが困難である。
【解決手段】第1基板41と、発光層69を含み、第1基板41に対向する有機層31と、第1基板41及び有機層31の間に介在し、有機層31に対向する画素電極29と、有機層31の画素電極29側とは反対側に位置し、有機層31を挟んで画素電極29に対向する対向電極33と、対向電極33及び有機層31の間で対向電極33に接した状態で設けられ、有機層31を挟んで画素電極29に対向する電子注入層71と、珪素を含む材料で構成されており、対向電極33の電子注入層71側とは反対側に配置され、少なくとも一部が対向電極33に接する珪素含有膜35と、を有することを特徴とする有機EL装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機EL装置及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、表示装置の1つとして、一対の電極と、一対の電極間に介在する発光層とを有する有機EL(Electro Luminescence)装置が知られている。
有機EL装置では、従来、1つの画素に対応する画素電極を複数のセルに分割し、これらの複数のセルを切り取りパターンで相互に連結した構成が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2007−66904号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載された構成では、1つの画素に対応する複数のセルのうちでショートが発生したセルにつながる切り取りパターンをレーザ照射によって切断することにより、周辺領域の損傷を最小化することができる。
しかしながら、この従来の有機EL装置では、複数のセルの中から暗点を見出して、且つその暗点のセルに対してレーザ照射を実施しなければならない。つまり、従来の有機EL装置では、補修にかかる工程を簡略化したり、補修にかかる時間を短縮したりすることが困難である。
このため、従来の有機EL装置では、製造にかかる効率を向上させることが困難であるという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現され得る。
【0006】
[適用例1]基板と、発光層を含み、前記基板に対向する有機層と、前記基板及び前記有機層の間に介在し、前記有機層に対向する第1電極と、前記有機層の前記第1電極側とは反対側に位置し、前記有機層を挟んで前記第1電極に対向する第2電極と、前記第2電極及び前記有機層の間で前記第2電極に接した状態で設けられ、前記有機層を挟んで前記第1電極に対向する電子注入層と、珪素を含む材料で構成されており、前記第2電極の前記電子注入層側とは反対側に配置され、少なくとも一部が前記第2電極に接する珪素含有膜と、を有することを特徴とする有機EL装置。
【0007】
適用例1の有機EL装置は、基板と、有機層と、第1電極と、第2電極と、電子注入層と、珪素含有膜と、を有している。有機層は、発光層を含んでおり、基板に対向している。第1電極は、基板及び有機層の間に介在しており、有機層に対向している。第2電極は、有機層の第1電極側とは反対側に位置している。第2電極は、有機層を挟んで第1電極に対向している。電子注入層は、第2電極及び有機層の間で第2電極に接した状態で設けられている。電子注入層は、有機層を挟んで第1電極に対向している。珪素含有膜は、珪素を含む材料で構成されている。珪素含有膜は、第2電極の電子注入層側とは反対側に配置されており、少なくとも一部が第2電極に接している。この有機EL装置では、第1電極と第2電極との間に電圧を印加すると、第1電極及び第2電極間の有機層を電流が流れる。これにより、有機層に含まれる発光層が発光する。
ここで、第1電極と第2電極とが短絡している場合、有機層を電流が流れにくくなる。このため、発光層の発光が阻害されやすくなり、発光の輝度が損なわれることがある。
この有機EL装置では、珪素含有膜が第2電極に接している。このため、第1電極と第2電極との短絡が発生していても、第1電極と第2電極との間に電圧を印加することによって、発光状態を向上させることができる。これは、以下の理由による。
第1電極と第2電極とが短絡しているときに、第1電極と第2電極との間に電圧を印加すると、短絡箇所に電流が集中するため、短絡箇所が発熱する。短絡箇所の発熱によって、短絡箇所における第2電極が珪素含有膜中に熱拡散される。この熱拡散により、短絡箇所における第2電極が減少し、短絡が解消され得る。この結果、発光状態の向上が図られる。この有機EL装置では、第1電極と第2電極との間に電圧を印加することによって短絡が解消され得るので、例えばレーザ照射による補修の場合に比較して、補修にかかる工程を簡略化することができる。このため、有機EL装置の製造にかかる効率を向上させやすくすることができる。
【0008】
[適用例2]上記の有機EL装置であって、前記珪素含有膜は、少なくとも前記有機層に重なる領域にわたって設けられていることを特徴とする有機EL装置。
【0009】
適用例2では、珪素含有膜が少なくとも有機層に重なる領域にわたって設けられている。このため、第1電極と第2電極との短絡が、平面視で有機層のいずれの箇所で発生しても、発光状態の向上を図りやすくすることができる。
【0010】
[適用例3]上記の有機EL装置であって、前記珪素含有膜は、非晶質の珪素で構成されていることを特徴とする有機EL装置。
【0011】
適用例3では、珪素含有膜が非晶質の珪素で構成されている。このため、珪素含有膜における珪素の純度を高めやすくすることができる。これにより、第2電極の珪素含有膜中への熱拡散を促進させやすくすることができる。
【0012】
[適用例4]上記の有機EL装置であって、前記第2電極は、アルミニウムを含む材料で構成されていることを特徴とする有機EL装置。
【0013】
適用例4では、第2電極がアルミニウムを含む材料で構成されている。アルミニウムは、珪素に熱拡散しやすい材料の1つである。このため、第2電極の珪素含有膜中への熱拡散を促進させやすくすることができる。
【0014】
[適用例5]上記の有機EL装置であって、前記電子注入層は、マグネシウムと銀とを含む材料で構成されていることを特徴とする有機EL装置。
【0015】
適用例5では、電子注入層がマグネシウムと銀とを含む材料で構成されている。マグネシウムと銀とを含む材料は、仕事関数が低い材料の1種である。このため、発光層の発光の輝度を向上させやすくすることができる。
