説明

木材を疎水化する方法

1)少なくとも3個のアミノ基を含有し、その中の少なくとも1つのアミノ基は第1級アミノ基である化合物と、2)一般式(I)[式中、R3は、水素原子又は1〜30個の炭素原子を有する1価の炭化水素基、有利に水素原子を表す]の少なくとも1つの3価の基Bを含有するβ−ケトカルボニル官能性シロキサンポリマー(ただし、前記シロキサンポリマー(2)は高くても40mN/m、有利に高くても35mN/m、特に高くても30mN/mの表面張力を有する)の組み合わせを用いて木材を疎水化する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の主題は、木材を疎水化する方法である。
【0002】
US 2004/0118540 A1は製紙方法を記載していて、前記方法において、まず高分子のアミン成分を少なくとも1.5mEqu./gのNH2濃度で水性セルロース繊維混合物中へ添加する。前記工程とは別に、その後でアミノ基と反応することができ、かつポリアニオン性化合物であるか又はアルデヒド官能性ポリマーである第2の成分を添加する。この二成分系を用いて、紙製品、例えばペーパータオルの湿潤強度が高められる。
【0003】
高めた湿潤強度を有する紙製品、例えばペーパータオルは、US 6,824,650 B2の特許請求の範囲に記載されている。この製品は、ポリビニルアミンと、アルデヒド官能性ポリマー及び高分子電解質から選択される錯形成剤との組み合わせを含有する。ポリビニルアミンと前記錯形成剤との反応により、前記紙製品は強化される。
【0004】
少なくとも一部分が化学的に変性され、かつその際に他の化学物質が化学的結合しているセルロースを含有する対象物は、US 6,916,402 B2に記載されている。前記セルロースの化学的変性は、アルデヒド基、エポキシ基又は無水物基を有する化合物を用いて実施することができる、一方で、前記の他の化学物質はアミン基、チオール基、アミド基、スルホンアミド基又はスルフィン酸基を含有するか、又はその逆で実施することができる。
【0005】
先行技術に記載されたこれらの添加物は、紙製品、例えばペーパータオルの湿潤強度を高めるために利用され、それにより前記ペーパータオルは、液体、例えば水を吸収するが、引き裂けることはない。紙製品の疎水化は、従って望ましくない。
【0006】
本発明の課題は、木材及び木材から製造された製品を水及び湿分の影響から保護しかつ処理された木材は撥水性の特性を有する、木材及び木材から製造された製品の疎水化方法を提供することであった。
【0007】
本発明の主題は、
(1) 少なくとも3個のアミノ基を含有し、その中の少なくとも1つのアミノ基は第1級アミノ基である化合物と、
(2) 一般式
【化1】

