説明

材料供給システム

【課題】材料を速やかに乾燥させることができるとともに、射出成形機の射出シリンダ内のガス等を効率的に排出することができる材料供給システムを提供する。
【解決手段】材料供給システム30が備えるガス吸引装置100は、内部の空洞に材料を供給するための第1材料供給口102と第1材料排出口108とガス吸引口107とが形成された第1筐体101と、第1材料供給口102を開閉する第1シャッター104と、第1シャッター104が第1材料供給口102を開いているときに第1材料排出口108を閉じる第2シャッター110とを備え、材料供給システム30が備える材料加熱装置200は、第1材料排出口108と接続された第2材料供給口202と射出成形機40に材料を供給するための第2材料排出口210とが形成された第2筐体201と、第2筐体201の内部にある材料を加熱するバンドヒーター204とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形機に材料を供給する材料供給システムに関し、特に、射出成形機において発生したガス、水蒸気等を吸引することができる材料供給システムに関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂等の射出成形機の射出シリンダ内に材料を供給する様々な材料供給装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の材料供給装置では、材料を少量ずつ射出成形機の射出シリンダ内に供給していく飢餓的材料供給法と呼ばれる方法に従って、材料を射出成形機の射出シリンダ内に供給する。これにより、射出シリンダの先端部分で材料が加熱及び溶融される際に生じるガス又は水蒸気が射出シリンダの材料供給口側へ逃げやすくなる。その結果、製品に曇りなどが発生しにくく不良品を減少させることができる。
【0003】
従来、このような材料供給装置に投入される材料には、乾燥機で予め乾燥された材料が用いられる。材料に含まれる水分を少なくすることにより、射出シリンダで発生する水蒸気の量を減少させるためである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−138542号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来のように予め乾燥機で材料を乾燥させる場合、射出成形機に材料が供給されるまでの間に材料の温度が下がることにより、乾燥させた材料が再び吸湿するという問題があった。さらに、従来の乾燥機では、材料の変質を避けるため高い温度で材料を乾燥することができないため、乾燥に時間がかかるという問題もあった。
【0006】
また、予め乾燥機で材料を乾燥させる場合、温度の下がった材料が射出成形機の射出シリンダに供給されるため、射出シリンダにおいて材料が溶融にいたるまでの時間が長くなる。その結果、射出シリンダの奥側(射出側)で材料が溶融され、溶融時に発生するガス及び水蒸気の排出が難しくなるという問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、材料を速やかに乾燥させることができるとともに、射出成形機の射出シリンダ内のガス及び水蒸気の排出を効率的に行うことができる材料供給システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明に係る材料供給システムは、ガス吸引装置と、前記ガス吸引装置及び射出成形機の間に設けられた材料加熱装置とを備え、前記射出成形機に材料を供給する材料供給システムであって、前記ガス吸引装置は、内部が空洞である第1筐体であって、当該内部に材料を供給するための第1材料供給口と、前記材料加熱装置に材料を供給するための第1材料排出口と、当該内部にあるガスを吸引するためのガス吸引口とが形成された第1筐体と、前記第1材料供給口を開閉する第1開閉部と、前記第1材料排出口を開閉する第2開閉部であって、前記第1開閉部が前記第1材料供給口を開いているときに前記第1材料排出口を閉じる第2開閉部とを備え、前記材料加熱装置は、内部が空洞である第2筐体であって、当該内部に材料を供給するために前記第1材料排出口と接続された第2材料供給口と、前記射出成形機に材料を供給するための第2材料排出口とが形成された第2筐体と、前記第2筐体の内部にある材料を加熱する加熱部とを備える。
【0009】
