説明

木質化粧板

【課題】より高度な意匠性と自然で且つ重厚な木質感とが有利に発揮され得るだけでなく、優れた耐候性能も効果的に発揮され得る木質化粧板を提供する
【解決手段】導管の開口部を有する意匠面18を備えた木質の突板14を、該意匠面18とは反対側の面において、基材12上に、カルボジイミドを含有するポリエステルポリウレタン樹脂組成物により形成された接着剤層16を介して接着すると共に、該突板14の意匠面18に、該意匠面18を保護するトップコート層26を、前記導管の開口部を埋めない厚さで形成して、構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木質化粧板に係り、特に、導管が開口する意匠面を備えた突板が基材上に接着されると共に、かかる突板の意匠面にトップコート層が形成されてなる木質化粧板の改良された構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、木目等の美しい模様を有する木材(突板)を基材表面に接着して得られる木質化粧板は、高級な木質の表面を、手軽に且つ低コストに得ることが出来るところから、自動車用内装部品や家具、建築材、家電製品等の様々な製品の表面材として、広く利用されてきている。
【0003】
そして、そのような木質化粧板にあっては、一般に、クリア塗装(クリア塗料を用いた塗装)により、突板の意匠面に、それを保護する透明な塗膜からなるトップコート層が積層形成されて、突板意匠面(化粧板表面)の傷付き等が防止されると共に、突板意匠面に光沢が付与され得るようになっている(例えば、下記特許文献1参照)。
【0004】
ところで、各種の木質製品の意匠面に対する塗装方法(塗装仕上げ)の一種として、木質製品の意匠面において開口する導管を塗料で埋めないように塗装する(仕上げる)、所謂オープンポア塗装(オープンポア仕上げ)が、知られている。このオープンポア塗装が施された木質製品においては、意匠面に、導管の開口部に対応した微小乃至は微細な凹部(凹溝を含む。以下同一の意味において使用する。)が形成され、それによって、深みのある陰影や凹凸感のある肌触りが得られるようになり、以て、更に優れた意匠性と、より自然で且つ重厚な木質感とが、効果的に発揮され得るのである。
【0005】
ところが、そのようなオープンポア塗装によってトップコート層が形成されてなる従来の木質化粧板には、以下の如き問題が内在していた。
【0006】
すなわち、オープンポア塗装によって突板の意匠面に形成されたトップコート層は、意匠面の導管の開口部を埋めないように、その厚さが十分に薄くされる。このため、そのようなトップコート層を有する木質化粧板の表面に水分が付着すると、その水分が薄肉のトップコート層を容易に透過して、突板に浸透し、やがて突板を基材に接着する接着剤層にまで到達するようになる。一方、突板を基材に接着する接着剤層は、多くの場合、突板に対して優れた付着性を発揮するポリエステルポリウレタン樹脂組成物によって形成されているが、このポリエステルポリウレタン樹脂組成物は加水分解し易いといった特性を有している。それ故、トップコート層がオープンポア塗装によって形成された木質化粧板にあっては、高温多湿の環境や表面に水分が付着し易い環境で使用される場合、表面に付着して、内部に浸透した水分により、接着剤層の加水分解が惹起され、それが原因で、突板の基材に対する接着力(接着強度)が低下し、場合によっては、突板が、基材から剥離してしまう恐れさえもあったのである。
【0007】
なお、トップコート層の厚さを厚くすれば、水分がトップコート層を透過することが防止されて、突板を基材に接着する接着剤層の加水分解の発生が未然に阻止され得る。そして、それにより、木質化粧板が、高温多湿の環境や表面に水分が付着し易い環境の下で使用される場合にあっても、突板の基材に対する十分な接着力が安定的に維持され、以て、木質化粧板の耐候性能の向上が有利に図られ得る。しかしながら、その場合には、導管の開口部に対応した凹部の深さが小さくなってしまうか、或いはそのような凹部の形成が困難となってしまい、最早、トップコート層がオープンポア塗装によって形成されたものとは言えなくなる。