説明

有色レーザマーキング

本発明は、ポリマー含有書込み媒体の溶着に基づく、プラスチックのプラスチック表面への有色レーザマーキングおよびレーザ書込みに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマー含有書込み媒体の溶着に基づく、プラスチックのプラスチック表面への有色レーザマーキングおよびレーザ書込み(inscription)に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な波長のレーザビームを用いて、材料および製品に恒久的にマーキングし書き込むことが可能である。
【0003】
このマーキングおよび書込みは、レーザエネルギーの作用によって、
1.材料自体上に(固有反応)行い、あるいは
2.書込み媒体上に行い、それを書き込まれる材料に外部から転写する。
【0004】
したがって、マーキング方法1)では、金属は、例えば、レーザ照射に反応して様々な焼戻し色を示し、照射点が暗色になり(炭化)、PVCなどのプラスチックは、プラスチックの着色に応じて色が薄くまたは濃く変色(起泡、炭化)する。
【0005】
プラスチックでは、レーザ感応性顔料を加えることにより、これらの効果がしばしば増強されまたは開始される。欠点は、一般に、白および黒、または種々の灰色および褪色段階の「色」しか実現できず、また、レーザ感応性顔料をマスターバッチ中のプラスチック材料全体に添加しなければならないことである。
【0006】
マーキング方法2)では、適当なエネルギーおよび波長のレーザビーム(例えば赤外レーザ)が書込み媒体に当たる場合、およびこの書込み媒体が書き込まれる材料に接触する場合、書込み媒体が、材料に転写され、その上に定着される。このようにして、有色および黒/白の書込みまたはマーキングが可能である。この場合は、書き込むのに実際に必要なレーザ用顔料の量は、例えばマスターバッチ添加時(書込み方法1)より著しく少ない。
【0007】
書込み媒体は、レーザエネルギー吸収剤を有するガラスフリットまたはガラスフリット前駆体を含み、所望の色に応じて、当業者に一般に周知の無機顔料、有機顔料、有機金属物質、または金属粉がそれに加えられる。このタイプのプロセスは、国際公開WO99/16625号、米国特許第6,238,847号、および国際公開WO99/25562号に記載されている。
【0008】
これらの混合物を、例えば、吹付け、刷毛塗り、散布、帯電などによって書き込まれる媒体に直接に、またはテープやフィルムなどの支持基材にアプライした後、必要なレーザエネルギー/密度(cwレーザ(cw=連続波)、1〜30Wまたは100W/cm2〜5MW/cm2)での照射およびマーキングが行われる。このようにして、ガラス、セラミック、金属、石、プラスチック、および複合材料に書き込むことが可能である。
【0009】
ドイツ特許出願公開DE−A10136479A1号および同DE−A19942316A1号は、特にプラスチックへの有色レーザマーキングおよび書込み用の、レーザ感応性のガラス顔料とプラスチック顆粒の混合物を記載している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、従来の技術で知られる有色プラスチックマーキングの共通の特徴は、レーザ書込みプロセス後、プラスチック表面上に過剰な定着していない着色剤が依然としてあり、それによって、しばしば汚れた不鮮明なマーキング/書込み(粉末痕)を生じ、それが後でにじみまたは白華または剥離を起こす可能性があることである。
【0011】
これは、時間を浪費し、コストがかかる、後洗浄ステップおよび乾燥ステップを必要とさせ、最終プロセスステップとして製品への書込み(product inscription)を伴うインライン製造プロセスには特に望ましくないまたは受入れ難いものである。さらに、この有色マーキングまたは書込みは、使用時に、対応する環境の影響などの下で褪色する。
【0012】
したがって、本発明の目的は、レーザ光の作用下で、絶対的に褪色せず、恒久的で、耐摩耗性の、プラスチックへのレーザマーキングおよび書込みをもたらす方法を見出すことであった。
【課題を解決するための手段】
【0013】
驚くべきことに、ポリマー含有書込み媒体をレーザ光の作用下でプラスチック表面に溶着させた場合、プラスチックにカラーで書き込むことができることが今回分かった。書き込まれるプラスチックはそれ自体、レーザ光を吸収するどんな物質も含んではならない。この技術的解決法は、実際の着色書込み媒体からエネルギー吸収剤をはっきりと分離することを含んでいる。
【0014】
