説明

木材用塗料組成物

【課題】消防法上の危険物第4類第2石油類に該当する従来の油性の木材保護塗料の特徴である性能と塗り易さを維持しながら、該第4類第2石油類より引火性が低く、しかも環境汚染の問題を生じることのない木材用塗料組成物を提供する。
【解決手段】アクリル樹脂、添加剤および溶剤を含有する塗料であって、揮発成分である溶剤が引火点70℃以上200℃未満の範囲のもののみで構成されていることを特徴とする木材用塗料組成物であり、この場合、アクリル樹脂が10〜30重量%の範囲内で含有されているのが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、木材保護塗料に関し、特に、木材の防腐、防カビ等のために用いられる油性の木材保護塗料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、木材保護塗料は、住宅、建築物および家具などに木目や木肌を活かした半透明の着色と、防腐および防カビを目的とした塗装に、広く一般に使用されている。その木材保護塗料は水性と油性の2種類の商品が、ホームセンターなどで販売されている。
【0003】
水性の木材保護塗料は、消防法上の非危険物に該当するので安全性は高いが、水性のためカビが生え易い、顔料の沈殿防止に使用する増粘剤の影響で木材の内部への浸透性が悪い、また、冬場など気温が低い時に造膜し難い、さらには、塗装後に短時間で降雨があった場合には塗膜が流れるといった性能面での問題がある。
【0004】
逆に、油性の木材保護塗料は、性能面での問題はなく非常に塗り易く木材保護塗料の主流ではあるが、消防法上の第4類第2石油類に該当する危険物であり、引火点が70℃未満で引火性が高い。そのため、それ以上の数量の貯蔵等には所定の基準を満たした危険物施設を必要とする消防法上の指定数量が1000Lであり、さらにその1/5以上である200L以上の貯蔵等も消防法上「少量危険物」に該当して種々の法規制がある結果、そのような規制を受けずに行い得るホームセンターなどの店頭販売における貯蔵、取り扱いは200L未満に限定されるという制限があった。そのため、店頭には空缶を陳列しているホームセンターもあり、注文がある度に倉庫まで走って取りに行かなければならないという煩雑さが問題であった。
【0005】
一方、消防法上の危険物第4類第3石油類に該当する溶剤の使用は、引火点が70℃以上であり前記第4類第2石油類より引火性は高くなるが、高沸点であって溶剤の乾燥に長時間を要するため、従来、木材保護塗料用溶剤としては殆ど検討対象にもされておらず、僅かに、イソプロピルブロマイド及びノルマルプロピルブロマイドを主成分として含有する溶剤第1成分と危険物第4類第3石油類のN−メチルピロリドンを溶剤第2成分として用いたプラスチック用溶剤組成物の開示が認められる程度である(例えば、特許文献1参照)。しかし、この場合、ハロゲン化物を揮発溶剤として使用しているため、環境汚染の問題が懸念される。
【特許文献1】特開平11−172290公報、段落0019〜0023。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、この発明は、このような事情に鑑みなされたもので、第4類第2石油類に該当する従来の油性の木材保護塗料の特徴である性能と塗り易さを維持しながら、該第4類第2石油類より引火性が低く、しかも環境汚染の問題を生じることのない木材用塗料組成物を提供して、より安全で、かつ前記空缶での店頭陳列など販売時の煩雑さを著しく改善することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、(1)一般に、鉄板などに塗装した塗料は塗膜の表面からのみ溶剤が蒸発して乾燥するのに対して、木材に塗装した場合は塗料中の溶剤分が塗膜表面のみならず木材の内部にも浸透して乾燥を促進すること、また、(2)一般の塗料は、塗膜の性能を維持するため膜厚を1平方メートル当たり25ミクロン程度/回塗装するのに対して、木材保護塗料の場合は、木目や木肌を活かすため、また、木材の伸縮による塗膜のワレを防止するため、1平方メートル当たり10ミクロン程度/回という薄膜であることに着目し、鋭意研究した結果、塗膜形成成分としてアクリル樹脂を用いた場合に、揮発成分の溶剤が消防法の第4類第3石油類に該当する引火点70℃以上200℃未満の溶剤だけを溶剤として用いても、溶剤の乾燥時間等を含む塗料の性能が、引火点が70℃未満の従来の塗料とほぼ同等である塗料組成物が得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明のうち第1の発明は、アクリル樹脂、添加剤および溶剤を含有する塗料であって、揮発成分である溶剤が引火点70℃以上200℃未満の範囲内にあるもののみで構成されていることを特徴とする木材用塗料組成物である。
