説明

杭の吊り治具及びそれと共に用いる杭受け台

【課題】作業性が良く、簡単な構成で、ワイヤを痛めることなく、確実に既製杭を垂直に吊り上げることができる杭の吊り治具を提供すること。
【解決手段】既製杭1を内挿する管を周方向に分割した締付管分割体2と、締付管分割体2同士を連結するリンク機構3とを備え、リンク機構3が、各締付管分割体2の分割端部から互いの対向方向に延設された縦に揺動可能な横リンクプレート4と、横リンクプレート4の先端部を枢支して連結するとともに、吊りワイヤが係着される縦リンクプレート5とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、杭の吊り治具及びそれと共に用いる杭受け台に関し、特に、作業性が良く、簡単な構成で、ワイヤを痛めることなく、確実に既製杭を垂直に吊り上げることができる杭の吊り治具及びそれと共に用いる杭受け台に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、既製杭を吊り上げて移動するために汎用されているいわゆる「杭の玉掛け」は、玉掛けワイヤを既製杭に2〜3回胴巻きして吊り上げ、杭の自重でワイヤに緊張力を与え、杭とワイヤとの間に発生する摩擦力で杭の吊り上げを行うものである。
【0003】
この杭の玉掛けに際して、杭が比較的軽量で、それを吊り上げるワイヤも細径で十分な場合は、人力で玉掛けが可能であるし、ワイヤに捻れなどで部分的にかかる応力が比較的少なく、ワイヤ自体が損傷するなどの問題は比較的少ない。
しかしながら、大径で重い杭(一般に、大きな支持力を要求される既製杭)を、上記と同様に玉掛けで吊り上げようとすると、ワイヤも太径で丈夫なものが必要となり、人力では取扱いが困難となるばかりか、危険を伴うようになる。
また、ワイヤが太径であるが故に、応力がかかる部位が大きく異なり、キンク、型崩れ、素線切れ等を起こしやすくなり危険性が増す等の問題がある。
【0004】
また、杭を削孔に挿入した後は、杭を挟んで地上に配設する脚部を有するカンザシ状の杭受け台に、杭に胴巻きした玉掛けワイヤのシッテを引っ掛けて仮吊りをする。
そして、この仮吊りをした杭と、クレーンで新たに吊り上げた上の杭との接合を行うが、接合後、仮吊りをした杭の玉掛けワイヤを取り外す際には、クレーンで上の杭ごと吊り上げることにより玉掛けワイヤを緩めて杭受け台から外す必要がある。
すなわち、この杭の吊り上げ時には、削孔内の杭を含めた杭の全荷重と、ソイルセメント等による杭の引き抜き抵抗とがクレーンにかかることになり、クレーンに対する負荷が大きくなりすぎるという問題があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記従来の既製杭を吊り上げて移動するために汎用されている杭の玉掛けが有する問題点に鑑み、作業性が良く、簡単な構成で、ワイヤを痛めることなく、確実に既製杭を垂直に吊り上げることができる杭の吊り治具を提供することを第1の目的とする。
また、本発明は、上記従来の杭受け台が有する問題点に鑑み、クレーンで杭を吊り上げることなく吊り治具を取り外すことができる杭受け台を提供することを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記第1の目的を達成するため、本発明の杭の吊り治具は、既製杭を内挿する管を周方向に分割した締付管分割体と、締付管分割体同士を連結するリンク機構とを備え、該リンク機構が、各締付管分割体の分割端部から互いの対向方向に延設された縦に揺動可能な横リンクプレートと、横リンクプレートの先端部を枢支して連結するとともに、吊りワイヤが係着される縦リンクプレートとを備えたことを特徴とする。
【0007】
この場合において、対向する横リンクプレートを、平行リンクとして上下に複数組連設することができる。
【0008】
また、締付管分割体を周方向に分割してヒンジにより連結するとともに、該ヒンジのヒンジピンを引き抜き可能に設けることができる。
【0009】
また、締付管分割体の内側に滑り防止部材を配設することができる。
【0010】
