説明

束数検出装置及び束数検出方法

【課題】画像処理される画像のコントラストが悪い場合でも正確に束数を検出することのできる束数検出装置及び束数検出方法を提供する。
【解決手段】11本の直線L〜L11のうち1本の直線Lが得られない場合には、得られた直線の数のみから札束の束数(9束)を認識した後、隣り合う直線間の距離(各札束の幅)を検出する。直線L及びL間の距離をDと検出し、その他の隣り合う直線間の距離をD,D01,D02,D03と検出する。札束の幅として、予め所定範囲を設定しておくと、Dは所定範囲外の幅と認識され、Dは所定範囲内の幅で最も数の多い幅と認識される。ここで、D≒2×Dの関係が成り立つので、直線L及びL間には、D÷Dによる算出値の数の束、すなわち2束が存在することになり、その結果、10束の札束が検出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は束数検出装置及び束数検出方法に係り、特に、紙幣等の複数枚の紙葉類を帯で施封した束の数を検出するための装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
大量の紙幣をまとめるには、通常、100枚の紙幣を帯で施封して1つの札束とし、この札束を複数束ねてさらに帯で施封する。複数の札束を帯で施封する前には、所定の札束数、例えば、10束がそろっているかどうかを確認する必要があり、従来は、重量を測定することにより行われていた。しかし、重量によって所定の札束数がそろっているかどうかを確認する方法では、部分的に欠損した紙幣や紙幣にテープ等の異物が張り付いている場合には、全体の重量がずれてしまい、正確な確認ができないという問題点があった。
【0003】
このような問題点を解決するための装置が、特許文献1に記載されている。この装置によれば、まず、帯で施封された札束を複数積層して構成された物品の側面の2次元画像をCCDカメラにより撮像し、この画像データをA/D変換部によりデジタル画像データに変換して画像デジタルメモリに記憶する。続いて、領域選定部により、記憶されたデジタル画像データから、物品の側面のうち、帯の部分を含むデータ領域が選定され、選定されたデータ領域におけるデジタル画像データから、隣り合う帯間の境界画像と、境界画像以外の画像とを分離するためのしきい値がしきい値決定部により決定される。選定された領域内のデジタル画像データは、2値化処理部により上記しきい値に基づいて2値化され、2値化データメモリに記憶される。さらに、計数制御部によって、2値化されたデジタル画像データから帯間の境界に対するデジタル画像データが検出され、上記物品における帯の数が計数されることにより、札束数が検出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−273024号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の装置では、CCDカメラにより撮像された画像のコントラストが悪い場合、画像処理後に束数が正確に検出できないことがあるといった問題点があった。
【0006】
この発明はこのような問題点を解決するためになされたもので、画像処理される画像のコントラストが悪い場合でも正確に束数を検出することのできる束数検出装置及び束数検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係る束数検出装置は、複数枚の紙葉類を帯で施封した束を複数積層して構成された物品の側面の画像を撮影する画像撮影手段と、前記画像を画像処理することにより前記束の数を検出する画像処理部とを有し、該画像処理部は、検出された前記束のそれぞれの幅を検出する束幅検出部と、該束幅検出部によって検出された各幅のうち、予め設定された所定範囲外の幅がある場合に、前記所定範囲内の幅で最も数の多い幅と、前記所定範囲外の幅とを認識し、該所定範囲外の幅を前記所定範囲内の幅で最も数の多い幅で割り算することにより、前記所定範囲外の幅をもつ束が、前記割り算による算出値の数の束からなることを特定する演算部とを備え、前記画像処理により検出された束数と、前記演算部により特定された束数とから、前記物品を構成する前記束の束数を検出する。
前記画像処理部は、前記画像撮影手段によって撮影された画像を画像データとして取り込む画像取込部と、該画像取込部によって取り込まれた画像データを記憶する記憶手段と、該記憶手段に記憶された画像データを微分処理して前記帯の位置を検出する微分処理部と、該微分処理部で微分処理された画像データをハフ変換するハフ変換部と、該ハフ変換部でハフ変換された画像データのうち累積点の大きい点のデータをハフ逆変換して直線の関数を得るハフ逆変換部と、前記直線の関数に基づいて前記束のエッジ数を得ることにより束数を検出する束数処理部とを備えてもよい。
【0008】
