説明

材料のスライス方法及びスライス装置

【課題】魚体のフィーレFのスライス方法において、切身の定量度を高める。
【解決手段】材料を切断受部6側へ間欠的に送り込み、材料送りを停止している間に、該切断受部6に近接して材料送り移行路を横切る切断刃21によって材料をスライスする方法であって、切り分けた材料の排出側位置にて材料の切断面Faに向けて配備したカメラ4によって切断面Faを撮影し、その撮影画像に対して、予め設定された色で占める部分の画像面積を計測し、目標断面積或いはその補整値を前記画像断面積で除した値をベースにして切断毎の材料送り量を決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィーレ(三枚おろしの魚の片身)、その他の食品の扁平食品等、長さ方向に幅及び厚みが変化する材料を、重量又は体積を揃えてスライスするのに好適なスライス方法及びスライス装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、鮭、ギンダラ等のフィーレを、切身の重量が揃う様にスライスするには、フィーレの重量と全長を計測し、フィーレの全体の形状をカメラ計測し、画像処理を行って、予め全スライス位置(スライス線)を決めてから、切断作業を行っている。
切断作業は、材料を切断位置へ間欠的に送り込み、材料送りを停止している間に、材料送り移行路を横切る切断刃によって行われる。
上記スライス方法では、予め決めたフィーレのスライス線と切断刃の横切り移行路が一致する様に、フィーレを送り装置にセットしなければならない。しかし、送り装置のフィーレのクランプ位置のずれ、送り方向に対するフィーレの傾き角度のズレ、切り始めの位置のズレによって、切身の重量に±10%程度のバラツキが生じる。
【0003】
そこで出願人は以前に、切断位置に対して斜め上方から膜状に光を照射し、該膜状光が材料表面に当たって描く曲線から得られる材料の断面積を基に、指令体積値に対応する材料送り量を演算し、演算した送り量に達した時点で材料送りを停止して材料を切断する装置と方法を提案した(特願2007−190418号)(以下、「先行発明」と呼ぶ)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
先行発明では、従来のスライス装置よりも、切身の重量バラツキを小さくできた。しかし、実際のフィーレは反り返ったり、腹部には内臓除去による凹部が存在していることを無視し、フィーレの下面はフラットであるとして演算してため、期待どうりのバラツキに抑えるには今一歩であった。
本発明は、先行発明よりも、切断重量のバラツキを更に小さくできる。材料スライス方法及びスライス装置を明らかにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のスライス方法は、材料を切断受部(6)側へ間欠的に送り込み、材料送りを停止している間に、該切断受部(6)に近接して材料送り移行路を横切る切断刃(21)によって材料をスライスする方法であって、切り分けた材料の排出側位置にて材料の切断面Faに向けて配備したカメラ(4)によって切断面Faを撮影し、その撮影画像に対して、予め設定された色で占める部分の画像面積を計測し、目標断面積或いはその補整値を前記画像断面積で除した値をベースにして切断毎の材料送り量を決定する。
【0006】
本発明のスライス装置は、材料を切断受部(6)側へ断続的に送り込み、切断受部(6)に近接して材料送り移行路を繰り返し横切る切断刃(21)によって材料をスライスするスライス装置であって、切断受部(6)の材料排出側位置にて材料の切断面Fa側に向けて配備されたカメラ(4)と、切断面Faを照らすランプと、切断毎の材料送り量を決定する制御部(7)を有し、制御部(7)はカメラ(4)に連繋されており、フィーレFの切断面側の撮影画像に対して、切断面の色に対応して予め指定された色で占める部分の演算上の面積を計測し、目標断面積或いはその補整値を前記演算上の面積で除した値をベースにして切断毎の材料送り量を決定し、或いはフィーレFの切断面側の撮影画像に対して、切断面の色に対応して予め指定された色で占める部分の演算上の画素数を計測し、目標画素数或いはその補整値を前記演算上の画素数で除した値をベースにして切断毎の材料送り量を決定する。
