説明

木質床材の製造方法

【課題】水分の蒸発により収縮や凹反り等の変形が生じる問題を防ぎ、とくに床暖房用に好適に用いられる寸法安定性に優れた木質床材の製造方法を提供する。
【解決手段】木質基材1の表面に表面接着剤2を塗布した後、該木質基材1の上に上側熱板5で表面突き板3を加熱、加圧下に貼着すると同時に下側熱板6で上記木質基材1の下側を熱圧する第1両面熱圧工程と、この第1両面熱圧工程終了後に上下反転して上記木質基材1の裏面を上とし、この裏面に裏面接着剤21を塗布して裏面突き板4を粘着した後、再度上下反転して下側熱板6で裏面突き板4を加熱、加圧下に貼着すると同時に上側熱板5で上記木質基材1の上側を熱圧する第2両面熱圧工程とを含む木質床材の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は床材に関するものであり、詳しくは、木質基材の表裏面に突き板(単板)を貼着してなる木質床材の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、住宅分野において、木質系の床材は掃除等の手入れが容易であり、またシックハウス症候群の一因とされるダニの発生を抑えるなどの利点を有することから、集合住宅を中心に急速にその使用が拡大している。
【0003】
しかし、世界的に木材資源の枯渇化が進んで無垢の木材の入手が困難となり、その価格も高騰しつつあるなかで、合板、集成材、中密度繊維板(MDF)、パーティクルボード等、種々の木質基材に表面化粧材を貼着してフローリング仕上げされた木質複合材が普及している。
【0004】
上記木質複合材としては、ケヤキ等、天然木の木目を印刷した合成樹脂シートや強力紙を上記合板等の表面に貼着して複合された木質複合材が、フローリング材としてしばしば利用されている。一方、リビングルーム等において、床暖房方式を採用する住宅が増加しつつあり、それに用いられる木質床材としても床暖房に対応した床材の開発が進んでいる。
【0005】
通常、上記床暖房は電熱式等の加熱方法により床下面から暖房する方法が一般的であり、このとき、加熱により木質床材中に含まれる水分が蒸発して収縮し、床材の寸法が変形するという問題が生じる。また、床材が凹状に反るという問題も起こる。
【0006】
そこで、上記した収縮や反りを防ぐため、従来、床材は、木質基材の表裏面に同質の表面材を貼着して収縮、膨張のバランスをとり、上記反り等の問題を防ぐことが行われている。上記表裏面に同質の表面材が貼着された床材を製造する方法としては、例えば、まず表面側に付き板等の表面材を熱圧等の方法により貼着し、ついで裏面側にも同質の突き板等を貼着する裏面材の貼着を行い、その後加熱炉等で木質基材を乾燥させる乾燥工程を含む3回の工程で製造する方法が一般的に行われている。
【0007】
しかしながら、上記方法では表面材の貼着の後、冷却する冷却養生が2回必要であり、また乾燥工程後も材料が冷えるまでの冷却時間を要し、製造工程の所要時間が長いという問題がある。また、上記したように乾燥工程を行うため、加熱炉等の乾燥装置が必要となり余計な設備投資を行わなければならず、製造コストが大きいという問題がある。
【0008】
一方、特開2003−27731号公報には、中質繊維板を用いて床材の耐凹み性、耐キャスター性を向上させるとともに、寸法変化を抑制し反りが発生しない床材が開示されている。すなわち、上記床材は、合板の上下両面に同じ厚みの中質繊維板を積層し、上の中質繊維板の上面及び下の中質繊維板の下面にそれぞれ表面化粧単板と裏面単板とを積層してなり、合板の厚みを床材の厚さの40%以上として構成されたものである。
【0009】
そして、その効果として、合板の上下両面に同じ厚みの中質繊維板を積層しているため、中質繊維板により床材の耐凹み性、耐キャスター性を向上するだけでなく、合板の上側の層と下側の層とが同じ層構成となって反りが発生しないという効果も記載されている。
【0010】
しかしながら、上記先行技術記載の床材は、合板の上下両面に同じ厚みの中質繊維板を積層し、上の中質繊維板の上面及び下の中質繊維板の下面にそれぞれ表面化粧単板と裏面単板とを積層してなるためその構成が複雑であり、したがって製造工程も多く、必ずしもコスト的に有利に製造できるものとはいえない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2003−27731号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本願発明は上記背景技術に鑑みてなしたものであり、その目的は床材中に含まれる水分の蒸発により収縮や凹反り等の変形が生じる等の問題を防ぎ、とくに床暖房に好適に用いられる寸法安定性に優れた木質床材の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本願請求項1に記載の発明に係る木質床材の製造方法は、木質基材の表面に表面接着剤を塗布した後、該木質基材の上に上側熱板で表面突き板を加熱、加圧下に貼着すると同時に下側熱板で上記木質基材の下側を熱圧する第1両面熱圧工程と、この第1両面熱圧工程終了後に上下反転して上記木質基材の裏面を上とし、この裏面に裏面接着剤を塗布して裏面突き板を粘着した後、再度上下反転して下側熱板で裏面突き板を加熱、加圧下に貼着すると同時に上側熱板で上記木質基材1の上側を熱圧する第2両面熱圧工程とを含むことを特徴としている。