【0016】
[適用例6]上記の有機EL装置であって、複数の画素を有しており、前記複数の画素の少なくとも1つは、前記第1電極及び前記電子注入層を有することを特徴とする有機EL装置。
【0017】
この適用例では、有機EL装置は、複数の画素を有している。複数の画素の少なくとも1つは、第1電極及び電子注入層を有している。
この適用例には、前記第1電極及び前記電子注入層のそれぞれを画素ごとに設けた構成も含まれる。この構成では、電子注入層が画素ごとに設けられているので、隣り合う画素間で、電子注入層同士は離間し得る。このため、第1電極及び第2電極の短絡が発生している画素(以下、短絡画素と呼ぶ)において、第1電極と第2電極との間に電圧を印加することによって短絡の解消が図られた後に、この画素に電流が集中することを避けやすくすることができる。つまり、短絡画素の発光状態を向上させつつ、第1電極及び第2電極の短絡が発生していない画素の発光状態を回復させやすくすることができる。
【0018】
[適用例7]上記の有機EL装置であって、前記珪素含有膜は、前記複数の画素にわたって設けられていることを特徴とする有機EL装置。
【0019】
適用例7では、珪素含有膜が複数の画素にわたって設けられている。このため、珪素含有膜に、複数の画素を保護する保護機能を持たせることができる。
【0020】
[適用例8]上記の有機EL装置であって、前記第2電極は、前記複数の画素にわたって設けられていることを特徴とする有機EL装置。
【0021】
適用例8では、第2電極が複数の画素にわたって設けられている。このため、第2電極に、複数の画素を保護する保護機能を持たせることができる。
【0022】
[適用例9]上記の有機EL装置であって、前記基板及び前記第2電極の間に介在し、前記複数の画素のうちで隣り合う画素間を仕切る絶縁膜と、前記絶縁膜と前記第2電極との間に介在し、前記第2電極に接する第3電極と、を有することを特徴とする有機EL装置。
【0023】
適用例9の有機EL装置は、絶縁膜と、第3電極と、を有している。絶縁膜は、基板及び第2電極の間に介在しており、複数の画素のうちで隣り合う画素間を仕切っている。第3電極は、絶縁膜と第2電極との間に介在しており、第2電極に接している。これにより、第2電極の電気伝導を第3電極に補助させることができる。
【0024】
[適用例10]上記の有機EL装置であって、前記第3電極は、前記電子注入層と同じ材料を用いて前記電子注入層と同一工程で形成されていることを特徴とする有機EL装置。
【0025】
適用例10では、第3電極が電子注入層と同じ材料で構成されているので、電子注入層と第3電極とを同一工程で形成しやすくすることができる。
【0026】
[適用例11]上記の有機EL装置を有することを特徴とする電子機器。
【0027】
適用例11の電子機器は、有機EL装置を有している。この有機EL装置は、基板と、有機層と、第1電極と、第2電極と、電子注入層と、珪素含有膜と、を有している。有機層は、発光層を含んでおり、基板に対向している。第1電極は、基板及び有機層の間に介在しており、有機層に対向している。第2電極は、有機層の第1電極側とは反対側に位置している。第2電極は、有機層を挟んで第1電極に対向している。電子注入層は、第2電極及び有機層の間で第2電極に接した状態で設けられている。電子注入層は、有機層を挟んで第1電極に対向している。珪素含有膜は、珪素を含む材料で構成されている。珪素含有膜は、第2電極の電子注入層側とは反対側に配置されており、少なくとも一部が第2電極に接している。この有機EL装置では、第1電極と第2電極との間に電圧を印加すると、第1電極及び第2電極間の有機層を電流が流れる。これにより、有機層に含まれる発光層が発光する。
ここで、第1電極と第2電極とが短絡している場合、有機層を電流が流れにくくなる。このため、発光層の発光が阻害されやすくなり、発光の輝度が損なわれることがある。
この有機EL装置では、珪素含有膜が第2電極に接している。このため、第1電極と第2電極との短絡が発生していても、第1電極と第2電極との間に電圧を印加することによって、発光状態を向上させることができる。これは、以下の理由による。
第1電極と第2電極とが短絡しているときに、第1電極と第2電極との間に電圧を印加すると、短絡箇所に電流が集中するため、短絡箇所が発熱する。短絡箇所の発熱によって、短絡箇所における第2電極が珪素含有膜中に熱拡散される。この熱拡散により、短絡箇所における第2電極が減少し、短絡が解消され得る。この結果、発光状態の向上が図られる。
このため、この適用例の電子機器では、有機EL装置において、第1電極と第2電極との短絡が発生していても、有機EL装置の発光状態を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
実施形態について、有機EL装置を利用した表示装置を例に、図面を参照しながら説明する。
実施形態における表示装置1は、図1に示すように、表示面3を有している。
【0029】
ここで、表示装置1には、複数の画素5が設定されている。複数の画素5は、表示領域7内で、図中のX方向及びY方向に配列しており、X方向を行方向とし、Y方向を列方向とするマトリクスMを構成している。表示装置1は、複数の画素5から選択的に表示面3を介して表示装置1の外に光を射出することで、表示面3に画像を表示することができる。なお、表示領域7とは、画像が表示され得る領域である。図1では、構成をわかりやすく示すため、画素5が誇張され、且つ画素5の個数が減じられている。
【0030】
表示装置1は、図1中のA−A線における断面図である図2に示すように、素子基板11と、封止基板13とを有している。
素子基板11には、表示面3側すなわち封止基板13側に、複数の画素5のそれぞれに対応して、後述する有機EL素子などが設けられている。なお、素子基板11の表示面3側とは反対側の面15は、表示装置1の底面として設定されている。以下において、面15は、底面15と表記される。
【0031】
封止基板13は、素子基板11よりも表示面3側で素子基板11に対向した状態で設けられている。素子基板11と封止基板13とは、接着剤16を介して接合されている。表示装置1では、有機EL素子は、接着剤16によって表示面3側から覆われている。