【発明の効果】
【0007】
本発明のスライス方法は、材料の切断面Faを直接カメラで撮影して画像処理を行うことにより、切断面Faの面積を前記先行発明よりも小さな誤差で計測し、それに基づいて材料の送り量を決定するから、材料がフィーレの場合、断面変化の大きい尾部を除いて、その他の部位については、目標重量に対して3〜5%の誤差の範囲に留めることができた。
【0008】
本発明のスライス装置は、上記したスライス装置と同様の効果を奏することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
実施例では、スライス装置によってスライスする材料は図7aに示す、フィーレFとする。図7aの右側が尾部F0、左側がかま部F2である。
図7aは左半身を示しているが、右半身は左半身とは略左右対称形状である。
【0010】
図1乃至図4に示し公知の如く、スライス装置は、基台(1)上にフィーレFの送り方向へ順に、送り案内台(51)、切断受部(6)及び排出コンベア(11)を配備し、切断受部(6)の上方に、切断刃支持台(2)を設け、該切断刃支持台(2)の側方に制御部(7)及びフィーレFの重量を計測する秤(73)を設けている。
以下、送り案内台(51)側を「前」、排出コンベア(11)側を「後」とする。
【0011】
前記切断刃支持台(2)の前後は、カバー(9)で覆われ、該カバー(9)は、夫々回転して上方へ開く前カバー(91)と後カバー(92)とによって構成されている。
後カバー(92)の内面には、フィーレFの切断面Fa撮影用のカメラ(4)と照明ランプ(8)(8a)が取り付けられている。
尚、カメラ(4)及び/又は照明ランプ(8)(8a)は、必ずしも、カバーに取り付ける必要はなく、基台(1)、その他適所に配置できる。
実施例のカメラ(4)はデジタルカメラである。
【0012】
前記切断受部(6)は基台(1)の切断作業位置に固定され、フィーレFの切断側先端部を支える。
排出コンベア(11)は切断受部(6)よりも低く位置し、切断受部(6)の後側(フィーレFの送り方向側)の真直端縁(61)と、排出コンベア(11)の上流端との間は、後記する切断刃(21)が通過できる隙間が開いている。
【0013】
送り案内台(51)は、前記切断受部(6)に接近した位置から略水平に前方へ延びている。
図4に示す如く、送り案内台(51)は回動駆動装置(50)に連繋され、図3の矢印A、Bに示す如く、略水平面内で左右に回動可能である。送り案内台(51)の回転中心は、前記切断受部(6)の後側端縁(61)の中央位置を通る垂直線X、又はその近傍である。
【0014】
送り案内台(51)上には、軌条(54)に沿って該送り案内台(51)の長手方向にスライドするスライド台(52)が配備され、スライド台(52)はスライド駆動装置(55)に連繋されている。
スライド駆動装置(55)は、駆動源をサーボモータ等、回転を高精度に制御可能なモータを(図示せず)駆動源とし、ボールネジ(図示せず)の回転によりスライド台(52)をネジ推力によってスライド駆動する。フィーレFの送り量は、該モータの回転(回転角度)を制御して行なう。
スライド台(52)には、フィーレFのかま部分F2をクランプするクランプ手段(53)が配備されている。
【0015】
切断刃支持台(2)は、円形の切断刃(21)及び切断刃駆動装置(22)を搭載している。切断刃(21)は、前記切断受部(6)の後側端縁(61)に近接し、該端縁(61)に沿う面内で自転しながら公転して、フィーレFの搬送路を繰り返し横切る。
切断刃支持台(2)は、傾動駆動装置(20)に連繋され、前記切断受部(6)の後側端縁(61)に略一致する横軸(23)又はその近傍を回転中心として後側へ傾動可能である。
