木質ボードの製造方法とその装置
【課題】木材原料からなるマット内で発生した水蒸気をマット内部および/又はその近傍に滞留させることによりマット中心部をも急速に高温化し、短時間で結合剤を硬化させて、厚物ボードも含めた木質ボードを低廉な製造コストの下に熱圧成形する。
【解決手段】次の工程からなる木質材料の製造方法を提供して上記課題を解決する。
イ:木材原料の集合体に結合剤を塗布または撒布する工程
ロ:前記工程で結合剤が塗布または撒布された前記木材原料を所定のマット状にフォーミングする工程、
ハ:次いで、フォーミングされた木材原料によるマットを、密閉空間内で熱圧しマット内の木材原料から発生する水蒸気を密閉空間内に滞留させて飽和水蒸気圧を高めることにより、マット中心部の温度を急激に高めてマット内の結合剤を急速に硬化させ木質ボードを得る工程。
【解決手段】次の工程からなる木質材料の製造方法を提供して上記課題を解決する。
イ:木材原料の集合体に結合剤を塗布または撒布する工程
ロ:前記工程で結合剤が塗布または撒布された前記木材原料を所定のマット状にフォーミングする工程、
ハ:次いで、フォーミングされた木材原料によるマットを、密閉空間内で熱圧しマット内の木材原料から発生する水蒸気を密閉空間内に滞留させて飽和水蒸気圧を高めることにより、マット中心部の温度を急激に高めてマット内の結合剤を急速に硬化させ木質ボードを得る工程。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、マット状に形成された木材原料の集合体を結合剤とともに熱圧して結合剤を急速に硬化させて木質ボードを製造する方法ならびにその装置に関し、なお詳しくは、熱圧時に木質原料内部から発生する水蒸気をマット内および/又はマット近傍に滞留させた状態に保ちつつ熱圧することにより、マット内部の木材原料を急激に高温高圧化して結合剤を急速硬化させて効率的に木質ボードを製造する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
木材を繊維状や小片状に加工し、これに結合剤を加えて成形した木質材料は、ファイバーボードやパーティクルボード等と呼ばれ、総称して木質ボードと呼ばれている。
これらの木質ボードは、木材繊維や木材小片に、フェノール樹脂等の結合剤を添加してマット状に成形し、成形によって得られたマットを、結合剤の硬化温度まで加熱しながら加圧する、いわゆる熱圧成形法によって製造される。このような熱圧成形のために用いられる装置としては、ホットプレス装置が広く用いられている。
【0003】
ホットプレス装置は、加圧定盤を加熱し、加圧定盤の表面からの熱供給によってマットを加熱しながら加圧するものである。 ところが、マットの内部には繊維や小片の空隙が多いため、マットの中心部にまで熱が伝わるのに時間がかかるため、必然的に結合剤の硬化に時間を要し、従来のホットプレス装置で木質ボードを製造するには生産性の点で問題があった。 また、従来のホットプレス装置では、マットの中心部の温度上昇に時間がかかるので、厚物、例えば厚さ30mm以上のいわゆる厚物ボードの製造は困難であった。
【0004】
そこで、近年、マットの中心部に早く熱を伝えて熱圧時間を短縮するために、蒸気噴射プレス、高周波プレスなどが開発されている。 例えば、蒸気噴射プレスでは、加圧定盤に設けられたノズルから噴射された蒸気が、マット内の空隙を通ってマット全体に拡散して熱を伝えるため、マットの中心部まですばやく加熱され、マット全体が短時間で結合剤の硬化温度に達する。そのため、熱圧成形に要する時間を短縮できるようになっている。
そして、マットの中心部まですばやく加熱されるから、上記の厚物ボードの製造も容易になっている。
【0005】
なお、本願発明に関連する技術が以下のような文献において開示されている。
【特許文献1】特開平4−1404号公報
【特許文献2】特開平7−299810号公報
【特許文献3】特開平8−57803号公報
【特許文献4】特開2003−276011号公報
【特許文献5】特開2008−87372号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、蒸気噴射プレスや高周波プレスは構造が複雑かつ大型であるため、その価格は非常に高額なものとなっており、その導入には多額の資金が必要となる。したがって、蒸気噴射プレスによる木質ボードの製造コストは高額とならざるを得なので、結果的に製造に要するトータルコストは生産性に劣る従来のホットプレス装置による場合とあまり変わることがないという不都合がある。
【0007】
本願発明は、簡便な構成により木材原料の集合体により形成したマットの熱圧成形に際して、マット内の木材原料から発生した水蒸気を外部に放散させず、マット内部および/又はその近傍に滞留させることによりマット中心部をも急速に高温化し、短時間で結合剤を硬化させて、厚物ボードも含めた木質ボードを低廉な製造コストの下に提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明は、以下の工程からなる木質ボードの製造方法を提供して、上記従来の課題を解決しようとするものである。
イ:木材原料の集合体に結合剤を塗布または撒布する工程
ロ:前記工程で結合剤が塗布または撒布された前記木材原料を所定のマット状にフォーミングする工程、
ハ:次いで、フォーミングされた木材原料によるマットを、密閉空間内で熱圧しマット内の木材原料から発生する水蒸気を密閉空間内に滞留させて飽和水蒸気圧を高めることにより、マット中心部の温度を急激に高めてマット内の結合剤を急速に硬化させることにより短い熱圧時間で木質ボードを得る工程。
【0009】
また、上記の木質ボードの製造方法において、前記工程ハにおける水蒸気滞留手段としての密閉空間をマットの周囲に形成した枠体で構成するとともに、熱圧動作完了後に密閉空間内の水蒸気を排気して圧力を開放するように構成することがある。
【0010】
さらに、段落0011の木質ボードの製造方法において、熱圧は一対の熱盤を具えたホットプレス装置によりこれをなし、水蒸気滞留手段としてマットの周囲に形成した前記枠体をいずれかの熱盤に形成する構成となすことがある。
【0011】
さらにまた、段落0010ないし段落0012いずれかの木質ボードの製造方法において、木材原料の集合体は、単板状物、木材繊維からなるシート状物、細いスティック状物、フレーク状物及びストランド状物、パーティクル状物のうちのいずれか1種又は数種の集合体で構成することがある。
【0012】
本願発明はまた、次の工程からなる木質ボードの製造方法を提供して、上記従来の課題を解決しようとするものである。
イ:木材原料の集合体に結合剤を塗布または撒布する工程
ロ:前記工程で結合剤が塗布または撒布された前記木材原料を所定のマット状にフォーミングする工程、
ハ:次いで、フォーミングされた木材原料によるマットを熱圧し、マットの端縁部を端縁部当接手段によりその端縁部が端縁部以外の部分より薄くなるように熱圧するとともに、マット内の木材原料から発生した水蒸気をマット内に滞留させてマット内部の飽和水蒸気圧を高めることにより、マット中心部の温度を急激に高めてマット内の結合剤を短時間の熱圧により急速に硬化させて木質ボードを得る工程。
【0013】
また、段落0014の木質ボードの製造方法において、熱圧動作に併せてマット内部の水蒸気をマットの前記端縁部から排気するように構成することがある。
【0014】
さらに、段落0014又は段落0015の木質ボードの製造方法において、前記工程ハの熱圧は熱盤を具えたホットプレス装置によりこれをなすとともに、熱盤に形成した水蒸気滞留手段としてのマット端縁部押圧手段によりマットの端縁部を端縁部以外の部分より薄くなるように熱圧するとともにマット端縁部押圧手段によりマット内の木材原料から発生した水蒸気をマット内に滞留させてマット中心部の温度を急激に高めつつマット端縁部から水蒸気を排出させながら木質ボードを熱圧成形するように構成することがある。
【0015】
さらにまた、段落0014又は段落0015の木質ボードの製造方法において、前記ホットプレス装置は無限走行する上下一対の熱盤の間に前記マットを挟持して連続的に熱圧する連続式ホットプレス装置であり、熱盤の両端部に走行方向に設けたマット端縁部の第1押圧手段と前記第1押圧手段と直交して熱盤に形成される第2押圧手段とによりマットの端縁部を端縁部以外の部分より薄くなるように熱圧するともに、前記各押圧手段によりマット内の木材原料から発生した水蒸気をマット内に滞留させてマット中心部の温度を急激に高めつつ木質ボードを連続的に熱圧成形し、熱圧動作に併せてマット端縁部から水蒸気を排出させながら木質ボードを短時間で熱圧成形するように構成することがある。
【0016】
また、段落0014ないし段落0017いずれかの木質ボードの製造方法において、木材原料の集合体は、単板状物、木材繊維からなるシート状物、細いスティック状物、フレーク状物及びストランド状物、パーティクル状物のうちのいずれか1種又は数種の集合体により構成することがある。