また、素子基板11と封止基板13との間は、表示装置1の周縁よりも内側で表示領域7を囲むシール材17によって封止されている。つまり、表示装置1では、有機EL素子と接着剤16とが、素子基板11及び封止基板13並びにシール材17によって封止されている。
【0032】
ここで、表示装置1における複数の画素5は、それぞれ、表示面3から射出する光の色が、図3に示すように、赤系(R)、緑系(G)及び青系(B)のうちの1つに設定されている。つまり、マトリクスMを構成する複数の画素5は、Rの光を射出する画素5rと、Gの光を射出する画素5gと、Bの光を射出する画素5bとを含んでいる。
なお、以下においては、画素5という表記と、画素5r、5g及び5bという表記とが、適宜、使いわけられる。
【0033】
ここで、Rの色は、純粋な赤の色相に限定されず、橙等を含む。Gの色は、純粋な緑の色相に限定されず、青緑や黄緑等を含む。Bの色は、純粋な青の色相に限定されず、青紫や青緑等を含む。他の観点から、Rの色を呈する光は、光の波長のピークが、可視光領域で570nm以上の範囲にある光であると定義され得る。また、Gの色を呈する光は、光の波長のピークが500nm〜565nmの範囲にある光であると定義され得る。Bの色を呈する光は、光の波長のピークが415nm〜495nmの範囲にある光であると定義され得る。
【0034】
マトリクスMでは、Y方向に沿って一列に並ぶ複数の画素5が、1つの画素列18を構成している。また、X方向に沿って一列に並ぶ複数の画素5が、1つの画素行19を構成している。
1つの画素列18内の各画素5は、光の色がR、G及びBのうちの1つに設定されている。つまり、マトリクスMは、複数の画素5rがY方向に配列した画素列18rと、複数の画素5gがY方向に配列した画素列18gと、複数の画素5bがY方向に配列した画素列18bとを有している。そして、表示装置1では、画素列18r、画素列18g及び画素列18bが、この順でX方向に沿って反復して並んでいる。
なお、以下においては、画素列18という表記と、画素列18r、画素列18g及び画素列18bという表記とが、適宜、使いわけられる。
【0035】
表示装置1は、回路構成を示す図である図4に示すように、画素5ごとに、選択トランジスタ21と、駆動トランジスタ23と、容量素子25と、有機EL素子27とを有している。有機EL素子27は、画素電極29と、有機層31と、対向電極33とを有している。選択トランジスタ21及び駆動トランジスタ23は、それぞれ、TFT(Thin Film Transistor)素子で構成されており、スイッチング素子としての機能を有する。
また、表示装置1は、走査線駆動回路37と、データ線駆動回路38と、複数の走査線GTと、複数のデータ線SIと、複数の電源線PWとを有している。
【0036】
複数の走査線GTは、それぞれ走査線駆動回路37につながっており、Y方向に互いに間隔をあけた状態でX方向に延びている。
複数のデータ線SIは、それぞれデータ線駆動回路38につながっており、X方向に互いに間隔をあけた状態でY方向に延びている。
複数の電源線PWは、Y方向に互いに間隔をあけた状態で、且つ各電源線PWと各走査線GTとがY方向に間隔をあけた状態でX方向に延びている。
【0037】
各画素5は、各走査線GTと各データ線SIとの交差に対応して設定されている。各走査線GT及び各電源線PWは、それぞれ、図3に示す各画素行19に対応している。各データ線SIは、図3に示す各画素列18に対応している。
図4に示す各選択トランジスタ21のゲート電極は、対応する各走査線GTに電気的につながっている。各選択トランジスタ21のソース電極は、対応する各データ線SIに電気的につながっている。各選択トランジスタ21のドレイン電極は、各駆動トランジスタ23のゲート電極及び各容量素子25の一方の電極に電気的につながっている。
【0038】
容量素子25の他方の電極と、駆動トランジスタ23のソース電極は、それぞれ、対応する各電源線PWに電気的につながっている。
各駆動トランジスタ23のドレイン電極は、各画素電極29に電気的につながっている。各画素電極29と対向電極33とは、画素電極29を陽極とし、対向電極33を陰極とする一対の電極を構成している。
ここで、対向電極33は、マトリクスMを構成する複数の画素5間にわたって一連した状態で設けられており、複数の画素5間にわたって共通して機能する。
各画素電極29と対向電極33との間に介在する有機層31は、有機材料で構成されており、後述する発光層を含んだ構成を有している。
【0039】
選択トランジスタ21は、この選択トランジスタ21につながる走査線GTに選択信号が供給されるとON状態となる。このとき、この選択トランジスタ21につながるデータ線SIからデータ信号が供給され、駆動トランジスタ23がON状態になる。駆動トランジスタ23のゲート電位は、データ信号の電位が容量素子25に一定の期間だけ保持されることによって、一定の期間だけ保持される。これにより、駆動トランジスタ23のON状態が一定の期間だけ保持される。なお、各データ信号は、階調表示に応じた電位に生成される。
【0040】
駆動トランジスタ23のON状態が保持されているときに、駆動トランジスタ23のゲート電位に応じた電流が、電源線PWから画素電極29と有機層31を経て対向電極33に流れる。そして、有機層31に含まれる発光層が、有機層31を流れる電流量に応じた輝度で発光する。これにより、表示装置1では、階調表示が行われ得る。
表示装置1は、有機層31に含まれる発光層が発光し、発光層からの光が封止基板13を介して表示面3から射出されるトップエミッション型の有機EL装置の1つである。なお、表示装置1では、表示面3側という表現が上側とも表現され、底面15側という表現が下側とも表現される。
【0041】
ここで、素子基板11及び封止基板13のそれぞれの構成について、詳細を説明する。
素子基板11は、図3中のC−C線における断面図である図5に示すように、第1基板41を有している。なお、図5では、構成をわかりやすく示すため、選択トランジスタ21、容量素子25、データ線SI及び電源線PWが省略されている。
第1基板41は、例えばガラスや石英などの光透過性を有する材料で構成されており、表示面3側に向けられた第1面42aと、底面15側に向けられた第2面42bとを有している。
【0042】
第1基板41の第1面42aには、ゲート絶縁膜43が設けられている。ゲート絶縁膜43の表示面3側には、絶縁膜45が設けられている。絶縁膜45の表示面3側には、絶縁膜47が設けられている。
