説明

有機EL装置及び電子機器

【課題】有機EL素子を十分に封止することが可能な、より高い接着強度を確保することが可能な構造を提供する。
【解決手段】複数の有機EL素子22が形成された素子基板20と、素子基板20上に複数の有機EL素子22を覆うように形成された封止層23と、を備え、素子基板20は複数の有機EL素子22をマトリクス状に配置した表示領域Lを有し、素子基板20上に封止層23を覆うように形成された接着層40と、素子基板20に対向配置され接着層40を介して接着された封止基板30と、を備え、接着層40は、封止層23の少なくとも表示領域Lに対応する部位を覆って形成された第1接着層41と、第1接着層41を囲んで形成された第2接着層42と、第2接着層42を囲んで形成された周辺シール層43と、を備え、第1接着層41は、第2接着層42よりも低弾性率を有し、第2接着層42は、第1接着層41よりも高接着強度を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機EL装置及び電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、一対の電極の間に有機発光層を挟持した複数の有機EL素子を備えた有機EL装置が知られている。有機EL装置は、複数の有機EL素子を覆う封止層を備えた素子基板と、前記素子基板に対向して配置され接着層を介して接着された封止基板と、を備えて構成される。そのため、接着層の硬化収縮により封止層に応力がかかり、封止層にクラック等の不具合を発生させてしまい、有機EL素子がダメージを受けてしまう場合がある。
【0003】
このような問題点を解決するための技術が各種検討されており、例えば特許文献1は、周辺部分に位置する接着層は硬化され、有機EL素子上の接着層の全部又は一部を未硬化とすることで、有機EL素子へのダメージを回避する技術を開示している。また、特許文献2は、カラーフィルタ層の辺部へ接着層と比較して弾性率の高い材料からなる応力緩和層を配設することにより、発生する応力を応力緩和層にて吸収する技術を開示している。また、特許文献3は、有機EL素子の封止層に所定の条件を満たす樹脂として変性シリコーン系弾性接着剤を用いることにより、安定した発光特性を維持する技術を開示している。
【特許文献1】特開2003−197366号公報
【特許文献2】特開2003−282259号公報
【特許文献3】特開1996−236271号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1や特許文献3の有機EL装置では、周辺部分に位置する接着層により素子基板と封止基板とを固定しているので、所定の固定力を維持するためには表示領域の大きさが限られてしまう。これにより、表示領域を大きくすると高接着強度が確保できない惧れがある。また、特許文献2の有機EL装置では、カラーフィルタ層の間のブラックマトリクス層に重なる位置に応力緩和層が配設されているので、カラーフィルタ層の幅を広くしたいときに発生する応力を十分に吸収しきれずに封止層にクラック等の不具合を発生させてしまう惧れがある。
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、封止層にクラック等の不具合の発生を防ぎ有機EL素子を十分に封止することが可能な、より高い接着強度を確保することが可能な有機EL装置及び電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、本発明の有機EL装置は、一対の電極の間に有機発光層を挟持した有機EL素子が、複数形成された素子基板と、前記素子基板上に複数の前記有機EL素子を覆うように形成された封止層と、を備える有機EL装置において、前記素子基板は前記有機EL素子をマトリクス状に配置した表示領域を有し、前記素子基板上に前記封止層を覆うように形成された接着層と、前記素子基板に対向配置され前記接着層を介して前記素子基板に接着された封止基板と、を備え、前記接着層は、前記封止層の少なくとも前記表示領域に対応する部位を覆って形成された第1接着層と、前記第1接着層を囲んで形成された第2接着層と、前記第2接着層を囲んで形成された周辺シール層と、を備え、前記第1接着層は、前記第2接着層よりも低弾性率を有し、前記第2接着層は、前記第1接着層よりも高接着強度を有していることを特徴とする。
