説明

杜仲葉緑色乾燥粉末及びその製造方法

【課題】 鮮やかな緑色を有しつつ、イリドイド類やポリフェノール等の高機能成分を高濃度で含有する杜仲葉緑色乾燥粉末を提供する。
【解決手段】 相対するいずれか2辺の長さが平均5mm以下の矩形状に裁断された杜仲生葉を原料として用いて乾燥処理することによって、鮮やかな緑色を有しつつ、イリドイド類やポリフェノール等の高機能成分を高濃度で含有する杜仲葉緑色乾燥粉末が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、杜仲葉緑色乾燥粉末及びその製造方法、特に鮮やかな緑色を有しつつ、イリドイド類やポリフェノール等の高機能成分を高濃度で含有する杜仲葉緑色乾燥粉末の提供に関する。
【背景技術】
【0002】
杜仲の樹皮は中国五大漢方薬のひとつとして古来より珍重されてきた。また、近年では、杜仲葉に含有されるイリドイド類やポリフェノール等の成分の高機能性・有用性が注目されている。特にイリドイド類は血圧降下作用や鎮痛作用、脂質代謝の改善に有用であることが示されており(非特許文献1,非特許文献2参照)、現在、主に茶として飲用されている。
【0003】
しかしながら、杜仲の葉に含まれるイリドイド類等の高機能成分は葉を収穫した段階から、自己消化作用によってその減少が始まってしまう。また、現在、杜仲茶として市販されているものの多くは、褐色の発酵茶葉であり、発酵過程においてイリドイド類の高機能成分の含有量が大幅に減少し、さらに苦味なども増加してしまうことになる。このため、一般に広く流通している飲料用乾燥茶葉において、イリドイド類の含有量は茶葉全体の1%にも満たない。
【0004】
そこで、これらの高機能成分を豊富に含有する杜仲乾燥茶葉の製法が検討されている。近年、日本茶と同様にして製造した緑色の杜仲乾燥茶葉が、褐色の発酵茶と比較してイリドイド類、ポリフェノール類等の有用成分を多く含有することがわかってきた。例えば、特許文献1には、ゲニポシド酸3.2%程度を含む緑色杜仲葉の製法が開示されている。この方法は、日本茶と同様に茶葉の蒸煮を実施した後、乾燥処理を行っているものである。ここで、杜仲の場合、蒸煮加熱により酵素を失活させて発酵の進行を抑えることで、緑色を保持し、且つ自己消化作用を抑止して経時による劣化を防ぐことができる。しかしながら、イリドイド類、ポリフェノール類等の高機能成分は、熱劣化や蒸気による溶出・散逸で減少してしまうため、従来の蒸煮加熱により得られた杜仲乾燥葉では、これら高機能成分の含有量は必ずしも十分なものとは言えない。
【0005】
また、杜仲茶として飲用する場合には、イリドイド類、ポリフェノール類等の高機能成分が茶中に十分に抽出しきれず葉の中に残存してしまうため、これらの高機能成分を有効に摂取することができないという問題がある。一方で、杜仲葉乾燥品を嗜好品としてそのまま食することができれば、これらの高機能成分を効率よく摂取することができると感が得られるものの、現在市販されている杜仲茶葉乾燥品は、苦味等が強く、嗜好品としてあまり適していない。
【0006】
【非特許文献1】Health Science Vol.20 No.2(2004)P166−176
【非特許文献2】Journal of Atherosclerosis Thrombosis Vol.12, No.4(2005)P185−190
【特許文献1】特開平10−150961号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記従来技術に鑑みてなされたものであって、その解決すべき課題は、鮮やかな緑色を有しつつ、イリドイド類やポリフェノール等の高機能成分を高濃度で含有する杜仲葉緑色乾燥粉末を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記従来技術の課題を解決するため、本発明者らは、鋭意検討を行った結果、相対するいずれか2辺の長さが平均5mm以下の矩形状に裁断された杜仲生葉を原料として用いて乾燥処理することによって、鮮やかな緑色を有しつつ、イリドイド類やポリフェノール等の高機能成分を高濃度で含有する杜仲葉緑色乾燥粉末が得られることを見出した。また、このようにして得られた杜仲葉緑色乾燥粉末が、苦味が少なく、食品用途に適していることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明にかかる杜仲葉緑色乾燥粉末は、イリドイド化合物10質量%以上と、ポリフェノール化合物を4質量%以上とを含有することを特徴とするものである。
