説明

材料強度試験装置および材料強度試験方法

【課題】 複数の試験片を同時に試験することができるとともに、試験片ごとの正確なデータを取得することができる材料強度試験装置および材料強度試験方法を提供する。
【解決手段】 所定直線C上に配列された複数の保持部53,55,57,59と、各保持部53,55,57,59の間に配置され、隣接する保持部53,55,57,59と固定される試験片31と、保持部53,55,57,59に対して所定直線Cに沿う方向へ荷重を加えて、試験片31に対して引張応力または圧縮応力を負荷する荷重負荷部37と、各保持部53,55,57,59の所定直線Cに沿う方向への変位を測定する変位測定部39と、荷重負荷部37により負荷される荷重を測定する荷重測定部73と、を有していることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、材料強度試験装置および材料強度試験方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、腐食環境下におかれた金属材料に応力を負荷した際に、腐食のみが作用する場合あるいは応力のみが作用する場合と比較して、より軽度の条件下で金属材料に割れが発生する応力腐食割れ(Stress Corrosion Cracking;以下、SCCと表記する。)が知られている。
【0003】
上述のSCCは、材料表面の酸化皮膜の保護性が局所的に失われることにより発生することが知られ、その発生機構は、腐食環境や金属材料や金属材料に作用する応力などのパラメータによりさまざまな形態に分類されることが知られている。
これらSCCの発生機構は全てが解明されていないため、理論的にSCCの発生を予測することが困難である。そのため、金属材料の使用環境に近い状態で試験を行い、試験結果によりSCCの発生確率を予測することが行なわれている(例えば、特許文献1および2参照。)。
【特許文献1】実開平6−28707号公報
【特許文献2】特開2003−28787号公報
【特許文献3】特開平5−297181号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の特許文献1においては、切り欠きが形成された試験片とモータとが、スライダおよびねじり棒を介して結合された構成を有し、モータがねじり棒を回転させることにより、試験片に対して切り欠きを開閉させる力を加える技術が開示されている。
この技術によれば、時間と共に変化する応力を試験片に作用させることができ、繰返し応力によるSCCを評価することができる。
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された技術では、1台の試験装置において一度に1つの試験片しか評価を行うことができなかった。そのため、多数の試験片の評価を行う場合や、複数の条件下における評価を行う場合には、使用できる試験装置の台数に制限があるため、長い時間を要するという問題があった。
【0006】
上述の特許文献2においては、圧力容器内に複数のカプセルを収め、そのカプセル内に応力を負荷した状態で複数の試験片を収納した構成を有し、カプセル内に腐食性の高い溶液を流通させる技術が開示されている。
この技術によれば、1台の試験装置において、一度に複数の試験片を同一の条件化で評価することができるため、短時間で多くの試験片の評価データを取得することができた。
【0007】
しかしながら、特許文献2に開示された技術では、試験片にSCCが発生した際の正確な応力や、SCCが発生するまでに要した正確な時間などが不明であるため、正確な評価を下すことが困難であった。
【0008】
上述の特許文献3においては、引張試験用の試験片を固定治具に固定して直列に配列し、一連の試験片に引張荷重を加える負荷シリンダを備え、負荷シリンダの変位を検出する作動変位計を備えた試験装置が開示されている。
この試験装置によれば、1台の試験装置において、一度に複数の試験片を同一の条件化で評価することができるため、短時間で多くの試験片の評価データを取得することができた。
しかしながら、特許文献3に開示された技術では、試験片にSCCが発生した際の正確な応力が不明という問題があった。また、この試験装置の構成のみでは複数の試験片の中からSCCが発生した試験片を特定することが困難という問題があった。
【0009】
さらに、上述の特許文献3においては、U字型に形成された試験片を負荷支持シリンダに直列配列し、負荷ネジにより一連の試験片を撓ませる負荷ネジを備え、各試験片に歪ゲージを取り付ける試験装置が開示されている。
この試験装置によれば、1台の試験装置において、一度に複数の試験片を同一の条件化で評価することができるため、短時間で多くの試験片の評価データを取得することができた。
しかしながら、特許文献3に開示された技術では、試験片にSCCが発生した際の正確な応力が不明という問題があった。
【0010】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、複数の試験片を同時に試験することができるとともに、試験片ごとの正確なデータを取得することができる材料強度試験装置および材料強度試験方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明は、以下の手段を提供する。
本発明は、所定直線上に配列された複数の保持部と、前記各保持部の間に配置され、隣接する前記保持部に対して固定される試験片と、前記保持部に対して前記所定直線に沿う方向へ荷重を加えて、前記試験片に対して引張応力または圧縮応力を負荷する荷重負荷部と、前記各保持部の前記所定直線に沿う方向への変位を測定する変位測定部と、前記荷重負荷部により負荷される荷重を測定する荷重測定部と、を有していることを特徴とする材料強度試験装置を提供する。
【0012】
本発明によれば、所定直線上に配列した複数の保持部の間に試験片を配置して、試験片を隣接する保持部に固定することにより、複数の試験片に同時に同じ荷重を加え、引張応力または圧縮応力を負荷することができる。