この構成によれば、少なくとも2種類の接着層により複数の有機EL素子を保護する封止層が覆われ、第1接着層は第2接着層に比べて弾性率が低いので、パネル全体の応力を分散させ易くなり、クラック等の不具合が発生し難い封止層で有機EL素子を十分に封止することが可能となる。また、第2接着層は第1接着層よりも接着強度が高いので、十分な接着強度を確保することができる。その結果、製品としてより封止性能向上を図った、より高い接着強度を確保することが可能な有機EL装置が提供できる。
【0007】
本発明においては、前記第2接着層は、前記表示領域の外側に形成され、かつ、前記第1接着層の側部と前記第2接着層の側部が接する界面が前記表示領域の外側に形成されていることが望ましい。
この構成によれば、2種類の接着層の側部の界面が素子領域外に形成されるのでこの界面が表示領域に表示されることがなく、より表示品質の向上を図った有機EL装置が提供できる。
【0008】
本発明においては、前記第2接着層は、連続して繋がるように形成されていることが望ましい。
この構成によれば、第2接着層は途切れることなく一本で形成され、接着可能な領域が同一の条件で複数の接着層に分断して形成されたものと比べて接着面積を多く確保できるので、より高い接着強度を確保することができる。
【0009】
本発明においては、前記第2接着層は、複数に分断して形成されていることが望ましい。
この構成によれば、第2接着層は複数の接着層に分断して形成されるので、途切れることなく一本で形成されたものと比べて、より硬化収縮による応力を分散させ易くなる。その結果、クラック等の不具合が発生し難い封止層で有機EL素子を十分に封止することが可能となる。
【0010】
本発明においては、前記周辺シール層は、前記第1接着層と前記第2接着層よりも水分透過率が低いことが望ましい。
この構成によれば、2種類の接着層よりも水分透過率が低い周辺シール層により両基板間を封止することができ、より水分等の侵入を防止して有機EL素子の劣化を防止することができる。その結果、製品としてより封止性能向上を図った有機EL装置が提供できる。
【0011】
本発明の電子機器は、前述した本発明の有機EL装置を備えていることを特徴とする。
この構成によれば、封止層にクラック等の不具合の発生を防ぎ有機EL素子を十分に封止することが可能な、より高い接着強度を確保することが可能な電子機器が提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。かかる実施の形態は、本発明の一態様を示すものであり、この発明を限定するものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。また、以下の図面においては、各構成をわかりやすくするために、実際の構造と各構造における縮尺や数等が異なっている。
【0013】
図1は本発明の有機EL装置の概略構成断面図である。有機EL装置1は、素子基板20と、素子基板20に対向して配置され接着層40を介して接着された封止基板30とを備えている。素子基板20上には、陽極としての第1電極10と陰極としての第2電極11との間に有機発光層12を有した複数の有機EL素子22が形成されている。また、素子基板20上には、複数の有機EL素子22を覆うように封止層23が形成されている。
【0014】
有機EL素子22は、単色の発光色の光を発生する、例えば白色の光を発生する有機発光層を有している。素子基板20上では、これら複数の有機EL素子22がマトリクス状に規則的に配列され表示領域Lを成している。なお、有機EL素子22は、RGBの三つの有機材料を使い塗り分けて3種類の有機EL素子、例えば赤色光を発生する有機EL素子、緑色光を発生する有機EL素子、青色光を発生する有機EL素子としても良い。なお、表示領域L外に相当する領域を非表示領域Mとする。
【0015】
素子基板20は、素子基板本体21と、素子基板本体21の封止基板30側の面を覆う無機絶縁層14とを備えている。素子基板本体21は、例えばガラスやプラスチック等の絶縁材料により形成されている。無機絶縁層14は、例えば酸化珪素(SiO)や窒化珪素(SiN)等の珪素化合物から形成されている。素子基板本体21上には、複数の有機EL素子22に1対1で対応する複数の薄膜トランジスタ(TFT)123及び各種の配線(図示略)が形成され、無機絶縁層14はこれらを覆うように形成されている。
【0016】
