木材成形用金型
【課題】複雑な3次元形状を有する木材を圧縮成形する際にも割れ等の不具合の発生を防止し、歩留まりを向上させることができる木材成形用金型を提供する。
【解決手段】木材に圧縮力を加えることにより、略均一な肉厚を有する椀状をなし、内側面および外側面に凹部および凸部をそれぞれ有する形状にその木材を成形する際、前記凹部に対応し、当該木材成形用金型による圧縮の後に木材を加熱しながら整形することによって得られる加熱整形後形状と略一致する形状をなす金型凸部と、前記凸部に対応し、前記凸部における加熱整形後形状よりも表面積が大きく広がった形状をなす金型凹部とを備える。
【解決手段】木材に圧縮力を加えることにより、略均一な肉厚を有する椀状をなし、内側面および外側面に凹部および凸部をそれぞれ有する形状にその木材を成形する際、前記凹部に対応し、当該木材成形用金型による圧縮の後に木材を加熱しながら整形することによって得られる加熱整形後形状と略一致する形状をなす金型凸部と、前記凸部に対応し、前記凸部における加熱整形後形状よりも表面積が大きく広がった形状をなす金型凹部とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木材を所定の3次元形状に圧縮成形する際に使用する木材成形用金型に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自然素材である木材が注目されている。木材は様々な木目を有するため、原木から形取る箇所に応じて個体差が生じ、その個体差が製品ごとの個性となる。また、長期の使用によって生じる傷や色合いの変化自体も、独特の風合いとなって使用者に親しみを生じさせることがある。これらの理由により、合成樹脂や軽金属を用いた製品にはない、個性的で味わい深い製品を生み出すことのできる素材として木材が注目されており、その成形技術も飛躍的に進歩しつつある。
【0003】
従来、かかる木材の成形技術として、吸水軟化した1枚の木材を圧縮し、その木材を圧縮方向と略平行にスライスして板状の一次固定品を得た後、この一次固定品を加熱吸水させながら所定の3次元形状に成形する技術が知られている(例えば、特許文献1を参照)。また、軟化処理した状態で圧縮した1枚の木材を仮固定し、この木材を型に入れて回復させることによって型成形する技術も知られている(例えば、特許文献2を参照)。また、木材を高温高圧の水蒸気雰囲気内において軟化させた後、水蒸気雰囲気内で木材を機械的に圧縮し、その後、再び水蒸気雰囲気内で変形を固定化する技術も知られている(例えば、特許文献3を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3078452号公報
【特許文献2】特開平11−77619号公報
【特許文献3】特公平7−2326号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来技術では、板状、柱状、断面円弧状、皿状などの比較的単純な形状の木材を圧縮成形することしか想定されていなかった。このため、表面に凹凸を有するような複雑な3次元形状の木材を圧縮成形しようとすると、凸状部分に過度の引張力が加わって割れ等の不具合を発生しやすく、歩留まりが低下してしまうおそれがあった。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、複雑な3次元形状を有する木材を圧縮成形する際にも割れ等の不具合の発生を防止し、歩留まりを向上させることができる木材成形用金型を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る木材成形用金型は、木材に圧縮力を加えることにより、略均一な肉厚を有する椀状をなし、内側面および外側面が凹部および凸部をそれぞれ有する形状に前記木材を成形する木材成形用金型であって、前記凹部に対応し、当該木材成形用金型による圧縮の後に前記木材を加熱しながら整形することによって得られる加熱整形後形状と略一致した形状をなす金型凸部と、前記凸部に対応し、前記凸部における前記加熱整形後形状よりも表面積が大きく広がった形状をなす金型凹部と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る木材成形用金型は、上記発明において、前記木材の内側面に当接して圧縮力を加えるコア金型と、前記木材の外側面に当接して圧縮力を加えるキャビティ金型と、を含み、前記コア金型および前記キャビティ金型は、前記金型凸部および前記金型凹部をそれぞれ有することを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る木材成形用金型は、上記発明において、前記キャビティ金型が有する前記金型凹部には、開口端付近で内側へ向けて傾斜したテーパ部が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る木材成形用金型によれば、木材に圧縮力を加えることにより、略均一な肉厚を有する椀状をなし、内側面および外側面に凹部および凸部をそれぞれ有する形状にその木材を成形する際、前記凹部に対応し、当該木材成形用金型による圧縮の後に木材を加熱しながら整形することによって得られる加熱整形後形状と略一致する形状をなす金型凸部と、前記凸部に対応し、前記凸部における加熱整形後形状よりも表面積が大きく広がった形状をなす金型凹部とを備えたこととしているため、圧縮の際に木材に引張力が発生するのを抑制することができ、複雑な3次元形状を有する木材を圧縮成形する際にも割れ等の不具合の発生を防止し、歩留まりを向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、本発明の実施の形態1に係る木材成形用金型の構成を示す斜視図である。
【図2】図2は、図1の矢視A方向の平面図である。
【図3】図3は、図1の矢視B方向の平面図である。
【図4】図4は、図1の状態における図2および図3のC−C線断面図である。
【図5】図5は、図1の状態における図2および図3のD−D線断面図である。
【図6】図6は、本発明の実施の形態1に係る木材成形用金型を用いて成形する木材の構成を示す斜視図である。
【図7】図7は、本発明の実施の形態1に係る木材成形用金型を用いて木材を圧縮し始める状態を示す斜視図である。