したがって、本発明は、互いに重なり合い支持フィルムで分離されている2層からなる層系を使用することを特徴とする、恒久的で、耐摩耗性の、プラスチックの有色書込みまたはマーキングの方法に関する。ここで、第1層は、エネルギー吸収剤を本来的にまたは層として含むプラスチックからなり、支持フィルムに付着された第2層は、書込み媒体として働き、着色剤およびポリマー成分を含み、このポリマー成分が、書込み/マーキング中に、レーザ光の作用下でプラスチック表面に溶着される。
【0015】
「有色レーザマーキングおよび書込み」という用語は、黒、白、および全ての色調の灰色を含めた全ての色および無色を用いたプラスチックのマーキングおよび書き込みを意味する。
【0016】
本発明による方法では、
・どんな汚れ、および/または着色剤の後からのにじみ/白華/剥離も防止される。
・実際のマーキングおよび書込みプロセスの後の望ましくない洗浄ステップが省ける。
・後の使用中のマーキングおよび書込みの色堅ろう性が保証される。
・全ての有機および無機顔料の使用が可能である。
【0017】
従来技術と比べると、本発明でのレーザエネルギーは、着色剤の昇華またはガラス顔料の融解には使用されず、その代わりに書込み媒体中のポリマー成分をプラスチック表面に溶着するのに使用される。ポリマー含有書込み媒体を均一に温め、同時に局部的な過熱を避けることにより、褪色しないマーキングおよび書込みが実現される。
【0018】
本発明による方法では、書込み媒体中のポリマー成分は、レーザエネルギーによって軟化しまたは融解される。このポリマー成分は、書込み媒体の着色剤と一緒に溶解し、次いでプラスチック表面に恒久的に溶着される。
【0019】
具体的には、図1〜4に示す層系が、ここでは特に適していることが分かった。図1は、透明で、レーザ光に安定な支持層(1’)および(1”)からなり、中間層としてレーザ感応性のエネルギー吸収剤層(2)を有する、プラスチック層を示す。層(1’)、(1”)、および(2)は、1ユニットとして互いに結合される。この支持層系に、ポリマー含有書込み媒体(3)が、例えば、ペーストの形で層として(支持体つきまたはなしで)付着される。支持層(1”)と層(3)は、例えば、溶着、接着剤による結合、ラミネーションなどによって互いに強く結合される。
【0020】
図2は、別の変形形態として、支持層(1’)をもたない図1の層構造を示す。
【0021】
図3は、図1および2とは異なり、書込み媒体が同様に2層(3’、3”)から構成できるが、ポリマー成分が追加の層(3’)として層(1”)に付着され、着色層(3”)が層(3’)に付着されることを示している。
【0022】
図4は、エネルギー吸収剤ですでにドープされ、ポリマー含有書込み媒体(3)で被覆された支持層(4)を有する圧縮された層構造を示す。
【0023】
書込み媒体を有する層(3)を、書き込まれるプラスチック上に置き、必要な接触圧力または適切な接着剤(恒久的な、または圧力/加熱により活性化可能なもの)により、マーキングされる領域と密に接触させる。次いで、適当なレーザを使用して、好ましくはビーム偏向またはマスク法によって、書込みまたはマーキングを行う。
【0024】
支持層(1’、1”)に適した材料は、記載の波長範囲内にあるレーザ光に対して理想的には透明および/または半透明であり、このレーザ光との相互作用によって損傷を受けないかまたは破壊されない全てのプラスチックである。支持層系(1)が2つ以上の層(1’、1”)から構成される場合、これらの層は、同一でも異なっていてもよい。
【0025】
適切なプラスチックは、好ましくは熱可塑性プラスチックである。具体的には、このプラスチックは、ポリエステル類、ポリカーボネート類、ポリイミド類、ポリアセタール類、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド類、ポリエステル−エステル、ポリエーテル−エステル、ポリフェニレンエーテル、ポリアセタール、ポリブチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリル酸、ポリビニルアセタール、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)、アクリロニトリル−スチレン−アクリレート(ASA)、ポリエーテル−スルホン類、ポリエーテル−ケトン類、ならびにそれらのコポリマーおよび/または混合物からなる。
【0026】
