説明

杭上移動装置

【課題】移動効率が高い杭上移動装置を提供する。
【解決手段】前後に車輪50を備え、当該車輪50の回転により既設杭Pの上を移動する杭上移動装置1であって、上下に設けられた上側サイドローラ部62及び下側サイドローラ部63を有し、既設杭Pを移動方向に直交する左右両側から挟む一対のガイド部60を備え、既設杭Pに対する、一方のガイド部60が有する下側サイドローラ部63(可動型ガイド部60aが有する下側サイドローラ部63a)及び他方のガイド部60が有する上側サイドローラ部62(固定型ガイド部60bが有する上側サイドローラ部62b)の接触圧力が、ゼロ若しくは当該一方のガイド部60が有する上側サイドローラ部(可動型ガイド部60aが有する上側サイドローラ部62a)及び当該他方のガイド部60が有する下側サイドローラ部(固定型ガイド部60bが有する下側サイドローラ部63b)の接触圧力よりも低くなるよう構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、杭上移動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建設工事現場等においては、鋼矢板などの杭を圧入したり引抜したりする場合、既設杭列上を自走する自走式の杭圧入引抜機が使用されている。
この杭圧入引抜機を使用する際、資材やこの資材を搬送する装置などを、杭圧入引抜機とともに移動させて、杭圧入引抜機の近傍に配置する必要がある。そのため、既設杭列上を自走して、これらの資材や装置などを搬送する杭上移動装置が提案されている。
【0003】
具体的には、前後それぞれに1つずつ取り付けられた車輪と、既設杭を移動方向に直交する左右両側から挟む角形状のガイドシューと、などを備え、ガイドシューを既設杭の左右両側面に当接させながら、車輪の回転で既設杭の上を移動する杭上移動装置(例えば、特許文献1参照)や、前後それぞれに1つずつ取り付けられた車輪と、既設杭を左右両側から挟むサイドローラと、サイドローラの間隔を杭幅の変化に追従して自動的に調整するアキュムレータと、などを備え、サイドローラで既設杭を挟持しながら、車輪の回転で既設杭の上を移動する杭上移動装置(例えば、特許文献2参照)などが知られている。
【特許文献1】特公平8−19761号公報
【特許文献2】特許第2588467号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1及び2記載の杭上移動装置は、ガイドシューを既設杭の左右両側面に当接させながら移動(走行)したり、正面視4つのサイドローラの全てで既設杭を挟持するよう、アキュムレータによってサイドローラの間隔を調整しながら移動(走行)したりするため、走行抵抗が大きく、車輪のスリップなどが起こり得るという問題がある。
また、特許文献1及び2記載の杭上移動装置は、車輪が、車輪の回転軸と杭上移動装置の前後方向とが直交するように固定されているため、特にカーブ部や段差部を走行する際の走行抵抗が大きくなってしまうという問題がある。
さらに、特許文献1及び2記載の杭上移動装置は、前後それぞれに1つずつの車輪しか取り付けられていないため、既設杭と各車輪との接触圧力が大きく、既設杭や車輪が損傷してしまい、車輪のスリップなどが起こりやすいという問題がある。
すなわち、特許文献1及び2記載の杭上移動装置は、走行抵抗が大きいため走行スピードが遅く、また、車輪のスリップなどが起こりやすいため、移動効率が低いという問題がある。
【0005】
本発明の課題は、移動効率が高い杭上移動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、
前後に車輪を備え、当該車輪の回転により既設杭の上を移動する杭上移動装置であって、
上下に設けられた上側サイドローラ部及び下側サイドローラ部を有し、前記既設杭を移動方向に直交する左右両側から挟む一対のガイド部を備え、
前記既設杭に対する、一方の前記ガイド部が有する前記下側サイドローラ部及び他方の前記ガイド部が有する前記上側サイドローラ部の接触圧力は、ゼロ若しくは当該一方のガイド部が有する前記上側サイドローラ部及び当該他方のガイド部が有する前記下側サイドローラ部の接触圧力よりも低いことを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、
前後に車輪を備え、当該車輪の回転により既設杭の上を移動する杭上移動装置であって、
本体フレームと、
前記本体フレームの前側及び後側に、左右方向に旋回可能に取り付けられた旋回フレームと、
前記旋回フレームの各々に、上下方向に揺動可能に設けられた揺動フレームと、を備え、
前記車輪は、前記揺動フレームに取り付けられ、
前記本体フレームの前側に取り付けられた前記旋回フレームに設けられた前記揺動フレーム及び前記本体フレームの後側に取り付けられた前記旋回フレームに設けられた前記揺動フレームの少なくとも何れか一方には、少なくとも2つの前記車輪が前後方向に取り付けられていることを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、
請求項2に記載の杭上移動装置であって、
前記揺動フレームは、
前記旋回フレームに、上下方向に揺動可能に設けられたボギーフレームと、
前記ボギーフレームに、前後方向に揺動可能に取り付けられたローラフレームと、を備え、
前記車輪は、前記ローラフレームに取り付けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、杭上移動装置は、既設杭に対する、一方のガイド部が有する下側サイドローラ部及び他方のガイド部が有する上側サイドローラ部の接触圧力が、ゼロ若しくは当該一方のガイド部が有する上側サイドローラ部及び当該他方のガイド部が有する下側サイドローラ部の接触圧力よりも低くなっている。