【図8】図8は、図7のC−C線断面図である。
【図9】図9は、図7のD−D線断面図である。
【図10】図10は、本発明の実施の形態1に係る木材成形用金型を用いて木材を圧縮している途中の状態を示す斜視図である。
【図11】図11は、図10のC−C線断面図である。
【図12】図12は、図10のD−D線断面図である。
【図13】図13は、本発明の実施の形態1に係る木材成形用金型によって木材の変形が完了した状態を示す斜視図である。
【図14】図14は、図13のC−C線断面図である。
【図15】図15は、図13のD−D線断面図である。
【図16】図16は、加熱整形工程の概要を模式的に示す図である。
【図17】図17は、加熱整形工程において木材の変形が完了した状態を模式的に示す図である。
【図18】図18は、本発明の実施の形態2に係る木材成形用金型の構成を示す図である。
【図19】図19は、図18のE−E線断面図である。
【図20】図20は、本発明の実施の形態2に係る木材成形用金型を用いて成形する木材の構成を示す斜視図である。
【図21】図21は、本発明の実施の形態2に係る木材成形用金型を用いて行う木材の圧縮工程の概要を示す図である。
【図22】図22は、圧縮工程によって得られた木材の構成を示す斜視図である。
【図23】図23は、図22の平面Sを切断面として切断した図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態(以下、「実施の形態」という)を説明する。なお、以下の説明で参照する図面は模式的なものであって、同じ物体を異なる図面で示す場合には、寸法や縮尺等が異なる場合もある。
【0013】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る木材成形用金型の構成を示す斜視図である。図2は、図1の矢視A方向の平面図である。図3は、図1の矢視B方向の平面図である。図1〜図3に示す木材成形用金型1は、成形対象の木材を挟持して圧縮力を加える一対のコア金型2およびキャビティ金型3を備える。
【0014】
コア金型2は、圧縮成形後の木材の形状の一部に対応して略柱状に突起する突起部21を有する。突起部21は、ハート型をなす底面と、この底面のハート型において凸状をなす周縁に連なる側面とからなる金型凸部21aと、底面のハート型において凹状をなす周縁に連なる側面からなる金型凹部21bとを含む。図2に示す黒点は、金型凸部21aと金型凹部21bとの境界を示している。
【0015】
キャビティ金型3は、コア金型2の突起部21と対向し、成形対象の木材を嵌入する嵌入部31を有する。嵌入部31は、ハート型をなす底面と、この底面のハート型において凸状をなす周縁に連なる側面とからなる金型凹部31aと、底面のハート型において凹状をなす周縁に連なる側面からなる金型凸部31bとを含む。金型凹部31aの開口面付近には、内側へ向けて傾斜した斜面から成るテーパ部311aが形成されている。テーパ部311aは、ブランク材を嵌入部31の底面へガイドする機能を有している。図3に示す黒点は、金型凹部31aと金型凸部31bとの境界を示している。
【0016】
図4は、図1に示す状態における図2および図3のC−C線断面図である。図5は、図1に示す状態における図2および図3のD−D線断面図である。金型凸部21a、31bは、木材成形用金型1を用いて木材を圧縮成形した後、その木材を加熱しながら整形することによって得られる加熱整形後形状と一致している。一方、金型凹部21b、31aは、加熱成形後形状よりも表面積が大きく広がった形状をなしている。換言すれば、金型凹部21b、31aは、加熱整形を行う際の整形代を含む形状をなしている。図2〜図5に示す破線L1、L2は、金型凹部21b、31aに対応する部分の加熱整形後形状を示している。
【0017】
図6は、木材成形用金型1を用いて成形する木材(以下、「ブランク材」という)の構成を示す斜視図である。同図に示すブランク材4は、無圧縮状態にある無垢材などの原木から切削によって形取られる。原木は、ヒノキ、ヒバ、桐、杉、松、桜、欅、黒檀、紫檀、竹、チーク、マホガニー、ローズウッドなどの中から最適な素材を選択すればよい。
【0018】
ブランク材4は、表面がハート型をなす平板状の主板部41と、主板部41の外縁部から主板部41の表面と略直交する方向に立ち上がって延びる側板部42とを有しており、略均一な肉厚の椀状をなしている。ブランク材4の椀状の内側面の一部をなす側板部42の内周面は、主板部41の縁端部に対応するハート型をなしており、凹部42aと凸部42bとを有する。また、ブランク材4の椀状の外側面の一部をなす側板部42の外周面も内周面と略相似なハート型をなしており、肉厚方向に沿って凹部42aと対向する凸部42cを有するとともに、肉厚方向に沿って凸部42bと対向する凹部42dを有する。凹部42a、42dの形状は、それぞれ対応する金型凸部21a、31bの形状と略等しければより好ましい。以上の構成を有するブランク材4は、圧縮によって減少する分の容積を予め加えた容積を有している。
【0019】
以上の構成を有するブランク材4においては、木材成形用金型1を用いて圧縮成形を行う際に凸部42bおよび42cに引張力が働く可能性があり、割れや裂け等の不具合を生じてしまうおそれがある。このことを回避するために、本実施の形態1においては、凸部42bおよび42cにそれぞれ対応するコア金型2の金型凹部21bおよびキャビティ金型3の金型凹部31aに整形代を設けておき、圧縮の際に凸部42b、42cに圧縮力が加わりやすい状況を実現している。
【0020】
次に、ブランク材4の圧縮工程について説明する。ブランク材4を圧縮する際には、大気よりも高温高圧の水蒸気雰囲気中で所定時間放置して水分を過剰に吸収させることにより、ブランク材4を軟化させる。ここでの水蒸気は、温度が100〜230℃程度であり、圧力が0.10〜3.0MPa(メガパスカル)程度である。このような水蒸気雰囲気は、例えば圧力容器を用いることによって実現することができる。圧力容器を用いる場合には、その圧力容器の中にブランク材4を放置することによって軟化させる。なお、水蒸気雰囲気中でブランク材4を放置して軟化させる代わりに、ブランク材4の表面に水分を供給した後、マイクロウェーブの如き高周波の電磁波によってブランク材4を加熱して軟化させてもよいし、ブランク材4を煮沸して軟化させてもよい。