上記のプラスチックのうち、ポリエステル類、ポリカーボネート類、およびポリイミド類が、特に好ましい。三次元のプラスチック部品または表面への書込みおよびマーキングに特に適しているのは、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステル、およびポリアミドからできている非延伸アモルファスプラスチックの支持フィルムである。
【0027】
プラスチック支持体は、好ましくは、フィルム、ストリップ(帯片)、またはシートの形で使用され、好ましくは層厚が2〜100μmである。支持層系(1)の最大層厚は、それが1層の支持層からなるか、または複数の支持層(1’、1”など)からなるかに関わらず250μmである。
【0028】
この支持層系は、エネルギー吸収剤を0.01〜20重量%、好ましくは0.05〜15重量%、特に0.1〜10重量%含む。
【0029】
図4に示すように、ここでは、エネルギー吸収剤を支持層内に均一に分配しても、層として(1”)に塗布しても(図2)、2層以上のプラスチック支持層(1’、1”)の間に含めても(図1)よい。後者の場合では、このエネルギー吸収剤を結合剤および/または接着剤中に撹拌混入し、例えば、刷毛塗り、吹付け、印刷、ローリング、ナイフ塗布によってプラスチック支持層(1’)に塗布し、続いて第2のプラスチック支持層を、例えばラミネーションまたはホットラミネーションによって付着させる。
【0030】
吸収剤層が層(1’)上または2層(1’、1”)の間に配置される場合、この吸収剤層は、厚さが50nm〜100μm、好ましくは100nm〜50μm、特に150nm〜10μmである。
【0031】
エネルギー吸収剤層に適した結合剤または接着剤は、例えば、硝酸セルロース、酢酸セルロース、加水分解/アセチル化ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルブチラール、ポリアクリレート、またエチレン/エチレンアクリレートのコポリマー、エポキシ樹脂、ポリエステル、ポリイソブチレン、ポリアミド、またはそれらの混合物である。この結合剤または接着剤によって、エネルギー吸収剤をプラスチック支持層系(1)に均一に塗布することが可能になる。
【0032】
使用することができるエネルギー吸収剤は、レーザ光エネルギーを記載の波長領域において十分な程度吸収し、それを熱エネルギーに変換する全ての材料である。
【0033】
マーキングに適したエネルギー吸収剤は、好ましくは、炭素、金属酸化物をベースとするもの、例えば、Sn(Sb)O2、TiO2、カーボンブラック、アントラセン;例えばペリレン/リレンなどの赤外吸収性着色剤、ペンタエリスリトール、水酸化リン酸銅、二硫化モリブデン、酸化アンチモン(III)、オキシ塩化ビスマス;フレーク形のもの、特に、例えば、フィロケイ酸塩、例えば、合成または天然のマイカ、タルク、カオリン、ガラスフレーク、SiO2フレーク、合成による支持体なしのフレークなどを含む透明または半透明の基材である。また、例えば、フレーク形の酸化鉄、酸化アルミニウム、二酸化チタン、二酸化ケイ素、LCP(液晶ポリマー)、ホログラフィー顔料、導電性顔料、被覆されたグラファイトフレークなどフレーク形の金属酸化物も適切である。
【0034】
使用することができるフレーク形顔料はまた、被覆されていなくても、1層または複数の金属酸化物層で被覆されていてもよい金属粉である。例えば、Al、Cu、Cr、Fe、Au、Ag、および鋼のフレークが好ましい。例えば、Al、Fe、鋼のフレークなど腐食されやすい金属フレークを被覆されていない形で使用する場合、それらは、好ましくは保護用ポリマー層で被覆される。
【0035】
フレーク形基材のほかに、例えば、Al、Cu、Cr、Fe、Au、Ag、および/またはFeを含む球状顔料を使用することも可能である。
【0036】
特に好ましい基材は、1種または複数の金属酸化物で被覆されたマイカフレークである。特に、二酸化チタン、酸化アンチモン(III)、酸化亜鉛、酸化スズおよび/または酸化ジルコニウムなど無色の高屈折率金属酸化物と、例えば、酸化クロム、酸化ニッケル、酸化銅、酸化コバルト、特に酸化鉄(Fe23、Fe34)など有色の金属酸化物は、どちらもここで使用される金属酸化物である。使用されるエネルギー吸収剤は、特に好ましくは、酸化アンチモン(III)のみ、またはそれを酸化スズと組み合わせたものである。
【0037】
これらの基材は、周知であり、大抵の場合、例えば、Merck KGaAから商品名Iriodin(登録商標)Lazerflairとして市販されており、および/または当業者に周知の標準的な方法で調製することができる。透明または半透明のフレーク形基材に基づく顔料は、例えば、ドイツ特許およびドイツ特許出願第1467468号、第1959998号、第2009566号、第2214454号、第2215191号、第2244298号、第2313331号、第2522572号、第3137808号、第3137809号、第3151343号、第3151354号、第3151355号、第3211602号、第3235017号、第3842330号、および第4441223号に記載されている。