【0016】
実施例では、切断刃支持台(2)の後側上部に、切断受部(6)上のフィーレFの切断面Faを細帯状に照らす光照射装置(3)が配備されている。
光照射装置(3)は、前記切断受部(6)の後側端縁(61)を含む面内で、光照射装置(3)を頂点とする下向き三角形の膜状に広がる赤色レーザ光(膜状光)(30)を発射する。
上記膜状光(30)の発射によって、フィーレFの切断面Fa上には横長の細帯状に光が当たり、前記カメラ(4)で撮像できる。
膜状光照射装置(3)は、後記の如く、スライス作業に先だってフィーレFの全長を計測するために用いる。
【0017】
前記切断刃支持台カバー(9)の後カバー(92)上のカメラ(4)は、閉じ状態の後カバー(92)内にて切断受部(6)の前方に位置して切断受部(6)の幅中心に対向し、且つ切断受部(6)上のフィーレFの断面に焦点が合う様に位置にある。
後カバー(92)内のランプ(8)(8a)は、切断受部(6)よりも後方(材料排出側)において、切断受部(6)上のフィーレFと略同じ高さ位置で、カメラ(4)の左右両側に配備されており、夫々フィーレFの切断面Fa側を斜め後方から照らすことができる。
カバー(9)は、回転する切断刃(21)に対する安全対策、切断滓の外部への飛散防止に加えて、外の光からフィーレFの切断面Faを遮蔽する役割も兼ねている。
【0018】
切断刃(21)によってスライスされたフィーレFの切身F1は、切断受部(6)高さから落下して排出コンベア(11)に受け止められ、該排出コンベア(11)によってからカバー(9)に排出される。
【0019】
制御部(7)は、記憶部、演算部を具え、前記送り案内台(51)の回動駆動装置(50)、送り案内台(51)上のスライド台(52)に連繋したスライド駆動装置(55)、切断刃支持台(2)の切断刃駆動装置(22)の制御機能を有し、又、前記カメラ(4)の画像処理、データ処理機能も有している。又、制御部(7)は、操作キー群(72)、モニター(71)、及びフィーレFの切断面Fa領域選択機能を備えている。
【0020】
操作キー群(72)は、フィーレFをスライスすることに関するデータ入力等、例えば、フィーレFの切身F1の重量設定、フィーレFが左身か右身かの選択、モニター(71)上での後記するポーインターの移動操作等を行なう際に使用する。
【0021】
制御部(7)の記憶部は、フィーレFの重量から自動換算された体積と全長の関係からフィーレFを複数の形態に分類し、更に、フィーレFをスライスした一切れの切身F1の設定重量(体積)に応じて、図7aに示す、スライス線Bの水平面内での傾き角度と、図7bに示すスライス線の倒れ角度の組み合わせを、150パターン以上を記憶している。
フィーレFを切断するパターンが決まれば、切身F1の一切れ毎、或いは複数切れ毎に送り案内台(51)の略水平面内での回転角度、切断刃支持台(2)の傾動角度は自動的に制御され、一切れ毎の切身に対する送り案内台(51)の水平面内の傾きと、切断刃(21)の傾き角度決まる。
【0022】
フィーレFの切断面領域選択機能は、フィーレFの切断面Fa側の実写画像から、実際の切断面Faに可及的に近似した領域の画像を得る機能である。
フィーレFが一様断面ではなく、ランプ(8)(8a)で照らされるフィーレFの表面やその他フィーレFの断面以外の部分も映ってしまうから、上記切断面領域選択機能が必用となる。
実施例では、モニター上の切断面Fa側の実写画像を見ながら、該実写画像上の切断面Faの範囲内で一点をポインターで指定し、その指定された一点の色と同じ全部分をフィーレFの切断面Faと判断する。
モニターを色指定画面に切替えると、指定した色で表された画像だけを見ることができる。この画像が実際の切断面Faの形状と違えば、再びモニターを切断面側実写画像に切替えて、前記とは少し色の違う一点を指定して、再びモニターを色指定画面に切り替える。色指定画面には、最初に指定した色と2回目に指定した色で表される範囲の画像が表れる。この色指定の作業を何回が繰り返すと、モニターに現れる色指定画像は、実際のフィーレFの切断面Faの輪郭に近似する。