また、第1基板41の第1面42aには、各画素5の駆動トランジスタ23に対応して、半導体層51が設けられている。半導体層51は、ゲート絶縁膜43によって表示面3側から覆われている。なお、ゲート絶縁膜43の材料としては、例えば酸化シリコンなどの材料が採用され得る。
【0043】
ゲート絶縁膜43の表示面3側には、平面視で半導体層51に重なる領域にゲート電極53が設けられている。ゲート電極53の材料としては、例えば、アルミニウム、銅、モリブデン、タングステン、クロムなどの金属や、これらを含む合金などが採用され得る。ゲート電極53は、絶縁膜45によって表示面3側から覆われている。
【0044】
絶縁膜45の表示面3側には、平面視で半導体層51のソース領域(図示せず)に重なる領域にソース電極55が設けられている。ソース電極55は、絶縁膜45及びゲート絶縁膜43に設けられたコンタクトホール57を介して半導体層51のソース領域(図示せず)につながっている。ソース電極55の材料としては、例えば、アルミニウム、銅、モリブデン、タングステン、クロムなどの金属や、これらを含む合金などが採用され得る。ソース電極55は、絶縁膜47によって表示面3側から覆われている。
【0045】
絶縁膜47の表示面3側には、画素電極29が設けられている。画素電極29は、絶縁膜47、絶縁膜45及びゲート絶縁膜43に設けられたコンタクトホール59を介して半導体層51のドレイン領域(図示せず)につながっている。画素電極29の材料としては、例えば、銀、白金、アルミニウム、銅などの光反射性を有する金属や、これらを含む合金などが採用され得る。
【0046】
画素電極29を陽極として機能させる場合には、画素電極29の材料として、銀、白金などの仕事関数が比較的高い材料を用いることが好ましい。また、画素電極29の材料としてITO(Indium Tin Oxide)やインジウム亜鉛酸化物(Indium Zinc Oxide)などを用い、光反射性を有する部材を画素電極29と第1基板41との間に設けた構成も採用され得る。本実施形態では、画素電極29の材料としてITOが採用されている。
また、絶縁膜45及び47の材料としては、例えば、酸化シリコン、窒化シリコン、アクリル系の樹脂などの材料が採用され得る。
【0047】
隣り合う画素電極29同士の間には、各画素5を区画する絶縁膜(第1絶縁膜)61が領域62にわたって設けられている。絶縁膜61は、例えば、酸化シリコン、窒化シリコン、アクリル系の樹脂などの光透過性を有する材料で構成されている。絶縁膜61は、平面視で、表示領域7にわたって格子状に設けられている。このため、表示領域7は、絶縁膜61によって複数の画素5の領域に区画されている。1つの画素5に着目すると、絶縁膜61は、平面視で環状に設けられている。なお、各画素電極29は、絶縁膜61によって囲まれた各画素5の領域に平面視で重なっている。本実施形態では、絶縁膜61の材料として酸化シリコンが採用されている。
【0048】
絶縁膜61の表示面3側には、各画素5の領域を囲む絶縁膜(第2絶縁膜)63が設けられている。絶縁膜63は、例えば、カーボンブラックやクロムなどの光吸収性が高い材料を含有するアクリル系の樹脂やポリイミド樹脂などの有機材料で構成されており、平面視で絶縁膜61に沿って格子状に設けられている。1つの画素5に着目すると、絶縁膜63は、平面視で環状に設けられている。本実施形態では、絶縁膜63の材料としてアクリル系の樹脂が採用されている。
画素電極29の表示面3側には、絶縁膜63に囲まれた領域(画素形成領域)内に、有機層31が設けられている。本実施形態では、有機層31の厚みは、100nm程度に設定されている。
【0049】
有機層31は、各画素5に対応して設けられており、正孔注入層65と、正孔輸送層67と、発光層69とを有している。
正孔注入層65は、有機材料で構成されており、平面視で絶縁膜63によって囲まれた領域内で、画素電極29の表示面3側に設けられている。
正孔注入層65の有機材料としては、3,4−ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)等のポリチオフェン誘導体と、ポリスチレンスルホン酸(PSS)等との混合物が採用され得る。正孔注入層65の有機材料としては、ポリスチレン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリアセチレンやこれらの誘導体なども採用され得る。
【0050】
正孔輸送層67は、有機材料で構成されており、平面視で絶縁膜63によって囲まれた領域内で、正孔注入層65の表示面3側に設けられている。
正孔輸送層67の有機材料としては、例えば、下記化合物1として示されるTFBなどのトリフェニルアミン系ポリマーを含んだ構成が採用され得る。
【0051】
【化1】

【0052】
発光層69は、有機材料で構成されており、平面視で絶縁膜63によって囲まれた領域内で、正孔輸送層67の表示面3側に設けられている。
Rの画素5rに対応する発光層69の有機材料としては、例えば、下記化合物2として示されるF8(ポリジオクチルフルオレン)と、ペリレン染料とを混合したものが採用され得る。
【0053】
【化2】

【0054】
Gの画素5gに対応する発光層69の有機材料としては、例えば、下記化合物3として示されるF8BTと、上記化合物1として示されるTFBと、上記化合物2として示されるF8とを混合したものが採用され得る。
【0055】
【化3】

【0056】
Bの画素5bに対応する発光層69の有機材料としては、例えば、上記化合物2として示されるF8が採用され得る。
【0057】
有機層31の表示面3側には、図5に示すように、絶縁膜63に囲まれた領域内に、電子注入層71が設けられている。
また、絶縁膜63の表示面3側には、補助電極73が設けられている。
電子注入層71及び補助電極73のそれぞれの材料としては、例えば、マグネシウムと銀とを含む合金や、カルシウムなどが採用され得る。また、電子注入層71及び補助電極73のそれぞれの材料としては、ストロンチウムなども採用され得る。本実施形態では、電子注入層71及び補助電極73の材料として、マグネシウムと銀とを含む合金(以下、MgAgと呼ぶ)が採用されている。
【0058】
