説明

木質系面材

【課題】継ぎ目が目立たず、しかも曲げ強さや曲げ弾性係数に優れ、とりわけエッジ部においてその優位性が顕著であり、廃棄木材の有効活用にも資する木質系面材を提供する。
【解決手段】上記木質系面材を、多数の細長い木質材片と結合材の混和物を長手方向に配向させて積層してなるマットを加圧・加熱成形してなる木質系材同士を、長さ方向の端部に互いにかみ合わせうるように加工された接合部において長さ方向に接着接合し、かつ側面において幅方向に接着接合してなるものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木質系面材に関する。
【背景技術】
【0002】
木材として、無垢のものとは別に種々加工された木質材料、例えば合板、集成材、LVL、パーティクルボード等の各種ボードなどが多用されている(例えば、非特許文献1参照)。
【0003】
また、森林資源には限りがあり、またその保守維持も大変であることから、廃棄木材の有効活用が有望視されている。
【0004】
しかし、市場性やコスト対効果の点で、依然としてまだまだ開発途上にあるのが現状である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】「徳島すぎ活用読本」、徳島県林業振興課、平成11年3月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、このような事情の下、継ぎ目が目立たず、しかも曲げ強さや曲げ弾性係数に優れ、とりわけエッジ部においてその優位性が顕著であり、廃棄木材の有効活用にも資する木質系面材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、木質系面材を、特定の木質系材同士を、長さ方向の端部に加工された所定接合部において長さ方向に接着接合し、かつ側面において幅方向に接着接合してなるものとするのが課題解決に資することを見出し、この知見に基づいて本発明をなすに至った。
【0008】
すなわち、本発明の第1の発明によれば、多数の細長い木質材片と結合材の混和物を長手方向に配向させて積層してなるマットを加圧・加熱成形してなる木質系材同士を、長さ方向の端部に互いにかみ合わせうるように加工された接合部において長さ方向に接着接合し、かつ側面において幅方向に接着接合してなる木質系面材が提供される。
【0009】
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、木質材片は、重量比で70%以上が厚み1〜11mm、長さ10〜150mmの範囲にあることを特徴とする木質系面材が提供される。
【0010】
また、本発明の第3の発明によれば、第1又は2の発明において、上記木質系材は、比重が0.6〜1.0であることを特徴とする木質系面材が提供される。
【0011】
また、本発明の第4の発明によれば、第1〜3のいずれかの発明において、上記接合部は、フィンガージョイント加工部であることを特徴とする木質系面材が提供される。
【0012】
また、本発明の第5の発明によれば、第1〜4のいずれかの発明において、上記木質系材の側面は、平坦面にされていることを特徴とする木質系面材が提供される。
【0013】
また、本発明の第6の発明によれば、第5の発明において、上記木質系材の側面は、傾斜面であることを特徴とする木質系面材が提供される。
【0014】
また、本発明の第7の発明によれば、第1〜4のいずれかの発明において、上記木質系材は、該材同士を、その側面部に互いにかみ合わせうるように加工された接合部において幅方向に接着接合されていることを特徴とする木質系面材が提供される。
【発明の効果】
【0015】
本発明の木質系面材によれば、継ぎ目が目立たず、しかも曲げ強さや曲げ弾性係数に優れ、とりわけエッジ部においてその優位性が顕著であり、廃棄木材の有効活用にも資するという利点がある。
また、木質系面材を、薬剤処理またはコーティング加工等で耐食性、耐候性および耐光性のものとすれば、耐久性に優れたものとすることができるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の木質系面材に用いられる、直方体形状の木質系材の一例を示す模式図である。
【図2】図1のような直方体形状の木質系材をその接合部のジョイント切込み部で互いにかみ合わせ接合してなる長尺材の一例を示す模式図である。
