説明

有機EL装置

【課題】発光寿命を向上させることが可能な有機EL装置を提供する。
【解決手段】基板31上の第1陽極24R(第2陽極24G)を囲むように設けられたバンク62と、バンク62の開口部67に設けられた赤色発光層64R(緑色発光層64G)と、バンク62上に設けられた第1陽極24Rと極性が同じ第3陽極24Bと、第3陽極24Bを含む基板31上の全体に設けられた青色発光層64Bと、青色発光層64Bを覆うように設けられた第1陽極24R及び第3陽極24Bと極性が異なる陰極25と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗布膜と蒸着膜とを備えた有機EL装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記有機EL(エレクトロルミネッセンス)装置は、陽極と陰極との間に発光層などの機能膜が挟持された構造を有している。有機EL装置の製造方法としては、例えば、特許文献1に記載のように、基板上に設けられた陽極を囲むようにバンク(隔壁)を形成する。次に、バンクで囲まれた開口穴(発光領域)の中に、インクジェット法などを用いて有機膜形成材料を含む機能液を塗布し、その後乾燥させることにより機能膜を形成する。
【0003】
また、特許文献2に記載のように、R(赤色)G(緑色)B(青色)のうちB(青色)の発光層の寿命を向上させるために、R(赤色)とG(緑色)を塗布法によって有機発光層を形成し、B(青色)を蒸着法によって無機発光層を形成する方法が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−208254号公報
【特許文献2】特開平10−153967号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1及び特許文献2に記載の方法では、バンクで囲まれた領域が発光するのみであり、B(青色)の輝度を下げて発光寿命を向上させるためには、更なるB(青色)の発光面積を増やすことが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]本適用例に係る有機EL装置は、基板上の第1電極を囲むように設けられた隔壁と、前記隔壁の開口部に設けられた第1発光層と、前記隔壁上に設けられた前記第1電極と極性が同じ第2電極と、前記第2電極を含む前記基板上の全体に設けられた第2発光層と、前記第2発光層を覆うように設けられた前記第1電極及び前記第2電極と極性が異なる第3電極と、を備えることを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、隔壁上に第2電極、第2発光層、第3電極が設けられているので、従来のように、バンクで囲まれた略同じ面積の開口部の領域のみが発光する場合と比較して、開口部以外の領域を発光させることが可能となり、発光面積を増やすことができる。よって、発光面積が増えた分、第2発光層による単位面積当たりの輝度を従来より低下させることが可能となり、第2発光層の寿命を従来より向上させることができる。
【0009】
[適用例2]上記適用例に係る有機EL装置において、前記第1発光層は塗布膜で構成されており、前記第2発光層は蒸着膜で構成されていることが好ましい。
【0010】
この構成によれば、第2発光層が蒸着膜で構成されているので、塗布膜で構成された第1発光層の寿命と比較して、発光寿命を向上させることができる。
【0011】
[適用例3]上記適用例に係る有機EL装置において、前記第1発光層は、赤色及び緑色の少なくとも一方を発光する層であり、前記第2発光層は、青色を発光する層であることが好ましい。
【0012】
この構成によれば、蒸着膜である第2発光層が青色の発光層なので、塗布膜である第1発光層(赤色や緑色)と比較して、第2発光層(青色)の発光寿命を向上させることができる。
【0013】
[適用例4]上記適用例に係る有機EL装置において、前記基板と前記隔壁との間に前記第2発光層の発光を制御するトランジスターが設けられており、前記第2電極と前記トランジスターとが、少なくとも2段のコンタクトホールによって電気的に接続されていることが好ましい。
【0014】