【0038】
被覆されたSiO2フレークは、例えば、国際公開WO93/08237号(湿式化学被覆)およびドイツ特許出願公開DE−A19614637号(CVD法)に開示されている。
【0039】
フィロケイ酸塩をベースとする多層顔料は、例えば、ドイツ特許出願公開DE−A19618569号、同DE−A19638708号、同DE−A19707806号、および同DE−A19803550号に開示されている。以下の構造の多層顔料が、特に適当である。
マイカ+TiO2+SiO2+TiO2
マイカ+TiO2+SiO2+TiO2/Fe23
マイカ+TiO2+SiO2+(Sn、Sb)O2
SiO2フレーク+TiO2+SiO2+TiO2
特に好ましいレーザ光吸収性物質は、アントラセン、ペリレン/リレン、例えば、テリレンテトラカルボキシジイミドおよびクアテリレンテトラカルボキシジイミド、ペンタエリスリトール、水酸化リン酸銅、二硫化モリブデン、酸化アンチモン(III)、オキシ塩化ビスマス、炭素、アンチモン、Sn(Sb)O2、TiO2、ケイ酸塩、SiO2フレーク、金属酸化物で被覆されたマイカおよび/またはSiO2フレーク、導電性顔料、硫化物、リン酸塩、BiOCl、またはそれらの混合物などである。
【0040】
エネルギー吸収剤も、2種以上の成分の混合物でもよい。
【0041】
書込み媒体は、ペーストとしてまたは支持体を有する層として支持系に塗布し付着することができる(図1〜4)。書込み媒体は、基本的に結合剤、着色剤、ポリマー成分、および場合によっては添加剤からなる。
【0042】
有機着色剤と無機着色剤はどちらもこの書込みに適している。適当な着色剤は、当業者に周知の、レーザ照射中に分解せず、光に安定なもの全てである。着色剤も、2種以上の物質の混合物でもよい。書込み媒体中の着色剤の割合は、ポリマー成分分画の、好ましくは0.1〜30重量%、特に0.2〜20重量%、特に非常に好ましくは0.5〜10重量%である。
【0043】
適当な着色剤は、当業者に周知の有機および無機の染料および顔料の全てである。特に適当なのは、アゾの顔料および染料、例えば、モノアゾおよびジアゾ顔料および染料;多環式の顔料および染料、例えば、ペリノン、ペリレン、アントラキノン、フラバントロン、イソインドリノン、ピラントロン、アントラピリミジン、キナクリドン、チオインジゴ、ジオキサジン、インダンスロノン、ジケトピロロ−ピロール、キノフタロン;金属と錯体を形成する顔料および染料、例えば、フタロシアニン、アゾ、アゾメチン、ジオキシムおよびイソインドリノンの錯体;金属顔料、酸化物顔料、水酸化酸化物顔料、酸化物混合相顔料;金属塩顔料、例えば、クロム酸塩顔料、クロム酸塩−モリブデン酸塩の混合相顔料;炭酸塩顔料、硫化物顔料、セレン硫化物顔料、錯塩顔料、ならびにケイ酸塩顔料である。
【0044】
前記着色剤のうち、銅フタロシアニン、ジオキサジン、アントラキノン、モノアゾ顔料、ジアゾ顔料、ジケトピロロピロール、多環式顔料、アントラピリミジン、キナクリドン、キノフタロン、ペリノン、ペリレン、アクリジン、アゾ染料、フタロシアニン、キサンテン、フェナジン、有色の酸化物および水酸化酸化物顔料、酸化物混合相顔料、硫化物顔料およびセレン硫化物顔料、炭酸塩顔料、クロム酸塩顔料、クロム酸塩−モリブデン酸塩の混合相顔料、錯塩顔料、ならびにケイ酸塩顔料が特に好ましい。
【0045】
書込み媒体中のポリマー成分は、この媒体の基本的成分であり、例えば、低融点ポリマー、例えば、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリイミド、ポリアミド、ポリアセタールおよび前記ポリマーのコポリマー、および塩化ビニル、ジカルボン酸、および酢酸ビニルまたはヒドロキシル/アクリル酸メチルのターポリマー、それらの混合物などからなるものとすることができる。このポリマー成分を書込み媒体中に溶解させることができ、および/または微粉体として非溶解形にすることができる。粒径は、好ましくは10nm〜100μm、特に100nm〜50μm、特に非常に好ましくは500nm〜15μmである。
【0046】
様々なポリマー成分または粒子の混合物を使用することも可能であり、粒径および化学組成はどちらも異なっていてもよい。
【0047】