【0009】
揮発成分である溶剤は、塗膜形成成分であるアクリル樹脂の溶解、希釈に用い、木材保護塗料を薄く塗装するのに不可欠な成分であるが、ここで「引火点70℃以上200℃未満の範囲のもの」とは、消防法上の危険物第4類第3石油類に該当する溶剤を意味し、次の様な石油系有機溶剤が挙げられる。
【0010】
例えば、市販されているものとして、スワゾール1800(芳香族系、蒸留範囲196〜247℃、引火点77℃、丸善石油化学(株)製)、ソルベッソ200(芳香族系、蒸留範囲226〜286℃、引火点100℃、エクソンモービル(有)製)、ハイゾールSAS296(芳香族系、蒸留範囲290〜305℃、引火点152℃、新日本石油(株)製)、ナフテゾール200(ナフテン系、蒸留範囲201〜217℃、引火点74℃、新日本石油(株)製)、ナフテゾールMS−20P(ナフテン系、蒸留範囲194〜220℃、引火点71℃、新日本石油(株)製)、アルケンL(アルキルベンゼン、蒸留範囲285〜309℃、引火点152℃、新日本石油(株)製)が挙げられる。そのほかに、カクタスソルベントP−180(日鉱石油化学(株)製)、サートレックス60(エクソンモービル(有)製)、アイソパーM(エクソンモービル(有)製)、エクソールD110(エクソンモービル(有)製)、エクソールD130(エクソンモービル(有)製)なども挙げられる。
【0011】
いずれも、高沸点溶剤(例えば、スワゾール1800は、蒸留範囲が196〜247℃の溶剤)であるが、これらのうち、乾燥性の面からは上記蒸留範囲(初留点〜乾点)の乾点が低いものが好ましく、また、塗膜形成成分の溶解性という面からは芳香族系の溶剤が好ましい。
【0012】
これらの高沸点溶剤は、塗膜形成成分の溶解性に問題のない範囲で、単独または2種以上併用することができる。また、これらの高沸点溶剤の好ましい配合割合は、木材用塗料組成物の全重量中、60〜90重量%であり、より好ましくは、70〜85重量%とするのが良い。
【0013】
本発明において、アクリル樹脂は、塗膜形成成分であり、木材保護塗料で塗装された木材の表面を保護する機能を有する。作業性とコストの面からは、1液の常温乾燥タイプとして用いるのが好ましい。また、本発明の木材用塗料組成物において、アクリル樹脂は10〜30重量%の範囲内で含有されているのが好ましい(第2発明)。30重量%を超えると塗膜の中間層に含まれる高沸点溶剤が抜け難くなって乾燥しにくくなる傾向にあり、10重量%未満では塗膜形成による木材保護が損なわれる傾向にあるからである。なお、アクリル樹脂は、高沸点溶剤の乾燥性と木材保護の観点から、より好ましくは10〜20重量%の範囲内で含有されているのが良い。
【0014】
本発明に用いる添加剤の1つは、撥水剤である。撥水剤は、木材の表面に撥水性を付与するものであればよいが、具体的には、ポリエチレンワックス、パラフィンワックスおよび酸化ポリオレフィンワックスなどが例示される。好ましいのは、パラフィンワックスであり、融点が30〜70℃、好ましくは30〜50℃のものを選択すると良い。また、第1発明、第2発明の木材用塗料組成物において、撥水剤は0.5〜3重量%の範囲内で含有されているのが好ましい。3重量%超えても、撥水効果の向上はほとんどなく、0.5重量%未満では撥水効果が不十分となるからである。なお、撥水剤は、より好ましくは1〜2重量%の範囲内で含有されているのが良い。
【0015】