そして、その結果、トップコート層がオープンポア塗装によって形成された木質化粧板において得られるべき意匠性と木質感の向上が、到底、望めなくなってしまうのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−347007号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ここにおいて、本発明は、上述せる如き事情を背景にして為されたものであって、その解決課題とするところは、より高度な意匠性と自然で且つ重厚な木質感とが有利に発揮され得るだけでなく、突板と基材との間に介在する接着剤層の耐加水分解性の向上が実現されることにより、高温多湿の環境や表面に水分が付着し易い環境の下での使用によっても、突板の基材に対する十分な接着力が安定的に維持されて、高度な耐候性能が効果的に発揮され得る木質化粧板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そして、本発明は、上記の課題を解決するために、導管が開口する意匠面を備えた木質の突板が、該意匠面とは反対側の面において、基材上に、接着剤層を介して接着されると共に、該突板の意匠面に、該意匠面を保護するトップコート層が形成されてなる木質化粧板において、前記トップコート層が、前記突板の意匠面に、前記導管の開口部を埋めない厚さで形成されていると共に、前記接着剤層が、カルボジイミドを含有するポリエステルポリウレタン樹脂組成物により形成されていることを特徴とする木質化粧板を、その要旨とするものである。
【0011】
なお、導管が開口する意匠面を備えた木質の突板が、該意匠面とは反対側の面において、基材上に、接着剤層を介して接着されると共に、該突板の意匠面に、該意匠面を保護するトップコート層が形成されてなる木質化粧板を製造する際には、(a)カルボジイミドを含有するポリエステルポリウレタン樹脂組成物を含む接着剤を用いて、前記突板を、前記意匠面とは反対側の面において、前記基材上に接着する工程と、(b)前記トップコート層を、前記基材の意匠面に、前記導管の開口部を埋めない厚さで積層形成する工程とを含むことを木質化粧板の製造方法が、有利に採用される。
【発明の効果】
【0012】
すなわち、本発明に従う木質化粧板にあっては、トップコート層が、突板の意匠面に、導管の開口部を埋めないような十分に薄い厚さで形成されている。即ち、トップコート層が、オープンポア塗装等によって形成されているのである。そのため、意匠面において、深みのある陰影や凹凸感のある肌触りが得られるようになり、それによって、更に優れた意匠性と、より自然で且つ重厚な木質感とが、効果的に発揮され得る。
【0013】
また、本発明に係る木質化粧板においては、突板を基材に接着する接着剤層が、突板に対する付着性に優れたポリエステルポリウレタン樹脂組成物にて形成されている。そして、特に、かかるポリエステルポリウレタン樹脂組成物の加水分解防止剤(耐加水分解安定剤)として機能するカルボジイミドが、接着剤層を形成するポリエステルポリウレタン樹脂組成物に含有されている。それ故、たとえ、化粧板の表面に付着した水分が内部に浸透して、接着剤層と接触しても、接着剤層が加水分解するようなことが、効果的に防止され得る。
【0014】
従って、かくの如き本発明に従う木質化粧板にあっては、より高度な意匠性と自然で且つ重厚な木質感とが有利に発揮され得ると共に、高温多湿の環境や表面に水分がし易い環境の下での使用によっても、突板の基材に対する十分な接着力が安定的に維持されて、高度な耐候性能が効果的に発揮され得ることとなるのである。
【0015】
また、上記せる木質化粧板の製造方法を採用する場合にあっても、本発明に従う木質化粧板において奏される作用・効果と実質的に同一の作用・効果が、有利に享受され得る。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に従う構造を有する木質化粧板の部分縦断面説明図である。
【図2】図1における部分拡大説明図である。
【図3】図1に示された木質化粧板を製造する際に実施される工程の一例を示す説明図であって、基材に突板を接着した状態を示している。
【図4】図3に示された工程に引き続いて実施される工程例を示す説明図であって、突板の意匠面に、シーラー層を形成した状態を示している。
【図5】図4に示された工程に引き続いて実施される工程例を示す説明図であって、突板の意匠面に形成されたシーラー層上に、着色層を積層形成した状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の代表的な一実施形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明する。
【0018】
先ず、図1には、本発明に従う木質化粧板の一例として、コンソールボックスの蓋体等のように、表面に水分が付着する可能性のある自動車用内装部品として用いられる木質化粧板10の一部が、縦断面形態において概略的に示されている。かかる図1から明らかなように、本実施形態の木質化粧板10は、基材12と、この基材12上に接着された突板14とを有している。そして、木質化粧板10の表面側部分が、突板14にて構成される一方、その裏面側部分が、基材12にて構成されている。また、そのような木質化粧板10は、全体として、3〜6mm程度の厚さを有する矩形形状を呈している。
