説明

有用な製品表面上で高濃度の溶解銅を保持及び使用する方法

銅表面上の微生物を殺すために、濡れ角を増加し、銅表面を隔離し、且つ2〜50マイクロインチRaの表面粗度をもつ、コーティングを持たない銅表面を提供することによって有用な物品表面に溶解銅の高濃度を保持且つこれを使用する方法。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、2006年5月23日出願の米国暫定特許出願第60/747,948号、“METHODS OF PRODUCTION AND USE OF ANTI−MICROBIAL COPPER”の優先権の利益を主張する。
発明の分野
本発明は、一般に、銅及び銅合金表面上に配置された溶液中の溶解銅イオン及び銅含有分子の濃度を高め、これによってそのような銅合金表面の抗菌特性を促進するための方法に関する。特に、本発明は、半完成品及び完成品に加工する前に、商業スケールで実施し得る方法、並びに加工後に適用し得る処置に関する。
発明の背景
銅及び銅合金は、人類の初期の技術的な道具の一部として数千年にわたって使用されてきた。製造が容易であること、リサイクル可能性、総合的な腐食に対する耐性並びに、様々な魅力的な色及び仕上げの利用可能性を組み合わせることによって、硬貨鋳造、並びにこれらの特性が重要な種々の芸術的及び建築用途に好ましい材料であった。有用な強度、成型性及び比較的低コストと相まって殆ど全ての競合材料よりも高い導電性及び熱伝導性により、これらの材料はエレクトロニクス産業で不可欠になってきた。
【0002】
銅は、非常に低濃度でヒトの健康及び代謝の正常化、並びに他の生命体に重要な本質的に微量元素である。
船体の銅被覆は、フナクイムシ(teredo,shipworm)の発生を防ぎ、且つ木造船に海草及びフジツボなどの有機体の付着を防ぐために18世紀にイギリス海軍によって使用が始まった。その有益な作用は、海水と接触して銅表面がゆっくりと溶解するからであった。また銅及び銅化合物は、海洋生物によって船底が汚されるのを防ぐのに有効であるので、種々の材料で製造した船体用の塗料中に使用されてきた。これらの防汚特性は関係表面からの銅イオン放出に関係しており、その表面の微環境をそのような生命体に対して毒性として、関連する表面にこれらの生命体が付着しないようにする。海洋微生物は、10億分の1部(1ppbのCu)ほどの少量でも影響を受けることがある。
【0003】
近年の研究から、銅合金表面は、食物が媒介する疾患を引き起こす、サルモネラ、リステリア及び大腸菌などの微生物の生存能力を低下させるのに有効であることが判明した。そのような表面は、黄色ブドウ球菌、レジオネラ菌などのヘルスケア機器の二次感染に関連する微生物の生存能力を低下させるのにも有効である。
【0004】
従来、銅合金製品は、種々の処置によって酸素から保護したきれいな表面をもつように製造されている。銅及び銅合金は大気と接触して、標準温度で亜酸化銅(CuO)から主になる薄い酸化物の層を自然に形成する。硫黄を含む環境では、酸化銅(CuO)と硫化銅(cupric sulfide)(CuS)の割合が高い。この層は経時で厚く成長して、最終的にきれいな表面を覆い隠し、表面を暗くしてしまうだろう。特別に装飾したり、建築上の目的で意識して使用されたものでないかぎり、表面上の酸化物及び/または硫化物の暗色フィルムは「汚」く、好ましくないものとみなされる。そのようなフィルムが形成するときに、そのフィルムが形成しないように、及びそのフィルムを除去する方法に関して多大な努力と研究が費やされてきた。銅合金表面への酸素の輸送を遅らせる表面処理(さび止めフィルム(anti−tarnish film)、防汚剤(stain inhibitor)またはポリマーコーティング)も酸化物のフィルムの形成を遅らせる。これら及び他の方法は、当業者に公知である。
【0005】
銅、銅合金及び銅化合物の抗菌特性はこれまで公知であったので、これらの特性を使用する材料及びプロセスについて多くの特許が発行されてきた。上記のように何世紀にもわたって銅被覆材(copper sheathing)を使用して、船体の生物付着を防いできた。近年では、石油プラットフォームなどの静的水中構造も同様に保護されてきた。このプラットフォームの鋼鉄と保護銅被覆材との間の電解腐食により、この方法の実用性は制限されていたが、Miler(4,987,036号;1/1991)は、絶縁材料のついた構造物に付着させた多くの銅の小板(platelet)を設置することにより、実質的に連続コーティングを作り出す方法を開示する。Inoue(5,338,319;2/1995)は、樹脂製パイプの内側をベリリウム含有銅合金でコーティングする関連する方法について開示する。いずれの方法も、海水との接触に関係している。
【0006】
別の特許(Miyafuji6,313,064;11/2001)は、Cu−Ti合金を使用しており、ここではチタン(とおそらく他の合金用元素)が優先的に酸化する。これは金属表面で酸化物及び利用可能なイオンを生成するための計画的な表面処理に頼っているが、これらの酸化物及びイオンは、単なる硫化銅及び酸化物及び銅イオンよりも他のずっと反応性の元素を含む。
【0007】
多くの特許が、農産物における、及び海水処理で使用するための銅を含む殺生物剤に関して発行されてきた。銅塩及び化合物は、抗菌的に有効な銅イオンの強い供給源を提供するが、化合物が比較的高い溶解性であるため、銅が洗い流される前までの有効な期間が短い。この特許の多くは、溶液中への銅の放出を減少させ、且つ処置の有効な存続期間を増加させるための方法に重点的に取り組んでいる。この種の製品の例は、Cook(7,163,709;1/2007)、Back(6,638,431;10/2003)、Stainer(5,171,350;12/1992)及びDenkewicz(6,217,780;4/2001)に与えられている。これらの処置は様々な表面に適用することができるが、銅イオンの長期供給源として作用する永続的な、本質的に抗菌性の銅も銅合金表面も使用していない。