したがって、正面視で4つのサイドローラ部のうちの少なくとも一方の対角に位置する2つのサイドローラ部が既設杭と接触しているため、左右のバランスが安定するとともに、ガイドシューを既設杭の左右両側面に当接させながら移動(走行)する杭上移動装置や、4つのサイドローラ部で既設杭を挟持するようアキュムレータなどによってサイドローラ部の間隔を調整しながら移動(走行)する杭上移動装置などの従来の杭上移動装置と比較して、走行抵抗が小さく、移動効率が高い。
【0010】
本発明よれば、杭上移動装置は、本体フレームの前側及び後側に、左右方向に旋回可能に取り付けられた旋回フレームと、旋回フレームの各々に、上下方向に揺動可能に設けられた揺動フレームと、を備え、車輪は、揺動フレームに取り付けられている。
すなわち、杭上移動装置の走行路にあわせて車輪を左右に旋回させることができるとともに、杭上移動装置の走行路に段差がある場合には揺動フレームが揺動して当該段差を吸収することができる。
しがたって、当該旋回ができない杭上移動装置と比較して、特にカーブ部を走行する際の走行抵抗を軽減させることができるとともに、車輪が揺動フレームに取り付けられていない杭上移動装置と比較して、特に段差部を走行する際の走行抵抗を軽減させることができるため、移動効率が高い。
【0011】
さらに、本発明によれば、本体フレームの前側に取り付けられた旋回フレームに設けられた揺動フレーム及び本体フレームの後側に取り付けられた旋回フレームに設けられた揺動フレームの少なくとも何れか一方には、少なくとも2つの車輪が前後方向に取り付けられている。
すなわち、杭上移動装置の前側及び/又は後側には、少なくとも2つの車輪が備えられているため、前側及び後側のそれぞれに1つの車輪を備える杭上移動装置と比較して、車輪の個数が多く、既設杭と各車輪との接触圧力が低い。
したがって、既設杭や車輪の損傷を抑えることができるため、車輪のスリップなどが起こりにくく、移動効率が高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図を参照して、本発明を実施するための最良の形態を詳細に説明する。なお、発明の範囲は、図示例に限定されない。
【0013】
<杭上移動装置の構成>
図1は、杭上移動装置1の正面図であり、図2は、杭上移動装置1の側面図であり、図3〜図5は、杭上移動装置1の平面図であり、図6は、杭上移動装置1の機能的構成を示すブロック図である。
なお、図4は、本体フレーム10及び足場フレーム20を省略するとともに、旋回フレーム30の下側に位置する既設杭P及びガイド部60を省略した杭上移動装置1の平面図である。また、図5は、本体フレーム10、足場フレーム20、旋回フレーム30及び揺動フレーム40を省略した杭上移動装置1の平面図である。
図1〜図5では、杭上移動装置1の移動(走行)方向を前後方向とし、杭上移動装置1に対して既設杭Pが配置された側を下側、それに対向する側を上側とし、前後方向及び上下方向の双方に直交する方向を左右方向とする。
【0014】
杭上移動装置1は、前後に車輪50を備え、例えば、所定の資材や装置などの搬送物Qを搬送したり、作業員に作業場所(足場)を提供したりするために、その車輪50の回転により、U型鋼矢板などの既設杭P,P,…上を移動(走行)する装置である。
【0015】
具体的には、杭上移動装置1は、例えば、本体フレーム10と、本体フレーム10の左側面に取り付けられた足場フレーム20と、本体フレーム10の前側及び後側に左右方向に旋回可能に取り付けられた旋回フレーム30,30と、旋回フレーム30の各々に上下方向に揺動可能に取り付けられた一対の揺動フレーム40,40と、一対の揺動フレーム40,40に回転可能に取り付けられた一対の車輪50,50と、車輪50を回転させる車輪駆動部120と、旋回フレーム30に左右の間隔を調整可能に取り付けられた一対のガイド部60,60と、一対のガイド部60,60の左右の間隔を調整するガイド部間隔調整部130と、杭上移動装置1の傾きを検出する検出部140と、操作ボタンや操作レバーなどから構成される操作部150と、杭上移動装置1の各部を制御する制御部160と、などを備えて構成される。
【0016】
本体フレーム10は、例えば、前後方向に長尺な平面視略矩形状に形成され、左右両側部が立ち上がっている。これにより、本体フレーム10の上中央側が凹んだ形状をなし、搬送物Qを収容できるようになっている。
【0017】
足場フレーム20は、例えば、足場フレーム20に作業員が搭乗して既設杭Pの連結状態や圧入状態などの点検、既設杭Pの溶接などの作業を行ったり、油圧ユニット装置や溶接ユニット装置などのユニット装置Uを搭載したりするためのものである。
足場フレーム20は、例えば、前後方向に長尺な平面視略矩形状に形成されており、本体フレーム10の左側面に取り付けられている。
なお、足場フレーム20は、本体フレーム10の左右何れか一方の側面に取り付けられていれば良く、例えば、本体フレーム10の右側面に取り付けられていても良い。
【0018】
旋回フレーム30は、例えば、平面視略「日」の字状に形成されており、本体フレーム10の下面に前後2つ設けられている。すなわち、杭上移動装置1には、2つの旋回フレーム30が備えられている。
各々の旋回フレーム30は、例えば、本体フレーム10の左側面及び右側面から垂設され、前後方向に長尺な2つの前後フレーム31と、本体フレーム10の下面から垂設され、左右方向に長尺な1つの第1左右フレーム32と、2つの前後フレーム31の前後端部のそれぞれの下面に固定され、左右方向に長尺な2つの第2左右フレーム33と、などにより構成されている。