変位測定部において各保持部の所定直線に沿う方向への変位を測定することにより、複数の試験片のそれぞれについての変形に係る情報を得ることができる。また、荷重測定部において荷重負荷部により負荷された荷重を測定することにより、複数の試験片のそれぞれに加えられる荷重に係る情報を得ることができる。
【0013】
また、上記発明においては、前記試験片に隣接する前記保持部の少なくとも一方に、前記所定直線と交わる方向に延びる少なくとも1つの回転軸回りに回動可能な関節部が設けられていることが望ましい。
本発明によれば、関節部を設けることにより、試験片に対して回転モーメントが働くことを防止でき、引張荷重または圧縮荷重のみを負荷させることができる。その結果、試験片の評価をより正確に行うことができる。
また、例えば、保持部が円筒状部材内部を移動可能に配置されている場合、関節部を設けることにより、保持部が上記円筒状部材の内周面に押し付けられることを防止できる。そのため、保持部と上記円筒状部材との間で摩擦抵抗が働くことを防止でき、試験片に働く荷重が軽減されることを防止できる。
【0014】
さらに、上記発明においては、前記変位測定部がレーザ変位計であり、前記保持部に前記レーザ変位計から出射されたレーザを反射する反射部が設けられていることが望ましい。
本発明によれば、レーザ変位計を用いてレーザ変位計から反射部までの距離の変化を測定することにより、試験片の変形に係る情報を得ることができる。
レーザ変位計はレーザ光を用いた非接触系の測定装置であるため、試験片に作用する荷重に影響を与えることなく、試験片の変形に係る情報を得ることができる。
例えば、接触系の測定装置の場合には、測定装置内の摩擦抵抗などにより試験片に作用する荷重が軽減されて荷重が不正確になるが、非接触系のレーザ変位計には、このような問題が発生しない。
なお、上述の接触系の測定装置を用いて試験片の変形に係る情報を得てもよいが、かかる場合には、測定装置内の摩擦により試験片の変形に係る正確な情報を得ることは困難である。
【0015】
また、変位測定部であるレーザ変位計の測定対象は、所定直線に沿う方向に変位する全ての保持部であってもよいし、荷重負荷部から最初に荷重が負荷される保持部については、直接その保持部の変位を測定する代わりに、荷重負荷部における可動部(例えばピストン部)の変位を測定してもよく、特に限定するものでない。
【0016】
上記発明においては、前記保持部および前記試験片の少なくとも一方に、前記試験片を前記保持部に固定する固定手段が備えられていることが望ましい。
本発明によれば、固定手段により試験片を保持部に固定するため、試験片が変形しても保持部上の同一箇所に固定し続けることができる。そのため、複数の試験片を上記所定直線上に配列させ続けることができ、試験片に正確な荷重を加え続けることができる。
【0017】
上記発明においては、前記荷重負荷部が荷重を前記保持部に伝達する軸体を備え、前記荷重測定部が前記軸体に配置されていることが望ましい。
本発明によれば、軸体に荷重測定部を配置することにより、例えば、荷重負荷部に荷重測定部を配置する場合と比較して、試験片に加えられる荷重をより正確に測定することができる。つまり、軸体に荷重測定部を配置することにより、荷重負荷部内における摩擦抵抗などによる荷重軽減の影響を排除でき、試験片に加えられる正確な荷重を測定することができる。
【0018】
上記発明においては、前記複数の保持部および前記試験片をその内部に収納する筐体と、該筐体内に、腐食性媒体を供給する腐食性媒体供給手段と、を備えることが望ましい。
本発明によれば、筐体内に試験片等を収納するとともに、腐食性媒体を供給することにより、腐食環境下において試験片に応力を負荷させることができ、試験片について応力腐食割れ試験を行なうことができる。
なお、腐食性媒体は、液体、気体、液体と気体の混合媒体のいずれでもよく、特に限定するものではない。
【0019】
上記発明においては、前記試験片がその断面が略O状、または、略C状の筒状に形成され、前記試験片の中心軸に対して交わる方向に沿って前記荷重が負荷されることが望ましい。
本発明によれば、その断面が略O状、または、略C状の筒状に形成された試験片を用い、その中心軸に対して交わる方向に沿って荷重が負荷されることにより、例えば、円柱状または短冊状の試験片を用いる場合と比較して、塑性変形域における試験片のネッキングが起きないため、試験片に対して大きな応力を負荷した評価を行ないやすくできる。
【0020】
本発明は、所定直線上に配列された複数の保持部と、前記各保持部の間に配置され、隣接する前記保持部に対して固定される試験片と、前記保持部に対して前記所定直線に沿う方向へ荷重を加えて、前記試験片に対して引張応力または圧縮応力を負荷する荷重負荷部と、前記各保持部の前記所定直線に沿う方向への変位を測定する変位測定部と、前記荷重負荷部により負荷される荷重を測定する荷重測定部と、を有する材料強度試験装置を用いた材料強度試験方法であって、前記荷重負荷部により、前記各試験片に対して所定荷重を加え、前記荷重測定部により、前記所定荷重を測定するとともに、前記変位測定部により、前記各保持部の変位を測定することにより前記各試験片の変位を求め、前記各試験片の変位量が所定値に達するまでの時間を測定することを特徴とする材料強度試験方法を提供する。
【0021】
本発明によれば、所定直線上に配列した複数の保持部の間に試験片を配置して、複数の試験片に同時に引張応力または圧縮応力を負荷することができるため、複数の試験片の強度試験を同時に行うことができる。
荷重測定部において荷重負荷部により負荷された荷重を測定することにより、複数の試験片のそれぞれに加えられる荷重に係る情報を得ることができる。