【0021】
この後、軟化させてブランク材4を上述した水蒸気雰囲気中で一対の金型によって挟持して圧縮力を加えることにより、ブランク材4を変形させる。図7は、木材成形用金型1(コア金型2、キャビティ金型3)によってブランク材4を圧縮し始める状況を示す図である。また、図8は図7のC−C線断面図であり、図9は図7のD−D線縦断面図である。なお、圧力容器の中でブランク材4を軟化させた場合には、引き続きその圧力容器の中でブランク材4を圧縮すればよい。
【0022】
図10〜図12は、木材成形用金型1によってブランク材4を圧縮している途中の状態を示す図であり、コア金型2を下降させてキャビティ金型3へ近づけている状態を示す図である。このうち、図11は図10のC−C線断面図であり、図10は図8のD−D線断面図である。図10〜図12に示す状態で、コア金型2はブランク材4の側板部42の端面に当接し、端面を押圧している。このように端面を押圧しながらブランク材4を徐々に変形させていくことにより、圧縮工程においてブランク材4の割れ等の不具合が発生するのを確実に防止することができる。
【0023】
図13〜図15は、ブランク材4の変形が完了した状態で木材成形用金型1がブランク材4に圧縮力を加えている状態を示す図である。このうち、図14は図13のC−C線断面図であり、図15は図13のD−D線断面図である。図13〜図15に示すように、ブランク材4は、コア金型2およびキャビティ金型3から圧縮力を受けることにより、コア金型2とキャビティ金型3との隙間に相当する3次元形状に変形する。圧縮工程においては、図13〜図15に示す状態で、ブランク材4に所定時間(1〜数十分、より好ましくは5〜10分程度)圧縮力を加え続ける。
【0024】
このようにしてブランク材4を圧縮すると、引張力が発生しやすい凸部42b、42cには小さく縮む方向への圧縮力が作用する。したがって、圧縮時にブランク材4に割れ等の不具合が発生するのを回避することが可能となる。
【0025】
圧縮工程が終了した後、図13〜図15に示す状態を保持したまま、上述した水蒸気よりさらに高温の水蒸気を木材成形用金型1の周囲に加えることにより、ブランク材4の形状を固定化する。この固定化処理を圧力容器中で行う場合には、圧縮工程における水蒸気よりもさらに高温の水蒸気を圧力容器へ吹き込めばよい。
【0026】
続いて、木材成形用金型1およびブランク材4を大気中へ開放することによってブランク材4を乾燥させる。この際には、コア金型2またはキャビティ金型3をブランク材4から離間することによって乾燥を促進させるようにしてもよい。以下、木材成形用金型1によって圧縮し、乾燥させた後のブランク材4を「木材5」という。
【0027】
次に、大気中で木材5に熱を加えながら木材5を整形する。図16は、木材5に熱を加えながら木材5を整形する加熱整形工程の概要を模式的に示す図である。加熱整形工程では、一対の加熱整形用金型であるコア金型6、キャビティ金型7によって木材5を挟持する。
【0028】
図16で木材5の上方に位置するコア金型6は、木材5の窪んでいる側の表面に当接する突起部61を備える。一方、図16で木材5の下方に位置するキャビティ金型7は、木材5の突出している側の表面に当接する嵌入部71を備える。コア金型6およびキャビティ金型7を型締めしたときの隙間の形状は、木材5の加熱整形後形状に対応している。なお、図16における破線L3はコア金型2の金型凹部21bの形状に対応しており、破線L4はキャビティ金型3の金型凹部31aの形状に対応している。
【0029】
コア金型6およびキャビティ金型7の内部には、熱を発生するヒータ62、72がそれぞれ取り付けられている。ヒータ62、72は温度制御機能を有する制御装置8に接続されており、制御装置8の制御のもとで発熱し、コア金型6およびキャビティ金型7にそれぞれ熱を加える。制御装置8は、木材5を挟持している時のコア金型6およびキャビティ金型7の温度が150〜200℃程度の高温で略一定となるようにヒータ62、72をそれぞれ制御する。
【0030】
図17は、加熱整形工程において木材5の形状変化が完了した状態を示す図である。木材5を加熱整形する場合の木材5の形状変化は、ブランク材4における圧縮前後の形状変化と比較して顕著に小さい。換言すれば、木材5を加熱整形する場合の木材5の圧縮率は、木材成形用金型1を用いて行うブランク材4の圧縮率と比較して顕著に小さい。
【0031】
ヒータ62、72によってそれぞれ加熱されたコア金型6およびキャビティ金型7を型締めし、図17に示す状態で所定時間経過させると、木材5の内部にある樹液の一部が木材5の表面にしみ出してきてその表面に深い色合いとつやが生じる。
【0032】
加熱整形工程において木材5をコア金型6、キャビティ金型7によって挟持する時間や各金型の金型温度は、木材5が有する特性や加工後の木材5に付与すべき性質等に応じて定めればよい。なお、ここでいう「木材5が有する特性」には、形状のほか、原材料である原木の種類、産地、生育環境、生育状態なども含まれる。また、「木材5に付与すべき性質」には、成形後の木材5の表面の色合いやツヤ、強度などが含まれる。
【0033】
加熱整形工程の後、木材5の最終形状への仕上げを行う。この仕上げを行う際には、切削によって木材5の端面を揃えたり孔や切り欠きなどを形成したりする。
【0034】
以上説明した木材の成形方法によって圧縮成形された木材5は、様々な用途に使用することができる。例えば、デジタルカメラやICレコーダなどの小型の電子機器の外装体として適用することができるし、食器、各種筐体、建材などにも適用することもできる。このうち、小型の電子機器の外装体として適用する場合には、肉厚が1.6〜2.0mm程度であればより好ましい。
【0035】
以上説明した本発明の実施の形態1に係る木材成形用金型によれば、木材に圧縮力を加えることにより、略均一な肉厚を有する椀状をなし、内側面および外側面に凹部および凸部をそれぞれ有する形状にその木材を成形する際、前記凹部に対応し、当該木材成形用金型による圧縮の後に木材を加熱しながら整形することによって得られる加熱整形後形状と略一致する形状をなす金型凸部と、前記凸部に対応し、前記凸部における加熱整形後形状よりも表面積が大きく広がった形状をなす金型凹部とを備えたこととしているため、圧縮の際に木材に引張力が発生するのを抑制することができ、複雑な3次元形状を有する木材を圧縮成形する際にも割れ等の不具合の発生を防止し、歩留まりを向上させることが可能となる。