【0023】
1枚のフィーレFについて、どの部分を切断しても断面は一様とすることができ、1枚のフィーレについて、上記切断領域選択作業を1回行うと、フィーレFの切断毎に前記カメラ(4)が切断受部(6)上のフィーレFの切断面Faを撮像する毎に、切断直後の切断面Faに近似した領域を選択できる。
フィーレFの集合において、どのフィーレも切断面Faの色が一様とすれば、フィーレの集合について、1回の前記切断面領域選択作業を行うだけで済む。
【0024】
次に、図8a、bに基づいて、フィーレFの定貫切断について、フィーレFの送り量を説明する。尚、図8bにおいて、フィーレFの断面を四角形で表したが、説明を簡素にすめためである。
図8aに示す如く、フィーレFの切断面Fa側をカメラ(4)で撮影し、前記切断面領域選択を行って得られる撮影画像の面積は、実際の切断面Faが切断受部(6)上の垂直面に対して傾斜している分、小さくなる。
前記切断面領域選択を行って得られる切断面画像の面積をS
切り身1切れの目標重量から得られる目標体積をV
実際の切断面の面積をS1
フィーレFの送り量をLとする。
S1=S/sinα h=Lsinα
V=S1×h
=(S/sinα)×Lsinα
=S・L
∴ L=V/S
但し、送り案内台(51)が水平面内で右又は左に振ることによる等の理由で、 補正値kを乗じて
L=k・V/Sとする。
上記フィーレFの送り量は、1回毎の切断分の切身は一様断面と仮定して演算されるが、フィーレFの場合、尾側は別として、その他の部位については、切身の切断幅は1〜2cm程度であるから、重量のバラツキは、許容の範囲に収まる。
【0025】
図9は、フィーレFをスライスするフローチャートを示している。
ステップS1でフィーレFを秤(73)に載せると、フィーレFの重量が制御部(7)に自動的に取り込まれる。
尚、ステップS1に入る前に、テスト切断によって、前記したフィーレFの切断面領域選択作業を終えて、切断面Faの色指定がなされている。又、フィーレFの切身F1の設定重量も予め制御部(7)に入力されている。
【0026】
ステップS2で、作業者は、フィーレFが、左身か右身かを操作キー群(72)のキー操作で選択する。
ステップS3で作業者は、フィーレFを、尾部F0を切断受部(6)側に向け、内面(中骨側の面)を下にして送り案内台(51)に載せ、かま部F2をクランプ手段(53)でクランプする。
このとき、クランプ手段(53)を具えたスライド台(52)は、送り案内台(51)の前部の定位置で待機しており、フィーレクランプ位置がフィーレFの全長を計測するための原点となる。
【0027】
ステップS4で、作業者は切身加工スタートキーを押す。
ステップS5でフィーレFの全長を計測する。ステップ5については、後で詳述する。
ステップS6でフィーレFの重量と全長から、予め制御部(7)が記憶している150以上の切断パターンから、当該フィーレFに対して最適の切断パターンが自動的に選択され、フィーレFの切断送りが開始される。この時点では、当該フィーレFから得られる切身F1の枚数は決定されており、制御部(7)に記憶される。
【0028】
ステップS7では、フィーレFの送り量が、上記選択された切断パターンの尾部F0分に達すると、送りを停止して、切断刃(21)でフィーレFを切断する。
ステップS8では、フィーレFを予定個数の切身F1にスライスし終わったか否かを判別する。
前記ステップS8で、その切身が最終切身でないと判断されると、ステップS9に移って、切身F1の設定重量に対応する体積値を算出する。
ステップS10では、前記した様にカメラ(4)で切断受部(6)上のフィーレFの切断面Faを撮影して、前記の如く、撮影画像から、実際の切断面Faの面積或いは画像数の近似値を得て、1回毎のフィーレFの送り量を決定する。
ステップS11でフィーレFの送りを実行する。
ステップS12でフィーレFの送りが完了して送りが停止すれば、ステップS13で切身切断が行われる。