変位測定部において各保持部の所定直線に沿う方向への変位を測定することにより、複数の試験片のそれぞれについての変形に係る情報を得ることができ、各試験片の変位量が所定値に達するまでの時間を正確に測定することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の材料強度試験装置によれば、所定直線上に配列した複数の保持部の間に試験片を配置して、試験片を隣接する保持部に固定することにより、複数の試験片に同時に引張応力または圧縮応力を負荷することができるため、複数の試験片を同時に試験することができるという効果を奏する。
【0023】
変位測定部において各保持部の所定直線に沿う方向への変位を測定することにより、複数の試験片のそれぞれについての変形に係る情報を得ることができる。また荷重測定部において荷重負荷部により負荷された荷重を測定することにより、複数の試験片のそれぞれに加えられる荷重に係る情報を得ることができるため、試験片ごとのデータを取得することができるという効果を奏する。
【0024】
本発明の材料強度試験方法によれば、荷重測定部において荷重負荷部により負荷された荷重を測定することにより、複数の試験片のそれぞれに加えられる荷重に係る情報を得ることができる。また、変位測定部において各保持部の所定直線に沿う方向への変位を測定することにより、複数の試験片のそれぞれについての変形に係る情報を得ることができ、各試験片の変位量が所定値に達するまでの時間を正確に測定できるため、試験片ごとのデータを取得することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
〔第1の実施形態〕
以下、本発明に係る定荷重応力腐食割れ試験装置(以下、定荷重SCC試験装置と表記する。)における第1の実施形態について図1および図2を参照して説明する。
図1は、本実施形態における定荷重SCC試験装置の全体構成を示す系統図である。
なお、本実施形態においては、定荷重SCC試験装置を、加圧水型(Pressurized Water Reactor:以下、PWRと表記する。)原子炉等の一次冷却水と接する部材の照射誘起応力腐食割れ(Irradiation Assisted
Stress Corrosion Cracking:以下、IASCCと表記する。)に係る評価を行なう試験装置に適用して説明する。
【0026】
定荷重SCC試験装置(材料強度試験装置)1は、図1に示すように、試験片に一定の応力を負荷する応力負荷部3と、試験片の環境を一定の腐食環境に保つ環境維持部5とから概略構成されている。
環境維持部5は、PWRの一次冷却水を模擬した試験水(腐食性媒体)を貯蔵している試験水タンク(腐食性媒体供給手段)7と、試験水タンク7から試験水を応力負荷部3へ昇圧して送り出す高圧定量ポンプ(腐食性媒体供給手段)9と、から概略構成されている。高圧定量ポンプ9としては、PWRの一次冷却水が循環する環境を模擬できる性能を有していることが望ましい。
【0027】
本実施形態においては、5台の応力負荷部3、3台の高圧定量ポンプ9を備えた構成形態に適用して説明する。この形態では、試験水タンク7から流出した試験水は、3台並列に配置された高圧定量ポンプ9に分岐して流入され、高圧定量ポンプ9から送り出された試験水は、それぞれ1台または2台の応力負荷部3に流入されるように構成されている。
【0028】
高圧低圧ポンプ9および応力負荷部3の間には、応力負荷部3から流出した高温の試験水を用いて、これから応力負荷部3に流入する試験水を昇温させる再生熱交換器11と、再生熱交換器11により昇温された試験水をさらに昇温させる予熱器13と、が配置されている。再生熱交換器11および予熱器13は、これら二つを合わせてPWRの一次冷却水を模擬できる能力を有することが望ましい。
また、高圧定量ポンプ9と再生熱交換器11との間、および、再生熱交換器11と試験水タンク7との間には、高圧ディスクフィルタ15が配置され、試験水内に含まれる異物などを除去している。
【0029】
試験水タンク7には、試験水計測部17と、水素ボンベ19と、アルゴンボンベ21と、が備えられている。
試験水計測部17は、試験水の導電率を計測する導電率計23と、試験水の溶存酸素を計測する溶存酸素計25と、試験水に溶存する水素を計測する溶存水素計27と、これら計測計に試験水を循環させる計測ポンプ29と、から概略構成されている。これらの計測装置は、試験水タンク7内の試験水がPWRの一次冷却水と略同一の水質に保たれているかを計測している。
【0030】
水素ボンベ19とアルゴンボンベ21とは、試験水タンク7内の試験水に水素、アルゴンを導入できるように配置されている。このように、試験水に水素およびアルゴンを導入できるため、試験水の水質をPWRの一次冷却水と略同一に保つことができる。
【0031】
図2は、図1の応力負荷部の構成を説明する概略図である。
応力負荷部3は、図2に示すように、試験片31を保持する試験片ホルダー33と、試験片ホルダー33を内部に収納する試験容器(筐体)35と、試験片ホルダー33と接続され、試験片31に圧縮荷重をかける荷重負荷部37と、試験片31の破断等を測定する変位測定部39と、から概略構成されている。
【0032】
試験容器35は、凹部が形成された容器本体41と蓋43とから構成され、容器本体41と蓋43とが組み合わされることにより水密な容器が形成される。試験容器35は、容器本体41が上方、蓋43が下方になるように配置されている。
容器本体41の凹部には、試験水の温度を測定する温度センサ45が配置され、温度センサ45は予熱器13等を制御する温調制御装置47と接続され、温調制御装置47へ温度センサ45が取得した試験水の温度情報が出力されている。
蓋43には、試験水タンク7(図1参照)から送られてくる試験水が流入する流入管路(腐食性媒体供給手段)49と、試験水が試験水タンク7に向けて流出する流出管路(腐食性媒体供給手段)51とが配置されている。流入管路49の開口端は蓋43の近傍領域に配置され、流出管路51の開口端は容器本体41の凹部の底面近傍に配置されている。
【0033】