【0019】
前後フレーム31は、例えば、左右方向に旋回自在に本体フレーム10に取り付けられている。
また、第1左右フレーム32は、例えば、2つの前後フレーム31のうちの一方の前後フレーム31の前後方向略中央の位置から他方の前後フレーム31の前後方向略中央の位置に亘って設けられており、左右方向に旋回自在に本体フレーム10に取り付けられている。
【0020】
具体的には、本体フレーム10は、例えば、左右両側面における前側及び後側に、左右方向外側に向かって湾曲する4つの弓状部材101を有するとともに、例えば、下面における前側及び後側に、2つの軸受け部102を有している。
そして、前後フレーム31は、例えば、上面における前後方向略中央の位置に、弓状部材101に前後方向にスライド自在に係合するスライド部311を有しており、このスライド部311によって、左右方向に旋回自在に本体フレーム10に取り付けられている。また、第1左右フレーム32は、例えば、左右方向略中央の位置に、軸受け部102に左右方向に旋回自在に係合する旋回軸部321を有しており、この旋回軸部321によって、左右方向に旋回自在に本体フレーム10に取り付けられている。
したがって、旋回フレーム30は、例えば、平面視略中央を通る上下方向に平行な軸を旋回中心R1として、左右方向に旋回可能となっている。
【0021】
揺動フレーム40は、例えば、旋回フレーム30から垂下して車輪50を挟んで左右に2つ設けられている。すなわち、1つの旋回フレーム30には、左右で一対の揺動フレーム40,40が取り付けられている。
揺動フレーム40は、例えば、旋回フレーム30の第1左右フレーム32に取り付けられた前後方向に長尺な1つのボギーフレーム41と、ボギーフレーム41から垂設された第1ローラフレーム421及び第2ローラフレーム422と、などにより構成される。
【0022】
ボギーフレーム41は、例えば、上下方向に揺動自在に第1左右フレーム32に取り付けられている。
具体的には、ボギーフレーム41は、例えば、前後方向略中央の位置に、第1左右フレーム32を貫通可能な貫通孔を有しており、この貫通孔に第1左右フレーム32の左端部(又は右端部)を貫通させることによって、上下方向に揺動自在に第1左右フレーム32に取り付けられている。
したがって、ボギーフレーム41は、例えば、側面視略中央を通る左右方向に平行な軸を揺動中心R2として、上下方向に揺動可能となっている。なお、旋回フレーム30の旋回中心R1となる軸と、ボギーフレーム41の揺動中心R2となる軸と、は交差するようになっている。
【0023】
一方の揺動フレーム40が備える第1ローラフレーム421と、他方の揺動フレーム40が備える第2ローラフレーム422と、が左右に対向するように、左側のボギーフレーム41の前端部に第1ローラフレーム421が取り付けられて、右側のボギーフレーム41の前端部に第2ローラフレーム422が取り付けられているとともに、左側のボギーフレーム41の後端部に第2ローラフレーム422が取り付けられて、右側のボギーフレーム41の後端部に第1ローラフレーム421が取り付けられている。
【0024】
第1ローラフレーム421及び第2ローラフレーム422は、例えば、前後方向に揺動自在にボギーフレーム41に取り付けられている。
具体的には、第1ローラフレーム421及び第2ローラフレーム422は、例えば、揺動軸部423を有しており、この揺動軸部423によって、前後方向に揺動自在にボギーフレーム41に取り付けられている。
したがって、第1ローラフレーム421及び第2ローラフレーム422は、例えば、各々を前後方向に揺動することによって、第1ローラフレーム421と第2ローラフレーム422との間の間隔を調整可能となっている。
【0025】
車輪50は、例えば、一対の揺動フレーム40,40の間に前後に2つ設けられている。すなわち、1つの旋回フレーム30に設けられた左右で一対の揺動フレーム40,40には、前後で一対の車輪50,50が取り付けられており、杭上移動装置1には、4つの車輪50が備えられている。
具体的には、車輪50は、例えば、回転軸の方向が左右方向となるように、左右に対向する第1ローラフレーム421と第2ローラフレーム422との間に回転自在に取り付けられている。
車輪50は、揺動フレーム40に取り付けられているため、上下方向に揺動自在であり、かつ、前後方向に揺動自在であるとともに、揺動フレーム40が旋回フレーム30に取り付けられているため、左右方向に旋回自在である。
【0026】
ここで、第1ローラフレーム421にはロック機構421aが設けられており、図示しないシリンダー等によって第1ローラフレーム421及び第2ローラフレーム422を前後揺動させて、一対の車輪50,50同士の間隔を調整した後、そのロック機構421aによってその調整された状態をロックできるようになっている。
【0027】
具体的には、例えば、既設杭PがU型鋼矢板である場合、例えば、図7に示すように、一対の車輪50,50が、既設杭Pにおける同一方向(図7においては右方向)に突出する部分上に位置すると、杭上移動装置1の左右のバランスが悪くなって、杭上移動装置1が既設杭P上を安定的に移動できなくなる。
そこで、杭上移動装置1が既設杭P上を安定的に移動できるよう、例えば、図5に示すように、既設杭Pの一端部から他端部までの長さ(ピッチ)に応じて、第1ローラフレーム421及び第2ローラフレーム422を前後揺動させて、一対の車輪50,50の前後の間隔を調整した後、その調整された状態をロック機構421aでロックするようになっている。
なお、一対の車輪50,50の前後の間隔は、例えば、一方の車輪50の回転軸と他方の車輪50の回転軸との間の前後方向略中央を通る左右方向に平行な直線が、旋回フレーム30の旋回中心R1となる軸と交差するように、すなわち、前後対称に、調整されるようになっている。