また、前記杜仲葉緑色乾燥粉末において、イリドイド化合物がゲニポシド酸及びアスペルロシドであり、該イリドイド化合物全量中のアスペルロシド含有量が40〜70質量%であることが好適である。
【0010】
また、本発明にかかる機能性食品は、前記杜仲葉緑色乾燥粉末を20質量%以上含有することを特徴とするものである。
また、前記機能性食品において、さらに天然界面活性剤粉末を含有することが好適である。
【0011】
本発明にかかる杜仲緑葉乾燥粉末の製造方法は、相対するいずれか2辺の長さが平均5mm以下の矩形状に裁断された杜仲生葉を原料として使用することを特徴とするものである。
また、前記杜仲葉緑色乾燥粉末の製造方法において、湿度40%以下の乾燥雰囲気下、赤外線非接触温度計により計測した葉の温度が50〜70℃の条件下で、原料杜仲生葉を乾燥処理することが好適である。
また、前記杜仲葉緑色乾燥粉末の製造方法において、乾燥処理開始後30分以内に杜仲葉中の水分量を30%以下まで減少させることが好適である。
また、前記杜仲葉緑色乾燥粉末の製造方法において、乾燥後の杜仲葉を平均径3〜14μmに微粉砕することが好適である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の杜仲葉緑色乾燥粉末は、鮮やかな緑色を有しつつ、イリドイド類やポリフェノール等の高機能成分を高濃度で含有しているため、機能性食品として非常に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明にかかる杜仲葉緑色乾燥粉末は、イリドイド化合物10質量%以上と、ポリフェノール化合物4質量%以上とを含有することを特徴とする。
ここで、イリドイド化合物とは、その構造中に1−イソプロピル−2,3−ジメチルシクロペンタンを有する化合物として知られているものである。本発明の杜仲葉緑色乾燥粉末には、このようなイリドイド化合物が、粉末全量の10質量%以上含まれる。なお、本発明の杜仲葉緑色乾燥粉末において、イリドイド化合物はゲニポシド酸及びアスペルロシドからなり、該イリドイド化合物全量中のアスペルロシド含有量が40〜70質量%であることが好ましい。
【0014】
また、ポリフェノール化合物とは、その構造中にフェノール性水酸基を複数有する化合物として知られているものである。本発明の杜仲葉緑色乾燥粉末には、このようなポリフェノール化合物が、粉末全量の4質量%以上含まれる。なお、ポリフェノール化合物としては、例えば、クロロゲン酸、ルチン、クエルセチン、ニコチフロリン、ケンフェロール等が挙げられる。
【0015】
なお、従来の杜仲葉緑色乾燥品の製法としては、蒸煮加熱により酵素を失活させて発酵の進行を抑えることで、緑色を保持し、酵素による分解反応を抑止して経時による劣化を防ぐことが行われているものの、イリドイド類、ポリフェノール類等の高機能成分は、熱劣化や蒸気による溶出・散逸で減少してしまうという問題があった。あるいは、杜仲茶葉を高温で乾燥処理して酵素を失活させる方法も行なわれているものの、高機能性成分の熱分解を生じてしまうため、必ずしもこれら高機能性成分が十分な含有量で保持されていたものとは言い難い。一方で、高機能性成分の熱劣化あるいは蒸気による溶出等を避けるため、比較的低温で乾燥処理を行なうことも考えられるものの、この場合、酵素の失活が十分でなく、加えて茶葉の乾燥に非常に長い時間を要してしまうという問題がある。
【0016】