[式中、
3は、水素原子又は1〜30個の炭素原子を有する1価の炭化水素基、有利に水素原子を意味する]の少なくとも1つの3価の基Bを含有するβ−ケトカルボニル官能性シロキサンポリマー(ただし、前記シロキサンポリマー(2)は高くても40mN/m、有利に高くても35mN/m、特に高くても30mN/mの表面張力を有する)の組み合わせを用いて木材を疎水化する方法である。
【0008】
「木材」の用語は、無垢の木材、例えばモミ、トウヒ、ハンノキ、ブナ、マツ、オーク、ポプラ、シナノキ、ヤナギ、カエデ、ヒマラヤスギ、シラカバ、パラゴムノキ、サクラ、カラマツ、ビャクシン、イチイ、ハリエンジュ、ニレ、クルミ、マホガニー、紫檀、チーク、タシロマメ、エンピツビャクシン、オリーブ、トネリコ、ウェンジ、カンバラ、アフゼリア、ボンゴッソ(Bongosso)、イロコ、マコレー、シッポ、ニオイヒバ、ベイマツ、カジャ、ピッチパイン、サペリ等に限定されない。前記用語は、木材から製造された製品、例えばチップボード、木材パーティクル又は木材チップからなるボード(particle boards, chip boards)、ファイバーボード、例えばLDF、MDF、HDF(low, medium and high density fibre board=低密度、中密度及び高密度木材繊維ボード)、HB(hard board)、MBH、MBL(high density and low density medium boards)、SB(soft boards)、チップボード、例えばOSB(oriented Strand boards)、合板、ラミネート板及び化粧板も含む。
【0009】
前記化合物(1)はケイ素含有であることができ、例えば文献に公知のアミノプロピル基、アミノイソブチル基、3−(2−アミノエチルアミノ)プロピル基又は3−(2−アミノエチルアミノ)イソブチル基を含有するアミノポリシロキサンであることができる。しかしながら、ケイ素不含の有機ポリアミンが有利であり、その中でもエチレンイミンの重合体及びビニルホルムアミドの加水分解された重合体が特に有利である。
【0010】
前記ポリアミン(1)は、アミノ基を有利に3〜10000個、特に20〜8000個、特に有利にアミノ基を100〜6000個含有し、その中でも第1級アミノ基を有利に2〜6000個、特に第1級アミノ基を20〜6000個含有する。ポリアミド(1)は、線状構造、分枝状構造又は環状構造を有することができ、その際、前記の第1級アミノ官能基は末端鎖又は側鎖の位置に配置されていてもよい。
【0011】
前記ポリアミン(1)は、有利に4〜26mEqu./g、有利に13〜26mEqu./g(mEqu./g=物質1gあたりのミリ当量=物質1kgあたりの当量)の範囲内のアミン基濃度を有する。
【0012】
前記シロキサンポリマー(2)は、オリゴマー又はポリマーの構造を有していてもよい。
【0013】
式(I)中の基Bにおいて、有利に3つの自由原子価の多くとも1つがヘテロ原子に結合している。
【0014】
有利に、前記シロキサンポリマー(2)は、平均的な分子1個当たり少なくとも2個の基B、特に2〜20個の基Bを含有する。この有機基Bは、前記シロキサンポリマー(2)のシロキサン部分に有利にSi−C−基を介して結合している。
【0015】
前記3価の基Bがヘテロ原子の自由原子価と結合していない場合には、本発明によるシロキサンポリマー(2)は、有利に一般式:
【化2】

[式中、R3は、これについて前記の意味を有し、
1は、1〜200個の炭素原子を有する2価の有機基(前記有機基は末端位置を除いて酸素、硫黄及び窒素からなるグループから選択されるヘテロ原子を含有することができる)、有利に1〜20個の炭素原子を有する炭化水素基、特に1〜4個の炭素原子を有する炭化水素基を意味し、
4は、水素原子又は1〜30個の炭素原子を有する炭化水素基、有利に水素原子であり、かつ
5、R6及びR7は、それぞれ1〜30個の炭素原子を有する炭化水素基を表わす]のグループから選択される少なくとも1個のSiC結合基B1を有する。
【0016】
式(II)又は(III)の基B1は、R1を介してシロキサンポリマーに結合している、置換されたアセチルアセトンの構造を有する。
【0017】
前記3価の基Bがヘテロ原子の1つの自由原子価と結合している場合には、本発明によるシロキサンポリマー(2)は、有利に一般式:
【化3】

[式中、
Yは、酸素又は式−(NR9−R1′)z−NR2−の基、有利に式−(NR9−R′)z−NR2の基を意味し、
その際、R′は1〜6個の炭素原子を有する2価の炭化水素基、有利に2〜4個の炭素原子を有する2価の炭化水素基を意味し、
2は、水素原子又は1〜18個の炭素原子を有する炭化水素基、有利に水素原子を意味し、
3は、これについて上記の意味を有し、
8は、1〜200個の炭素原子を有する2価の有機基(前記有機基は酸素、硫黄及び窒素のグループから選択されるヘテロ原子を含有することができる)、有利に1〜20個の炭素原子を有する炭化水素基、特に1〜4個の炭素原子を有する炭化水素基を意味し、
9は、R2又は式−C(=O)−CHR3−C(=O)−CH23又は−C(=O)−CR3=C(−OH)−CH23の基を意味し、
zは、0又は1〜10の整数、有利に0、1又は2、特に0である]のグループから選択される少なくとも1個のSiC結合基B2を有する。
【0018】
式(IV)及び(V)の前記基B2は、基R8を介してシロキサンポリマーに結合している。
【0019】
前記基B2は、基Bとして有利である。
【0020】
式(IV)及び(V)の前記基B2は、互変異性体の基である。有利に、本発明のシロキサンポリマーは、1分子当たり式(IV)及び(V)のグループからの基B2を少なくとも2個含有し、その際、前記シロキサンポリマーは式(IV)の基だけを、式(V)の基だけを又は両方一緒に含有することができる。これらの互変異性体の基は互いに変換可能であるので、前記基のそれぞれの含有率は外部条件に依存して変化することができる。従ってその比は、広範囲で変動してよく、かつこの比は約1000:1〜1:1000であることができる。
【0021】
本発明によるシロキサンポリマー(2)のエノール含有率は、この物質の弱酸性特性を生じさせ、これは一般式(I)の基の構造パラメータ及び置換基に決定的に依存する。有利に、前記エノール化可能な基は、5.0より大きい、特に有利に6.0〜15.0、特に7.0〜14.0のpks値を有する。
【0022】
前記3価の基Bがヘテロ原子の2つの自由原子価と結合している場合には、本発明によるシロキサンポリマー(2)は、有利に一般式
【化4】