また、縦リンクプレートの上部に、先端部が揺動することにより基部が締付管分割体の上面を押圧する梃子状の締付リンクプレートを枢着することができる。
【0011】
また、締付リンクプレートが締付管分割体を所要押圧する揺動位置で、締付リンクプレートと縦リンクプレートと係合させ、締付リンクプレートを縦リンクプレートにロックするロックピンを設けることができる。
【0012】
また、上記第2の目的を達成するため、本発明の杭受け台は、上記本発明の杭の吊り治具と共に使用する杭受け台であって、杭を挟んで地上に配設する脚部に、縦リンクプレートを下から昇降可能に支持するジャッキを設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の杭の吊り治具によれば、既製杭を内挿する管を周方向に分割した締付管分割体と、締付管分割体同士を連結するリンク機構とを備え、該リンク機構が、各締付管分割体の分割端部から互いの対向方向に延設された縦に揺動可能な横リンクプレートと、横リンクプレートの先端部を枢支して連結するとともに、吊りワイヤが係着される縦リンクプレートとを備えることから、杭を締付管に内挿して縦リンクプレートを吊りワイヤで引き上げると、縦リンクプレートの上昇により横リンクプレートが揺動し、締付管分割体の間隔を狭めて締付管を縮径し、杭を締め付けるように保持することができる。
その結果、大径で重い杭を対象とするためワイヤ径が太径となっても、作業性が良く、簡単な構成で、捻れなどでワイヤに部分的にかかる応力が比較的少ないためワイヤを痛めることなく、確実に既製杭を垂直に吊り上げることができる。
【0014】
この場合、対向する横リンクプレートを、平行リンクとして上下に複数組連設することにより、締付管分割体の間隔を上下均等に狭めて締付管を縮径し、杭をより安定した状態で締め付けて保持することができる。
【0015】
また、締付管分割体を周方向に分割してヒンジにより連結するとともに、該ヒンジのヒンジピンを引き抜き可能に設けることにより、杭の円周により近い形状で締付管を縮径するとともに、縮径を緩めて一方のヒンジピンを引く抜くことにより、締付管を開いて吊り治具を杭から容易に取り外すことができる。
【0016】
また、締付管分割体の内側に滑り防止部材を配設することにより、締付管による杭の保持を確実に行うことができる。
【0017】
また、縦リンクプレートの上部に、先端部が揺動することにより基部が締付管分割体の上面を押圧する梃子状の締付リンクプレートを枢着することにより、締付リンクプレートの先端部を吊りワイヤで吊り上げて揺動させることにより、リンク機構を作用させて締付管を縮径し、内挿した杭を予備的に締め付けて保持することができ、これにより、杭が横積みされている状態から吊り上げ初期の間の杭の保持を自動的にすることができる。
【0018】
また、締付リンクプレートが締付管分割体を所要押圧する揺動位置で、締付リンクプレートと縦リンクプレートと係合させ、締付リンクプレートを縦リンクプレートにロックするロックピンを設けることにより、予備的に締め付けた杭の保持を確実に持続することができる。
【0019】
一方、本発明の杭受け台は、上記本発明の杭の吊り治具と共に使用する杭受け台であって、杭を挟んで地上に配設する脚部に、縦リンクプレートを下から昇降可能に支持するジャッキを設けることから、ジャッキを上昇させた状態で縦リンクプレートを支持することにより、吊り上げ時と同様にリンク機構を作用させ、吊りワイヤを外した後も締め付け力を付与して杭の落下を防止するとともに、上に接続した杭を介して支持した状態でジャッキを下降させることにより、縦リンクプレートの下降を許容し、締付管分割体を緩めて杭から吊り治具を取り外すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の杭の吊り治具及びそれと共に用いる杭受け台の実施の形態を、図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0021】
図1〜図4に、本発明の杭の吊り治具の第1実施例を示す。
この杭の吊り治具は、既製杭1を内挿する管を周方向に分割した締付管分割体2と、締付管分割体2同士を連結するリンク機構3とを備えている。
