説明

木質ボード及びその製造方法

【課題】ホルムアルデヒド放散量が低く、耐水性能が高い木質ボード及びその製造方法を提供する。
【解決手段】含水率130%の木質繊維に、分子量200のポリエチレングリコールを樹脂固形分に対して5重量%添加した尿素・メラミン樹脂を、木質絶乾重量に対し15重量%を噴霧し、その後、ドライヤーで含水率を10%まで乾燥させた。この乾燥木質繊維を厚さ100mmにマット成形した後、熱板温度180℃、圧締時間60秒、初期圧締圧力40Kg/cmでプレスし、厚さ4mmの木質繊維ボードを製造した。なお、尿素・メラミン樹脂としては、尿素0.5モル及びメラミン0.5モルに対して、ホルムアルデヒド1モルの比率で反応させた尿素・メラミン樹脂組成物を使用した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ホルムアルデヒド系接着剤を用いた木質ボード及びその製造方法、特に、ホルムアルデヒドの放散量が少なく、耐水性に優れた木質ボード及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ホルムアルデヒド系接着剤を用いた木質ボードは、ホルムアルデヒド系接着剤を噴霧した木質繊維をホーミング成形することによって製造されるが、JIS規格におけるホルムアルデヒドの放散量の性能区分F☆☆☆☆(Fフォースター)相当の木質ボード、即ち、ホルムアルデヒド放散量が0.3mg/l以下の木質ボードは、ホルムアルデヒドの放散量を抑制するために、ホルムアルデヒド系接着剤中に含まれるホルムアルデヒド量を低減させていた。
【0003】
しかしながら、ホルムアルデヒド系接着剤中のホルムアルデヒドの含有量を減少させると、ホルムアルデヒド系接着剤の木材への塗れ性が低下するため接着力が低下し、その結果、耐水性が悪化するので、メラミン樹脂または尿素樹脂、尿素・メラミン共縮合樹脂等のホルムアルデヒド系樹脂で、ホルムアルデヒド放散量が低く、耐水性能が高い木質ボードを製造するのは困難であった。
【0004】
従って、従来は、木質ボードの製造に際し、ホルムアルデヒド系接着剤を噴霧した木質繊維をホーミング成形した後、ホルムアルデヒド捕捉剤が添加された水溶液を噴霧することにより、繊維板の調湿と同時に繊維板製造に用いられるホルムアルデヒド系接着剤による残存ホルムアルデヒドを捕集することで、木質ボードからのホルムアルデヒド放散量を抑制するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−189873号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述したように、ホルムアルデヒド捕捉剤が添加された水溶液を木質ボードの表面に噴霧することでホルムアルデヒド放散量を抑制する場合、木質ボードの表面平滑性を上げる目的でサンディング処理を行うと、当該水溶液が浸透した表層部が削り取られるので、ホルムアルデヒド放散量の抑制効果が低下したり、多量の水分を木質ボードの表面に噴霧するために表面平滑性が悪化したり、ホルムアルデヒド捕捉剤中に含まれる浸透剤により木質ボードの耐水性が低下したりするといった新たな問題が発生する。
【0007】
そこで、この発明の課題は、ホルムアルデヒド放散量が低く、耐水性能が高い木質ボード及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、請求項1に係る発明は、ホルムアルデヒド系接着剤を噴霧した木質繊維を、ホーミング成形してなる木質ボードにおいて、前記ホルムアルデヒド系接着剤は、尿素及びメラミンの混合物、尿素またはメラミン1モルに対して、ホルムアルデヒド0.8〜1.0モルの比率で反応させた樹脂組成物であり、その樹脂固形分に対し、1.0重量%〜10.0重量%のポリエチレングリコールを添加したものを使用したことを特徴とする木質ボードを提供するものである。
【0009】
また、請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明の木質ボードにおいて、前記ホルムアルデヒド系接着剤に添加する前記ポリエチレングリコールの分子量が200〜10000であることを特徴としている。
【0010】