[式中、R3及びR4は、これらについての上記の意味を有し、
11は、1〜200個の炭素原子を有する2価の有機基(前記有機基は酸素、硫黄及び窒素のグループから選択されるヘテロ原子を含有することができる)、有利に1〜20個の炭素原子を有する炭化水素基、特に1〜4個の炭素原子を有する炭化水素基を意味し、
12、R13及びR14は、R5、R6及びR7の意味を有する]のグループから選択される少なくとも1個のSiC結合基B3を有する。
【0023】
本発明によるシロキサンポリマー(2)は、有利に1分子当たり5〜5000個のSi原子、有利に50〜1000個のSi原子を含有する。前記シロキサンポリマーは、直鎖状、分枝鎖状、デンドリマー状又は環状であってよい。特に、線状のポリシロキサンポリマー(2)が有利である。
【0024】
本発明によるシロキサンポリマー(2)の範囲内には、前記シロキサンポリマーが有利に式(I)の少なくとも2個の官能基Bを含有する場合に限り、Si原子の具体的数も平均的数も割り当てられない任意の大きさの網目構造も含まれる。
本発明によるβ−ケトカルボニル官能性シロキサンポリマー(1)は、有利に一般式
【化5】

[式中、
Xは、基Bを含有する有機基を意味し、有利にSiC結合基B1、B2又はB3であり、その際、B、B1、B2及びB3はこれについて前記した意味を有し、
Rは、基1個当たり1〜18個の炭素原子を有する1価の、場合により置換された炭化水素基を意味し、
15は、水素原子、又は1〜8個の炭素原子を有するアルキル基、有利に水素原子又はメチル基又はエチル基を意味し、
aは0又は1、
cは0、1、2又は3、及び
dは0又は1であり、
ただし、a+c+dの合計は≦3であり、1分子当たり平均して少なくとも1個の基Xを含有している]で示される単位からなるオルガノポリシロキサンである。
【0025】
本発明によるβ−ケトカルボニル官能性シロキサンポリマー(1)の有利な例は、一般式
【化6】

