説明

木目模様を有する木質繊維板の製造方法

【課題】木目模様を有する木質繊維板を製造する方法を提供する。
【解決手段】木質繊維板の表面に木目模様賦型用のエンボス版を押圧することを特徴とする、片面又は両面に木目模様を有する木質繊維板の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木目模様を有する木質繊維板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
木質繊維板は、木質系廃棄物を利用して再生できるため、従来から多用されており、その用途は、建築材、家具、机、楽器、玩具等など多岐に及ぶ。
【0003】
その製造方法としては、新規な木材片を粉砕または切削して調整した新規原料と既存の木質繊維板を粉砕して調整した再生原料とを用い、それらを接着剤により一体に熱圧成形して製造することを特徴とする製造方法が提供されている(特許文献1)。
【特許文献1】特開2003−311718号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、木目模様を有する木質繊維板を製造する方法を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、鋭意研究を重ねた結果、特定の製造方法によれば、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明は、下記の製造方法に係る。
【0007】
1.木質繊維板の表面に木目模様賦型用のエンボス版を押圧することを特徴とする、片面又は両面に木目模様を有する木質繊維板の製造方法。
【0008】
2.木質繊維板の表面に形成された木目模様を着色する工程を更に有する、上記項1に記載の製造方法。
【0009】
3.木目模様を着色する工程が、インキ転写フィルムを接触させることにより木目模様を着色する工程である、上記項2に記載の製造方法。
【0010】
4.木目模様を着色する工程が、木目模様を有する表面にインキを塗布後、木目模様の凹部以外に付着したインキを掻き取ることにより、木目模様を着色する工程である、上記項2に記載の製造方法。
【0011】
5.上記項1〜4のいずれかに記載の製造方法によって製造される、片面又は両面に木目模様を有する木質繊維板。
【発明の効果】
【0012】
本発明の製造方法によれば、木質繊維板の片面又は両面に木目模様の凹凸を付することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の片面又は両面に木目模様を有する木質繊維板の製造方法は、木質繊維板の表面に木目模様賦型用のエンボス版を押圧することを特徴とする。以下、これについて説明する。
【0014】
本発明で用いる木質繊維板は、特に制限されず、市販のものを使用することができる。一般に木質繊維板は、植物繊維等を主原料として結合剤等を添加し、圧縮成型されるものである。例えば、0.35g/cm3程度以下の低密度繊維板(LDF)、0.35〜0.8g/cm3程度の中密度繊維板(MDF)、0.8g/cm3程度以上の高密度繊維板(HDF)のほか、パーティクルボード等が挙げられる。これらの中でも、MDFが好ましい。
【0015】
上記木質繊維板の主原料としては、例えば、杉、松、檜、カラ松、赤松、トド松等の針葉樹、ラワン、カポール、ポプラ、ヤナギ、欅等の広葉樹などが挙げられる。
【0016】
また、これらは、これらはチップ状で圧縮成型されたものであってもよく、繊維状で圧縮成型されたものであってもよい。
【0017】
結合剤も限定的でなく、例えば、尿素−ホルムアルデヒド樹脂接着剤、パラフィンエマルジョン等が挙げられる。
【0018】
上記木質繊維板の片面又は両面に木目模様賦型用のエンボス版を押圧する。これにより、木質繊維板の片面又は両面に木目模様が賦形される。また、木質繊維板1枚単独の状態で押圧してもよく、また、複数積層されている状態で押圧してもよい。
【0019】
本発明で得られるエンボス版には、木目模様の凹凸形状が形成されている。木目模様としては、木目導管模様、浮造模様(浮出した年輪の凹凸模様)等が挙げられる。
【0020】
エンボス版の材質は特に制限されない。例えば、銅、鉛、鉄等の金属又はこれらの合金などが挙げられる。
【0021】
木目の最大深さは、特に制限されず、製品用途によって適宜決定される。
【0022】
また、得られる木質繊維板の木目の最大深さも特に制限されず、製品用途によって適宜決定される。
【0023】
押圧する圧力は限定的でなく、押圧される木質繊維板の密度等によって適宜設定できるが、例えば、MDFに押圧する場合、通常100〜200g/cm2程度、好ましくは120〜150g/cm2程度である。
【0024】
必要に応じて、エンボス版を加熱しながら行ってもよい。加熱温度は特に制限されないが、通常250〜300℃程度、好ましくは250〜270℃程度である。加熱することにより、容易に木質繊維板に凹凸模様を賦形しやすくなる。
【0025】
本発明の製造方法は、エンボス版を押圧した後、必要に応じて、木目模様の凹凸部を着色する工程を含んでいてもよい。着色の方法としては、例えば、木目模様を有する表面にインキを塗布後、木目模様の凹部以外に付着したインキを掻き取る方法;インキ転写フィルムを接触させる方法などが挙げられる。