この構成により、第1開閉部及び第2開閉部のいずれか一方を必ず閉めることができるので、射出シリンダの内部の気圧を低く保ったまま材料を供給することができる。したがって、射出シリンダにおいて、材料が溶融する温度を下げることができる。また、材料加熱装置を備えるので、加熱した材料を比較的短時間で射出シリンダ内に供給することができ、速やかに材料を溶融することができる。これにより、射出シリンダ内の材料供給口に近い側において、ガス、水蒸気等を発生させることができるので、射出シリンダ内のガス、水蒸気等を効率的に排出することが可能となる。
【0010】
さらに、射出成形機に材料を供給する直前に材料を加熱するので、従来の乾燥機において材料を乾燥させる場合よりも高い温度まで加熱することができる。すなわち、従来の乾燥機よりも速やかに材料を乾燥させることが可能となる。
【0011】
また、前記第1開閉部は、板状のスライド部材であり、前記第1筐体の内部側の平面に溝部が形成され、前記第1材料供給口を閉じているときに前記第1筐体の内部にあるガスを前記溝部を介して前記ガス吸引口に導き、前記第1材料供給口を開いているときに前記第1筐体の内部と前記ガス吸引口とを隔離することが好ましい。
【0012】
この構成により、材料供給システム内のガスの吸引を第1開閉部の開閉と連動させることが簡便にできるようになる。さらに、第1材料供給口からガスを吸引することができるので、材料供給システム内のガスの流れをスムーズにし、材料加熱装置による材料の乾燥を促進することが可能となる。
【0013】
また、前記材料供給システムは、さらに、前記材料加熱装置と前記射出成形機との間に設けられた適量供給装置を備え、前記適量供給装置は、内部が空洞の筒状のシリンダであって、前記第2材料排出口から排出された材料を当該内部に供給するための第3材料供給口と、前記射出成形機に前記材料を供給するための第3材料排出口とが形成されたシリンダと、前記シリンダ内部に配置された回動可能なスクリューと、前記シリンダの一方の端部の前記シリンダの空洞を塞ぐ位置に設けられた材料支持部とを備え、前記第3材料排出口は前記シリンダの他方の端部に設けられ、かつ前記材料が安息角を形成する斜面に対し下方位置に設けられ、前記シリンダは、前記一方の端部が前記他方の端部よりも下方位置にあるように傾斜していることが好ましい。
【0014】
この構成により、加熱された材料を少量ずつほぐしながら射出成形機に供給することができるので、材料の乾燥を促進することが可能となる。
【0015】
また、前記適量供給装置は、さらに、前記第3材料排出口から前記射出成形機までに至る経路において、ガスを吸引するためのガス吸引管を備えることが好ましい。
【0016】
この構成により、射出成形機の近傍でガスを吸引することができるので、射出成形機において発生したガス、水蒸気等を効率的に排出することが可能となる。
【0017】
また、前記第2筐体は、内部の空洞を囲む側壁を有し、前記加熱部は、前記側壁を外側から加熱することにより、前記第2筐体の内部にある材料を加熱し、前記第2筐体は、さらに、前記側壁の内側の面に接合され、当該第2筐体の内部の空洞の内方に向かって伸びる少なくとも1枚の板状部材を有することが好ましい。
【0018】
この構成により、加熱部により加えられた熱が材料加熱装置の内部に伝達されるので、材料加熱装置の内部にある材料を加熱し、乾燥させることが可能となる。
【0019】
また、前記第2筐体は、さらに、前記第2材料供給口側に尖った円錐形状であり、前記第2筐体の内部の空洞の軸心と前記円錐形状の軸心とが略一致するように前記板状部材に接合して設けられる少なくとも1つの円錐体を有することが好ましい。
【0020】
この構成により、材料加熱装置の軸心付近にある材料と側壁付近にある材料とが循環するとともに、加熱部により加えられた熱が軸心付近に設けられた円錐体に伝達されるので、材料加熱装置の内部にある材料を均一に加熱し、乾燥させることが可能となる。
【0021】
また、前記第2筐体は、内部の空洞を囲む側壁を有し、前記加熱部は、前記側壁を外側から囲むように設けられ、前記第2筐体には、前記加熱装置の外側にある空気を前記第2筐体の内部に導く空気流入路が形成されることが好ましい。
【0022】
この構成により、加熱部により加熱された空気が材料加熱装置の内部を流れるので、材料の乾燥を促進することができる。
【発明の効果】
【0023】
以上の説明から明らかなように、本発明に係る材料供給システムは、材料を速やかに乾燥させることができるとともに、射出成形機のシリンダ内のガス及び水蒸気の排出を効率的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施の形態に係る材料供給システムの斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る材料供給システムの縦断面図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る第1シャッターの底面図及び断面図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る材料供給装置の横断面図である。