試験片ホルダー33は、上段試験片31Aを保持するホルダー本体(保持部)53および第1保持部55と、第1保持部55とともに中段試験片31Bを保持する第2保持部57と、第2保持部57とともに下段試験片31Cを保持する第3保持部59とから概略構成されている。
上段試験片31A、中段試験片31B、下段試験片31Cは全て、同一の金属材料から形成され、その断面がC形状である略筒状に形成されている。金属材料としては、中性子照射されたオーステナイト系ステンレス鋼を例示することができるが、特にこの金属材料に限定するものではない。また、上段試験片31A、中段試験片31B、下段試験片31Cは同一の材料で形成された同一形状の試験片であってもよいし、これら試験片は異なる材料から形成されたものでもよいし、異なる形状に形成されていてもよく、特に制限するものでない。
【0034】
各試験片31A,31B,31Cが同一材料かつ同一形状からなる場合には、一回の試験で各試験片31A,31B,31Cにおける応力腐食割れが発生するまでの時間を測定し、3つの測定値から求められた応力腐食割れが発生するまでの平均時間を得ることができる。
【0035】
また、異なる材料・材質からなる複数の試験片を一回の試験に供しても良いし、その厚さや長さが異なる複数の試験片を一回の試験に供しても良い。
同じ荷重が負荷されている場合でも、試験片の厚さや長さが異なると、試験片における割れが発生する領域に発生する応力が異なってくる。そのため、厚さや長さが異なる複数の試験片を一回の試験に供することで、複数の所定応力が作用する場合の試験を行うことができる。
上述の試験片の厚さを変更する方法としては、略筒状に形成された試験片の外径を変更する方法と、試験片の内径を変更する方法、外径および内径の両方を変更する方法を例示することができる。試験片の長さを変更する方法としては、略筒状に形成された試験片の中心軸線に沿う方向の寸法を変更する方法を例示することができる。
【0036】
ホルダー本体53は、その内部に空間を有する中空構造を有するように形成され、その一方の端部には、後述するプルロッドが接続されている。ホルダー本体53の内部には、上方から順に、上段試験片31A、第1保持部55、中段試験片31B、第2保持部57、下段試験片31C、第3保持部59が、中心軸(所定直線)C上に並ぶように配置されている。
ホルダー本体53と上段試験片31Aとは、中心軸C上に配置された固定用ピン(固定手段)61により固定されている。同様に、上段試験片31Aと第1保持部55、第1保持部55と中段試験片31B、中段試験片31Bと第2保持部57、第2保持部57と下段試験片31C、下段試験片31Cと第3保持部59とが固定用ピン61により固定されている。
【0037】
第1保持部55および第2保持部57には、ホルダー本体53外部へ向かって延びるレーザ反射部(反射部)63が形成されている。第1保持部55および第2保持部57は、それぞれのレーザ反射部63が中心軸Cの軸線方向から見て同一領域に位置しないように配置されている。
第3保持部59は、蓋43と固定されており、ホルダー本体53と接触しないように配置されている。
【0038】
荷重負荷部37は、荷重負荷を発生させるエアシリンダ部65と、エアシリンダ部65で発生した荷重負荷を試験片ホルダー33に伝達するプルロッド(軸体)67とから概略構成されている。
エアシリンダ部65はシリンダ部69とピストン部71とから構成され、シリンダ部69には、外部から荷重負荷を発生させる圧縮空気が供給される圧縮空気供給流路72が接続されている。ピストン部71はプルロッド67と接続され、シリンダ部69に供給された圧縮空気によりプルロッド67と共に下方(図2中の下方)に押し下げられる様に構成されている。
【0039】
プルロッド67には、エアシリンダ部65側から順に、荷重測定用のロードセル(荷重測定部)73と、プルロッド67を冷却する冷却水路75と、が備えられている。
ロードセル73をプルロッド67に備えることにより、エアシリンダ部65内の摩擦抵抗や摺動抵抗などの影響を排除して、試験片ホルダー33に加えられる荷重負荷を正確に測定することができる。
冷却水路75をプルロッド67に備えることにより、試験水の熱がロードセル73やエアシリンダ部65へ伝わることを防止し、荷重負荷の測定精度を確保でき、試験装置の不具合発生を防止できる。
【0040】
なお、荷重負荷部37により発生される荷重負荷は、エアシリンダ部65へ供給される圧縮空気の圧力を制御することにより設定されるが、ロードセル73により実際に試験片ホルダー33に作用する荷重負荷が確認されている。
【0041】
変位測定部39は、エアシリンダ部65のピストン部71の変位を測定することにより各試験片の破断を検出する破断検出レーザ変位計77と、第1保持部55の変位を測定する第1レーザ変位計79と、第2保持部57の変位を測定する第2レーザ変位計81と、から概略構成されている。
【0042】
破断検出レーザ変位計77は、エアシリンダ部65に配置され、ピストン部71にレーザ光を照射し、その中心軸Cに沿う方向への変位を測定できるように配置されている。第1レーザ変位計79および第2レーザ変位計81は、蓋43を介して、それぞれ第1保持部55のレーザ反射部63、第2保持部57のレーザ反射部63にレーザ光を照射し、それぞれの中心軸Cに沿う方向への変位を測定できるように配置されている。
なお、各レーザ変位計77、79、81は、出射したレーザ光が反射して戻ってくるまでの時間を計測することにより距離を算出している。
【0043】
次に、上記の構成からなる定荷重SCC試験装置1における作用について説明する。
まず、定荷重SCC試験装置1の試験片ホルダー33に、図2に示すように、各試験片31A、31B、31Cをセットし、試験容器35内に試験片ホルダー33をセットする。その後に、荷重負荷部37により一定の所定荷重を各試験片31A、31B、31Cに負荷すると共に、図1に示すように、試験水タンク7から試験水を試験容器35内に供給し、試験を開始する。
【0044】
試験中は、各レーザ変位計77、79、81により測定される変位から求められる各試験片31A、31B、31Cを監視する。