[式中、X、R及びR15は、これらについての上記の意味を有し、
gは0又は1、
kは0又は1〜30の整数であり、及び
lは0又は1〜1000の整数であり、
mは1〜30の整数であり、及び
nは0又は1〜1000の整数であり、
ただし、1分子当たり平均して少なくとも1個の基Xを含有している]のオルガノポリシロキサンである。
【0026】
基Rの例は、アルキル基、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、1−n−ブチル基、2−n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、t−ペンチル基、ヘキシル基、例えばn−ヘキシル基、ヘプチル基、例えばn−ヘプチル基、オクチル基、例えばn−オクチル基及びイソオクチル基、例えば2,2,4−トリメチルペンチル基、ノニル基、例えばn−ノニル基、デシル基、例えばn−デシル基、ドデシル基、例えばn−ドデシル基、及びオクタデシル基、例えばn−オクタデシル基;シクロアルキル基、例えばシクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基及びメチルシクロヘキシル基;アルケニル基、例えばビニル基、5−ヘキセニル基、シクロヘキセニル基、1−プロペニル基、アリル基、3−ブテニル基及び4−ペンテニル基;アルキニル基、例えばエチニル基、プロパルギル基及び1−プロピニル基;アリール基、例えばフェニル基、ナフチル基、アントリル基及びフェナントリル基;アルカリール基、例えばo−、m−、p−トリル基、キシリル基及びエチルフェニル基;及びアラルキル基、例えばベンジル基、α−及びβ−フェニルエチル基である。
【0027】
基R1の例は、−CH2CH2−、−CH(CH3)−、−CH2CH2CH2−、−CH2C(CH3)H−、−CH2CH2CH2CH2−、−CH2CH2CH(CH3)−及び−CH2CH2C(CH32CH2−であり、その際、−CH2CH2CH2−基が有利である。
【0028】
有利に、基R1′は、式−CH2CH2−及び−CH2CH2CH2−の基である。
【0029】
基R3の例は、アルキル基、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、1−n−ブチル基、2−n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、t−ペンチル基、ヘキシル基、例えばn−ヘキシル基、ヘプチル基、例えばn−ヘプチル基、オクチル基、例えばn−オクチル基及びイソオクチル基、例えば2,2,4−トリメチルペンチル基、ノニル基、例えばn−ノニル基、デシル基、例えばn−デシル基、ドデシル基、例えばn−ドデシル基、及びオクタデシル基、例えばn−オクタデシル基、シクロアルキル基、例えばシクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基及びメチルシクロヘキシル基、アリール基、例えばフェニル基、ナフチル基、アントリル基及びフェナントリル基、アルカリール基、例えばo−、m−、p−トリル基、キシリル基及びエチルフェニル基、及びアラルキル基、例えばベンジル基、α−フェニルエチル基及びβ−フェニルエチル基である。
【0030】
炭化水素基R3の例は、炭化水素基R2についても当てはまる。
【0031】
炭化水素基R3の例は、炭化水素基R4、R5、R6、R7、R12、R13及びR14についても当てはまる。
【0032】
基R8の例は、−CH2CH2−、−CH(CH3)−、−CH2CH2CH2−、−CH2C(CH3)H−、−CH2CH2CH2CH2−、−CH2CH2CH(CH3)−及び−CH2CH2C(CH32CH2−であり、その際、−CH2CH2CH2−基が有利である。
【0033】
基R11の例は、基R8のために挙げた例である。
【0034】
炭化水素基R15の例は、アルキル基、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、1−n−ブチル基、2−n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、t−ペンチル基、ヘキシル基、例えばn−ヘキシル基、ヘプチル基、例えばn−ヘプチル基、オクチル基、例えばn−オクチル基及びイソオクチル基、例えば2,2,4−トリメチルペンチル基である。
【0035】
本発明による方法の際に使用されるシロキサンポリマー(2)の他の例は、樹脂状の構造体、例えばMQ樹脂、MTQ樹脂、MT樹脂、T樹脂、MDT樹脂、DT樹脂又はMDQ樹脂である。
【0036】
有利に、式(VIII)、(IXa)及び(IXb)の前記シロキサンポリマー(2)中のRはメチル基である。本発明による方法に使用されるシロキサンポリマー(2)の他の例は、式(VIII)中の基Rの少なくとも10Mol%、有利に少なくとも20Mol%が、少なくとも6個のC原子、有利に少なくとも8個のC原子、特に少なくとも12個のC原子を有する比較的長鎖の炭化水素基により置換されている様なシロキサンポリマーである。18個よりも多いC原子を有するさらに長鎖の置換基Rの場合に、化合物(2)はワックス状のコンシステンシーを達成する。
【0037】
式(II)又は(III)の基B1は、β−ジケトン基であり、前記基は前記ジケトン(式II)に関して末端に又は両方のカルボニル基(式(III))の間のC原子にR1を介してシロキサンポリマーに結合している。
【0038】
式(II)の基B1を有するβ−ケトカルボニル官能性シロキサンポリマー(2)の製造法は、有機化学分野から公知である。有利に、前記シロキサンポリマーは、Si結合した酸塩化物を含有する有機ケイ素化合物を用いるアセトアセタートのアシル化により得られる。例えば、Si結合したウンデカン酸塩化物(R1は−C1020−)を含有するシロキサンポリマーをエチルアセトアセタート(CH3−C(=O)−CH2−C(=O)−O−CH2CH3)と反応させ(アシル化)、その後に熱によりCO2とエタノールを脱離させる場合、R1が−C1020−であり、R3がHであり、R4がHであり、かつR5が−CH3である式(II)の基B1を含有するシロキサンポリマーが得られる。
【0039】
式(III)の基B1を含有するβ−ケトカルボニル官能性シロキサンポリマー(2)の製造方法は、DE 1193504 A及びDE 1795563 A中に記載されている。この場合、アリルアセチルアセトンのヒドロシリル化が有利であり、その際、R1が−C36−であり、R3がHであり、R6とR7が−CH3である式(III)の基B1を含有するシロキサンポリマーが生じる。さらに、有利な方法は、Si結合したハロゲン基、例えば−CH2Cl、−CH2Br、−C36Clまたは−C36Iを有するシロキサンポリマーによるアセチルアセトンのアルキル化である。
【0040】
式(IV)及び(V)の基B2を含有するシロキサンポリマー(2)の製造方法は、US 6,121,404 A中に記載されている。
【0041】
式(IV)及び(V)中のYが式−(NR9−R′)z−NR2−の窒素含有基である場合(これは有利である)、シロキサンポリマー(1)は、有利に、
一般式
【化7】