リンク機構3は、各締付管分割体2の分割端部から互いの対向方向に延設された縦に揺動可能な横リンクプレート4と、横リンクプレート4の先端部を枢支して連結するとともに、吊りワイヤが係着される縦リンクプレート5とを備え、対向する横リンクプレート4は、平行リンクとして上下に2組連設されている。
【0022】
締付管分割体2は、本実施例では、浅めに形成された2つの半裁筒体からなり、それぞれの分割端部には、耳状の突片21と該突片21から締付管の接線方向に延設された取付片22とが一体に設けられている。
各取付片22には、上下2段の平行リンクを形成するように、横リンクプレート4が2組ずつ、該取付片22と平行な面上で揺動するように枢着されている。
【0023】
また、本実施例では、締付管分割体2の対向する突片21を貫通するようにボルト6が設けられており、リンク機構3によって締付管分割体2の間隔を狭めた後、突片21の外側からボルト6にナット7を螺合することにより、リンク機構3の緩み止めとしている。
なお、突片21を所要長く形成することにより、図2(b)に示すように、先端部が二股になったカンザシ状の杭受け台8上にこの突片21を支持させ、杭1を仮吊りすることができる。
【0024】
この場合、図5に示すように、杭受け台8の脚部に支持突起81を設け、この支持突起81を縦リンクプレート5の下部に押し当てることにより、縦リンクプレート5を下から支持し、吊り上げ時と同様にリンク機構3を作用させ、吊りワイヤを外した後も、締め付け力を付与して杭1の落下を防止することができる。
【0025】
また、締付管分割体2は、周方向に2分割したものがヒンジ9により連結されており、少なくとも一方のヒンジ9のヒンジピン91が引き抜き可能に設けられている。
これにより、杭1の円周により近い形状で締付管を縮径するとともに、吊り治具を杭1から取り外すときには、図3に示すように、縦リンクプレート5を下げてリンク機構3を緩め、一方のヒンジピン91を引く抜くことにより、もう一方のヒンジピン91を軸に締付管を開くようにする。
【0026】
リンク機構3は、締付管分割体2の取付片22にその基部が枢着され、締付管の接線方向に延設された上下2段の横リンクプレート4と、これら横リンクプレート4の先端部を枢支して連結する縦リンクプレート5とを備えている。
縦リンクプレート5は、2つの締付管分割体2から上下2段の横リンクプレート4が平行に枢着されることにより、その両側に平行リンクを形成している。
これにより、図1に示すように、縦リンクプレート5を上部穴51を介して吊りワイヤWで引き上げると、縦リンクプレート5の上昇によって横リンクプレート4が斜めに揺動し、締付管分割体2の間隔を狭めて、杭1を締め付けるように保持する。
【0027】
一方、締付管分割体2の内側には、滑り防止部材23が配設されており、締付管分割体2による杭1の保持を確実に行うようにしている。
この滑り防止部材23には、特に限定されるものではないが、積層用樹脂、防滑材及び補強材等からなる複合積層樹脂(FRP)製のものやウレタンゴム等の硬質のゴム製のものを用いることができ、特に、ウレタンゴム製のものや、積層用樹脂としてイソフタル酸系不飽和ポリエステル樹脂、防滑材として粉末シリコン、補強材としてガラス繊維を使用し、ガラス繊維にイソフタル酸系不飽和ポリエステル樹脂を含浸することを複数層に亘って繰り返し、表面のガラス繊維に粉末シリコンを混入したイソフタル酸系不飽和ポリエステル樹脂を塗布した複合積層樹脂(FRP)製のものを好適に用いることができる。
【0028】
次に、この杭の吊り治具の使用方法を説明する。
図1及び図2に示すように、杭1の上部に杭の吊り治具を取り付け、治具の縦リンクプレート5を吊りハンガーW1と吊りワイヤWを介してクレーン10にて吊り上げる。
縦リンクプレート5はこの吊り上げにより上昇することから、横リンクプレート4は、略水平の状態からその先端部が縦リンクプレート5により引き上げられ、これにより、締付管分割体2の間隔を狭めて締付管を縮径し、杭1を締め付けるように保持しながら吊り上げる。
【0029】
そして、図2に示すように、所定の杭ジョイント位置に運び、下杭と吊り込まれた杭1とを溶接工法や無溶接工法により接合する。