【0036】
(実施の形態2)
図18は、本発明の実施の形態2に係る木材成形用金型の構成を示す図である。図19は、図18のE−E線断面図である。これらの図に示す木材成形用金型11は、成形対象の木材を挟持して圧縮力を加える一対のコア金型12およびキャビティ金型13を備える。
【0037】
コア金型12は、圧縮成形後の木材の形状の一部に対応して突起する金型凸部121aと、金型凸部121aの底面の中央部に設けられた金型凹部121bとを有する。キャビティ金型13は、コア金型12の金型凸部121aと対向する金型凹部131aと、金型凹部131aの略中央部に設けられ、コア金型12の金型凹部121bと対向する金型凸部131bとを有する。図19に示す破線L5、L6は、金型凹部121b、131aにそれぞれ対応する部分の加熱整形後形状を示している。この意味で、金型凹部121b、131aは、加熱整形を行う際の整形代を含む形状をなしている。
【0038】
図20は、木材成形用金型11を用いて成形するブランク材の構成を示す斜視図である。同図に示すブランク材14は、上述したブランク材4と同様、無圧縮状態にある無垢材などの原木から切削によって形取られる。ブランク材14は、略長方形の表面を有する平板状の主板部141と、主板部141の表面で対向する二つの長辺部の各々から主板部141に対して湾曲して延在する二つの側板部142と、主板部141の表面で対向する二つの短辺部の各々から主板部141に対して湾曲して延在する二つの側板部143と、を備え、略均一な肉厚を有している。なお、図20における2点鎖線は、ブランク材14の湾曲形状を示すための仮想的な線である。
【0039】
図21は、ブランク材14の圧縮工程の概要を示す図である。ブランク材14を圧縮する際には、上記実施の形態1で説明したのと同様の水蒸気雰囲気中でブランク材14を軟化させた状態で、コア金型12およびキャビティ金型13によってブランク材14を挟持する。この際、図21の矢印の上方に示す状態から図2の矢印の下方に示す状態に達するまでコア金型12を徐々に下降させていく。図21の矢印の下方に示す状態に達した場合、その状態で所定時間経過させた後、ブランク材14を乾燥させる。
【0040】
図22は、上記の如くブランク材14を圧縮することによって得られた木材の構成を示す斜視図である。また、図23は、図22に示す平面Sを切断面として木材を切断した図である。これらの図に示す木材15は、ブランク材14の主板部141および側板部142、143にそれぞれ対応する主板部151および側板部152、153を有する。主板部151の中央部は、外側面側から内側面側にくぼんでいる。このため、木材15の外側面は、くぼんだ凹部15aと、凹部15a以外の表面からなる凸部15bとを有する。一方、木材15の内側面は、凹部15aに対応する凸部15cと、凸部15bに対応する凹部15dとを有する。凹部15a、15dは加熱整形後形状と一致する形状をなしている一方、凸部15b、15cは加熱整形工程における整形代を含んだ形状をなしている。なお、図22および図23における2点鎖線は、木材15の湾曲形状を示すための仮想的な線である。
【0041】
この後、上記実施の形態1と同様に加熱整形工程および仕上げ工程を行うことにより、図22に示す木材15と略同形をなす最終形状が得られる。
【0042】
以上説明した本発明の実施の形態2に係る木材成形用金型によれば、木材に圧縮力を加えることにより、略均一な肉厚を有する椀状をなし、内側面および外側面に凹部および凸部をそれぞれ有する形状にその木材を成形する際、前記凹部に対応し、当該木材成形用金型による圧縮の後に木材を加熱しながら整形することによって得られる加熱整形後形状と略一致する形状をなす金型凸部と、前記凸部に対応し、前記凸部における加熱整形後形状よりも表面積が大きく広がった形状をなす金型凹部とを備えたこととしているため、圧縮の際に木材に引張力が発生するのを抑制することができ、複雑な3次元形状を有する木材を圧縮成形する際にも割れ等の不具合の発生を防止し、歩留まりを向上させることが可能となる。
【0043】
ここまで、本発明を実施するための形態を詳述してきたが、本発明は上述した二つの実施の形態によってのみ限定されるべきものではない。例えば、上述した実施の形態では、金型凸部が加熱成形後形状と一致した形状をなしている場合を説明したが、本発明においては、金型凸部の方が金型凹部よりも加熱成形後形状に近ければよく、必ずしも加熱整形後形状と完全に一致している必要はない。
【0044】
このように、本発明はここでは記載していない様々な実施の形態等を含みうるものであり、特許請求の範囲により特定される技術的思想を逸脱しない範囲内において種々の設計変更等を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0045】
1、11 木材成形用金型
2、6、12 コア金型
3、7、13 キャビティ金型
4、14 ブランク材
5、15 木材
8 制御装置
15a、15d 凹部
15b、15c 凸部
21、61 突起部
21a、31b、121a、131b 金型凸部
21b、31a、121b、131a 金型凹部
31、71 嵌入部
41、141、151 主板部
42、142、143、152、153 側板部
42a、42d 凹部
42b、42c 凸部
62、72 ヒータ
311a テーパ部
S 平面
【技術分野】
【0001】
本発明は、木材を所定の3次元形状に圧縮成形する際に使用する木材成形用金型に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自然素材である木材が注目されている。木材は様々な木目を有するため、原木から形取る箇所に応じて個体差が生じ、その個体差が製品ごとの個性となる。また、長期の使用によって生じる傷や色合いの変化自体も、独特の風合いとなって使用者に親しみを生じさせることがある。これらの理由により、合成樹脂や軽金属を用いた製品にはない、個性的で味わい深い製品を生み出すことのできる素材として木材が注目されており、その成形技術も飛躍的に進歩しつつある。
【0003】