本実施形態においては、試験片31の変位が所定値を超えた場合に試験片が破断したと判定することとし、試験片が破断に至るまでの時間を計測している。
【0045】
具体的には、破断検出レーザ変位計77は、各試験片31A、31B、31Cの変位の合計の変位を測定し、第1レーザ変位計79は、各試験片31B、31Cの変位の合計の変位を測定し、第2レーザ変位計81は、下段試験片31Cの変位を測定している。
そのため、破断検出レーザ変位計77の測定値(変位)を監視していれば、各試験片31A、31B、31Cのいずれかで破断が発生したことを検出することができる。その後、第1レーザ変位計79および第2レーザ変位計81の測定値を照らし合わせることにより、どの試験片で破断が発生したか特定できる。
【0046】
各試験片31A、31B、31Cのいずれか(例えば、上段試験片31A)で破断が発生した後は、負荷荷重が、破断後の上段試験片31Aを介して、試験片ホルダー33から第1保持部55へ伝達されるため、残りの試験片31B、31Cの評価を継続することができる。
【0047】
上記の構成によれば、中心軸C上に配列した複数の保持部53,55,57,59の間に各試験片31A,31B,31Cを配置して、各試験片を隣接する各保持部に固定することにより、複数の試験片31A,31B,31Cに同時に同じ荷重負荷を加え、圧縮応力を負荷することができる。
【0048】
変位測定部39において各保持部53,55,57,59の中心軸Cに沿う方向への変位を測定することにより、複数の試験片31A,31B,31Cのそれぞれについての変形に係る情報を得ることができる。また、ロードセル73において荷重負荷部37により負荷された荷重を測定することにより、複数の試験片31A,31B,31Cのそれぞれに加えられる荷重に係る情報を得ることができる。
【0049】
レーザ変位計77,79,81を用いてレーザ変位計からレーザ反射部63までの距離の変化を測定することにより、各試験片31A,31B,31Cの変形に係る情報を得ることができる。
レーザ変位計77,79,81はレーザ光を用いた非接触系の測定装置であるため、各試験片31A,31B,31Cに作用する荷重に影響を与えることなく、各試験片31A,31B,31Cの変形に係る情報(破断に関する情報)を得ることができる。
例えば、接触系の測定装置の場合には、測定装置内の摩擦抵抗などにより各試験片31A,31B,31Cに作用する荷重が軽減されて荷重が不正確になるが、非接触系のレーザ変位計には、このような問題が発生しない。
【0050】
固定用ピン61により各試験片31A,31B,31Cを保持部53,55,57,59に固定するため、各試験片31A,31B,31Cが変形しても保持部53,55,57,59上の同一箇所に固定し続けることができる。そのため、複数の各試験片31A,31B,31Cを中心軸C上に配列させ続けることができ、各試験片31A,31B,31Cに正確な荷重を加え続けることができる。
【0051】
なお、各試験片31A、31B、31Cは、それぞれ隣接する保持部などに固定用ピン61を用いて貫通固定されていてもよいし、各試験片31A、31B、31Cに凹部を形成し、保持部などから突出するピン等を上記凹部にはめ込み固定してもよく、特に限定するものでない。
また、ホルダー本体53、各保持部55,57,59に、中心軸Cに沿う貫通孔を形成し、この貫通孔に白金ワイヤなどを挿通して、この白金ワイヤを各試験片31A,31B,31Cに挿通させることにより、各試験片31A,31B,31Cを固定してもよい。
さらに、図6に示すように、ホルダー本体53、各保持部55,57,59における各試験片31A、31B、31Cとの接触部に、円柱の側面状の凹曲面56を形成し、凹曲面56に試験片をはめ込み保持具などに固定しても良い。
【0052】
なお、上述のように、腐食性媒体として液体であるPWRの一次冷却水を模擬した試験水を用いてもよいし、腐食性のある気体を用いてもよいし、腐食性のある液体およびその気体の混合物を用いてもよく、特に限定するものではない。
【0053】
なお、上述のように、破断検出レーザ変位計77は、ピストン部71にレーザ光を照射して、中心軸Cに沿う方向への変位を測定しても良いし、ホルダー本体53にレーザ光を照射して、中心軸Cに沿う方向への変位を測定しても良く、特に限定するものではない。
【0054】
〔第2の実施形態〕
次に、本発明の第2の実施形態について図3および図4を参照して説明する。
本実施形態の定荷重SCC試験装置の基本構成は、第1の実施形態と同様であるが、第1の実施形態とは、試験片ホルダーの構成が異なっている。よって、本実施形態においては、図3および図4を用いて試験片ホルダー周辺のみを説明し、環境維持部等の説明を省略する。
図3は、本実施形態に係る定荷重SCC試験装置における試験片ホルダーの構成を説明する縦断面図である。図4は、図3の縦断面図とは、中心軸周りに位相が90度回転した面で切断した試験片ホルダーの縦断面図である。
なお、第1の実施形態と同一の構成要素には同一の符号を付して、その説明を省略している。
【0055】
定荷重SCC試験装置101の試験片ホルダー103は、図3および図4に示すように、上段試験片31Aを保持する上部軸状保持部105および上部筒状保持部107と、上部筒状保持部107とともに中段試験片31Bを保持する下部軸状保持部109と、下部軸状保持部109とともに下段試験片31Cを保持する下部筒状保持部111とから概略構成されている。
【0056】
上部軸状保持部105は、容器本体41の取付け部113に固定される取付け軸部115と上段試験片31Aを固定する固定部117とから形成されている。
取付け軸部115の先端には、ネジにより着脱可能に配置されたキャップ119が備えられる。キャップ119は、取付け軸部115を取付け部113の孔に挿通させて上記孔から突出した取付け軸部115の先端に取り付けられ、キャップ119と取付け部113との接触面は略球面状に形成されている。