また、本発明に用いる添加剤の1つは、着色剤である。着色剤は、木材を好みの色に着色するものであり、具体的には、カーボンブラック、酸化チタン、黄色酸化鉄、赤色酸化鉄、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーンなどの無機系、有機系の顔料が例示される。これらの着色剤は、単独または2種以上併用することができる。着色剤の好ましい配合割合は、木材用塗料組成物の全重量中、0.5〜5重量%であり、より好ましくは、1〜3重量%とするのが良い。ただし、着色剤の配合割合は0重量%にして、木材保護塗料の色相をクリヤーにしてもよい。
【0016】
また、本発明に用いる添加剤の1つは、防蟻防腐剤である。防蟻防腐剤は、木材に防蟻防腐防カビ性を付与するものであり、具体的には、有機ヨード系化合物、トリアゾール系化合物、スルファミド系化合物、四級アンモニウム化合物などの防腐防カビ剤と、ピレスロイド系化合物、ネオニコチノイド系化合物などの防虫剤が例示される。これらは、単独または2種以上併用することができる。防蟻防腐剤の好ましい配合割合は、木材用塗料組成物の全重量中、1〜5重量%であり、より好ましくは、2〜3重量%とするのが良い。
【0017】
さらに、本発明においては、本発明の効果を阻害しない範囲で、例えば、分散剤、紫外線吸収剤、タレ止め剤、沈降防止剤、消泡剤、つや消し剤などの公知の添加剤を添加することができる。なお、以上の各種添加剤は、単独で用いても良く、または2種以上を混合して用いても良い。
【発明の効果】
【0018】
第1発明の木材用塗料組成物は、従来の第4類第2石油類に該当する木材保護塗料よりも高沸点で引火性が低く、より安全で扱い易い、消防法上の第4類第3石油類に該当するものの、以下の実施例に示すように、従来の油性の木材保護塗料の特徴である溶剤の乾燥時間等を含む塗料の性能と塗り易さを維持することができ、また、各種添加剤の添加効果も、溶剤として従来の第4類第2石油類を用いた場合と同じであった。その結果、第1発明の木材用塗料組成物によれば、消防法上の第4類第3石油類に該当するため、指定数量が従来の第4類第2石油類の2倍の2000Lとなるので、その1/5の400L未満の貯蔵等であれば消防法上「少量危険物」に該当しないことになり、ホームセンターなどでの店頭陳列限度を従来の2倍の400L未満にできることから、より安全で、かつ前記空缶での店頭陳列など販売時の煩雑さを著しく改善できるメリットがあり、さらに、ハロゲン化物を含まないため、環境汚染の問題も生じることもない。
【0019】
また、第2発明によれば、塗膜形成成分としてのアクリル樹脂の配合量を10〜30重量%の範囲内と低くすることにより、溶剤の乾燥速度を速めつつ、木材保護塗料の場合は、木目や木肌を活かすため、また、木材の伸縮による塗膜のワレを防止するため、1平方メートル当たり10ミクロン程度/回という薄膜にするというニーズに対応できる。
【実施例】
【0020】
つぎに、実施例を挙げ、本発明をより詳細に説明するが、これらは本発明を実施するための具体例とその結果(効果)を示す一例に過ぎず、本発明はこれらの実施例に何ら制約されるものではない。
【0021】
(実施例1)
表1に示す実施例1の配合成分と配合量において、(1)着色剤として「カーボンブラックMA100の0.05重量部、タロックスLL−XLOの1.6重量部、タロックスR−516−Lの0.35重量部」、アクリル樹脂溶液として「ヒタロイド1152SWの6重量部」、溶剤として「スワゾール1800の2重量部」をディスパーでプレミックスした後、サンドミルを用いて分散し、ミルベース10重量部を得、(2)別途、撥水剤として「パラフィンワックス115の1重量部」と溶剤として「スワゾール1800の9重量部」をディスパーで混合してワックス液10重量部を得た。(3)最後に、アクリル樹脂溶液として「ヒタロイド1152SWの20重量部」、溶剤として「スワゾール1800の57重量部」をディスパーで攪拌しながら、前記(2)のミルベース10重量部、前記(3)のワックス液10重量部、および防蟻防腐剤として「ホートキシンCTFの3重量部」を添加し、混合して木材用塗料組成物(塗装後の外観はキャメル色)を調整した。
【0022】
(実施例2)
表1に示す実施例2の配合成分と配合量の組成物であり、次のように調整して得た。すなわち、実施例1(1)において、着色剤のカーボンブラックMA100の0.05重量部を0.1重量部に変更し、着色剤のタロックスLL−XLOの1.6重量部を0.6重量部に変更し、着色剤のタロックスR−516−Lの0.35重量部を1.3重量部に変更し、実施例1(1)〜(3)において、溶剤のスワゾール1800の68重量部のうち30重量部を溶剤のソルベッソ200に変更して、実施例1と同様の操作で木材用塗料組成物(塗装後の外観はチーク色)を調整した。