また、上記の課題を解決するため、請求項3に係る発明は、ホルムアルデヒド系接着剤を噴霧した木質繊維をホーミング成形する木質ボードの製造方法において、前記ホルムアルデヒド系接着剤は、尿素及びメラミンの混合物、尿素またはメラミン1モルに対して、ホルムアルデヒド0.8〜1.0モルの比率で反応させた樹脂組成物であり、その樹脂固形分に対し、1.0重量%〜10.0重量%のポリエチレングリコールを添加したものを使用したことを特徴とする木質ボードの製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0011】
以上のように、請求項3に係る発明の製造方法によって製造される請求項1に係る発明の木質ボードは、使用しているホルムアルデヒド系接着剤が、尿素及びメラミンの混合物、尿素またはメラミン1モルに対して、ホルムアルデヒド0.8〜1.0モルの比率で反応させた樹脂組成物であり、ホルムアルデヒド系接着剤中のホルムアルデヒドの含有量が少ないので、木質ボードからのホルムアルデヒド放散量を0.3mg/l以下に抑制することができ、F☆☆☆☆の性能を確保することができる。
【0012】
しかも、この木質ボードでは、使用しているホルムアルデヒド系接着剤の樹脂固形分に対して、1.0重量%〜10.0重量%のポリエチレングリコールが添加されているので、F☆☆☆☆の性能を確保するために、ホルムアルデヒド系接着剤中のホルムアルデヒドの含有量を減少させても、十分な耐水性能を確保することができる。
【0013】
なお、尿素及びメラミンの混合物、尿素またはメラミン1モルに対して反応させるホルムアルデヒドを0.8モル以上としたのは、反応させるホルムアルデヒドが0.8モルを下回ると、ポリエチレングリコールを添加しても、十分な耐水性能を確保することができなくなるからであり、ホルムアルデヒド系接着剤の樹脂固形分に対して添加するポリエチレングリコールを10.0重量%以下としたのは、ポリエチレングリコールの添加量が10.0重量%を上回ると、接着強度が低下したり、接着剤の硬化を阻害したりするおそれがあるからである。
【0014】
ホルムアルデヒド系接着剤に添加するポリエチレングリコールの分子量が小さすぎると、ホルムアルデヒド系接着剤を噴霧した木質繊維をホーミング成形する際に揮発するおそれがあり、ポリエチレングリコールの分子量が大きすぎると、ホルムアルデヒド系接着剤に溶解せず、均一に混合させにくくなるので、請求項2に係る発明のように、ホルムアルデヒド系接着剤に添加するポリエチレングリコールの分子量は、200〜10000の範囲内に設定しておくことが望ましい。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施例について、表を参照して説明するが、本発明の木質ボード及びその製造方法はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0016】
(実施例1)
表1に示すように、含水率130%の木質繊維に、分子量200のポリエチレングリコールを樹脂固形分に対して5重量%添加した尿素・メラミン樹脂を、木質絶乾重量に対し15重量%を噴霧し、その後、ドライヤーで含水率を10%まで乾燥させた。
この乾燥木質繊維を厚さ100mmにマット成形した後、熱板温度180℃、圧締時間60秒、初期圧締圧力40Kg/cmでプレスし、厚さ4mmの木質繊維ボードを製造した。
なお、尿素・メラミン樹脂としては、尿素0.5モル及びメラミン0.5モルに対して、ホルムアルデヒド1モルの比率で反応させた尿素・メラミン樹脂組成物を使用した。
【0017】
(実施例2)
表1に示すように、含水率130%の木質繊維に、分子量200のポリエチレングリコールを樹脂固形分に対して10重量%添加した尿素・メラミン樹脂を、木質絶乾重量に対し15重量%を噴霧し、その後、ドライヤーで含水率を10%まで乾燥させた。
この乾燥木質繊維を厚さ100mmにマット成形した後、熱板温度180℃、圧締時間60秒、初期圧締圧力40Kg/cmでプレスし、厚さ4mmの木質繊維ボードを製造した。
なお、尿素・メラミン樹脂としては、尿素0.5モル及びメラミン0.5モルに対して、ホルムアルデヒド1モルの比率で反応させた尿素・メラミン樹脂組成物を使用した。
【0018】
(実施例3)
尿素・メラミン樹脂の製造工程において、尿素0.5モルとメラミン0.5モルにホルムアルデヒド1モルの比率で配合した原料に、分子量6000のポリエチレングリコールを樹脂固形分に対して1重量%添加し、尿素・メラミン樹脂を合成する。
表1に示すように、含水率130%の木質繊維に、このポリエチレングリコール含有尿素・メラミン樹脂を、木質絶乾重量に対し15重量%を噴霧し、その後、ドライヤーで含水率を10%まで乾燥させた。
この乾燥木質繊維を厚さ100mmにマット成形した後、熱板温度180℃、圧締時間60秒、初期圧締圧力40Kg/cmでプレスし、厚さ4mmの木質繊維ボードを製造した。
【0019】
(実施例4)
尿素・メラミン樹脂の製造工程において、尿素0.5モルとメラミン0.5モルにホルムアルデヒド1モルの比率で配合した原料に、分子量6000のポリエチレングリコールを樹脂固形分に対して3重量%添加し、尿素・メラミン樹脂を合成する。
表1に示すように、含水率130%の木質繊維に、このポリエチレングリコール含有尿素・メラミン樹脂を、木質絶乾重量に対し15重量%を噴霧し、その後、ドライヤーで含水率を10%まで乾燥させた。
この乾燥木質繊維を厚さ100mmにマット成形した後、熱板温度180℃、圧締時間60秒、初期圧締圧力40Kg/cmでプレスし、厚さ4mmの木質繊維ボードを製造した。
【0020】
(実施例5)
尿素・メラミン樹脂の製造工程において、尿素0.5モルとメラミン0.5モルにホルムアルデヒド1モルの比率で配合した原料に、分子量1000のポリエチレングリコールを樹脂固形分に対して3重量%添加し、尿素・メラミン樹脂を合成する。
表1に示すように、含水率130%の木質繊維に、このポリエチレングリコール含有尿素・メラミン樹脂を、木質絶乾重量に対し15重量%を噴霧し、その後、ドライヤーで含水率を10%まで乾燥させた。
この乾燥木質繊維を厚さ100mmにマット成形した後、熱板温度180℃、圧締時間60秒、初期圧締圧力40Kg/cmでプレスし、厚さ4mmの木質繊維ボードを製造した。
【0021】
(比較例)
表1に示すように、含水率130%の木質繊維に、尿素・メラミン樹脂を、木質絶乾重量に対し15重量%を噴霧し、その後、ドライヤーで含水率を10%まで乾燥させた。
この乾燥木質繊維を厚さ100mmにマット成形した後、熱板温度180℃、圧締時間60秒、初期圧締圧力40Kg/cmでプレスし、厚さ4mmの木質繊維ボードを製造した。
なお、尿素・メラミン樹脂としては、尿素0.5モル及びメラミン0.5モルに対して、ホルムアルデヒド1モルの比率で反応させた尿素・メラミン樹脂組成物を使用した。
【0022】
上述した実施例1〜5及び比較例のそれぞれに対してJIS規格A5905に基づき20℃吸水厚さ膨張率試験及び70℃吸水厚さ膨張率試験を行うと共に、ホルムアルデヒド放散量を測定し、それぞれの結果を表1に示した。
【0023】
【表1】

【0024】
〔20℃吸水厚さ膨張率試験〕
幅50mm×長さ50mmの試料片の厚さを測定した後、これを20℃の水に24時間浸漬し、試料片を取り出して濡れたままの試料片の厚さを測定し、次式によって膨張率を算出する。
膨張率(%)=(t−t)/t×100
:吸水前の厚さ[mm]
:吸水後の厚さ[mm]
【0025】
〔70℃吸水厚さ膨張率試験〕
幅50mm×長さ50mmの試料片の厚さを測定した後、これを70℃の温水に2時間浸漬し、さらに、常温水に1時間浸漬した後、試料片を取り出し、濡れたままの試料片の厚さを測定し、次式によって膨張率を算出する。
膨張率(%)=(t−t)/t×100
:吸水前の厚さ[mm]
:吸水後の厚さ[mm]
【0026】
表1に示すように、実施例1〜5及び比較例の木質ボードは、ホルムアルデヒド放散量が全てF☆☆☆☆相当の性能を備えているが、ポリエチレングリコールを樹脂固形分に対して1〜10重量%添加した尿素・メラミン樹脂を使用している実施例1〜5の木質ボードについては、ポリエチレングリコールを添加していない尿素・メラミン樹脂を使用している比較例の木質ボードに比べて、20℃吸水厚さ膨張率試験及び70℃吸水厚さ膨張率試験における膨張率が低下しており、耐水性能が向上していることがわかる。特に、70℃吸水厚さ膨張率試験における膨張率は、比較例の木質ボードに対して、10%程度低下しており、耐水性能がかなり向上していることがわかる。
【0027】