この発明に係る束数検出方法は、複数枚の紙葉類を帯で施封した束を複数積層して構成された物品の側面の画像を撮影し、該画像を画像処理することにより、帯で施封した束の数を検出する束数検出方法であって、前記画像処理により束数の検出を行うステップと、検出された各束の幅を検出するステップと、各幅のうち、予め設定された所定範囲外の幅がある場合に、前記所定範囲内の幅で最も数の多い幅と、前記所定範囲外の幅とを認識し、該所定範囲外の幅を前記所定範囲内の幅で最も数の多い幅で割り算することにより、前記所定範囲外の束が、前記割り算による算出値の数の束からなることを特定するステップと、前記画像処理により検出された束数と、前記演算部により特定された束数とから、前記物品を構成する前記束の束数を検出するステップとを含む。
前記画像処理は、前記物品の側面の画像を撮影するステップと、前記画像を画像データとして取り込むステップと、前記画像データを微分処理して前記帯の位置を検出するステップと、微分処理された画像データハフ変換するステップと、ハフ変換された画像データのうち累積点の大きい点のデータをハフ逆変換して直線の関数を得るステップと、前記直線の関数に基づいて前記束のエッジ数を得ることにより束数を検出するステップとを含んでもよい。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、画像処理により検出された各束の幅を検出し、各幅のうち、予め設定された所定範囲外の幅がある場合に、所定範囲内の幅で最も数の多い幅と、所定範囲外の幅とを認識し、所定範囲外の幅を所定範囲内の幅で最も数の多い幅で割り算することにより、所定範囲外の幅をもつ束が、割り算による算出値の数の束からなることを特定するので、画像処理される画像のコントラストが悪い場合でも正確に束数を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】この発明の実施の形態に係る束数検出装置の構成模式図である。
【図2】この実施の形態に係る束数検出装置によってハフ変換された画像データを極座標に表した図である。
【図3】この実施の形態に係る束数検出装置によってハフ逆変換された結果を表す図である。
【図4】この実施の形態において、1つの直線が得られなかった場合の概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
この発明の実施の形態に係る束数検出装置の構成を図1に示す。束数検出装置10は、画像撮影手段であるCMOSカメラ11と、CMOSカメラ11によって撮影された画像を画像データとして処理する画像処理部12とから構成されている。
【0012】
画像処理部12は、CMOSカメラ11によって撮影された画像を画像データとして取り込むための画像取込部であるCPU13と、画像データを記憶する記憶手段であるRAM14とを有している。RAM14は、メモリエリア1〜6及びHの7つのエリアを有している。また、画像処理部12は、メモリエリア1〜3に記憶された画像データを微分処理するための微分処理部15と、メモリエリア4に記憶された画像データを細線化処理するための細線化処理部16と、メモリエリア5に記憶された画像データをハフ変換するためのハフ変換部17と、メモリエリアHに記憶された画像データをハフ逆変換するためのハフ逆変換部18と、メモリエリア6に記憶された画像データから束数を検出するための束数処理部19とを有している。束数処理部19には、束数処理部19によって検出された各束の幅を検出する束幅検出部20が接続され、束幅検出部20には、束幅検出部20によって検出された各束の幅について、後述する演算を行う演算部21が接続されている。
【0013】
次に、この実施の形態に係る束数検出装置の動作について説明する。
複数枚の紙幣を帯8で施封した札束9を複数積層して構成された物品7をCMOSカメラ11の前に置き、物品7の側面の画像をCMOSカメラ11で撮影する。CMOSカメラ11によって撮影された画像は、画像データとしてCPU13によって取り込まれ、RAM14のメモリエリア1または2のいずれか一方のメモリエリアに記憶される。次に、メモリエリア1または2のいずれか一方に記憶された画像データは微分処理部15によって微分処理されるが、微分処理されている間は、CPU13によって取り込まれた画像データは、メモリエリア1または2のうちの微分処理されている画像データが記憶されていない方のメモリエリアに記憶される。
【0014】
微分処理において、微分処理部15は、まず、画像データについてY軸方向の微分を行い、所定の閾値で分けて2値化を行う。微分し2値化された画像データは、メモリエリア3に記憶される。メモリエリア3に記憶された画像データについて、Y軸方向に0から1に変化している場所をX方向の全範囲で認識し、平均を算出して札束9の帯8のエッジを見つけることで、帯8の位置を検出する。次に、メモリエリア3に記憶されている画像データについて、帯8の位置から帯8の幅分の範囲でX軸方向の微分を行い、札束9,9間の階調変化している箇所を抽出する。X軸方向の微分結果を所定の閾値で分けて2値化し、2値化された画像データをメモリエリア4に記憶させる。