【0019】
そこにおいて、基材12は、硬質の材料、例えば、自動車用内装部品の形成材料として、多く用いられるABS樹脂やポリカーボネート/ABS樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ノリル樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂等の熱可塑性の樹脂材料を用いて形成されており、全体として、2〜5mm程度の厚さを有する矩形形状を呈している。なお、図1及び後述する図2乃至図5には、木質化粧板10の全体の厚さや基材12の厚さ、更には、基材12上に積層形成される各層の厚さが、それぞれ、誇張される等して、実際の厚さとは異なるバランスをもって示されていることが理解されるべきである。
【0020】
突板14は、例えば、オバンコール、ブビンガ、バーズアイメープル、カーリーメープル、クラロウォールナット、ホワイトアッシュバール、サペリマホガニー、スギ、ヒノキ、チェリー、チーク等の木目の美しい様々な木材を、板目や柾目、杢目等の所望の木目が現われるように、0.1〜0.3mm程度の厚さでスライスして得られる平板材からなっている。
【0021】
この突板14においては、図1及び図2から明らかなように、厚さ方向の一方側の面が、意匠面18とされており、かかる意匠面18には、そこにおいて開口する導管の開口部20が、多数存在している。これら多数の導管開口部20は、図2には明示されていないものの、意匠面18上において種々の長さや幅をもって延びる凹溝形態を呈するものや、種々の大きさの穴形態を呈するもの等、様々な種類のものからなっている。また、それら様々な種類の導管開口部20は、何れも、極めて小さな深さを有している。
【0022】
そして、そのような突板14の意匠面18上には、シーラー層22と着色層24とトップコート層26とが、その順番で積層形成されている。それら三つの層22,24,26のうちの中間に位置する着色層24は、有色の塗膜からなり、突板14の意匠面18を着色して、意匠面18の色調を整えること等を目的として、意匠面18上に積層されている。なお、このような着色層24を与える有色の塗料の種類は、特に限定されるものではなく、木質化粧板10を所望の色に着色可能なものの中から適宜に選定される。
【0023】
また、かかる着色層24は、突板14の意匠面18に存在する多数の導管開口部20を埋めない厚さ、例えば、35μm以下、好ましくは25μm以下程度の極めて薄い厚さとされている。これにより、着色層24には、突板14の意匠面18の各導管開口部20に対応した位置に、突板14側とは反対側の面において開口する中間凹部28が、多数形成されている。なお、着色層24の厚さが余りに薄いと、突板14の意匠面18の着色効果が十分に得られない恐れがあるところから、着色層24の厚さは、15μm以上程度とされていることが、望ましい。
【0024】
一方、かかる着色層24における突板14の意匠面18側とは反対側の面上に積層されたトップコート層26は、無色透明な塗膜からなっている。そして、突板14の意匠面18の傷付き等を防止して、意匠面18を保護すると共に、かかる意匠面18に光沢や深みを付与する等の役割をもって、木質化粧板10の表面側部分を形成している。なお、このトップコート層26を形成する塗料としては、例えば、アクリル樹脂やポリカーボネート樹脂、シクロオレフィン樹脂、ノルボルネン樹脂、ポリアリレート樹脂等の透明な樹脂層を与える樹脂材料からなるクリア塗料、或いはそれらの樹脂材料を含むクリア塗料が、適宜に用いられる。
【0025】
そして、ここでは、このトップコート層26が、突板14の意匠面18に存在する多数の導管開口部20、更には着色層24の突板14側とは反対側の面に、各導管開口部20に対応して設けられた中間凹部28を、それぞれ埋めない厚さ、例えば、140μm以下程度の極めて薄い厚さとされている。これにより、トップコート層26には、突板14の意匠面18の各導管開口部20に対応した位置に、突板14側とは反対側の表面において開口する外側凹部30が、多数形成されている。なお、トップコート層26の厚さが余りに薄いと、トップコート層26による突板14の意匠面18の保護効果が極めて不十分となる恐れがあるところから、トップコート層26の厚さは、20μm以上程度とされていることが、望ましい。
【0026】