電子注入層71の表示面3側には、対向電極33が設けられている。対向電極33は、例えば、アルミニウム等の金属を薄膜化して光透過性を付与したものなどが採用され得る。また、対向電極33は、例えば、マグネシウムと銀とを含む合金等を薄膜化して光透過性を付与したものなどによっても構成され得る。また、対向電極33の材料としては、ニッケルや銅などの金属も採用され得る。本実施形態では、対向電極33として、アルミニウムを主成分とする金属の薄膜が採用されている。対向電極33は、電子注入層71及び絶縁膜63を表示面3側から複数の画素5間にわたって覆っている。
なお、補助電極73は、対向電極33の電気伝導を補助する機能を有している。
【0059】
対向電極33の表示面3側には、珪素含有膜35が設けられている。珪素含有膜35の材料としては、例えば、アモルファス(非晶質)シリコン、多結晶シリコン、酸化シリコン、窒化シリコン、酸化窒化シリコンなどが採用され得る。本実施形態では、珪素含有膜35の材料として、アモルファスシリコンが採用されている。珪素含有膜35は、複数の画素5間にわたって一連した状態で設けられている。
【0060】
なお、表示装置1では、各画素5において発光する領域は、平面視で画素電極29と有機層31と対向電極33とが重なる領域であると定義され得る。また、画素5ごとに発光する領域を構成する要素の一群が1つの有機EL素子27であると定義され得る。表示装置1では、1つの有機EL素子27は、1つの画素電極29と、1つの有機層31と、1つの電子注入層71と、1つの画素5に対応する対向電極33とを含んだ構成を有している。
【0061】
封止基板13は、例えばガラスや石英などの光透過性を有する材料で構成されており、表示面3側に向けられた外向面13aと、底面15側に向けられた対向面13bとを有している。
上記の構成を有する素子基板11及び封止基板13は、素子基板11の対向電極33と封止基板13の対向面13bとの間が、接着剤16を介して接合されている。
【0062】
表示装置1では、図2に示すシール材17は、図5に示す第1基板41の第1面42aと、封止基板13の対向面13bとによって挟持されている。つまり、表示装置1では、有機EL素子27及び接着剤16が、第1基板41及び封止基板13並びにシール材17によって封止されている。なお、シール材17は、対向面13b及び対向電極33の間に設けられていてもよい。この場合、有機EL素子27及び接着剤16は、素子基板11及び封止基板13並びにシール材17によって封止されているとみなされ得る。
【0063】
ここで、表示装置1の製造方法について説明する。
表示装置1の製造方法は、素子基板11を製造する工程と、表示装置1を組み立てる工程とに大別される。
素子基板11を製造する工程では、図6(a)に示すように、まず、第1基板41の第1面42aに駆動素子層81を形成する。この駆動素子層81には、前述した選択トランジスタ21(図4)、駆動トランジスタ23、容量素子25(図4)、電源線PW(図4)、画素電極29、ゲート絶縁膜43、絶縁膜45、絶縁膜47が含まれている。
【0064】
次いで、図6(b)に示すように、平面視で画素電極29の周縁及び絶縁膜47に重なる領域(図5に示す領域62)に絶縁膜61を形成する。絶縁膜61の形成では、まず、CVD(Chemical Vapor Deposition)技術などを活用することにより、平面視で画素電極29及び絶縁膜47を覆う酸化シリコン膜を形成する。次いで、例えばフォトリソグラフィ技術及びエッチング技術などを活用することによって、酸化シリコン膜をパターニングする。これにより、絶縁膜61が形成され得る。
【0065】
次いで、図6(c)に示すように、平面視で絶縁膜61に重なる領域に絶縁膜63を形成する。絶縁膜63の形成では、まず、感光性を有するアクリル系の樹脂で、平面視で画素電極29及び絶縁膜61を覆う樹脂膜を形成する。この樹脂膜の形成では、スピンコート技術や印刷技術などが活用され得る。次いで、例えばフォトリソグラフィ技術を活用することによって、樹脂膜をパターニングする。これにより、絶縁膜63が形成され得る。
なお、駆動素子層81から絶縁膜63までの構成が形成された第1基板41は、以下において基板41aと呼ばれる。
【0066】
次いで、基板41aに酸素プラズマ処理を施す。これにより、画素電極29及び絶縁膜61に親液性が付与される。
次いで、基板41aにCF4プラズマ処理を施す。これにより、絶縁膜63に撥液性が付与される。
【0067】
次いで、図7(a)に示すように、絶縁膜63によって囲まれた各画素5の領域内に液状体65aを配置する。液状体65aの配置には、液滴吐出ヘッド83を利用したインクジェット法が活用され得る。
液滴吐出ヘッド83から液状体65aなどを液滴65bとして吐出する技術は、インクジェット技術と呼ばれる。そして、インクジェット技術を活用して液状体65aなどを所定の位置に配置する方法は、インクジェット法と呼ばれる。このインクジェット法は、塗布法の1つである。
【0068】
各画素5の領域内に配置された液状体65aを減圧乾燥法で乾燥させてから焼成を行うことによって、図7(b)に示す正孔注入層65が形成され得る。なお、正孔注入層65を構成する有機材料が含まれた液状体65aは、PEDOTとPSSとの混合物を、溶媒に溶解させた構成が採用され得る。溶媒としては、例えば、ジエチレングリコール、イソプロピルアルコール、ノルマルブタノールなどが採用され得る。なお、減圧乾燥法は、減圧環境下で行う乾燥方法であり、真空乾燥法とも呼ばれる。また、液状体65aの焼成条件は、環境温度が約200℃で、保持時間が約10分間である。
【0069】
次いで、図7(b)に示すように、絶縁膜63によって囲まれた領域内に液滴吐出ヘッド83から、正孔輸送層67を構成する有機材料が含まれた液状体67aを液滴67bとして吐出することで、絶縁膜63によって囲まれた領域内に液状体67aを配置する。このとき、正孔注入層65は、液状体67aによって覆われる。なお、液状体67aは、TFBを溶媒に溶解させた構成が採用され得る。溶媒としては、例えば、シクロヘキシルベンゼンなどが採用され得る。
【0070】
次いで、液状体67aを減圧乾燥法で乾燥させてから、不活性ガス中で焼成を行うことによって、図8(a)に示す正孔輸送層67が形成され得る。なお、液状体67aの焼成条件は、環境温度が約130℃で、保持時間が約1時間である。
【0071】