【0017】
本願発明はまた、駆動輪の間に架装されて無限走行する上下一対の熱盤間に木材原料の集合体を所定のマット状にフォーミングされた木材原料を挟持・熱圧して木質ボードを形成する連続式ホットプレス装置において、熱盤の両端部に走行方向に設けたマット端縁部の第1押圧手段と前記第1押圧手段と直交して熱盤に形成される第2押圧手段とを設けて、前記マットの端縁部を端縁部以外の部分より薄くなるように熱圧するとともに、前記各押圧手段により水蒸気滞留手段を構成してマット内の木材原料から発生した水蒸気をマット内に滞留させマット中心部の温度を急激に高温度化してマット内の結合剤を急速に硬化させて木質ボードを連続的に熱圧成形しつつ、マット端縁部から水蒸気を排出させるようにした連続式ホットプレス装置を提供して、上記従来の課題を解決しようとするものである。
【0018】
また、段落0019の連続式ホットプレス装置において、前記第1枠体は駆動輪の部分で回動できるように不連続線状に形成することがある。
【0019】
さらに、段落0019又は段落0020の連続式ホットプレス装置において、木材原料の集合体は、単板状物、木材繊維からなるシート状物、細いスティック状物、フレーク状物及びストランド状物、パーティクル状物のうちのいずれか1種又は数種の集合体により構成することがある。
【発明の効果】
【0020】
本願発明は、以上の構成を具備することにより、木質ボードの熱圧成形において、被成形体の中心部を急速に高温化できるから熱圧時間を画期的に短縮できるので、蒸気噴射ホットプレスを用いることなく、いわゆる厚物ボードを含む木質ボードを高い生産性のもとに低廉なコストで生産できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本願発明において使用する木材原料は、単板状物、木材繊維からなるシート状物、細いスティック状物、フレーク状物及びストランド状物、パーティクル状物等あらゆる形状ものを使用することができる。 現在、ホットプレスを用いて製造される木質材料は、合板、OSB(Oriented Strand Board)、ファイバーボード、パーティクルボード等があるが、いずれの場合にも、厚さ30mm以上の厚物ボードも含めて格別の蒸気発生装置を用いずに高品質の製品を省エネルギー下に効率よく生産できる。
【0022】
木質材料に添加される結合剤はユリア樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂やイソシアネート樹脂など、従来使用されているすべての結合剤を使用できる。
【0023】
一般的なホットプレスの温度は、それぞれの結合剤や木質材料の種類によって異なるが、摂氏120度から220度であり、本願発明においてホットプレスの温度から特に作用に影響を受けることはない。
【0024】
本願発明におけるホットプレス装置は、熱盤を具え、結合剤を添加した木材原料を熱圧して結合剤の硬化により木材原料を結合させて合板、パーティクルボード、ファイバーボードその他の木質材料を形成する構成を具備し、熱圧時に木材原料内部に発生した水蒸気を木材原料の集合体で形成したマット内部および又はその近傍に滞留させる手段が熱盤に設けられる。
【0025】
前記水蒸気の滞留手段は、熱盤に設けられる密閉空間で構成する。この密閉空間は、枠体で形成するが、この場合熱圧完了に伴い密閉空間内に閉じ込められた水蒸気の排出が必要である。 水蒸気の排出なしに圧力を開放すると木質ボードに割れを生じる恐れがあるからである。 また、水蒸気滞留手段は前記のような密閉空間ではなく、マットの全周端縁部に当接して水蒸気をマット内部に閉じ込める構成でもよい。 この場合も、マット内部の水蒸気を排出させる手段を要する。
【0026】
なお、連続式ホットプレスによる木質ボードの製造にあたっては、走行し回動する熱盤に単純に枠体を設けて密閉空間を形成することはできない。 このため、マットの端縁部を緊密に圧締するマット端縁部押圧手段を熱盤に設け、この端縁部押圧手段を水蒸気がマット内部に閉じ込められ滞流する構成により実行する。そして、端縁部押圧手段により緊密に圧締された端縁部からマット内部に滞留した水蒸気を順次外部に排出させる。
【0027】
すなわち、走行する熱盤の幅方向の両端部に沿って走行方向に設けたマット端縁部の第1押圧手段と、熱盤上に前記第1押圧手段と直交して形成される第2押圧手段とを設けて、前記マットの端縁部を端縁部以外の部分より薄くなるように熱圧するのに併せて、前記各端縁部押圧手段によりマット内の木材原料から発生した水蒸気をマット内に閉じ込め滞留させてマット内部の飽和水蒸気圧を高めることにより、マット中心部の温度を急激に高めてマット内の結合剤を短時間の熱圧により急速に硬化させるようにする。
【0028】
熱圧完了後に急に熱盤の圧力を開放すると水蒸気が急激に開放され危険が生じる。また完成した木質ボードからも急激に水蒸気が噴出するので、木質ボードが破裂する恐れがある。 したがって、熱圧完了に併せて、滞留されている水蒸気の排出が必要である。
この水蒸気の排出は、枠体による密閉空間に排気管を設けてこれをなし、前記端縁部押圧手段により水蒸気滞留手段を構成する場合は、押圧手段により薄く押圧されたマット全周の端縁部から水蒸気を順次排出するようにする。
【0029】
本願発明において、マットの熱圧時間は、厚さ10mmの場合、熱圧時間は従来技術に比して半分程度に短縮可能である。
【0030】
また、本願発明において、その簡便な構成にもかかわらず、従来は高周波ホットプレスや蒸気噴射ホットプレスでしか対応できなかった厚さ30mm以上の厚物ボードも容易に製造することができる。
【実施例】
【0031】
以下に本願発明のホットプレス装置に係る実施例を説明し、その作用説明に併せて製造方法の実施例を説明する。
図面に基づいて本願発明に係るホットプレス装置の実施例を説明する。 図1は、ホットプレス装置の第1実施例を示す構成概略図である。 図において、1は、上下一対の熱盤を有する熱圧部2を具え、結合剤を添加した木材原料をフォーミングしたマットを熱圧して結合剤の硬化により木材原料を結合させて合板、パーティクルボード、ファイバーボードその他の木質ボードを形成するホットプレス装置であり、熱圧時に木材原料からに発生した水蒸気をマット内および/又はマット周辺に閉じ込め滞留させる水蒸気滞留手段3が熱圧部2に設けられている。 なお、ホットプレス装置1は、上記熱盤のほかに熱盤の加熱手段、熱盤の昇降手段、駆動源その他の所定部材を具えているが図示は省略してある。
【0032】
図2および図3は、図1に示すホットプレス装置1に設けた水蒸気滞留手段、熱盤、マット等のそれぞれの関連構成に係る実施例を示し、図2その一部断面図、図3は熱圧部2を構成する上下一対の下側熱盤の上に形成された水蒸気滞留手段3を示す平面図である。
【0033】
図2において、2は熱圧部であり、上側熱盤31と下側熱盤32を具え、結合剤が散布された木材原料をフォーミングしたマットMを挟持熱圧して結合剤を硬化させて所定の木質ボードを形成する。 水蒸気滞留手段3は、図3に示すように下側熱盤32上に固定設置された枠体fにより構成されている。 鉄材、アルミ材又はステンレス材などによる枠体fは方形状のマットMの四周を囲繞しており、後述のように下降した上側熱盤31と下側熱盤32とにより挟圧されてマットMの周りに密閉空間を形成する。 なお、図において、4,4は熱圧完了に伴い前記密閉空間内から水蒸気を排出するための排気パイプで、パイプ開閉動作のためのバルブVが取り付けられている。 図3において、Gは枠体fの気密性を高めるために、枠体fの内側に張設されたガスケット(図2では不図示)である。
【0034】
図4は、上側熱盤によるマットの熱圧状態を示す一部断面図である。 上側熱盤31は図2に示す位置から水蒸気滞留手段3(枠体f)の上端に当接するまで下降して、下側熱盤32との間でマットMを挟持して熱圧する。この熱圧の間、マットMとマットMから熱圧に伴い発生する水蒸気とは、水蒸気滞留手段3としての枠体fと上側熱盤31および下側熱盤32により形成される密閉空間の中に閉じ込められている。
【0035】
このため、マットMの内部は短時間で急速に温度が上昇し結合剤の硬化が促進され、熱圧時間が短縮されることになる。なお、枠体fの上端は上記のように上側熱盤31の最下降位置となり、このことは枠体fの高さは製造される木質ボードの厚さを規制することをも意味している。 熱圧の完了により上側熱盤31を上昇させて、マットMへの圧力を解除するが、ここで一気に解圧するとマットM内部の水蒸気が急速に拡散するので木質ボードに割れを生じる恐れがある。このような事態を回避するために、排気パイプ4のバルブを徐々に作動させて密閉空間内部から水蒸気を排出し、密閉空間内部の圧力を低下させてから上側熱盤31を上昇させ圧締されたマットMによる木質ボード取り出すことになる。