シーラー層22は、突板14の意匠面18に対して直接に積層形成されて、突板14と着色層24との間に位置させられている。そうして、かかるシーラー層22が、例えば、着色層24を形成する有色の塗料の突板14への染込み等を阻止して、着色層24にて着色された突板14の意匠面18での色ムラの発生を防止する働きや、突板14の意匠面18と着色層24との密着性を高める役割を十分に果たし得るようになっている。
【0027】
また、このシーラー層22は、突板14の意匠面18に存在する多数の導管開口部20を埋めない厚さ、例えば、10μm以下、好ましくは8μm以下程度の極めて薄い厚さとされている。これにより、シーラー層22には、突板14の意匠面18の各導管開口部20に対応した位置に、突板14側とは反対側の表面において開口する内側凹部32が、多数形成されている。なお、シーラー層22の形成材料としては、例えば、ウレタン系アクリル樹脂やポリウレタン樹脂等の2液の樹脂材料からなるクリア塗料、或いはそれらの樹脂材料を含むクリア塗料等が、適宜に用いられる。
【0028】
そして、それらシーラー層22と着色層24とトップコート層26が意匠面18上に積層形成された突板14が、意匠面18とは反対側の面において、基材12に対して、接着剤層16を介して、接着されているのである。この突板14と基材12との間に介在する接着剤層16の厚さは、一般に、15〜35μm程度とされる。
【0029】
そして、本実施形態の木質化粧板にあっては、特に、かかる接着剤層16が、従来の木質化粧板の突板と基材との間に介在する接着剤層とは別異のものからなり、そこに大きな特徴が存しているのである。
【0030】
すなわち、本実施形態では、接着剤層16が、カルボジイミドを含有するポリエステルポリウレタン樹脂組成物によって形成されている。このカルボジイミドは、エステル基を有する樹脂組成物の加水分解防止剤として機能するものである。それ故、そのようなカルボジイミドを含有するポリエステルポリウレタン樹脂組成物にて形成された接着剤層16においては、耐加水分解性が有利に高められているのである。
【0031】
なお、ポリエステルポリウレタン樹脂組成物に含有されるカルボジイミドとしては、その種類が特に限定されるものではなく、例えば、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)やジイソプロピルカルボジイミド(DIC)、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDAC)等の公知のカルボジイミドが、それぞれ単独で、或いはそれらが組み合わされて、使用され得る。
【0032】
また、カルボジイミドをポリエステルポリウレタン樹脂組成物中に含有させる(添加する)方法も、何等限定されるものではない。その方法としては、例えば、予め、ポリエステルポリウレタン樹脂組成物の原料たるポリイソシアネートとポリエステルポリオールのうちの少なくとも何れか一方に添加する方法や、プレポリマーに添加する方法、或いは重合後のポリエステルポリウレタン樹脂に添加する方法等が、挙げられる。
【0033】
さらに、ポリエステルポリウレタン樹脂組成物中へのカルボジイミドの含有量は、特に限定されるものではないものの、一般には、0.1〜20重量%程度の範囲内の値とされる。何故なら、カルボジイミドの含有量が0.1重量%を下回る場合には、カルボジイミドの添加によるポリエステルポリウレタン樹脂組成物の耐加水分解性の向上効果が不十分となってしまうからであり、また、カルボジイミドの含有量が20重量%を超える場合には、多量のカルボジイミドの使用によりコストが高騰するだけでなく、ポリエステルポリウレタン樹脂組成物の物性が低下する恐れがあるからである。
【0034】
ところで、かくの如き構造とされた木質化粧板10を製造する際には、以下の如き手順に従って、その操作が進められることとなる。
【0035】
先ず、基材12と突板14とを準備する。基材12は、例えば、先に基材12の形成材料として例示した樹脂材料を用いた公知の射出成形を行って、基材12を、目的とする木質化粧板10の全体形状に対応した形状において成形すること等により、準備される。
【0036】
また、突板14は、前記せる如く、意匠面18に、所望の木目が現れ、且つ多数の導管開口部20が存在するように、所定の木材から薄い厚さで切り出される等して、準備される。更に、この突板14は、所定の木材から切り出された後、乾燥処理が施される。そして、かかる突板14に対しては、後述する突板14への接着後等における気泡の発生を防ぐために、乾燥処理後、減圧又は加圧下において、フェノール樹脂やメラミン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂等の樹脂を含浸せしめる含浸処理が、必要に応じて実施される。