次いで、図8(a)に示すように、絶縁膜63によって囲まれた各領域内に、発光層69を構成する有機材料が含まれた液状体69aを配置する。液状体69aは、液滴吐出ヘッド83から液状体69aを液滴69bとして吐出することによって配置される。このとき、正孔輸送層67は、液状体69aによって覆われる。なお、液状体69aは、画素5r、5g及び5bのそれぞれに対応する前述した有機材料を溶媒に溶解させた構成が採用され得る。溶媒としては、例えば、シクロヘキシルベンゼンなどが採用され得る。
【0072】
次いで、液状体69aを減圧乾燥法で乾燥させてから、不活性ガス中で焼成を行うことによって、図8(b)に示す発光層69が形成され得る。これにより、正孔注入層65と、正孔輸送層67と、発光層69とを有する有機層31が形成され得る。液状体69aの焼成条件は、環境温度が約130℃で、保持時間が約1時間である。
【0073】
次いで、図8(b)に示すように、電子注入層71と補助電極73とを形成する。電子注入層71及び補助電極73の形成では、例えばスパッタリング技術などの成膜技術が活用され得る。スパッタリング技術を活用することにより、絶縁膜63に囲まれた領域内と、絶縁膜63の天板部63a(図8(a)参照)上とに、MgAg膜が形成され得る。
【0074】
このとき、MgAg膜の厚みは、絶縁膜63に囲まれた領域内のMgAg膜と、天板部63a上のMgAg膜とが離間する厚みに設定される。MgAg膜の厚みとしては、例えば、2nm以上且つ5nm未満の範囲が適用され得る。2nm未満では、電子注入層71としての機能が十分に発揮されにくい。また、5nm以上では、MgAg膜が、絶縁膜63に囲まれた領域内と、天板部63a上との間で離間しにくい。本実施形態では、MgAg膜の厚みは、約3nmに設定されている。
【0075】
これにより、絶縁膜63に囲まれた領域内のMgAg膜が電子注入層71となり、天板部63a上のMgAg膜が補助電極73となり得る。これらの電子注入層71及び補助電極73は、絶縁膜63の側壁部63bにおいて離間している。このため、対向電極33(図5)を形成する前の段階では、電子注入層71と補助電極73とは、電気的に絶縁している。なお、MgAg膜が絶縁膜63の側壁部63bにおいて離間している状態は、段切れ状態とも呼ばれる。
上記の方法により、1回の成膜工程で、絶縁膜63に囲まれた領域内で発光層69上に電子注入層71が形成され、絶縁膜63上に補助電極73が形成され得る。
【0076】
次いで、図5に示すように、電子注入層71及び補助電極73の表示面3側に、対向電極33を形成する。対向電極33の形成では、例えばスパッタリング技術などの成膜技術が活用され得る。本実施形態では、スパッタリング技術を活用することにより、電子注入層71及び補助電極73の表示面3側にアルミニウムを主成分とする金属の膜(以下、アルミ含有膜と呼ぶ)を形成する。
【0077】
アルミ含有膜の厚みとしては、例えば、5nm以上且つ8nm以下の範囲が適用され得る。5nm未満では、対向電極33の電気伝導が確保されにくくなる。また、8nmを超えると、発光層69からの光が電子注入層71と対向電極33とによって吸収されやすく、表示装置1の輝度が確保されにくくなる。本実施形態では、アルミ含有膜の厚みは、約7nmに設定されている。
【0078】
対向電極33の形成に次いで、対向電極33の表示面3側に、珪素含有膜35を形成する。珪素含有膜35の形成では、例えばCVD技術などの成膜技術が活用され得る。本実施形態では、CVD技術を活用することにより、対向電極33の表示面3側にアモルファスシリコンの膜(以下、a−Si膜と呼ぶ)を形成する。
【0079】
a−Si膜の厚みとしては、例えば、対向電極33の厚みの3/4以上、且つ50nm以下の範囲が適用され得る。対向電極33の厚みの3/4未満では、後述するアルミニウムの拡散が促進されにくくなる。また、50nmを超えると、発光層69からの光が珪素含有膜35によって吸収されやすく、表示装置1の輝度が確保されにくくなる。本実施形態では、a−Si膜の厚みは、約20nmに設定されている。
上記の方法により、素子基板11が製造され得る。
【0080】
表示装置1を組み立てる工程では、図2に示すように、素子基板11及び封止基板13を、接着剤16及びシール材17を介して接合する。
このとき、素子基板11及び封止基板13は、図5に示すように、第1基板41の第1面42aと、封止基板13の対向面13bとが向き合った状態で接合される。これにより、表示装置1が製造され得る。
【0081】
本実施形態では、第1基板41が基板に対応し、画素電極29が第1電極に対応し、対向電極33が第2電極に対応し、補助電極73が第3電極に対応している。
表示装置1では、対向電極33の表示面3側に珪素含有膜35が設けられている。珪素含有膜35は、対向電極33に接した状態で設けられている。このため、画素電極29と対向電極33とが短絡している場合に、画素電極29と対向電極33との間に電圧を印加することにより、短絡が解消されやすい。
【0082】
ここで、画素電極29と対向電極33との短絡としては、例えば、画素電極29の表面粗さが粗いことが想定される。画素電極29と対向電極33とが、例えば、画素5を模式的に示す断面図である図9(a)に示すように、画素電極29の突起部29aによって短絡している。図9(a)に示す状態では、画素電極29と対向電極33との間に電圧を印加すると、突起部29aに電流集中が発生する。
【0083】
このため、短絡が発生している画素5(以下、短絡画素5tと呼ぶ)では、有機層31に流れる電流が極めて少なくなる。また、短絡画素5tを除く他の画素5における有機層31への電流も少なくなる。従って、短絡画素5tを含む複数の画素5における発光の輝度が極めて低くなる。この結果、表示装置1の表示が行われなかったり、極めて暗い表示になったりしてしまう。
【0084】
短絡画素5tにおいて突起部29aに電流集中が発生すると、突起部29aが発熱する。突起部29aが発熱すると、突起部29aの周辺部が加熱される。このとき、突起部29aに接している対向電極33は、図9(a)中のD部の拡大図である図9(b)に示すように、突起部29aの周辺部33aが加熱される。周辺部33aは、加熱されることによって温度が上昇する。
【0085】