【0023】
(実施例3)
表1に示す実施例3の配合成分と配合量において、撥水剤として「パラフィンワックス115の1重量部」、溶剤として「スワゾール1800の9重量部」をディスパーで混合してワックス液10重量部を得た。次に、アクリル樹脂の溶液であるヒタロイド1152SWの30重量部、溶剤であるスワゾール1800の57重量部をディスパーで攪拌しながら、前記のワックス液10重量部、および防蟻防腐剤であるホートキシンCTFの3重量部を添加し、混合して木材保護塗料クリヤー色を調整した。
【0024】
【表1】

【0025】
(比較例1)
アクリル樹脂溶液のヒタロイド1152SWをヒタロイド1152(アクリル樹脂、中沸点溶剤ミネラルスピリットの50重量%溶液、日立化成工業(株)製)に変更し、溶剤のスワゾール1800を溶剤のミネラルスピリットA(ミネラルスピリット、脂肪族系中沸点溶剤(蒸留範囲150〜200℃)、引火点43℃、新日本石油(株)製)に変更した以外は、実施例1と同一の配合成分を、それぞれ同一重量部配合し、実施例1と同様の操作で消防法上の第4類第2石油類に該当する木材用塗料組成物(塗装後の外観はキャメル色)を調整した。
【0026】
(比較例2)
市販の油性の木材保護塗料、商品名アウトドアステイン(アクリル樹脂系、キャメルウッド色、ケミプロ化成(株)製)を比較例2として用いた。なお、この商品には第4類第2石油類に該当すること、及び撥水剤、防腐剤の配合が表示されている。
【0027】
(比較例3)
同様に、市販の油性の木材保護塗料、商品名キシラデコール(アルキド樹脂系、チーク色、日本エンバイロケミカルズ(株)製)を比較例3として用いた。なお、この商品には第4類第2石油類に該当すること、及び撥水剤、防腐剤の配合が表示されている。
【0028】
(比較例4)
比較例3の商品名キシラデコール(アルキド樹脂系、チーク色、日本エンバイロケミカルズ(株)製)100gに含まれている溶剤約70gを、窒素雰囲気下で、大部分蒸発させ、スワゾール1800の60gを加えて溶液とする溶剤置換を行って調整し、これを比較例4として用いた。溶剤置換の結果、比較例4の溶剤は、約85重量%が第3石油類のスワゾール1800となるが、約15重量%程度の第2石油類が残留して混入されている。
【0029】
実施例1〜実施例3及び比較例1〜比較例4の木材用塗料組成物の性能評価を次のようにして行った。
【0030】
1.試験片の作製
実施例1〜3および比較例1〜2で得られた木材保護塗料を柾目の杉板(長さ150mm、幅70mm、面積1.05dm2)に幅30mmの試験用刷毛を用いて、0.7mL塗布し、室温で2〜4時間乾燥させた後、再度0.7mL塗布して試験片とした。比較例3、4は、室温で24時間乾燥させた後、再度0.7mL塗布して試験片とした。
【0031】
2.性能評価1
実施例1〜3および比較例1〜4の試験片を、室温で3日間乾燥させた後、それらの外観、刷毛作業性、透明感、撥水性および乾燥性についての以下の評価を行った。その結果を表2に示す。なお、表2において、乾燥形態が「酸化重合」とは、溶剤揮発によってある程度は乾燥するが、硬化乾燥には塗膜形成成分の酸化重合が必要ということを意味する。また、表2において、溶剤が(高沸点)とは蒸留範囲が196〜247℃以上であることを意味し、溶剤が(中沸点)とは該高沸点溶剤よりも蒸留範囲が低い溶剤(例えば比較例1の溶剤の蒸留範囲は150〜200℃)であることを便宜的に示す。
【0032】
(1)外観
塗装面の色調を目視観察して評価した。
○:色調が鮮やか。(屋外暴露後は、色調の変化なし。)
△:色調が少し不鮮明。(屋外暴露後は、色調の変化が少しあり。)
×:色調にボケがある。(屋外暴露後は、色調の変化が大きい、または退色あり。)
(2)刷毛作業性
刷毛塗り時の、刷毛のすべり、塗料の伸びなどの塗り易さを評価した。
○:非常に塗り易い。
△:刷毛のすべり、または、塗料の伸びのどちらかに問題がある。
×:刷毛がすべり、塗料の伸びも悪く塗り難い。
(3)透明感
塗装面の透明感を木目の見え具合で目視観察して評価した。