【0036】
図5、図6、図7にしたがって、本願発明のホットプレス装置に係る第2実施例を説明する。 図5ないし図7は、図1に示すホットプレス装置1に設けた水蒸気滞留手段、熱盤、マット等のそれぞれの関連構成に係る実施例を示している。
【0037】
図5はホットプレス装置1の熱圧部2における関連構成を示す一部断面図である。図において、5は下側熱盤32上に設置固定されたマットの端縁部押圧手段(下側)であり、方形枠体をなしている。また、6は上側熱盤31の下面に固定されたマットの端縁部押圧手段(上側)で方形枠体をなしている。 いずれの端縁部押圧手段もその外形は製造に係るマットM(木質ボード)の外形に合致していて、両者は、鉄材、アルミ材、ステンレス材などからなり、互いに対向位置に設置されている。 下側熱盤32上の端縁部押圧手段(下側)5上に結合剤が散布された木材原料をフォーミングしたマットMがセットされ、後述のように、上側熱盤31が下降してマットMを押圧すると前記各端縁部押圧手段によりマットMの端縁部がそれ以外の部分より薄く緊密に熱圧される。そして、前記端縁部押圧手段はまた、水蒸気滞留手段をも構成するが、さらに、上述のように薄く緊密に熱圧されたマットMの前記端縁部もマットM内に水蒸気を滞留させる一助ともなる。
【0038】
図6は、下側熱盤32上に設置された前記端縁部押圧手段(下側)5を示す平面図である。 方形枠体状のこの端縁部押圧手段(下側)5の外郭を同形とするマットMをセットして上側熱盤31を下降させて、端縁部押圧手段(下側)5と端縁部押圧手段(上側)6とによりマットM全周の端縁部を押圧することになる。
【0039】
図7は、図5に示すホットプレス装置によるマットMの熱圧状態を示す一部断面図である。 図7では、上側熱盤31の下降位置はその下死点にあり、この状態で下側熱盤32上に設置された前記端縁部押圧手段(下側)5と端縁部押圧手段(上側)6との間には間隙7が存在し、この間隙7により薄く緊密に熱圧されたマットM全周の端縁部71が形成される。 熱圧に伴い、マットMを形成する木材原料から水蒸気が発生する。 この水蒸気は、水蒸気滞留手段としての機能をも有する端縁部押圧手段(下側)5と端縁部押圧手段(上側)6とにより、マットM内部に滞留し、木質原料の内部を急速に加熱して木材原料に混合塗布された結合剤を短時間の熱圧により素早く硬化させることになる。
【0040】
なお、木材原料内に滞留した水蒸気は、熱圧の間、前記端縁部押圧手段(下側)5と前記端縁部押圧手段(上側)6とにより薄く緊密に熱圧されたマットM全周の端縁部71から前記間隙7を通り相次いで外部に排出される。 したがって、マットM内の木材原料中で、水蒸気が必要以上に高圧となることはなく、熱圧完了に伴いマットMに対する熱盤の圧締を開放しても完成した木質ボードに割れを生じる恐れはない
【0041】
図8に基づいて、本願発明に係る連続式ホットプレス装置の1実施例を説明する。 図8は、連続式ホットプレスの概要構成を示す側面図である。 連続式ホットプレス装置Aは、上下一対のロールプレス11と12および熱圧のために前記各ロールプレスの間にマットMを搬送するコンベヤー13を具えている。
【0042】
前記ロールプレス11は、駆動源として所定間隔をおいて設置される一対の回転ドラム21、21とこれらの間に巻装され無限走行する熱盤としての熱圧ベルト21aとを具えている。同様に、前記ロールプレス12も、駆動源として所定間隔をおいて設置される一対の回転ドラム22、22とこれらの間に巻装され無限走行する熱盤としての熱圧ベルト22aとを具えている。
それぞれステンレス、アルミ、鉄などの金属剤材から形成されている熱圧ベルト21aと22aとは、マットMを挟持して熱圧成形できるようにマットMに接するそれぞれの面が所定間隔をもって対向している。
【0043】
熱圧ベルト21aの内側には加熱・加圧手段21b、21bが設けられ、また、熱圧ベルト22aの内側にも加熱・加圧手段22b、22bが設けられていて、各熱圧ベルト21a,22aに挟持されるマットMを熱圧成形するようになっている。 そして、後述のように、各熱圧ベルト21a,22aの走行方向の両端部にはマットM端縁部を他の部分より薄く圧締する第1押圧手段が設けられている。また、熱圧ベルト21a,22aのいずれかには前記第1押圧手段と直行する方向にマットM端縁部を他の部分より薄く圧締する第2押圧手段が形成されている。
【0044】
以上のような構成の下において、マットMは熱圧ベルト21a,22aの間に挟まれ、図示のように右方に搬送されながら、熱圧成形される。すなわち、加熱・加圧手段21b、21bと加熱・加圧手段22b、22bが各熱圧ベルトを加圧・加熱し、この過程でマットM内部の木材原料中で発生した水蒸気は前記の第1および第2押圧手段により内部に閉じ込められて滞留し、これによって木材原料中心部の温度が短時間で急激に高まり結合剤が高温化して急速に硬化することになる、換言すればマットMは熱圧ベルト21a,22aの間に挟まれて搬送されつつ、短時間の熱圧により成形されて所望の木質ボードとなる。
【0045】
次に、図9,図10,図11にしたがって前記第1および第2押圧手段について説明する。 図9は第1押圧手段が熱圧ベルト21a,22aに形成されたロールプレス11、12を具えた連続式ホットプレス装置Aの側面図である。 図において、31は熱圧ベルト21a,22aの側端部に形成された第1押圧手段であり、多数の突起で構成されていて、各突起は所定間隔をおいて点状に設けられている。多数の突起で構成される理由は熱圧ベルトの回動に適合させるためである。 この第1押圧手段31は後述のようにマットMの両端縁部に当接してそれ以外の部分より薄く圧締するようになっている。
【0046】
図10は、連続式ホットプレス装置Aの正面図である。ロールプレス11、12における熱圧ベルト21a,22aには前記第1押圧手段31がそれぞれの熱圧ベルトの両端部に形成されている。そして、熱圧ベルト21aの両端部における第1押圧手段31、31の間には熱圧ベルト21aの走行方向に直行する第2押圧手段としての凸条41が形成されている。この凸条41は複数設けられていてそれぞれの凸条41の間隔は、マットMの走行方向の長さよりやや短くなるように設定されている。 これによって、マットMの走行方向の両端縁部に凸条41が当接してこれを圧締し、この両端縁部以外の両端縁部には前述のように第1押圧手段31が当接してそれ以外の部分より薄く圧締するようになっている。
なお、ここでは、第2押圧手段としての凸条41は熱圧ベルト21aに設置する例を述べたが、熱圧ベルト22aにも設けて、両熱圧方のベルトのそれぞれの凸条41が対向してマットMの端縁部を圧締するようにしてもよい。
【0047】
図11は、水蒸気滞留手段を構成する前記第1押圧手段31、第2押圧手段41によるマットMの圧締状態を示す平面図である。 熱圧過程で、マットMの端縁部全周は第1押圧手段31、第2押圧手段41により押圧されており、マットMにおける木材原料から発生した水蒸気はマットMの内部に閉じ込められ滞留し、中心部をはじめ木材原料内部の温度を短時間で急速に高めて結合剤の硬化を促進し、マットMが連続式ホットプレス装置Aを通過した時点で所望の木質ボードが完成する。なお、熱圧の間、マットM内部に滞留した水蒸気はマットM内部を高温化してから、図10に示すように上下の熱圧ベルトに設けられた第1押圧手段31、31の間隙31aから排出される。このため、マットMが熱圧過程を完了してロールプレス11、12による圧力が開放されても急激な水蒸気圧の低下は抑制され木質ボードの割れなどの恐れは生じない。
【0048】
さらに、図12ないし図14にしたがい、段落番号0033ないし0037に述べた第1実施例に係る木質ボードについて、熱圧時間と対応する中心部温度の推移、熱圧時間と木質ボード性能の関連などを説明する。 図12は、熱圧時間と木質ボード中心部の温度の関係に係る試験結果を示すグラフで、本願発明に係る密閉空間内での熱圧と従来技術との両者に係る熱圧の推移を比較したものである。 この結果から以下のことが判明する。
(1)これから、グラフに示すように、熱圧時間が1分で両者ともボード内部温度は摂氏100度に達し差異はみられない。
(2)しかし、時間の経過とともに両者には差異が生じている。 すなわち、1分から3分までの間では、従来技術すなわち密閉空間を設けずにマットを熱圧する場合にはマット中心部の温度は非常に緩やかに上昇して摂氏114度に達している。 これに対して、本願発明の場合は、1分から3分までの間で温度は急速に上昇して摂氏147度に達している。
(3)そして、5分経過で従来技術では摂氏131度に、また本願発明では摂氏170度に達している。
(4)さらに、8分経過時に従来技術では摂氏160度に、また本願発明では摂氏190度に達している。
以上のことから、密閉空間内で熱圧することによりマット内の木材原料中心部の温度が短時間で急速に上昇し、これに伴い結合剤の硬化が短時間のうちに著しく促進されることが判明する。