【図5】(a)〜(c)は、本発明の実施の形態に係る材料供給システムの動作を説明するための図である。
【図6】本発明の実施の形態の変形例に係る材料供給システムの縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の実施の形態に係る材料供給システムは、飢餓供給方式、射出成形機へ供給する直前における材料の加熱、及び真空ポンプによる射出シリンダ内の真空脱気に特徴を有する。これらの特徴を有することによって、材料供給システムは、射出成形機の射出シリンダ内のガス及び水蒸気の排出を効率的に行うことができる。あわせて、本発明の実施の形態に係る材料供給システムを含む射出成形システムは、真空脱気によって、材料である溶融樹脂の酸化の抑制と溶融温度の低下とを実現することができるので、材料の可塑化を安定して行うことが可能となる。
【0026】
以下に、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0027】
図1は、本発明の実施の形態に係る材料供給システム30の斜視図である。図2は、本発明の実施の形態に係る材料供給システム30の縦断面図である。図3は、本発明の実施の形態に係る第1シャッター104の底面図及びA−A断面図である。図4は、本発明の実施の形態に係る材料加熱装置200の横断面図である。
【0028】
射出成形システム10は、金型に樹脂を射出注入し成形するためのシステムであり、ホッパー20と、材料供給システム30と、射出成形機40とを備える。
【0029】
ホッパー20は、漏斗型の形状をしており、その上部から材料50を供給するためのものである。本実施の形態では、ホッパー20は、予め乾燥機等により乾燥された材料50又は乾燥を行っていない材料50を、材料供給システム30へ供給する。
【0030】
材料供給システム30は、ホッパー20と射出成形機40との間に設けられており、ガス吸引装置100と、材料加熱装置200と、適量供給装置300とを備える。
【0031】
まず、材料供給システム30が備えるガス吸引装置100について説明する。
【0032】
ガス吸引装置100は、材料加熱装置200の内部、適量供給装置300の内部及び射出成形機40の内部の脱気状態を維持しながら材料50を材料加熱装置200へ供給するとともに、材料供給システム30の内部及び射出成形機40の内部にあるガスを吸引する装置である。ガス吸引装置100は、ホッパー20と材料加熱装置200との間に設けられており、第1筐体101と、第1シャッター104と、第2シャッター110と、エアシリンダー112とを備えている。
【0033】
第1筐体101は、内部が空洞の円筒形状であり、第1材料供給口102と、ガス吸引口106と、第1材料排出口108とが形成されている。第1筐体101の内部の空洞は、円筒部分と、その円筒部分の下側にあり、下方に向かって徐々に径が小さくなるテーパ部分とからなる。このテーパ部分があることにより、材料50を上から下へ円滑に流すことが可能となる。
【0034】
第1材料供給口102は、第1筐体101の上面に形成されており、ホッパー20から供給される材料50を第1筐体101の内部へ供給するための開口である。
【0035】
第1シャッター104は、第1開閉部の一例である。第1シャッター104は、板状のスライド部材であり、第1材料供給口102を開閉するための部材である。第1シャッター104が閉じられることにより、ホッパー20から第1筐体101の内部への材料50及び空気の流れは遮断される。また、図3に示すように、第1シャッター104の下面には二つの溝部105が設けられている。第1シャッター104は、第1材料供給口102を閉じているときに、溝部105を介して、第1筐体101の内部にあるガスをガス吸引口106に導く。また、第1シャッター104は、第1材料供給口102を開いているときに、第1筐体101の内部とガス吸引口106とを隔離する。すなわち、第1シャッター104が開いているときは、第1筐体101内部にあるガスは吸引されない。
【0036】
ガス吸引口106は、第1シャッター104が収納される空間である第1シャッター収納部107を形成する下壁に設けられており、ホース等(図示せず)を介して真空ポンプ(図示せず)に接続されている。
【0037】
第1材料排出口108は、第1筐体101の下面に形成されており、第1筐体101の内部にある材料50を材料加熱装置200へ排出するための開口である。
【0038】