【0008】
抗菌性表面をもつ金属圧延製品(たとえばコイル状の金属シートまたはストリップ)を製造するのに使用する別の方法では、抗菌剤を含む溶液、塗料、またはポリマーで表面をコーティングし、そのコーティングを適所で乾燥または硬化させることである。抗菌剤は、金属粒子、抗菌性金属イオンを保持する非金属粒子、そのようなイオンを含むガラス粒子、及び/または金属塩若しくは同様の化合物の粒子であってもよい。これらの方法の典型例は、無機ゼオライト及び酸化物を保持し、順に抗菌作用のために金属イオンまたは化合物を保持する樹脂配合物でコーティングした金属基板からなるAK Steel“HealthShield”製品ラインである(Myersら;6,929,705;8/2005)。他の同様の製品(金属化合物または塩をそのまま使用する)は、Lyon(6,042,877;3/2000)及びZlotnik(5,066,328;11/1991)に開示されているが、このリストは決して包括的ではない。これらのコーティングは種々の多くの基板に、完成品に成形する前後で適用することができるが、これらのアイテムの抗菌特性はコーティング単独によるものであって、抗菌イオンの恒久的な供給源として金属製品それ自体に依存していない。
【0009】
抗菌製品及び表面を形成するさらに別の方法では、上記のものと似ているが、バルクポリマーまたは同様の成形可能な物質と完全にブレンドされた金属粉末、金属イオン含有塩及び他の化合物、並びに金属イオンを保持する粒子の使用も含まれる。McDonald(6,797,743;9/2004)は、基板アイテム上のコーティングとしても使用されるそのようなポリマーを開示する;Kiik(6,585,813;7/2003)は、建築業で使用されるブレンドアスファルト板葺き屋根及び他のアイテム上で成長する藻と戦うために使用される関連配合物を開示する。やはり抗菌特性は銅−含有粒子や他の金属含有粒子によるものであり、材料それ自体の全体によるものではない。これらの材料の有効性は、マトリックスにブレンドできる抗菌性金属粒子及び化合物の総濃度により、並びにマトリックスを通して有用な表面へのこれらの有効なイオンの輸送により限定される。ここでコーティングされていない金属表面は、表面の有効なイオンに当該溶液中の金属の溶解性によってのみ限定される最小輸送及び濃度を直接与える。
【0010】
酸化のない銅表面を供給し、且つさらなる酸化を防ぐために処理される従来法の不都合な点は、清浄な、剥き出しの鮮やかな銅表面は通常疎水性であり、表面と水または水溶液との間の接触を最小化または防いでしまうという点である。さらに酸化を防ぐために通常適用される処理は、通常、もとの銅表面よりもさらに疎水性であり、銅表面への酸素の物理的輸送を直接最小化し、表面への酸素の輸送と、表面からの銅イオンの輸送に役立ち得る表面上の水の吸着膜の形成を防止する。
【0011】
そのような処置のさらに不都合な点は、金属、非イオン化状態の清浄な、剥き出しの鮮やかな銅は殆ど水に不溶性であるということである。銅の酸化によって銅イオンが提供され、これは水溶液または体液残留物(body fluid residue)に吸収されて、抗菌特性を提供することができる。輸送に利用可能なそのような銅イオンがないと、抗菌活性の表面は自然に発現(develop)しなければならないだろう。これらの自然/大気プロセスは発生が遅いだけでなく、必要な反応は、先の商業的処置の性質、環境条件に依存して、反応時間が様々であるので、予測するのが難しい。使用時に設置されている時に表面が活性であることを保証することに興味を持つ者は、(単数または複数の)上記発明の恩恵を受けるだろう。というのも、これらの表面は使用時に予想通りに活性であることが確保されるからである。従って、これらの自然に形成した表面の抗菌活性を予想するのは困難である。
【0012】
従来の技術では、商業的に有用な製品を作るのに必要な製造法の効果及び、これらの抗菌表面が処理の間に変化するかについては取り扱っていない。本発明は、製品が設置されているときに繰り返し及び再生可能に活性面を作り出す問題に関し、これにより抗菌特性に関して水溶液または体液残渣中に吸収可能な銅イオンを提供し、これは、製造の間または製造後に半完成品または完成品上に製造することができる。
発明の概要
一態様において、本発明は、種々の方法のいずれかによって銅及び銅合金表面上に特定の表面を作り出し、続いて表面と接触している溶液中の溶解銅イオンの濃度を高めるための化学的処理を実施してもよい。これによってその表面の抗菌特性を高める。この表面仕上げは、好適な仕上げの作業ロール(work roll)を使用する冷間圧延により;好適な研磨剤で研磨することにより;任意に研磨剤を使用して磨いたり研磨することにより;好適なサイズ及び速度の砂またはショット(弾:shot)でその表面に衝撃を与えることにより;制御化学エッチングにより;及び他の種々のプロセスによって製造することができる。特定の表面仕上げの目的は、水、水溶液、及び/または体液による銅合金表面の濡れ性を高めて、抗菌効果のために前記流体に銅及び銅イオンの溶解を促進することである。
【0013】
一態様において、化学処理は、水溶液または体液による表面の濡れ性と干渉するであろう、油、グリース、ワックス及び他の表面汚染物を除去するためにミルコイル加工(mill coil processing)の間の脱脂処理の使用を含む。この化学処理は、さらに、希釈酸(diluted acid)、おそらく酸化剤を添加する脱脂表面の処理、続いて水濯ぎを含むことができる。この追加の処理を使用して、銅または銅合金表面の酸化状態を変えて、表面から、表面と接触している溶液に銅イオンの取り込みを促進する。
【0014】