なお、このとき、二股の杭受け台8を杭1を挟むように差し込み、締付管分割体2の突片21を支持することにより杭1の落下を防止する。
杭1の接合後、杭受け台8を取り除き、下杭と中杭(上杭)を削孔内に挿入する。
杭の挿入後、杭受け台8を再度差し込んで杭1を一時的に受け、吊り冶具を杭1から取り外す。
一方、吊り治具を杭から取り外すときには、図3に示すように、縦リンクプレート5を下げてリンク機構3を緩め、一方のヒンジ9のヒンジピン91を引く抜くことにより、もう一方のヒンジ9のヒンジピン91を軸に締付管を開くようにする。
【実施例2】
【0030】
図6に、本発明の杭の吊り治具の第2実施例を示す。
この杭の吊り治具は、既製杭を内挿する管を周方向に分割した締付管分割体2と、締付管分割体2同士を連結するリンク機構3とを備えている。
リンク機構3は、各締付管分割体2の分割端部から互いの対向方向に延設された縦に揺動可能な横リンクプレート4と、横リンクプレート4の先端部を枢支して連結するとともに、吊りワイヤが間接的に係着される縦リンクプレート5とを備え、対向する横リンクプレート4は、平行リンクとして上下に2組連設されている。
そして、この杭の吊り治具は、縦リンクプレート5の上部に、先端部が揺動することにより基部が締付管分割体2の上面を押圧する梃子状の締付リンクプレート11を枢着している。
【0031】
締付管分割体2は、本実施例では、2つの半裁筒体からなり、それぞれの分割端部には、横リンクプレート4が枢着される取付片24が基軸25により揺動可能に設けられている。
締付管分割体2の一方の基軸25は抜き取り可能に設けられており、環状をなす締付管分割体2は、拡開若しくは分割が可能である。
なお、締付管分割体2の内側には、硬質ウレタンゴム等の滑り防止部材23が配設されている。
【0032】
締付リンクプレート11は長板状のプレートからなり、その中間部が縦リンクプレート5の上部に枢着されている。
締付リンクプレート11は、初期位置が縦リンクプレート5に対し斜めになるように設置されており、先端部がそこに係着される吊りワイヤで引かれることによって揺動し、縦リンクプレート5と一直線になる。
そして、この揺動の際に基部のローラ12で締付管分割体2の上面を押圧し、締付管分割体2に対し縦リンクプレート5を引き上げ、リンク機構3を作用させることにより締付管分割体2を縮径する。
縮径した締付管分割体2は、内側の滑り防止部材23を介し、内挿した杭を予備的に締め付けて保持することができ、これにより、杭が横積みされている状態から吊り上げ初期の間の杭の保持を自動的に行うことができる。
【0033】
また、この杭の吊り治具は、締付リンクプレート11が締付管分割体2を所要押圧する縦の揺動位置で、締付リンクプレート11と縦リンクプレート5と係合させ、締付リンクプレート11を縦リンクプレート5にロックするロックピン13を設けている。
ロックピン13は、締付リンクプレート11の長溝13a内を摺動し、縦リンクプレート5の上端に設けた切欠13bに嵌合することにより、締付リンクプレート11と縦リンクプレート5とをロックする。
【実施例3】
【0034】
図7〜図8に、本発明の杭の吊り治具の第3実施例を示す。
この杭の吊り治具は、既製杭を内挿する管を周方向に分割した締付管分割体2と、締付管分割体2同士を連結するリンク機構3とを備えている。
リンク機構3は、各締付管分割体2の分割端部から互いの対向方向に延設された縦に揺動可能な横リンクプレート4と、横リンクプレート4の先端部を枢支して連結するとともに、吊りワイヤが間接的に係着される縦リンクプレート5とを備え、対向する横リンクプレート4は、平行リンクとして上下に2組連設されている。
そして、この杭の吊り治具は、縦リンクプレート5の上部に、先端部が揺動することにより基部が締付管分割体2の上面を押圧する梃子状の締付リンクプレート11を枢着している。
【0035】
締付管分割体2は、本実施例では、2つの半裁筒体からなり、それぞれの分割端部には、横リンクプレート4が枢着される取付片24が基軸25により揺動可能に設けられている。
締付管分割体2の一方の基軸25は抜き取り可能に設けられており、環状をなす締付管分割体2は、拡開若しくは分割が可能である(図6参照)。
また、本実施例では、締付管分割体2の上方で、締付リンクプレート11の先端部の傾斜側に、縦リンクプレート5と取付片24とを連結する補助リンクプレート14を設けている。
これにより、締付リンクプレート11が吊りワイヤで引かれたときに、初期に生じる横方向の力をこの補助リンクプレート14で負担し、横リンクプレート4から軽減するようにしている。
なお、締付管分割体2の内側には、硬質ウレタンゴム等の滑り防止部材23が配設されている。
【0036】
締付リンクプレート11は長板状のプレートからなり、その中間部が縦リンクプレート5の上部に枢着されている。
締付リンクプレート11は、初期位置が縦リンクプレート5に対し斜めになるように設置されており、先端部がそこに係着される吊りワイヤで引かれることによって揺動し、縦リンクプレート5と一直線になる。
そして、この揺動の際に基部のローラ12で締付管分割体2の上面を押圧し、締付管分割体2に対し縦リンクプレート5を引き上げ、リンク機構3を作用させることにより締付管分割体2を縮径する。
縮径した締付管分割体2は、内側の滑り防止部材23を介し、内挿した杭を予備的に締め付けて保持することができ、これにより、杭が横積みされている状態から吊り上げ初期の間の杭の保持を自動的に行うことができる。
【0037】
また、この杭の吊り治具は、締付リンクプレート11が締付管分割体2を所要押圧する縦の揺動位置で、締付リンクプレート11と縦リンクプレート5と係合させ、締付リンクプレート11を縦リンクプレート5にロックするロックピン13を設けている。
ロックピン13は、図8にも示すように、締付リンクプレート11の貫通孔を覆うように取り付けられた筒状のピンケース13cと、このピンケース13c内にばね13dにより付勢して摺動可能に配設されたロックピン本体13eとを有し、締付リンクプレート11の貫通孔と縦リンクプレート5の嵌合孔51が一致する揺動位置で、ロックピン本体13eが自動的に縦リンクプレート5の嵌合孔51に嵌合し、締付リンクプレート11と縦リンクプレート5とをロックする。
ロックを解除する場合は、ロックピン本体13eから半径方向に突出する引き金13fを、ピンケース13cに形成された鉤溝13gに沿って引き、鉤溝13gの終端に掛止する。
【実施例4】
【0038】
図9に、本発明の杭の吊り治具の第4実施例を示す。
この杭の吊り治具は、第2〜第3実施例とほぼ同じ構成を有しているが、締付管分割体2が、U字状に形成されたU字状分割体2aと、該U字状分割体2aの開口部に配設される円弧状の円弧状分割体2bとによって構成されている。
円弧状分割体2bは、その両端に配設された基軸25を、U字状分割体2aの両端に形成された長溝26に摺動可能に嵌挿しており、基軸25が杭の接線方向に摺動することにより締付管分割体2は縮径が可能である。
また、この締付管分割体2は、一方の基軸25を取り外すことにより、円弧状分割体2bを揺動させて拡開し、側方から杭1の出し入れをすることができる。
【実施例5】
【0039】
一方、図10〜図11に、本発明の杭受け台の一実施例を示す。
この杭受け台8は、上記各実施例の杭の吊り治具と共に使用する杭受け台であって、杭1を挟んで地上に配設する脚部82に、縦リンクプレート5を下から昇降可能に支持するジャッキ83を設けている。
【0040】
脚部82は一端で連結されるとともに、この連結部に配設した幅調整シリンダ84により、杭径に合わせて脚部82の間隔を調整できるようにしている。
【0041】
ジャッキ83は脚部82の内部に装着されており、上下に伸縮することにより、吊り治具の縦リンクプレート5を下から支持する突出状態と、縦リンクプレート5の支持から外れて、締付管分割体2を脚部82に支持させる退入状態とを選択的に呈することができる。
この場合、図11に示すように、縦リンクプレート5の下部を長く延長して形成している場合は、ジャッキ83を下げたときにこの縦リンクプレート5の延長部を収容する凹部を脚部82に形成しておくようにする。
【0042】
かくして、これら各実施例の杭の吊り治具は、既製杭1を内挿する管を周方向に分割した締付管分割体2と、締付管分割体2同士を連結するリンク機構3とを備え、該リンク機構3が、各締付管分割体2の分割端部から互いの対向方向に延設された縦に揺動可能な横リンクプレート4と、横リンクプレート4の先端部を枢支して連結するとともに、吊りワイヤが係着される縦リンクプレート5とを備えることから、杭1を締付管に内挿して縦リンクプレート5を吊りワイヤで引き上げると、縦リンクプレート5の上昇により横リンクプレート4が揺動し、締付管分割体2の間隔を狭めて締付管を縮径し、杭1を締め付けるように保持することができる。
その結果、大径で重い杭を対象とするためワイヤ径が太径となっても、作業性が良く、簡単な構成で、捻れなどで吊りワイヤWに部分的にかかる応力が比較的少ないため吊りワイヤWを痛めることなく、確実に杭1を垂直に吊り上げることができる。
【0043】
この場合、対向する横リンクプレート4を、平行リンクとして上下に複数組連設することにより、締付管分割体2の間隔を上下均等に狭めて締付管を縮径し、杭1をより安定した状態で締め付けて保持することができる。
【0044】
また、締付管分割体2を周方向に分割してヒンジ9により連結するとともに、該ヒンジ9のヒンジピン91を引き抜き可能に設けることにより、杭1の円周により近い形状で締付管を縮径するとともに、縮径を緩めて一方のヒンジピン91を引く抜くことにより、締付管を開いて吊り治具を杭から容易に取り外すことができる。
【0045】
また、締付管分割体2の内側に滑り防止部材23を配設することにより、締付管による杭1の保持を確実に行うことができる。
【0046】
また、縦リンクプレート5の上部に、先端部が揺動することにより基部が締付管分割体2の上面を押圧する梃子状の締付リンクプレート11を枢着することにより、締付リンクプレート11の先端部を吊りワイヤで吊り上げて揺動させることにより、リンク機構3を作用させて締付管を縮径し、内挿した杭を予備的に締め付けて保持することができ、これにより、杭が横積みされている状態から吊り上げ初期の間の杭の保持を自動的にすることができる。
【0047】
また、締付リンクプレート11が締付管分割体2を所要押圧する揺動位置で、締付リンクプレート11と縦リンクプレート5と係合させ、締付リンクプレート11を縦リンクプレート5にロックするロックピン13を設けることにより、予備的に締め付けた杭の保持を確実に持続することができる。
【0048】
一方、本実施例の杭受け台8は、上記各実施例の杭の吊り治具と共に使用する杭受け台であって、杭を挟んで地上に配設する脚部82に、縦リンクプレート5を下から昇降可能に支持するジャッキ83を設けることから、ジャッキ83を上昇させた状態で縦リンクプレート5を支持することにより、吊り上げ時と同様にリンク機構3を作用させ、吊りワイヤを外した後も締め付け力を付与して杭の落下を防止するとともに、上に接続した杭を介して支持した状態でジャッキ83を下降させることにより、縦リンクプレート5の下降を許容し、締付管分割体2を緩めて杭から吊り治具を取り外すことができる。
【0049】
以上、本発明の杭の吊り治具及びそれと共に用いる杭受け台について、その実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明の杭の吊り治具は、作業性が良く、簡単な構成で、ワイヤを痛めることなく、確実に既製杭を垂直に吊り上げることができることから、例えば、大径で重い杭を対象とする場合に好適に用いることができる。
また、本発明の杭受け台は、クレーンで杭を吊り上げることなく吊り治具を取り外すことができるため、本発明の杭の吊り治具の補助具として効果的に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の杭の吊り治具の第1実施例を示し、(a)は吊り治具を杭に装着した状態を示す締め付け前の正面図、(b)はリンク機構により杭を締め付けた状態を示す正面図、(c)は(b)の水平断面図である。
【図2】同杭の吊り治具を示し、(a)は吊り治具を介して杭をクレーンで吊り上げた状態を示す正面図、(b)は杭受け台による杭の支持状態を示す拡大断面図である。
【図3】同杭の吊り治具のヒンジピンを抜いて締付管を開いた状態を示す概略斜視図である。
【図4】同杭の吊り治具を示し、(a)はその平面図、(b)は同正面図、(c)は(a)の側面図、(d)は横リンクプレートの2面図、(e)は縦リンクプレートの正面図である。
【図5】杭受け台の実施例を示し、(a)は杭受け台によりリンク機構を作用させた状態を示す正面図、(b)は杭受け台の斜視図である。
【図6】本発明の杭の吊り治具の第2実施例を示し、(a)はその平面図、(b)は締付リンクプレートの平面図、(c)は吊り治具の正面図である。
【図7】本発明の杭の吊り治具の第3実施例を示し、(a)はその正面図、(b)はロックピンのロック状態を示す断面図、(c)はロックピンの解除状態を示す断面図である。
【図8】ロックピンを示し、(a)はその側面図、(b)は(a)のA−A線端面図、(c)はロックピンの正面図である。
【図9】本発明の杭の吊り治具の第4実施例を示し、(a)はその平面図、(b)は同正面図である。
【図10】本発明の杭受け台の一実施例を示し、(a)はその平面図、(b)はジャッキを退入させた状態を示す断面図、(c)はジャッキを突出させた状態を示す断面図である。
【図11】同実施例の杭受け台の使用状態を示す正面図である。
【符号の説明】
【0052】
1 杭
2 締付管分割体
2a U字状分割体
2b 円弧状分割体
21 突片
22 取付片
23 滑り防止部材
24 取付片
25 基軸
26 長溝
3 リンク機構
4 横リンクプレート
5 縦リンクプレート
51 嵌合孔
6 ボルト
7 ナット
8 杭受け台
81 支持突起
82 脚部
83 ジャッキ
84 幅調整シリンダ
9 ヒンジ
91 ヒンジピン
10 クレーン
11 締付リンクプレート
12 ローラ
13 ロックピン
13a 長溝
13b 切欠
13c ピンケース
13d ばね
13e ロックピン本体
13f 引き金
13g 鉤溝
14 補助リンクプレート


【特許請求の範囲】
【請求項1】
既製杭を内挿する管を周方向に分割した締付管分割体と、締付管分割体同士を連結するリンク機構とを備え、該リンク機構が、各締付管分割体の分割端部から互いの対向方向に延設された縦に揺動可能な横リンクプレートと、横リンクプレートの先端部を枢支して連結するとともに、吊りワイヤが係着される縦リンクプレートとを備えたことを特徴とする杭の吊り治具。
【請求項2】
対向する横リンクプレートを、平行リンクとして上下に複数組連設したことを特徴とする請求項1記載の杭の吊り治具。
【請求項3】
締付管分割体を周方向に分割してヒンジにより連結するとともに、該ヒンジのヒンジピンを引き抜き可能に設けたことを特徴とする請求項1又は2記載の杭の吊り治具。
【請求項4】
締付管分割体の内側に滑り防止部材を配設したことを特徴とする請求項1、2又は3記載の杭の吊り治具。
【請求項5】
縦リンクプレートの上部に、先端部が揺動することにより基部が締付管分割体の上面を押圧する梃子状の締付リンクプレートを枢着したことを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の杭の吊り治具。
【請求項6】
締付リンクプレートが締付管分割体を所要押圧する揺動位置で、締付リンクプレートと縦リンクプレートと係合させ、締付リンクプレートを縦リンクプレートにロックするロックピンを設けたことを特徴とする請求項5記載の杭の吊り治具。
【請求項7】
請求項1乃至6記載の杭の吊り治具と共に使用する杭受け台であって、杭を挟んで地上に配設する脚部に、縦リンクプレートを下から昇降可能に支持するジャッキを設けたことを特徴とする杭受け台。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−121412(P2008−121412A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−250429(P2007−250429)
【出願日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【出願人】(505408686)ジャパンパイル株式会社 (67)
【Fターム(参考)】