【0049】
図13は、熱圧時間と剥離強さ(MPa)との関係を本願発明と従来技術との比較において示したグラフである。 グラフから明らかなように、剥離強さはいずれの熱圧時間の場合にも、本願発明の場合が高い。 例えば、熱圧時間2分で本願発明では剥離強さが0.55MPaを得るのに対して、従来技術では熱圧時間が4分でも0.42MPaの剥離強さが得られるのみであり、本願発明では短時間の熱圧で従来技術に比してより高い結果が得られていることが判明する。
【0050】
図14は、熱圧時間と曲げ強さ(MPa)との関係を本願発明と従来技術との比較において示したグラフである。
熱圧時間が4分以下では、本願発明に係る木質ボードの曲げ強さは従来技術に係るものより概して高い傾向が見られる。 また、熱圧時間が5分以上になると両者に相違は見られない。 そして、熱圧時間が2分では、本願発明の曲げ強さは18.0MPaの最大値を示した。 しかしながら、従来技術では、熱圧時間の長短にかかわらずこの前記最大値を超えることはできない。 すなわち、この試験により本願発明では、2分という短い熱圧時間にもかかわらず優れた曲げ強さを実現できていることが判明する。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】ホットプレス装置の第1実施例を示す構成概略図である。
【図2】図1に示すホットプレス装置1に設けた水蒸気滞留手段、熱盤、マット等のそれぞれの関連構成を示す一部断面図である。
【図3】熱圧部2を構成する上下一対の下側熱盤の上に形成された水蒸気滞留手段3を示す平面図である。
【図4】上側熱盤31によるマットの熱圧状態を示す一部断面図である。
【図5】ホットプレス装置1の熱圧部2における関連構成を示す一部断面図である。
【図6】下側熱盤32上に設置された前記端縁部押圧手段(下側)5を示す平面図である。
【図7】図5に示すホットプレス装置によるマットMの熱圧状態を示す一部断面図である。
【図8】連続式ホットプレスの概要構成を示す側面図である。
【図9】第1押圧手段が熱圧ベルト21a,22aに形成されたロールプレス11、12を具えた連続式ホットプレス装置Aの側面図である。
【図10】連続式ホットプレス装置Aの正面図である。
【図11】水蒸気滞留手段を構成する前記第1押圧手段31、第2押圧手段41によるマットMの圧締状態を示す平面図である。
【図12】熱圧時間と木質ボード中心部の温度の関係に係る試験結果を示すグラフである。
【図13】熱圧時間と剥離強さ(MPa)との関係を本願発明と従来技術との比較において示したグラフである。
【図14】熱圧時間と曲げ強さ(MPa)との関係を本願発明と従来技術との比較において示したグラフである。
【符号の説明】
【0052】
A..........連続式ホットプレス装置
M..........マット
1..........ホットプレス装置
2..........熱圧部
3..........水蒸気滞留手段
31.........上側熱盤
32.........下側熱盤
4..........排気パイプ
5..........マットの端縁部押圧手段(下側)
6..........マットの端縁部押圧手段(上側)
7..........間隙
71.........マットM全周の端縁部
11,12......ロールプレス
13.........コンベヤー
21,22......回転ドラム
21a、22a.....熱圧ベルト
21b,22b.....加熱・加圧手段
31.........第1押圧手段
31a........間隙
41.........第2押圧手段(凸条)
【技術分野】
【0001】
本願発明は、マット状に形成された木材原料の集合体を結合剤とともに熱圧して結合剤を急速に硬化させて木質ボードを製造する方法ならびにその装置に関し、なお詳しくは、熱圧時に木質原料内部から発生する水蒸気をマット内および/又はマット近傍に滞留させた状態に保ちつつ熱圧することにより、マット内部の木材原料を急激に高温高圧化して結合剤を急速硬化させて効率的に木質ボードを製造する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
木材を繊維状や小片状に加工し、これに結合剤を加えて成形した木質材料は、ファイバーボードやパーティクルボード等と呼ばれ、総称して木質ボードと呼ばれている。
これらの木質ボードは、木材繊維や木材小片に、フェノール樹脂等の結合剤を添加してマット状に成形し、成形によって得られたマットを、結合剤の硬化温度まで加熱しながら加圧する、いわゆる熱圧成形法によって製造される。このような熱圧成形のために用いられる装置としては、ホットプレス装置が広く用いられている。
【0003】
ホットプレス装置は、加圧定盤を加熱し、加圧定盤の表面からの熱供給によってマットを加熱しながら加圧するものである。 ところが、マットの内部には繊維や小片の空隙が多いため、マットの中心部にまで熱が伝わるのに時間がかかるため、必然的に結合剤の硬化に時間を要し、従来のホットプレス装置で木質ボードを製造するには生産性の点で問題があった。 また、従来のホットプレス装置では、マットの中心部の温度上昇に時間がかかるので、厚物、例えば厚さ30mm以上のいわゆる厚物ボードの製造は困難であった。
【0004】
そこで、近年、マットの中心部に早く熱を伝えて熱圧時間を短縮するために、蒸気噴射プレス、高周波プレスなどが開発されている。 例えば、蒸気噴射プレスでは、加圧定盤に設けられたノズルから噴射された蒸気が、マット内の空隙を通ってマット全体に拡散して熱を伝えるため、マットの中心部まですばやく加熱され、マット全体が短時間で結合剤の硬化温度に達する。そのため、熱圧成形に要する時間を短縮できるようになっている。
そして、マットの中心部まですばやく加熱されるから、上記の厚物ボードの製造も容易になっている。
【0005】
なお、本願発明に関連する技術が以下のような文献において開示されている。
【特許文献1】特開平4−1404号公報
【特許文献2】特開平7−299810号公報
【特許文献3】特開平8−57803号公報
【特許文献4】特開2003−276011号公報
【特許文献5】特開2008−87372号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、蒸気噴射プレスや高周波プレスは構造が複雑かつ大型であるため、その価格は非常に高額なものとなっており、その導入には多額の資金が必要となる。したがって、蒸気噴射プレスによる木質ボードの製造コストは高額とならざるを得なので、結果的に製造に要するトータルコストは生産性に劣る従来のホットプレス装置による場合とあまり変わることがないという不都合がある。
【0007】
本願発明は、簡便な構成により木材原料の集合体により形成したマットの熱圧成形に際して、マット内の木材原料から発生した水蒸気を外部に放散させず、マット内部および/又はその近傍に滞留させることによりマット中心部をも急速に高温化し、短時間で結合剤を硬化させて、厚物ボードも含めた木質ボードを低廉な製造コストの下に提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明は、以下の工程からなる木質ボードの製造方法を提供して、上記従来の課題を解決しようとするものである。
イ:木材原料の集合体に結合剤を塗布または撒布する工程
ロ:前記工程で結合剤が塗布または撒布された前記木材原料を所定のマット状にフォーミングする工程、
ハ:次いで、フォーミングされた木材原料によるマットを、密閉空間内で熱圧しマット内の木材原料から発生する水蒸気を密閉空間内に滞留させて飽和水蒸気圧を高めることにより、マット中心部の温度を急激に高めてマット内の結合剤を急速に硬化させることにより短い熱圧時間で木質ボードを得る工程。
【0009】
また、上記の木質ボードの製造方法において、前記工程ハにおける水蒸気滞留手段としての密閉空間をマットの周囲に形成した枠体で構成するとともに、熱圧動作完了後に密閉空間内の水蒸気を排気して圧力を開放するように構成することがある。
【0010】
さらに、段落0011の木質ボードの製造方法において、熱圧は一対の熱盤を具えたホットプレス装置によりこれをなし、水蒸気滞留手段としてマットの周囲に形成した前記枠体をいずれかの熱盤に形成する構成となすことがある。
【0011】
さらにまた、段落0010ないし段落0012いずれかの木質ボードの製造方法において、木材原料の集合体は、単板状物、木材繊維からなるシート状物、細いスティック状物、フレーク状物及びストランド状物、パーティクル状物のうちのいずれか1種又は数種の集合体で構成することがある。
【0012】
本願発明はまた、次の工程からなる木質ボードの製造方法を提供して、上記従来の課題を解決しようとするものである。
イ:木材原料の集合体に結合剤を塗布または撒布する工程
ロ:前記工程で結合剤が塗布または撒布された前記木材原料を所定のマット状にフォーミングする工程、