書込み媒体(ここではポリマーマトリクス)による書込みまたはマーキングのための精密な溶解を保証するために、高分散のケイ酸や酸化チタンなど微細な無機の粉体を加えることも場合によっては可能である。
【0048】
この書込み媒体は、ポリマー成分+着色剤+結着剤の総重量に対して、ポリマー成分を、好ましくは20〜90重量%、特に40〜60重量%、特に好ましくは40〜90重量%含む。
【0049】
ポリマー成分/着色剤の比は、好ましくは80:1〜1:1、特に50:1〜2:1、特に非常に好ましくは20:1〜5:1である。
【0050】
ポリマー成分/エネルギー吸収剤の比は、好ましくは70:1〜1:1、特に40:1〜2:1、特に非常に好ましくは20:1〜3:1である。
【0051】
さらなる成分として、書込み媒体は、結合剤を含む。この結合剤によって、書込み層(3)を支持層(1)、または例えばガラスやプラスチックなどの支持体に均一に塗布することが可能になる。
【0052】
当業者に周知の全ての結合剤、特に、セルロース、セルロース誘導体、例えば、硝酸セルロース、酢酸セルロース、加水分解/アセタール化ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリレート、およびエチレン/エチレンアクリレートのコポリマー、ポリビニルブチラール、エポキシ樹脂、ポリエステル、ポリイソブチレン、ポリアミドなども適当である。
【0053】
プラスチックの種類に応じて、当業者に周知の全てのレーザを書込み/マーキングに使用することができる。レーザのパラメータは、個々の用途に依存し、当業者なら容易に決定することができる。
【0054】
レーザによる書込みは、試験片を、パルスレーザ、好ましくはCO2またはNd:YAGまたはNd:YVO4レーザの光路内に導入することによって行われる。さらに、例えばマスク法によるエキシマレーザでの書込みも可能である。しかし、使用されるレーザ光吸収性物質が高い吸収率を示す領域の波長を有する他の従来のタイプのレーザを使用しても、所望の結果を実現することができる。得られるマーキングは、照射時間(またはパルスレーザの場合には、パルス数)、およびレーザの照射パワー(パルスレーザの場合にはパルスパワー密度)、および使用されるプラスチック系または被覆系によって決まる。使用されるレーザのパワーは、個々の用途に依存し、個々の場合に当業者なら容易に決定することができる。
【0055】
一般に使用されるレーザは、157nm〜10.6μmの範囲、好ましくは532nm〜10.6μmの範囲の波長を有する。ここでは、CO2レーザ(10.6μm)、ならびにNd:YAGおよびNd:YVO4レーザ(それぞれ1064nmおよび532nm)、またはパルスUVレーザを例として挙げることができる。エキシマレーザは、以下の波長を有し、すなわちF2エキシマレーザ(157nm)、ArFエキシマレーザ(193nm)、KrClエキシマレーザ(222nm)、KrFエキシマレーザ(248nm)、XeClエキシマレーザ(308nm)、XeFエキシマレーザ(351nm)であり、周波数逓倍化(frequency−multiplied)Nd:YAGレーザは、355nm(周波数3逓倍化)または265nm(周波数4逓倍化)の波長を有する。Nd:YAGおよびYVO4レーザ(それぞれ1064nmおよび532nm)、ならびにCO2レーザの使用が特に好ましい。
【0056】
パルスレーザの使用において、パルス周波数は一般に1〜100kHzの範囲である。本発明による方法で使用することができる対応するレーザは市販されている。
【0057】
1064nmまたは808〜980nmの様々なレーザ波長では、YAGレーザ、YVO4レーザ、またはCO2レーザの使用が好ましい。ラベリングは、cwとパルス動作のどちらにおいても可能である。書込みレーザの適当なパワースペクトルは、2〜300ワットに及び、パルス周波数は、1〜200kHzの範囲である。
【0058】
本発明によるプラスチック書込みは、これまでは印刷、エンボス加工、または彫刻プロセスを使用してプラスチックにマーキングまたは書き込んでいた全てのケース、あるいはこれまでは、褪色のない恒久的な書込み/マーキングができず、または書込み/マーキングが全くできず、またはプラスチック自体にレーザ感応性顔料を使用してしか書込み/マーキングができなかった全てのケースで使用することができる。本発明によるラベリングタイプの利点は、色堅ろう性、恒久性、および柔軟性/個別性であり、すなわち、このラベリングは、マスク、凸版(klischee)、またはスタンプの指定なしに行われる。
【0059】
以下の場合のいずれのタイプおよび形状のプラスチックにマーキングし書き込むことも可能である。例えば、
・包装業界において(バッチ番号、使用期間、メモ)
・セキュリティ分野において(偽造防止(forgery−proof)の符号付けおよび標識付け)
・自動車および航空機業界において(ケーブル、プラグ、スイッチ、コンテナ、機能性部品、チューブ、蓋、ハンドル、レバーなど)
・医療技術において(設備、機器、インプラント)
・農業において(動物への印付け)
・電気工学/電子工学において(ケーブル、プラグ、スイッチ、機能性部品、型式プレート、定格プレート)
・装飾分野において(ロゴ、全ての種類の設備用の型式呼称、コンテナ、玩具、道具、個々の印付け)
本発明はまた、本発明による方法によってカラーでマーキングまたは書き込まれたプラスチックにも関する。
【0060】
以下の実施例は、本発明を説明するためのものであるが、本発明を限定するものではない。
実施例
【0061】
実施例1:エネルギー吸収剤層(2)の製造
酢酸エチル 18.5g
PVB(ポリビニルブチラール、Pioloform(登録商標)、Wacker−Chemie) 1.5g
Sn(Sb)O2(d50値<1.1μm)(Du Pont) 3〜5g
最初に導入しておいた溶媒酢酸エチルにポリビニルブチラールを溶解し、十分に撹拌する。続いてその中にエネルギー吸収剤Sn(Sb)O2を入れて撹拌し、均一なペーストを調製する。エネルギー吸収剤の量は、着色剤のエネルギー吸収に依存し、それに合わせて設定すべきである。
30μmのハンドコーターを使用して、このペーストを厚さ5〜250μm、好ましくは23μmのポリエステルフィルムに塗布し、乾燥させる。
例えば、PE(ポリエチレン)で被覆されたポリプロピレンフィルム(PuetzのWaloten(登録商標)フィルム)を使用して、約140℃でホットラミネーションを行うことができる。
【0062】
実施例2:エネルギー吸収剤層(2)の製造
酢酸エチル 18.5g
PVB(ポリビニルブチラール、Pioloform(登録商標)、Wacker−Chemie) 1.5g
ガスブラック(d50値<17nm)(DegussaのSpecial Black 6) 2.0g
実施例1と同様に処理を行う。使用する吸収剤は、ガスブラックである。
90μmのハンドコーターを使用して、ペーストを厚さ5〜250μmのポリエステルフィルムに塗布し、乾燥させる。ホットラミネーションによって、さらなるポリエステルフィルムまたはポリプロピレンフィルムを(実施例1に記載のように)吸収剤層に付着させることができる。
【0063】
実施例3:エネルギー吸収剤層(2)の製造
Masterblend 50(SICPA−AARBERG AG) 20g
Iriodin(登録商標)Lazerflair825(粒径<20μm)(Merck KGaA) 1g
酢酸エチル/エタノール(1:1) 10g
吸収剤Iriodin(登録商標)Lazerflair825を穏やかな条件下でMasterblend50に導入し、グラビア印刷によって厚さ5〜250μm、好ましくは23μmのポリエステルフィルム上に印刷する。酢酸エチル/エタノールの溶媒混合物を使用して、所望の粘度に設定することができる。塗布量は、0.5〜1g/cm2である。
【0064】
実施例4:エネルギー吸収剤を含む支持層の製造
粒径<1μmのSn(Sb)O2300g(Du Pont)をポリエステルマスターバッチ(10kg)に添加することによって、エネルギー吸収剤をすでに含んでいるポリエステルから支持層を製造する。続いて層厚5〜200μmのフィルムを製造する。完成したフィルムは、層の厚さに応じてエネルギー吸収剤を0.05〜10重量%含む。
【0065】
実施例5:ポリマー含有書込み媒体(3)の調製
酢酸エチル 20g
ニトロセルロース 2g
ポリプロピレン粉末(d50<50μm)(例えばCoathylene PB 0580、Du Pont) 6g
Cuフタロシアニン 0.2g
最初に導入しておいた溶媒酢酸エチルにニトロセルロースを溶解し、十分に撹拌する。続いてその中にポリプロピレン粉末および着色剤の銅フタロシアニンを入れて撹拌し、均一なペーストを調製する。
90μmのハンドコーターを使用して、ペーストを厚さ5〜250μmのポリエステルフィルムに塗布し、乾燥させる。
【0066】
実施例6:ポリマー含有書込み媒体(3)の調製
酢酸エチル 20g
ニトロセルロース 2g
ポリプロピレン粉末(d50<50μm)(例えばCoathylene PB 0580、Du Pont) 6g
酸化チタン 0.2g
実施例5と同様に処理を行う。使用された着色剤は、酸化チタンである。
90μmのハンドコーターを使用して、ペーストを厚さ5〜250μmのポリエステルフィルムに塗布し、乾燥させる。
【0067】
実施例7:ポリマー含有書込み媒体(3)の調製
酢酸ブチル 40g
ポリプロピレン粉末(d50<50μm) 12g
ニトロセルロース 4g
顔料等級のカーボンブラック(FW200、d50 13μm、Degussa) 0.6g
実施例5と同様に処理を行う。使用する着色剤は、顔料等級のカーボンブラックである。
厚さ5〜250μmのポリエステルフィルムにペーストを層厚225μmで塗布し、乾燥させる。
【0068】
実施例8:ポリマー含有書込み媒体(3)の調製
MEK(メチルエチルケトン) 40g
トルエン 22g
PVC(Tg:40〜89℃) 8.5g
エチレン・酢酸ビニルターポリマー 2.5g
着色剤 20g
高分散のケイ酸 6g
実施例5と同様に処理を行う。使用する着色剤は、例えば、酸化チタン(Kronos 2220、2222、2063S、2090、2310、Kronos International,Inc.)、またはIrgazin DPP Red(Ciba Geigy)、またはSandoplast Blue(Clariant)である。
【0069】
実施例9:ポリマー含有書込み媒体(3)の調製
MEK(メチルエチルケトン) 30g
酢酸ブチル 30g
シクロヘキサノン 25g
PVC/PVAコポリマー(85/15) 10g
PVB(ポリビニルブチラール) 5g
着色剤 10g
実施例5と同様に処理を行う。使用する着色剤は、例えば顔料等級のカーボンブラック(DegussaのFW−2、d50 13μm)である。
【0070】
実施例10:多層書込みバンドの製造
支持フィルム−エネルギー吸収剤層(実施例1〜4)を支持フィルム−書込み媒体(実施例5〜9)と一緒に置き、ホットラミネート装置(Erichson model 647)を用いて互いに貼り合わせる。この場合は加熱可能なロールを140〜175℃の温度に設定する。ホットラミネーション後、この2つのフィルムは互いに強く結合する。実施例1と同様にPEを被覆したポリプロピレンフィルム(PuetzのWaloten(登録商標)フィルム)を使用する場合は、ラミネーションを約140℃で行うことができる。
【0071】
実施例11:多層書込みバンドの製造
書込み媒体(実施例5〜9)を支持フィルム−エネルギー吸収剤層(実施例1〜4)に層厚225μmで塗布し、乾燥させる。
【0072】
実施例12:多層書込みバンドの製造
図2に示すようにポリマー含有書込み媒体をPETフィルム(厚さ:5、12、15、19、23、25、36、50μm)の書込み側に層厚0.5〜1.5μmで付着し、エネルギー吸収剤層をレーザ側に層厚0.7〜1.5μmで印刷する。
【0073】
実施例13:マーキング実験および結果
吸収剤層および書込み媒体を有する支持体−層系(図1〜4)を、以下のレーザタイプを用いた、プラスチックへの恒久的なマーキングおよび書込みに使用する。
a)Nd:YAG(cwモード)
12ワットのレーザ Trumpf laser
Nd:YAG(1064nmおよび532nm)
レーザ光量:10〜90%、cwモード
スピード:100〜1500mm/s
b)Nd:YVO4レーザ(cwモード、パルス状)
16ワットのレーザ Rofin Sinar
Nd:YVO4(1064nm)
レーザ光量:20〜90%、cwモード、パルス式
パルス周波数:10〜100kHz
スピード:400〜2000mm/s
c)Nd:YAGレーザ(パルス式)
60ワットのレーザ Baasel
Nd:YAG(1064nm)
ランプ電流 16A、パルスモード
パルス周波数:20,000Hz
スピード:200mm/s
ワブラー周波数:16Hz
パルス幅:0.05ms
cwモードでのマーキングに比べて、パルスモードでの有色書込みおよびマーキングは、
−エッジ鮮明度がより大きい
−マーキングされた箇所の表面がより滑らかである
ことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本願発明に使用される層系を示す図である。
【図2】図1の層構造の一変形を示す図である。
【図3】図1および図2とは異なる構造の層系を示す図である。
【図4】圧縮された層構造を示す図である。
【符号の説明】
【0075】
(1’) プラスチック支持層
(1”) プラスチック支持層
(2) レーザー感応性エネルギー吸収層
(3) ポリマー含有書き込み媒体
(3’) 追加の層
(3”) 着色層
(4) エネルギー吸収剤ドープ済み支持層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