第2シャッター110は、第2開閉部の一例である。第2シャッター110は、板状のスライド部材であり、第1材料排出口108の開閉するための部材である。第2シャッター110が閉じられることにより、ガス吸引装置100と材料加熱装置200との間の材料50及びガスの流れは遮断される。
【0039】
エアシリンダー112は、第1開閉部及び第2開閉部を動作させる駆動部の一例である。エアシリンダー112は、圧縮空気を動力として、第1シャッター104又は第2シャッター110を左右方向にスライドさせる。このようにエアシリンダー112は、第1シャッター104又は第2シャッター110を左右方向にスライドさせることにより、第1材料供給口102又は第1材料排出口108を開閉する。
【0040】
次に、材料供給システム30が備える材料加熱装置200について説明する。
【0041】
材料加熱装置200は、材料50を加熱し、予熱及び乾燥させるための装置である。材料加熱装置200は、ガス吸引装置100と適量供給装置300との間に設けられており、第2筐体201と、バンドヒーター204と、カバー212と、流量調節螺子216とを備える。
【0042】
第2筐体201は、内部が空洞の円筒形状であり、第2材料供給口202と、4枚の伝熱羽根206と、2つの円錐体208と、第2材料排出口210と、加熱空気流入路214とが形成されている。第2筐体201の内部の空洞は、円筒部分と、その円筒部分の下側にあり、下方に向かって徐々に径が小さくなるテーパ部分とからなる。このテーパ部分があることにより、材料50を上から下へ円滑に流すことが可能となる。
【0043】
第2材料供給口202は、第2筐体201の上面に形成されており、ガス吸引装置100の第1材料排出口108と接続されている。ガス吸引装置100の第1材料排出口108から排出された材料50は、この第2材料供給口202を通って、第2筐体201の内部に供給される。
【0044】
バンドヒーター204は、加熱部の一例である。バンドヒーター204は、第2筐体201の側壁の外側を囲むように設けられており、側壁を介して、第2筐体201の内部にある材料50を加熱する。
【0045】
伝熱羽根206は、第2筐体201の側壁の内側の面に接合され、第2筐体201の内部の空洞の軸心に向かって伸びる板状部材である。また、図4に示すように、伝熱羽根206は、第2筐体201の内部の空洞の軸心を中心として放射状に4枚設けられる。したがって、側壁に伝えられたバンドヒーター204の熱は、側壁に接合された伝熱羽根206に伝達される。つまり、材料加熱装置200は、第2筐体201の内部にある材料50を効率的に加熱することが可能となる。なお、伝熱羽根206は、必ずしも4枚である必要はなく、例えば、8枚であってもよい。
【0046】
円錐体208は、上方に尖った円錐形状の部材であり、その円錐形状の軸心と第2筐体201の内部の空洞の軸心とが略一致するように、4枚の伝熱羽根206に接合して設けられる。したがって、側壁207から伝熱羽根206に伝わったバンドヒーター204の熱は、伝熱羽根206から円錐体208に伝達される。つまり、材料加熱装置200は、第2筐体201の内部の軸心近傍にある材料50を効率的に加熱することが可能となる。また、円錐体208は、内部の中央付近にある材料50が下方へ流れる際に、材料50を側壁側へ押し出す。したがって、材料加熱装置200は、側壁付近にある材料50と軸心近傍にある材料50とを循環させながら加熱することができるので、材料50を均一に加熱し、乾燥させることが可能となる。
【0047】
第2材料排出口210は、第2筐体201の下面に設けられており、第2筐体201の内部にある材料50を適量供給装置300へ排出するための開口である。
【0048】
カバー212は、バンドヒーター204を外側から覆うように設けられる保護部材であり、バンドヒーター204及び材料加熱装置200の側壁などの高温部分が外部にさらされるのを防ぐ保護部材である。これによりユーザが誤って高温部分に触れるのを防ぐことができる。また、カバー212とバンドヒーター204との間は隙間が空いているので、カバー212は、バンドヒーター204の熱が外部に発散するのを防ぐこともできる。
【0049】
加熱空気流入路214は、バンドヒーター204とカバー212との間の隙間にある加熱された空気を第2筐体201の内部に流入させるための通路であり、第2筐体201の側壁の下部に設けられる。このように、バンドヒーター204により加熱された空気を第2筐体201の内部に流入させることにより、材料50の加熱を効率的にすることが可能となる。
【0050】
流量調節螺子216は、締めたり緩めたりすることにより、加熱空気流入路214の通路断面積を可変にできる。すなわち、流量調節螺子216は、加熱された空気の流入量を調節することが可能である。