杜仲葉は、収穫後、放置すると次第に紫色を呈し、特に高湿度では紫色を呈しやすく、また葉脈部は濃い紫色に変色する。この原因は明らかではないが、例えば、クチナシ色素に見られるように、イリドイド類による天然色素の生成が考えられる。また、最近では、モクセイ科の植物イボタで、昆虫の食害によりイリドイド配糖体とグルコシダーゼが蛋白質変性に重要な役割をすることが報告されている。杜仲葉は傷ついた部分、歪や圧力がかかった部分から変色が進みやすいことからも、細胞小器官に含まれるグルコシダーゼ、ポリフェノールオキシダーゼなどの酵素が何らかの理由で、小胞体の外に散逸し、杜仲葉に含まれるイリドイド配糖体が蛋白質の架橋剤となり、蛋白質と結合して色素を生成している可能性が考えられる。ここで、これらの自己消化作用は含水条件下で生じるものと考えられるため、杜仲生葉の変色及びイリドイド化合物等の減少を防ぐためには、できるだけ速やかに葉中の水分を除去することによって、自己消化作用を生じないようにすることが重要であると考えられる。
【0017】
これらのことから、本発明者は、(1)葉温を必要以上の高温にすることなく乾燥すること、及び(2)乾燥工程において速やかに水分を除去することに着目して検討を行った。そして、本発明者らは、相対するいずれか2辺の長さが平均5mm以下の矩形状に裁断された杜仲生葉を原料として用いて乾燥処理を行なうことによって、従来酵素の失活には不十分と考えられていた50〜70℃の比較的低い温度条件においても、短時間で速やかに葉中の水分を除去することができ、この結果、鮮やかな緑色を保持し、且つイリドイド類やポリフェノール等の高機能性成分の減少を低く抑え、これらの高機能性成分を高濃度で含有する杜仲葉緑色乾燥粉末が得られることを見出した。
【0018】
本発明の杜仲葉緑色乾燥粉末は、例えば、以下に説明する製法によって得られる。
まず最初に、原料として、相対するいずれか2辺の長さが平均5mm以下の矩形状に裁断された杜仲生葉を使用する。ここで、杜仲生葉は、収穫後乾燥前の杜仲葉を意味するものであり、栽培により生産されたものであっても天然より生産されたものであってもよい。例えば、当年葉で落葉前の生葉、例えば、4〜10月、好ましくは5〜8月、より好ましくは7〜8月に採取した生葉を用いることができる。杜仲生葉の裁断方法は、特に制限されないが、市販のシュレッダーカッターあるいはスライサーを使用することができる。例えば、刃間隔が5mm以下のシュレッダーカッターにより生葉を裁断することで、相対する2辺の長さが5mm以下の短冊状とすることができる。あるいは、一旦5mm以下の短冊状に裁断した上で、得られた短冊状の生葉をさらに長手方向が投入口に直角になるようにして再度裁断することで、各辺の長さがいずれも5mm以下の略正方形状とすることができる。なお、矩形状に裁断した杜仲葉の相対する2辺の長さが平均5mmを超えると、葉温が必要以上に上昇してしまう場合があり、加えて乾燥処理に時間がかかりすぎてしまうため、結果として高機能性成分の減少を抑えることができない。裁断後の杜仲生葉は、相対する2辺の長さが平均5mm以下であればよく、より好ましくは平均3mm以下である。また、原料杜仲生葉は、各辺の長さがいずれも5mm以下の矩形状とすることがさらに望ましい。
【0019】
すなわち、本発明においては、杜仲生葉を予め相対するいずれか2辺の長さが平均5mm以下の矩形状に裁断しておくことにより、乾燥工程において葉の温度を50〜70℃程度の低温に維持しつつ、且つ速やかに茶葉の水分を除去することが可能となる。このため、イリドイド類、ポリフェノール類等の高機能成分の熱による損失が少なく、加えて自己消化作用による減少も抑えられるため、これら高機能成分を高濃度で含有する緑色乾燥粉末が得られる。
【0020】
図1に、短辺2cmの短冊状に裁断した杜仲生葉2kgと、短辺3mmの短冊状に裁断した杜仲生葉2kgとを用い、茶葉釜煎り機を使用して釜設定温度180℃の条件で、それぞれ7分間乾燥処理を行なった際の釜出口付近の温度及び湿度の経時変化を示す。図1より、2cm短冊状の杜仲生葉では釜出口空気の最高温度が60.5℃、3mm短冊状の杜仲生葉では釜出口空気の最高温度が64℃であり、釜内の葉の温度もほぼ同じ程度の温度に達しているものと考えられる。一方、釜出口付近の湿度については、いずれも葉の投入直後は一旦横ばいになっているものの、その後著しく低下している。これは葉中の水分の何%かが投入直後に急激に減少することによって、葉中水分蒸発量と送風量との間で湿度が平衡し、その後、ある程度の葉中水分量となったところで水分蒸発量が緩やかになり、この結果、湿度の低下が進行しているものと考えられる。茶葉投入後に湿度が降下するまでに要する時間を見ると、2cm短冊状の場合には4分であるのに対して、3mm短冊状の場合には2分となっており、このことから、3mm短冊状の場合により速やかに水分が除去されていることがわかる。また、7分間の乾燥処理後の杜仲葉の重量は、2cm短冊状の場合に1.678kg、3mm短冊状の場合に1.06kgとなっており、3mm短冊状の杜仲生葉を用いることによって、同一の乾燥処理時間であるにもかかわらず、2cm短冊状の場合と比較して2倍以上もの水分が除去されていることが理解される。