【0028】
車輪駆動部120は、制御部160から入力される制御信号に従って、例えば、所定の駆動伝達部材を介して、車輪50,50,…を回転させる。
【0029】
ガイド部60は、例えば、旋回フレーム30から垂下して左右に2つ設けられている。すなわち、1つの旋回フレーム30には、左右で一対のガイド部60,60が取り付けられており、杭上移動装置1には、4つのガイド部60が備えられている。
一対のガイド部60,60は、上下に設けられた上側サイドローラ部62,62及び下側サイドローラ部63,63を有し、既設杭Pを移動方向に直交する左右両側から挟むように構成されている。
【0030】
具体的には、ガイド部60は、例えば、2つの第2左右フレーム33それぞれの左側(又は右側)から垂設され、上下方向に長尺な2つのサイドローラフレーム61と、2つのサイドローラフレーム61それぞれの上下方向略中央の位置に固定され、前後方向に長尺な1つの上側サイドローラ部62と、2つのサイドローラフレーム61それぞれの下端部に固定され、前後方向に長尺な1つの下側サイドローラ部63と、などにより構成されている。
ガイド部60は、旋回フレーム30に取り付けられているため、左右方向に旋回自在である。
【0031】
上側サイドローラ部62及び下側サイドローラ部63は、例えば、前後方向の長さが略同一となるよう設定されており、例えば、上側サイドローラ部62の前後方向略中央を通る左右方向に平行な面上と、下側サイドローラ部63の前後方向略中央を通る左右方向に平行な面上と、に旋回フレーム30の旋回中心R1となる軸が位置するように、サイドフレーム61,61に固定されている。
【0032】
ここで、1つの旋回フレーム30に取り付けられた一対のガイド部60,60、すなわち、左右に対向する一対のガイド部60,60のうちの、一方(例えば、右側)のガイド部60は、左右方向に移動自在に第2左右フレーム33に設けられた可動型ガイド部60aとなっており、他方(例えば、左側)のガイド部60は、第2左右フレーム33に固定された固定型ガイド部60bとなっている。
したがって、左右に対向する一対のガイド部60,60は、可動型ガイド部60aを左右方向に移動させることによって、その一対のガイド部60,60同士の間隔が調整可能となっている。
【0033】
可動型ガイド部60aが有する上側サイドローラ部62aは、例えば、前後両端部が既設杭Pから離反するように湾曲したサイドローラ枠621と、回転軸の方向が上下方向となるようにサイドローラ枠621に取り付けられた複数の大径サイドローラ622と、などを備えて構成される。
また、可動型ガイド部60aが有する下側サイドローラ部63aは、例えば、サイドローラ枠621と、回転軸の方向が上下方向となるようにサイドローラ枠621に取り付けられた、大径サイドローラ622よりも径が小さい複数の小径サイドローラ623と、などを備えて構成される。
【0034】
固定型ガイド部60bが有する上側サイドローラ部62bは、例えば、可動型ガイド部60aが有する下側サイドローラ部63aの構成と略同一であり、サイドローラ枠621と、複数の小径サイドローラ623と、などを備えて構成される。
また、固定型ガイド部60bが有する下側サイドローラ部63bは、例えば、可動型ガイド部60aが有する上側サイドローラ部62aの構成と略同一であり、サイドローラ枠621と、複数の大径サイドローラ622と、などを備えて構成される。
【0035】
すなわち、正面視で4つのサイドローラのうちの、一方の対角に位置するサイドローラは大径サイドローラ622であり、他方の対角に位置するサイドローラは小径サイドローラ623である。
なお、大径サイドローラ622を備える下側サイドローラ部63は、杭上移動装置1の重心側に配置されるのが好ましい。したがって、本実施の形態においては、本体フレーム10の左側面に足場フレーム20が取り付けられており、杭上移動装置1の重心の位置が本体フレーム10の左右方向中央よりも左側に寄っているため、左側にあるガイド部(固定型ガイド部60b)の下側サイドローラ部63に大径サイドローラ622が備えられている。
【0036】
ガイド部間隔調整部130は、制御部160から入力される制御信号に従って、例えば、駆動伝達部材130aなどを介して、可動型ガイド部60aを左右移動させることによって、左右方向に対向する一対のガイド部60,60同士の間隔を調整する。
【0037】
検出部140は、例えば、杭上移動装置1の所定位置に配置された傾斜センサなどから構成され、杭上移動装置1の左右方向の傾きを検出して、当該検出信号を制御部160に出力する。
具体的には、検出部140は、例えば、本体フレーム10の上面の左右方向の傾きを検出する。
傾斜センサとしては、杭上移動装置1の左右方向の傾きを検出することができるセンサであれば任意であり、具体的には、例えば、密閉容器内における気泡の位置を電気的に検出することによって、傾斜角を検出する気泡変位型の傾斜センサなどが挙げられる。
【0038】
操作部150は、例えば、杭上移動装置1の所定位置に配置された操作ボタンや操作レバーなどから構成され、ユーザにより操作されると、当該操作信号を制御部160に出力する。
【0039】
制御部160は、例えば、図4に示すように、CPU(Central Processing Unit)161と、RAM(Random Access Memory)162と、記憶部163と、などを備えて構成される。
【0040】
CPU161は、例えば、記憶部163に記憶された杭上移動装置1用の各種処理プログラムに従って各種の制御動作を行う。
【0041】