【図3】図2のような長尺材を複数種組み合わせて幅あるいは横方向に接合してなる本発明の木質系面材の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の木質系面材は、結合材の付着された多数の細長い木質材片を長手方向に配向させて積層してなるマットを加圧・加熱成形してなる木質系材同士を、長さ方向の端部に互いにかみ合わせうるように加工された接合部において長さ方向に接着接合し、かつ側面において幅方向に接着接合してなるものである。
また、上記の多数の細長い木質材片は、その比重が0.6以下、その長さが10〜150mm、その厚さ(短辺)が1〜11mmであることが好ましい。
木質材片の比重が0.6を越えるものは、木質材片が固く、所望する構造材としての成形が難しい。
【0018】
木質材片の厚さが1mm未満のものを用いると、構成材片が小さくなりすぎ、多くの結合材が必要となり、また、短いのもとなりやすく強度を発現しない。一方、木質材片の厚さが11mmを越えると、構造材料の厚さ方向への木質片の積層数が少なくなってしまい、応力伝達が十分に行えず、木質片の継ぎ目に応力集中を起こしやすく、所望な強度を得ることができない。
木質材片の長さが10mm未満のものを用いると、所望木質系板における木質材片の長手方向の強度が不十分となり、150mmを越えるものを用いると、木質材片を積層したとき、1本の木質材片の積層交点が増してしまい、十分な圧密化ができない。木質材片の長さは、完全にきっちり分離できるものではないため、上記長さの木質材片が木質材片全量に対し重量比で、70%以上、好ましくは80%以上含有されていれば十分効果が発揮される。
木質材片としては、木質材片全量に対し重量比で70%以上、さらには80%以上が厚み1〜11mm、長さ10〜150mmの範囲にあるのが好ましい。
【0019】
また、木質材片の長さと厚さとの比は、特に限定されないが、長さが厚さの10倍以上となることが好ましい。すなわち、長さが厚さの10倍未満であると、木質系成形材の軸方向の強度が不十分となる恐れがある。
【0020】
嵩密度が0.6未満では木質材片の十分な結合が得られず、所望木質系面材における木質材片の長手方向の十分な強度を得ることができない恐れがある。
さらに、空隙率は、特に限定されないが、10%以下となることが好ましい。すなわち、空隙率が10%を越えると、所望木質系面材における各木質材片同士の結合が不十分となり、十分な強度を発現しなくなる恐れがある。
【0021】
結合剤としては、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、イソシアネート等、合板やパーティクルボード等に用いられる木材工業用の接着剤が挙げられ、これらの結合剤は、単独或いは数種類を併用しても良い。
また、結合剤は、液状でも粉末状でも構わないが、木質材片に噴霧したり、混合した状態で付着される。
【0022】
結合材の付着された木質材片は、長手方向に配向させて積層しマットに形成させる。その具体的方法としては、ベルトコンベア−の上に複数の板状体が搬送方向に沿って並列に立設され、並列された板状体の上から木質材片を投下して、配向させながら、ベルトコンベア−の上に積層しマットに形成させながら搬送する方法や、該方法において、その配向手法を、幅方向に樋状体を並設させて、凹凸溝形状として、木質材片が溝の内を流れることで並べる方法や、ディスクオリエンター等の公知の配向手段をフォーミング型の上方に配置し、この配向手段により配向させながら投入する方法等に変えてなる方法等が挙げられる。
【0023】
加熱、加圧成形は、例えばプレス機を用いて行われる。
プレス機としては、特に限定されないが、例えば、既存の木質系材料成形用の縦型プレス機や連続プレス機を垂直方向動作にしたものを用いることができる。加熱方法としては、特に限定されないが、例えば、熱盤のように木質材片の表面から伝熱により内部に熱を伝える方法や、蒸気噴射や高周波加熱等のように内部を直接加熱する方法が挙げられる。加熱と加圧とは、同時に行ってもよいし、加圧した後に加熱してもよいし、加熱しながら加圧してもよいし、加熱した後に加圧してもよい。
【0024】
さらに、木質系材を製造する際、プレス成形後、得られる木質系材の寸法精度や表面性を向上させるために、切削、サンディング加工を行うことが好ましい。
このようにして得られる木質系材は、六面適宜カットされているのが好ましく、さらには、長手方向に対し横あるいは幅方向の側面を垂直にカットし、図1に示す木質系材2のように、直方体形状とするのが好ましい。
【0025】