この構成によれば、隔壁上に設けられた第2電極とトランジスターとが、2段のコンタクトホールによって接続されているので、1つのコンタクトホールでダイレクトに接続する場合と比較して、容易に効率よく形成することができる。
【0015】
[適用例5]上記適用例に係る有機EL装置において、前記隔壁は、前記基板上の駆動回路と、前記駆動回路と接続された配線と、キャパシタと、を含む領域と平面的に重なる領域に設けられていることが好ましい。
【0016】
この構成によれば、TFT、配線、キャパシタを含む領域と平面的に重なるように隔壁が設けられており、隔壁の開口部と平面的に重なる領域に上記配線などがなく凹凸が少ないので、開口部内に設けられた塗布膜の厚みを略均一に形成することができる。なお、隔壁上は、TFTや配線などの影響によって凸凹していても蒸着膜を設けるので、蒸着膜の厚みを略均一に形成することができる。その結果、有機EL装置全体を効率よく発光させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】有機EL装置の電気的な構成を示す等価回路図。
【図2】有機EL装置の構成を示す模式平面図。
【図3】有機EL装置の表示領域(実表示領域)の構造を示す模式平面図。
【図4】図3に示す有機EL装置のA−A'線に沿う模式断面図。
【図5】有機EL装置の製造方法を示す工程図。
【図6】有機EL装置の製造方法のうち一部の工程を示す模式断面図。
【図7】変形例の有機EL装置の構造を示す模式断面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を具体化した実施形態について図面に従って説明する。なお、使用する図面は、説明する部分が認識可能な状態となるように、適宜拡大または縮小して表示している。また、本実施形態は、トップエミッション構造の有機EL装置を例に説明する。
【0019】
<有機EL装置の構成>
図1は、有機EL装置の電気的な構成を示す等価回路図である。以下、有機EL装置の構成を、図1を参照しながら説明する。
【0020】
図1に示すように、有機EL装置11は、複数の走査線12と、走査線12に対して交差する方向に延びる複数の信号線13と、信号線13に並行に延びる複数の電源線14とを備えている。そして、走査線12と信号線13とにより区画された領域が画素領域として構成されている。信号線13は、信号線駆動回路15に接続されている。また、走査線12は、走査線駆動回路16に接続されている。
【0021】
各画素領域には、走査線12を介して走査信号がゲート電極に供給されるスイッチング用TFT(Thin Film Transistor)21と、このスイッチング用TFT21を介して信号線13から供給される画素信号を保持する保持容量22(キャパシタ)と、保持容量22によって保持された画素信号がゲート電極に供給される駆動用TFT23(駆動回路)とが設けられている。更に、各画素領域には、駆動用TFT23を介して電源線14に電気的に接続したときに、電源線14から駆動電流が流れ込む陽極24と、第3電極としての陰極25と、この陽極24と陰極25との間に挟持された機能層26とが設けられている。
【0022】
有機EL装置11は、陽極24と陰極25と機能層26とにより構成される発光素子27を複数備えている。また、有機EL装置11は、複数の発光素子27で構成される表示領域を備えている。
【0023】
この構成によれば、走査線12が駆動されてスイッチング用TFT21がオン状態になると、そのときの信号線13の電位が保持容量22に保持され、保持容量22の状態に応じて、駆動用TFT23のオン・オフ状態が決まる。そして、駆動用TFT23のチャネルを介して、電源線14から陽極24に電流が流れ、更に、機能層26を介して陰極25に電流が流れる。機能層26は、ここを流れる電流量に応じた輝度で発光する。
【0024】
図2は、有機EL装置の構成を示す模式平面図である。以下、有機EL装置の構成を、図2を参照しながら説明する。
【0025】
図2に示すように、有機EL装置11は、ガラス等からなる基板31に表示領域32(図中一点鎖線の内側の領域)と非表示領域33(一点鎖線の外側の領域)とを有する構成になっている。表示領域32には、実表示領域32a(二点鎖線の内側の領域)とダミー領域32b(図中二点鎖線の外側の領域)とが設けられている。