ステップS14、日報上の生産切身枚数に1をプラスする。
次にステップS8に戻って、ステップS8乃至S14を、ステップS8で最終切身切断済みと判断するまで繰り返す。
【0029】
ステップS8で、フィーレFを予定個数分の切身にスライスし終えたことを判別すると、ステップS15に移って、日報上の生産フィーレF枚数に1をプラスする。
ステップS16で、直前にスライスし終えたフィーレFに関する入力データがリセットされ、ステップS17で1枚のフィーレのスライス加工が終了となる。
スライスすべきフィーレF毎に上記動作を繰り返す。
尚、上記日報とは、制御部(7)にて、フィーレFの生産枚数(スライス処理枚数)、フィーレFからの切身の1日の総数を集計、記憶、プリントアウトするものを指す。
【0030】
図10は、前記ステップS5のフィーレFの全長測定の詳細を示すフローチャートである。
ステップSa1で、前記膜状光照射装置(3)から切断受部(6)方向へ膜状光を発射し、フィーレFの頭出し動作(フィーレFの尾部F0を検出する動作)が開始される(このとき、ランプ(8)(8a)は消灯している)。
ステップSa2で原点(送り案内台(51)上のフィーレFのクランプ位置)から膜状光(30)が切断受部(6)に当たる位置(実施例では切断受部(6)の後側端縁(61)までの距離を確認する(この距離は制御部(7)に予め記憶されている)。この距離を「基準長さ」とする。
ステップSa3で制御部(7)へ、頭出し検知指令を発する。
ステップSa4でフィーレFの頭出しのための送りが開始され、図5に示す如く、膜状光(30)がフィーレFの尾部F0に当たって、実施例では、尾部F0の断面を幅5mm程度の横長細帯状に照らす。これを前記カメラ(4)が捉えて、この光照射部分の内、指定された色で占める範囲の面積を検出する。フィーレFの送りが開始されてから、前記指定された色で占める範囲の面積が、指定していた面積を越えたときを、フィーレFの送り量を「頭出し送り長さ」とする。
ステップSa5で、フィーレFの送り量が「頭出し送り長さ」に達したときに、頭出し確認信号を出力する。
ステップSa6で、フィーレFの全長を次式で決定する。
(フィレ全長)=(基準長さ)−(頭出し送り長さ)
【0031】
従来のフィーレFの全長測定は光センサーを用いて行っており、切断受部(6)上のフィーレFを挟んで左右に発光素子と受光素子を対向配備している。測定の方法は、上記と同じである。
光センサーを用いる方法では、発光素子の光の幅が小さいために、発光素子、受光素子共に上下2段に配備する必要がある。又、光センサーは切断位置近傍に位置しているから、切断滓の飛散や、洗浄水からの保護手段も必要であり、全長測定のための部品点数が増えて装置構成が複雑となる。
これに対して、本発明では、膜状光照射装置(3)を加えるだけで、カメラ(4)や照明ランプ(8)(8a)は切断面Fa撮影用のものが利用でき、構成が簡素化できる。
【0032】
尚、カメラ(4)の左右に配備した照明ランプ(8)(8a)は、フィーレFが二枚おろしの右側の片身、左側の片身によって、一方の照明のみを点灯させることが望ましい。
即ち、案内台(51)にフィーレFを載せるとき、図3、図5において、排出コンベア(11)側から見たとき、フィーレFの背が右側となるとき、反対側の左側の照明ランプ(8)のみを点灯させ、フィーレFの背が左側となるとき、反対側の右側の照明ランプ(8a)照明のみを点灯させることが望ましい。
【0033】
以下にその理由を述べる。
鮭類のフィーレFの背側には、図5、図7に示す如く、脂びれの切断跡F3があり、該切断跡は尾側端部から2〜5cmの長さで、その切断跡F3は切身の切断面Faと同様の色である。又、冷凍されたフィーレFは、背側が反り上がる傾向にあって、送り案内台(51)に載せたとき、フィーレFの脂びれ切断跡F3が見える状態となる。
このため、フィーレFとほぼ同じ高さ位置にあるフィーレFの背側のランプ(8a)を点灯すると、カメラ(4)で捉えた画像に脂びれの切断跡F3も映ってしまい、該切断F3跡も切身の切断面と判定して、その分が判定誤差となり、切身重量に許容以上のバラツキが生じる虞れがある。