【0015】
次に、メモリエリア4に記憶されている画像データを安定化させるために、細線化処理部16は画像データについて細線化処理を行い、なるべく無効成分を除去する。これにより、画素数が減少するので、この後に行われるハフ変換の計算量が減少し、演算時間が短くなる。細線化処理された画像データは、メモリエリア5に記憶される。
【0016】
細線化処理の終了後、ハフ変換部17は、メモリエリア5に記憶された画像データについてハフ変換を行うが、その前に、メモリエリアHに何もデータが記憶されていないことを確認し、何らかのデータが記憶されている場合にはそれを消去する。
【0017】
ハフ変換部17は、メモリエリア5に記憶されている2値化された画像データの各点を、以下の式に基づいて、その点を通過する直線に直交する原点からの距離ρ及び角度θに変換する(ハフ変換)。
ρ=xcosθ+ysinθ (1)
すなわち、各点を通る直線を、原点を通る直線に直交する直線とし、θ=0°〜180°まで計算して、極座標に表していく。この結果は、メモリエリアHに記憶される。
【0018】
メモリエリアHに記憶されたハフ変換後の画像データの極座標における表現を図2に示す。累積点が大きい点は、メモリエリア5の画像で直線状に並んだ点を表している。この累積点が大きい点について、ハフ逆変換部18がハフ逆変換を行うが、その前に、メモリエリア6に何もデータが記憶されていないことを確認し、何らかのデータが記憶されている場合にはそれを消去する。
【0019】
ハフ逆変換は、以下の式に基づいて行われる。
θ<45°またはθ≧135°のとき
x=−sinθ/ycosθ+ρ/cosθ (2)
45°≦θ<135°のとき
y=−cosθ/xsinθ+ρ/sinθ (3)
【0020】
ハフ逆変換によって、図3に示されるような数百本分の直線の関数が得られ、この直線の関数は、メモリエリア6に作画記憶される。束数処理部19は、メモリエリア6に作画記憶されている数百本分の直線について、ある程度の数の直線を束ねてその数を数えることによって、札束9(図1参照)のエッジの数を得る。図3において、直線の数、すなわち札束9のエッジの数は11であり、その結果、札束9が10束であることを認識する。
【0021】
ここで、例えば、CMOSカメラ11によって撮影された画像のコントラストが悪かった場合には、ハフ逆変換によって得られるはずの直線の関数が、部分的に得られないことがある。例えば、図4に示されるように、得られるはずの11本の直線L〜L11のうち1本の直線Lが得られない場合には、10本の直線が得られたことになり、直線L及びL間を1つの札束と判断してしまうので、札束9が9束であると認識してしまう。
【0022】
そこで、このような誤った認識を防ぐために、束数検出装置10において、得られた直線の数のみから束数処理部19が札束9の束数を認識した後、束幅検出部20が、隣り合う直線間の距離、すなわち、束数処理部19が認識した各札束の幅を検出する。この場合、直線L及びL間の距離はDと検出されることとする。一方、その他の隣り合う直線間の距離は本来ならば同じ幅になるはずであるが、実際には多少の誤差が生じるため、例えば、D,D01,D02,D03と検出されることとする。ただし、所定枚数の紙幣からなる札束であれば、札束のおおよその幅はわかるので、予め適切な所定範囲の幅を設定しておくと、D,D01,D02,D03はそれぞれ、この所定範囲内となる。例えば、所定範囲内の幅のうち、Dと検出された幅は5つ、D01,D02,D03と検出された幅はそれぞれ1つであるとすると、束幅検出部20は、所定範囲内の幅で最も数の多い幅をDと認識する。
【0023】
演算部21は、束幅検出部20によって検出された各幅が全て上記所定範囲内にある場合には、束数処理部19が認識した札束9の束数を、最終的な束数と決定する。この実施の形態のように、所定範囲外の幅Dが存在する場合には、演算部21は、
÷D (4)
の演算を行う。ここで、直線L及びL間は、本来は2つの束が存在するので、
≒2×D (5)
の関係が成り立つ。式(5)から、式(4)の算出値は約2となり、直線L及びL間には2つの束があることが特定される。そして、束数処理部19が認識した束数(9束)を、直線L及びL間には2つの束があることに基づいて補正することにより、束数検出装置10は、札束9が10束あることを検出する。
【0024】
このように、画像処理により検出された各札束9の幅を検出し、各幅のうち、予め設定された所定範囲外の幅がある場合に、所定範囲内の幅で最も数の多い幅Dと、所定範囲外の幅Dとを認識し、所定範囲外の幅Dを所定範囲内の幅で最も数の多い幅Dで割り算することにより、所定範囲外の幅Dをもつ札束が、割り算による算出値の数の束からなることを特定するので、画像処理される画像のコントラストが悪い場合でも正確に束数を検出することができる。