【0021】
また、例えば、予め裁断せずにそのまま乾燥処理した杜仲生葉を最終的に微粉砕しようとすると、杜仲葉に含まれるグッタペルカと呼ばれるゴム成分が、結着剤となって石臼に膜を形成したり、あるいはカッター刃を使用した粉砕器では粘土状の塊状粒子を生成して、粉砕機の負荷となり、この結果、粉砕時に熱を発生して、高機能成分の分解を招く場合がある。これに対して、本発明では杜仲生葉を予めいずれか2辺の長さが平均5mm以下の矩形状に裁断しているため、微粉砕の過程でグッタペルカによる塊状粉の発生を大幅に低減することもできる。
【0022】
なお、杜仲の葉は30cm以上にも成長し、葉脈は5mm以上の太さにまでなる。このように大きな杜仲生葉の場合、乾燥工程において葉脈と葉の間で水分の蒸発に差が生じ、自己消化作用による葉脈の紫色化が進行する。これは、葉脈周辺では構造にストレスがかかり、葉脈の細胞が十分に水分を含有した状態で破壊されることによるものと考えられる。これにより、イリドイド等の有用成分が分解して含有量が減少し、加えて変色により緑色の精彩さも失われてしまう。また、特に葉脈には高機能性成分が多く含まれているため、葉脈の乾燥は極めて重要である。しかしながら、従来の乾燥方法では、5mm以上の太さになる葉脈部分を速やかに乾燥することは非常に困難である。これに対して、本発明では杜仲生葉を予め相対するいずれか2辺の長さが平均5mm以下の矩形状に裁断していることにより、葉脈と葉との乾燥時間を均一にし、且つ葉脈中の水分も速やかに除去することができるため、自己消化作用による茶葉の変色を低く抑えることができる。
【0023】
また、乾燥処理は、湿度40%以下の乾燥雰囲気下、赤外線非接触温度計により計測した葉の温度が50〜70℃の条件下で行うことが好ましい。なお、従来、緑色茶葉乾燥品の製造においては、蒸煮加熱処理によって酵素を失活させて発酵の進行を抑えることで、緑色を保持し、且つ自己消化作用を抑止して経時による劣化を防ぐことが行われているものの、蒸煮加熱処理では、高温、高湿下で加熱処理を行なうため、イリドイド類、ポリフェノール類等の高機能成分が熱劣化や蒸気による溶出・散逸で減少してしまう。このため、乾燥処理は湿度40%以下の乾燥雰囲気下で行なうことが好ましい。なお、乾燥工程中の葉温が50℃未満では乾燥に時間がかかりすぎ、自己消化作用が促進されて、変色あるいは高機能性成分の劣化を生じる。一方で、70℃を超えると、高機能性成分の熱分解が生じるため、製品中の高機能成分の含有量は減少してしまう。乾燥処理は、湿度20%以下の乾燥雰囲気以下、葉温50〜65℃の条件下で行うことが特に好ましい。なお、杜仲葉の乾燥処理は、通常、葉中の水分量が約5%程度になるまで行う必要がある。
【0024】
ここで、乾燥処理においては、工程の最初期段階において、乾燥処理開始後30分以内に杜仲葉中の水分量を30%以下まで減少させることが好ましい。すなわち、本発明は、50〜70℃程度の低温であるにもかかわらず、極めて速やかに葉中の水分を除去することによって、自己消化反応による杜仲生葉の変色及びイリドイド化合物等の減少を低く抑えることを可能とするものである。このため、乾燥処理工程において葉中水分の除去速度が遅くなると、水分除去に要する時間に応じて自己消化反応が徐々に進行し、変色及びイリドイド化合物の減少を招くことになる。特に50〜70℃の温度条件においては、むしろ自己消化反応が促進されるため、葉中水分を速やかに除去することが非常に重要となる。なお、乾燥処理速度は、乾燥機の大きさや杜仲葉の処理量によっても異なるが、より具体的には、一度に0〜2.5kgの杜仲茶葉を処理する場合には、10分以内に葉中水分量を30%以下、一度に2.5〜5kgの杜仲茶葉を処理する場合には、20分以内に葉中水分量を30%以下まで減少することが望ましい。