従来、かかる木材の成形技術として、吸水軟化した1枚の木材を圧縮し、その木材を圧縮方向と略平行にスライスして板状の一次固定品を得た後、この一次固定品を加熱吸水させながら所定の3次元形状に成形する技術が知られている(例えば、特許文献1を参照)。また、軟化処理した状態で圧縮した1枚の木材を仮固定し、この木材を型に入れて回復させることによって型成形する技術も知られている(例えば、特許文献2を参照)。また、木材を高温高圧の水蒸気雰囲気内において軟化させた後、水蒸気雰囲気内で木材を機械的に圧縮し、その後、再び水蒸気雰囲気内で変形を固定化する技術も知られている(例えば、特許文献3を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3078452号公報
【特許文献2】特開平11−77619号公報
【特許文献3】特公平7−2326号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来技術では、板状、柱状、断面円弧状、皿状などの比較的単純な形状の木材を圧縮成形することしか想定されていなかった。このため、表面に凹凸を有するような複雑な3次元形状の木材を圧縮成形しようとすると、凸状部分に過度の引張力が加わって割れ等の不具合を発生しやすく、歩留まりが低下してしまうおそれがあった。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、複雑な3次元形状を有する木材を圧縮成形する際にも割れ等の不具合の発生を防止し、歩留まりを向上させることができる木材成形用金型を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る木材成形用金型は、木材に圧縮力を加えることにより、略均一な肉厚を有する椀状をなし、内側面および外側面が凹部および凸部をそれぞれ有する形状に前記木材を成形する木材成形用金型であって、前記凹部に対応し、当該木材成形用金型による圧縮の後に前記木材を加熱しながら整形することによって得られる加熱整形後形状と略一致した形状をなす金型凸部と、前記凸部に対応し、前記凸部における前記加熱整形後形状よりも表面積が大きく広がった形状をなす金型凹部と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る木材成形用金型は、上記発明において、前記木材の内側面に当接して圧縮力を加えるコア金型と、前記木材の外側面に当接して圧縮力を加えるキャビティ金型と、を含み、前記コア金型および前記キャビティ金型は、前記金型凸部および前記金型凹部をそれぞれ有することを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る木材成形用金型は、上記発明において、前記キャビティ金型が有する前記金型凹部には、開口端付近で内側へ向けて傾斜したテーパ部が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る木材成形用金型によれば、木材に圧縮力を加えることにより、略均一な肉厚を有する椀状をなし、内側面および外側面に凹部および凸部をそれぞれ有する形状にその木材を成形する際、前記凹部に対応し、当該木材成形用金型による圧縮の後に木材を加熱しながら整形することによって得られる加熱整形後形状と略一致する形状をなす金型凸部と、前記凸部に対応し、前記凸部における加熱整形後形状よりも表面積が大きく広がった形状をなす金型凹部とを備えたこととしているため、圧縮の際に木材に引張力が発生するのを抑制することができ、複雑な3次元形状を有する木材を圧縮成形する際にも割れ等の不具合の発生を防止し、歩留まりを向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、本発明の実施の形態1に係る木材成形用金型の構成を示す斜視図である。
【図2】図2は、図1の矢視A方向の平面図である。
【図3】図3は、図1の矢視B方向の平面図である。
【図4】図4は、図1の状態における図2および図3のC−C線断面図である。
【図5】図5は、図1の状態における図2および図3のD−D線断面図である。
【図6】図6は、本発明の実施の形態1に係る木材成形用金型を用いて成形する木材の構成を示す斜視図である。
【図7】図7は、本発明の実施の形態1に係る木材成形用金型を用いて木材を圧縮し始める状態を示す斜視図である。
【図8】図8は、図7のC−C線断面図である。
【図9】図9は、図7のD−D線断面図である。
【図10】図10は、本発明の実施の形態1に係る木材成形用金型を用いて木材を圧縮している途中の状態を示す斜視図である。
【図11】図11は、図10のC−C線断面図である。
【図12】図12は、図10のD−D線断面図である。
【図13】図13は、本発明の実施の形態1に係る木材成形用金型によって木材の変形が完了した状態を示す斜視図である。
【図14】図14は、図13のC−C線断面図である。
【図15】図15は、図13のD−D線断面図である。
【図16】図16は、加熱整形工程の概要を模式的に示す図である。
【図17】図17は、加熱整形工程において木材の変形が完了した状態を模式的に示す図である。
【図18】図18は、本発明の実施の形態2に係る木材成形用金型の構成を示す図である。
【図19】図19は、図18のE−E線断面図である。
【図20】図20は、本発明の実施の形態2に係る木材成形用金型を用いて成形する木材の構成を示す斜視図である。
【図21】図21は、本発明の実施の形態2に係る木材成形用金型を用いて行う木材の圧縮工程の概要を示す図である。
【図22】図22は、圧縮工程によって得られた木材の構成を示す斜視図である。
【図23】図23は、図22の平面Sを切断面として切断した図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態(以下、「実施の形態」という)を説明する。なお、以下の説明で参照する図面は模式的なものであって、同じ物体を異なる図面で示す場合には、寸法や縮尺等が異なる場合もある。
【0013】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る木材成形用金型の構成を示す斜視図である。図2は、図1の矢視A方向の平面図である。図3は、図1の矢視B方向の平面図である。図1〜図3に示す木材成形用金型1は、成形対象の木材を挟持して圧縮力を加える一対のコア金型2およびキャビティ金型3を備える。