ここで、周辺部33aを含む対向電極33は、前述したように、アルミニウムを主成分とする金属で構成されている。また、アモルファスシリコンで構成されている珪素含有膜35は、対向電極33に接した状態で設けられている。シリコンに接しているアルミニウムを加熱すると、アルミニウムは、温度上昇によってシリコン中に熱拡散する。このため、周辺部33aは、温度上昇によって珪素含有膜35中に拡散する。この結果、突起部29aと対向電極33とが離隔する。突起部29aと対向電極33とが離隔することにより、画素電極29と対向電極33との短絡が解消され得る。
【0086】
なお、突起部29aと対向電極33とが離隔しても、電子注入層71は、突起部29aの外周部29bに接した状態が維持されている。しかしながら、電子注入層71は、厚みが約3nmに設定されているので、厚みの方向とは交差する面方向における電気伝導性が極めて低い。つまり、電子注入層71と外周部29bとの間には、極めて大きい電気抵抗が存在する。また、電子注入層71は、各画素5に対応して個別に設けられている。つまり、隣り合う画素5同士の間で、電子注入層71同士は、直接的にはつながっていない。これらの理由により、突起部29aと対向電極33とが離隔すれば、突起部29aへの電流集中が緩和される。このため、突起部29aと対向電極33とが離隔すれば、画素電極29と対向電極33との短絡が解消されるとみなされ得る。
【0087】
画素電極29と対向電極33との短絡が解消されると、突起部29aへの電流集中が緩和される。このため、短絡画素5tにおける有機層31に流れる電流が増大する。また、短絡画素5tを除く他の画素5における有機層31への電流も増大する。従って、短絡画素5tを含む複数の画素5における発光の輝度が向上する。この結果、表示装置1の表示が正常に行われ得る。
なお、画素電極29と対向電極33との短絡としては、画素電極29の表面粗さに起因する突起部29aのみならず、例えば、画素電極29と対向電極33との間に異物が混在した場合や、有機層31にピンホールが発生した場合なども想定され得る。これらの場合においても、画素電極29と対向電極33との間に電圧を印加することにより、短絡を解消することができる。
【0088】
本実施形態では、画素電極29と対向電極33との間に電圧を印加することによって短絡が解消され得るので、例えばレーザ照射による補修の場合に比較して、補修にかかる工程を簡略化することができる。このため、表示装置1の製造における効率化を図りやすくすることができる。
【0089】
本実施形態では、珪素含有膜35が、複数の画素5間にわたって一連した状態で設けられている。つまり、珪素含有膜35は、平面視で対向電極33を覆う領域にわたって設けられている。このため、画素電極29と対向電極33との短絡が平面視で対向電極33のいずれの箇所で発生しても、複数の画素5における発光の輝度を向上させやすくすることができる。
【0090】
また、本実施形態では、珪素含有膜35がアモルファスシリコンで構成されている。アモルファスシリコンの膜は、CVD技術などを活用することにより、他の構成に損傷を与えにくい温度範囲で形成され得る。
また、アモルファスシリコンでは、珪素含有膜35におけるシリコン(珪素)の純度を高めやすくすることができる。このため、対向電極33の珪素含有膜35中への拡散を促進させやすくすることができる。
【0091】
また、本実施形態では、対向電極33がアルミニウムを主成分とする金属で構成されている。アルミニウムは、シリコン中に拡散しやすい材料の1つである。このため、対向電極33の珪素含有膜35中への拡散を促進させやすくすることができる。
【0092】
また、本実施形態では、対向電極33が、電子注入層71及び絶縁膜63を表示面3側から複数の画素5間にわたって覆っている。つまり、対向電極33は、複数の画素5のそれぞれに対応する有機層31を表示面3側から、一連した状態で覆っている。このため、複数の有機層31を対向電極33で保護することができる。対向電極33が複数の画素5間にわたって一連している構成は、複数の有機層31を封止する機能を強化することができる点で特に好ましい。
【0093】
また、本実施形態では、珪素含有膜35が、複数の画素5間にわたって一連した状態で設けられている。このため、複数の有機層31を珪素含有膜35で保護することができる。珪素含有膜35が複数の画素5間にわたって一連している構成は、複数の有機層31を封止する機能を強化することができる点で特に好ましい。
【0094】
また、本実施形態では、隣り合う画素5同士の間を仕切る絶縁膜63の天板部63a(図8(a))上に補助電極73が設けられている。このため、対向電極33の電気伝導を補助電極73で補助することができる。
【0095】
また、本実施形態では、補助電極73が、電子注入層71と同じ材料で、且つ電子注入層71と同じ階層に形成されている。このため、電子注入層71と補助電極73とを同じ工程で形成することができる。これにより、電子注入層71と補助電極73とを異なる工程で形成する場合に比較して、工程を簡略化することができる。この結果、表示装置1の製造における効率化が図られる。
【0096】
なお、本実施形態では、複数の画素5が設定され、画素5ごとに有機EL素子27を有する表示装置1を例に説明したが、実施の形態はこれに限定されない。実施の形態としては、有機EL素子27を表示領域7にわたって一連した状態で設けた照明装置などの形態もある。このような照明装置では、発光層69からの光は、表示領域7にわたって面状に射出され得る。このため、このような照明装置は、例えば液晶表示装置などの光源に好適である。
【0097】
また、本実施形態では、基板41aにCF4プラズマ処理を施すことによって絶縁膜63に撥液性が付与される場合を例に説明したが、撥液性の付与方法はこれに限定されない。絶縁膜63を、例えばフッ素樹脂で構成することによって、絶縁膜63に撥液性を付与することができる。これにより、CF4プラズマ処理を施す工程を省略することができ、製造における効率化が図られる。
【0098】
また、本実施形態では、1回の成膜工程で、電子注入層71及び補助電極73を形成する場合を例に説明したが、電子注入層71及び補助電極73の形成方法はこれに限定されない。電子注入層71及び補助電極73の形成方法は、電子注入層71を形成する工程と、補助電極73を形成する工程との2回の成膜工程で形成する方法も採用され得る。2回の成膜工程では、それぞれ、マスクを使用して成膜するマスクスパッタ技術などが活用され得る。