ハ:次いで、フォーミングされた木材原料によるマットを熱圧し、マットの端縁部を端縁部当接手段によりその端縁部が端縁部以外の部分より薄くなるように熱圧するとともに、マット内の木材原料から発生した水蒸気をマット内に滞留させてマット内部の飽和水蒸気圧を高めることにより、マット中心部の温度を急激に高めてマット内の結合剤を短時間の熱圧により急速に硬化させて木質ボードを得る工程。
【0013】
また、段落0014の木質ボードの製造方法において、熱圧動作に併せてマット内部の水蒸気をマットの前記端縁部から排気するように構成することがある。
【0014】
さらに、段落0014又は段落0015の木質ボードの製造方法において、前記工程ハの熱圧は熱盤を具えたホットプレス装置によりこれをなすとともに、熱盤に形成した水蒸気滞留手段としてのマット端縁部押圧手段によりマットの端縁部を端縁部以外の部分より薄くなるように熱圧するとともにマット端縁部押圧手段によりマット内の木材原料から発生した水蒸気をマット内に滞留させてマット中心部の温度を急激に高めつつマット端縁部から水蒸気を排出させながら木質ボードを熱圧成形するように構成することがある。
【0015】
さらにまた、段落0014又は段落0015の木質ボードの製造方法において、前記ホットプレス装置は無限走行する上下一対の熱盤の間に前記マットを挟持して連続的に熱圧する連続式ホットプレス装置であり、熱盤の両端部に走行方向に設けたマット端縁部の第1押圧手段と前記第1押圧手段と直交して熱盤に形成される第2押圧手段とによりマットの端縁部を端縁部以外の部分より薄くなるように熱圧するともに、前記各押圧手段によりマット内の木材原料から発生した水蒸気をマット内に滞留させてマット中心部の温度を急激に高めつつ木質ボードを連続的に熱圧成形し、熱圧動作に併せてマット端縁部から水蒸気を排出させながら木質ボードを短時間で熱圧成形するように構成することがある。
【0016】
また、段落0014ないし段落0017いずれかの木質ボードの製造方法において、木材原料の集合体は、単板状物、木材繊維からなるシート状物、細いスティック状物、フレーク状物及びストランド状物、パーティクル状物のうちのいずれか1種又は数種の集合体により構成することがある。
【0017】
本願発明はまた、駆動輪の間に架装されて無限走行する上下一対の熱盤間に木材原料の集合体を所定のマット状にフォーミングされた木材原料を挟持・熱圧して木質ボードを形成する連続式ホットプレス装置において、熱盤の両端部に走行方向に設けたマット端縁部の第1押圧手段と前記第1押圧手段と直交して熱盤に形成される第2押圧手段とを設けて、前記マットの端縁部を端縁部以外の部分より薄くなるように熱圧するとともに、前記各押圧手段により水蒸気滞留手段を構成してマット内の木材原料から発生した水蒸気をマット内に滞留させマット中心部の温度を急激に高温度化してマット内の結合剤を急速に硬化させて木質ボードを連続的に熱圧成形しつつ、マット端縁部から水蒸気を排出させるようにした連続式ホットプレス装置を提供して、上記従来の課題を解決しようとするものである。
【0018】
また、段落0019の連続式ホットプレス装置において、前記第1枠体は駆動輪の部分で回動できるように不連続線状に形成することがある。
【0019】
さらに、段落0019又は段落0020の連続式ホットプレス装置において、木材原料の集合体は、単板状物、木材繊維からなるシート状物、細いスティック状物、フレーク状物及びストランド状物、パーティクル状物のうちのいずれか1種又は数種の集合体により構成することがある。
【発明の効果】
【0020】
本願発明は、以上の構成を具備することにより、木質ボードの熱圧成形において、被成形体の中心部を急速に高温化できるから熱圧時間を画期的に短縮できるので、蒸気噴射ホットプレスを用いることなく、いわゆる厚物ボードを含む木質ボードを高い生産性のもとに低廉なコストで生産できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本願発明において使用する木材原料は、単板状物、木材繊維からなるシート状物、細いスティック状物、フレーク状物及びストランド状物、パーティクル状物等あらゆる形状ものを使用することができる。 現在、ホットプレスを用いて製造される木質材料は、合板、OSB(Oriented Strand Board)、ファイバーボード、パーティクルボード等があるが、いずれの場合にも、厚さ30mm以上の厚物ボードも含めて格別の蒸気発生装置を用いずに高品質の製品を省エネルギー下に効率よく生産できる。
【0022】
木質材料に添加される結合剤はユリア樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂やイソシアネート樹脂など、従来使用されているすべての結合剤を使用できる。
【0023】
一般的なホットプレスの温度は、それぞれの結合剤や木質材料の種類によって異なるが、摂氏120度から220度であり、本願発明においてホットプレスの温度から特に作用に影響を受けることはない。
【0024】
本願発明におけるホットプレス装置は、熱盤を具え、結合剤を添加した木材原料を熱圧して結合剤の硬化により木材原料を結合させて合板、パーティクルボード、ファイバーボードその他の木質材料を形成する構成を具備し、熱圧時に木材原料内部に発生した水蒸気を木材原料の集合体で形成したマット内部および又はその近傍に滞留させる手段が熱盤に設けられる。
【0025】
前記水蒸気の滞留手段は、熱盤に設けられる密閉空間で構成する。この密閉空間は、枠体で形成するが、この場合熱圧完了に伴い密閉空間内に閉じ込められた水蒸気の排出が必要である。 水蒸気の排出なしに圧力を開放すると木質ボードに割れを生じる恐れがあるからである。 また、水蒸気滞留手段は前記のような密閉空間ではなく、マットの全周端縁部に当接して水蒸気をマット内部に閉じ込める構成でもよい。 この場合も、マット内部の水蒸気を排出させる手段を要する。
【0026】
なお、連続式ホットプレスによる木質ボードの製造にあたっては、走行し回動する熱盤に単純に枠体を設けて密閉空間を形成することはできない。 このため、マットの端縁部を緊密に圧締するマット端縁部押圧手段を熱盤に設け、この端縁部押圧手段を水蒸気がマット内部に閉じ込められ滞流する構成により実行する。そして、端縁部押圧手段により緊密に圧締された端縁部からマット内部に滞留した水蒸気を順次外部に排出させる。
【0027】
すなわち、走行する熱盤の幅方向の両端部に沿って走行方向に設けたマット端縁部の第1押圧手段と、熱盤上に前記第1押圧手段と直交して形成される第2押圧手段とを設けて、前記マットの端縁部を端縁部以外の部分より薄くなるように熱圧するのに併せて、前記各端縁部押圧手段によりマット内の木材原料から発生した水蒸気をマット内に閉じ込め滞留させてマット内部の飽和水蒸気圧を高めることにより、マット中心部の温度を急激に高めてマット内の結合剤を短時間の熱圧により急速に硬化させるようにする。
【0028】
熱圧完了後に急に熱盤の圧力を開放すると水蒸気が急激に開放され危険が生じる。また完成した木質ボードからも急激に水蒸気が噴出するので、木質ボードが破裂する恐れがある。 したがって、熱圧完了に併せて、滞留されている水蒸気の排出が必要である。
この水蒸気の排出は、枠体による密閉空間に排気管を設けてこれをなし、前記端縁部押圧手段により水蒸気滞留手段を構成する場合は、押圧手段により薄く押圧されたマット全周の端縁部から水蒸気を順次排出するようにする。
【0029】
本願発明において、マットの熱圧時間は、厚さ10mmの場合、熱圧時間は従来技術に比して半分程度に短縮可能である。
【0030】
また、本願発明において、その簡便な構成にもかかわらず、従来は高周波ホットプレスや蒸気噴射ホットプレスでしか対応できなかった厚さ30mm以上の厚物ボードも容易に製造することができる。
【実施例】
【0031】
以下に本願発明のホットプレス装置に係る実施例を説明し、その作用説明に併せて製造方法の実施例を説明する。
図面に基づいて本願発明に係るホットプレス装置の実施例を説明する。 図1は、ホットプレス装置の第1実施例を示す構成概略図である。 図において、1は、上下一対の熱盤を有する熱圧部2を具え、結合剤を添加した木材原料をフォーミングしたマットを熱圧して結合剤の硬化により木材原料を結合させて合板、パーティクルボード、ファイバーボードその他の木質ボードを形成するホットプレス装置であり、熱圧時に木材原料からに発生した水蒸気をマット内および/又はマット周辺に閉じ込め滞留させる水蒸気滞留手段3が熱圧部2に設けられている。 なお、ホットプレス装置1は、上記熱盤のほかに熱盤の加熱手段、熱盤の昇降手段、駆動源その他の所定部材を具えているが図示は省略してある。
【0032】
図2および図3は、図1に示すホットプレス装置1に設けた水蒸気滞留手段、熱盤、マット等のそれぞれの関連構成に係る実施例を示し、図2その一部断面図、図3は熱圧部2を構成する上下一対の下側熱盤の上に形成された水蒸気滞留手段3を示す平面図である。