【0014】
コア金型2は、圧縮成形後の木材の形状の一部に対応して略柱状に突起する突起部21を有する。突起部21は、ハート型をなす底面と、この底面のハート型において凸状をなす周縁に連なる側面とからなる金型凸部21aと、底面のハート型において凹状をなす周縁に連なる側面からなる金型凹部21bとを含む。図2に示す黒点は、金型凸部21aと金型凹部21bとの境界を示している。
【0015】
キャビティ金型3は、コア金型2の突起部21と対向し、成形対象の木材を嵌入する嵌入部31を有する。嵌入部31は、ハート型をなす底面と、この底面のハート型において凸状をなす周縁に連なる側面とからなる金型凹部31aと、底面のハート型において凹状をなす周縁に連なる側面からなる金型凸部31bとを含む。金型凹部31aの開口面付近には、内側へ向けて傾斜した斜面から成るテーパ部311aが形成されている。テーパ部311aは、ブランク材を嵌入部31の底面へガイドする機能を有している。図3に示す黒点は、金型凹部31aと金型凸部31bとの境界を示している。
【0016】
図4は、図1に示す状態における図2および図3のC−C線断面図である。図5は、図1に示す状態における図2および図3のD−D線断面図である。金型凸部21a、31bは、木材成形用金型1を用いて木材を圧縮成形した後、その木材を加熱しながら整形することによって得られる加熱整形後形状と一致している。一方、金型凹部21b、31aは、加熱成形後形状よりも表面積が大きく広がった形状をなしている。換言すれば、金型凹部21b、31aは、加熱整形を行う際の整形代を含む形状をなしている。図2〜図5に示す破線L1、L2は、金型凹部21b、31aに対応する部分の加熱整形後形状を示している。
【0017】
図6は、木材成形用金型1を用いて成形する木材(以下、「ブランク材」という)の構成を示す斜視図である。同図に示すブランク材4は、無圧縮状態にある無垢材などの原木から切削によって形取られる。原木は、ヒノキ、ヒバ、桐、杉、松、桜、欅、黒檀、紫檀、竹、チーク、マホガニー、ローズウッドなどの中から最適な素材を選択すればよい。
【0018】
ブランク材4は、表面がハート型をなす平板状の主板部41と、主板部41の外縁部から主板部41の表面と略直交する方向に立ち上がって延びる側板部42とを有しており、略均一な肉厚の椀状をなしている。ブランク材4の椀状の内側面の一部をなす側板部42の内周面は、主板部41の縁端部に対応するハート型をなしており、凹部42aと凸部42bとを有する。また、ブランク材4の椀状の外側面の一部をなす側板部42の外周面も内周面と略相似なハート型をなしており、肉厚方向に沿って凹部42aと対向する凸部42cを有するとともに、肉厚方向に沿って凸部42bと対向する凹部42dを有する。凹部42a、42dの形状は、それぞれ対応する金型凸部21a、31bの形状と略等しければより好ましい。以上の構成を有するブランク材4は、圧縮によって減少する分の容積を予め加えた容積を有している。
【0019】
以上の構成を有するブランク材4においては、木材成形用金型1を用いて圧縮成形を行う際に凸部42bおよび42cに引張力が働く可能性があり、割れや裂け等の不具合を生じてしまうおそれがある。このことを回避するために、本実施の形態1においては、凸部42bおよび42cにそれぞれ対応するコア金型2の金型凹部21bおよびキャビティ金型3の金型凹部31aに整形代を設けておき、圧縮の際に凸部42b、42cに圧縮力が加わりやすい状況を実現している。
【0020】
次に、ブランク材4の圧縮工程について説明する。ブランク材4を圧縮する際には、大気よりも高温高圧の水蒸気雰囲気中で所定時間放置して水分を過剰に吸収させることにより、ブランク材4を軟化させる。ここでの水蒸気は、温度が100〜230℃程度であり、圧力が0.10〜3.0MPa(メガパスカル)程度である。このような水蒸気雰囲気は、例えば圧力容器を用いることによって実現することができる。圧力容器を用いる場合には、その圧力容器の中にブランク材4を放置することによって軟化させる。なお、水蒸気雰囲気中でブランク材4を放置して軟化させる代わりに、ブランク材4の表面に水分を供給した後、マイクロウェーブの如き高周波の電磁波によってブランク材4を加熱して軟化させてもよいし、ブランク材4を煮沸して軟化させてもよい。
【0021】
この後、軟化させてブランク材4を上述した水蒸気雰囲気中で一対の金型によって挟持して圧縮力を加えることにより、ブランク材4を変形させる。図7は、木材成形用金型1(コア金型2、キャビティ金型3)によってブランク材4を圧縮し始める状況を示す図である。また、図8は図7のC−C線断面図であり、図9は図7のD−D線縦断面図である。なお、圧力容器の中でブランク材4を軟化させた場合には、引き続きその圧力容器の中でブランク材4を圧縮すればよい。
【0022】
図10〜図12は、木材成形用金型1によってブランク材4を圧縮している途中の状態を示す図であり、コア金型2を下降させてキャビティ金型3へ近づけている状態を示す図である。このうち、図11は図10のC−C線断面図であり、図10は図8のD−D線断面図である。図10〜図12に示す状態で、コア金型2はブランク材4の側板部42の端面に当接し、端面を押圧している。このように端面を押圧しながらブランク材4を徐々に変形させていくことにより、圧縮工程においてブランク材4の割れ等の不具合が発生するのを確実に防止することができる。
【0023】
図13〜図15は、ブランク材4の変形が完了した状態で木材成形用金型1がブランク材4に圧縮力を加えている状態を示す図である。このうち、図14は図13のC−C線断面図であり、図15は図13のD−D線断面図である。図13〜図15に示すように、ブランク材4は、コア金型2およびキャビティ金型3から圧縮力を受けることにより、コア金型2とキャビティ金型3との隙間に相当する3次元形状に変形する。圧縮工程においては、図13〜図15に示す状態で、ブランク材4に所定時間(1〜数十分、より好ましくは5〜10分程度)圧縮力を加え続ける。
【0024】
このようにしてブランク材4を圧縮すると、引張力が発生しやすい凸部42b、42cには小さく縮む方向への圧縮力が作用する。したがって、圧縮時にブランク材4に割れ等の不具合が発生するのを回避することが可能となる。
【0025】