【0026】
塗布するインキは、例えば、公知の着色剤(染料又は顔料)をバインダー樹脂とともに溶剤(又は分散媒)中に溶解(又は分散)させて得られる。
【0027】
着色剤としては、チタン白、カーボンブラック、鉄黒、弁柄、黄鉛、群青等の無機顔料、アニリンブラック、キナクリドンレッド、イソインドリノンイエロー、フタロシアニンブルー等の有機顔料、二酸化チタン被覆雲母、アルミニウム等の箔粉等の光輝性顔料等のほか、各種の染料を使用することができる。
【0028】
また、インキに用いるバインダー樹脂としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、電離放射線硬化性樹脂等の公知のバインダーの中から、要求される物性、印刷適性等に応じて適宜選択すれば良い。例えば、ニトロセルロース、酢酸セルロース、セルロースアセテートプロピオネート等のセルロース系樹脂;ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸ブチル−(メタ)アクリル酸2ヒドロキシエチル共重合体等のアクリル樹脂のほか、ウレタン樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂等の単体又はこれらを含む混合物を用いることができる。
【0029】
溶剤(又は分散媒)としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の石油系有機溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸−2−メトキシエチル、酢酸−2−エトキシエチル等のエステル系有機溶剤;メチルアルコール、エチルアルコール、ノルマルプロピルアルコール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール系有機溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系有機溶剤;ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル系有機溶剤;ジクロロメタン、四塩化炭素、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン等の塩素系有機溶剤;水等の無機溶剤などが挙げられる。これらの溶剤(又は分散媒)は、単独又は2種以上を混合して使用できる。
【0030】
木目模様の凹部以外のインキを掻き取る方法としては、例えば、ドクターロール、ドクターブレード等の掻き取り機を用いればよい。
【0031】
インキ転写フィルムにより木質繊維板を着色する場合、当該インキ転写フィルムは、特に限定されず、従来公知のものが使用できる。例えば、カールフィット等の水圧転写のほか、PETフィルム転写などが挙げられる。なお、転写されるインキが木目模様の凹凸に同調するように着色すればよい。
【実施例】
【0032】
以下に実施例を示し、本発明をより具体的に説明する。但し、本発明は実施例に限定されない。
【0033】
実施例1
木質繊維板として、中密度繊維体(「Mタイプ」、セイホク(株)製)縦2400mm×横1200mm×高さ(厚み)6mmを用いた。
【0034】
この木質繊維板の上面から、木目導管模様賦型用のエンボス版を押圧することにより、木質繊維板の上面に木目導管模様の凹凸を付した。
【0035】
次いで、水性ウレタン塗料(「ドルフィン」、サンユーペイント(株)製)を上記木質繊維板表面に塗布した後、ドクターロールにて、表面の凹部以外のインキを掻き取り、凹部に着色インクを形成させて、所望の木質繊維板を製造した。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
木質繊維板の表面に木目模様賦型用のエンボス版を押圧することを特徴とする、片面又は両面に木目模様を有する木質繊維板の製造方法。
【請求項2】
木質繊維板の表面に形成された木目模様を着色する工程を更に有する、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
木目模様を着色する工程が、インキ転写フィルムを接触させることにより木目模様を着色する工程である、請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
木目模様を着色する工程が、木目模様を有する表面にインキを塗布後、木目模様の凹部以外に付着したインキを掻き取ることにより、木目模様を着色する工程である、請求項2に記載の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法によって製造される、片面又は両面に木目模様を有する木質繊維板。



【公開番号】特開2006−272777(P2006−272777A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−95940(P2005−95940)
【出願日】平成17年3月29日(2005.3.29)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】