[式中、R3は、これについて上記した意味を有する、有利に水素である]のジケテン(i)を、1分子当たり少なくとも1つの一般式
【化8】

[式中、R8、R′、R2、R9及びzはこれらについて上記した意味を有する]のSi結合基Aを有する有機ケイ素化合物(ii)と反応させるが、ただし、前記式(XI)の前記基Aは少なくとも1個の第1級アミノ基及び場合により少なくとも1個の第2級アミノ基、有利に少なくとも1個の第1級アミノ基を有することにより製造される。
【0042】
有利に、前記反応は第1級アミノ基又は第2級アミノ基とβ−ケトカルボニル化合物との反応を遅延させるか又は抑制する有機化合物(iii)の存在下で行なわれる。有機化合物(iii)として、有利にアミンと程度に差はあるが固体の付加物を生じるような化合物が使用される。化合物(iii)の例はアルデヒド及びケトンである。有利な例は、アセトン、ブタノン、メチルイソブチルケトン及びシクロヘキサノンである。
【0043】
有利な製造方法の場合に、第1段階で、有機ケイ素化合物(ii)を有機化合物(iii)と反応させ、その際、前記化合物(iii)は式(XI)の基A中のアミノ基に保護基を形成し、引き続き第2段階で、第1段階で得られた、前記の保護されたアミノ基を有する有機ケイ素化合物(ii)((ii)と(iii)とからの反応生成物)をジケテン(i)と反応させる。ジケテンとの反応の際に、前記保護基は、再び式(XI)の基A中のアミノ基から脱離される。
【0044】
前記式(XI)の基Aは、式−CH2−NR2−Hのα−アミノ基であってもよい。この場合、この製造の際に有機化合物(iii)を併用するのは好ましくない。
【0045】
基Aの例は、
−CH2−NH2
−CH(CH3)−NH2
−C(CH32−NH2
−CH2CH2−NH2
−CH2CH2CH2−NH2
−CH2CH2CH2CH2−NH2
−CH2CH2CH(CH3)−NH2
−CH2CH2CH2−NH−CH2CH2−NH2
−CH2CH2CH2−N(CH3)−CH2CH2−NH2
−CH2CH2CH2[−NH−CH2CH22−NH2
−CH2CH2C(CH3)CH2−NH2であり、
この場合−CH2CH2CH2−NH2及び−CH2CH2CH2−NH−CH2CH2−NH2が有利である。
【0046】
従って、基B2の有利な例は、
−CH2CH2CH2−NH(−Z)、
−CH2CH2CH2−NH1-x(−Z)x−CH2CH2−NH(−Z)であり、
その際、Zは式
−C(=O)−CHR3−C(=O)−CH23又は
−C(=O)−CR3=C(−OH)−CH23であり、
3はこれについて前記した意味を有し、有利に水素原子であり、かつ
xは0又は1である。
【0047】
式(VI)及び(VII)の基B3を含有するシロキサンポリマー(2)は、例えば、マロンエステルをカルビノール官能性シロキサンと反応させるか又はマロンエステルをハロゲンアルキルシロキサンでC−アルキル化することにより製造される。
【0048】
木材の疎水化は、2つの異なる方法バリエーションで行うことができる。
【0049】
一つの方法バリエーションにおいて木材の疎水化が行われ、その際、前記木材は有利に第1の工程でポリアミン(1)で処理され、第2の工程でシロキサンポリマー(2)で処理される。第1の工程でポリアミン(1)で木材を処理した後に、前記木材は有利に乾燥され、その後で第2の工程でシロキサンポリマー(2)を用いた木材の処理が行われる。第2の工程でのシロキサンポリマー(2)の適用は、有利に前記木材へのポリアミン(1)の作用の後で初めて行われる。第2の工程に引き続き、前記木材は有利に乾燥される。
【0050】
第2の方法バリエーションにおいて、木材の疎水化は、有利にポリアミン(1)及びシロキサンポリマー(2)の混合物を用いて行われ、その際、木材の処理の前にポリアミン(1)及びシロキサンポリマー(2)の混合物が製造される。つまり、最初にポリアミン(1)とシロキサンポリマー(2)との予備混合物が製造され、次いでこの混合物を木材に適用する。前記処理に引き続き、前記木材は有利に乾燥される。
【0051】
本発明による方法の場合に、ポリアミン(1)は、前記シロキサンポリマー(2)中の基B 1Molあたり第1級アミノ基、有利に0.5〜50Mol、特に1.0〜20Molの量で使用される。
【0052】
木材の前記処理は、この場合公知の方法で、例えば加圧法(Kesseldruckverfahren)で、例えば完全浸漬含浸(Volltraenkung)、部分浸漬含浸(Spartraenkung)、交互加圧含浸(Wechseldrucktraenkung)、真空含浸又はこれらの組み合わせにより;樹液追出(Saftverdraengung)により、例えば加圧吸引含浸(Drucksaugtraenkung)、トラフ吸引含浸(Trogsaugtraenkung)、トラフ加圧吸引含浸(Trogdrucksaugtraenkung)により;拡散含浸(Diffusionstraenkung)により;トラフ含浸(Trogtraenkung)により、例えば調整含浸(Einstelltraenke)により;真空法により、数回の真空法により、組み合わせた加圧−真空法及び真空−加圧法により、ブローライン法(Blowline-Verfahren)により;刷毛塗りにより;浸漬により;フラッディングにより、流延により、ローラ塗布により及び吹きつけにより又は公知の塗布法の組み合わせにより行うことができる。
【0053】
前記ポリアミン(1)は、有利に水溶液として使用される。前記水溶液中には、ポリアミン(1)は有利に1〜50質量%、有利に5〜30質量%の量で含まれる。
【0054】
前記β−ケトカルボニル官能性シロキサンポリマー(2)は、有利に有機溶剤中に希釈して使用される。有機溶剤の例は、イソプロパノール、トルエン、n−ヘキサン、キシレン、ベンジンフラクション、テルペン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸エチル、ブチルジグリコール、ジプロピレングリコールメチルエーテル、ホワイトスピリットである。有機溶剤中の溶液中には、シロキサンポリマー(2)は有利に5〜50質量%、有利に5〜30質量%の量で含まれる。
【0055】
前記化合物(1)及び(2)に対してさらに、木材の処理の際に通常併用されている他の添加物を併用することもできる。他の添加物の例は、タンニン、殺真菌剤、殺菌剤、保存剤、アルジサイド、殺虫剤、難燃剤、香料及び顔料である。
【0056】
本発明による木材の疎水化又は前記処理された木材の乾燥は、有利に5〜70℃、特に10〜50℃で実施される。本発明による疎水化又は処理された木材の乾燥は、有利に周囲雰囲気の圧力で、つまり1020hPaで実施されるが、高めた圧力又は低めた圧力でも実施することができる。
【0057】
本発明による方法の場合に、前記ポリアミン(1)及びシロキサンポリマー(2)は、疎水化すべき木材1m2に対して、それぞれ有利に0.02〜1kg、有利に0.05〜0.5kgの量で使用される。
【0058】
実施例1:
a) トリメチルシロキシ基を末端に有する、アミノプロピルメチルシロキシ単位とジメチルシロキシ単位とからなる、アミン価0.42mEqu/g及び粘度680mm2/s(25℃)のアミノポリシロキサン480gを、25℃でアセトン24gと混合し、3時間撹拌する。この混合物中に、ジケテン16.9gを迅速に供給し、その後に若干の発熱反応が生じ、フラスコ内容物は21℃に温まる。約45℃で1時間後に真空中でアセトンを除去し、粘度775mm2/s(25℃)、アミン価0.01mEqu/g及び濃度0.40mEqu.アセトアセタミド/g(1H−NMR)を有するアセトアセタミドプロピル油が得られる。前記ポリマーは、1分子当たり平均して5.7個のアセトアセタミド基を有し、pks値約11を有し、かつ表面張力23mN/mを有する。
【0059】
b) 25℃で14日かつ50%の相対空気湿度でコンディショニングした200×100×16mmの寸法の乾燥したトウヒ木材ボードの含浸のために2段解法を使用した。前記試験ボード(0.02m2)に細密な筆で、ポリビニルアミン(商品名Lupamin 9095 (BASF)で20%の水溶液として入手可能)の1%の水溶液2.0gをできる限り均一に片面に塗布する。乾燥後に、前記ボードを25℃で50%の相対空気湿度で24時間貯蔵する。第2の作業工程で、上記a)で製造されたアセトアセタミドシロキサンのイソプロパノール/トルエン(1:1)中の20%の溶液2.5gを同じ側に再びできる限り均一に塗布し、引き続き排気し、24時間貯蔵する。45゜斜めに傾けた前記テストボードの脱塩水の吹き付け試験は、極めて良好な撥水効果を示す。良好な撥水が達成される。
【0060】
実施例2:
実施例1のa)に記載されたように、同量のトルエン、アセトン14g及びジケテン8.8g中に溶かしたアミノ官能性MQ樹脂200gからアセトアセタミド化されたMQ樹脂が製造された。前記アミノ官能性MQ樹脂は、C817(CH32SiO0.5、H2N(CH23(CH32SiO0.5、SiO2及びC25OSiO1.5の単位からなり、かつ前記樹脂1kgあたり第1級アミノ基0.522Molを有し、平均分子量Mn=8700ダルトンを有する。ジケテンとの反応の後に、アセトンをトルエンと共に60℃で真空中で除去し、その後に、アミン価0.015mEqu./g及びアセトアセタミド濃度0.45mEqu./gの粘着性のシリコーン樹脂209gが得られる。前記樹脂は、1分子当たり平均して約4.2個のアセトアセタミド基を有し、表面張力31nM/mを有する。
【0061】
実施例1のb)に記載されたように、トウヒ木材ボードをLupamin 9095溶液で処理する。第2の段階で、次にさらに前記a)で製造されたアセトアセタミド−MQ樹脂のn−ヘプタン中の20%の溶液2.0gを均一に塗布し、排気し、24時間貯蔵する。45゜斜めに傾けた前記テストボードの脱塩水の吹き付け試験は、極めて良好な撥水効果を示す。良好な撥水が達成される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1) 少なくとも3個のアミノ基を含有し、その中の少なくとも1つのアミノ基は第1級アミノ基である化合物と、
(2) 一般式
【化1】