【0014】
表面と裏面とに貼着される突き板としては、天然木由来のもの、例えばマツ、スギ、ヒノキ、ツガ等の針葉樹あるいは、ナラ、カバ、ブナ等の広葉樹の丸太材をロータリーレース等を用いて、かつら剥きのようにして薄くスライスした厚さ0.2〜0.6mmの単板が好ましく用いられる。
【0015】
上記木質基材としては、合板、集成材、中密度繊維板(MDF)、パーティクルボード、木質プラスチックボード(WPB)等種々の基材をあげることができる。中でも合板が強度に優れていることや、入手が容易であり、また加工性も良好であることから好適に用いられる。
【0016】
上記突き板を木質基材に加熱、加圧下に接着させる接着剤としては、例えば、SBR系接着剤、酢酸ビニル系接着剤、エチレン−酢酸ビニル系接着剤、メラミン系接着剤、ユリア樹脂系接着剤等の接着剤が用いられ、ロールコータやスプレッター等で塗布できる公知のエマルジョン系接着剤が好ましく用いられる。
【0017】
ここで、第2両面熱圧工程において木質基材の裏面に塗布する接着剤としては、裏面突き板を貼付した後、再度上下反転するため、反転した時自重によって裏面突き板が剥がれ落ちないように初期タック性に優れた接着剤が用いられる。例えば、SBR系接着剤、エチレン−酢酸ビニル系接着剤、メラミン系接着剤等、使用時の接着剤粘度が100〜300ポイズのものが好ましく用いられる。
【発明の効果】
【0018】
本願請求項1記載の発明にかかる床材においては、第1両面熱圧工程で木質基材の表面に上側熱板で表面突き板を加熱、加圧下に貼着すると同時に下側熱板で上記木質基材の下側を熱圧して木質基材の裏面側を乾燥させるため、表面突き板の貼着と乾燥の工程とを一つの工程で行うことができる。
【0019】
また、第1両面熱圧工程終了後に上下反転して上記木質基材の裏面を上とし、この裏面に裏面突き板を裏面接着剤で粘着した後、再度上下反転して下側熱板で裏面突き板を加熱、加圧下に貼着すると同時に上側熱板で木質基材の表面側を乾燥させる第2両面熱圧工程を行うため、裏面突き板の貼着と乾燥の工程を一つの工程で行うことができる。
【0020】
このために、木質基材は表面側、裏面側共に熱板で強制的に乾燥されたことになる。したがって、従来、表面突き板の貼着工程、裏面突き板の貼着工程、乾燥工程と通常、3工程で行われてきた木質基材の表裏両面に突き板を貼着した木質床材を2工程で製造することができる。その結果、別途乾燥装置を設ける必要がなく、かつ木質床材の製造に要する時間を短くすることが可能となり、作業効率よく低コストで寸法安定性に優れた木質床材を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本願発明の第1実施形態にかかる木質床材の製造方法を模式的に示す説明図であり、(a)は木質基材の表側に表面接着剤を塗布した状態を示し、(b)は第1両面熱圧工程を示し、(c)は第1反転によって上側となった木質基材の裏面に裏面接着剤を塗布した状態を示し、(d)は木質基材の裏面に裏面接着剤を介して裏面突き板を載置し、粘着する状態を示し、(e)は第2両面熱圧工程を示している。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本願発明にかかる木質床材の製造方法の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。図1は、木質基材として厚手の合板を用いた場合に、上記製造方法を実施する形態を模式的に示す説明図である。
【0023】
図1(a)に示すように、まず、木質基材1の表側に図示しない接着剤塗布装置、例えばロールコータ等によって公知の表面接着剤2を塗布する。ここで、表面接着剤2としては、SBR系接着剤、酢酸ビニル系接着剤、エチレン−酢酸ビニル系接着剤、メラミン系接着剤、ユリア樹脂系接着剤等が用いることが可能であり、木質基材1の表側に接着される突き板3の種類や厚さ等によって適宜選択される。
【0024】
図1(b)は第1両面熱圧工程を示す説明図であり、図示するように、木質基材1の表面に表面接着剤2を介して表面突き板3を載置し、上側熱板5を用いて下向き矢印で示す方向の加圧下に表面突き板3を加熱、貼着すると同時に、下側熱板6で上向き矢印で示す方向に上記木質基材1の下側を加熱する。このとき、上側熱板5、下側熱板6によって温度は70〜150℃、圧力は0.5〜1.5MPaに保ち、30〜90秒間上記熱圧条件を保持して両面熱圧を行う。