【0025】
また、乾燥処理後の杜仲葉は、平均径3〜14μmに微粉砕することが好ましい。微粉砕の方法は、特に制限されないが、例えば、ジェットミル式粉砕機、気流式粉砕機を用いることができる。特に気流式粉砕機の使用は、他の方法に比べて加工後の変色がほとんど見られないため、好ましい。市販の気流式粉砕機としては、例えば、STAY(バーリージャパン社製)が挙げられる。本発明の杜仲葉緑色乾燥粉末は、例えば、3〜14μm、好ましくは4〜8μm、特に好ましくは4.5〜6μmの平均径を有し、例えば、2〜14μm、好ましくは2〜8μm、特に好ましくは4〜5μmの範囲のメディアン径を有し、例えば、2〜32μm、好ましくは2〜9μm、特に好ましくは4〜6μmの範囲のモード径を有する。
【0026】
以上のようにして得られる本発明の杜仲葉緑色乾燥粉末は、イリドイド化合物とポリフェノール化合物とを、従来の方法では得られなかった非常に高い濃度で含有している。また、従来のように茶として飲用することも有用であるが、以上で得られた乾燥粉末は苦味が非常に少ないため、直接食する機能性食品として特に有用である。このため、本発明の機能性食品は、以上のようにして得られた杜仲緑色乾燥粉末を、食品全量中20質量%以上含有するものである。なお、本発明の機能性食品においては、さらに天然界面活性剤粉末を含有することが好適である。天然界面活性剤粉末を含有することで、乾燥粉末が水中に均一に混合しやすくなる。
【実施例】
【0027】
以下、実施例の記載に基づいて、本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
実施例1
杜仲生葉2kgを2mm間隔のシュレッダーカッターで短冊状に裁断し、さらにこれらの短冊の長手方向がおおむねシュレッダーに直角になるよう投入し、各辺2mmの略正方形状に裁断した。裁断した杜仲生葉を、減圧下、マイクロ波加熱により約1.5時間乾燥を行なった。なお、乾燥中の葉温は60〜65℃、湿度は10%以下であった。乾燥後の含水分量は5%以下であった。乾燥葉は粗粉砕した後、バーリージャパン社の微粉砕機STAYで微粉砕を行い、緑色乾燥微粉末を得た。
【0028】
実施例2
杜仲生葉2kgを2mm間隔のシュレッダーカッターを用いて各辺2mmの略正方形状に裁断した。裁断した杜仲生葉を釜に投入した。回転数15回転、釜を180℃で熱し、送風量を調整して釜内の雰囲気温度を57℃前後に調整した。このときの葉の表面温度(非接触式赤外線温度センサーで測定)は60℃、湿度は14%であった。、本条件で9分間、釜煎りを行ない、含水量50%まで乾燥した。その後、茶葉を棚に並べて湿度を14%にし、62℃の温風で90分乾燥を行ない、含水量を5%以下にした。乾燥葉は粗粉砕した後、バーリージャパン社の微粉砕機STAYで微粉砕を行い、緑色乾燥微粉末を得た。
【0029】
実施例3
杜仲生葉2kgを2mm間隔のシュレッダーカッターを用いて相対する2辺の長さが2mmの短冊状に裁断した。裁断した杜仲生葉を釜に投入した。回転数15回転、釜を180℃で熱し、送風量を調整して釜内の雰囲気温度を64℃前後に調整、このときの葉の表面温度(非接触式赤外線温度センサーで測定)は60℃、湿度は13%であった。本条件で7分間、釜煎りを行い、含水量63%まで乾燥した。その後、再乾燥機にて湿度約15%、60℃で40分乾燥し、バーリージャパン社の微粉砕機STAYで微粉砕を行い、緑色乾燥微粉末を得た。
【0030】
比較例1
杜仲生葉2kgをそのまま250℃に熱した釜に投入し、回転数15回転で15分間釜煎りを行なった。このときの葉の表面温度(非接触式赤外線温度センサーで測定)は75℃、湿度は14%であった。その後、再乾燥機にて湿度約15%、50〜60℃で40分乾燥した。乾燥後の含水分量は含水量は5%以下であった。乾燥葉をジェットミルで粉砕し、緑色乾燥微粉末を得た。
【0031】
比較例2
杜仲生葉2kgをシュレッダーカッターにより相対する2辺の長さが2cmの短冊状に裁断した後、蒸煮機に投入し、97〜98℃で3分間蒸煮した。強制的に室温まで冷却した後、100℃の温風で、含水量5%以下まで乾燥した。乾燥葉をジェットミルで粉砕し、緑色乾燥微粉末を得た。