本発明の木質系面材は、上記のようにして得られる木質系材に、該材同士を長さ方向の端部において互いにかみ合わせうるように接合部を加工し、木質系材同士を接合部において長さ方向に接着接合し、かつ側面において幅方向に接着接合してなるものである。
上記接合部は、フィンガージョイント加工部であるのが好ましく、このような場合、図2に示すように、木質系材における長さ方向の所要端部にフィンガーカッター等でフィンガー切込み31を入れてフィンガージョイント加工を施し、形成されたフィンガージョイント部に接着剤を塗布し、木質系材同士をフィンガージョイント部で突き合わせて接着接合して縦つぎすることで、長尺材3が得られる。
【0026】
本発明の木質系面材は、このように縦つぎされた等長の長尺材を複数種用いて次のようにして作製するのが好ましい。
すなわち、長尺材同士を、その所要の側面部に接着剤を塗布し、幅方向(横方向)に並べて側面部で挟圧接着接合することにより、図3に示すように、所望の木質系面材1が得られる。
また、上記木質系材の側面は、平坦面にされているのが好ましく、その場合、側面を傾斜面としてもよく、そうすると、木質系材同士を交互に逆向きになるように幅方向(横方向)に並べることでほとんど隙間なく密接しえ、挟圧接着することにより、より強固に接合することができる。
【0027】
本発明の木質系面材は、木質系材同士を、その側面部に互いにかみ合わせうるように加工された接合部において幅方向に接着接合されているのが強度的により好ましい。
また、本発明の木質系面材は、表面が、透明または半透明の塗料で塗装されることが好ましい。そのようにすると、加熱・加圧されることで木質材片同士が結合されるが、その際木質系面材の表面には、木質材片同士の間に若干の隙間の発生することがあり、この隙間に引っかかったり、塵が詰まったりする不具合の発生することがあるところ、かかる場合塗料により隙間を埋めることが可能になる。この際、塗料を有色にすると、木質系面材の表面の模様を見ずらくなるが、それには塗料を透明または半透明とすればよい。
【0028】
また、上記木質系面材は、耐食性、耐候性および耐光性のもの、例えば薬剤処理またはコーティング加工等によるものであるのが好ましく、そうすることにより木質系面材を耐久性に優れたものとすることができる。
【実施例】
【0029】
以下、実施例により、本発明を詳しく説明するが、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。
【0030】
実施例1
木材廃棄物処理業者から購入した住宅解体材を、ウェーブローラー方式の分級機ウェーブローラースクリーン(たいへい社製)を用いて分級し、厚さ1〜11mm、長さ10〜150mm、長さ/厚さ=10以上、比重0.3〜0.6の木質材片を得た。上記木質材片を、加熱オーブン(105℃、24h)にて、含水量5%以下に調整した。
【0031】
次に、ドラムブレンダに含水量調整した木質材片と結合剤としてPMDI(イソシアネート系接着剤)とを投入し、木質材片に対してPMDIが4重量%塗布された結合剤付き木質材片を得た。この結合剤付き木質材片をOSLフォーミングマシン(たいへい社製)に投入した。
なお、フォーミングマシンは、幅500mmのベルトコンベア上に仕切り壁となる金属製の仕切り板(厚さ2mm)を用いて、20mm間隔で25等分した分割枠部を備えたものを用いた。
次に、フォーミングマシンから得られた積層マットを、金型が縦2500mm、横500mm、高さ150mmである伝熱タイプのプレス機(川崎油工社製300tプレス)へ投入し、加熱温度180℃、加圧力30kg/cm、プレス時間10分で、形状が2500×500×40mmになるように加圧しつつプレス盤をキープし木質系成形材を得た。次に得られた木質系成形材につき、6面すべてにおいて、その表層部を削除し、さらに長さ方向及び幅方向に垂直かつ等分に多分割カットし、密度が0.65g/cmで、サイズが300×35×30mmと同寸法である、複数個の木質系材を得た。
【0032】
この木質系材を10本用い、先ず、木質系材同士を以下のようにして縦つぎした。
すなわち、木質系材における長さ方向の所要端部にフィンガーカッターでフィンガー切込みを入れてフィンガージョイント加工(フィンガー長:9.5mm、フィンガーピッチ:4.0mm)を施し、形成されたフィンガージョイント部に酢酸ビニルエマルション樹脂系接着剤を塗布し、木質系材同士をフィンガージョイント部で突き合わせて接着接合し、長尺材を得た。
【0033】