【0033】
図2において、2は熱圧部であり、上側熱盤31と下側熱盤32を具え、結合剤が散布された木材原料をフォーミングしたマットMを挟持熱圧して結合剤を硬化させて所定の木質ボードを形成する。 水蒸気滞留手段3は、図3に示すように下側熱盤32上に固定設置された枠体fにより構成されている。 鉄材、アルミ材又はステンレス材などによる枠体fは方形状のマットMの四周を囲繞しており、後述のように下降した上側熱盤31と下側熱盤32とにより挟圧されてマットMの周りに密閉空間を形成する。 なお、図において、4,4は熱圧完了に伴い前記密閉空間内から水蒸気を排出するための排気パイプで、パイプ開閉動作のためのバルブVが取り付けられている。 図3において、Gは枠体fの気密性を高めるために、枠体fの内側に張設されたガスケット(図2では不図示)である。
【0034】
図4は、上側熱盤によるマットの熱圧状態を示す一部断面図である。 上側熱盤31は図2に示す位置から水蒸気滞留手段3(枠体f)の上端に当接するまで下降して、下側熱盤32との間でマットMを挟持して熱圧する。この熱圧の間、マットMとマットMから熱圧に伴い発生する水蒸気とは、水蒸気滞留手段3としての枠体fと上側熱盤31および下側熱盤32により形成される密閉空間の中に閉じ込められている。
【0035】
このため、マットMの内部は短時間で急速に温度が上昇し結合剤の硬化が促進され、熱圧時間が短縮されることになる。なお、枠体fの上端は上記のように上側熱盤31の最下降位置となり、このことは枠体fの高さは製造される木質ボードの厚さを規制することをも意味している。 熱圧の完了により上側熱盤31を上昇させて、マットMへの圧力を解除するが、ここで一気に解圧するとマットM内部の水蒸気が急速に拡散するので木質ボードに割れを生じる恐れがある。このような事態を回避するために、排気パイプ4のバルブを徐々に作動させて密閉空間内部から水蒸気を排出し、密閉空間内部の圧力を低下させてから上側熱盤31を上昇させ圧締されたマットMによる木質ボード取り出すことになる。
【0036】
図5、図6、図7にしたがって、本願発明のホットプレス装置に係る第2実施例を説明する。 図5ないし図7は、図1に示すホットプレス装置1に設けた水蒸気滞留手段、熱盤、マット等のそれぞれの関連構成に係る実施例を示している。
【0037】
図5はホットプレス装置1の熱圧部2における関連構成を示す一部断面図である。図において、5は下側熱盤32上に設置固定されたマットの端縁部押圧手段(下側)であり、方形枠体をなしている。また、6は上側熱盤31の下面に固定されたマットの端縁部押圧手段(上側)で方形枠体をなしている。 いずれの端縁部押圧手段もその外形は製造に係るマットM(木質ボード)の外形に合致していて、両者は、鉄材、アルミ材、ステンレス材などからなり、互いに対向位置に設置されている。 下側熱盤32上の端縁部押圧手段(下側)5上に結合剤が散布された木材原料をフォーミングしたマットMがセットされ、後述のように、上側熱盤31が下降してマットMを押圧すると前記各端縁部押圧手段によりマットMの端縁部がそれ以外の部分より薄く緊密に熱圧される。そして、前記端縁部押圧手段はまた、水蒸気滞留手段をも構成するが、さらに、上述のように薄く緊密に熱圧されたマットMの前記端縁部もマットM内に水蒸気を滞留させる一助ともなる。
【0038】
図6は、下側熱盤32上に設置された前記端縁部押圧手段(下側)5を示す平面図である。 方形枠体状のこの端縁部押圧手段(下側)5の外郭を同形とするマットMをセットして上側熱盤31を下降させて、端縁部押圧手段(下側)5と端縁部押圧手段(上側)6とによりマットM全周の端縁部を押圧することになる。
【0039】
図7は、図5に示すホットプレス装置によるマットMの熱圧状態を示す一部断面図である。 図7では、上側熱盤31の下降位置はその下死点にあり、この状態で下側熱盤32上に設置された前記端縁部押圧手段(下側)5と端縁部押圧手段(上側)6との間には間隙7が存在し、この間隙7により薄く緊密に熱圧されたマットM全周の端縁部71が形成される。 熱圧に伴い、マットMを形成する木材原料から水蒸気が発生する。 この水蒸気は、水蒸気滞留手段としての機能をも有する端縁部押圧手段(下側)5と端縁部押圧手段(上側)6とにより、マットM内部に滞留し、木質原料の内部を急速に加熱して木材原料に混合塗布された結合剤を短時間の熱圧により素早く硬化させることになる。
【0040】
なお、木材原料内に滞留した水蒸気は、熱圧の間、前記端縁部押圧手段(下側)5と前記端縁部押圧手段(上側)6とにより薄く緊密に熱圧されたマットM全周の端縁部71から前記間隙7を通り相次いで外部に排出される。 したがって、マットM内の木材原料中で、水蒸気が必要以上に高圧となることはなく、熱圧完了に伴いマットMに対する熱盤の圧締を開放しても完成した木質ボードに割れを生じる恐れはない
【0041】
図8に基づいて、本願発明に係る連続式ホットプレス装置の1実施例を説明する。 図8は、連続式ホットプレスの概要構成を示す側面図である。 連続式ホットプレス装置Aは、上下一対のロールプレス11と12および熱圧のために前記各ロールプレスの間にマットMを搬送するコンベヤー13を具えている。
【0042】
前記ロールプレス11は、駆動源として所定間隔をおいて設置される一対の回転ドラム21、21とこれらの間に巻装され無限走行する熱盤としての熱圧ベルト21aとを具えている。同様に、前記ロールプレス12も、駆動源として所定間隔をおいて設置される一対の回転ドラム22、22とこれらの間に巻装され無限走行する熱盤としての熱圧ベルト22aとを具えている。
それぞれステンレス、アルミ、鉄などの金属剤材から形成されている熱圧ベルト21aと22aとは、マットMを挟持して熱圧成形できるようにマットMに接するそれぞれの面が所定間隔をもって対向している。
【0043】
熱圧ベルト21aの内側には加熱・加圧手段21b、21bが設けられ、また、熱圧ベルト22aの内側にも加熱・加圧手段22b、22bが設けられていて、各熱圧ベルト21a,22aに挟持されるマットMを熱圧成形するようになっている。 そして、後述のように、各熱圧ベルト21a,22aの走行方向の両端部にはマットM端縁部を他の部分より薄く圧締する第1押圧手段が設けられている。また、熱圧ベルト21a,22aのいずれかには前記第1押圧手段と直行する方向にマットM端縁部を他の部分より薄く圧締する第2押圧手段が形成されている。
【0044】
以上のような構成の下において、マットMは熱圧ベルト21a,22aの間に挟まれ、図示のように右方に搬送されながら、熱圧成形される。すなわち、加熱・加圧手段21b、21bと加熱・加圧手段22b、22bが各熱圧ベルトを加圧・加熱し、この過程でマットM内部の木材原料中で発生した水蒸気は前記の第1および第2押圧手段により内部に閉じ込められて滞留し、これによって木材原料中心部の温度が短時間で急激に高まり結合剤が高温化して急速に硬化することになる、換言すればマットMは熱圧ベルト21a,22aの間に挟まれて搬送されつつ、短時間の熱圧により成形されて所望の木質ボードとなる。
【0045】
次に、図9,図10,図11にしたがって前記第1および第2押圧手段について説明する。 図9は第1押圧手段が熱圧ベルト21a,22aに形成されたロールプレス11、12を具えた連続式ホットプレス装置Aの側面図である。 図において、31は熱圧ベルト21a,22aの側端部に形成された第1押圧手段であり、多数の突起で構成されていて、各突起は所定間隔をおいて点状に設けられている。多数の突起で構成される理由は熱圧ベルトの回動に適合させるためである。 この第1押圧手段31は後述のようにマットMの両端縁部に当接してそれ以外の部分より薄く圧締するようになっている。
【0046】
図10は、連続式ホットプレス装置Aの正面図である。ロールプレス11、12における熱圧ベルト21a,22aには前記第1押圧手段31がそれぞれの熱圧ベルトの両端部に形成されている。そして、熱圧ベルト21aの両端部における第1押圧手段31、31の間には熱圧ベルト21aの走行方向に直行する第2押圧手段としての凸条41が形成されている。この凸条41は複数設けられていてそれぞれの凸条41の間隔は、マットMの走行方向の長さよりやや短くなるように設定されている。 これによって、マットMの走行方向の両端縁部に凸条41が当接してこれを圧締し、この両端縁部以外の両端縁部には前述のように第1押圧手段31が当接してそれ以外の部分より薄く圧締するようになっている。
なお、ここでは、第2押圧手段としての凸条41は熱圧ベルト21aに設置する例を述べたが、熱圧ベルト22aにも設けて、両熱圧方のベルトのそれぞれの凸条41が対向してマットMの端縁部を圧締するようにしてもよい。
【0047】