一態様において、表面の化学処理は具体的には、曇り防止剤(tarnish inhibitor)、たとえばベンゾトリアゾール(BTA)若しくはトリトリアゾール(TTA)も、水、水溶液、若しくは体液により表面を濡らさないように、あるいは銅若しくは銅合金表面と接触させるために酸素や硫黄の移動を防いだり遅延させたりするために使用される油、ワックスも他の物質のフィルムの適用も含まない。そのようなものを適用すると、処理面からの銅イオンの取り込みが阻害され、表面の抗菌特性が低下する。
【0015】
従って、本発明は、銅合金表面に配置された溶液に高濃度で溶解すべき銅供給源を連続的に提供するように構成された銅合金表面を含む有用な製品を含む。
発明の詳細な説明
本発明は、多くの例示的なプロセスが記載されている以下の詳細な記載を参照としてより理解することができる。本発明を通して多くの略号を使用する。理解し易くするために、略号の幾つかを以下の表1に記載及び列記する。これらの定義は多くの物質に関するものであり、たとえば本発明の材料、材料の特徴、試験手順、革新的な製造及び表面処理プロセス並びに他のプロセスの詳細な定義が挙げられるが、これらに限定されない。
【0016】
【表1】

【0017】
1)接触角の研究−水溶液による表面濡れ性
本発明に従った処理の有効性の一つの尺度は、処理面とその表面上にある水滴(液滴)の上面との間の接触角を測定することである。この詳細な記載において、接触角は、いずれも空気の存在下、固体表面と液体との間の入射角(angle of incidence)として定義される。物理的にはこれは、固体、液体及び気体間の接触点における小滴(droplet)の接平面と固体表面それ自体との角度に対応する。この接触角は、種々の流体による表面の濡れ性と表面の間の付着性により見られるように、関与する表面の化学結合と表面界面エネルギーに関連する。これらの表面エネルギー(及び接触角)は、表面粗度(Ra)としてそのような制御可能な因子;ベース表面それ自体の化学;酸化物、硫化物(及びその種)などの表面フィルムまたは層の存在の有無;及びそのような表面フィルムの厚さなどの制御可能な因子と関連する。
【0018】
本発明において、問題となる固体表面は、バルクの金属物品の一部または基板上に配置されたより薄い層(しかし恒久的)の、銅合金の恒久的な金属表面である。「銅合金」とは、本明細書中、その銅自体を含む全ての銅含有合金を指す。本明細書中で議論される接触角の測定は、液体の溶解した気体含有量を最小化し、且つ安定化させるために沸騰させておいた、単一の標準となる流体、ラボ品質の濾過済み脱イオン/逆浸透水(DI/RO水)で実施した。測定は、液滴法を使用し、本発明のプロセスに従って処理した種々の金属表面上で実施した。接触角の実際の測定は、リアルタイム捕捉カメラ(capture camera)/顕微鏡設備を使用して実施した(Drop Shape Analysis system)。測定は、上記の「標準水」0.003mlを表面に投じて1分後に毎秒実施した。接触60秒後の最終接触角は、この試験における比較の標準として選択した。これにより、試験の設定、光の条件及び空気の流れの振動(vibration)による測定の変動性を最小化するのに役立った。
【0019】
接触角測定結果を図1に示す。表面上に残存する油膜のついた市販の処理材料は、最も高い接触角であり、これは試験で使用した水では一番悪い濡れ性であった。「油と水は混ざらない」という一般的な観察があることから、これは予想されることである。疎水性の曇り防止剤のトリトリアゾール(TTA)とベンゾトリアゾール(BTA)で処理した市販品の表面も、高い接触角と悪い濡れ性を示し、このことは、水(と体液及び多くのクリーナーなどの水溶液)はそのように処理した表面と接触しないことを意味する。これらの結果は、種々の銅合金で同じようなパターンを示すが、実際のデータはばらつきがある;銅、赤真鍮及び黄色真鍮の結果を図1に示す。本発明の第一のプロセス、以後、「プロセス1」という、で処理した表面は、試験したそれぞれの合金の標準の商業的プロセスよりも常に低い接触角を示し、本発明の第二のプロセス、以後「プロセス2」という、で処理した表面は、著しく低い接触角を示す。
【0020】
2)疑似体液を使用する処理面における銅放出試験[人工的に作成した汗における浸漬]
本発明に従って処理した銅合金表面の有効性のさらなる尺度として、疑似体液中で金属表面からの銅放出速度を測定するために試験を実施した。そのように処理した表面の主な使用の一つは、感染した病院職員と非感染病院職員との間の二次感染を防ぐことであるので、手の皮膚(と汗などの液体)に接触した押し板やドアハンドルなどの接触面は特に重要である。既刊文献の研究では、接触性皮膚炎の事例により、ヒトの汗への金属の放出には大きな関心が示されている。それ故、多くの「人工的な汗」の配合例があるが、標準的試験法では殆ど発行されたものはなく、主にニッケル用の試験向きのようである(表2)。研究された殆ど全ての配合物に共通しているのは、塩、乳酸と、実際の汗で知見されるアミノ酸残渣を真似た何らかの窒素含有物質を配合するということである。殆どは一般的に使用されている血漿増量剤(extender)に似ているが、その割合は広範囲を変動し、多くの配合物は銅表面と強く反応するであろう他の物質(たとえば硫化物、アンモニアまたはアンモニア塩)を含む。
【0021】
【表2】

【0022】
この試験用に選択した人工汗配合物は、JIS L0848Dに知見され、これはNHCl(塩化アンモニウム)とNaS(硫化ナトリウム)の両方を含む。これらはいずれも銅表面をかなり腐食すると予想され、またそれ自体微生物に対して幾らか毒性であると予想される。この配合物を使用する続く試験から、CuS(硫化銅)の不溶性フィルムの形成と予想外の腐食が知見された。この腐食生成物は選択された方法によって分析するのが困難であり、また生物学的に利用可能な形態にはなく、抗菌剤の観点からは効果がないので、この配合物を使用する試験は中止した。使用した他の組成物は、文献で知見された他のあまり侵略的でない配合物の折衷案であり、容易に利用可能な医薬品をベースとする。この処方(RL−1という)は、乳転化リンガー溶液(深刻な脱水または失血時に使用される一般的な血漿増量剤)をとり、実際の汗に通常知見されるタンパク質分解生成物とアミノ酸残基を真似るのに適当な量の尿素を添加して製造する。最終組成物を表2に示す。