RAM162は、例えば、CPU161によって実行される処理プログラムなどを展開するためのプログラム格納領域や、入力データや上記処理プログラムが実行される際に生じる処理結果などを格納するデータ格納領域などを備える。
【0042】
記憶部163は、例えば、杭上移動装置1で実行可能なシステムプログラム、当該システムプログラムで実行可能な各種処理プログラム、これら各種処理プログラムを実行する際に使用されるデータ、CPU161によって演算処理された処理結果のデータなどを記憶する。なお、プログラムは、コンピュータが読み取り可能なプログラムコードの形で記憶部163に記憶されている。
【0043】
具体的には、制御部160は、例えば、ガイド部間隔調整部130を制御して、前側の旋回フレーム30に取り付けられた一対のガイド部60,60の左右の間隔を調整させるとともに、後側の旋回フレーム30に取り付けられた一対のガイド部60,60の左右の間隔を調整させる。
より具体的には、制御部160は、例えば、検出部140から入力された検出信号に基づいて、杭上移動装置1(本体フレーム10の上面)が略水平になるまで、可動型ガイド部60a,60aを左右方向に移動させることによって、一対のガイド部60,60の左右の間隔を調整させる。
【0044】
なお、杭上移動装置1(本体フレーム10の上面)が略水平になった状態においては、既設杭Pに対する、一方のガイド部60が有する下側サイドローラ部63(可動型ガイド部60aが有する下側サイドローラ部63a)及び他方のガイド部60が有する上側サイドローラ部62(固定型ガイド部60bが有する上側サイドローラ部62b)の接触圧力が、ゼロ若しくは当該一方のガイド部60が有する上側サイドローラ部62(可動型ガイド部60aが有する上側サイドローラ部62a)及び当該他方のガイド部60が有する下側サイドローラ部63(固定型ガイド部60bが有する下側サイドローラ部63b)の接触圧力よりも低くなっている。
したがって、杭上移動装置1(本体フレーム10の上面)が略水平になった状態においては、一対のガイド部60,60は、大径サイドローラ622を備えるサイドローラ部(可動型ガイド部60aが有する上側サイドローラ部62a及び固定型ガイド部60bが有する下側サイドローラ部63b)で、既設杭Pを挟んでいる。
【0045】
また、制御部160は、例えば、車輪駆動部120を制御して、車輪50,50,…を回転させる。
【0046】
<杭上移動装置の移動中の状態>
杭上移動装置1が既設杭P上を移動している間の状態について図8〜図13を参照して説明する。
なお、図8〜図11は、本体フレーム10及び足場フレーム20を仮想線で示すとともに、旋回フレーム30の外形を仮想線で示し、揺動フレーム40を省略した杭上移動装置1の平面図である。
【0047】
例えば、ユーザによる操作部150の操作によって杭上移動装置1を移動させるよう指示されると、制御部160は、検出部140から入力された検出信号に基づいて、ガイド部間隔調整部130を制御して、杭上移動装置1(本体フレーム10の上面)が略水平となるよう、前側の一対のガイド部60,60の左右の間隔及び後側の一対のガイド部60,60の左右の間隔を調整させ、車輪駆動部120を制御して、車輪50,50,…を回転させて、杭上移動装置1の移動(走行)を開始させる。
【0048】
ここで、既設杭P,P,…の配置の仕方によって、杭上移動装置1の走行路は直線部とカーブ部とに分類される。
【0049】
杭上移動装置1が直線部を移動している場合には、例えば、図8及び図9に示すように、旋回フレーム30は旋回しておらず、本体フレーム10の長手方向と、前側の旋回フレーム30及び後側の旋回フレーム30の長手方向と、が平行になっている。
【0050】
また、杭上移動装置1は、本体フレーム10の左側面に足場フレーム20が取り付けられているので、重心の位置が、本体フレーム10の左右方向中央よりも左側によっているが、一対のガイド部60,60の左右の間隔が調整されているため、杭上移動装置1が直線部を移動している間は、例えば、図1に示すように、略水平状態を保っている。
【0051】
そして、杭上移動装置1がカーブ部に差し掛かった場合には、例えば、図10に示すように、旋回フレーム30は旋回し始める。
具体的には、大径サイドローラ622を備えるサイドローラ部(可動型ガイド部60aが有する上側サイドローラ部62a及び固定型ガイド部60bが有する下側サイドローラ部63b)に対する既設杭Pの接触圧力FK3が、車輪50と既設杭Pとの摩擦抵抗FK1に打ち勝つと、旋回フレーム30は旋回し始める。
【0052】
そして、杭上移動装置1がカーブ部を移動している場合には、例えば、図11に示すように、旋回フレーム30はカーブに沿って旋回している。
ここで、上側サイドローラ部62及び下側サイドローラ部63は、上側サイドローラ部62の前後方向略中央を通る左右方向に平行な面上と、下側サイドローラ部63の前後方向略中央を通る左右方向に平行な面上と、に旋回フレーム30の旋回中心R1となる軸が位置するように、サイドフレーム61,61に固定されており、かつ、一対の車輪50,50の前後の間隔は、一対の車輪50,50のうちの一方の車輪50の回転軸と他方の車輪50の回転軸との間の前後方向略中央を通る左右方向に平行な直線が、旋回フレーム30の旋回中心R1となる軸と交差するように調整されているため、旋回フレーム30が、本体フレーム10の向きに関係なく円滑に旋回することができることとなって、杭上移動装置1は、安定的に高速カーブ走行を行うことができる。
【0053】