図11は、水蒸気滞留手段を構成する前記第1押圧手段31、第2押圧手段41によるマットMの圧締状態を示す平面図である。 熱圧過程で、マットMの端縁部全周は第1押圧手段31、第2押圧手段41により押圧されており、マットMにおける木材原料から発生した水蒸気はマットMの内部に閉じ込められ滞留し、中心部をはじめ木材原料内部の温度を短時間で急速に高めて結合剤の硬化を促進し、マットMが連続式ホットプレス装置Aを通過した時点で所望の木質ボードが完成する。なお、熱圧の間、マットM内部に滞留した水蒸気はマットM内部を高温化してから、図10に示すように上下の熱圧ベルトに設けられた第1押圧手段31、31の間隙31aから排出される。このため、マットMが熱圧過程を完了してロールプレス11、12による圧力が開放されても急激な水蒸気圧の低下は抑制され木質ボードの割れなどの恐れは生じない。
【0048】
さらに、図12ないし図14にしたがい、段落番号0033ないし0037に述べた第1実施例に係る木質ボードについて、熱圧時間と対応する中心部温度の推移、熱圧時間と木質ボード性能の関連などを説明する。 図12は、熱圧時間と木質ボード中心部の温度の関係に係る試験結果を示すグラフで、本願発明に係る密閉空間内での熱圧と従来技術との両者に係る熱圧の推移を比較したものである。 この結果から以下のことが判明する。
(1)これから、グラフに示すように、熱圧時間が1分で両者ともボード内部温度は摂氏100度に達し差異はみられない。
(2)しかし、時間の経過とともに両者には差異が生じている。 すなわち、1分から3分までの間では、従来技術すなわち密閉空間を設けずにマットを熱圧する場合にはマット中心部の温度は非常に緩やかに上昇して摂氏114度に達している。 これに対して、本願発明の場合は、1分から3分までの間で温度は急速に上昇して摂氏147度に達している。
(3)そして、5分経過で従来技術では摂氏131度に、また本願発明では摂氏170度に達している。
(4)さらに、8分経過時に従来技術では摂氏160度に、また本願発明では摂氏190度に達している。
以上のことから、密閉空間内で熱圧することによりマット内の木材原料中心部の温度が短時間で急速に上昇し、これに伴い結合剤の硬化が短時間のうちに著しく促進されることが判明する。
【0049】
図13は、熱圧時間と剥離強さ(MPa)との関係を本願発明と従来技術との比較において示したグラフである。 グラフから明らかなように、剥離強さはいずれの熱圧時間の場合にも、本願発明の場合が高い。 例えば、熱圧時間2分で本願発明では剥離強さが0.55MPaを得るのに対して、従来技術では熱圧時間が4分でも0.42MPaの剥離強さが得られるのみであり、本願発明では短時間の熱圧で従来技術に比してより高い結果が得られていることが判明する。
【0050】
図14は、熱圧時間と曲げ強さ(MPa)との関係を本願発明と従来技術との比較において示したグラフである。
熱圧時間が4分以下では、本願発明に係る木質ボードの曲げ強さは従来技術に係るものより概して高い傾向が見られる。 また、熱圧時間が5分以上になると両者に相違は見られない。 そして、熱圧時間が2分では、本願発明の曲げ強さは18.0MPaの最大値を示した。 しかしながら、従来技術では、熱圧時間の長短にかかわらずこの前記最大値を超えることはできない。 すなわち、この試験により本願発明では、2分という短い熱圧時間にもかかわらず優れた曲げ強さを実現できていることが判明する。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】ホットプレス装置の第1実施例を示す構成概略図である。
【図2】図1に示すホットプレス装置1に設けた水蒸気滞留手段、熱盤、マット等のそれぞれの関連構成を示す一部断面図である。
【図3】熱圧部2を構成する上下一対の下側熱盤の上に形成された水蒸気滞留手段3を示す平面図である。
【図4】上側熱盤31によるマットの熱圧状態を示す一部断面図である。
【図5】ホットプレス装置1の熱圧部2における関連構成を示す一部断面図である。
【図6】下側熱盤32上に設置された前記端縁部押圧手段(下側)5を示す平面図である。
【図7】図5に示すホットプレス装置によるマットMの熱圧状態を示す一部断面図である。
【図8】連続式ホットプレスの概要構成を示す側面図である。
【図9】第1押圧手段が熱圧ベルト21a,22aに形成されたロールプレス11、12を具えた連続式ホットプレス装置Aの側面図である。
【図10】連続式ホットプレス装置Aの正面図である。
【図11】水蒸気滞留手段を構成する前記第1押圧手段31、第2押圧手段41によるマットMの圧締状態を示す平面図である。
【図12】熱圧時間と木質ボード中心部の温度の関係に係る試験結果を示すグラフである。
【図13】熱圧時間と剥離強さ(MPa)との関係を本願発明と従来技術との比較において示したグラフである。
【図14】熱圧時間と曲げ強さ(MPa)との関係を本願発明と従来技術との比較において示したグラフである。
【符号の説明】
【0052】
A..........連続式ホットプレス装置
M..........マット
1..........ホットプレス装置
2..........熱圧部
3..........水蒸気滞留手段
31.........上側熱盤
32.........下側熱盤
4..........排気パイプ
5..........マットの端縁部押圧手段(下側)
6..........マットの端縁部押圧手段(上側)
7..........間隙
71.........マットM全周の端縁部
11,12......ロールプレス
13.........コンベヤー
21,22......回転ドラム
21a、22a.....熱圧ベルト
21b,22b.....加熱・加圧手段
31.........第1押圧手段
31a........間隙
41.........第2押圧手段(凸条)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の工程からなる木質ボードの製造方法。
イ:木材原料の集合体に結合剤を塗布または撒布する工程
ロ:前記工程で結合剤が塗布または撒布された前記木材原料を所定のマット状にフォーミングする工程、
ハ:次いで、フォーミングされた木材原料によるマットを、密閉空間内で熱圧しマット内の木材原料から発生する水蒸気を密閉空間内に滞留させて飽和水蒸気圧を高めることにより、マット中心部の温度を急激に高めてマット内の結合剤を急速に硬化させることにより熱圧時間を短縮して木質ボードを得る工程。
【請求項2】
請求項1記載の木質ボードの製造方法において、前記工程ハにおける水蒸気滞留手段としての密閉空間をマットの周囲に形成した枠体で構成するとともに、熱圧動作完了後に密閉空間内の水蒸気を排気して圧力を開放するようにしたことを特徴とする木質ボードの製造方法。
【請求項3】
請求項2記載の木質ボードの製造方法において、熱圧は一対の熱盤を具えたホットプレス装置によりこれをなし、水蒸気滞留手段としてマットの周囲に形成した前記枠体をいずれかの熱盤に形成したことを特徴とする木質ボードの製造方法。
【請求項4】
請求項1ないし3いずれか記載の木質ボードの製造方法において、木材原料の集合体は、単板状物、木材繊維からなるシート状物、細いスティック状物、フレーク状物及びストランド状物、パーティクル状物のうちのいずれか1種又は数種の集合体からなることを特徴とする木質ボードの製造方法。
【請求項5】
次の工程からなる木質ボードの製造方法。
イ:木材原料の集合体に結合剤を塗布または撒布する工程
ロ:前記工程で結合剤が塗布または撒布された前記木材原料を所定のマット状にフォーミングする工程、
ハ:次いで、フォーミングされた木材原料によるマットを熱圧し、マットの端縁部を端縁部当接手段によりその端縁部が端縁部以外の部分より薄くなるように熱圧するとともに、マット内の木材原料から発生した水蒸気をマット内に滞留させてマット内部の飽和水蒸気圧を高めることにより、マット中心部の温度を急激に高めてマット内の結合剤を急速に硬化させて木質ボードを得る工程。
【請求項6】
請求項5記載の木質ボードの製造方法において、熱圧動作に併せてマット内部の水蒸気をマットの前記端縁部から排気するようにしたことを特徴とする木質ボードの製造方法。
【請求項7】
請求項5又は6記載の木質ボードの製造方法において、前記工程ハの熱圧は熱盤を具えたホットプレス装置によりこれをなすとともに、熱盤に形成した水蒸気滞留手段としてのマット端縁部押圧手段によりマットの端縁部を端縁部以外の部分より薄くなるように熱圧するとともにマット端縁部押圧手段によりマット内の木材原料から発生した水蒸気をマット内に滞留させてマット中心部の温度を急激に高めつつマット端縁部から水蒸気を排出させながら木質ボードを熱圧成形するようにしたことを特徴とする木質ボードの製造方法。
【請求項8】
請求項5又は6記載の木質ボードの製造方法において、前記ホットプレス装置は無限走行する上下一対の熱盤の間に前記マットを挟持して連続的に熱圧する連続式ホットプレス装置であり、熱盤の両端部に走行方向に設けたマット端縁部の第1押圧手段と前記第1押圧手段と直交して熱盤に形成される第2押圧手段とによりマットの端縁部を端縁部以外の部分より薄くなるように熱圧するともに、前記各押圧手段によりマット内の木材原料から発生した水蒸気をマット内に滞留させてマット中心部の温度を急激に高めつつ木質ボードを連続的に熱圧成形し、熱圧動作に併せてマット端縁部から水蒸気を排出させながら木質ボードを熱圧成形するようにしたことを特徴とする木質ボードの製造方法。
【請求項9】
請求項5ないし8いずれか記載の木質ボードの製造方法において、木材原料の集合体は、単板状物、木材繊維からなるシート状物、細いスティック状物、フレーク状物及びストランド状物、パーティクル状物のうちのいずれか1種又は数種の集合体からなることを特徴とする木質ボードの製造方法。
【請求項10】
駆動輪の間に架装されて無限走行する上下一対の熱盤間に木材原料の集合体を所定のマット状にフォーミングされた木材原料を挟持・熱圧して木質ボードを形成する連続式ホットプレス装置において、熱盤の両端部に走行方向に設けたマット端縁部の第1押圧手段と前記第1押圧手段と直交して熱盤に形成される第2押圧手段とを設けて、前記マットの端縁部を端縁部以外の部分より薄くなるように熱圧するとともに、前記各押圧手段により水蒸気滞留手段を構成してマット内の木材原料から発生した水蒸気をマット内に滞留させマット中心部の温度を急激に高温度化してマット内の結合剤を急速に硬化させて木質ボードを連続的に熱圧成形しつつ、マット端縁部から水蒸気を排出させるようにしたことを特徴とする連続式ホットプレス装置。
【請求項11】
請求項9記載の連続式ホットプレス装置において、前記第1枠体は駆動輪の部分で回動できるように不連続線状に形成したことを特徴とする連続式ホットプレス装置。
【請求項12】
請求項10又は11いずれか記載の連続式ホットプレス装置において、木材原料の集合体は、単板状物、木材繊維からなるシート状物、細いスティック状物、フレーク状物及びストランド状物、パーティクル状物のうちのいずれか1種又は数種の集合体からなることを特徴とする連続式ホットプレス装置。
【請求項1】
次の工程からなる木質ボードの製造方法。
イ:木材原料の集合体に結合剤を塗布または撒布する工程
ロ:前記工程で結合剤が塗布または撒布された前記木材原料を所定のマット状にフォーミングする工程、
ハ:次いで、フォーミングされた木材原料によるマットを、密閉空間内で熱圧しマット内の木材原料から発生する水蒸気を密閉空間内に滞留させて飽和水蒸気圧を高めることにより、マット中心部の温度を急激に高めてマット内の結合剤を急速に硬化させることにより熱圧時間を短縮して木質ボードを得る工程。
【請求項2】
請求項1記載の木質ボードの製造方法において、前記工程ハにおける水蒸気滞留手段としての密閉空間をマットの周囲に形成した枠体で構成するとともに、熱圧動作完了後に密閉空間内の水蒸気を排気して圧力を開放するようにしたことを特徴とする木質ボードの製造方法。
【請求項3】
請求項2記載の木質ボードの製造方法において、熱圧は一対の熱盤を具えたホットプレス装置によりこれをなし、水蒸気滞留手段としてマットの周囲に形成した前記枠体をいずれかの熱盤に形成したことを特徴とする木質ボードの製造方法。
【請求項4】
請求項1ないし3いずれか記載の木質ボードの製造方法において、木材原料の集合体は、単板状物、木材繊維からなるシート状物、細いスティック状物、フレーク状物及びストランド状物、パーティクル状物のうちのいずれか1種又は数種の集合体からなることを特徴とする木質ボードの製造方法。
【請求項5】
次の工程からなる木質ボードの製造方法。
イ:木材原料の集合体に結合剤を塗布または撒布する工程
ロ:前記工程で結合剤が塗布または撒布された前記木材原料を所定のマット状にフォーミングする工程、
ハ:次いで、フォーミングされた木材原料によるマットを熱圧し、マットの端縁部を端縁部当接手段によりその端縁部が端縁部以外の部分より薄くなるように熱圧するとともに、マット内の木材原料から発生した水蒸気をマット内に滞留させてマット内部の飽和水蒸気圧を高めることにより、マット中心部の温度を急激に高めてマット内の結合剤を急速に硬化させて木質ボードを得る工程。
【請求項6】
請求項5記載の木質ボードの製造方法において、熱圧動作に併せてマット内部の水蒸気をマットの前記端縁部から排気するようにしたことを特徴とする木質ボードの製造方法。
【請求項7】
請求項5又は6記載の木質ボードの製造方法において、前記工程ハの熱圧は熱盤を具えたホットプレス装置によりこれをなすとともに、熱盤に形成した水蒸気滞留手段としてのマット端縁部押圧手段によりマットの端縁部を端縁部以外の部分より薄くなるように熱圧するとともにマット端縁部押圧手段によりマット内の木材原料から発生した水蒸気をマット内に滞留させてマット中心部の温度を急激に高めつつマット端縁部から水蒸気を排出させながら木質ボードを熱圧成形するようにしたことを特徴とする木質ボードの製造方法。
【請求項8】
請求項5又は6記載の木質ボードの製造方法において、前記ホットプレス装置は無限走行する上下一対の熱盤の間に前記マットを挟持して連続的に熱圧する連続式ホットプレス装置であり、熱盤の両端部に走行方向に設けたマット端縁部の第1押圧手段と前記第1押圧手段と直交して熱盤に形成される第2押圧手段とによりマットの端縁部を端縁部以外の部分より薄くなるように熱圧するともに、前記各押圧手段によりマット内の木材原料から発生した水蒸気をマット内に滞留させてマット中心部の温度を急激に高めつつ木質ボードを連続的に熱圧成形し、熱圧動作に併せてマット端縁部から水蒸気を排出させながら木質ボードを熱圧成形するようにしたことを特徴とする木質ボードの製造方法。
【請求項9】
請求項5ないし8いずれか記載の木質ボードの製造方法において、木材原料の集合体は、単板状物、木材繊維からなるシート状物、細いスティック状物、フレーク状物及びストランド状物、パーティクル状物のうちのいずれか1種又は数種の集合体からなることを特徴とする木質ボードの製造方法。
【請求項10】
駆動輪の間に架装されて無限走行する上下一対の熱盤間に木材原料の集合体を所定のマット状にフォーミングされた木材原料を挟持・熱圧して木質ボードを形成する連続式ホットプレス装置において、熱盤の両端部に走行方向に設けたマット端縁部の第1押圧手段と前記第1押圧手段と直交して熱盤に形成される第2押圧手段とを設けて、前記マットの端縁部を端縁部以外の部分より薄くなるように熱圧するとともに、前記各押圧手段により水蒸気滞留手段を構成してマット内の木材原料から発生した水蒸気をマット内に滞留させマット中心部の温度を急激に高温度化してマット内の結合剤を急速に硬化させて木質ボードを連続的に熱圧成形しつつ、マット端縁部から水蒸気を排出させるようにしたことを特徴とする連続式ホットプレス装置。
【請求項11】
請求項9記載の連続式ホットプレス装置において、前記第1枠体は駆動輪の部分で回動できるように不連続線状に形成したことを特徴とする連続式ホットプレス装置。
【請求項12】
請求項10又は11いずれか記載の連続式ホットプレス装置において、木材原料の集合体は、単板状物、木材繊維からなるシート状物、細いスティック状物、フレーク状物及びストランド状物、パーティクル状物のうちのいずれか1種又は数種の集合体からなることを特徴とする連続式ホットプレス装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2011−167953(P2011−167953A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−34348(P2010−34348)
【出願日】平成22年2月19日(2010.2.19)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成21年度、農林水産省「新たな農林水産政策を推進する実用技術開発委託事業、乾燥工程を省略したボード製造技術の開発」委託事業 産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(501186173)独立行政法人森林総合研究所 (91)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月19日(2010.2.19)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成21年度、農林水産省「新たな農林水産政策を推進する実用技術開発委託事業、乾燥工程を省略したボード製造技術の開発」委託事業 産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(501186173)独立行政法人森林総合研究所 (91)
【Fターム(参考)】
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