【0023】
銅サンプルを二つの方法(浸漬及び液滴法)により人工汗に暴露した。浸漬試験は、選択した汗配合物の既知量(通常15ml、サンプルを完全に覆うのに十分な量)の入った大きな試験管に処理済み金属試験片を置くことからなる。この試験管を所望の暴露時間、かき混ぜて、その後試験片を試験管から取り出し、ラボ品質の濾過脱イオン/逆浸透水(DI/RO水)の既知量で試験管を濯いだ。使用した人工汗の総量を、最初の暴露中の銅の実際の濃度を測定するために希釈因子を計算するために書き留めた。液滴法(drop testing)は、水平方向に保持した処理済み試験片の上部表面に試験溶液の少量をピペットで取り、所望の時間、暴露し、次いで試験管内に液滴を捨て、次いで既知量のDI/RO水で試験片を試験管内で濯ぐことからなる。最初の液滴暴露で使用し得る溶液量は、処理済み試験片上の溶液の表面張力により制限された。この方法(続く生物学的試験暴露手順と似ているが)は、溶液に暴露される銅の表面積が少なく、ICP試験に十分な容積を提供するのにより多くの希釈が必要であり、表面上で溶液を攪拌することができず、浸漬試験法よりも試験結果が大きくばらついた。本明細書中で提示された銅放出結果は、全て浸漬法によるものである。
【0024】
暴露され希釈された溶液は、Thermo Electron Corporation製のIRIS Intrepid II XSP Dual View分光器上、誘導結合プラズマ分光器(ICP)で銅含有量に関して分析した。この機械の銅検出限界は、10億分の1.3部(PPB)であった。これは海水中の付着防止用途における銅の最小毒性限界と同じオーダー(1PPB)であるので、溶液中に何らかの検出可能な銅が存在すると、何らかの抗菌効果を示すと予想され、より高いCu濃度では大きな効果があると予想される。希釈レベルを使用して、実際の暴露の間に好適な値に分析された濃度を再標準化した。ICPによる試験の整合性のチェックとして他の元素(Al、Zn、Ni及びAg)に関しても分析を実施した。
【0025】
図2は、種々のプロセス処理の接触角測定と、同一プロセスにより処理した試験片からの銅の溶液中への放出との比較を示す。通常の商業プロセスに関しては、一般的に銅放出が低速であり、銅は強く結合しており、微生物にとって利用可能ではないという兆候がある。本発明のプロセスにより処理した表面に関しては、接触角と銅放出との間には強い相関関係があり、接触角が小さくなると(表面がよりよく濡れ性であることを示す)、銅放出が劇的に増加する。
【0026】
種々のプロセス経路及び表面仕上げに関して人工汗PL−1中に浸漬した処理済み試験片から溶液中への銅放出結果を図3に示す。本発明に関連した全てのプロセスに関し、溶液中の銅含有量は、ベンゾトリアゾール(BTA)曇り防止剤コーティングを使用したストリップの標準的な商業的処理から得られた結果よりも高かった。表面仕上げB及びCに関しては、試験した全てのプロセスで同様のパターンに従った(標準の商業的プロセスよりもCu含有量が2〜6倍増加)。表面仕上げA(好ましい態様)に関しては、いくらか本発明のプロセス経路の他の表面仕上げと似た結果であるが、他の好ましいプロセス経路(プロセス2及びプロセス5)では、溶液中の銅含有量が15倍から25+倍も増加する劇的な改良を示す。
【0027】
3)生物学的試験−処理済み銅合金表面で暴露された微生物の不活化
本発明のプロセスの抗菌活性のさらなる立証は、生物学的作用物質(biological agent)を処理済み表面と接触させることによって不活化させる速度を示すために生物学的作用物質を使用する実際の試験である。使用した試験法は、無生物の、無孔性、非食品接触面上の抗菌剤の有効性を評価するためのASTM−認可法の変形である。使用した試験法は、以下の:
1)試験すべき微生物の標準培地を準備する;
2)所望の材料サンプルを入手する、及び/または所望の試験条件に従って(本発明のプロセス及び比較のために標準的な材料)サンプルを処理する;
3)培養した微生物の既知量に処理サンプルを所望の試験時間、暴露する;
4)(微生物のさらなる成長を促進も阻止もせず、試験表面のさらなる作用を中和する)好適な中和溶液の所定量に暴露した試験片をおき、試験片(coupon)を超音波処理して、生存している全ての微生物を中和溶液中に懸濁させる;
5)前記中和溶液から試験片を取り出して、さらに銅合金表面の抗菌作用を確実に停止させる;
6)(生存微生物の入っている)中和溶液を好適なレベルまで希釈して、暴露後に容易に可算可能な結果を得、選択した微生物に関して好適な成長培地でコーティングしたペトリ皿上で既知量の希釈溶液を暴露する;
7)暴露したプレート(調製済みペトリ皿)をインキュベートして、可算可能なコロニーの成長を促し、続いて個々のプレート上のコロニーを計数する;
8)使用した元の溶液中のコロニー形成単位(colony−forming unit)(CFU)の数を(移した溶液の既知量と希釈レベルとをベースとして)計算して、暴露表面から生存している微生物を除去する;
9)比較用のベースラインデータを提供するために、元の標準培地の整合量を同一方法(銅合金表面への暴露を除く)で処理し、同一方法でプレーティングし、インキュベートし、計数する、各段階からなる。
【0028】