【0051】
このように、材料供給システム30は、射出成形機40に材料50を供給する直前に材料加熱装置200を備えるので、加熱された材料50の温度が下がることにより、吸湿するという問題を回避することが可能となる。
【0052】
次に、材料供給システム30が備える適量供給装置300について説明する。
【0053】
適量供給装置300は、射出成形機40における材料50の飢餓的材料供給法を実現するために、材料50の供給量を調節しながら射出成形機40へ材料50を供給する装置である。適量供給装置300は、材料加熱装置200と射出成形機40との間に設けられており、シリンダ303と、材料供給用スクリュー306と、モーター308と、材料落下管310と、ガス吸引管312とを備える。
【0054】
シリンダ303は、内部が空洞の筒状であり、第3材料供給口304と第3材料排出口305とを有する。また、シリンダ303は、適量供給装置300の内部に斜め上向きに設けられており、傾斜角は水平方向を基準として、約30度である。
【0055】
第3材料供給口304は、シリンダ303の斜め下方の側壁上側に設けられた開口であり、材料加熱装置200の第2材料排出口210に接続されている。したがって、第2材料排出口210から排出された材料50は、第3材料供給口304を介してシリンダ303の内部に供給される。
【0056】
第3材料排出口305は、シリンダ303の斜め上方の先端部分に設けられており、材料50が安息角を形成する斜面に対し下方位置に設けられる。したがって、シリンダ303からあふれ出た材料50は、材料落下管310を介して、射出成形機40の第4材料供給口42へ供給される。
【0057】
材料供給用スクリュー306は、シリンダ303の内部に設けられており、螺旋状の凸部を有する。材料供給用スクリュー306の回転軸は、シリンダ303の軸心と平行である。すなわち、材料供給用スクリュー306の回転軸はシリンダ303と同様に斜め上向きである。この材料供給用スクリュー306が回転することにより、シリンダ303内の材料50が、斜め上方に押し出され、シリンダ303の先端部分から材料落下管310へあふれ出る。このように、材料加熱装置200により加熱された材料50が、材料供給用スクリュー306により少量ずつ切り出されることによって少量ずつパラパラ落下するので、材料50の乾燥が促進される。
【0058】
モーター308は、材料供給用スクリュー306を回転させる。また、モーター308は、材料支持部の機能も有しており、シリンダ303の斜め下方の先端部分にある開口を塞ぐように設けられる。
【0059】
材料落下管310は、上下方向に伸びるように設けられている。材料落下管310の下端は開口しており、射出成形機40の第4材料供給口42に接続されている。また、材料落下管310の上端を塞ぐ上蓋から、ガス吸引管312が挿入されている。
【0060】
ガス吸引管312は、射出成形機40の射出シリンダ44で発生したガス及び水蒸気を外部に排出するためのものである。シリンダ303外部にあるガス吸引管312の端部は、ホース等(図示せず)を介して真空ポンプ(図示せず)に接続されている。
【0061】
次に、射出成形機40について説明する。
【0062】
射出成形機40は、飢餓的材料供給法により金型に樹脂を注入する装置であり、射出用スクリュー46を回転させることによって、第4材料供給口42より供給された樹脂の材料50を進行方向である図2中のX方向に移動させる。材料50は、射出用スクリュー46の圧縮部分48で圧縮された後、圧縮部分48よりも図中左側に位置する溶融部分(図示せず)へと運ばれ、溶融される。溶融された材料50は、射出用スクリュー46の回転に伴い、予め設定させた量の材料50を計量するための計量室(図示せず)へと運ばれる。射出用スクリュー46は、計量室の内圧によりX方向とは逆の方向へ一旦移動させられる。予め設定された量の材料50が計量室へ運ばれると、射出用スクリュー46の回転を停止させ、かつ射出用スクリュー46をX方向に移動させることにより、計量室から金型(図示せず)に材料50を注入する。このようにして、射出成形が行なわれる。
【0063】
なお、飢餓的材料供給法においては、第4材料供給口42付近の材料50の量を少なくし、圧縮部分48に近づくにつれ材料50の量が多くなるように、射出成形機40への材料50の供給が行なわれる。これにより、射出成形機40の射出シリンダ44の内部後方に空間が生じる。よって、材料供給システム30は、溶融部分で溶融された材料50から発生するガス、水蒸気などを射出シリンダ44の内部後方に逃がす事ができる。よって、溶融された材料50内に水蒸気やガスなどが混入しにくくなり、材料供給システム30は、製品の質を安定させることができる。