恒久的で耐摩耗性の、プラスチックの有色書込みまたはマーキングの方法であって、互いに重なり合い支持フィルムで分離されている2層からなる層系を使用し、第1層が、エネルギー吸収剤を本来的にまたは層として含むプラスチックからなり、前記支持フィルムに接触している第2層が、書込み媒体として働き、着色剤およびポリマー成分を含み、このポリマー成分が、書込み/マーキング中にレーザの作用下で前記プラスチック表面に溶着されることを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記第1層が、1層または複数の支持層から構成され、前記エネルギー吸収剤が、これらの支持層上に、またはその間に配置されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記エネルギー吸収剤が、炭素、金属酸化物、ケイ酸塩、SiO2フレーク、金属酸化物で被覆されたマイカおよび/またはSiO2フレーク、導電性顔料、硫化物、リン酸塩、BiOCl、アントラセン、ペリレン、リレン、ペンタエリスリトール、またはそれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記プラスチック層が、エネルギー吸収剤を0.01〜20重量%含むことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記書込み媒体が、基本的には結合剤、着色剤、ポリマー成分、および場合によっては添加剤からなることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記結合剤が、セルロース、セルロース誘導体、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、エポキシ樹脂、ポリエステル、ポリエーテル、ポリイソブチレン、ポリアミド、ポリビニルブチラール、およびそれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記書込み媒体が、溶解した状態および/または微粒子の形の前記ポリマー成分を30〜90重量%含むことを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
微粒子の形の前記ポリマー成分が、10nm〜100μmの粒径を有することを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記ポリマー成分が、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリイミド、ポリアミド、ポリアセタール、および前記ポリマーのコポリマー、ならびに塩化ビニル、ジカルボン酸、および酢酸ビニルもしくはヒドロキシル/アクリル酸メチルのターポリマー、またはそれらの混合物からなることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記書込み媒体が、有機および/または無機の着色剤を含むことを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記書込み媒体が、着色剤を前記ポリマー成分分画の0.1〜30重量%含むことを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
請求項1に記載の方法によってレーザマーキングまたはレーザ書込みされたプラスチック。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2007−510547(P2007−510547A)
【公表日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−538681(P2006−538681)
【出願日】平成16年10月15日(2004.10.15)
【国際出願番号】PCT/EP2004/011583
【国際公開番号】WO2005/047010
【国際公開日】平成17年5月26日(2005.5.26)
【出願人】(591032596)メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフトング (1,043)
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D−64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
【Fターム(参考)】