圧縮工程が終了した後、図13〜図15に示す状態を保持したまま、上述した水蒸気よりさらに高温の水蒸気を木材成形用金型1の周囲に加えることにより、ブランク材4の形状を固定化する。この固定化処理を圧力容器中で行う場合には、圧縮工程における水蒸気よりもさらに高温の水蒸気を圧力容器へ吹き込めばよい。
【0026】
続いて、木材成形用金型1およびブランク材4を大気中へ開放することによってブランク材4を乾燥させる。この際には、コア金型2またはキャビティ金型3をブランク材4から離間することによって乾燥を促進させるようにしてもよい。以下、木材成形用金型1によって圧縮し、乾燥させた後のブランク材4を「木材5」という。
【0027】
次に、大気中で木材5に熱を加えながら木材5を整形する。図16は、木材5に熱を加えながら木材5を整形する加熱整形工程の概要を模式的に示す図である。加熱整形工程では、一対の加熱整形用金型であるコア金型6、キャビティ金型7によって木材5を挟持する。
【0028】
図16で木材5の上方に位置するコア金型6は、木材5の窪んでいる側の表面に当接する突起部61を備える。一方、図16で木材5の下方に位置するキャビティ金型7は、木材5の突出している側の表面に当接する嵌入部71を備える。コア金型6およびキャビティ金型7を型締めしたときの隙間の形状は、木材5の加熱整形後形状に対応している。なお、図16における破線L3はコア金型2の金型凹部21bの形状に対応しており、破線L4はキャビティ金型3の金型凹部31aの形状に対応している。
【0029】
コア金型6およびキャビティ金型7の内部には、熱を発生するヒータ62、72がそれぞれ取り付けられている。ヒータ62、72は温度制御機能を有する制御装置8に接続されており、制御装置8の制御のもとで発熱し、コア金型6およびキャビティ金型7にそれぞれ熱を加える。制御装置8は、木材5を挟持している時のコア金型6およびキャビティ金型7の温度が150〜200℃程度の高温で略一定となるようにヒータ62、72をそれぞれ制御する。
【0030】
図17は、加熱整形工程において木材5の形状変化が完了した状態を示す図である。木材5を加熱整形する場合の木材5の形状変化は、ブランク材4における圧縮前後の形状変化と比較して顕著に小さい。換言すれば、木材5を加熱整形する場合の木材5の圧縮率は、木材成形用金型1を用いて行うブランク材4の圧縮率と比較して顕著に小さい。
【0031】
ヒータ62、72によってそれぞれ加熱されたコア金型6およびキャビティ金型7を型締めし、図17に示す状態で所定時間経過させると、木材5の内部にある樹液の一部が木材5の表面にしみ出してきてその表面に深い色合いとつやが生じる。
【0032】
加熱整形工程において木材5をコア金型6、キャビティ金型7によって挟持する時間や各金型の金型温度は、木材5が有する特性や加工後の木材5に付与すべき性質等に応じて定めればよい。なお、ここでいう「木材5が有する特性」には、形状のほか、原材料である原木の種類、産地、生育環境、生育状態なども含まれる。また、「木材5に付与すべき性質」には、成形後の木材5の表面の色合いやツヤ、強度などが含まれる。
【0033】
加熱整形工程の後、木材5の最終形状への仕上げを行う。この仕上げを行う際には、切削によって木材5の端面を揃えたり孔や切り欠きなどを形成したりする。
【0034】
以上説明した木材の成形方法によって圧縮成形された木材5は、様々な用途に使用することができる。例えば、デジタルカメラやICレコーダなどの小型の電子機器の外装体として適用することができるし、食器、各種筐体、建材などにも適用することもできる。このうち、小型の電子機器の外装体として適用する場合には、肉厚が1.6〜2.0mm程度であればより好ましい。
【0035】
以上説明した本発明の実施の形態1に係る木材成形用金型によれば、木材に圧縮力を加えることにより、略均一な肉厚を有する椀状をなし、内側面および外側面に凹部および凸部をそれぞれ有する形状にその木材を成形する際、前記凹部に対応し、当該木材成形用金型による圧縮の後に木材を加熱しながら整形することによって得られる加熱整形後形状と略一致する形状をなす金型凸部と、前記凸部に対応し、前記凸部における加熱整形後形状よりも表面積が大きく広がった形状をなす金型凹部とを備えたこととしているため、圧縮の際に木材に引張力が発生するのを抑制することができ、複雑な3次元形状を有する木材を圧縮成形する際にも割れ等の不具合の発生を防止し、歩留まりを向上させることが可能となる。
【0036】
(実施の形態2)
図18は、本発明の実施の形態2に係る木材成形用金型の構成を示す図である。図19は、図18のE−E線断面図である。これらの図に示す木材成形用金型11は、成形対象の木材を挟持して圧縮力を加える一対のコア金型12およびキャビティ金型13を備える。
【0037】
コア金型12は、圧縮成形後の木材の形状の一部に対応して突起する金型凸部121aと、金型凸部121aの底面の中央部に設けられた金型凹部121bとを有する。キャビティ金型13は、コア金型12の金型凸部121aと対向する金型凹部131aと、金型凹部131aの略中央部に設けられ、コア金型12の金型凹部121bと対向する金型凸部131bとを有する。図19に示す破線L5、L6は、金型凹部121b、131aにそれぞれ対応する部分の加熱整形後形状を示している。この意味で、金型凹部121b、131aは、加熱整形を行う際の整形代を含む形状をなしている。
【0038】
図20は、木材成形用金型11を用いて成形するブランク材の構成を示す斜視図である。同図に示すブランク材14は、上述したブランク材4と同様、無圧縮状態にある無垢材などの原木から切削によって形取られる。ブランク材14は、略長方形の表面を有する平板状の主板部141と、主板部141の表面で対向する二つの長辺部の各々から主板部141に対して湾曲して延在する二つの側板部142と、主板部141の表面で対向する二つの短辺部の各々から主板部141に対して湾曲して延在する二つの側板部143と、を備え、略均一な肉厚を有している。なお、図20における2点鎖線は、ブランク材14の湾曲形状を示すための仮想的な線である。
【0039】
図21は、ブランク材14の圧縮工程の概要を示す図である。ブランク材14を圧縮する際には、上記実施の形態1で説明したのと同様の水蒸気雰囲気中でブランク材14を軟化させた状態で、コア金型12およびキャビティ金型13によってブランク材14を挟持する。この際、図21の矢印の上方に示す状態から図2の矢印の下方に示す状態に達するまでコア金型12を徐々に下降させていく。図21の矢印の下方に示す状態に達した場合、その状態で所定時間経過させた後、ブランク材14を乾燥させる。