[式中、
3は、水素原子又は1〜30個の炭素原子を有する1価の炭化水素基、有利に水素原子を表す]の少なくとも1つの3価の基Bを含有するβ−ケトカルボニル官能性シロキサンポリマー(ただし、前記シロキサンポリマー(2)は高くても40mN/m、有利に高くても35mN/m、特に高くても30mN/mの表面張力を有する)の組み合わせを用いて木材を疎水化する方法。
【請求項2】
化合物(1)として有機ポリアミンを使用することを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記シロキサンポリマー(2)中の基Bとして、一般式
【化2】

[式中、
1は、1〜200個の炭素原子を有する2価の有機基(前記有機基は末端位置を除いて酸素、硫黄及び窒素のグループから選択されるヘテロ原子を含有することができる)、有利に1〜20個の炭素原子を有する炭化水素基、特に有利に1〜4個の炭素原子を有する炭化水素基を意味し、
3は、これについて請求項1に記載された意味を有し、
4は、水素原子又は1〜30個の炭素原子を有する炭化水素基、有利に水素原子であり、
5、R6及びR7は、それぞれ1〜30個の炭素原子を有する炭化水素基を意味する]のグループから選択されるSiC結合基B1を有することを特徴とする、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
前記シロキサンポリマー(2)中の基Bとして、一般式
【化3】