無機絶縁層14上には、Al(アルミニウム)合金等からなる金属反射板15が内装された平坦化層16が形成されている。平坦化層16は、絶縁性の樹脂材料、例えば感光性のアクリル樹脂や環状オレフィン樹脂等により形成されている。
【0017】
平坦化層16上の金属反射板15に平面的に重なる領域には、有機EL素子22の第1電極10が形成されている。第1電極10は、正孔注入性の高いITO(Indium Tin Oxide:インジウム錫酸化物)等の金属酸化物により形成されている。第1電極10は、平坦化層16及び無機絶縁層14を貫通するコンタクトホールを介して、素子基板本体21上のTFT123に接続されている。
【0018】
また、平坦化層16上には、有機EL素子22を区画する絶縁性の隔壁層13が、例えばアクリル樹脂等から形成されている。隔壁層13は、第1電極10の上部を露出させる複数の開口部を備えている。
【0019】
この開口部と隔壁層13による凹凸形状に沿って、隔壁層13及び第1電極10の上面を覆うように有機発光層12が形成されている。有機発光層12は、電界により注入された正孔と電子との再結合により励起して発光する発光層を含む。なお、発光層以外の層をも含むように多層からなる有機発光層12を構成することも可能である。発光層以外の層としては、正孔を注入し易くするための正孔注入層や、注入された正孔を発光層へ輸送し易くするための正孔輸送層、電子を注入し易くするための電子注入層、注入された電子を発光層へ輸送し易くするための電子輸送層などの、上記の再結合に寄与する層がある。
【0020】
有機発光層12の発光層は低分子系有機EL材料あるいは高分子系有機EL材料から形成されている。低分子系有機EL材料は、正孔と電子との再結合により励起して発光する有機化合物のうち、分子量が比較的に低いものである。また、高分子系有機EL材料は、正孔と電子との再結合により励起して発光する有機化合物のうち、分子量が比較的に高いものである。有機EL素子22を形成している低分子系有機EL材料あるいは高分子系有機EL材料は、有機EL素子22の発する単色の発光色の光(白色光)に応じた物質となっている。発光層における再結合に寄与する層の材料は、この層に接する層の材料に応じた物質となっている。
【0021】
有機発光層12上には、有機発光層12の凹凸形状に沿って、有機発光層12を覆うように、第2電極11が形成されている。第2電極11は、例えば有機発光層12へ電子を注入し易くするための電子注入バッファ層と、電子注入バッファ層上にITOやAl等の金属から形成された電気抵抗の小さい層とを有する。電子注入バッファ層は、例えば、LiF(フッ化リチウム)やCa(カルシウム)、MgAg(マグネシウム‐銀合金)から形成されている。
【0022】
また、素子基板20上には、無機絶縁層14、平坦化層16、及び有機EL素子22の第2電極11を覆って、電極保護層17が形成されている。電極保護層17は、例えば、珪素酸窒化物(SiON)等の珪素化合物により形成されている。
【0023】
電極保護層17上には、電極保護層17を覆うように有機緩衝層18が形成されている。有機緩衝層18は、隔壁層13とその開口部による凹凸形状を埋めるように形成され、素子基板20上を平坦化している。有機緩衝層18の形成材料としては、例えばエポキシ化合物等を用いることができる。
【0024】
有機緩衝層18上には、有機緩衝層18を覆い、さらに電極保護層17の終端部までを覆うガスバリア層19が形成されている。ガスバリア層19は、透光性、ガスバリア性、耐水性を考慮して、例えばSiON等によって形成される。本実施形態では、このガスバリア層19と、上述の電極保護層17及び有機緩衝層18により、有機EL素子22を覆う封止層23が形成されている。
【0025】
素子基板20のガスバリア層19が形成された面には、封止基板30が対向して配置されている。封止基板30は、接着層40を介して素子基板20上のガスバリア層19に接着されている。封止基板30は、例えばガラス又は透明プラスチック等の光透過性を有する材料で構成された封止基板本体31を備えている。
【0026】
封止基板本体31の素子基板20と対向する面には、カラーフィルタ層37として、赤色着色層37R、緑色着色層37G、青色着色層37Bがマトリクス状に規則的に配列され表示領域Lを成している。また、各着色層37R,37G,37Bの周囲を囲む位置に、より具体的には隔壁層13に対応する領域にブラックマトリクス層(遮光層)32が形成されている。ブラックマトリクス層32の形成材料は、例えばCr(クロム)等を用いることができる。なお、表示領域L外に相当する領域を非表示領域Mとする。