【0025】
上記のようにして木質基材1の表裏両面を加熱、加圧することにより、木質基材1の表面に表面突き板3を貼着することができると共に、裏面を加熱することによって、木質基材1の裏面側の水分を放散させ裏面側の乾燥を同時に行うことができる。
【0026】
上記第1両面熱圧工程終了後、木質基材1を上下反転させる第1反転を行う。第1反転は、図示するように木質基材1の表裏面を逆とし、上側となった裏面に裏面突き板4を貼着する。すなわち、図1(c)に示すように、上記第1反転によって今度は上側となった木質基材1の裏面に裏面接着剤21を塗布し、図1(d)に示すように裏面突き板4を載置し、裏面突き板4を木質基材1の裏面に粘着させる。
【0027】
裏面に裏面突き板4を粘着した木質基材1は、再度、上下反転されて第2反転が行われる。このとき、裏面接着剤21としては、木質基材1が上下に反転し、裏面突き板4が下側に位置しても、自重によって剥がれ落ちることなく粘着できる初期タック力の大きいものが用いられる。
【0028】
上記裏面表面接着剤21としては、例えば、SBR系接着剤、エチレン−酢酸ビニル系接着剤、メラミン系接着剤等、使用時の接着剤粘度が100〜300ポイズの初期タック力の大きいものが好ましく用いられる。
【0029】
上記第2反転を終了した後、第2両面熱圧工程を行う。すなわち、図1(e)に示すように、木質基材1の裏面に粘着された裏面突き板4は、下側熱板6によって上向き矢印で示す方向に加圧、加熱され、裏面接着剤21によってしっかりと貼着され、同時に上側熱板5によって下向き矢印で示す方向に加圧、加熱される。
【0030】
このとき、第1両面熱圧工程と同じく、上側熱板5、下側熱板6によって温度を70〜150℃、圧力は0.5〜1.5MPaに保ち、30〜90秒間上記熱圧条件を保持して両面熱圧を行う。このようにして、木質基材1の表裏両面を加熱、加圧することにより、木質基材1の裏面には裏面突き板4を貼着することができると共に表面を加熱することによって表面側の水分を放散させ、木質基材1の表面側の乾燥を同時に行うことができる。
【0031】
符号7は本願発明に係る木質床材を示し、図示されるように木質基材1の表面には表面突き板3が貼着されるとともに、裏面には裏面突き板4が貼着されている。このように、木質基材1の表裏面に貼着された表面突き板3と裏面突き板4とが同質であり、表面側と裏面側とにおいて収縮、膨張のバランスが取れることによって、熱による反り、たわみ、寸法変化を生じない、とくに床暖房に好適に用いられる木質床材7を提供することができる。
【0032】
なお、上記表面突き板3に、アミノアルキド樹脂系、ビニル樹脂系、アクリル樹脂系、エポキシ樹脂系、ポリウレタン樹脂系、不飽和ポリエステル樹脂系、イソシアネート系等の合成樹脂塗料を単独で、あるいは任意変性した合成樹脂塗料を用い、クリア塗装、要すれば薄く着色して木目を生かすように塗装してもよい。
【0033】
さらに、上記クリア塗膜の上に紫外線硬化型の塗料、例えば、アクリル樹脂塗料、アミノアルキド樹脂塗料、ウレタン樹脂塗料を塗布し、紫外線を照射することにより、クリア、あるいは半クリアな保護膜を形成することができる。この保護膜によって耐衝撃性に優れた木質床材7とすることができる。
【0034】
また、上記した実施形態は、木質基材1として合板を用いた例について述べたが、合板に限られず、パーティクルボードや中密度繊維板(MDF)等の木質ボードを用いてもよい。このように本願発明に係る木質床材の製造方法は設計変更自在であり、特許請求の範囲を逸脱しない限り、本願発明の技術的範囲に属する。
【符号の説明】
【0035】
1 木質基材
2 表面接着剤
21 裏面接着剤
3 表面突き板
4 裏面突き板
5 上側熱板
6 下側熱板
7 本願発明に係る木質床材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
木質基材の表面に表面接着剤を塗布した後、該木質基材の上に上側熱板で表面突き板を加熱、加圧下に貼着すると同時に下側熱板で上記木質基材の下側を熱圧する第1両面熱圧工程と、この第1両面熱圧工程終了後に上下反転して上記木質基材の裏面を上とし、この裏面に裏面接着剤を塗布して裏面突き板を粘着した後、再度上下反転して下側熱板で裏面突き板を加熱、加圧下に貼着すると同時に上側熱板で上記木質基材の上側を熱圧する第2両面熱圧工程とを含む木質床材の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2011−226103(P2011−226103A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−95215(P2010−95215)
【出願日】平成22年4月16日(2010.4.16)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】