説明

有隔膜電解槽の電解槽構造

【課題】筺体の下方に導入した被電解水を電極板ユニットの下方から各電解室の各チャンネル内に流入し、各チャンネルを上方へ流動する間に有隔膜電解する形式の有隔膜電解槽において、被電解水が各チャンネルに対して偏って流入するのを防止して各電極板を有効に活用し、電極板が有する電極端子での過電解を防止して電極板の早期の腐食の進行を防止することのできる電解槽の構造を提供する。
【解決手段】電極板ユニット10の下方の部位に筺体20内に流入する被電解水の液溜まりDを形成して、被電解水を液溜まりDに滞留させた状態で各チャンネルE1〜E6に流入するようし、また、電極板10d,10eが有する電極端子10d1,10e1を液溜まりDに位置させようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解水生成装置を構成する有隔膜電解槽に関し、特に、当該有隔膜電解槽の電解槽構造に関する。
【背景技術】
【0002】
電解水生成装置を構成する有隔膜電解槽の一形成として、下方の部位に被電解水の導入口部を有するとともに上方の部位に電解生成水の導出口部を有する所定長さの筺体内に、一対の方形の格子枠状のスペーサにて挟持された状態の隔膜の各側面側に前記各スペーサにて規定される間隔を保持して陽極側の電極板と陰極側の電極板をそれぞれ配置してなる電極板ユニットを収容してなり、前記電極板ユニットを構成する前記各スペーサの各縦枠部にて互いに並列する所定幅のチャンネルに区画された各電解室を形成する有隔膜電解槽がある(特許文献1,2を参照)。
【0003】
当該形式の有隔膜電解槽においては、被電解水は筺体内の下方に導入されて、電極板ユニットの下方から各電解室の各チャンネル内に流入し、各チャンネルを上方へ流動する間に、有隔膜電解を受けて、各電解室にて電解生成酸性水および電解生成アルカリ性水を生成するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−158084号公報
【特許文献2】特開2004−18836号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、当該形式の有隔膜電解槽においては、被電解水は電極板ユニットの下方から各電解室の各チャンネル内に流入し、各チャンネルを上方へ流動する間に有隔膜電解を受けるため、各電極板の全体を有効に活用して被電解水を効率よく有隔膜電解するには、被電解水を各電解室の各チャンネルへ均等に流入する必要がある。しかしながら、当該形式の有隔膜電解槽においては、被電解水は被電解水の流入口に近い方のチャンネルにより多くの流入する、所謂、近い方のチャンネルに偏って流入する傾向が大きく、電極板の全体を有効に活用することが難しい状態にある。
【0006】
また、電極板ユニットを複数重合して、複数対の(陽極側電解室および陰極側電解室)を構成してなる有隔膜電解槽においては、採用する電極板には、電極板本体の下端部に棒状の電極端子を設けて、同電極端子を電源に接続し易くする必要があるが、この場合には、電極端子と隔膜間の距離が狭くなって、当該電極端子では過電解が発生する。このため、電極板を早期の腐食が進行することとなる。
【0007】
従って、本発明の目的は、当該形式の有隔膜電解槽において、上記した被電解水の各チャンネルに対して偏って流入するのを防止して電極板の有効に活用し、さらには、複数の電極板が有する電極端子での過電解を防止して、電極板の早期の腐食の進行を防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、有隔膜電解槽の電解槽構造に関する。本発明が適用対象とする有隔膜電解槽は、下方の部位に被電解水の導入口部を有するとともに上方の部位に電解生成水の導出口部を有する所定長さの筺体内に、一対の方形の格子枠状のスペーサにて挟持された状態の隔膜の各側面側に前記各スペーサにて規定される間隔を保持して陽極側の電極板と陰極側の電極板をそれぞれ配置してなる複数の電極板ユニットを互いに重合した状態で収容してなり、前記電極板ユニットを構成する前記各スペーサの各縦枠部にて互いに並列する所定幅のチャンネルに区画された各電解室を形成する有隔膜電解槽である。
【0009】