表面仕上げA(〜10Ra)の合金C11000の重複試験片をそれぞれの試験条件に関して試験し、全ての希釈は二重にプレーティングして、生物学的研究室調製法の変動を最小化した。この試験における全ての暴露は、American Type Culture Collection (ATCC)、Manassas(バージニア州)から入手した大腸菌(Escherichia coli:ATCC 11229)を使用して実施した。院内(病院で始まる)感染及び食中毒の発生に関与した黄色ブドウ球菌及びサルモネラ腸菌(Salmonella enterica)などの他の重要な有機体を使用しても同様の結果が予想される。保存培地は使用前に少なくとも48時間培養して、微生物の活発な成長を確保した。保存培地20マイクロリットルを処理試験片の植菌に使用し、生存物を中和剤としてバターフィールド緩衝溶液(DI/RO水中0.6mM KHPOモノカリウムリン酸塩)20ml中に懸濁させた。同じ緩衝液を続く希釈に使用し、最終成長プレートは希釈懸濁液20mlで植菌した。大腸菌の保存培地の成長培地はDifco(商標)Nutrient Broth(ウシ抽出物及びペプトン)であり、ペトリ皿の培地(プレート培地)はDifco(商標)Nutrient Agar、いずれもBecton,Dickinson and Company(Sparks,メリーランド州)製であった。(必要に応じて)殺菌はスチームオートクレーブ(好ましい)、オーブン中200〜400℃でドライヒート(特定の試験条件により必要な場合)、または99%+イソプロピルアルコール中に器具を浸漬することにより実施した。プレート計数は、48時間培養後、暴露したプレートを外観目視検査により手動で実施した。可能であれば、(特定の希釈で)20〜300個のコロニーを示すプレートを計数に使用した。必要により低い希釈で低い計数プレートを使用した。
【0029】
本研究の目的に関して、暴露後に試験片上に残っている微生物(CFU)の絶対数は、もとのベースライン数からの減少率(百分率またはLog10減少)ほど重要ではない。EPA有効性データ要件は、微生物の数の99.9%減少(CFUで3Log10減少)はベースラインと比較してかなり有効であるので、これは本研究で探し求められたトリガーレベルであった。CFUで3Log10減少に必要な暴露時間を測定し、本発明の方法で処理していない銅合金の抗菌特性の他の試験からの同様のデータと比較した。
【0030】
図4〜図7に微生物暴露試験の結果を示す。全ての場合において、本発明のプロセスの一つを使用した暴露の結果は、通常の商業的加工を使用して処理し、曇り防止剤フィルムとしてBTAでコーティング、銅合金圧延(ミル)製品に関する通常条件を使用するサンプルの暴露に対して比較する。図4は、本発明のプロセス2(DG+PKL)による処理の結果を示す。このプロセスにより処理した表面は、たった30分の暴露後にCFUで3Log10の減少(活性バクテリアで99.9%減少)を示し、45分後には完全に不活化した。BTAコーティングで処理した商業的加工材料は、90分(本試験で使用した最長)の暴露後でCFUでたったの2Log10の減少しか示さない。2005年の試験では、Michelsらは、90分後に大腸菌の種々の菌株の完全な不活化を示しているが、どの変色フィルムの存在及び表面仕上げについても報告していない。
【0031】
図5は、本発明のプロセス4(DG+PKL+FURN1)を使用する生物学的暴露の結果を示す。本プロセスで処理した表面は、45分をやや超えてCFUで3Log10減少を示し、60分の暴露後には完全に不活化した。
【0032】
図6は、本発明のプロセス5(DG+PKL+FURN2)を使用する生物学的暴露の結果を示す。本プロセスで処理した表面は45分後にCFUで低い減少(たったの2Log10減少)を示したが、急激な変化となり、同じ60分暴露後には完全に不活化した。試験した好ましいプロセスは三つとも、既に公開されたデータと比較して活性CFUにおいてかなり早い低下を示す(40〜60%少ない時間で3Log10減少及び30〜50%少ない時間で完全な不活化)。
【0033】
図7は、標準的な最終の商業加工(曇り防止剤としてBTAを含む)と、圧延されたが、清浄もコーティングもされていない、圧延ミル潤滑剤の残存フィルムのついた材料との間の比較を示す。これらの二つの条件は同様の挙動を示し、暴露された微生物の不活化の速度は遅い(60〜90分後でCFUでたったの1〜1.5Log10減少)。接触角の試験から、これらの条件はいずれも、濡れ性が悪く、接触角が大きいことが示され、圧延油サンプルは、最大の接触角であった。
【0034】
本発明の一態様は、以下の実施例を参照として詳細に記載する。
銅合金ストリップは所望の厚さに加工し、アニールして軟化させ、通常プロセスにより清浄化して最終圧延前にストリップから酸化物を除去する。所望の表面仕上げを与えるように意図された表面をもつ作業ロールを圧延装置スタンド(rolling mill stand)に装填する。コイル状のストリップをこの圧延装置に装填して、最終厚さになるまで一回以上圧延する。所望の表面仕上げとなる作業ロールに必要とされる表面仕上げは、合金、生じる(incomoing)硬度、生じる表面仕上げ、減少パススケジュール(reduction pass schedule)及び当業者に公知の他の因子に依存する。圧延済みストリップの所望の表面仕上げは2〜50マイクロインチRaであるべきであり、好ましくはこの仕上げは4〜36マイクロインチRaであり、最も好ましくは6〜14マイクロインチRaであるべきである。圧延後、コイル状のストリップを半連続清浄ラインに入れて、市販の脱脂溶液を使用して残存する圧延潤滑剤を除去し、水(疎水性曇り防止剤を適用せずに)で濯ぎ、熱空気で乾燥する。清浄ラインから出る乾燥ストリップは、輸送し易くするためにコイル状に巻き戻す。最終の幅に細長く切断し、輸送用に包装するのは、消費者にとって視覚的に好ましくないコーティングされていないストリップが大気によって過剰に酸化されないように、最少遅延で実施すべきである。ストリップ表面の通常の変色及び僅かな酸化は、プロセスの一部として予想され、ストリップの抗菌特性に役立ち得る。表面仕上げをさらに精微化するために必要によりブラシ掛けまたはバフ研磨を任意に使用して清浄処理を実施することができる。
【0035】
本発明のさらなる態様は、以下の実施例を参照として記載されよう。
銅合金ストリップは、すぐに仕上げができる所望の厚さに加工し、アニールして軟化させ、通常のプロセスにより清浄化して最終圧延前にストリップから酸化物を除去する。所望の表面仕上げを提供するように意図した表面を有する作業ロールを圧延装置スタンドに装填する。コイル状のストリップを圧延装置に装填し、一回以上通過させて最終厚さに圧延する。所望の表面仕上げが得られるように操作ロール上に必要な表面仕上げは、合金、生じる硬度、生じる表面仕上げ、減少パススケジュール及び当業者に公知の他の因子に依存する。圧延済みストリップの所望の表面仕上げは2〜50マイクロインチRaであるべきであり、好ましくはこの仕上げは4〜36マイクロインチRaであり、最も好ましくは6〜14マイクロインチRaであるべきである。圧延後、コイル状のストリップを半連続清浄ラインに入れて、市販の脱脂溶液を使用して残存する圧延潤滑剤を除去し、水で濯ぎ、硝酸、硫酸、リン酸、塩酸または同様のものなどの金属酸化物を減少または溶解させるのに好適な酸の溶液で処理する。多くの市販配合物は、硫酸濃度、通常<30%(過酸化水素などの酸化剤を添加することができる)に依存し、続いて(疎水性曇り防止剤を適用せずに)水洗し、熱空気で乾燥する。硫酸濃度は好ましくは<25%であり、より好ましくは10〜20%である。(所望により)過酸化水素含有量は好ましくは<15%であり、より好ましくは0.5〜3%である。他の酸及び酸化剤も同様に使用することができる。この実施例は単なる例示であり、本発明で具体化された一般原則の適用を制限するものではない。清浄ラインから出る乾燥ストリップは、輸送し易くするためにコイル状に巻き戻す。最終の幅に細長く切断し、輸送用に包装するのは、消費者にとって視覚的に好ましくないコーティングされていないストリップが大気によって過剰に酸化されないように、最少遅延で実施すべきである。ストリップ表面の通常の変色及び僅かな酸化は、プロセスの一部として予想され、ストリップの抗菌特性に役立ち得る。表面仕上げをさらに精微化するために必要によりブラシ掛けまたはバフ研磨を任意に使用して清浄処理を実施することができる。清浄化は、両方の脱脂及び酸処理の装置が利用可能であれば、一つの連続清浄ラインで実施することができる。そうでない場合には、これらの操作は二つの個別の清浄ラインで実施することができる。個別の清浄ラインで実施する場合、疎水性曇り防止剤を最初のラインの乾燥前に適用して、酸処理前にストリップに表面保護を提供することができるが、細長く切断する前に最終処理に続いてそのような阻害剤は適用できない。
【0036】
本発明のさらなる態様は、以下の実施例を参照として説明されよう。
銅合金ストリップは通常の商業的な方法によって加工して、2〜50マイクロインチRaの圧延ストリップの所望の表面仕上げとする。好ましくはこの仕上げは4〜36マイクロインチRaであるべきであり、最も好ましくは6〜14マイクロインチRaであるべきである。ストリップはそのまままたは脱脂して輸送することができ、あるいは(続く形成プロセスのために所望により)アニールして軟化させ、アニールプロセスの間に形成した酸化物を除去する。清浄後、ストリップを疎水性曇り防止剤でコーティングして、表面条件及びストリップの外観を保持し、これは、スタンピング、描画(drawing)、曲げ、鋳造などの通常の商業プロセスにより完成部品に形成する。これらの方法は当業者に公知である。次いでストリップを所望により完成部品に形成する。
【0037】
形成後、及び最終組立の前後、及び製品を使用するために設置する前に、(単数または複数の)製品を商業的な脱脂溶液を使用して清浄化して、成形用潤滑剤として使用した油、ワックス及びグリース残留物を除去し、及び/または水で濯ぎ(疎水性曇り防止剤を適用せずに)、及び/または熱空気で乾燥する。製品は、前記処理前に、コーティング、ラッカー、塗料や他のポリマー仕上げ材で処理すべきではない。脱脂処理に続いて、これらは上記のように酸溶液で処理することもできる。たとえば、上記の硫酸<30%(これに過酸化水素などの酸化剤を添加することができる)及び/または水で濯ぎ(疎水性曇り防止剤を適用せずに)及び/または熱空気で乾燥する。
【0038】
成形した部品は、脱脂後、処理して銅合金表面の酸化状態を慎重に変化させて、抗菌特性を高めるために表面の銅の生物利用性を高める。これは、0C〜500Cの温度で種々の時間、空気(またはO、H、N、またはAg、P、S、N、Cなどの化合物などの種々の構成要素のいずれかを含む反応性雰囲気)中に暴露することを含む、多くの方法のいずれかにより;硫化物、ハロゲン、塩及び希酸の溶液との処理により;酸素を慎重に添加した水との処理により;過酸化水素または同様の酸化剤の溶液との処理により;及び当業者に公知の他の方法により実施することができる。この処理の意図は、銅合金表面の酸化を防ぐ通常の商習慣ではなく、当該表面をより化学的に活性化することである。
【0039】
上記実施例は単なる例示であって、本発明の原理の適用を制限するものではない。他の具体的な装置を使用して、所望の表面粗度または仕上げを達成することができる。油分、グリース及び他の表面フィルムを除去するために他の溶液を使用することができる。種々の酸及び濃度を使用することができ、過酸化水素以外の酸化剤も同様に使用することができる。具体的な特性の表面粗度及び仕上げを作る、及び/またはその銅合金表面を商業的な脱脂処理にかけて疎水性表面フィルムを除去する、及び/またはその表面を酸及び/または酸化剤で処理して、処理面と水溶液との間の接触角を高めて処理表面の銅の生物学的利用性を高める、及び/またはその表面を好適な雰囲気及び温度に暴露して、銅イオンの放出をさらに促進させる、及び/または抗菌作用のためにそのように処理した表面上に疎水性保護及び曇り防止フィルムの使用を除外する原理は、本発明の基本的な部分である。