【0064】
さらに、射出シリンダ44には、材料加熱装置200により加熱された材料50が供給される。したがって、加熱されていない材料50が供給されるときよりも、ガス、水蒸気などの発生位置が射出シリンダ44の後方(第4材料供給口42)に移動する。これにより、材料供給システム30は、射出シリンダ44の内部後方に、ガス、水蒸気などを逃がしやすくなる。
【0065】
また、射出成形システム10では、射出シリンダ44の内部に不活性ガスを注入していない。これにより、材料供給システム30は、溶融部分で溶融された材料50から発生するガス、水蒸気などを、不活性ガスに邪魔されることなく、効率的に吸引することが可能となる。さらに、不活性ガスが注入される場合よりも射出シリンダ44の内部の気圧が低くなるので、材料50の溶融及び蒸発の温度は低くなる。したがって、不活性ガスを注入する場合よりも、ガス、水蒸気などの発生位置が射出シリンダ44の後方(第4材料供給口42)に移動するので、材料供給システム30は、効率的にガス、水蒸気等を吸引することが可能となる。つまり、材料供給システム30は、不活性ガスを注入する場合よりも製品の質を安定させることができる。
【0066】
次に、以上のように構成された材料供給システム30における動作について説明する。
【0067】
図5(a)〜図5(c)は、本発明の実施の形態に係る材料供給システム30の動作について説明するための図である。図5(a)〜図5(c)において、黒塗りの矢印は材料50の流れを示し、白抜きの矢印はガスの流れを示す。
【0068】
図5(a)では、第1シャッター104は閉まっており、第2シャッター110は開いている。したがって、ホッパー20からガス吸引装置100へ材料50が供給されない。つまり、ガス吸引装置100の内部の材料50は減少していく。
【0069】
また、射出シリンダ44において発生したガス等は、主としてガス吸引管312から吸引される。また、材料加熱装置200の内部及びガス吸引装置100の内部にあるガスは、主としてガス吸引口106から吸引される。したがって、ガス吸引装置100、材料加熱装置200、適量供給装置300及び射出成形機40の内部は、脱気状態となる。
【0070】
さらに、加熱空気流入路214を介して流入したバンドヒーター204により暖められた空気は、材料加熱装置200の内部及びガス吸引装置100の内部を通って、ガス吸引口106から吸引される。これにより、材料加熱装置200は、内部にある材料50の乾燥を促進することが可能となる。
【0071】
次に、図5(b)に示すように、ガス吸引装置100の内部の材料50がすべて材料加熱装置200へ供給された後、第1シャッター104が開けられ、第2シャッター110が閉められる。これにより、ガス吸引装置100には、ホッパー20から材料50が供給されるとともに、外部の空気が流入する。しかし、第2シャッター110によりガス吸引装置100と材料加熱装置200との間のガスの流れは遮断されているので、材料加熱装置200、適量供給装置300及び射出成形機40における脱気状態は維持される。
【0072】
続いて、図5(c)に示すように、ガス吸引装置100に材料50が供給された後、第1シャッター104が閉じられる。これにより、ガス吸引装置100の内部にあるガスは、ガス吸引口106から第1シャッター104の溝部105を介して吸引されるので、再び脱気状態となる。
【0073】
そして、材料供給システム30は、再び図5(a)の状態に戻る。このような図5(a)〜図5(c)のサイクルを繰り返すことにより、材料加熱装置200、適量供給装置300及び射出成形機40の内部の脱気状態を保ったまま、材料50を射出成形機40に供給することが可能となる。
【0074】
次に、上記の材料供給システム30を用いて実験したときの実験結果について説明する。
【0075】
本実験に係る材料加熱装置200の第2筐体201は、直径が150mmであり、高さが150mmであった。そして、材料加熱装置200が、材料A(ポリフェニレンスルフィド(PPS))及び材料B(ポリオキシドメチレン(POM))を180度及び120度まで加熱したときの、加熱前の含水率と加熱後の含水率とを計測した。なお、POMは、機械部品、電気部品又は住宅用材などの強度維持の必要な部分などに用いられる一般的なプラスチック素材である。また、PPSは、POMよりも高い耐熱性をもつプラスチック素材である。表1は、実験結果を示す表である。なお、実験において、加熱時間は30分であり、第2筐体201の内部の真空度は50kpaであった。
【0076】
【表1】

【0077】