以上のように、尿素0.5モル及びメラミン0.5モルに対して、ホルムアルデヒド1モルの比率で反応させた尿素・メラミン樹脂組成物を使用して製造された木質ボードは、ホルムアルデヒドの含有量が少ないので、木質ボードからのホルムアルデヒド放散量を0.3mg/l以下に抑制することができ、F☆☆☆☆の性能を確保することができる。しかも、尿素・メラミン樹脂組成物には、その樹脂固形分に対してポリエチレングリコールを1〜10重量%添加することによって、F☆☆☆☆の性能を確保するために、尿素・メラミン樹脂組成物中のホルムアルデヒドの含有量を減少させても、十分な耐水性能を確保することができる。
【0028】
なお、上述した各実施例では、尿素0.5モル及びメラミン0.5モルに対して、ホルムアルデヒド1モルの比率で反応させた尿素・メラミン樹脂組成物からなるホルムアルデヒド系接着剤を使用しているが、これに限定されるものではなく、ホルムアルデヒド系接着剤は、尿素とメラミンの混合物1モル、メラミン1モル、尿素1モルまたはフェノール1モルに対して、ホルムアルデヒド0.8〜1.0モルの比率で反応させた尿素・メラミン樹脂組成物、メラミン樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂といった樹脂組成物を使用することができる。
【0029】
また、反応させるホルムアルデヒドは、少なければ少ないほど、製造された木質ボードからのホルムアルデヒド放散量を抑制することができるが、反応させるホルムアルデヒドが0.8モルを下回ると、ポリエチレングリコールを添加しても、十分な耐水性能を確保することができなくなるので、0.8〜1.0モルの範囲に設定しておく必要がある。
【0030】
また、ホルムアルデヒド系接着剤へのポリエチレングリコールの添加量が多いほうが、耐水性能が向上するが、ポリエチレングリコールの添加量が10.0重量%を上回ると、接着強度が低下したり、接着剤の硬化を阻害したりするおそれがあるので、ホルムアルデヒド系接着剤の樹脂固形分に対して添加するポリエチレングリコールは、10.0重量%以下に制限しておくことが望ましい。
【0031】
また、ホルムアルデヒド系接着剤に添加するポリエチレングリコールの分子量が小さすぎると、ホルムアルデヒド系接着剤を噴霧した木質繊維をホーミング成形する際に揮発するおそれがあり、ポリエチレングリコールの分子量が大きすぎると、ホルムアルデヒド系接着剤に溶解せず、均一に混合させにくくなるので、ホルムアルデヒド系接着剤に添加するポリエチレングリコールの分子量は、200〜10000の範囲内に設定しておくことが望ましい。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明は、ホルムアルデヒド放散量が低く、耐水性能に優れた木質ボードに適用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホルムアルデヒド系接着剤を噴霧した木質繊維を、ホーミング成形してなる木質ボードにおいて、
前記ホルムアルデヒド系接着剤は、尿素及びメラミンの混合物、尿素またはメラミン1モルに対して、ホルムアルデヒド0.8〜1.0モルの比率で反応させた樹脂組成物であり、その樹脂固形分に対し、1.0重量%〜10.0重量%のポリエチレングリコールを添加したものを使用したことを特徴とする木質ボード。
【請求項2】
前記ホルムアルデヒド系接着剤に添加する前記ポリエチレングリコールの分子量が200〜10000である請求項1に記載の木質ボード。
【請求項3】
ホルムアルデヒド系接着剤を噴霧した木質繊維をホーミング成形する木質ボードの製造方法において、
前記ホルムアルデヒド系接着剤は、尿素及びメラミンの混合物、尿素またはメラミン1モルに対して、ホルムアルデヒド0.8〜1.0モルの比率で反応させた樹脂組成物であり、その樹脂固形分に対し、1.0重量%〜10.0重量%のポリエチレングリコールを添加したものを使用したことを特徴とする木質ボードの製造方法。

【公開番号】特開2011−31523(P2011−31523A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−180712(P2009−180712)
【出願日】平成21年8月3日(2009.8.3)
【出願人】(000000413)永大産業株式会社 (243)
【Fターム(参考)】