【0027】
各着色層37R,37G,37Bは、第1電極10上に形成された白色の有機発光層12に対向して平面的に重なるように配置されている。これにより、有機発光層12から発せられた光が、着色層37R,37G,37Bの各々を透過し、赤色光、緑色光、青色光の各色光として観察者側に射出されるようになっている。
【0028】
また、封止基板本体31上には、表示領域Lに形成されたカラーフィルタ層37及びブラックマトリクス層32上を覆うオーバーコート層(被覆層)33が形成されている。オーバーコート層33は、表示領域Lの内側から非表示領域Mの周辺シール層43の形成領域まで延設されている。オーバーコート層33は、例えばアクリルやポリイミド等の樹脂材料により形成されている。
【0029】
素子基板20と封止基板30との間には、ガスバリア層19の少なくとも表示領域Lに対応する部位を覆う第1接着層41が形成されている。第1接着層41の形成材料は、例えばウレタン、アクリル系樹脂に硬化剤としてイソシアネートを添加した低弾性樹脂構成としたものを用いることができる。
【0030】
また、素子基板20と封止基板30との間には、第1接着層41を囲むように非表示領域Mに第2接着層42が形成されている。第2接着層42の形成材料は、例えばエポキシ系樹脂に硬化剤として酸無水物を添加し、促進剤としてシランカップリング剤を添加した高接着剤樹脂構成としたものを用いることができる。
【0031】
また、素子基板20と封止基板30との間の額縁部には、周辺シール層43が形成されている。周辺シール層43の形成材料は、例えばエポキシ系樹脂にフィラーとしてシリカ、アルミナ等を添加した低透湿性樹脂構成としたものを用いることができる。なお、周辺シール層43の内部には、例えば樹脂やガラス等から形成されたギャップ剤44が配置されている。なお、周辺シール層43には、ギャップ剤44を含まない構成としても良い。
【0032】
第1接着層41、第2接着層42、周辺シール層43において、上述した材料を用いて形成することにより、第1接着層41は第2接着層42よりも低い弾性率を有することができる。また、第2接着層42は第1接着層41よりも高い接着強度を得ることができる。また、周辺シール層43は、第1接着層41と第2接着層42よりも水分透過率を低くすることができる。
【0033】
図2は封止基板30の素子基板20と対向する側に形成された接着層40の平面概略図である。図示左右方向に長手を有する矩形状の封止基板本体31上には、ブラックマトリクス層32が設けられ、このブラックマトリクス層32によりカラーフィルタ層37が区分されている。カラーフィルタ層37は、例えば赤色着色層37R、緑色着色層37G、青色着色層37Bを有している。封止基板本体31上では、これら3種類の着色層がマトリクス状に規則的に配列され表示領域L(図2の破線部内)を成している。なお、表示領域L外に相当する領域を非表示領域M(図2の破線部外)とする。表示領域Lの全面と重なるように、かつ、非表示領域Mと一部重なるように、オーバーコート層33(図2の2点鎖線部内)が図示左右方向に長手を有する矩形状に形成されている。
【0034】
表示領域Lの全面と重なるように、かつ、非表示領域Mと一部重なるように、第1接着層41(図2の1点鎖線部内)が図示左右方向に長手を有する矩形状に形成されている。第1接着層41の周囲にはオーバーコート層33と重なるように、第2接着層42が口の字状(図2の1点鎖線と2点鎖線の間の領域)に形成されている。第2接着層42の周囲には封止基板本体31の額縁部に、周辺シール層43が口の字状に形成されている。
【0035】
(有機EL装置の製造方法)
次に、本発明の有機EL装置1の製造方法の一例を説明する。有機EL装置1の製造工程は素子基板20側の工程と、封止基板30側の工程と、素子基板20と封止基板30の固定の工程と、からなる。
【0036】
先ず、素子基板本体21上にTFT123及び各種配線(図示略)を形成し、それらを覆うように無機絶縁層14を熱酸化法、CVD法、スパッタリング法等の乾式成膜法や、スピンコート法等の湿式成膜法を用いて形成する。
【0037】
次に、無機絶縁層14上にAl合金などの光反射性の金属反射板15を形成し、それを覆うように平坦化層16をスクリーン印刷法やスピンコート法等の湿式成膜法を用いて形成する。