また、杭上移動装置1は、正面視で4つのサイドローラのうちの、一方の対角に位置するサイドローラが大径サイドローラ622であり、他方の対角に位置するサイドローラが小径サイドローラ623であるため、下側に小径サイドローラ623を備えるガイド部60(可動型ガイド部60a)側に向かって傾くことができる。杭上移動装置1がカーブ部を移動している間、遠心力や接触圧力FK3により回転モーメントが生じるため、例えば、図12に示すように、杭上移動装置1(本体フレーム10の上面)はカーブ外側方向へ傾き、既設杭Pを挟む左側のサイドローラと右側のサイドローラとの間の左右方向の間隔が、例えば、間隔S1から間隔S2へと大きくなる。
そして、制御部160は、検出部140から入力された検出信号に基づいて、杭上移動装置1(本体フレーム10の上面)の傾きが所定の許容範囲を超えたと判断した場合に、ガイド部間隔調整部130を制御して、杭上移動装置1(本体フレーム10の上面)が略水平となるよう、前側の一対のガイド部60,60の左右の間隔及び後側の一対のガイド部60,60の左右の間隔を調整させる。すなわち、制御部160は、例えば、杭上移動装置1(本体フレーム10の上面)の傾きが所定の許容範囲を超えたと判断した場合、一対のガイド部60,60の左右の間隔を調整して、左側の大径サイドローラ622と右側の大径サイドローラ622との左右方向の間隔を、例えば、間隔S1から間隔S2とすることで、略水平状態に復帰させる。
【0054】
例えば、図9に示すように、カーブ部を形成する既設杭P,P,…の見かけ上の幅T2は、直線部を形成する既設杭P,P,…の見かけ上の幅T1よりも大きく、また、直線部から離れるに従って大きくなるが、杭上移動装置1は、見かけ上の幅T2が大きくなるに従って傾き、さらに、その傾きが所定の許容範囲を超えた場合には、一対のガイド部60,60の左右の間隔を調整して略水平状態に復帰させて、正面視で4つのサイドローラ部のうちの少なくとも一方の対角に位置する2つのサイドローラ部が既設杭Pと接触するよう制御することができる。したがって、杭上移動装置1は、安定的に高速カーブ走行を行うことができる。
特に、カーブ部のカーブ寸法(カーブ半径)が小さいほど、見かけ上の幅T2が大きくなるため、従来の杭上移動装置では安定的に高速カーブ走行を行うのが困難であったが、本発明のように制御することで、カーブ部のカーブ寸法Rに関わらず、安定的に高速カーブ走行を行うことができるようになる。
なお、より好適にカーブ寸法が小さいカーブ部に対応するためには、例えば、杭上移動装置1(本体フレーム10の上面)が略水平になった状態における、小径サイドローラ623と既設杭Pとの隙間を大きくして、大きく傾くことができるようにすると良い。
【0055】
また、既設杭P,P,…の配置の仕方によって、杭上移動装置1の走行路は水平部と段差部とに分類される。
【0056】
杭上移動装置1が水平部を移動している場合には、例えば、図2に示すように、杭上移動装置1(本体フレーム10の上面)は略水平であるとともに、揺動フレーム40のボギーフレーム41は揺動しておらず、本体フレーム10の長手方向と、前側のボギーフレーム41及び後側のボギーフレーム41の長手方向と、が平行になっている。
【0057】
そして、杭上移動装置1が段差部に差し掛かった場合には、例えば、図13に示すように、前側(後側であっても良い)の一対の車輪50,50のうちの一方の車輪50(例えば、図13においては前方の車輪50)が段差に乗り上げる。このとき、揺動フレーム40(ボギーフレーム41)が揺動するため、前側の一対の車輪50,50のうちの一方の車輪50が段差に乗り上げた状態では、杭上移動装置1の前側はその段差の半分だけ持ち上がる。すなわち、例えば、50mmの段差であれば、杭上移動装置1の前側は25mmだけ持ち上がる。これに対して、車輪50が揺動フレーム40に取り付けられていない杭上移動装置では、段差の分だけ杭上移動装置の前側が持ち上がることになる。したがって、杭上移動装置1は、車輪50が揺動フレーム40に取り付けられていない杭上移動装置と比較して、上下動が少なく、安定的に高速走行を行うことができるとともに、各部が受ける上下動に伴うショックを抑えることができる。
【0058】
また、前側の一対の車輪50,50のうちの一方の車輪50が段差に乗り上げる間、サイドローラ部の前側も持ち上がり、既設杭Pに接触しているサイドローラは、既設杭Pに接触しながら上方向にスライドするが、杭上移動装置1は、車輪50が揺動フレーム40に取り付けられていない杭上移動装置と比較して、サイドローラ部の前側の持ち上がる量が小さいため、そのスライドする距離が短い。さらに、そのスライドしている間のサイドローラと既設杭Pとの摩擦が、ガイドシューを既設杭の左右両側面に当接させながら移動(走行)する杭上移動装置や、4つのサイドローラ部で既設杭を挟持するようアキュムレータなどによってサイドローラ部の間隔を調整しながら移動(走行)する杭上移動装置と比較して小さい。したがって、杭上移動装置1は、スライド等に伴う騒音を軽減することができるとともに、スライド等に伴う既設杭P及びサイドローラの損傷を抑えることができる。
【0059】
以上説明した本発明の杭上移動装置1によれば、前後に車輪50を備え、当該車輪50の回転により既設杭P,P、…の上を移動する杭上移動装置であって、上下に設けられた上側サイドローラ部62及び下側サイドローラ部63を有し、既設杭Pを移動方向に直交する左右両側から挟む一対のガイド部60,60を備え、既設杭Pに対する、一方のガイド部60が有する下側サイドローラ部63(可動型ガイド部60aが有する下側サイドローラ部63a)及び他方のガイド部60が有する上側サイドローラ部62(固定型ガイド部60bが有する上側サイドローラ部62b)の接触圧力は、ゼロ若しくは当該一方のガイド部60が有する上側サイドローラ部62(可動型ガイド部60aが有する上側サイドローラ部62a)及び当該他方のガイド部60が有する下側サイドローラ部63(固定型ガイド部60bが有する下側サイドローラ部63b)の接触圧力よりも低くなっている。