【0026】
実表示領域32a内には、光が射出されるサブ画素34(発光領域)がマトリクス状に配列されている。この、サブ画素34の各々は、スイッチング用TFT21及び駆動用TFT23(図1参照)の動作に伴って、R(赤)、G(緑)、B(青)各色を発光する構成となっている。
【0027】
ダミー領域32bには、主として各サブ画素34を発光させるための回路が設けられている。例えば、実表示領域32aの図中左辺及び右辺に沿うように走査線駆動回路16が配置されており、実表示領域32aの図中上辺に沿うように検査回路35が配置されている。
【0028】
基板31の下辺には、フレキシブル基板36が設けられている。フレキシブル基板36には、各配線と接続された駆動用IC37が備えられている。
【0029】
図3は、有機EL装置の表示領域(実表示領域)の構造を示す模式平面図である。図4は、図3に示す有機EL装置のA−A'線に沿う模式断面図である。以下、有機EL装置の構造を、図3及び図4を参照しながら説明する。なお、図3及び図4は、各構成要素の位置関係を示すものであり、明示可能な尺度で表されている。
【0030】
まず、図4に示す断面図のように、有機EL装置11は、基板31と、基板31上に形成された回路素子層43と、回路素子層43上に形成された発光素子層44と、発光素子層44上に形成された陰極(共通電極)25とを有する。基板31としては、例えば、透光性を有するガラス基板が挙げられる。
【0031】
回路素子層43には、基板31上にシリコン酸化膜(SiO2)からなる下地保護膜45が形成され、下地保護膜45上に駆動用TFT23が形成されている。詳しくは、下地保護膜45上に、ポリシリコン膜からなる島状の半導体膜46が形成されている。半導体膜46には、ソース領域47及びドレイン領域48が不純物の導入によって形成されている。そして、不純物が導入されなかった部分がチャネル領域51となっている。
【0032】
更に、回路素子層43には、下地保護膜45及び半導体膜46を覆うシリコン酸化膜等からなる透明なゲート絶縁膜52が形成されている。ゲート絶縁膜52上には、アルミニウム(Al)、モリブデン(Mo)、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、タングステン(W)などからなるゲート電極53(走査線)が形成されている。
【0033】
ゲート絶縁膜52及びゲート電極53上には、第1層間絶縁膜54、第2層間絶縁膜55が形成されている。第1層間絶縁膜54及び第2層間絶縁膜55は、例えば、シリコン酸化膜(SiO2)、チタン酸化膜(TiO2)などから構成されている。ゲート電極53は、半導体膜46のチャネル領域51に対応する位置に設けられている。
【0034】
第2層間絶縁膜55上には、発光層64(64R,64G,64B)において発光した光を、陰極25側に照射させるための反射層59が設けられている。反射層59上には、透明な第3層間絶縁膜58が設けられている。
【0035】
半導体膜46のソース領域47は、ゲート絶縁膜52及び第1層間絶縁膜54を貫通して設けられたコンタクトホール56を介して、第1層間絶縁膜54上に形成された信号線13と電気的に接続されている。
【0036】
発光素子層44は、赤(R)を発光する赤色発光素子27Rと、緑(G)を発光する緑色発光素子27Gと、青(B)を発光する青色発光素子27Bと、隔壁としてのバンク62(62a,62b,62c)とを有する。
【0037】
赤色発光素子27R及び緑色発光素子27Gにおけるドレイン領域48は、ゲート絶縁膜52、第1層間絶縁膜54、第2層間絶縁膜55、反射層59、第3層間絶縁膜58を貫通して設けられたコンタクトホール57を介して、第3層間絶縁膜58上に設けられた第1電極としての第1陽極24Rや第2陽極24Gと電気的に接続されている。
【0038】
一方、青色発光素子27Bにおけるドレイン領域48は、ゲート絶縁膜52、第1層間絶縁膜54、第2層間絶縁膜55、反射層59、第3層間絶縁膜58、絶縁層66、第2バンク62bを貫通して設けられたコンタクトホール68を介して、第2バンク62b上に設けられた第2電極としての第3陽極24Bと電気的に接続されている。