【0038】
次に、平坦化層16上の金属反射板15に平面的に重なる領域に、透明なITOをスパッタリング法により成膜して複数の画素となる第1電極10を形成する。
【0039】
次に、無機絶縁層14上に第1電極10を囲むように、公知のレジスト技術、フォトリソグラフィ技術、エッチング技術等を用いてパターニングし、隔壁層13を形成する。次に、素子基板20上から有機物系の異物除去とITO表面の濡れ性を向上させるために、プラズマ洗浄などの洗浄処理を行う。
【0040】
次に、隔壁層13に囲まれた開口部と隔壁層13による凹凸形状に沿って、隔壁層13及び第1電極10の上面を覆うように、例えば蒸着、あるいはスピンコートやスリットコート法等の湿式成膜法により有機発光層12を形成する。有機発光層12が複数の層からなる場合には、各層を順に成膜することになる。
【0041】
次に、複数の有機EL素子22に共通の電極となる第2電極12を、有機発光層12上に有機発光層12の凹凸形状に沿って有機発光層12を覆うように形成する。例えば、先ず、加熱ボート(るつぼ)を用いた真空蒸着法によりLiF及びCaやMgなどの電子注入性の高い金属又は合金を成膜する。次に、電極抵抗を下げるため、真空蒸着法により画素部を避けるようにパターン形成したAlか、ECR(Electron Cyclotron Resonance:電子サイクロトロン共鳴)プラズマスパッタ法やイオンプレーティング法、対向ターゲットスパッタ法などの減圧雰囲気下で高密度プラズマ成膜法により透明なITOを成膜する。
【0042】
次に、素子基板20上に、無機絶縁層14、平坦化層16、及び有機EL素子22の第2電極11を覆うように電極保護層17を形成する。電極保護層17は、例えばSiON等の珪素化合物をECRスパッタ法やイオンプレーティング法等の高密度プラズマ成膜法により成膜して形成する。
【0043】
次に、電極保護層17上に有機緩衝層18を形成する。有機緩衝層18は、減圧雰囲気下でスクリーン印刷を行った後、加熱硬化させることにより形成する。
【0044】
次に、有機緩衝層18上にガスバリア層19を形成する。ガスバリア層19は、ECRスパッタ法やイオンプレーティング法などの高密度プラズマ成膜法で形成する。また、ガスバリア層19の形成前には、酸素プラズマ処理によって密着性を向上させると信頼性が向上する。以上の工程により、複数の有機EL素子22を備え、それらが電極保護層17、有機緩衝層18、及びガスバリア層19からなる封止層23により被覆された素子基板20が形成される。
【0045】
一方、封止基板本体31上の隔壁層13に対応する領域に、例えば蒸着法やスパッタリング法でCr(クロム)を成膜し、この膜を公知のレジスト技術、フォトリソグラフィ技術、エッチング技術等を用いてパターニングし、ブラックマトリクス層32を形成する。
【0046】
次に、ブラックマトリクス層32を隔壁として、例えばインクジェットなどの液滴吐出法により、カラーフィルタ層37を形成する。具体的には、液滴吐出ヘッドから所定のブラックマトリクス層32の間に、例えば赤色着色層37R、緑色着色層37G、青色着色層37Bの液状の材料を選択的に配し、これを所定の温度で加熱乾燥させて、赤色着色層37R、緑色着色層37G、青色着色層37Bを形成する。このようにして、赤色着色層37R、緑色着色層37G、青色着色層37Bからなるカラーフィルタ層37を形成することができる。
【0047】
次に、カラーフィルタ層37及びブラックマトリクス層32を覆い、表示領域Lの内側から外側まで延設するようにオーバーコート層33を形成する。オーバーコート層33は、アクリルやポリイミド等の樹脂材料を原料成分又は有機溶媒等で希釈して、スリットコート法やスクリーン印刷法等を用いてパターン塗布し、熱オーブン等で蒸発及び硬化することにより形成する。これにより、封止基板本体31上に、カラーフィルタ層37及びブラックマトリクス層32が形成され、これらを覆うオーバーコート層33を備えた封止基板30が形成される。
【0048】
次に、封止基板30上の額縁部、より具体的には封止基板30上の非表示領域Mのオーバーコート層33が形成されていない領域に、周辺シール層43の形成材料を塗布する。このとき、周辺シール層43の形成材料の中にギャップ剤43を混入させてもよい。具体的には、例えばディスペンス描画法やスクリーン印刷法により前述した樹脂材料を塗布していく。次に、封止基板30上の少なくとも表示領域Lに形成されたオーバーコート層33を覆うように、第1接着層41の形成材料を塗布する。具体的には、例えばディスペンス滴下法により前述した樹脂材料を塗布していく。次に、第1接着層41を囲むように第2接着層42の形成材料を塗布する。具体的には、例えばディスペンス滴下法により前述した樹脂材料を塗布していく。
【0049】
次に、周辺シール層43、第1接着層41及び第2接着層42の形成材料が塗布された封止基板30に紫外線照射を行う。具体的には、周辺シール層43、第1接着層41及び第2接着層42の形成材料の硬化反応を開始させる目的で、例えば照度30mW/cm2、光量2000mJ/cm2の紫外線を封止基板30に照射する。これにより、周辺シール層43、第1接着層41及び第2接着層42の形成材料が反応し、徐々に粘度が向上する。
【0050】
次に、素子基板20の封止層23が形成された面と、封止基板30の接着層材料が配置された面とを対向させ、周辺シール層43、第1接着層41及び第2接着層42の形成材料を介して素子基板20と封止基板30とを貼り合せる。このとき、貼り合わせた素子基板20と封止基板30とのアライメント位置の微調整を行いながら、素子基板20と封止基板30の双方を接近させていく。具体的には、素子基板20と封止基板30とを面方向(平行方向)に相対移動させ、有機EL素子22とカラーフィルタ層37との対向位置を調整する。このように、アライメント位置精度をしながら最終的な位置合わせを行う。
【0051】
次に、素子基板20と封止基板30とを圧着する。具体的には、例えば真空度1Paの真空雰囲気下で、加圧600Nで200秒間保持して圧着させる。次に圧着して貼り合わせた素子基板20と封止基板30とを大気雰囲気中で加熱する。具体的には、素子基板20と封止基板30とを貼り合わせた状態で、大気中において所定の温度で加熱することで、前述した硬化反応が開始した周辺シール層43、第1接着層41及び第2接着層42の形成材料を熱硬化させ、周辺シール層43、第1接着層41及び第2接着層42を形成する。以上により、上述した本発明の有機EL装置1を形成することができる。
【0052】
本実施形態の有機EL装置1によれば、少なくとも2種類の接着層41,42により複数の有機EL素子22を保護する封止層23が覆われ、第1接着層41は第2接着層42に比べて弾性率が低いので、パネル全体の応力を分散させ易くなり、クラック等の不具合が発生し難い封止層23で有機EL素子22を十分に封止することが可能となる。また、第2接着層42は第1接着層41よりも接着強度が高いので、十分な接着強度を確保することができる。その結果、製品としてより封止性能向上を図った、より高い接着強度を確保することが可能な有機EL装置1が提供できる。
【0053】
また、この構成によれば、2種類の接着層41,42の側部の界面が非表示領域Mに形成されるので接着界面が表示領域Lに表示されることがなく、より表示品質の向上を図った有機EL装置1が提供できる。
【0054】
また、この構成によれば、第2接着層42が途切れることなく一本で形成され接着可能な領域が同一の条件で複数の接着層に分断して形成されたものと比べて接着面積を多く確保できるので、より高い接着強度を確保することができる。
【0055】
また、この構成によれば、2種類の接着層41,42よりも水分透過率が低い周辺シール層43により両基板間を封止することができ、より水分等の侵入を防止して有機EL素子22の劣化を防止することができる。その結果、製品としてより封止性能向上を図った有機EL装置1が提供できる。
【0056】
(変形例1)
図3は本発明の有機EL装置1の接着層の他の概略構成例を示す平面図である。封止基板30の素子基板20と対向する側には接着層40Aが形成されている。表示領域Lの全面と重なるように非表示領域Mと一部重なるように、第1接着層41A(図3の2点鎖線部内)が形成されている。第1接着層41Aの額縁部には非表示領域Mと重なるように、第2接着層42Aが複数の楕円形状に分けられて口の字状に形成されている。第2接着層42Aの周囲には封止基板本体31の額縁部に、周辺シール層43が口の字状に形成されている。
【0057】
本変形例では、第2接着層42が複数の接着層に分断して形成されるので、途切れることなく一本で形成されたものと比べて、より硬化収縮による応力を分散させ易くなる。その結果、クラック等の不具合が発生し難い封止層23で有機EL素子22を十分に封止することが可能となる。