【0040】
図22は、上記の如くブランク材14を圧縮することによって得られた木材の構成を示す斜視図である。また、図23は、図22に示す平面Sを切断面として木材を切断した図である。これらの図に示す木材15は、ブランク材14の主板部141および側板部142、143にそれぞれ対応する主板部151および側板部152、153を有する。主板部151の中央部は、外側面側から内側面側にくぼんでいる。このため、木材15の外側面は、くぼんだ凹部15aと、凹部15a以外の表面からなる凸部15bとを有する。一方、木材15の内側面は、凹部15aに対応する凸部15cと、凸部15bに対応する凹部15dとを有する。凹部15a、15dは加熱整形後形状と一致する形状をなしている一方、凸部15b、15cは加熱整形工程における整形代を含んだ形状をなしている。なお、図22および図23における2点鎖線は、木材15の湾曲形状を示すための仮想的な線である。
【0041】
この後、上記実施の形態1と同様に加熱整形工程および仕上げ工程を行うことにより、図22に示す木材15と略同形をなす最終形状が得られる。
【0042】
以上説明した本発明の実施の形態2に係る木材成形用金型によれば、木材に圧縮力を加えることにより、略均一な肉厚を有する椀状をなし、内側面および外側面に凹部および凸部をそれぞれ有する形状にその木材を成形する際、前記凹部に対応し、当該木材成形用金型による圧縮の後に木材を加熱しながら整形することによって得られる加熱整形後形状と略一致する形状をなす金型凸部と、前記凸部に対応し、前記凸部における加熱整形後形状よりも表面積が大きく広がった形状をなす金型凹部とを備えたこととしているため、圧縮の際に木材に引張力が発生するのを抑制することができ、複雑な3次元形状を有する木材を圧縮成形する際にも割れ等の不具合の発生を防止し、歩留まりを向上させることが可能となる。
【0043】
ここまで、本発明を実施するための形態を詳述してきたが、本発明は上述した二つの実施の形態によってのみ限定されるべきものではない。例えば、上述した実施の形態では、金型凸部が加熱成形後形状と一致した形状をなしている場合を説明したが、本発明においては、金型凸部の方が金型凹部よりも加熱成形後形状に近ければよく、必ずしも加熱整形後形状と完全に一致している必要はない。
【0044】
このように、本発明はここでは記載していない様々な実施の形態等を含みうるものであり、特許請求の範囲により特定される技術的思想を逸脱しない範囲内において種々の設計変更等を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0045】
1、11 木材成形用金型
2、6、12 コア金型
3、7、13 キャビティ金型
4、14 ブランク材
5、15 木材
8 制御装置
15a、15d 凹部
15b、15c 凸部
21、61 突起部
21a、31b、121a、131b 金型凸部
21b、31a、121b、131a 金型凹部
31、71 嵌入部
41、141、151 主板部
42、142、143、152、153 側板部
42a、42d 凹部
42b、42c 凸部
62、72 ヒータ
311a テーパ部
S 平面
【特許請求の範囲】
【請求項1】
木材に圧縮力を加えることにより、略均一な肉厚を有する椀状をなし、内側面および外側面が凹部および凸部をそれぞれ有する形状に前記木材を成形する木材成形用金型であって、
前記凹部に対応し、当該木材成形用金型による圧縮の後に前記木材を加熱しながら整形することによって得られる加熱整形後形状と略一致した形状をなす金型凸部と、
前記凸部に対応し、前記凸部における前記加熱整形後形状よりも表面積が大きく広がった形状をなす金型凹部と、
を備えたことを特徴とする木材成形用金型。
【請求項2】
前記木材の内側面に当接して圧縮力を加えるコア金型と、
前記木材の外側面に当接して圧縮力を加えるキャビティ金型と、
を含み、
前記コア金型および前記キャビティ金型は、
前記金型凸部および前記金型凹部をそれぞれ有することを特徴とする請求項1記載の木材成形用金型。
【請求項3】
前記キャビティ金型が有する前記金型凹部には、開口端付近で内側へ向けて傾斜したテーパ部が設けられていることを特徴とする請求項2記載の木材成形用金型。
【請求項1】
木材に圧縮力を加えることにより、略均一な肉厚を有する椀状をなし、内側面および外側面が凹部および凸部をそれぞれ有する形状に前記木材を成形する木材成形用金型であって、
前記凹部に対応し、当該木材成形用金型による圧縮の後に前記木材を加熱しながら整形することによって得られる加熱整形後形状と略一致した形状をなす金型凸部と、
前記凸部に対応し、前記凸部における前記加熱整形後形状よりも表面積が大きく広がった形状をなす金型凹部と、
を備えたことを特徴とする木材成形用金型。
【請求項2】
前記木材の内側面に当接して圧縮力を加えるコア金型と、
前記木材の外側面に当接して圧縮力を加えるキャビティ金型と、
を含み、
前記コア金型および前記キャビティ金型は、
前記金型凸部および前記金型凹部をそれぞれ有することを特徴とする請求項1記載の木材成形用金型。
【請求項3】
前記キャビティ金型が有する前記金型凹部には、開口端付近で内側へ向けて傾斜したテーパ部が設けられていることを特徴とする請求項2記載の木材成形用金型。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【公開番号】特開2011−11445(P2011−11445A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−157172(P2009−157172)
【出願日】平成21年7月1日(2009.7.1)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年7月1日(2009.7.1)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】
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