【0039】
赤色発光素子27Rは、蒸着膜によってパターニングされた第1陽極24Rと、塗布膜の第1正孔注入層63Rと、塗布膜の第1発光層としての赤色発光層64Rとを備えている。緑色発光素子27Gも同様に、蒸着膜によってパターニングされた第2陽極24Gと、塗布膜の第2正孔注入層63Gと、塗布膜の第1発光層としての緑色発光層64Gとを備えている。青色発光素子27Bは、バンク62(第1バンク62a、第2バンク62b、第3バンク62c)上に蒸着膜によってパターニングされた第3陽極24Bと、基板31上の全面に蒸着された、蒸着膜である第2発光層としての青色発光層64Bとを備えている。そして、これらの膜全体を覆うように、第1陽極24R、第2陽極24G、第3陽極24Bと極性が異なる陰極25が設けられている。第1陽極24R〜第3陽極24Bは、透明のITO(Indium Tin Oxide)膜からなる。
【0040】
バンク62(62a,62b,62c)は、回路素子層43上において、回路素子層43に設けられた走査線12、信号線13、電源線14、駆動用TFT23などを含む領域と平面的に重なるように、略格子状に設けられている。なお、これらの配線は、一定の間隔をおいて設けられている。
【0041】
具体的には、例えば、図4に示すように、信号線13や電源線14などの第1配線群71と平面的に重なる領域には、第1バンク62aが設けられている。第2配線群72から第3配線群73に亘って広がる領域と平面的に重なる領域には、第2バンク62bが設けられている。また、走査線12などの第4配線群74(図3参照)と平面的に重なる領域には、第3バンク62cが設けられている。
【0042】
赤色発光素子27Rは、第1バンク62aと第2バンク62bと第3バンク62cとによって囲まれた領域に、第1陽極24R、第1正孔注入層63R、及び赤色発光層64Rが設けられている。緑色発光素子27Gも同様に、第1バンク62aと第2バンク62bと第3バンク62cとによって囲まれた領域に、第2陽極24G、第2正孔注入層63G、及び緑色発光層64Gが設けられている。つまり、赤色発光素子27R及び緑色発光素子27Gは、バンク62によって囲まれた領域が発光領域となる。
【0043】
そして、青色発光素子27Bは、第1バンク62a上、第2バンク62b上、及び第3バンク62c上に、第3陽極24Bが設けられている。更に、基板31上の全面に亘って(ベタ成膜)青色発光層64B(正孔注入層などを含む)及び陰極25が設けられている。つまり、青色発光素子27Bは、赤色発光素子27R及び緑色発光素子27Gの発光領域を除いた部分が発光領域となる。
【0044】
よって、従来のように、バンク62で囲まれた領域のみが発光領域となる場合と比較して、青色の発光領域を多くすることができる。これにより、多くなった面積分、青色発光の輝度を低下させることが可能となり、青色発光素子27Bの寿命を向上させることができる。
【0045】
回路素子層43とバンク62(62a,62b,62c)との間には、絶縁層66が形成されている。絶縁層66としては、例えば、シリコン酸化膜(SiO2)等の無機材料が挙げられる。絶縁層66は、隣り合う陽極24(24R,24G)間の絶縁性を確保すると共に、親液性を確保するために用いられ、陽極24(24R,24G)の周縁部上に乗り上げるように形成されている。
【0046】
バンク62(62a,62b,62c)は、例えば、断面に見て傾斜面を有する台形状である。バンク62の材料としては、例えば、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂等の耐熱性、耐溶剤性を有する有機材料が挙げられる。
【0047】
なお、回路素子層43には、図示しない保持容量及びスイッチング用のトランジスターが形成されている。また、上記したように、回路素子層43には、各陽極24(24R,24G,24B)に接続された駆動用のトランジスター(駆動用TFT23)が形成されている。
【0048】
正孔注入層63R,63Gは、導電性高分子材料中にドーパントを含有する導電性高分子層からなる。このような正孔注入層63は、例えば、ドーパントとしてポリスチレンスルホン酸を含有する3,4−ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT−PSS)などから構成することができる。