表1に示すように、材料供給システム30は、比較的短時間の加熱であっても、材料を十分乾燥させることができた。従来の乾燥機の場合、上記と同程度まで材料を乾燥させるためには、約1.5〜3時間必要となる。
【0078】
以上のように、本実施の形態に係る材料供給システム30は、第1シャッター104及び第2シャッター110のいずれか一方を必ず閉めることができるので、射出シリンダ44の内部の気圧及び酸素濃度を低く保ったまま材料50を供給することができる。したがって、材料供給システム30は、射出シリンダ44において、材料が溶融する温度を下げること及び材料の酸化を抑制することができるので、材料の可塑化を安定させることが可能となる。また、材料供給システム30は、材料加熱装置200が加熱した材料50を射出シリンダ44の内部に供給することができる。以上により、射出シリンダ44のより後方で、ガス、水蒸気等を発生させることができるので、材料供給システム30は、効率的にガス、水蒸気等を射出シリンダ44から排出することが可能となる。
【0079】
さらに、材料供給システム30は、射出成形機40に供給する直前に材料50を加熱するので、従来の乾燥機において材料50を乾燥させる場合よりも高い温度まで加熱することができる。すなわち、材料供給システム30は、従来の乾燥機よりも速やかに材料50を乾燥させることが可能となる。
【0080】
また、第1シャッター104は、下面側に溝部105を備えることにより、ガスの吸引を第1シャッター104の開閉と連動させることが簡便にできるようになる。さらに、材料供給システム30は、第1材料供給口102からガスを吸引することができるので、材料供給システム30内のガスの流れをスムーズにし、材料加熱装置200による材料の乾燥を促進することが可能となる。
【0081】
また、材料供給システム30は、適量供給装置300を備えることにより、加熱された材料50をほぐしながら少量ずつ落下させることができるので、さらに、材料50の乾燥を促進することが可能となる。
【0082】
また、材料供給システム30は、射出成形機40の第4材料供給口42の近傍にガス吸引管312を備えるので、射出シリンダ44内において発生したガス、水蒸気等を速やかに効率的に排出することが可能となる。
【0083】
また、材料加熱装置200は、側壁に接合された伝熱羽根206を複数備えるので、バンドヒーター204により側壁外側に加えられた熱が第2筐体201の内部にまで伝達される。したがって、材料供給システム30は、材料加熱装置200の内部にある材料を効果的に加熱し、速やかに乾燥させることが可能となる。
【0084】
また、材料加熱装置200は、円錐体208を第2筐体201の軸心付近に備えるので、第2筐体201の軸心付近にある材料50と側壁付近にある材料50とを循環させるとともに、バンドヒーター204により加えられた熱を第2筐体201の軸心付近に伝達することが可能となる。これにより、材料供給システム30は、材料加熱装置200の内部にある材料50を均一に加熱し、乾燥させることが可能となる。
【0085】
また、材料加熱装置200は、加熱空気流入路214を備えることにより、バンドヒーター204により加熱された空気を第2筐体201の内部に流すことができるので、材料50の乾燥を促進することができる。
【0086】
以上、本発明に係る材料供給装置について、実施の形態に基づいて説明したが、本発明は、これらの実施の形態に限定されるものではない。本発明の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を本実施の形態に施したものも、本発明の範囲内に含まれる。
【0087】
例えば、材料供給システムは、必ずしも飢餓的材料供給法を実現する適量供給装置を備えなくてもよい。この場合、図6に示すように、材料加熱装置の第2材料排出口と射出シリンダの第4材料供給口とが接続される。
【0088】
また、第1シャッター及び第2シャッターは、必ずしも板状部材でなくてもよい。また、第1シャッター及び第2シャッターは、必ずしもスライド移動する必要はない。例えば、第1シャッター及び第2シャッターは、ボールバルブのように、球体であり、回転することにより第1材料供給口及び第2材料供給口を開閉してもよい。
【0089】
また、上記材料供給システムのガス吸引装置は、エアシリンダーを備えていたが、本発明に係るガス吸引装置は、必ずしもエアシリンダーを備える必要はない。例えば、ユーザが第1シャッター及び第2シャッターを開閉させてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明は、射出成形機に材料を供給する材料供給システムとして利用でき、特に未乾燥の材料を乾燥させながら供給することができる材料供給システムとして利用できる。