【0025】
この実施の形態では、画像処理部12は、ハフ変換を用いて画像処理を行っていたが、この形態に限定するものではない。どのような原理を用いて画像処理を行うものであってもよい。
【0026】
この実施の形態では、ハフ変換の計算量を減少させて演算時間を短くするために、細線化処理された画像データをハフ変換している。細線化処理を行わないとすると、ハフ変換する点が多くなることから、ハフ変換後の累積点が大きい点が多くなり、ハフ逆変換で得られる直線の関数が多くなる。すると、得られた直線の関数の中には、帯8に印刷された文字や図形等と直線状に並んでしまう場合や、隣の札束9のエッジなどと直線状になってしまう可能性が高まり、有効でない結果がまぎれてしまうこともある。細線化処理を行うことによって、この可能性を排除することができる。
【符号の説明】
【0027】
7 物品、8 帯、9 札束(束)、10 束数検出装置、11 CMOSカメラ(画像撮影手段)、12 画像処理部、13 CPU(画像取込部)、14 RAM(記憶手段)、15 微分処理部、17 ハフ変換部、18 ハフ逆変換部、19 束数処理部、20 束幅検出部、21 演算部、D 所定範囲内の幅で最も数の多い幅、D 所定範囲外の幅。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数枚の紙葉類を帯で施封した束を複数積層して構成された物品の側面の画像を撮影する画像撮影手段と、
前記画像を画像処理することにより前記束の数を検出する画像処理部と
を有し、
該画像処理部は、
検出された前記束のそれぞれの幅を検出する束幅検出部と、
該束幅検出部によって検出された各幅のうち、予め設定された所定範囲外の幅がある場合に、前記所定範囲内の幅で最も数の多い幅と、前記所定範囲外の幅とを認識し、該所定範囲外の幅を前記所定範囲内の幅で最も数の多い幅で割り算することにより、前記所定範囲外の幅をもつ束が、前記割り算による算出値の数の束からなることを特定する演算部と
を備え、
前記画像処理により検出された束数と、前記演算部により特定された束数とから、前記物品を構成する前記束の束数を検出する束数検出装置。
【請求項2】
前記画像処理部は、
前記画像撮影手段によって撮影された画像を画像データとして取り込む画像取込部と、
該画像取込部によって取り込まれた画像データを記憶する記憶手段と、
該記憶手段に記憶された画像データを微分処理して前記帯の位置を検出する微分処理部と、
該微分処理部で微分処理された画像データをハフ変換するハフ変換部と、
該ハフ変換部でハフ変換された画像データのうち累積点の大きい点のデータをハフ逆変換して直線の関数を得るハフ逆変換部と、
前記直線の関数に基づいて前記束のエッジ数を得ることにより束数を検出する束数処理部と
を備える、請求項1に記載の束数検出装置。
【請求項3】
複数枚の紙葉類を帯で施封した束を複数積層して構成された物品の側面の画像を撮影し、該画像を画像処理することにより、帯で施封した束の数を検出する束数検出方法であって、
前記画像処理により束数の検出を行うステップと、
検出された各束の幅を検出するステップと、
各幅のうち、予め設定された所定範囲外の幅がある場合に、前記所定範囲内の幅で最も数の多い幅と、前記所定範囲外の幅とを認識し、該所定範囲外の幅を前記所定範囲内の幅で最も数の多い幅で割り算することにより、前記所定範囲外の束が、前記割り算による算出値の数の束からなることを特定するステップと、
前記画像処理により検出された束数と、前記演算部により特定された束数とから、前記物品を構成する前記束の束数を検出するステップと
を含む束数検出方法。
【請求項4】
前記画像処理は、
前記物品の側面の画像を撮影するステップと、
前記画像を画像データとして取り込むステップと、
前記画像データを微分処理して前記帯の位置を検出するステップと、
微分処理された画像データハフ変換するステップと、
ハフ変換された画像データのうち累積点の大きい点のデータをハフ逆変換して直線の関数を得るステップと、
前記直線の関数に基づいて前記束のエッジ数を得ることにより束数を検出するステップと
を含む、請求項3に記載の束数検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−262451(P2010−262451A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−112277(P2009−112277)
【出願日】平成21年5月1日(2009.5.1)
【出願人】(592221908)武蔵エンジニアリング株式会社 (30)
【Fターム(参考)】