前記の様に、フィーレFの背側とは反対側の照明ランプ(8)のみを点灯すると、フィーレFの背側には光が当たらず、カメラ画像では黒く映るから、脂びれの切断跡F3を切身断面の一部と判定することはない。
【0034】
尚、上記実施例では、フィーレFの切断面領域選択作業や、フィーレ全長測定の頭出しの際に、フィーレの切断面を指定色で占める面積で計測したが、画素数で計測することもできるのは勿論である。
【0035】
上記スライス方法は、フィーレFの切断面Faを直接カメラ(4)で撮影して画像処理を行って、切断面Faの面積或いは画素数を小さな誤差で計測し、それに基づいて材料の送り量を決定するから、フィーレFの各切断片の重量の揃い(定貫性)が向上する。
実施例では、切身の目標重量に対して±3〜5%の誤差に留めることができた。
上記したスライス方法は、尾部側からかま部側へ断面形状が連続的に変化しているフィーレFの切断には不向きと思われがちであるが、1回の切断毎にフィーレFの断面積を更新して送りを決定し、1回の送り量も1〜2cm程度であるから、一切れ毎の切身において、切断面Faに沿う断面積の変化は少ない。更に、前記した如く、フィーレFの送りを、サーボモータ等、回転を高精度に制御可能なモータを駆動源とし、フィーレFの送り量は、該モータの回転を制御して行うから、スライスされた切身F1重量の誤差は実用レベル以上、例えば指定重量に対して±3〜5%以内に抑えることができる。
又、1切れ毎の切断に対して、フィーレFの断面積を1回計測すれば済むから、即ち、フィーレFの送り量を瞬時に決定できるから、フィーレFの送りを含む切断作業を高速化できる。
【0036】
又、切断刃(21)の倒れ角度は、前記の段落0024に示した、フィーレFの1切れ毎に対する送り量Lの計算式には関係しないので、送り量の計算のスピードアップと、計算で得られた値の信頼性の向上に寄与できる。
【0037】
又、カメラ(4)及びランプ(8)(8a)は後カバー(92)上に取り付けられているから、スライス装置に不可欠な、高圧水噴射による内部洗浄を行う際、後カバー(92)を開いて、カメラ(4)及びランプ(8)(8a)を待避させることができ、カメラ(4)及びランプ(8)(8a)を高圧水の飛散から保護し易くなる。
【0038】
本発明は、フィーレFに限らず、幅や高さが徐々に変化する材料を重量を揃えて切断するの好適である。
【0039】
上記実施例の説明は、本発明を説明するためのものであって、特許請求の範囲に記載の発明を限定し、或は範囲を減縮する様に解すべきではない。又、本発明の各部構成は上記実施例に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能であることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】後カバーを開いた状態のスライス装置の斜視図である。
【図2】後カバーを閉じた状態のスライス装置の斜視図である。
【図3】スライス装置の平面図である。
【図4】スライス装置の断面図である。
【図5】膜状光がフィーレの尾部切断面Faに当たって細帯光に照らす状態の説明図である。
【図6】側面からの切断受部に対する切断刃、カメラ、ランプ及び膜状光照射装置の位置関係を示す説明図である。
【図7】a図はフィーレ切断面Faの平面図、b図はフィーレの断面図である。
【図8】a図は側面からみた、実際のフィーレ切断面Faとその撮像との関係を示すの説明図、b図は側面からみた、実際のフィーレ切断面Faとその撮像との関係を示すの説明である。
【図9】スライス工程のフローチャートである。
【図10】フィーレの全長計測工程のフローチャートである。
【符号の説明】
【0041】
2 切断刃支持台
3 光照射装置
4 カメラ
5 送り装置
51 送り案内台
6 切断受部
61 後側端縁
7 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