【0040】
本発明の銅及び銅合金表面は、多くの用途で使用することができ、たとえば以下のものが挙げられるが、これらに限定されない:
医療機器
電化製品
点灯装置及び制御機器
衛生器具
手工具
救急処置具
車輌の接触面
農産物及び肉処理包装用の加工機器
農業
穀物または食品貯蔵
水/給食
耳標
乳製品及び肉加工
ファストフード及び商業レストラン
携帯電話及び電気通信
コンピューター(キーボード及び周辺機器)
マスク及び呼吸装置
建材及び建築でのモールドプルーフィング(mold proofing)。
【0041】
本明細書を通して、脱脂(degreasing)及び清浄(cleaning)なる用語を繰り返し使用する。表面を清浄/脱脂する多くの別の方法も予想され、以下のもの:
1)研磨剤で清浄/グリット吹きつけ
2)カソード清浄(cathodic cleaning)/脱脂
3)アノード清浄(anodic cleaning)/化学粉砕(chemical milling)
4)電解及び電気化学的清浄
5)超音波または他の音響活性の適用
6)特別な医学用途用のイオンミリング(ion milling)
が挙げられるが、これらに限定されない。
【0042】
一態様において、以下の:
超音波+アノード(andoic)電解清浄+カソード化学ミリング
の全てを実施するのが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】図1は、プロセス及び合金の関数として測定された接触角を示す。この接触角は、列記された本発明のプロセスのいずれに関するものよりも、BTA、TTA及び油などの抗−曇り防止剤(anti−tarnishing agent)を使用する商業的処理に関して高い。油膜を使用する商業的に処理された面は、最大接触角と最低の水濡れ性を有する。過酸化水素などの酸及び酸化剤で処理した表面(プロセス2)は低い接触角及び優れた濡れ性を示す。このパターンは、列記された全ての合金ファミリー(銅、赤真鍮(red brass)、及び黄真鍮(yellow brass))に関して維持される。
【図2】図2は、水溶液中への銅放出(evolution)(溶解)と表面処理プロセスの関数としての接触角との間の関係を示す。銅の放出は、接触角度が低下するにつれて増加し、このことは表面と溶液との間の濡れ性(低接触角)は、高い銅放出に重要であり、そして抗菌作用に重要であることを示す。
【図3】図3は、プロセス経路と表面仕上げの関数としての溶液中の銅放出/含有量を示す。全ての本発明のプロセスは、曇り防止剤としてBTAで処理する通常の商業的な処理と比較して、溶液中で銅が増加したことを示す。表面仕上げ「A」(好ましい態様)に関しては、特定のプロセス経路は、溶液中への銅の放出を劇的に増加させる。プロセス5と仕上げAとの組み合わせは、試験した方法で最も高い銅放出を示した。
【図4】図4は、曇り防止剤としてBTAで処理した通常の商業的に処理した材料と比較した、本発明のプロセス2により処理した表面で暴露した大腸菌の不活化速度を示す。このプロセスはたった30分間の暴露後でCFUが3log10減少(活性バクテリア99.9%減少)し、45分後には完全に不活化したことを示した。市販の材料は90+分暴露後にやや減少しただけである。
【図5】図5は、本発明のプロセス4による処理結果を示す。このプロセスは、45分間暴露後でCFUが3log10減少し、60分後には完全に不活化したことを示す。市販の材料は90+分暴露後にやや減少しただけである。
【図6】図6は、本発明のプロセス5による処理結果を示す。本プロセスは、45分暴露後にCFUでやや低い(2log10)減少であったが、同じ60分後には完全に不活化したことを示す。市販の材料は90+分暴露後にほんの少し減少しただけである。
【図7】図7は、BTAを使用した市販の処理の材料と、残存油膜のついた、さらに処理しなかった圧延材料とを比較する。いずれの「商業的条件」も、本発明と比較したときに試験時間を通じて実質的に低い細菌不活化速度を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅ストリップの製造法であって、
a.所定の厚さと所定の抗菌特性に加工すべき銅合金ストリップを準備する;
b.前記銅合金ストリップをアニールする;
c.前記銅合金ストリップを清浄化して最終圧延前に酸化物を除去する;
d.前記銅合金ストリップをコイル形で圧延ミルに装填し、所定の厚さに圧延する;
e.前記銅合金ストリップは、2〜50マイクロインチの表面粗度を有し、より正確な範囲の表面粗度は、前記所定の抗菌特性に依存して少なくとも一部決定される;
f.前記銅合金ストリップをコイル形で少なくとも半連続式の清浄ラインに装填し、残っている全ての圧延潤滑剤を除去する;
g.脱脂溶液を使用してそのような潤滑剤を除去する;
h.前記銅合金ストリップを水で濯ぎ、乾燥する;
i.前記銅合金ストリップをコイル形に巻き戻す;及び
j.前記銅合金ストリップを細長く切断して所定の幅に形成し、前記銅合金ストリップの側面が大気中の酸素と隔絶するコーティングを処置せずに出荷用に包装する、各段階を含む前記製造法。
【請求項2】
前記表面粗度が4〜36マイクロインチである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記表面粗度が6〜14マイクロインチである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記銅合金ストリップを、金属酸化物を溶解するように構成された酸で処理する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記酸は30%未満の濃度の硫酸である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記硫酸を酸化剤と組み合わせる、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記酸化剤が過酸化水素である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記硫酸が10%〜20%濃度であり、前記過酸化水素が0.5〜3%濃度である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記銅合金ストリップを、加熱吹き込み乾燥空気を適用して乾燥する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記表面粗度が6〜14マイクロインチRaである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
溶液中に溶解した銅を連続して補充する溶液を提供する方法であって、
a.銅合金接触面をもつ中実の銅合金の塊を準備する、ここで前記銅合金表面は、微生物を殺すために所定の表面粗度と関連する所定の特性とを有する;
b.前記銅合金接触面は、前記銅合金接触面を覆い、前記銅表面接触面が大気中の酸素に暴露されないように隔絶し、さらに前記銅合金接触面に高い濡れ角を提供するバリヤコーティングをその表面上に持たない;
c.前記銅合金接触面は連続する銅供給源を提供するように構成された表面である;
d.微生物を殺すための前記所定の特性のため、ヒトの手または汚染粒子と接触するために暴露し易いように構成される用途に前記銅合金接触面をもつ銅合金の塊を効果的に配置すると、前記銅合金表面上の生存している危険な病原菌の減少を導くことをユーザーに助言することによって、前記銅合金の塊の設置を指示する、各段階を含む、前記方法。
【請求項12】
配置の前記指示段階が、中実の銅合金の塊から有用な物品を製造し、ユーザーに前記有用な物品が抗菌特性をもつことを助言する段階を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記有用な物品が政府によって鋳造され流通用に放出される硬貨である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
抗菌特性をもつ有用な物品を設計及び製造する方法であって、
抗菌特性が有用な物品の最小設計要件であることを決定する;
前記有用な物品の接触面の表面粗度特性を抗菌特性の最小要件に少なくとも一部基づいて決定する;
銅合金接触面上に配置された溶液中に高濃度で溶解させるべき銅供給源を連続供給するために、前記表面粗度特性と実質的に適合するように構成される銅合金接触面を提供する、各段階を含む、前記方法。
【請求項15】
抗菌消費材の販売法であって、
有用な機能を果たしつつ、有用な消費材の操作の間にヒトの手の一部で触るように構成される、接触面をもつ有用な機能を果たす有用な消費材を提供する;
ここで前記接触面は、2〜50マイクロインチRaの粗度特性をもつ銅合金接触面を含み;
ここで前記接触面は前記接触面を大気中の酸素と隔絶するコーティングをもたない;及び
前記有用な消費材は、前記銅合金接触面上に少なくとも一部基づく接触面上の生存している微生物の量を経時で減少させる傾向のある特性をもつと主張する、各段階を含む、前記方法。
【請求項16】
前記有用な消費材がドアノブであり、前記銅合金接触面は6〜14マイクロインチRaの粗度特性をもつ、請求項15に記載の有用な消費材の販売法。
【請求項17】
前記有用な消費材がドアの押し板であり、ここで前記銅合金接触面は、銅合金接触面の濡れ角を増加させる傾向のあるコーティングをこの表面にもたない、請求項15に記載の消費材の販売法。
【請求項18】
前記有用な消費材が調理器具である、請求項15に記載の有用な消費材の販売法。
【請求項19】
抗菌建築材の販売法であって、
有用な機能を果たしつつ、生存している有害な微生物により接触されるように構成されている、その上に接触面をもつ有用な機能を果たす有用な建築材を提供する;
ここで前記接触面は、2〜50マイクロインチRaの粗度特性をもつ銅合金接触面を含み;
ここで前記接触面は前記接触面を大気中の酸素と隔絶するコーティングをもたない;及び
前記有用な建築材は、前記銅合金接触面上に少なくとも一部基づく接触面上に生存している微生物の量を経時で減少させる傾向のある特性をもつと主張する、各段階を含む、前記方法。
【請求項20】
前記抗菌建築材が暖房及び排気システム用のダクト工事用であり、且つ前記銅合金接触面は4〜36マイクロインチRaの粗度特性をもつ、請求項19に記載の抗菌建築材の販売法。
【請求項21】
病気の伝播を低減する方法であって、ドアを開けるときにヒトの手で接触するように設計された位置のドア上に銅合金表面を提供する;
前記銅合金表面は、6〜14マイクロインチRaの表面粗度をもち、前記銅合金表面の濡れ角を高めるような傾向があるコーティングをその上にもたない;及び
前記ドアを病院に配備する、各段階を含む前記方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2009−538232(P2009−538232A)
【公表日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−512251(P2009−512251)
【出願日】平成19年5月22日(2007.5.22)
【国際出願番号】PCT/US2007/069413
【国際公開番号】WO2007/140173
【国際公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【出願人】(508345922)ピーエムエックス・インダストリーズ・インコーポレーテッド (2)
【Fターム(参考)】