【0057】
また、取付け部113には、キャップ119の中心軸Cに沿う方向への移動を規制する規制部材121が備えられている。
このように構成することにより、キャップ119と取付け部113との接触面が関節部を形成し、上部軸状保持部105を首振り回転可能に支持することができる。
【0058】
固定部117は、後述する上部筒状保持部107内を中心軸Cに沿う方向に移動可能に形成され、かつ、固定部117には略方形状の貫通孔123が、中心軸Cに対して略直交する方向(図3において紙面に対して略垂直方向)に向けて形成されている。貫通孔123内には、試験片31Aが配置されていると共に、後述する上段固定部125が挿通されている。
【0059】
貫通孔123内の下面(図3中の下方の壁面)には、上段試験片31Aが配置され、上記下面の中心軸Cとの交わる点には、上段試験片31Aを固定する固定用ピン61が取り付けられている。また、貫通孔123内の側面(図3中の左右の壁面)には、上段試験片31Aが固定される面に向けて、側面間隔が狭くなる段差部127が形成されている。
【0060】
上部筒状保持部107は、上述の上部軸状保持部105および後述する下部軸状保持部109がその内部に配置される筒部129と、上部軸状保持部105と共に上段試験片31Aを保持する上段固定部125と、下部軸状保持部109と共に中段試験片31Bを保持する中段固定部131と、から概略構成されている。
【0061】
筒部129の側面には、上段固定部125と中段固定部131とが中心軸Cに対して略直交する方向(図3中の紙面に対して略垂直方向)に挿入される取り付け部が形成され、側面の下端には、試験片の変位を測定するレーザ光を反射するレーザ反射部63が中心軸Cから離れる方向へ延びるように形成されている。
【0062】
上段固定部125および中段固定部131は略直方体状に形成されているとともに、筒部129に取り付けられた状態において、上段固定部125および中段固定部131の中心軸Cと交わる点には、それぞれ上段試験片31A、中段試験片31Bを固定する固定用ピン61が取り付けられている。
【0063】
下部軸状保持部109は、上述の上部筒状保持部107内に配置される中段保持部133と後述する下部筒状保持部111内に配置される下段保持部135と、中段保持部133と下段保持部135とを連結する関節部137と、から概略構成されている。
【0064】
中段保持部133は、上述の上部筒状保持部107内を中心軸Cに沿う方向に移動可能に形成され、かつ、中段保持部133には略方形状の貫通孔123が、中心軸Cに対して略直交する方向(図3において紙面に対して略垂直方向)に向けて形成されている。貫通孔123内には、中段試験片31Bが配置されていると共に、中段固定部131が挿通されている。
【0065】
貫通孔123内の上面(図3中の上方の壁面)には、中段試験片31Bが配置され、上記上面の中心軸Cとの交わる点には、中段試験片31Bを固定する固定用ピン61が取り付けられている。また、貫通孔123内の側面(図3中の左右の壁面)には、中段試験片31Bが固定される面に向けて、側面間隔が狭くなる段差部127が形成されている。
また、中段保持部133の側面下端には、試験片の変位を測定するレーザ光を反射するレーザ反射部63が中心軸Cから離れる方向へ延びるように形成されている。
【0066】
下段保持部135は、後述する下部筒状保持部111内を中心軸Cに沿う方向に移動可能に形成され、かつ、下段保持部135には略方形状の貫通孔123が、中心軸Cに対して略直交する方向(図3において紙面に対して略垂直方向)に向けて形成されている。貫通孔123内には、下段試験片31Cが配置されていると共に、下段固定部139が挿通されている。
【0067】
貫通孔123内の下面(図3中の下方の壁面)には、下段試験片31Cが配置され、上記下面の中心軸Cとの交わる点には、下段試験片31Cを固定する固定用ピン61が取り付けられている。また、貫通孔123内の側面(図3中の左右の壁面)には、下段試験片31Cが固定される面に向けて、側面間隔が狭くなる段差部127が形成されている。
【0068】
関節部137は、下段保持部135から中心軸Cに沿って突出する突出部141と、中段保持部133に突出部141が挿入される溝部143と、突出部141を溝部143に回動可能に連結する回転軸ピン145と、から概略形成されている。
溝部143は、図3において紙面上方に開口するように形成され、回転軸ピン145は、溝部143の側壁に対して略垂直(図3中の紙面に沿う方向であって左右方向)となるように配置されている。
このように関節部137を構成することにより、中段保持部133と下段保持部135とは、回転軸ピン145を回転中心として回動可能に連結される。
【0069】
下部筒状保持部111は、上述の下段保持部135がその内部を中心軸Cに沿う方向に移動する有底筒部147と、上述の下段保持部135とともに下段試験片31Cを保持する下段固定部139と、プルロッド67と連結される連結軸部149とから概略構成されている。
有底筒部147の側面には、下段保持部135が中心軸Cに対して略直交する方向(図3中の紙面に対して略垂直方向)に挿入される取り付け部が形成されている。
【0070】
連結軸部149の先端には、他の部分の径よりも大きい拡径部151が形成され、拡径部151の上面は円錐状に形成されている。
このように拡径部151を形成することにより、拡径部151とプルロッド67との接触部が関節部を形成し、下部筒状保持部111を首振り回転可能に支持することができる。
【0071】
下段固定部139は略直方体状に形成されているとともに、有底筒部147に取り付けられた状態において、下段固定部139の中心軸Cと交わる点には、それぞれ下段試験片31Bを固定する固定用ピン61が取り付けられている。
なお、本実施形態において、各試験片31A,31B,31Cは、図3において、その中心軸が紙面に対して略垂直になるように配置されている。
【0072】