材料を切断受部(6)側へ間欠的に送り込み、材料送りを停止している間に、該切断受部(6)に近接して材料送り移行路を横切る切断刃(21)によって材料をスライスする方法であって、切り分けた材料の排出側位置にて材料の切断面Faに向けて配備したカメラ(4)によって切断面側を撮影し、その撮影画像に対して、切断面の色に対応して予め指定された色で占める部分の演算上の面積を計測し、目標断面積或いはその補整値を前記演算上の面積で除した値をベースにして切断毎の材料送り量を決定している、材料のスライス方法。
【請求項2】
材料を切断受部(6)側へ間欠的に送り込み、材料送りを停止している間に、該切断受部(6)に近接して材料送り移行路を横切る切断刃(21)によって材料をスライスする方法であって、切り分けた材料の排出側に材料の切断面Faに向けて配備したカメラ(4)によって切断面側を撮影し、その撮影画像に対して、切断面の色に対応して予め指定された色で占める部分の演算上の画素数を計測し、目標画素数或いはその補整値を前記演算上の画素数で除した値をベースにして切断毎の材料送り量を決定している、材料のスライス方法。
【請求項3】
材料は、切断受部(6)の材料送り方向側の端縁(61)に対して、1回の切断材毎、或いは複数回の切断毎に、略水平面内での送り角度が変化する様に送り込まれる、請求項1又は2に記載のスライス方法。
【請求項4】
切断刃(21)は、1回の切断毎、或いは複数回の切断毎に、材料の切り口角度が変わる様に、切断刃(21)の倒れ角度が変化する、請求項1乃至3の何れかに記載の材料のスライス方法。
【請求項5】
材料を切断受部(6)側へ断続的に送り込み、切断受部(6)に近接して材料送り移行路を繰り返し横切る切断刃(21)によって材料をスライスするスライス装置であって、切断受部(6)の材料排出側位置にて材料の切断面Fa側に向けて配備されたカメラ(4)と、切断面Faを照らすランプと、切断毎の材料送り量を決定する制御部(7)を有し、制御部(7)はカメラ(4)に連繋されており、フィーレFの切断面側の撮影画像に対して、切断面の色に対応して予め指定された色で占める部分の演算上の面積を計測し、目標断面積或いはその補整値を前記演算上の面積で除した値をベースにして切断毎の材料送り量を決定し、或いはフィーレFの切断面側の撮影画像に対して、切断面の色に対応して予め指定された色で占める部分の演算上の画素数を計測し、目標画素数或いはその補整値を前記演算上の画素数で除した値をベースにして切断毎の材料送り量を決定する、材料のスライス装置。
【請求項6】
上下方向に開閉するスライス装置カバー体(4)に、カメラ及び/又はランプが取り付けられている、請求項5に記載の材料のスライス装置。
【請求項7】
ランプ(8)(8a)は、斜め方向から切断面Faを照らす様に、切断受部(6)よりも材料排出側において左右両側に配備され、材料排出側から見て、材料であるフィーレFの背側が右側に位置しているときは、材料排出側から見て左側のランプ(8)のみが点灯し、フィレーの背側が左側に位置しているときは、右側のランプ(8a)のみが点灯して、フィーレの切断端面の撮影を行う、請求項5又は6に記載の材料のスライス装置。
【請求項8】
切断受部(6)上の材料の切断面Faを斜め上方から膜状に横切る様に照射する光照射装置(3)を具えており、制御部(7)は、材料が送り移行路上の原点を基準として、材料の先端が膜状光(30)に当たる位置に達したことをカメラ(4)が捉えて、膜状光(30)に照射された部分の色が予め指定した色と同色であると判断してその色が占める部分が一定面積或いは一定画素数に達した時点までの材料送込み量を「頭出し送り長さ」とし、原点から膜状光(30)が材料送り移行路に当たる位置までを「基準長さ」とし、「基準長さ」から「頭出し移動長さ」を減じて材料の全長を計測する機能を有している、請求項5乃至7の何れかに記載の材料のスライス装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate