説明

材料表面処理方法及び抗菌性材料の製造方法

【課題】柿渋を用いて容易に抗菌性等を付与することができる材料表面処理方法、及び、抗菌性材料の製造方法を提供する。
【解決手段】水溶性柿渋成分を材料表面に付着させる工程、及び、上記水溶性柿渋成分が付着した材料表面をアルデヒドガスに暴露する工程を有する材料表面処理方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、材料表面処理方法及び抗菌性材料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
タンニンを代表例とするポリフェノール類は、種々の有用な作用を示すことが知られている。最近では、ポリフェノール類が抗菌性、抗ウイルス性、抗アレルゲン性等を有することも報告されている。
このような抗菌性等を有するポリフェノール類を担持させた、繊維製品やフィルター等の抗菌性材料もまた、現在広く知られている。
【0003】
ポリフェノール類を繊維製品等の材料に担持させ、抗菌性等の機能を持続させるためには、ポリフェノール類を上記材料に固定させる必要がある。
上記ポリフェノール類を材料に固定させる方法としては、ポリフェノール類をアルデヒド類や濃硫酸等の架橋剤で架橋させる方法が知られている。
【0004】
特許文献1には、ホップ又は柿に含有されるポリフェノール類をアルデヒドで処理することによって重合させることが開示されている。
特許文献2には、柿渋タンニンを濃硫酸やパラホルムアルデヒドを用いて架橋処理することが開示されている。
特許文献3には、セルロース系繊維又は繊維製品にタンニン酸を付着させ、乾燥した後に触媒を用いて気相ホルマリン加工処理して、架橋剤であるホルムアルデヒドを熱処理して架橋させる方法が開示されている。
【0005】
一方、上述した抗菌性等を有するポリフェノール類の一種として、人体への影響がほとんどないとされる点から、柿渋が注目されている。
しかしながら、柿渋を材料に固定させるためには、上述したように、濃硫酸や触媒を使用したり、比較的高温での熱処理が必要となったりするため、製造工程が煩雑になったり、抗菌性等の活性が低下したりするといった問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−154371号公報
【特許文献2】特開2005−305330号公報
【特許文献3】特開2009−174095号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記現状に鑑み、柿渋を用いて抗菌性等を容易に付与することができる材料表面処理方法、及び、抗菌性材料の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、水溶性柿渋成分を材料表面に付着させる工程、及び、上記水溶性柿渋成分が付着した材料表面をアルデヒドガスに暴露する工程を有することを特徴とする材料表面処理方法である。
以下に、本発明を詳述する。
【0009】
本発明者らは、鋭意検討の結果、柿の実から抽出して得られる、水溶性の柿渋成分を用い、これをホルムアルデヒドガスに暴露することで、抗菌性等の機能を不活化させることなく、上記柿渋成分を不溶化できることを見出し、本発明を完成した。
本発明の方法を用いれば、触媒や100℃以上の加熱等を必要とせず、抗菌性、抗ウイルス性、抗アレルゲン性を有する柿渋成分を、繊維等の材料に容易に固定化することができる。
【0010】
本発明の材料表面処理方法は、水溶性柿渋成分を材料表面に付着させる工程を有する。
本発明の材料表面処理方法では、抗菌性成分として、水溶性の柿渋成分を使用する。水溶性の柿渋成分を使用することにより、柿渋成分を含有する水溶液を散布したり塗布した後に、水分を蒸発させることによって、容易に、種々の材料に柿渋成分を物理的に付着させることができる。
【0011】
上記水溶性柿渋成分は、未熟な渋柿の果実を粉砕圧縮して得られた果汁液を発酵させたものであり、カキタンニンを含む赤褐色半透明の液又は該液を凍結乾燥して得たものである。
上記水溶性柿渋成分は、自然発酵法やアルコール発酵法などの周知の方法により得ることができる。
上記自然発酵法としては、例えば、渋柿を破砕して、搾汁し、これをろ過したものを常温(約25℃)で5〜20日間醗酵させて、これを80〜90℃で20分間滅菌し、常温で1〜5年間熟成させる方法が挙げられる。
上記アルコール醗酵法としては、上記と同様に柿を破砕して、搾汁し、これをろ過し、柿酵母を用いて常温で3〜7日間醗酵させた後、80℃で15分間滅菌したものを、常温で1〜2年間熟成させる方法が挙げられる。
【0012】
上記水溶性柿渋成分として、市販品を用いてもよい。上記市販品としては、例えば、「玉渋」(株式会社西川本店製)、「柿渋」(冨山柿渋製造場製)、「くさくない柿渋」(株式会社トミヤマ社製)等を挙げることができる。なかでも、取り扱いが優れる点で、「くさくない柿渋」(株式会社トミヤマ社製)等を使用することが好ましい。
【0013】
上記水溶性柿渋成分を材料表面に付着させる方法としては、上記水溶性柿渋成分の粉末又は抽出液を水と混合して水溶性柿渋成分含有溶液を調製し、この溶液を材料の表面に散布したり、ローラーやスプレー等を用いて塗布したり、又は、上記水溶性柿渋成分含有溶液中に上記材料を浸漬したりする方法が挙げられる。
【0014】
上記水溶性柿渋成分含有溶液中の、上記水溶性柿渋成分の含有量は0.01〜10重量%であることが好ましい。0.01重量%未満であると、溶液粘度が低すぎるために、材料表面に塗布したときに流出してしまい、必要な量を材料に付着させることができないおそれがある。10重量%を超えると、溶液の粘度が高すぎるために、材料表面に均一に塗布することが難しくなり、均質性が得られないおそれがある。上記水溶性柿渋成分の含有量は、0.05〜5重量%であることがより好ましい。
【0015】
上記材料としては、繊維若しくは繊維製品、フィルム、プラスチック等の高分子材料等を挙げることができる。
上記繊維若しくは繊維製品としては、特に限定されず、公知のものであればよく、例えば、木綿、絹、麻等の天然繊維や、ポリエステル、レーヨン等の合成繊維、上記天然繊維と合成繊維との混紡、これらの織物、編物、又は、不織布等が挙げられる。
上記フィルム、プラスチック等の高分子材料としては、例えば、ポリエチレンフィルム等を挙げることができる。
なかでも、上記材料としては、繊維若しくは繊維製品であり、吸水性の高いものが好ましい。
【0016】
本発明の材料表面処理方法は、上記材料表面に上記水溶性柿渋成分含有溶液を散布又は塗布した後に、上記材料を乾燥させてもよい。
上記材料の乾燥は、90〜120℃で、5〜10分間で行うことが好ましい。
【0017】
上記水溶性柿渋成分の付着量は、5〜500μg/cmであることが好ましい。5μg/cm未満であると、グラム陽性菌に対する抗菌性効果が得られないおそれがある。500μg/cmを超えると、グラム陽性菌に対する抗菌性効果が500μg/cmのもの以上に得られないおそれがある。
上記付着量は、10〜50μg/cmであることがより好ましい。
【0018】
本発明の材料表面処理方法は、上記水溶性柿渋成分が付着した材料表面をアルデヒドガスに暴露する工程を有する。
上記水溶性柿渋成分が付着した材料をアルデヒドガスに暴露することにより、上記水溶性柿渋成分が不溶化し、材料に固定化される。
【0019】
上記材料表面をアルデヒドガスに暴露する工程は、密閉した閉鎖空間で行われることが好ましい。
上記材料表面をアルデヒドガスに暴露する方法としては、例えば、上記水溶性柿渋成分が付着した材料を、アルデヒドガスを発生し得るアルデヒド化合物とともに閉鎖空間内に静置する方法が挙げられる。
上記アルデヒド化合物としては、ホルムアルデヒドであることが好ましく、パラホルムアルデヒドであることがより好ましい。また、上記アルデヒド化合物は、水溶液等の液体であっても、粉末等の固体であってもよい。
【0020】
図1に、水溶性柿渋成分が付着した材料をアルデヒドガスに閉鎖空間で暴露する方法の一例の模式図を示す。
図1に示すように、例えば、蓋付きポリプロピレン製チューブ1内に、ホルムアルデヒド水溶液4(図1[a])、又は、パラホルムアルデヒド粉末5(図1[c])等を入れて、柿渋成分付着材料3をひも2で固定し、ホルムアルデヒド水溶液4又はパラホルムアルデヒド粉末5から発生した、ホルムアルデヒドガス6に暴露させるとよい。また、図1[b]に示すように、ホルムアルデヒドガス6を充填した蓋付きポリプロピレン製チューブ1内に、ひも2で固定した柿渋成分付着材料3を配置してもよい。
【0021】
上記材料表面をアルデヒドガスに暴露する際の、アルデヒドガス濃度は、40〜900ppmであることが好ましい。
上記アルデヒドガス濃度が40ppm未満であると、充分に不溶化されない部分がでるおそれがある。900ppmを超えると、ホルムアルデヒドの残存量が許容値を超えるおそれがある。
上記アルデヒドガスの濃度は、50〜200ppmであることがより好ましい。
【0022】
上記材料表面をアルデヒドガスに暴露する工程は、濃度が1〜45重量%のホルムアルデヒド水溶液を用いて行うことが好ましい。上記濃度が1重量%未満であると、充分に不溶化されない部分が生じるおそれがある。45重量%を超えると、ホルムアルデヒドの残存量が増えるおそれがある。上記ホルムアルデヒド水溶液の濃度は、3〜10重量%であることがより好ましい。
【0023】
上記材料表面をアルデヒドガスに暴露する工程は、温度が4〜60℃で行われることが好ましい。上記温度が4℃未満であると、不溶化されない部分が生じるおそれがある。60℃を超えると、ホルムアルデヒドの残存量が増えるおそれがある。
上記温度は、20〜40℃であることがより好ましい。
【0024】
このような本発明の材料表面処理方法によれば、抗菌性成分である柿渋成分を用いて、材料表面に抗菌性を容易に付与することができる。
すなわち、本発明は、水溶性柿渋成分を、ホルムアルデヒドガスに暴露することにより、触媒や100℃以上の熱処理を必要とせずに、柿渋成分を不溶化させて、材料に抗菌性成分を固定化することができるのである。
【0025】
また、このようにして、上述した本発明の材料表面処理方法により、上記繊維又は繊維製品あるいは高分子材料を処理して、柿渋成分を用いた抗菌性材料を好適に製造することができる。
上記柿渋成分を用いて処理された抗菌性材料は、抗菌性、抗ウイルス性、抗アレルゲン性を有する。また、タンパク質を捕捉することもできる。
このような上述した本発明の材料表面処理方法により材料表面を処理したことを特徴とする抗菌性材料の製造方法もまた、本発明の一つである。
【0026】
このように、本発明の材料表面処理方法によれば、材料に優れた抗菌性等を容易に付与することができる。また、本発明の材料表面処理方法により表面処理された材料は、優れた抗菌性、抗ウイルス性、抗アレルゲン性を有する。
【発明の効果】
【0027】
本発明は、上述した構成からなるものであるため、本発明の材料表面処理方法は、優れた抗菌性、抗アレルゲン性を材料に付与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】材料表面をアルデヒドガスに暴露する方法の一例を表す模式図である。
【図2】ポリエチレンフィルムに塗布した水溶性柿渋成分の反応時間に対する水不溶化率の変化を表したグラフである。
【図3】柿渋成分を木綿布に付着させて、異なる濃度のホルムアルデヒド水溶液を用いて不溶化させた場合の反応時間に対する柿渋成分の水不溶化率の変化を表したグラフである。
【図4】柿渋成分を木綿布に付着させ、異なる反応温度で不溶化させた場合の反応時間に対する柿渋成分の水不溶化率の変化を表したグラフである。
【図5】柿渋成分をポリエステル布に付着させ、異なる濃度のホルムアルデヒド水溶液を用いて不溶化させた場合の反応時間に対する柿渋成分の水不溶化率の変化を表したグラフである。
【図6】柿渋成分をポリエステル布に付着させて、異なる反応温度で不溶化させた場合の反応時間に対する柿渋成分の水不溶化率の変化を表したグラフである。
【図7】ポリエステル布への柿渋成分の固定化量に対する血清アルブミンの捕捉率を表したグラフである。
【図8】木綿布及びポリエステル布への柿渋成分の固定化量に対するトリプシンの捕捉を表したグラフである。
【図9】木綿布及びポリエステル布に固定した柿渋成分の耐洗濯性を表したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下に実施例を掲げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0030】
(水溶性柿渋成分含有溶液の調製)
「くさくない柿渋」(株式会社トミヤマ社製)の柿渋水溶液を凍結乾燥することにより得られた柿渋粉体を0.05重量%〜5重量%となるように水に溶解させて、水溶性柿渋成分含有溶液を調製した。
【0031】
(水溶性柿渋成分付着材料の調製)
材料として、ポリエチレンフィルム(ファンクレア(登録商標)、グンゼ株式会社製)を用意し、該ポリエチレンフィルム表面をプラズマ処理し、その処理表面に柿渋成分付着量100μg/cmとなるように上記水溶性柿渋成分含有溶液を全体に塗り広げて付着し、これを90℃で10分間乾燥させて、柿渋コーティングポリエチレンフィルムを調製した。
また、上記ポリエチレンフィルムを木綿布又はポリエステル布に代えて、上記と同様にして、柿渋コーティング木綿布、及び、柿渋コーティングポリエステル布を調製した。
【0032】
(実施例1)
図1〔a〕に示した蓋付きポリプロピレン製チューブの底部にホルムアルデヒド水溶液を入れ、その上部の空間内に上記柿渋コーティングポリエチレンフィルムを置き、チューブ内温度を40℃に設定した。水溶液のホルムアルデヒド濃度を3.5重量%とし、20分まで反応させたときの柿渋の水不溶化率を図2に示した。
上記水不溶化率は、反応後の柿渋コーティングポリエチレンフィルムを、40℃の水中に30分間浸漬させた後、上記フィルムを取り出し、浸漬した後の水の218nmにおける吸光度を測定し、(フィルムにコートした柿渋付着量−溶液に溶けだした柿渋量)/フィルムにコートした柿渋付着量×100の式から算出して求めた。
図2に示されるように、短時間の反応で柿渋成分は水不溶性となった。
【0033】
(実施例2)
図1〔a〕に示した容器を用いて、反応温度を40℃に一定にし、ホルムアルデヒド水溶液の濃度が3.5重量%と10重量%との場合で、上述の柿渋コーティング木綿布をアルデヒドガスに暴露し、上記木綿布における柿渋成分の不溶化反応を行った。水不溶化率の測定法は実施例1と同様にして行った。得られた結果を図3に示した。
図3に示されるように、ホルムアルデヒド水溶液の濃度が3.5重量%と10重量%との場合では、水不溶化率にほとんど差はなかった。
【0034】
(実施例3)
図1〔a〕に示した容器を用いて、ホルムアルデヒド水溶液の濃度を35重量%に一定にし、反応温度をそれぞれ4℃、40℃、60℃にして、上記と同様に柿渋コーティング木綿布の不溶化反応を行った。その結果を図4に示した。水不溶化率の測定法は実施例1と同じである。
図4に示されるように、反応温度が高いほど、不溶化率は高くなった。
【0035】
(実施例4)
図1〔a〕に示した容器を用いて、反応温度を40℃に一定にし、ホルムアルデヒド水溶液の濃度を3.5重量%と35重量%に変化させて、上記と同様に柿渋コーティングポリエステル布の不溶化反応を行った。その結果を図5に示した。水不溶化率の測定法は実施例1と同じである。
図5に示されるように、反応濃度が高いほど、不溶化率は高くなった。
【0036】
(実施例5)
図1〔a〕に示した容器を用いて、ホルムアルデヒド水溶液の濃度を3.5重量%に一定にし、反応温度を4℃、40℃、60℃に変化させて、上記と同様に柿渋コーティングポリエステル布の不溶化反応を行った。その結果を図6に示した。水不溶化率の測定法は実施例1と同じである。
図6に示されるように、反応温度が高いほど、不溶化率は高くなった。
【0037】
<血清アルブミン捕捉性の評価>
(実施例6)
上記で得られた柿渋コーティングポリエステル布を、実施例1と同じ方法(ホルムアルデヒド濃度は35%、温度は40℃、反応時間は30分間)で不溶化を行い、不溶化柿渋コート量が2mg/cm、20mg/cm、200mg/cmである生地をそれぞれ得た。次に、これらの生地を1cm×1cmにカットしてさらに細かく切り刻んでから、それぞれエッペンチューブに入れた。そこへ10μg/mLの(FITC)血清アルブミン水溶液を500μLずつ入れ、37℃にて300rpmの速度で30分間撹拌した。反応後、遠心分離(12000rpm、2分間)して得られた上清の蛍光強度(励起波長485nm、測定波長535nm)を測定し、(捕捉前の溶液中のアルブミン量−捕捉後の溶液中のアルブミン量)/捕捉前の溶液中のアルブミン量×100により血清アルブミンの捕捉率を算出した。この結果を図7に示した。柿渋固定量が多くなるにつれて血清アルブミンの捕捉率が高くなり、柿渋がタンパク質を捕捉する効果を有することを示している。
【0038】
(実施例7)
上記水溶性柿渋成分を10μg/cm又は100μg/cm付着させた木綿布とポリエステル布を、図1〔a〕に示した反応容器を用いて、35重量%ホルムアルデヒド水溶液上に40℃にて30分間放置した。この生地を1cm×1cmにカットしてさらに細かく切り刻んでから、エッペンチューブにそれぞれ入れた。そこへ100μg/mLのトリプシン水溶液を500μLずつ入れ、37℃にて300rpmの速度で30分間撹拌した。反応後、遠心分離(12000rpm、2分間)して得られた上清に、蛍光基質(Boc−Gln−Ala−Arg−MCA(methylcoumaryl−7−amide))を混合し、蛍光強度(励起波長365nm、測定波長465nm)を測定し、トリプシンが分解した蛍光基質の蛍光強度によってトリプシンの捕捉率を算出した。この結果を図8に示した。柿渋の付着量が増加するほど蛍光強度が低下しており、蛍光基質がトリプシンによって分解されていない、すなわちトリプシンが捕捉されていることを示している。
【0039】
<抗菌性の評価>
(実施例8、比較例1)
上記水溶性柿渋成分を3μg/cm又は30μg/cm付着させた木綿布を、図1〔a〕に示した反応容器を用いて、3.5重量%ホルムアルデヒド水溶液上に、40℃にて20分間放置した。この木綿布を温水(80℃)にて3回洗浄してから、5cm×5cmにカットし、黄色ブドウ球菌を1×10個/mLの濃度にて接種後、37℃にて24時間培養した。培養後の木綿布中の黄色ブドウ球菌を0.2%非イオン性界面活性剤溶液で木綿中の菌を抽出し、ATP法で測定したところ、3μg/cmでは2.6×10個/mL、30μg/cmでは9.0×10個/mLという結果が得られた。
一方、上記水溶性柿渋成分が付着していない未処理木綿布(比較例1)について、同様にして測定したところ、培養後の菌数は6.2×10個/mLであった。
【0040】
(実施例9、比較例2)
柿渋を2、20又は300μg/cm付着させたポリエステル布を、図1〔a〕に示した反応容器を用いて、3.5重量%ホルムアルデヒド水溶液上に、40℃にて20分間放置した。このポリエステル布を温水(70℃)にて2回洗浄してから5cm×5cmにカットし、該ポリエステル布上に黄色ブドウ球菌を8.7×10個/mLの濃度にて接種し、37℃にて24時間培養した。
培養後のポリエステル布中の黄色ブドウ球菌を、0.2%非イオン性界面活性剤溶液で抽出し、該抽出液をTSA(Tryptic Soy Agar)に接種して48h培養し、コロニー数を測定したところ、それぞれ3.7×10個/mL、6.0×10個/mL、0個/mLという結果が得られた。
一方、上記水溶性柿渋成分が付着していない未処理ポリエステル布(比較例2)について、同様にして測定したところ、培養後の菌数は7.7×10個/mLであった。
【0041】
<耐洗濯性の評価>
(実施例10、比較例3)
上記水溶性柿渋水溶液をそれぞれ200μg/cm付着させた柿渋コーティング木綿布、及び、柿渋コーティングポリエステル布とをそれぞれ2枚ずつ用意した。上記2枚の生地うち、一方を図1〔a〕に示した反応容器を用いて35重量%ホルムアルデヒド水溶液上に40℃にて30分間放置し、不溶化処理を行った。不溶化処理を行った生地と、不溶化処理を行わなかった生地(比較例3)とを、それぞれ5×5cmにカットし、40℃の温水に浸し、10分間500rpmで攪拌して柿渋成分を抽出した。この抽出作業を同じ生地で3回繰り返した。攪拌後、温水から生地を取り出して温水中に溶出した柿渋成分の量を、水中に溶出した柿渋の吸光度から求めて、柿渋溶出率を算出し、図9に示した。
図9に示されるように、本発明の表面処理方法では、柿渋成分の水への溶出量が少ないことがわかった。
【0042】
また、表1に、異なる温度における、5mL水溶液中のホルムアルデヒド濃度(重量%)と、50mL気相中のホルムアルデヒド濃度(ppm)との関係を示す。また、表2に、50mL気相中ホルムアルデヒド濃度(ppm)とパラホルムアルデヒド粉末量(g)との関係を示す。
【0043】
【表1】

【0044】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明の材料表面処理方法によれば、水溶性柿渋成分を用いて材料表面に抗菌性、抗ウイルス性、抗アレルゲン性等を容易に付与することができる。
【符号の説明】
【0046】
1 蓋付きポリプロピレン製チューブ
2 ひも
3 柿渋成分付着材料
4 ホルムアルデヒド水溶液
5 パラホルムアルデヒド粉末
6 ホルムアルデヒドガス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶性柿渋成分を材料表面に付着させる工程、及び、
前記水溶性柿渋成分が付着した材料表面をアルデヒドガスに暴露する工程
を有することを特徴とする材料表面処理方法。
【請求項2】
材料表面をアルデヒドガスに暴露する工程は、閉鎖空間で行われる請求項1記載の材料表面処理方法。
【請求項3】
材料表面をアルデヒドガスに暴露する工程は、前記アルデヒドガスの濃度が40〜900ppmで行われる請求項1又は2記載の材料表面処理方法。
【請求項4】
材料表面をアルデヒドガスに暴露する工程は、濃度が1〜45重量%のホルムアルデヒド水溶液を用いて行われる請求項1、2又は3記載の材料表面処理方法。
【請求項5】
材料表面をアルデヒドガスに暴露する工程は、温度が4〜60℃で行われる請求項1、2、3又は4記載の材料表面処理方法。
【請求項6】
ホルムアルデヒドは、パラホルムアルデヒドである請求項1、2、3、4又は5記載の材料表面処理方法。
【請求項7】
請求項1、2、3、4、5又は6記載の材料表面処理方法により処理したことを特徴とする抗菌性材料の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−180613(P2012−180613A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−44086(P2011−44086)
【出願日】平成23年3月1日(2011.3.1)
【出願人】(000001339)グンゼ株式会社 (919)
【Fターム(参考)】