上記の構成からなる定荷重SCC試験装置101の試験片ホルダー103の作用について説明する。
各試験片31A,31B,31Cは、図3および図4に示すように、固定用ピン61により試験片ホルダー103に固定される。そして、上部軸状保持部105の取付け軸部115が取付け部113に固定されると共に、下部筒状保持部111の連結軸部149がプルロッド67に接続される。
荷重負荷部37により発生された荷重負荷は、プルロッド67により連結軸部149へ伝達され、連結軸部149は、中心軸Cに沿う方向下方(図3中の下方)へ牽引される。
【0073】
連結軸部149に伝達された荷重負荷は、有底筒部147および下段固定部139を介して下段試験片31Cに伝達される。下段試験片31Cに伝達された荷重負荷は、下段保持部135および中段保持部133を介して中段試験片31Bに伝達される。中段試験片31Bに伝達された荷重負荷は、中段固定部131、筒部129および上段固定部125を介して上段試験片31Aに伝達される。上段試験片31Aに伝達された荷重負荷は、固定部117および取付け軸部115を介して取付け部113に伝えられる。
そのため、荷重負荷部37により発生された荷重負荷は、全ての試験片31A,31B,31Cへ同時に伝達され、各試験片31A,31B,31Cへ伝達された荷重負荷は略同一となる。
【0074】
連結軸部149の下方への変位は、有底筒部147および下段固定部139を介して下段試験片31Cに伝達される。下段試験片31Cに伝達された下方への変位は、下段保持部135および中段保持部133を介して中段試験片31Bに伝達される。中段試験片31Bに伝達された下方への変位は、中段固定部131、筒部129および上段固定部125を介して上段試験片31Aに伝達される。上段試験片31Aに伝達された下方への変位は、固定部117および取付け軸部115を介して取付け部113に伝えられる。
【0075】
そのため、下段固定部139および下段保持部135の間に配置された下段試験片31C、中段保持部133および中段固定部131の間に配置された中段試験片31B、および、上段固定部125および固定部117の間に配置された上段試験片31Aには圧縮方向の荷重負荷が作用する。
【0076】
各試験片31A,31B,31Cのいずれか(例えば、下段試験片31C)が破断した場合には、下段固定部139と下段保持部135の下面とが接近し、下段固定部139と段差部127とが接触する。下段固定部139と段差部127との接触により、下段固定部139に伝達された荷重負荷は、下段試験片31Cを介することなく、直接、下段保持部135に伝達される。
【0077】
そのため、下段試験片31Cが破断した後も、残りの試験片31A,31Bに荷重負荷を作用させ続けることができる。また、下段固定部139から下段保持部135へ荷重負荷が直接伝達されるため、正確な荷重負荷を残りの試験片31A,31Bに作用させることができる。
【0078】
各試験片31A,31B,31Cのいずれか(例えば、中段試験片31B)の変形に伴い、中段試験片31Bの中心軸と、中段試験片31Bに隣接する上部筒状保持部107と、下部軸状保持部109の中心軸との間にズレが発生した場合には、これら中心軸のズレにより、各保持部107,109に回転モーメントが作用する。
【0079】
下部軸状保持部109は、関節部137において中段保持部133と下段保持部135とが所定方向に回動可能に接続されているため、関節部137により上記回転モーメントを吸収することができる。そのため、上記回転モーメントにより、中段保持部133が上部筒状保持部107の内面に押し付けられることを防止できる。その結果、中段保持部133と上部筒状保持部107との摩擦抵抗の増加を防止でき、各試験片31A,31B,31Cに負荷される荷重が軽減されることを防止できる。
【0080】
歪ゲージを取り付けた3つの試験片を本実施形態の試験片ホルダーに取り付けて測定した荷重―歪特性と、1つの試験片を取り付けた試験片ホルダーにて測定した荷重―歪特性とを比較すると、両者は略一致した。また、試験片に対するFEM(Finite Element Method:有限要素法)解析を行なったところ、実験結果と同様の荷重―歪特性となった。
以上の結果から、各保持部105,107,109,111間での摩擦による荷重軽減(フリクションロス)が防止されていることが示されている。特に、中段試験片31Bに対する荷重軽減の防止効果が大きいことが実験的に確認されている。
【0081】
上記の構成によれば、関節部137を設けることにより、各試験片31A,31B,31Cに対して回転モーメントが働くことを防止でき、圧縮荷重のみを負荷させることができる。その結果、各試験片31A,31B,31Cの評価をより正確に行うことができる。
【0082】
また、関節部137を設けることにより、固定部117および中段保持部133が筒部129の内周面に、下段保持部135が有底筒部147の内周面に押し付けられることを防止できる。そのため、これらの接触面において摩擦抵抗が働くことを防止でき、各試験片31A,31B,31Cに働く荷重が軽減されることを防止できる。
【0083】
なお、関節部137は、上述のように一軸回りに回動可能に構成されていてもよいし、互いに直交する二軸回りに回動可能に構成されていてもよく、特に限定するものではない。
【0084】
なお、上述のように、下部軸状保持部109を、中段保持部133と、下段保持部135と、これらを連結する関節部137と、から構成してもよいし、図5に示すように、下部軸状保持部を、中段保持部133と下段保持部135とを一体に形成した下部軸状保持部209としてもよい。
また、図5に示した試験片ホルダーにおいて、各保持具105,107,209,111に、中心軸Cに沿う貫通孔を形成し、この貫通孔に白金ワイヤなどを挿通して、この白金ワイヤを各試験片31A,31B,31Cに挿通させることにより、各試験片31A,31B,31Cを固定してもよい。
【0085】