○:半透明で、木目が鮮やかに見える。
△:少し不透明で、木目がボケて見える。
×:不透明で、木目が見えない。
(4)撥水性
塗装面に、水滴を垂らした時の状態を目視観察して評価した。
○:丸味のある水滴状態が保持された。
△:やや丸みに欠ける水滴状態を発現した。
×:丸みが無く、水滴が広がった。
(5)乾燥性
JIS法に準じて、次の基準で乾燥時間を測定した。
指触乾燥:塗装面の中央に触れてみて、指先が塗料で汚れない状態。
硬化乾燥:塗装面を親指と人差し指で強く挟んでも、指紋によるへこみがつかず、
また、塗装面を繰り返し擦っても、摺り痕がつかない状態。
【0033】
【表2】

【0034】
表2に示すように、実施例1,3の溶剤は高沸点溶剤(蒸留範囲が196〜247℃)であるにも拘わらず、塗膜形成成分としてアクリル樹脂を用いた場合には、該アクリル樹脂の溶剤として脂肪族系中沸点溶剤(例えば、蒸留範囲150〜200℃)を用いた比較例1,2と硬化乾燥時間は同じ16時間である。また、指触乾燥時間も4時間程度であり、良好であるといえる。さらに、実施例1の溶剤のスワゾール1800(蒸留範囲が196〜247℃)の68重量部のうち30重量部を溶剤のソルベッソ200(蒸留範囲が226〜286℃)に変更して用いた実施例2の場合は、乾点が高くなるので、指触乾燥時間、硬化乾燥時間は増大するが、それでも、それぞれ、6時間、24時間程度であり、実用上問題は生じない。また、外観、刷毛作業性、添加剤として撥水剤を用いた場合の撥水性についても、実施例1〜3は、従来の第2石油類を溶剤として用いた比較例1,2と同等である。
【0035】
一方、塗膜形成成分としてアルキド樹脂を用いた場合には、比較例4に示すように、実施例1、3で用いた高沸点溶剤(蒸留範囲が196〜247℃)を溶剤の85重量%として用いると、この場合、従来の第2石油類が15重量%混入して、実施例1,3の場合よりも沸点が若干低下していると考えられるにも拘わらず、従来の第2石油類を溶剤として用いた比較例3に比べて、硬化乾燥時間が著しく増大し72時間程度にもなる。また、指触乾燥時間も36時間程度となり、実用上問題となる。
【0036】
3.性能評価2
実施例1、実施例2、比較例2および比較例3の試験片を室温で7日間乾燥させた後、南面の屋外にて、垂直暴露試験を6ヶ月間に亘って実施し、試験後の状態を評価した。外観、透明感および撥水性の評価方法は性能評価1と同様に実施し、防カビ性についても評価した。その結果を表3に示す。
【0037】
(6)防カビ性
○:カビの発生なし。
△:試験片の上面にわずかにカビが発生。
×:試験片の1/3以上の面積にカビが発生。
【0038】
【表3】

【0039】
実施例1および実施例2の木材用塗料組成物は、同じアクリル樹脂を塗膜形成成分として用いた比較例2に比べ、外観、透明感が同じであり、添加剤として、撥水剤、防蟻防腐剤を用いた場合の、撥水性、防カビ性も同等であることを示すと共に、アルキド樹脂を塗膜形成成分として用いた比較例3に比べれば、外観、透明感、撥水性が優れていることを示している。
【0040】
4.性能評価3
実施例1および実施例3の木材保護塗料を、住友金属テクノロジー(株)に依頼して、クリーブランド開放式引火点測定器により引火点を測定した。実施例1の引火点は92℃、実施例3の引火点は86℃という結果であった。この結果は、本発明の木材用塗料組成物は、消防法上の危険物第4類第3石油類に該当することを示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル樹脂、添加剤および溶剤を含有する塗料であって、揮発成分である溶剤が引火点70℃以上200℃未満の範囲内にあるもののみで構成されていることを特徴とする木材用塗料組成物。
【請求項2】
アクリル樹脂が10〜30重量%の範囲内で含有されていることを特徴とする請求項1記載の木材用塗料組成物。

【公開番号】特開2009−51986(P2009−51986A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−221976(P2007−221976)
【出願日】平成19年8月29日(2007.8.29)
【出願人】(591282766)南海化学工業株式会社 (4)
【Fターム(参考)】