説明

望遠鏡の鏡筒内換気具

【課題】 本発明は、望遠鏡の接眼部に装着することで、密閉された望遠鏡の鏡筒内の空気と外気の入れ替えを効率良く行い、鏡筒内外の温度差により発生する望遠鏡の「見え味」に対する障害を短時間で取り除き、鏡筒内の副鏡やバッフルを傷つけることなく、様々なタイプ、サイズの違う鏡筒に簡単に取り付けられる望遠鏡の鏡筒内換気具を提供する。
【解決手段】 (イ)パイプ(1)の一端に給排気装置取付部(2)と固定具(3)を設ける。
(ロ)ストッパー(4)に固定具(5)を設ける。
(ハ)パイプ支持具(6)に排気通路(8)と給気通路(7)と固定具(10)を設ける。
(ニ)前記パイプ(1)に、パイプ()の軸方向を自在に可動でき、任意の場所で固定できるように前記ストッパー(4)と前記パイプ支持具(6)を設ける。
以上を特徴とする望遠鏡の鏡筒内換気具。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、望遠鏡の接眼部に装着することで、密閉された望遠鏡の鏡筒内の空気と外気の入れ替えを効率良く行い、鏡筒内外の温度差により発生する望遠鏡の「見え味」に対する障害を短時間で取り除き、鏡筒内の副鏡やバッフルを傷つけることなく、様々なタイプやサイズの違う鏡筒に簡単に取り付けられる鏡筒内換気具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、シュミットカセグレンやマクストフカセグレンなど密閉されたタイプの望遠鏡は、暖かい室内などの保管場所から、使用場所である気温の低い夜間の屋外に出して使用する際、外気温と鏡筒内の温度差により主鏡の歪みが発生したり、鏡筒内で空気の対流による筒内気流が発生し、望遠鏡の「見え味」を大きく悪化させる原因となっている。
これを解決するには以下3つの方法が有った。
一つ目は、外気温のもとで鏡筒を放置し、鏡筒内の空気及び主鏡等の部品温度が外気と同じになるまで長時間待つ。
二つ目は、鏡筒本体に空気の入口と出口として2ヶ所に穴を空け、何れか一方に給排気装置を取付け、鏡筒内と外気の入れ替えをする。
三つ目は、市販の望遠鏡用冷却ファンなどの給排気装置を、鏡筒で唯一の開口部である接眼部に装着し、強制的に鏡筒内の空気を吸い出す、または外気を鏡筒内に押し込んでいる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
そのために、次のような問題点が有った。
外気温のもとで鏡筒を放置する場合、望遠鏡本来の性能を発揮するまでに長時間を要してしまう。
鏡筒本体に空気の入口と出口として2ヶ所に穴を空け、何れか一方に給排気装置を取付けると、コストアップとなるため一部の鏡筒にしか採用されていない。
市販の望遠鏡用冷却ファンなどの給排気装置を、鏡筒で唯一の開口部である接眼部に装着し、強制的に鏡筒内の空気を吸い出す、または外気を鏡筒内に押し込んでいる場合、鏡筒で唯一の開口部である接眼部が、空気の入口または出口の一方の機能しか果たさないために、鏡筒内外の空気がスムーズに出入りしない。従って例えば開口部から鏡筒内の空気を吸い出そうとすると、外気は鏡筒への入口が無く、鏡筒内に入るには部品同志の僅かな隙間から入るしかなく、空気の入れ換え効率が非常に悪く、結果的に空気の入れ換えに長時間を要している。
本発明は、以上の問題点を解決するためになされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
(イ)パイプ(1)の一端に差込みスリーブや、ねじ部を持つなどした給排気装置取付部(2)を設け、ネジや締め付け方式などによる固定具(3)を設ける。
(ロ)パイプ(1)のもう一方の先端にリング状の保護具(13)を設ける。
(ハ)パイプ(1)の外周面に目盛り(14)を設ける。
(ニ)ストッパー(4)に、ネジや締め付け方式などによる固定具(5)を設ける。
(ホ)パイプ支持具(6)に、パイプ挿入穴を兼ねた排気通路(8)を軸方向に貫通させ設け、この外側に給気通路(7)を軸方向に貫通させ一個以上設け、そしてネジや締め付け方式などによる固定具(10)を設ける。
(ヘ)パイプ支持具(6)の外周に接眼ストッパー(9)を設ける。
(ト)パイプ支持具(6)の給気通路(7)の入口側にフィルター(11)を密着させ、さらにその上からはめ込み式やねじ込み式などでパイプ支持具(6)に固定でき、かご状で中央にパイプ挿入穴(24)を設けたフィルター押さえ(12)を装着し、フィルター(11)をパイプ支持具(6)に固定する。
(チ)前記パイプ(1)に、パイプ(1)の軸方向を自在に可動できるように前記ストッパー(4)を設ける。
(リ)前記パイプ(1)に、パイプ(1)の軸方向を自在に可動できるように前記パイプ支持具(6)を設ける。
以上を特徴とする望遠鏡の鏡筒内換気具である。
【発明の効果】
【0005】
本発明を使用することによって、シュミットカセグレンやマクストフカセグレン、マクストフニュートンなど、密閉されたタイプの鏡筒内の空気と外気を効率よく換気することができるため、望遠鏡使用の際、両者の温度差を短時間で無くして筒内気流を解消し、望遠鏡本来の性能を短時間で発揮する状態にできる。また日常のメンテナンスにおいても、湿気の溜まった望遠鏡鏡筒内に乾燥した空気を効率良く封入できるので、鏡筒内の乾燥にも効果的である。また副鏡やバッフルなど鏡筒内部の部品を傷付けること無く、しかも素早く本発明を鏡筒に取り付けることが出来る。またパイプ挿入量を自由に設定出来るので様々なタイプやサイズの違う鏡筒に使用出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
(イ)パイプ(1)の一端に円筒状の差込みスリーブや、そのスリーブの内周や外周にねじ部を持つなどした給排気装置取付部(2)を設け、そこに取り付ける給排気装置が外れないようにするための、ネジや締め付け方式などによる固定具(3)を設ける。
(ロ)パイプ(1)が鏡筒(15)内に挿入された際、副鏡(16)の破損を防ぐため、パイプ(1)のもう一方の先端に、ゴムやスポンジなどからなるリング状の保護具(13)を設ける。
(ハ)パイプ(1)をパイプ支持具(6)のパイプ(1)挿入穴を兼ねた排気通路(8)に挿入した際、パイプ(1)が排気通路(8)に対し、どこまで挿入されたかを記憶出来るようにするため、パイプ(1)の外周面に目盛り(14)を設ける。
(ニ)ストッパー(4)をパイプ(1)に固定するため、ストッパー(4)にネジや締め付け方式などによる固定具(5)を設ける。
(ホ)パイプ支持具(6)に、パイプ(1)挿入穴を兼ねた排気通路(8)を軸方向に貫通させ設け、この外側に給気通路(7)を軸方向に貫通させ一個以上設け、そしてパイプ(1)とパイプ支持具(6)を固定するため、ネジや締め付け方式などによる固定具(10)を設ける。
(ヘ)パイプ支持具(6)を接眼部スリーブ(17)に挿入する際、その挿入量を規制するため、またパイプ支持具(6)と接眼部スリーブ(17)の隙間からの空気の侵入を防ぐため、パイプ支持具(6)の外周に金属やゴムなどからなるリング状の接眼ストッパー(9)を設ける。
(ト)パイプ支持具(6)の給気通路(7)入口側に、防埃性や吸湿性などを備え、スポンジや布や乾燥剤などからなる、フィルター(11)を密着させ、その上からはめ込み式やねじ込み式などでパイプ支持具(6)に固定できる、かご状で中央にパイプ挿入穴(24)を設けたフィルター押さえ(12)を装着し、フィルター(11)を密着固定する。
(チ)前記パイプ(1)に、パイプ(1)の軸方向を自在に可動できるように前記ストッパー(4)を設ける。
(リ)前記パイプ(1)に、パイプ(1)の軸方向を自在に可動できるように前記パイプ支持具(6)を設ける。
本発明は以上のような構成でこれを使用する時は、まず鏡筒(15)内への埃や湿気の侵入を防ぐため、パイプ支持具(6)に設けた給気通路(7)の入口側に、防埃性や吸湿性などを備え、スポンジや布や乾燥剤などからなる円形またはリング状などの形状をしたフィルター(11)を密着させ、その上からはめ込み式やねじ込み式などでパイプ支持具(6)に固定できる、かご状で中央にパイプ挿入穴(24)を設けたフィルター押さえ(12)を装着し、フィルター(11)を固定する。外気が鏡筒内に供給される際、外気はフィルター(11)を通過することで埃や湿気が除去されているため、鏡筒(15)内部の結露や埃の付着が発生しにくい。
次にパイプ支持具(6)を鏡筒(15)の接眼部スリーブ(17)に挿入し、余計な空気が侵入しないように接眼ストッパー(9)が接眼部スリーブ(17)に当たる位置までしっかり挿入し固定ネジ(18)でパイプ支持具(6)を鏡筒(15)の接眼部スリーブ(17)に固定する。
次にパイプ(1)にストッパー(4)を取り付ける。
次にパイプ(1)を、保護具(13)が設けてある方の先端から、パイプ支持具(6)のパイプ挿入穴を兼ねた排気通路(8)に挿入し、更に鏡筒(15)内へ挿入する。
その際保護具(13)を設けてあるパイプ(1)の先端が鏡筒(15)内の副鏡(16)にぶつかる寸前で挿入を止め、パイプ支持具(6)の固定具(10)でパイプ(1)を固定する。このとき万が一パイプ(1)の先端が副鏡(16)にぶつかっても保護具(13)により副鏡(16)の破損を防ぐことができる。
次に、ストッパー(4)を移動させパイプ支持具(6)に装着したフィルター押さえ(12)に突き当て、または、フィルター(11)とフィルター押さえ(12)を使用しない場合にはパイプ支持具(6)に突き当て、その位置でストッパー(4)を固定具(5)でパイプ(1)に固定し、次回のパイプ挿入量の指示具とする。またはストッパー(4)は使用せずパイプ(1)に設けた目盛り(14)でパイプ(1)がパイプ支持具(6)やパイプ支持具(6)に装着したフィルター押さえ(12)に対しどの位置にあるかを確認し、この鏡筒(15)への適正なパイプ(1)挿入量を記憶しておく。
次に給排気装置取付部(2)に市販の望遠鏡用冷却ファン(20)や掃除機(19)のホース先端などの排気装置を差し込み、またはねじ込んで取り付けて、外れないように固定具(3)で固定する。
次に副鏡(16)が上になるようにして鏡筒(15)を上に向け、排気装置を作動させる、すると鏡筒(15)内の上方に有る暖かい空気が鏡筒(15)内のパイプ(1)先端から吸引されパイプ(1)内を通り、パイプ支持具(6)のパイプ挿入穴を兼ねた排気通路(8)内を通過し、排気装置から鏡筒(15)の外部へ排出される。それに伴い冷えた外気がパイプ支持具(6)の給気通路(7)から鏡筒(15)内に供給され、鏡筒(15)内の空気は短時間で効率良く冷えた外気と入れ替わり筒内気流が解消する。
本発明を次回以降鏡筒(15)に取り付ける際は、上記要領でパイプ支持具(6)を鏡筒(15)の接眼部スリーブ(17)に取り付け固定ネジ(18)で固定し、パイプ(1)を挿入する際は、予め前回パイプ(1)に固定したストッパー(4)がパイプ支持具(6)に装着したフィルター押さえ(12)に突き当たる位置まで、または、フィルター(11)とフィルター押さえ(12)を使用しない場合には、パイプ支持具(6)に突き当たる位置まで挿入すれば良い。これにより夜間の暗い場所でのパイプ(1)挿入作業は、パイプ(1)の先端が鏡筒(15)内の副鏡(16)にぶつかることを気にすることなく素早くパイプ(1)の挿入が行える。また前回パイプ(1)に固定したストッパー(4)を利用せず、パイプ(1)に設けた目盛り(14)で前回記憶した位置まで目視で確認しながら挿入しても良い。
パイプ(1)挿入時はパイプ支持具(6)の排気通路(8)がパイプ(1)挿入の軌道ガイドとなり、真っ直ぐに鏡筒(15)内に挿入されるため、鏡筒(15)内部の部品を傷つけることも無い。
また、望遠鏡使用後のメンテナンス時には、エアコンやドライヤーなどのより乾燥した空気を給気通路(7)から鏡筒(15)内に供給することで、フィルター(11)使用時より更に鏡筒(15)内を乾燥させ良好な状態に保つことができる。
また上記では給排気装置はパイプ(1)から鏡筒(15)内の空気を吸い出すように説明したが、給排気装置から外気を鏡筒(15)内へ吹き込むことも有り、その場合パイプ支持具(6)の排気通路(8)と給気通路(7)の働きはそれぞれ逆となる。
【実施例1】
【0007】
本発明のパイプ支持具(6)の取り付け実施例としては、図3に示すように鏡筒(15)に接眼部スリーブ(17)を装着しない場合、パイプ支持具(6)の先端に設けた取付ネジ部(22)を鏡筒接眼ネジ部(21)にねじ込んで鏡筒(15)に直接パイプ支持具(6)を取り付けても良い。
【実施例2】
【0008】
パイプ支持具(6)の給気通路(7)と排気通路(8)は、図1のようにそれぞれ隔てられて独立して存在しなくても良い。図4に示す実施例にあっては、パイプ支持具(6)の軸方向に大きく貫通させ設けた排気通路(8)の内側に、複数の突起部(23)を設け、該突起部(23)間に形成される凹部を、給気通路(7)として形成し、それをパイプ(1)挿入の軌道ガイドとしてパイプ(1)が挿入されると、パイプ(1)の外壁により給気通路(7)と排気通路(8)はそれぞれ隔てられ、必然的に独立した通路となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の分解斜視図
【図2】本発明の使用状態を示す斜視図
【図3】本発明の他の実施例を示す斜視図
【図4】本発明の他の実施例を示す斜視図
【符号の説明】
【0010】
1 パイプ
2 給排気装置取付部
3 固定具
4 ストッパー
5 固定具
6 パイプ支持具
7 給気通路
8 排気通路
9 接眼ストッパー
10 固定具
11 フィルター
12 フィルター押さえ
13 保護具
14 目盛り
15 鏡筒
16 副鏡
17 接眼部スリーブ
18 固定ネジ
19 掃除機
20 冷却ファン
21 鏡筒接眼ネジ部
22 取付ネジ部
23 突起部
24 パイプ挿入穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(イ)パイプ(1)の一端に給排気装置取付部(2)と固定具(3)を設ける。
(ロ)ストッパー(4)に固定具(5)を設ける。
(ハ)パイプ支持具(6)に給気通路(7)と排気通路(8)と固定具(10)を設ける。
(ニ)前記パイプ(1)に、パイプ(1)の軸方向を自在に可動でき、任意の場所で固定できるように前記ストッパー(4)と前記パイプ支持具(6)を設ける。
以上の構成によりなる望遠鏡の鏡筒内換気具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−90246(P2008−90246A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−293280(P2006−293280)
【出願日】平成18年9月30日(2006.9.30)
【出願人】(500012204)
【Fターム(参考)】