なお、本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上記の実施の形態においては、試験片に定荷重を負荷する定荷重SCC試験装置に適応して説明したが、定荷重SCC試験装置に限られることなく、試験片に時間と共に変動する荷重を負荷する繰り返し荷重SCC試験装置など、その他各種のSCC試験装置に適応することができるものである。
また、上記の実施の形態においては、本発明の材料強度試験装置およびその試験方法を定荷重SCC試験装置およびその試験方法に適応して説明したが、定荷重SCC試験装置などに限られることなく、引張試験装置およびその試験方法など、その他各種の材料強度試験装置およびその試験方法に適応することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】本発明に係る第1の実施形態の定荷重SCC試験装置の全体構成を示す系統図である。
【図2】図1の応力負荷部の構成を説明する概略図である。
【図3】本発明に係る第2の実施形態に係る定荷重SCC試験装置における試験片ホルダーの構成を説明する縦断面図である。
【図4】図3の縦断面図とは、中心軸周りに位相が90度回転した面で切断した試験片ホルダーの縦断面図である。
【図5】図3の試験片ホルダーの別の実施形態を説明する縦断面図である。
【図6】図1の試験片ホルダーにおける保持具などの別の実施形態を説明する縦断面図である。
【符号の説明】
【0087】
1,101 定荷重SCC試験装置(材料強度試験装置)
7 試験水タンク(腐食性媒体供給手段)
9 高圧定量ポンプ(腐食性媒体供給手段)
31 試験片
31A 上段試験片
31B 中段試験片
31C 下段試験片
35 試験容器(筐体)
37 荷重負荷部
39 変位測定部
49 流入管路(腐食性媒体供給手段)
51 流出管路(腐食性媒体供給手段)
53 ホルダー本体(保持部)
55 第1保持部
57 第2保持部
59 第3保持部
61 固定用ピン(固定手段)
63 レーザ反射部(反射部)
67 プルロッド(軸体)
73 ロードセル(荷重測定部)
77 破断検出レーザ変位計
79 第1レーザ変位計
81 第2レーザ変位計
105 上部軸状保持部
107 上部筒状保持部
109 下部軸状保持部
111 下部筒状保持部
137 関節部
209 下部軸状保持部
C 中心軸(所定直線)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定直線上に配列された複数の保持部と、
前記各保持部の間に配置され、隣接する前記保持部に対して固定される試験片と、
前記保持部に対して前記所定直線に沿う方向へ荷重を加えて、前記試験片に対して引張応力または圧縮応力を負荷する荷重負荷部と、
前記各保持部の前記所定直線に沿う方向への変位を測定する変位測定部と、
前記荷重負荷部により負荷される荷重を測定する荷重測定部と、
を有していることを特徴とする材料強度試験装置。
【請求項2】
前記試験片に隣接する前記保持部の少なくとも一方に、前記所定直線と交わる方向に延びる少なくとも1つの回転軸回りに回動可能な関節部が設けられていることを特徴とする請求項1記載の材料強度試験装置。
【請求項3】
前記変位測定部がレーザ変位計であり、
前記保持部に前記レーザ変位計から出射されたレーザを反射する反射部が設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の材料強度試験装置。
【請求項4】
前記保持部および前記試験片の少なくとも一方に、前記試験片を前記保持部に固定する固定手段が備えられていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の材料強度試験装置。
【請求項5】
前記荷重負荷部が荷重を前記保持部に伝達する軸体を備え、
前記荷重測定部が前記軸体に配置されていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の材料強度試験装置。
【請求項6】
前記複数の保持部および前記試験片をその内部に収納する筐体と、
該筐体内に、腐食性媒体を供給する腐食性媒体供給手段と、を備えることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の材料強度試験装置。
【請求項7】
前記試験片がその断面が略O状、または、略C状の筒状に形成され、
前記試験片の中心軸に対して交わる方向に沿って前記荷重が負荷されることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の材料強度試験装置。
【請求項8】
所定直線上に配列された複数の保持部と、
前記各保持部の間に配置され、隣接する前記保持部に対して固定される試験片と、
前記保持部に対して前記所定直線に沿う方向へ荷重を加えて、前記試験片に対して引張応力または圧縮応力を負荷する荷重負荷部と、
前記各保持部の前記所定直線に沿う方向への変位を測定する変位測定部と、
前記荷重負荷部により負荷される荷重を測定する荷重測定部と、を有する材料強度試験装置を用いた材料強度試験方法であって、
前記荷重負荷部により、前記各試験片に対して所定荷重を加え、
前記荷重測定部により、前記所定荷重を測定するとともに、前記変位測定部により、前記各保持部の変位を測定することにより前記各試験片の変位を求め、
前記各試験片の変位量が所定値に達するまでの時間を測定することを特徴とする材料強度試験方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−234594(P2006−234594A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−49999(P2005−49999)
【出願日】平成17年2月25日(2005.2.25)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】