したがって、正面視で4つのサイドローラ部のうちの少なくとも一方の対角に位置する2つのサイドローラ部が既設杭と接触しているため、左右のバランスが安定するとともに、ガイドシューを既設杭の左右両側面に当接させながら移動(走行)する杭上移動装置や、4つのサイドローラ部で既設杭を挟持するようアキュムレータなどによってサイドローラ部の間隔を調整しながら移動(走行)する杭上移動装置などの従来の杭上移動装置と比較して、走行抵抗が小さく、移動効率が高い。
【0060】
また、本発明の杭上移動装置1によれば、本体フレーム10と、本体フレーム10の前側及び後側に、左右方向に旋回可能に取り付けられた旋回フレーム30,30と、旋回フレーム30の各々に、上下方向に揺動可能に設けられた揺動フレーム40,40と、を備え、車輪50は、揺動フレーム40に取り付けられている。
すなわち、杭上移動装置1の走行路にあわせて、車輪50を左右に旋回させることができる。したがって、当該旋回ができない杭上移動装置と比較して、特にカーブ部を走行する際の走行抵抗を軽減させることができるため、移動効率が高く、円滑かつ高速なカーブ走行を行うことできるとともに、杭上移動装置1全体の横揺れを抑制することができる。
加えて、杭上移動装置1の走行路に段差がある場合には、揺動フレーム40が揺動して当該段差を吸収することができる。したがって、車輪50が揺動フレーム40に取り付けられていない杭上移動装置と比較して、特に段差部を走行する際の走行抵抗を軽減させることができるため、移動効率が高く、走行路に段差があっても、円滑な走行を行うことができるとともに、杭上移動装置1全体の上下動が軽減して高速走行を行うことができる。
【0061】
さらに、本発明の杭上移動装置1によれば、本体フレーム10の前側に取り付けられた旋回フレーム30に設けられた揺動フレーム40,40及び本体フレーム10の後側に取り付けられた旋回フレーム30に設けられた揺動フレーム40,40には、少なくとも2つの車輪50が前後方向に取り付けられている。
すなわち、杭上移動装置1の前側及び後側には、少なくとも2つの車輪50が備えられているため、前側及び後側のそれぞれに1つの車輪50を備える杭上移動装置と比較して、車輪50の個数が多く、既設杭Pと各車輪50との接触圧力が低い。したがって、既設杭Pや車輪50の損傷が抑えることができるため、車輪50のスリップなどが起こりにくく、移動効率が高い。加えて、車輪50の個数が多いため、積載重量を向上させることができる。
【0062】
また、本発明の杭上移動装置1によれば、揺動フレーム40は、旋回フレーム30に、上下方向に揺動可能に設けられたボギーフレーム41と、ボギーフレーム41に、前後方向に揺動可能に取り付けられたローラフレーム(第1ローラフレーム421,第2ローラフレーム422)と、を備え、車輪50は、ローラフレーム(第1ローラフレーム421,第2ローラフレーム422)に取り付けられている。
すなわち、車輪50は、上下方向に揺動可能であるとともに、前後方向に揺動可能である。したがって、車輪50を前後方向に揺動させて、前側及び後側の一対の車輪50,50の前後の間隔を調整することができるため、当該調整ができない場合と比較して、杭上移動装置1の左右のバランスが向上し、杭上移動装置1が安定的に移動できる。
【0063】
また、本発明の杭上移動装置1によれば、走行抵抗が小さいため、騒音を抑制することができる。
【0064】
また、本発明の杭上移動装置1によれば、前側及び後側の一対のガイド部60,60の左右の間隔を調整することができるとともに、前側及び後側の一対の車輪50,50の前後の間隔を調整することができる。したがって、既設杭Pの種類に影響されることなく、移動効率が高い、安定的な走行を行うことができる。
【0065】
なお、本発明は、上記した実施の形態のものに限るものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0066】
杭上移動装置1の構成や各部の形状などについて、上記実施形態に例示したものは、一例であり、これらに限定されるものではない。
【0067】
杭上移動装置1の前側及び後側に2つの車輪50を備えるようにしたが、これに限ることはなく、本体フレーム10の前側に取り付けられた旋回フレーム30に設けられた揺動フレー40ム及び本体フレーム10の後側に取り付けられた旋回フレーム30に設けられた揺動フレーム40の少なくとも何れか一方に、すなわち、杭上移動装置1の前側及び/又は後側に、少なくとも2つの車輪50が前後方向に取り付けられていればよい。
【0068】
一方のガイド部60が有する下側サイドローラ部63及び他方のガイド部60が有する上側サイドローラ部62の接触圧力が、ゼロ若しくは当該一方のガイド部60が有する上側サイドローラ部62及び当該他方のガイド部60が有する下側サイドローラ部63の接触圧力よりも低くなるようにするために、正面視で4つのサイドローラのうちの一方の対角に位置するサイドローラを大径サイドローラ622として、他方の対角に位置するサイドローラを小径サイドローラ623としたが、既設杭Pに対する上側サイドローラ部62及び下側サイドローラ部63の接触圧力の調整の仕方は、これに限ることはなく、一方のガイド部60が有する下側サイドローラ部63及び他方のガイド部60が有する上側サイドローラ部62の接触圧力が、ゼロ若しくは当該一方のガイド部60が有する上側サイドローラ部62及び当該他方のガイド部60が有する下側サイドローラ部63の接触圧力よりも低くなるのであれば任意である。具体的には、例えば、一方の対角に位置するサイドローラと、他方の対角に位置するサイドローラと、の径を同一にして、杭上移動装置1の重心の位置が本体フレーム10の左右方向中央からずれていることを利用して、一方のガイド部60が有する下側サイドローラ部63及び他方のガイド部60が有する上側サイドローラ部62の接触圧力が、ゼロ若しくは当該一方のガイド部60が有する上側サイドローラ部62及び当該他方のガイド部60が有する下側サイドローラ部63の接触圧力よりも低くなるようにしても良いし、一方の対角に位置するサイドローラを大径サイドローラ622として、他方の対角に位置するサイドローラを小径サイドローラ623とするとともに、杭上移動装置1の重心の位置が本体フレーム10の左右方向中央からずれていることを利用して、一方のガイド部60が有する下側サイドローラ部63及び他方のガイド部60が有する上側サイドローラ部62の接触圧力が、ゼロ若しくは当該一方のガイド部60が有する上側サイドローラ部62及び当該他方のガイド部60が有する下側サイドローラ部63の接触圧力よりも低くなるようにしても良い。
【0069】
また、移動(走行)を開始する前に、杭上移動装置1(本体フレーム10の上面)の傾きが所定の許容範囲を超えていない場合には、一対のガイド部60,60の左右の間隔は調整しなくても良い。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の杭上移動装置の正面図であって、直線部を移動している状態を示す図である。
【図2】本発明の杭上移動装置の側面図であって、水平部を移動している状態を示す図である。
【図3】本発明の杭上移動装置の平面図である。
【図4】本体フレーム及び足場フレームを省略するとともに、旋回フレームの下側に位置する既設杭及びガイド部を省略した本発明の杭上移動装置の平面図である。
【図5】本体フレーム、足場フレーム、旋回フレーム及び揺動フレームを省略した本発明の杭上移動装置の平面図である。
【図6】杭上移動装置の機能的構成を示すブロック図である。
【図7】一対の車輪の前後の間隔を調整することができない場合を説明するための図である。
【図8】本体フレーム及び足場フレームを仮想線で示すとともに、旋回フレームの外形を仮想線で示し、揺動フレームを省略した本発明の杭上移動装置の平面図であって、直線部を移動している状態を示す図である。
【図9】本体フレーム及び足場フレームを仮想線で示すとともに、旋回フレームの外形を仮想線で示し、揺動フレームを省略した本発明の杭上移動装置の平面図であって、直線部を移動している状態を示す図である。
【図10】本体フレーム及び足場フレームを仮想線で示すとともに、旋回フレームの外形を仮想線で示し、揺動フレームを省略した本発明の杭上移動装置の平面図であって、カーブ部に差し掛かった状態を示す図である。
【図11】本体フレーム及び足場フレームを仮想線で示すとともに、旋回フレームの外形を仮想線で示し、揺動フレームを省略した本発明の杭上移動装置の平面図であって、カーブ部を移動している状態を示す図である。
【図12】本発明の杭上移動装置の正面図であって、カーブ部を移動している状態を示す図である。
【図13】本発明の杭上移動装置の側面図であって、段差部を移動している状態を示す図である。
【符号の説明】
【0071】
1 杭上移動装置
10 本体フレーム
30 旋回フレーム
40 揺動フレーム
41 ボギーフレーム
421 第1ローラフレーム(ローラフレーム)
422 第2ローラフレーム(ローラフレーム)
50 車輪
60 ガイド部
62 上側サイドローラ部
63 下側サイドローラ部
P 既設杭

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後に車輪を備え、当該車輪の回転により既設杭の上を移動する杭上移動装置であって、
上下に設けられた上側サイドローラ部及び下側サイドローラ部を有し、前記既設杭を移動方向に直交する左右両側から挟む一対のガイド部を備え、
前記既設杭に対する、一方の前記ガイド部が有する前記下側サイドローラ部及び他方の前記ガイド部が有する前記上側サイドローラ部の接触圧力は、ゼロ若しくは当該一方のガイド部が有する前記上側サイドローラ部及び当該他方のガイド部が有する前記下側サイドローラ部の接触圧力よりも低いことを特徴とする杭上移動装置。
【請求項2】
前後に車輪を備え、当該車輪の回転により既設杭の上を移動する杭上移動装置であって、
本体フレームと、
前記本体フレームの前側及び後側に、左右方向に旋回可能に取り付けられた旋回フレームと、
前記旋回フレームの各々に、上下方向に揺動可能に設けられた揺動フレームと、を備え、
前記車輪は、前記揺動フレームに取り付けられ、
前記本体フレームの前側に取り付けられた前記旋回フレームに設けられた前記揺動フレーム及び前記本体フレームの後側に取り付けられた前記旋回フレームに設けられた前記揺動フレームの少なくとも何れか一方には、少なくとも2つの前記車輪が前後方向に取り付けられていることを特徴とする杭上移動装置。
【請求項3】
請求項2に記載の杭上移動装置であって、
前記揺動フレームは、
前記旋回フレームに、上下方向に揺動可能に設けられたボギーフレームと、
前記ボギーフレームに、前後方向に揺動可能に取り付けられたローラフレームと、を備え、
前記車輪は、前記ローラフレームに取り付けられていることを特徴とする杭上移動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−197544(P2009−197544A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−43024(P2008−43024)
【出願日】平成20年2月25日(2008.2.25)
【出願人】(000141521)株式会社技研製作所 (83)
【Fターム(参考)】