【0058】
(電子機器)
次に、本発明に係る電子機器について、携帯電話を例に挙げて説明する。図4は、携帯電話600の全体構成を示す斜視図である。携帯電話600は、筺体601、複数の操作ボタンが設けられた操作部602、画像や動画、文字等を表示する表示部603を有する。表示部603には、本発明に係る有機EL装置1が搭載される。
このように、封止層にクラック等の不具合の発生を防ぎ有機EL素子を十分に封止することが可能な、より高い接着強度を確保することが可能な有機EL装置1を備えているので、高信頼性かつ高性能な電子機器(携帯電話)600を得ることができる。
【0059】
なお、電子機器としては、上記携帯電話600以外にも、マルチメディア対応のパーソナルコンピュータ(PC)、およびエンジニアリング・ワークステーション(EWS)、ページャ、あるいは投射型液晶表示装置、ワードプロセッサ、テレビ、ビューファインダ型またはモニタ直視型のビデオテープレコーダ、電子手帳、電子卓上計算機、カーナビゲーション装置、POS端末、タッチパネルなどを挙げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の有機EL装置の概略構成断面図である。
【図2】封止基板の素子基板と対向する側に形成された接着層の平面概略図である。
【図3】本発明の有機EL装置の接着層の他の概略構成例を示す平面図である。
【図4】電子機器の一例である携帯電話の概略構成図である。
【符号の説明】
【0061】
L…表示領域、1…有機EL装置、22…有機EL素子、20…素子基板、10…第1電極(電極)、11…第2電極(電極)、12…有機発光層、23…封止層、30…封止基板、40…接着層、41,41A…第1接着層、42,42A…第2接着層、43…周辺シール層、600…携帯電話(電子機器)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の電極の間に有機発光層を挟持した有機EL素子が、複数形成された素子基板と、
前記素子基板上に複数の前記有機EL素子を覆うように形成された封止層と、を備える有機EL装置において、
前記素子基板は前記有機EL素子をマトリクス状に配置した表示領域を有し、
前記素子基板上に前記封止層を覆うように形成された接着層と、
前記素子基板に対向配置され前記接着層を介して前記素子基板に接着された封止基板と、を備え、
前記接着層は、前記封止層の少なくとも前記表示領域に対応する部位を覆って形成された第1接着層と、前記第1接着層を囲んで形成された第2接着層と、前記第2接着層を囲んで形成された周辺シール層と、を備え、
前記第1接着層は、前記第2接着層よりも低弾性率を有し、前記第2接着層は、前記第1接着層よりも高接着強度を有していることを特徴とする有機EL装置。
【請求項2】
前記第2接着層は、前記表示領域の外側に形成され、かつ、前記第1接着層の側部と前記第2接着層の側部が接する界面が前記表示領域の外側に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の有機EL装置。
【請求項3】
前記第2接着層は、連続して繋がるように形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の有機EL装置。
【請求項4】
前記第2接着層は、複数に分断して形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の有機EL装置。
【請求項5】
前記周辺シール層は、前記第1接着層と前記第2接着層よりも水分透過率が低いことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の有機EL装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の有機EL装置を備えていることを特徴とする電子機器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2010−40408(P2010−40408A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−203890(P2008−203890)
【出願日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】