【0049】
発光層64は、正孔注入層63の上に形成されており、エレクトロルミネッセンス現象を発現する有機発光物質の層である。
【0050】
陰極25は、例えば、フッ化リチウム(LiF)層、カルシウム(Ca)層及びアルミニウム(Al)層を積層した構成や、マグネシウム銀(MgAg)などの合金が挙げられる。
【0051】
陰極25の上には、水や酸素の侵入を防ぐための、樹脂などからなる封止部材及び封止基板(図示せず)が積層されている。陽極24と、発光層(正孔注入層などを含む)と、陰極25とによって発光素子27が構成されている。
【0052】
上述した各発光層64は、陽極24と陰極25との間に電圧を印加することによって、発光層64には、正孔注入層63から正孔が、また、陰極25から電子が注入される。発光層64において、これらが結合したときに光を発する。以下、有機EL装置11の製造方法を説明する。
【0053】
<有機EL装置の製造方法>
図5は、有機EL装置の製造方法を示す工程図である。図6は、有機EL装置の製造方法のうち一部の工程を示す模式断面図である。以下、有機EL装置の製造方法を、図5及び図6を参照しながら説明する。なお、図6は、回路素子層43などの図示を省略している。
【0054】
まず、ステップS11では、基板31上に公知の成膜技術を用いて回路素子層43を形成する(図4参照)。具体的には、基板31上に駆動用TFT23や走査線12や信号線13などを形成する。
【0055】
ステップS12では、図6(a)に示すように、基板31(第3層間絶縁膜58)上における第1発光素子領域81及び第2発光素子領域82に、ITOからなる第1陽極24R及び第2陽極24Gを、蒸着法などを用いて形成する。
【0056】
ステップS13では、第1陽極24R及び第2陽極24Gの周縁部にバンク62(第1バンク62a、第2バンク62b、第3バンク62c)を形成する。具体的には、まず、バンク62の材料である有機材料を、例えば、塗布法などにより、基板31上を覆うように成膜する。次に、フォトリソグラフィ技術及びエッチング技術を用いて、有機材料のうち第1発光素子領域81及び第2発光素子領域82に相当する部分を除去する。これにより、図6(a)に示すような、バンク62a,62bが完成する。有機材料としては、ポリイミドやアクリルなどが挙げられる。なお、バンク62の高さは、例えば、2μmである。
【0057】
ステップS14では、バンク62の開口部67に機能液26aを吐出する。具体的には、まず、バンク62が形成された基板31を洗浄する。その後、図6(b)に示すように、機能液26aの液滴を、液滴吐出法(例えば、インクジェット法)を用いて、第1陽極24R及び第2陽極24Gを底部としバンク62を側壁とする凹部に向けて吐出する。
【0058】
ステップS15では、図6(c)に示すように、機能液26aを乾燥させて正孔注入層63R,63G(図4参照)や発光層64R,64Gを形成する。詳しくは、機能液26aを高温環境下又は減圧下で乾燥して溶媒を蒸発させて固形化する。これにより、開口部67の中に正孔注入層63R,63Gや発光層64R,64Gが形成される。
【0059】
ステップS16では、図6(c)に示すように、バンク62(第1バンク62a、第2バンク62b、第3バンク62c)上に蒸着法などを用いて第3陽極24Bを形成する。ステップS17では、図6(d)に示すように、基板31上の略全体に、蒸着法などを用いて青色発光層64Bを形成する。
【0060】
ステップS18では、基板31上の略全体に、例えば、カルシウム膜及びアルミニウム膜をこの順に、例えば蒸着法によって積層させることにより、陰極25を形成する。
【0061】
ステップS19では、陰極25上に、例えば、図6(e)に示すように、接着剤及びガラス基板を用いて封止を行う。このようにして、有機EL装置11が完成する。
【0062】
また、上記した有機EL装置11は、テレビ、携帯電話機、ディスプレイ、モバイルコンピューター、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、車載機器、オーディオ機器、照明機器、光プリンターの光源などの各種電子機器に用いることができる。