【符号の説明】
【0091】
10 射出成形システム
20 ホッパー
30 材料供給システム
40 射出成形機
42 第4材料供給口
44 射出シリンダ
46 射出用スクリュー
48 圧縮部分
50 材料
100 ガス吸引装置
101 第1筐体
102 第1材料供給口
104 第1シャッター
105 溝部
106 ガス吸引口
107 第1シャッター収納部
108 第1材料排出口
110 第2シャッター
112 エアシリンダー
200 材料加熱装置
201 第2筐体
202 第2材料供給口
204 バンドヒーター
206 伝熱羽根
208 円錐体
210 第2材料排出口
212 カバー
214 加熱空気流入路
216 流量調節螺子
300 適量供給装置
303 シリンダ
304 第3材料供給口
305 第3材料排出口
306 材料供給用スクリュー
308 モーター
310 材料落下管
312 ガス吸引管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス吸引装置と、前記ガス吸引装置及び射出成形機の間に設けられた材料加熱装置とを備え、前記射出成形機に材料を供給する材料供給システムであって、
前記ガス吸引装置は、
内部が空洞である第1筐体であって、当該内部に材料を供給するための第1材料供給口と、前記材料加熱装置に材料を供給するための第1材料排出口と、当該内部にあるガスを吸引するためのガス吸引口とが形成された第1筐体と、
前記第1材料供給口を開閉する第1開閉部と、
前記第1材料排出口を開閉する第2開閉部であって、前記第1開閉部が前記第1材料供給口を開いているときに前記第1材料排出口を閉じる第2開閉部とを備え、
前記材料加熱装置は、
内部が空洞である第2筐体であって、当該内部に材料を供給するために前記第1材料排出口と接続された第2材料供給口と、前記射出成形機に材料を供給するための第2材料排出口とが形成された第2筐体と、
前記第2筐体の内部にある材料を加熱する加熱部とを備える
材料供給システム。
【請求項2】
前記第1開閉部は、板状のスライド部材であり、前記第1筐体の内部側の平面に溝部が形成され、前記第1材料供給口を閉じているときに前記第1筐体の内部にあるガスを前記溝部を介して前記ガス吸引口に導き、前記第1材料供給口を開いているときに前記第1筐体の内部と前記ガス吸引口とを隔離する
請求項1に記載の材料供給システム。
【請求項3】
前記材料供給システムは、さらに、前記材料加熱装置と前記射出成形機との間に設けられた適量供給装置を備え、
前記適量供給装置は、
内部が空洞の筒状のシリンダであって、前記第2材料排出口から排出された材料を当該内部に供給するための第3材料供給口と、前記射出成形機に前記材料を供給するための第3材料排出口とが形成されたシリンダと、
前記シリンダ内部に配置された回動可能なスクリューと、
前記シリンダの一方の端部の前記シリンダの空洞を塞ぐ位置に設けられた材料支持部とを備え、
前記第3材料排出口は前記シリンダの他方の端部に設けられ、かつ前記材料が安息角を形成する斜面に対し下方位置に設けられ、
前記シリンダは、前記一方の端部が前記他方の端部よりも下方位置にあるように傾斜している
請求項1又は2に記載の材料供給システム。
【請求項4】
前記適量供給装置は、さらに、
前記第3材料排出口から前記射出成形機までに至る経路において、ガスを吸引するためのガス吸引管を備える
請求項3に記載の材料供給システム。
【請求項5】
前記第2筐体は、内部の空洞を囲む側壁を有し、
前記加熱部は、前記側壁を外側から加熱することにより、前記第2筐体の内部にある材料を加熱し、
前記第2筐体は、さらに、前記側壁の内側の面に接合され、当該第2筐体の内部の空洞の内方に向かって伸びる少なくとも1枚の板状部材を有する
請求項1〜4のいずれか1項に記載の材料供給システム。
【請求項6】
前記第2筐体は、さらに、前記第2材料供給口側に尖った円錐形状であり、前記第2筐体の内部の空洞の軸心と前記円錐形状の軸心とが略一致するように前記板状部材に接合して設けられる少なくとも1つの円錐体を有する
請求項5に記載の材料供給システム。
【請求項7】
前記第2筐体は、内部の空洞を囲む側壁を有し、
前記加熱部は、前記側壁を外側から囲むように設けられ、
前記第2筐体には、前記加熱装置の外側にある空気を前記第2筐体の内部に導く空気流入路が形成される
請求項1〜6のいずれか1項に記載の材料供給システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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