しかして、本発明に係る有隔膜電解槽においては、前記電極板ユニットの下方に部位に前記筺体内に流入する被電解水の液溜まりが形成されていて、被電解水は前記液溜まりを通して前記各電解室の各チャンネルに流入するように構成されていることを特徴とするものである。
【0010】
本発明に係る有隔膜電解槽においては、前記電極板ユニットを構成する前記各スペーサと前記隔膜とを互いに一体的に形成して、前記各電解室を、前記各スペーサの各縦枠部にて互いに並列する所定幅のチャンネルに区画される構成とすることができる。
【0011】
また、本発明に係る有隔膜電解槽においては、前記液溜まりを、前記電極板ユニットの下方の部位の中央部を所定幅に切り欠いた状態の空間部にて形成されるように構成することができる。
【0012】
また、本発明に係る有隔膜電解槽においては、前記各電極板ユニットの下方の空間部の両側にて下方に延びる各チャンネルの前記液溜まりに開口する開口幅は、前記空間に位置する各チャンネルの開口幅に比較して狭く形成するようにすることができる。
【0013】
また、本発明に係る有隔膜電解槽においては、前記電極板ユニットが形成する各電解室の両側のチャンネルを除く中央部側の各チャンネルの下端部に、前記液溜まりに滞留する被電解水を前記各チャンネルに流入させる流入口部を備える構成とすることができる。この場合、各電解室の各チャンネルに被電解水を流入させる前記流入口は、対応する各チャンネルに複数均等に配置する構成とすることができ、また、各電解室の各流入口の出口側には、前記隔膜側に上方傾斜する段差部を設ける構成とすることができる。
【0014】
本発明に係る上記した各有隔膜電解槽においては、前記電極板ユニットを構成する各電極板は下端部に下方に延びる棒状の電極端子を備える構成とし、同電解端子を、前記液溜まりを通して筺体の外に臨むようにすることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る有隔膜電解槽においては、各電解室を構成する電極板ユニットの下方に部位に、筺体内に流入する被電解水の液溜まりを形成し、被電解水を、当該液溜まりを通して各電解室の各チャンネルに流入するように構成している。このため、当該有隔膜電解槽においては、被電解水を各電解室の各チャンネルに偏ることなく略均等に流入させることができる。これにより、各電極板を有効に活用することができる。
【0016】
また、本発明に係る有隔膜電解槽においては、各電極板が有する電極端子を当該液溜まりに位置させて、当該液溜まりを電極端子の逃がし部として利用することができて、電極端子における過電解の発生を防止することができ、電極板の早期の腐食の進行を防止することができる。
【0017】
本発明に係る有隔膜電解槽において、電極板ユニットを構成する各スペーサと隔膜と互いに一体的に形成すれば、各スペーサと隔膜の位置関係の組立バラツキを解消することができて、電極板ユニットの組立性を向上させることができる。また、各スペーサと隔膜が密着していることから、経年変化により、各チャンネルの位置ずれが皆無となって、被電解水の均一な流路(チャンネル)を長期にわたって確保することができる。
【0018】
また、本発明に係る有隔膜電解槽において、液溜まりを、電極板ユニットの下方の部位の中央部を所定幅に切り欠いた状態の空間部にて形成して、空間部の両側をチャンネルに構成すれば、電極板を両チャンネルまで拡大して電極面積を拡大することができて、電極板を有効に活用することができる。この場合には、電極板ユニットの下方の空間部の両側にて下方に延びる各チャンネルの液溜まりに開口する開口幅は、空間部に位置する各チャンネルの開口幅に比較して狭く形成して、両側のチャンネルの開口部での流速を高めて、スケールの付着を減少させることができる。
【0019】
また、本発明に係る有隔膜電解槽において、電極板ユニットが形成する各電解室の両側のチャンネルを除く中央部側の各チャンネルの下端部に、液溜まりに滞留する被電解水を各チャンネルに流入させる流入口部を、各チャンネルに複数均等に配置すれば、被電解水を各チャンネルに一層均一に流入させることができる。この場合、各チャンネルの各流入口の出口側に隔膜側に上方傾斜する段差部を設ければ、被電解水を各チャンネルに一層均一に流入させることができるとともに、各流入口部の出口側での被電解水の滞留を防止し得て、電解時に生成さるスケール成分の蓄積を防止し、また、電極板の耐久性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る有隔膜電解槽を装備した電解水生成装置の装置本体を後側からみた背面図である。