【0063】
以上詳述したように、本実施形態の有機EL装置11によれば、以下に示す効果が得られる。
【0064】
(1)本実施形態の有機EL装置11によれば、バンク62a,62b,62c上に、第3陽極24B、青色発光層64B、陰極25が設けられているので、従来のように、バンクで囲まれた略同じ面積の開口部の領域のみが発光する場合と比較して、開口部以外の領域を発光させることが可能となり、発光面積を増やすことができる。よって、発光面積が増えた分、青色の単位面積当たりの輝度を従来より低下させることが可能となり、青色発光層64Bの寿命を従来より向上させることができる。
【0065】
(2)本実施形態の有機EL装置11によれば、蒸着法によって青色発光層64Bを形成し、塗布法によって赤色発光層64R及び緑色発光層64Gを形成するので、塗布法によって青色発光層を形成した場合と比較して、青色発光層64Bの寿命を延ばすことができる。更に、青色発光層64Bを除く発光層(赤色発光層64R、緑色発光層64G)を塗布法によって形成するので、全体の製造効率を高めることができる。
【0066】
(3)本実施形態の有機EL装置11によれば、駆動用TFT23、配線(走査線12、信号線13、電源線14)、キャパシタ(保持容量22)などを含む領域と平面的に重なるようにバンク62が設けられており、バンク62の開口部67と平面的に重なる領域に上記配線などがなく凹凸が少ないので、開口部内に設けられた青色発光層64Bの厚みを略均一に形成することができる。なお、バンク62上は、駆動用TFT23や配線(12,13,14)などの影響によって凸凹していても蒸着法によって青色発光層64Bを形成するので、青色発光層64Bの厚みを略均一に形成することができる。その結果、有機EL装置11全体を効率よく発光させることができる。
【0067】
なお、実施形態は上記に限定されず、以下のような形態で実施することもできる。
【0068】
(変形例1)
上記したように、バンク62上に形成された第3陽極24Bと駆動用TFT23のドレイン領域48とは、1つのコンタクトホール68で電気的に接続することに限定されず、図7に示すような、二段のコンタクトホールによって接続するようにしてもよい。図7は、変形例の有機EL装置の構造を示す模式断面図である。
【0069】
図7に示す有機EL装置111は、2つのコンタクトホール68a,68bを用いて、ドレイン領域48と第3陽極24Bとを電気的に接続している。1つ目のコンタクトホール68aは、ドレイン領域48と、第1陽極24R及び第2陽極24Gと同層に設けられた導電膜24aとを電気的に接続している。2つ目のコンタクトホール68bは、導電膜24aと、第2バンク62b上に設けられた第3陽極24Bとを電気的に接続している。
【0070】
このように、2つのコンタクトホール68a,68bを用いて接続するので、コンタクトホールを形成する過程において、コンタクトホールに生じる側面のテーパー長さを短くすることが可能となり、電気的な接続性を向上させることができる(確実に接続することができる)。よって、歩留まりを向上させることができる。また、1つ目のコンタクトホール68aのアルミニウム材料が剥き出しになることを防ぐことができる。また、1つのコンタクトホール68によってダイレクトに接続する場合と比較して、加工が容易になり、製造効率を向上させることができる。
【0071】
(変形例2)
上記した実施形態のように、機能層26を挟持する電極は、基板31側が陽極であり封止基板側が陰極である構造に限定されず、基板31側が陰極であり封止基板側が陽極である構造(リバース構造)でもよい。
【0072】
(変形例3)
上記したように、信号線13、電源線14、駆動用TFT23などを均等の間隔で配置していることに限定されず、例えば、塗布法で形成するR(赤色)とG(緑色)の発光素子領域には、機能層26などを平坦化させるために、これらを発光素子領域の下方に配置しないよう、バンクの形成領域をRGBの発光素子領域において偏らせるようにしてもよい。言い換えれば、B(青色)の発光素子領域の下方に配線やTFTなどを集中して配置するようにする。これによれば、塗布法で形成した機能層26の厚みが略均一になるので、発光品質を向上させることができる。