また、他の形成方法として、段切れを発生させない厚みで1回の成膜工程を実施してから、フォトリソグラフィ技術及びエッチング技術などを活用することによって、電子注入層71と補助電極73とを離間させる方法も採用され得る。
【0099】
また、本実施形態では、有機層31からの光を封止基板13を介して表示面3から射出するトップエミッション型の有機EL装置を例に説明したが、有機EL装置はこれに限定されない。有機EL装置は、有機層31からの光を素子基板11を介して底面15から射出するボトムエミッション型も採用され得る。
ボトムエミッション型の場合、有機層31からの光が底面15から射出されるので、底面15側に表示面3が設定される。つまり、ボトムエミッション型では、表示装置1の底面15と表示面3とが入れ替わる。そして、ボトムエミッション型では、底面15側が上側に対応し、表示面3側が下側に対応する。
【0100】
また、ボトムエミッション型の場合には、画素電極29の材料として、ITOやインジウム亜鉛酸化物などが採用され得る。また、電子注入層71の材料として、カルシウムなどが採用され得る。対向電極33の材料として、アルミニウムなどが採用され得る。
【0101】
上述した表示装置1は、例えば、図10に示す電子機器500の表示部510に適用され得る。この電子機器500は、携帯電話機である。この電子機器500は、操作ボタン511を有している。表示部510は、操作ボタン511で入力した内容や着信情報を始めとする様々な情報について表示を行うことができる。この電子機器500では、表示部510に表示装置1が適用されている。表示装置1では、短絡画素5tが発生したときに、画素電極29と対向電極33との間に電圧を印加することにより、短絡画素5tにおける短絡を解消しやすくすることができる。このため、電子機器500では、表示装置1における短絡画素5tの短絡状態を解消しやすくすることができる。
【0102】
なお、電子機器500としては、携帯電話機に限られず、モバイルコンピュータ、デジタルスチルカメラ、デジタルビデオカメラ、カーナビゲーションシステム用の表示機器などの車載機器、オーディオ機器等の種々の電子機器が挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】本実施形態における表示装置を示す平面図。
【図2】図1中のA−A線における断面図。
【図3】本実施形態における複数の画素の一部を示す平面図。
【図4】本実施形態における表示装置の回路構成を示す図。
【図5】図3中のC−C線における断面図。
【図6】本実施形態での素子基板の製造工程を説明する図。
【図7】本実施形態での素子基板の製造工程を説明する図。
【図8】本実施形態での素子基板の製造工程を説明する図。
【図9】本実施形態における表示装置での短絡画素の一例を模式的に示す断面図。
【図10】本実施形態における表示装置を適用した電子機器の斜視図。
【符号の説明】
【0104】
1…表示装置、3…表示面、5…画素、5t…短絡画素、7…表示領域、11…素子基板、15…底面、27…有機EL素子、29…画素電極、31…有機層、33…対向電極、35…珪素含有膜、41…第1基板、41a…基板、63…絶縁膜、65…正孔注入層、67…正孔輸送層、69…発光層、71…電子注入層、73…補助電極、81…駆動素子層、500…電子機器、510…表示部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
発光層を含み、前記基板に対向する有機層と、
前記基板及び前記有機層の間に介在し、前記有機層に対向する第1電極と、
前記有機層の前記第1電極側とは反対側に位置し、前記有機層を挟んで前記第1電極に対向する第2電極と、
前記第2電極及び前記有機層の間で前記第2電極に接した状態で設けられ、前記有機層を挟んで前記第1電極に対向する電子注入層と、
珪素を含む材料で構成されており、前記第2電極の前記電子注入層側とは反対側に配置され、少なくとも一部が前記第2電極に接する珪素含有膜と、
を有することを特徴とする有機EL装置。
【請求項2】
前記珪素含有膜は、少なくとも前記有機層に重なる領域にわたって設けられていることを特徴とする請求項1に記載の有機EL装置。
【請求項3】
前記珪素含有膜は、非晶質の珪素で構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の有機EL装置。
【請求項4】
前記第2電極は、アルミニウムを含む材料で構成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の有機EL装置。
【請求項5】
前記電子注入層は、マグネシウムと銀とを含む材料で構成されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の有機EL装置。
【請求項6】
複数の画素を有しており、
前記複数の画素の少なくとも1つは、前記第1電極及び前記電子注入層を有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の有機EL装置。
【請求項7】
前記珪素含有膜は、前記複数の画素にわたって設けられていることを特徴とする請求項6に記載の有機EL装置。
【請求項8】
前記第2電極は、前記複数の画素にわたって設けられていることを特徴とする請求項6又は7に記載の有機EL装置。
【請求項9】
前記基板及び前記第2電極の間に介在し、前記複数の画素のうちで隣り合う画素間を仕切る絶縁膜と、
前記絶縁膜と前記第2電極との間に介在し、前記第2電極に接する第3電極と、
を有することを特徴とする請求項8に記載の有機EL装置。
【請求項10】
前記第3電極は、前記電子注入層と同じ材料を用いて前記電子注入層と同一工程で形成されていることを特徴とする請求項9に記載の有機EL装置。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか一項に記載の有機EL装置を有することを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−20996(P2010−20996A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−179874(P2008−179874)
【出願日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】