【0037】
なお、突板14は、単独でも使用出来るが、例えば、意匠面18とは反対側の裏面に裏打ち層を接着した状態でも、使用可能である。この裏打ち層としては、一般に、厚さが0.1〜0.2mm程度のクラフト紙や樹脂含浸紙等の紙、織布や不織布等の布帛、或いは樹脂フィルムや金網等が適宜に用いられ得る。このような裏打ち層を突板14の裏面に接着することによって、突板14の搬送工程における損傷等が有利に防止され得ると共に、木質化粧板10の作製後に、突板14が乾燥して、割れ破損や波打ち変形が惹起されることも、効果的に防止され得ることとなる。
【0038】
次に、図3に示されるように、基材12の厚さ方向一方の面に、前記せる如きカルボジイミドを含有するポリエステルポリウレタン樹脂組成物からなる接着剤を塗布した後、突板14を、意匠面18とは反対側の面において重ね合わせた状態で、接着剤を硬化せしめる。これにより、接着剤層16を形成すると共に、突板14を、意匠面18とは反対側の面において、基材12に接着する。
【0039】
引き続き、図4に示される如く、基材12に接着された突板14の意匠面18上に、例えば、ウレタン系アクリル樹脂やポリウレタン樹脂等の2液の樹脂材料からなるクリア塗料を、意匠面18に存在する多数の導管開口部20を埋めないように(閉塞させないように)、導管開口部20の深さよりも薄い厚さで塗布した後、かかるクリア塗料を硬化させる。これにより、突板14の意匠面18上に、樹脂層からなるシーラー層22を積層形成する。つまり、オープンポア塗装にて、シーラー層22を形成するのである。また、それと共に、突板14の意匠面18に存在する多数の導管開口部20のそれぞれの内面を、シーラー層22の一部にて被覆することにより、シーラー層22の突板14側とは反対側の面における各導管開口部20の形成位置に、内側凹部32をそれぞれ形成する。
【0040】
その後、図5に示されるように、例えば茶色等を呈する有色の塗料を、シーラー層22の突板14側とは反対側の面に、多数の導管開口部20に対応して形成された多数の内側凹部32を埋めないように(閉塞させないように)、内側凹部32の深さよりも薄い厚さで塗布する。これによって、シーラー層22の突板14側とは反対側の面に、着色層24を積層形成する。つまり、オープンポア塗装にて、着色層24を形成するのである。また、それと共に、各内側凹部32の内面を、着色層24の一部にて被覆することにより、着色層24のシーラー層22側とは反対側の面における各内側凹部32(各導管開口部20)の形成位置に、中間凹部28をそれぞれ形成する。
【0041】
次いで、かくして形成された着色層24のシーラー層22側とは反対側の面に、先に例示したクリア塗料を、多数の導管開口部20に対応して形成された多数の中間凹部28を埋めないように(閉塞させないように)、中間凹部28の深さよりも薄い厚さで塗布する。これによって、着色層24のシーラー層22側とは反対側の面に、クリア塗膜を形成し、以て、このクリア塗膜にて、トップコート層26を積層形成する。つまり、オープンポア塗装にて、トップコート層26を形成するのである。また、それと共に、各中間凹部28の内面を、トップコート層26の一部にて被覆することにより、トップコート層26の着色層24側とは反対側の面における各中間凹部28(各導管開口部20)の形成位置に、外側凹部30をそれぞれ形成する。
【0042】
かくして、図1に示されるように、基材12に接着された突板14の意匠面18上に、シーラー層22と着色層24とトップコート層26とが、その順番で積層形成されてなる木質化粧板10を得るのである。
【0043】
このように、本実施形態の木質化粧板10においては、突板14の意匠面18に対して、シーラー層22と着色層24とトップコート層26とが、何れも、オープンポア塗装により、導管開口部20を埋めない十分に薄い厚さで形成されていることにより、木質化粧板10の表面(意匠面)を与えるトップコート層26の表面に、突板14の意匠面18に存在する多数の導管開口部20に対応した外側凹部30が多数形成されている。それ故、かかる木質化粧板10では、その表面において、深みのある陰影や凹凸感のある肌触りが得られ、以て、更に優れた意匠性と、より自然で且つ重厚な木質感とが、効果的に発揮され得るのである。
【0044】
また、本発明に係る木質化粧板10では、突板14を基材12に接着する接着剤層16が、突板14に対する付着性に優れるだけでなく、カルボジイミドの含有によって高い耐加水分解性を発揮するポリエステルポリウレタン樹脂組成物からなる接着剤を用いて形成されている。このため、かかる木質化粧板10においては、その意匠面18側の表面に付着した水分が、薄肉のトップコート層26と着色層24とシーラー層22とを何れも透過し、更に突板14に浸透して、接着剤層16と接触しても、接着剤層16が加水分解されることが、効果的に防止され得る。また、それにより、接着剤層16の加水分解が原因で、突板14の基材12に対する接着力が低下したり、或いは突板14が基材12から剥がれたりするようことが、未然に阻止され得る。
【0045】
従って、このような本実施形態に係る木質化粧板10にあっては、車室内への設置状態下で、より高度な意匠性と自然で且つ重厚な木質感とが有利に発揮され得るのであり、また、たとえトップコート層26の表面に水分が頻繁に付着するようなことがあっても、突板14の基材12に対する十分な接着力が安定的に維持されて、高度な耐候性能が効果的に発揮され得ることとなるのである。
【0046】
加えて、本実施形態の木質化粧板10においては、突板14の意匠面18上に、有色の着色層24が、無色透明のシーラー層22を介して積層形成されていることで、突板14の意匠面18、つまり化粧板10の表面が、所望の色に色付けされており、以て、より優れた意匠性が発揮され得る。
【0047】
以上、本発明の代表的な実施形態について詳述してきたが、それはあくまでも例示に過ぎないものであって、本発明は、そのような実施形態に係る具体的の記述によって、何等限定的に解釈されるものではないことが、理解されるべきである。
【0048】
例えば、前記実施形態では、突板14の意匠面18とトップコート層26との間に、着色層24とシーラー層22とが形成されていたが、それら着色層24とシーラー層22とを省略することも出来る。なお、着色層24とシーラー層22とを形成する場合には、例えば、シーラー層22上に有色の樹脂フィルムを貼り付けて、この有色の樹脂フィルムにて、着色層24を形成しても良い。この場合にあっても、かかる着色層24を形成する樹脂フィルムの表面に、中間凹部28を形成する必要がある。
【0049】
また、基材12の材質は、樹脂以外であっても良い。
【0050】
その他、一々列挙はしないが、本発明は、当業者の知識に基づいて種々なる変更、修正、改良等を加えた態様において実施され得るものであり、また、そのような実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも、本発明の範囲内に含まれるものであることは、言うまでもないところである。
【実施例】
【0051】
以下に、本発明の代表的な実施例を示し、本発明を更に具体的に明らかにすることとするが、本発明が、そのような実施例の記載によって、何等の制約をも受けるものでないことは、また、言うまでもないところである。
【0052】
先ず、ABS樹脂を用いた射出成形を行って、長さ×幅×厚さが100mm×70mm×3mmの矩形平板状を呈する基材を2枚成形して、準備した。また、その一方で、オバンコール材を、板目や柾目、杢目等の所望の木目が現われ、且つ表面に、多数の導管開口部が存在するように、0.3mmの厚さでスライスして、2枚の平板材を得た。そして、それら2枚の平板材を、それぞれ突板として、準備した。更に、突板を基材に接着するための接着剤として、ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)カルボジイミドを適量含有するポリエステルポリウレタン樹脂組成物からなる接着剤Aと、カルボジイミドを何等含有しないポリエステルポリウレタン樹脂組成物からなる接着剤Bとを、それぞれ、所定量準備した。
【0053】
次いで、準備された2枚の基材のうちの1枚と、2枚の突板のうちの1枚とを、それぞれ用い、1枚の基材の厚さ方向一方の面上に、先に準備された接着剤Aを15μm以上の厚さで塗布した後、1枚の突板を重ね合わせて、接着した。これにより、突板が、接着剤Aにて基材上に接着されてなると共に、突板の基材側とは反対側の面が意匠面とされて、この意匠面に多数の導管開口部が存在せしめられてなる接合体Aを得た。
【0054】
その後、この接合体Aの意匠面上に、シリコン系アクリル樹脂からなる市販のクリア塗料を、意匠面に存在する多数の導管開口部を埋めないように、40μm以下の厚さで塗布して、シーラー層を形成した。次いで、シーラー層の突板側とは反対側の面上に、市販の茶色の塗料を25μmの厚さで塗布して、着色層を形成した後、この着色層上に、市販のアクリル樹脂を100μmの厚さで塗布して、トップコート層を形成した。
【0055】
かくして、カルボジイミドを含有するポリエステルポリウレタン樹脂組成物からなる接着剤Aにより、突板が基材に接着されると共に、突板の意匠面上に、シーラー層と着色層とトップコート層とが、オープンポア塗装により、薄い厚さで積層形成されてなる木質化粧板(本発明例)を得た。
【0056】
また、それとは別に、準備された2枚の基材のうちの残りの1枚と、2枚の突板のうちの残りの1枚と、先に準備された接着剤Bとを用い、残りの1枚の基材の厚さ方向一方の面上に、接着剤Bを15μm以上の厚さで塗布した後、残りの1枚の突板を重ね合わせて、接着した。これにより、突板が、接着剤Bにて基材上に接着されてなると共に、突板の基材側とは反対側の面が意匠面とされて、この意匠面に多数の導管開口部が存在せしめられてなる1枚の接合体を得た。これを接合体Bとした。
【0057】
その後、かかる接合体Bの意匠面上に、シーラー層と着色層とトップコート層とを積層形成した。なお、それら三つの層を積層形成する際には、接合体Aの意匠面上に、シーラー層と着色層とトップコート層とを積層形成したときと同様な操作を行った。また、接合体Bの意匠面に積層形成される各層の厚さは、接合体Aの意匠面に積層形成される各層の厚さと同じ厚さとした。
【0058】
かくして、カルボジイミドを何等含有しないポリエステルポリウレタン樹脂組成物からなる接着剤Bにより、突板が基材に接着されると共に、突板の意匠面上に、シーラー層と着色層とトップコート層とが、オープンポア塗装により、薄い厚さで積層形成されてなる木質化粧板(比較例)を得た。
【0059】
次に、上記のようにして得られた本発明例の木質化粧板と比較例の木質化粧板のそれぞれの耐候性能を調べるために、それら2種類の木質化粧板に対して、アミンサイクル評価試験を行った。
【0060】
なお、このアミンサイクル評価試験は、本発明例と比較例の各木質化粧板の接着剤層をそれぞれ形成するポリエステルポリウレタン樹脂組成物の加水分解をアミンで促進させた後、それら各木質化粧板を恒温槽内に投入して、屋外を想定した乾燥状態と湿潤状態とにおいてそれぞれ1回ずつ暴露させるサイクルを繰り返す試験を行って、各木質化粧板に意匠面剥がれ等の外観異常が認められたときのサイクル数を調べるものである。そして、ここでは、そのようなアミンサイクル評価試験において、アミンによる加水分解促進は、ジエチルアミンの0.2重量%溶液が内部に収容されたプレッシャークッカー内に、本発明例と比較例の各木質化粧板を投入した後、105℃、100RH、0.12MPaの条件で、プレッシャークッカー内を加温することにより実施した。また、屋外を想定した乾湿サイクルを繰り返す試験は、アミンで加水分解が促進された本発明例と比較例の各木質化粧板を、恒温槽内に投入した後、[80℃×6Hr→1Hrで降温→50℃95%RH×6Hr→1Hrで昇温→]を1サイクルとした乾湿サイクルを繰り返すことにより実施した。
【0061】
このようなアミンサイクル評価試験を行った結果、比較例の木質化粧板では、78サイクルで外観異常が認められた。これに対して、本発明例の木質化粧板では、108サイクルで、初めて、外観異常が確認された。このことから、カルボジイミドを含有するポリエステルポリウレタン樹脂組成物からなる接着剤により突板が基材に接着された本発明に従う木質化粧板が、カルボジイミドを何等含有しないポリエステルポリウレタン樹脂組成物からなる接着剤により突板が基材に接着された従来の木質化粧板よりも、優れた耐候性能を有することが、明確に認識され得るのである。
【符号の説明】
【0062】
10 木質化粧板 12 基材
14 突板 16 接着剤層
18 意匠面 20 導管開口部
22 シーラー層 24 着色層
26 トップコート層 28 中間凹部
30 外側凹部 32 内側凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導管が開口する意匠面を備えた木質の突板が、該意匠面とは反対側の面において、基材上に、接着剤層を介して接着されると共に、該突板の意匠面に、該意匠面を保護するトップコート層が形成されてなる木質化粧板において、
前記トップコート層が、前記突板の意匠面に、前記導管の開口部を埋めない厚さで形成されていると共に、前記接着剤層が、カルボジイミドを含有するポリエステルポリウレタン樹脂組成物により形成されていることを特徴とする木質化粧板。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2011−79260(P2011−79260A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−234790(P2009−234790)
【出願日】平成21年10月9日(2009.10.9)
【出願人】(308013436)小島プレス工業株式会社 (386)
【出願人】(593125056)フジゲン株式会社 (5)
【Fターム(参考)】