【0073】
(変形例4)
上記したように、トップエミッション構造の有機EL装置11を例に説明してきたが、上記構造を、ボトムエミッション構造の有機EL装置に採用するようにしてもよい。なお、ボトムエミッション構造は、配線などによって光が遮蔽される領域が多くなるので、トップエミッション構造に上記構造を適用することが望ましい。
【符号の説明】
【0074】
11,111…有機EL装置、12…走査線、13…信号線、14…電源線、15…信号線駆動回路、16…走査線駆動回路、21…スイッチング用TFT、22…キャパシタとしての保持容量、23…駆動用TFT(駆動回路)、24…陽極、24a…導電膜、24R…第1電極としての第1陽極、24G…第1電極としての第2陽極、24B…第2電極としての第3陽極、25…第3電極としての陰極、26…機能層、26a…機能液、27…発光素子、27R…赤色発光素子、27G…緑色発光素子、27B…青色発光素子、31…基板、32…表示領域、32a…実表示領域、32b…ダミー領域、33…非表示領域、34…サブ画素、35…検査回路、36…フレキシブル基板、37…駆動用IC、43…回路素子層、44…発光素子層、45…下地保護膜、46…半導体膜、47…ソース領域、48…ドレイン領域、51…チャネル領域、52…ゲート絶縁膜、53…ゲート電極、54…第1層間絶縁膜、55…第2層間絶縁膜、56,57,68,68a,68b…コンタクトホール、58…第3層間絶縁膜、59…反射膜、62…隔壁としてのバンク、62a…第1バンク、62b…第2バンク、62c…第3バンク、63…正孔注入層、63R…第1正孔注入層、63G…第2正孔注入層、64…発光層、64R…第1発光層としての赤色発光層、64G…第1発光層としての緑色発光層、64B…第2発光層としての青色発光層、66…絶縁層、67…開口部、71…第1配線群、72…第2配線群、73…第3配線群、74…第4配線群、81…第1発光素子領域、82…第2発光素子領域。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上の第1電極を囲むように設けられた隔壁と、
前記隔壁の開口部に設けられた第1発光層と、
前記隔壁上に設けられた前記第1電極と極性が同じ第2電極と、
前記第2電極を含む前記基板上の全体に設けられた第2発光層と、
前記第2発光層を覆うように設けられた前記第1電極及び前記第2電極と極性が異なる第3電極と、
を備えることを特徴とする有機EL装置。
【請求項2】
請求項1に記載の有機EL装置であって、
前記第1発光層は塗布膜で構成されており、
前記第2発光層は蒸着膜で構成されていることを特徴とする有機EL装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の有機EL装置であって、
前記第1発光層は、赤色及び緑色の少なくとも一方を発光する層であり、
前記第2発光層は、青色を発光する層であることを特徴とする有機EL装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の有機EL装置であって、
前記基板と前記隔壁との間に前記第2発光層の発光を制御するトランジスターが設けられており、
前記第2電極と前記トランジスターとが、少なくとも2段のコンタクトホールによって電気的に接続されていることを特徴とする有機EL装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の有機EL装置であって、
前記隔壁は、前記基板上の駆動回路と、前記駆動回路と接続された配線と、キャパシタと、を含む領域と平面的に重なる領域に設けられていることを特徴とする有機EL装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−252783(P2012−252783A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−122157(P2011−122157)
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】