【0032】
以上のようにして得られた実施例1〜3及び比較例1,2の杜仲茶葉緑色乾燥粉末について、イリドイド類及びポリフェノール類の含有量をHPLC(エタノール抽出)により測定した。結果を下記表1に示す。
【表1】

【0033】
上記表1に示されるように、2mm角の略正方形状あるいは短辺2mmの短冊状に裁断した杜仲生葉を原料として用いた実施例1〜3では、イリドイド類13〜14%、ポリフェノール類4〜5%と、これらの高機能成分を非常に高い濃度で含有する杜仲葉緑色乾燥粉末が得られた。また、イリドイド類全量中のアスペルロシド含有量はおおよそ50%程度であり、従来に無い高い濃度でアスペルロシドを含有していることも確認された。
【0034】
これに対して、予め裁断せずに乾燥処理を行なった比較例1の杜仲葉緑色乾燥粉末は、イリドイド類2.8%、ポリフェノール類3.5%と、実施例1〜3と比較して高機能性成分含有量の少ないものであった。また、2cm短冊状に裁断後の杜仲生葉を従来の蒸煮処理工程を経て乾燥処理した比較例2においては、これら高機能成分の含有量はさらに減少しており、イリドイド類1%、ポリフェノール類2%程度であった。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】短辺2cmの短冊状に裁断した杜仲生葉2kgと、短辺3mmの短冊状に裁断した杜仲生葉2kgとを用い、茶葉釜煎り機を使用して釜設定温度180℃の条件で、それぞれ7分間乾燥処理を行なった際の釜出口付近の温度及び湿度の経時変化である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イリドイド化合物10質量%以上と、ポリフェノール化合物4質量%以上とを含有する杜仲葉緑色乾燥粉末。
【請求項2】
請求項1記載の杜仲葉緑色乾燥粉末において、イリドイド化合物がゲニポシド酸及びアスペルロシドであり、該イリドイド化合物全量中のアスペルロシド含有量が40〜70質量%であることを特徴とする杜仲緑色乾燥粉末。
【請求項3】
請求項1又は2記載の杜仲葉緑色乾燥粉末を20質量%以上含有することを特徴とする機能性食品。
【請求項4】
請求項3に記載の機能性食品において、さらに天然界面活性剤粉末を含有することを特徴とする機能性食品。
【請求項5】
相対するいずれか2辺の長さが平均5mm以下の矩形状に裁断された杜仲生葉を原料として使用することを特徴とする杜仲葉緑色乾燥粉末の製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載の杜仲葉緑色乾燥粉末の製造方法において、湿度40%以下の乾燥雰囲気下、赤外線非接触温度計により計測した葉の温度が50〜70℃の条件下で、原料杜仲生葉を乾燥処理することを特徴とする杜仲葉緑色乾燥粉末の製造方法。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の杜仲葉緑色乾燥粉末の製造方法において、乾燥処理開始後30分以内に杜仲葉中の水分量を30%以下まで減少させることを特徴とする杜仲葉緑色乾燥粉末の製造方法。
【請求項8】
請求項5〜7のいずれかに記載の杜仲葉緑色乾燥粉末の製造方法において、乾燥後の杜仲葉を平均径3〜14μmに微粉砕することを特徴とする杜仲葉緑色乾燥粉末の製造方法。


【図1】
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【公開番号】特開2010−136654(P2010−136654A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−314988(P2008−314988)
【出願日】平成20年12月10日(2008.12.10)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 和漢医薬学会,Journal of Traditional Medicines,Vol.25,No.4,2008,p112−118,2008年11月20日発行
【出願人】(505390956)有限会社 碧山園 (7)
【Fターム(参考)】