次いで、このように縦つぎされた等長の長尺材を30本用い、該材同士を、その所要の側面部に水性高分子イソシアネート樹脂系接着剤を塗布し、幅方向(横方向)に並べて側面部を突き合わせて接着接合し、所望の木質系面材を得た。
この木質系面材について、エッジ部およびフラット部における物性を求めた。その結果を表1に示す。
【0034】
実施例2
木質系材の寸法を300×40×27mmとした以外は実施例1と同様にして木質系面材を得た。
この木質系面材について、エッジ部およびフラット部における物性を求めた。その結果を表1に示す。
【0035】
比較例1
実施例1と同様にして得た木質系材自体を複数用い、木質系材同士を以下のようにして縦つぎした。
木質系材における長さ方向の所要端部に実施例1と同様の酢酸ビニルエマルション樹脂系接着剤を塗布し、木質系材同士を該端部で突き合わせて接着接合し、木質系長尺材を得た。
この木質系長尺材について、エッジ部およびフラット部における物性を求めた。その結果を表2に示す。
【0036】
比較例2
実施例1と同様にして得た木質系材を複数用い、木質系材同士を実施例1と同様にして縦つぎし、木質系長尺材を得た。
この木質系長尺材について、エッジ部およびフラット部における物性を求めた。その結果を表2に示す。
【0037】
比較例3
実施例2と同様にして得た木質系材自体を複数用い、木質系材同士を比較例1と同様にして縦つぎし、木質系長尺材を得た。
この木質系長尺材について、エッジ部およびフラット部における物性を求めた。その結果を表2に示す。
【0038】
比較例4
実施例2と同様にして得た木質系材を複数用い、木質系材同士を実施例1と同様にして縦つぎし、木質系長尺材を得た。
この木質系長尺材について、エッジ部およびフラット部における物性を求めた。その結果を表2に示す。
【0039】
【表1】

【0040】
【表2】

【0041】
これらの表より、実施例の面材はいずれも比較例の各材より曲げ強さや曲げ弾性係数に優れ、とりわけエッジ部においてその優位性が顕著であることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、継ぎ目が目立たず、しかも曲げ強さや曲げ弾性係数に優れ、とりわけエッジ部においてその優位性が顕著であり、廃棄木材の有効活用にも資する木質系面材を提供しうるので、産業上大いに有用である。
【符号の説明】
【0043】
1 木質系面材
2 木質系材
3 長尺材
31 フィンガー切込み

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数の細長い木質材片と結合材の混和物を長手方向に配向させて積層してなるマットを加圧・加熱成形してなる木質系材同士を、長さ方向の端部に互いにかみ合わせうるように加工された接合部において長さ方向に接着接合し、かつ側面において幅方向に接着接合してなることを特徴とする木質系面材。
【請求項2】
木質材片は、重量比で70%以上が厚み1〜11mm、長さ10〜150mmの範囲にあることを特徴とする請求項1記載の木質系面材。
【請求項3】
上記木質系材は、比重が0.6〜1.0であることを特徴とする請求項1または2記載の木質系面材。
【請求項4】
上記接合部は、フィンガージョイント加工部であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の木質系面材。
【請求項5】
上記木質系材の側面は、平坦面にされていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の木質系面材。
【請求項6】
上記木質系材の側面は、傾斜面であることを特徴とする請求項5記載の木質系面材。
【請求項7】
上記木質系材は、該材同士を、その側面部に互いにかみ合わせうるように加工された接合部において幅方向に接着接合されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の木質系面材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−167961(P2011−167961A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−34508(P2010−34508)
【出願日】平成22年2月19日(2010.2.19)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】