[式中、
Yは、酸素原子又は式
−(NR9−R′)z−NR2−の基、有利に式
−(NR9−R′)z−NR2−の基を意味し、その際、R′は1〜6個の炭素原子を有する2価の炭化水素基、有利に2〜4個の炭素原子を有する2価の炭化水素基を意味し、
2は、水素原子又は1〜18個の炭素原子を有する炭化水素基、有利に水素原子を意味し、
3は、これについて請求項1に記載された意味を有し、
8は、1〜200個の炭素原子を有する2価の炭化水素基(前記基は酸素、硫黄及び窒素のグループから選択されるヘテロ原子を含有することができる)、有利に1〜20個の炭素原子を有する炭化水素基、特に1〜4個の炭素原子を有する炭化水素基を意味し、
9は、R2又は式−C(=O)−CHR3−C(=O)−CH23又は−C(=O)−CR3=C(−OH)−CH23の基を意味し、
zは0又は1〜10の整数、有利に0、1又は2、特に0である]のグループから選択されるSiC結合基B2を有することを特徴とする、請求項1又は2記載の方法。
【請求項5】
基B2は、式
−CH2CH2CH2−NH(−Z)
の基であり、その際、前記式のZは、
−C(=O)−CHR3−C(=O)−CH23又は
−C(=O)−CR3=C(−OH)−CH23であり、
その際、R3は、これについて請求項1に記載された意味を有し、有利に水素であることを特徴とする、請求項4記載の方法。
【請求項6】
シロキサンポリマー(2)中の基Bとして、一般式
【化4】

[式中、
3及びR4は、これらについて請求項1に記載された意味を有し、
11は1〜200個の炭素原子を有する2価の有機基(前記基は酸素、硫黄及び窒素のグループから選択されるヘテロ原子を含有してもよい)、有利に1〜20個の炭素原子を有する炭化水素基、特に1〜4個の炭素原子を有する炭化水素基を意味し、
12、R13及びR14は、R5、R6及びR7の意味を有し、R5、R6及びR7は、これらについて請求項3に記載された意味を有する]のグループから選択されるSiC結合基B3を含有することを特徴とする、請求項1又は2記載の方法。
【請求項7】
シロキサンポリマー(2)として、一般式
【化5】

[式中、
Xは、基Bを有する有機基、有利にSiC結合基B1、B2又はB3であり、その際、B、B1、B2及びB3はこれらについて前記した意味を有し、
Rは、1価の、基1個あたり1〜18個の炭素原子を有する、場合により置換された炭化水素基を意味し、
15は、水素原子又は1〜8個の炭素原子を有するアルキル基、有利に水素原子又はメチル基又はエチル基を意味し、
aは0又は1であり、
cは0、1、2又は3であり、及び
dは0又は1であり、ただし、合計a+c+d≦3でありかつ1分子当たり平均して少なくとも1個の基Xを含有している]の単位からなるオルガノポリシロキサンを使用することを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
シロキサンポリマー(2)として、一般式
【化6】

[式中、X、R及びR15は、これらについて請求項6に記載された意味を有し、
gは0又は1であり、
kは0又は1〜30の整数であり、及び
lは0又は1〜1000の整数であり、
mは1〜30の整数であり、及び
nは0又は1〜1000の整数であり、
ただし、1分子当たり平均して少なくとも1個の基Xを含有している]のグループから選択されるオルガノポリシロキサンを使用することを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
シロキサンポリマー(2)はMQ樹脂又はMTQ樹脂であり、基Rの少なくとも10Mol%は6〜18個の炭素原子を有する炭化水素基であることを特徴とする、請求項7記載の方法。
【請求項10】
木材を、第1工程でポリアミン(1)で処理し、
第2工程でシロキサンポリマー(2)で処理することを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
木材を、
(1) ポリアミン及び
(2) シロキサンポリマー
からなる混合物で疎水化し、その際、木材の処理の前にポリアミン(1)とシロキサンポリマー(2)とからなる混合物を製造することを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
木材として、無垢の木材又は木材から製造された製品を使用することを特徴とする、請求項1から11までのいずれか1項記載の方法。

【公表番号】特表2010−501378(P2010−501378A)
【公表日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−526022(P2009−526022)
【出願日】平成19年8月6日(2007.8.6)
【国際出願番号】PCT/EP2007/058142
【国際公開番号】WO2008/022906
【国際公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【出願人】(390008969)ワッカー ケミー アクチエンゲゼルシャフト (417)
【氏名又は名称原語表記】Wacker Chemie AG
【住所又は居所原語表記】Hanns−Seidel−Platz 4, D−81737 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】