【図2】本発明に係る有隔膜電解槽の正面図(a)、および、同図の矢印2−2線に沿って切断した縦断側面図(b)である。
【図3】本発明に係る有隔膜電解槽を構成する複数の電極板ユニットを分解した状態の斜視図である。
【図4】本発明に係る電極板ユニットを複数重合した状態の正面側からみた斜視図(a)、および、当該電極板ユニットの前側に位置する電極板を除いた状態の下方の一部を拡大して示す斜視図(b)である。
【図5】本発明に係る電極板ユニットを構成するスペーサの正面図(a)、同図の矢印5−5線で縦断した縦断側面図(b)、同スペーサの上下の中間部分の一部を拡大して示す斜視図(c)、および、同スペーサを構成する縦枠部の横断面形状を示す拡大図(d)である。
【図6】本発明に係る電極板ユニットの背面図(a)、および、当該電極板ユニットの下方の一部を拡大して示す背面図(b)である。
【図7】本発明に係る電極板ユニットの下方の一部を拡大して示す背面図であって、被電解水の流れを付加した図(a)、および、被電解水のチャンネルに対する流入口および出口側を拡大して示した図(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、有隔膜電解槽の電解槽構造に関する。図1には、本発明に係る電解槽構造を採用した有隔膜電解槽を装備する電解水生成装置を示している。当該電解水生成装置は、装置本体AをケースB内に収容してなるもので、図1は、ケースBから取出した状態の装置本体Aの背面側を示している。
【0022】
当該電解水生成装置は、本発明に係る電解槽構造に構成された有隔膜電解槽Cを主体とするものである。有隔膜電解槽Cは、図2に示すように、複数の電極板ユニット10を重合した状態で筺体20内に収容して構成されている。各電極板ユニット10は、互いに同一の構成であって、各電極板ユニット10の内部には、一対の電解室(陽極側電解室および陰極側電解室)が形成されている。
【0023】
当該電解水生成装置Cにおいては、有隔膜電解槽10を収容する筺体20の下方の部位に設けられた被電解水の導入口部には、被電解水の供給管路31(31a,31b)が接続されており、また、筺体20の上方の部位に設けられた電解生成水の導出口部には、各電解生成水を流出させる各流出管路32a,32bが接続されている。
【0024】
被電解水は、高濃度の塩水を原水にて所定濃度に希釈してなる希薄塩水であって、原水が流入する供給管路33の途中に、図示しない塩水タンクから塩水供給管路34を通して一定量の高濃度塩水を継続して供給することによって、供給管路33内にて調製されるようになっている。調製された被電解水は、供給管路31の分岐管路部31a,31bを通して、各電極板ユニット10内に形成されている陽極側電解室および陰極側電解室にそれぞれ供給される。
【0025】
有隔膜電解槽Cにおいては、陽極側電解室および陰極側電解室に供給された各被電解水は、電極板ユニット10を構成する陽極側の電極板、陰極側の電極板に沿って上方へ流動し、この間に有隔膜電解されて、陽極側電解室では電解生成酸性水が生成され、かつ、陰極側電解室では電解生成アルカリ性水が生成される。陽極側電解室にて生成された電解生成酸性水、および、陰極側電解室にて生成された電解生成アルカリ性水は、各導出口部を通して各流出管路32a,32bに流出して、予め指定されている場所に供給される。
【0026】
しかして、本発明に係る有隔膜電解槽Cを構成する電極板ユニット10は、図3および図4に示すように、一対の方形枠状のスペーサ10a,10bにて挟持された状態の隔膜10cの各側面側に、各スペーサ10a,10bにて規定される間隔を保持して陽極側の電極板10dと陰極側の電極板10eをそれぞれ配置して構成されている。
但し、図3に例示している電極板ユニット10は、図4(a)に示すように、互いに重合された状態で筺体20に収容されて使用される態様を採ることから、互いに隣り合う同士の電極板ユニット10間では、同一の電極板10d,10eを互いに共用する構成になっている。なお、図4(b)は、同図(a)に示す電極板ユニット10の、電極板10dを除いた下方の一部を拡大して示している。
【0027】
電極板ユニット10を構成するスペーサ10a,10bは、図5に示すように、隔膜10cを左右から挟持した状態で、隔膜10cと一体化されていて、電極ユニット10内の隔膜10cと電極板10d、および、隔膜10cと電極板10e間に、陽極側電解室および陰極側電解室を形成している。このため、当該有隔膜電解槽10においては、複数の電極板ユニット10が互いに重合して収容されていることから、上記した一対の電解室(陽極側電解室および陰極側電解室)を複数対備えていて、被電解水は、電解運転時には、複数対の各電解室に同時に供給されて、有隔膜電解を受けるようになっている。
【0028】
当該電極板ユニット10を構成するスペーサ10a,10bは、図5に示すように、同一構成の格子状枠体であって、隔膜10cを挟持した状態では、互いに左右対称を呈している。格子状枠体である各スペーサ10a,10bは、長方形状の外枠部11,12と、外枠部11,12内にて上下方向に、所定間隔を保持して並列して延びる複数本の縦枠部13にて構成されている。スペーサ10a,10bは、本実施形態では、5本の縦枠部13を有していて、左右の両端の2本の縦枠部13a,13bは、中央よりの3本の縦枠部13c〜13eに比較して所定長さ長く形成されている。
【0029】
両端の各縦枠部13a,13bの下端部は、外枠部11,12の下端枠部位11a,12aにはわずかにとどかない長さに設定されていて、下端枠部位11a,12a間にわずかな幅寸法の隙間を形成している。各スペーサ10a,10bの係る形状は、後述する空間部を形成すべく機能する。また、当該隙間は、図4(b)に示す、被電解水の流入口を形成する。
【0030】
なお、図5(c),(d)には、各スペーサ10a,10bを構成する縦枠部13a〜13eの横断面の形状を示している。各スペーサ10a,10bを構成する縦枠部13a〜13eの断面形状は、対向する各電極板10d,10eに対して突出する台形状に形成されていて、各電極板10d,10eに対する受承面を小さくして、電極面積を広く確保するようにしている。これにより、電解運転時の電解効率を向上させる。
【0031】
また、両スペーサ10a,10bが挟持する隔膜10c、および、各スペーサ10a,10bの側面に重合される各電極板10d,10eは、その下端部が、当該空間部の形状を切欠いた形状に形成されている。従って、このような各スペーサ10a,10b、隔膜10c、および、各電極板10d,10eを採用して構成される電極板ユニット10においては、その下方の部位に所定の大きさの空間部が形成され、当該空間部は図4(b)に示す液溜まりDを形成する。
【0032】
電極板ユニット10は、図6(a)に示すように構成され、また、当該電極板ユニット10の下端部は、同図(b)に示すように構成される。図6は、電極板ユニット10を構成する電極板10dを除いてスペーサ10b側から見た電極板ユニット10の正面図である。従って、図6(a)と図5(a)とは後と裏表の関係にある。
【0033】
当該電極板ユニット10は、スペーサ10a,10bの下端の部位に、導入された被電解水が一旦滞留する液溜まりDが形成されている。電極板10eの下端部に設けてある電極端子10e1は、液溜まりDを通って外枠部12の外に突出している。なお、電極板10dに設けてある電極端子10d1も同様に、液溜まりDを通って外枠部12の外に突出している。
【0034】
両側の各縦枠部13a,13bの下端部が形成する隙間は、各縦枠部13a,13bと外枠部11が形成するチャンネルE1、E2に対する被電解水の流入口14a,14bとなっている。また、中央部に位置する各縦枠部13c〜13eの下端部には、各縦枠部13a〜13eが形成するチャンネルE3〜E6に被電解水を流入させる複数の流入口15a〜15dが形成されている。各流入口15a〜15dは、各チャンネルE3〜E6に対して、3個ずつの各流入口15a〜15dが均等に配置されている。
【0035】
図7(a)は、図6(b)に導入された被電解水の電解室への流れを破線で記入したもので、被電解水は、各チャンネルE1,E2に対しては、各流入口14a,14bから流入し、かつ、各チャンネルE3〜E6に対しては、3個並列する各流出口15a〜15dから流入することになる。各流出口15a〜15dの出口側には、図7(b)に示すように、隔壁10c側に上方傾斜して延びる段差部16が形成されている。
【0036】
なお、スペーサ10aおよび電極板10dも、スペーサ10bおよび電極板10eと同様に形成されていて、図4(b)に示すように、スペーサ10a,10bの下方には液溜まりDが形成さている。当該液溜まりDは、スペーサ10b,10aの下方に形成されている液溜まりDと同じものである。
【0037】
本発明に係る有隔膜電解槽Cを装備する電解水生成装置においては、その電解運転時、筺体20内に導入された被電解水は、一旦液溜まりDに滞留した後、各破線に示すように、各流入口14a,14bおよび各流入口15a〜15eを通して、陽極側電解室および陰極側電解室の各チャンネルE1〜E6に流入し、各電極板10d,10eに沿って上方へ流動する。被電解水は、この間、有隔膜電解されて、陽極側電解室では電解生成酸性水が生成されるとともに、陰極側電解室では電解生成アルカリ性水が生成される。陽極側電解室にて生成された電解生成酸性水は、流出管路32aを通して指定の場所へ流出し、陰極側電解室にて生成された電解生成アルカリ性水は、流出管路32aを通して指定の場所へ流出する。
【0038】
このように、本発明に係る有隔膜電解槽においては、各電解室を構成する各電極板ユニット10における下方の部位に、筺体20内に導入する被電解水の液溜まりDを形成して、液溜まりDに滞留する被電解水を、各電解室の各チャンネルE1〜E6に流入するように構成している。このため、当該有隔膜電解槽Cにおいては、被電解水を各電解室の各チャンネルE1〜E6内に偏ることなく略均等に流入させることができる。
【0039】
また、本発明に係る有隔膜電解槽Cにおいては、電極板10d,10eが有する電極端子10d1,10e1を液溜まりDに位置させて、液溜まりDを電極端子10d1,10e1の逃がし部として利用することができて、電極端子10d1,10e1における過電解の発生を防止することができ、電極板10d,10eの早期の腐食を防止することができる。
【0040】
また、本発明に係る有隔膜電解槽Cにおいては、電極板ユニット10を構成する各スペーサ10a,10bと隔膜10cとを互いに一体的に形成しているので、各スペーサ10a,10bと隔膜10cの位置関係の組立バラツキを解消することができて、電極板ユニット10の組立性を向上させることができる。また、各スペーサ10a,10bと隔膜10cが密着していることから、経年変化により、各チャンネルE1〜E6の位置ずれが皆無に近く、被電解水の均一な流路(チャンネル)を長期にわたって確保することができるという利点がある。
【0041】
また、本発明に係る有隔膜電解槽Cにおいては、液溜まりDを、各電極板ユニット10の下方の部位の中央部を所定幅に切り欠いた状態の空間部にて形成して、空間部の両側をチャンネルE1,E2に構成しているため、電極板10d,10eの両端側を各チャンネルE1,E2まで拡大して電極面積を拡大することができて、電極板10d,10eを有効に活用することができる。この場合には、各電極板ユニット10の下方の空間部の両側にて下方に延びる各チャンネルE1,E2の液溜まりDに開口する開口部(流入口14a,14b)の幅は、空間部に位置する各チャンネルの開口幅に比較して狭く形成して、両側のチャンネルE1,E2の開口部での流速を高めて、スケールの付着を減少させることができる。
【0042】
また、本発明に係る有隔膜電解槽Cにおいては、各電極板ユニット10が形成する各電解室の両側のチャンネルE1,E2を除く中央部側のチャンネルE3〜E6の下端部に、液溜まりDに滞留する被電解水を各チャンネルE1〜E6に流入させる流入口部15a〜15dを、各チャンネルE3〜E6に3個均等に配置したので、被電解水を各チャンネルE1〜E6に一層均一に流入させることができる。この場合、電解室の各流入口15a〜15dの出口側に段差部16を設けてあるため、被電解水を各チャンネルE1〜E6にさらに均一に流入させることができるとともに、各流入口15a〜15dの出口側での被電解水の滞留を防止し得て、電解時に生成さるスケール成分の蓄積を防止し、また、電極板10d,10eの耐久性を向上させることができる。
【符号の説明】
【0043】
A…装置本体、B…ケース、C…有隔膜電解槽、D…液溜まり、E1〜E6…チャンネル、上方の部位、E…隙間、10…電極板ユニット、10a,10b…スペーサ、10c…隔膜、10d,10e…電極板、11,12…外枠部、11a,12a…下枠部位、11b,12b…上枠部位、11c,12c…左枠部位、11d,12d…右枠部位、11e,12e…嵌合凸部、11f,12f…嵌合凹部、13(13a〜13e)…縦枠部、14a,14b…流入口、15a〜15d…流入口、16…段差部、20…筺体、31(31a,31b)…被電解水の供給管路、32a,32b…電解生成水の流出管路、33…原水供給管路、34…塩水供給管路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下方の部位に被電解水の導入口部を有するとともに上方の部位に電解生成水の導出口部を有する所定長さの筺体内に、一対の方形の格子枠状のスペーサにて挟持された状態の隔膜の各側面側に前記各スペーサにて規定される間隔を保持して陽極側の電極板と陰極側の電極板をそれぞれ配置してなる複数の電極板ユニットを互いに重合した状態で収容してなり、前記電極板ユニットを構成する前記スペーサの各縦枠部にて互いに並列する所定幅のチャンネルに区画された各電解室を形成する有隔膜電解槽であり、当該有隔膜電解槽においては、前記電極板ユニットの下方に部位に前記筺体内に流入する被電解水の液溜まりが形成されていて、被電解水は前記液溜まりを通して前記電解室の各チャンネルに流入するように構成されていることを特徴とする有隔膜電解槽の電解槽構造。
【請求項2】
請求項1に記載の有隔膜電解槽であり、当該有隔膜電解槽においては、前記各電解室を形成する電極板ユニットを構成する前記各スペーサと前記隔膜とは互いに一体的に形成されていて、前記電解室は前記各スペーサの各縦枠部にて互いに並列する所定幅のチャンネルに区画していることを特徴とする有隔膜電解槽の電解槽構造。
【請求項3】
請求項1または2に記載の有隔膜電解槽の電解槽構造であり、当該有隔膜電解槽においては、前記液溜まりは前記電極板ユニットの下方の部位の中央部を所定幅に切り欠いた状態の空間部にて形成されていていることを特徴とする有隔膜電解槽の電解槽構造。
【請求項4】
請求項3に記載の有隔膜電解槽の電解槽構造であり、当該有隔膜電解槽においては、前記電極板ユニットの下方の空間部の両側にて下方に延びる各チャンネルの前記液溜まりに開口する開口幅は、前記空間に位置する各チャンネルの開口幅に比較して狭く形成されていることを特徴とする有隔膜電解槽の電解槽構造。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の有隔膜電解槽の電解槽構造であり、当該有隔膜電解槽においては、前記電極板ユニットが形成する各電解室の両側のチャンネルを除く中央部側のチャンネルの下端部に、前記液溜まりに滞留する被電解水を前記各チャンネルに流入させる流入口を備えていることを特徴とする有隔膜電解槽の電解槽構造。
【請求項6】
請求項5に記載の有隔膜電解槽の電解槽構造であり、当該有隔膜電解槽においては、前記電極板ユニットが形成する各電解室の各チャンネルに被電解水を流入させる前記流入口は、対応する各チャンネルに複数均等に配置されていることを特徴とする有隔膜電解槽の電解槽構造。
【請求項7】
請求項6に記載の有隔膜電解槽の電解槽構造であり、当該有隔膜電解槽においては、前記電極板ユニットが形成する各電解室の各チャンネルに被電解水を流入させる前記流入口の出口側が前記隔膜側に上方傾斜して延びる段差部に形成されていることを特徴とする有隔膜電解槽の電解槽構造。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の有隔膜電解槽の電解槽構造であり、当該有隔膜電解槽においては、前記電極板ユニットを構成する各電極板は下端部に下方に延びる棒状の電極端子を備え、同電解端子は前記液溜まりを通して筺体の外に臨んでいることを特徴とする有隔膜電解槽の電解槽構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−168871(P2011−168871A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−36536(P2010−36536)
【出願日】平成22年2月22日(2010.2.22)
【出願人】(000194893)ホシザキ電機株式会社 (989)
【Fターム(参考)】